説明

湿紙の脱水乾燥装置、抄紙装置及び抄紙方法

【課題】湿紙の脱水及び転移に大掛かりな装置を必要とせず、装置の小型化を可能とするとともに、脱水部から乾燥部への湿紙の搬送を確実に行うことの可能な湿紙の脱水乾燥装置、抄紙装置及び抄紙方法の提供を目的とする。
【解決手段】湿紙の脱水乾燥装置は、脱水用ベルト55と、第1脱水ローラ44と、前記脱水用ベルト55の第1脱水ローラ44の設置箇所に外接し、脱水用ベルトから転移させた湿紙64を乾燥部34に搬送する無端状の乾燥用ベルト56と、第2脱水ローラ45とを備え、第1脱水ローラ44及び第2脱水ローラ45により脱水ローラ対334を構成し、該脱水ローラ対334は、脱水用ベルト55及び乾燥用ベルト56の当接箇所において当接面の両側より湿紙64を挟圧し両ベルト間に挟持された湿紙64を脱水しつつ脱水用ベルト55から乾燥用ベルト56に転移させるよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿紙の脱水乾燥装置、抄紙装置及び抄紙方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙原料液を抄紙し得られた湿紙を脱水し、乾燥する湿紙の脱水乾燥装置が知られており、下記特許文献1には、フェルト等により構成され、吸水性を有する上下一対の脱水用ベルトの間に湿紙を挟持し、挟持された湿紙を脱水ローラ対によって挟圧し脱水した後、脱水用ベルトから乾燥用ベルトに真空吸引装置等を用いて湿紙を転移させ、該乾燥用ベルトにより乾燥部へと湿紙を搬送し、乾燥させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平9−506937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の湿紙の脱水乾燥装置は、脱水用ベルトから乾燥用ベルトへ湿紙の転移に真空吸引装置を用いているので、この真空吸引装置を設置するために大きな空間を必要とし、製紙装置全体の大型化の要因となっている。また、運転の際の消費電力量が多くなり、吸引の程度によっては確実に転移を行うことができない場合もある。更に、湿紙の脱水効率についてもまだ十分であるとはいえず、更なる脱水効率の向上が望まれている。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、湿紙の脱水及び転移に大掛かりな装置を必要とせず、装置の小型化を可能とするとともに、脱水部から乾燥部への湿紙の搬送を確実に行うことの可能な湿紙の脱水乾燥装置、抄紙装置及び抄紙方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の湿紙の脱水乾燥装置は、湿潤状態にある湿紙を搬送する無端状の脱水用ベルトと、前記脱水用ベルトの内方に設置された第1脱水ローラと、前記脱水用ベルトの第1脱水ローラの設置箇所に外接し、脱水用ベルトから転移させた湿紙を乾燥部に搬送する無端状の乾燥用ベルトと、前記乾燥用ベルトの内方であって、第1脱水ローラの対向位置に設置された第2脱水ローラとを備え、第1脱水ローラ及び第2脱水ローラにより脱水ローラ対を構成し、該脱水ローラ対は、脱水用ベルト及び乾燥用ベルトの当接箇所において当接面の両側より湿紙を挟圧し両ベルト間に挟持された湿紙を脱水しつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトに転移させるよう構成してある。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の湿紙の脱水乾燥装置において、周回する乾燥用ベルトのうち少なくとも脱水ローラ対による挟圧範囲において乾燥用ベルトに内接する無端状の吸水用ベルトを設け、脱水ローラ対は、前記乾燥用ベルトと吸水用ベルトとの内接部分で、これら双方のベルトを脱水用ベルトとともに挟圧するよう構成してなるものである。
【0008】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の湿紙の脱水乾燥装置において、乾燥用ベルトは、通水性を有する部材により構成されるものである。
【0009】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置において、乾燥用ベルトは、網目状部材又は通水孔の形成された部材により構成され、開口率が22%〜38%に設定されているものである。
【0010】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置において、乾燥用ベルトは、網目状部材により構成され、網目の粗さは150メッシュ〜350メッシュに設定されている。
【0011】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置において、乾燥用ベルトは、網目状部材により構成され、網目を構成する繊維の太さは直径30μm〜50μmに設定されている。
【0012】
更に、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置において、脱水ローラ対が、湿紙の搬送経路に沿って複数対配設され、上流側の脱水ローラ対による挟圧を、下流側の脱水ローラ対の挟圧より低い圧力となるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
更に、請求項8に記載の発明は、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーにより抄紙して湿紙を形成する湿紙形成装置と、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置とを備えた抄紙装置に関するものである。
【0014】
更に、請求項9に記載の発明は、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーにより抄紙して湿紙を形成し、得られた湿紙を抄紙ワイヤーより脱水用ベルトに転移して脱水部に搬送し、脱水部において前記脱水用ベルトと、該脱水用ベルトに外接する乾燥用ベルトとの間で湿紙を挟持し脱水ローラ対により挟圧して脱水しつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトに転移し、転移した湿紙を乾燥用ベルトにより乾燥部へ搬送し、乾燥部において湿紙を乾燥させることを特徴とする抄紙方法に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の湿紙の脱水乾燥装置は、脱水用ベルトと、乾燥用ベルトと、第1脱水ローラ及び第2脱水ローラによりなる脱水ローラ対とを備えてなり、脱水ローラ対は、脱水用ベルト及び乾燥用ベルトの当接箇所において当接面の両側より湿紙を挟圧し両ベルト間に挟持された湿紙を脱水しつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトに転移させるので、湿紙の脱水と転移とを脱水ローラ対の挟圧によって一度に行うことができ、構成を簡素化でき装置の小型化が可能である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、周回する乾燥用ベルトのうち少なくとも脱水ローラ対による挟圧範囲において乾燥用ベルトに内接する無端状の吸水用ベルトを設け、脱水ローラ対は、前記乾燥用ベルトと吸水用ベルトとの内接部分で、これら双方のベルトを脱水用ベルトとともに挟圧するので、脱水ローラ対による脱水の際、該脱水ローラ対の挟圧により生じた水分を吸水用ベルトに吸水させることができるので、湿紙の脱水効率を向上させることができる。
【0017】
そして、請求項3に記載の発明によれば、乾燥用ベルトは、通水性を有する部材により構成されるので、脱水ローラ対の挟圧により生じた水分を乾燥用ベルトを通水させて吸水ベルトに吸水させることができ、湿紙の脱水効率をより向上させることができる。
【0018】
更に、請求項4に記載の発明によれば、乾燥用ベルトは、網目状部材又は通水孔の形成された部材により構成され、開口率が22%〜38%に設定されているので、湿紙を脱水用ベルトから乾燥用ベルトに容易に転移させることができ、また、乾燥用ベルトにより搬送される湿紙を乾燥部において容易に乾燥することができる。
【0019】
更に、請求項5に記載の発明によれば、乾燥用ベルトは、網目状部材により構成され、網目の粗さは150メッシュ〜350メッシュに設定されているので、上記と同様に、湿紙を脱水用ベルトから乾燥用ベルトに容易に転移させることができ、また、乾燥用ベルトにより搬送される湿紙を乾燥部において容易に乾燥することができる。
【0020】
更に、請求項6に記載の発明によれば、乾燥用ベルトは、網目状部材により構成され、網目を構成する繊維の太さは直径30μm〜50μmに設定されているので、上記と同様に、湿紙を脱水用ベルトから乾燥用ベルトに容易に転移させることができ、また、乾燥用ベルトにより搬送される湿紙を乾燥部において容易に乾燥することができる。
【0021】
更に、請求項7に記載の発明によれば、脱水ローラ対が、湿紙の搬送経路に沿って複数対配設され、上流側の脱水ローラ対による挟圧を、下流側の脱水ローラ対の挟圧より低い圧力となるようにしたので、上流側の脱水ローラ対の挟圧によって湿紙の含水率をある程度下げておき、下流側の脱水ローラ対を上流側よりも高い圧力での挟圧によってしっかりと湿紙を脱水することができる利点がある。
【0022】
更に、請求項8に記載の抄紙装置によれば、紙原料液を抄紙ワイヤーにより抄紙して湿紙を形成する湿紙形成装置と、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置とを備えたので、抄紙ワイヤーにより抄紙し得られた湿紙を効率よく脱水、乾燥し製紙することの可能な抄紙装置の提供が可能である。
【0023】
更に、請求項9に記載の抄紙方法によれば、紙原料液を抄紙ワイヤーにより抄紙して湿紙を形成し、得られた湿紙を抄紙ワイヤーより脱水用ベルトに転移して脱水部に搬送し、脱水部において前記脱水用ベルトと、該脱水用ベルトに外接する乾燥用ベルトとの間で前記湿紙を挟持し脱水ローラ対により挟圧して脱水しつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトに転移し、転移された湿紙を乾燥用ベルトにより乾燥部へ搬送し、乾燥部において湿紙を乾燥させるので、脱水ローラ対により湿紙の脱水を行いつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトへの転移を同時に行うことができ、湿紙の脱水乾燥の工程を簡素化することができ、製紙効率の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る製紙装置の構成概略図である。
【図2】前記製紙装置のパルプ懸濁液製造部の内部構造を示す概略図である。
【図3】前記製紙装置の脱墨部の斜視図である。
【図4】前記脱墨部の平面図及び断面図である。
【図5】前記製紙装置の抄紙部の側面概略図である。
【図6】前記製紙装置の湿紙の脱水乾燥装置の構成概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる湿紙の脱水乾燥装置の構成概略図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる湿紙の脱水乾燥装置の構成概略図である。
【図9】本発明の第4の実施形態にかかる湿紙の脱水乾燥装置の構成概略図である。
【図10】本発明の第5の実施形態にかかる湿紙の脱水乾燥装置の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる製紙装置の構成概略図である。ここで、以下の説明では製紙装置100を古紙を原料とする再生紙製造装置とする場合について説明するが、本発明にかかる製紙装置はこれに限定されず、木材等の他の原料を用いる製紙装置であってもよい。図1において、製紙装置100は、パルプ懸濁液製造部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排液処理部5を一体的に備えるものである。
【0026】
パルプ懸濁液製造部1は、古紙6を離解して再生パルプを製造するものであり、脱墨パルプ部2は、パルプ懸濁液製造部1において製造された再生パルプを脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨パルプ部2において得られた脱墨パルプを抄紙し、抄紙により得られた湿紙の脱水及び乾燥を行うものであり、仕上げ部4は、抄紙部3において湿紙の乾燥を行ったものを裁断等することにより仕上げを行って再生紙7を得るものであり、排液処理部5は、脱墨パルプ部2、抄紙部3においてそれぞれ生じた排液の処理を行うものである。
【0027】
(パルプ懸濁液製造部)
図2は、パルプ懸濁液製造部1の内部構造を示す概略図である。パルプ懸濁液製造部1は、古紙の裁断紙片61を離解して再生パルプを製造するものであり、古紙投入部11、シュレッダー13、金属片除去部14、押圧部15、シュレッダータンク16、裁断紙量調整部17、パルパー18、ニーダー19を備えている。
【0028】
古紙投入部11は、処理を行う古紙6をホッパー12内に投入するための開口部であり、該古紙投入部11からホッパー12内の古紙6を覗き見ることが不可能または困難な構造とすることが好ましい。即ち、例えば、古紙6の搬送手段(図示省略)をホッパー12内に備え、一度に多量の古紙6が投入された場合に古紙6を順次ホッパー12の内部に搬送可能な構造とすることなどが挙げられる。これにより古紙6となった文書の機密性を保持可能である。
【0029】
シュレッダー13は、投入された古紙6を裁断処理して再生パルプの製造に適した所定の大きさに紙片化する裁断刃131を有する。ここで、仮に別途設けられたシュレッダー装置等の紙片裁断装置によって、既に所定の大きさに裁断処理済みの紙片を古紙投入部11より投入するような場合にはホッパー12内にシュレッダー13を設けない構成としても構わない。また、本実施形態1ではシュレッダーにより裁断され得られた紙片を用いてパルプ懸濁液を製造する場合を示すが、未裁断の用紙をそのままパルパーに投入してパルプ懸濁液を製造してもよい。
【0030】
ここで、パルプ懸濁液とは、後述する攪拌槽181内で古紙の裁断紙片61(古紙6)を離解することにより得られた再生パルプ、水等を含む液体のことであり、攪拌槽181ではこのパルプ懸濁液に、離解途中の古紙、離解により水中に取り出されたインク成分やトナー成分等の印刷成分や離解促進剤が溶解され又は混合されている。
【0031】
金属片除去部14は、ステープラーの針等の金属類を取り除くため設けられ、マグネット等により構成される。押圧部15は、シュレッダータンク16内の裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを抑えるためのものであり、図2において2点鎖線で示すように、裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを低減させる押圧部材151と、押圧部材151を昇降する昇降手段152とを備えている。
【0032】
シュレッダータンク16は、古紙の裁断紙片61を一時的に貯留するものであり、底面162が排出口163に向けて傾斜する傾斜面をなす。
排出口163には古紙の裁断紙片61を排出する排出装置164を設けている。排出装置164としては種々のものがあるが、ここでは複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の排出装置164を示している。排出装置164の上方には紙量検知センサ165が配置してあり、紙量検知センサ165はシュレッダータンク16の内部に貯留する古紙の裁断紙片61の有無を検出するもので、ロードセル、光センサ等を用いる。
【0033】
裁断紙量調整部17は、シュレッダータンク16の排出口163の下方に配置してあり、排出口163から排出する古紙の裁断紙片61を受け止め、その受け止めた裁断紙片61の重量を計測可能に構成されている。裁断紙片調整部17は、図示を省略するが、水平姿勢からパルパー18へ向けて傾斜可能に構成され、裁断紙片調整部17のパルパー18に隣接する側壁171bがパルパー18へ向けて開閉可能に設けてある。
【0034】
パルパー18は、古紙の裁断紙片61を水及び離解促進剤の液体中において、繊維、つまり再生パルプにまで離解させるものであり、古紙の裁断紙片61が投入される攪拌槽181と、攪拌槽181に給水するための給水部182と、離解促進剤供給部183とを設けている。離解促進剤供給部183から供給される古紙6の離解を促進する離解促進剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、亜硫酸ナトリウムなどのアルカリ類から選ばれる1種以上若しくはその水溶液等を用いることができ、更に、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤、界面活性剤、漂白剤、PH安定剤、キレート剤、分散剤などを補助的に用いることもできる。
【0035】
離解促進剤供給部183は、攪拌槽181の上方に離解促進剤の供給口を開閉可能に設けており、これにより攪拌槽181に貯留するパルプ懸濁液の液面が攪拌に伴って変動する場合あっても、各供給口を開閉するだけで離解促進剤を攪拌槽181に投入することができる。
【0036】
仮に、攪拌槽181の底部に離解促進剤の供給口が形成された場合には、離解促進剤供給部183の供給口に攪拌槽181内のパルプ懸濁液が流入し、水分が蒸発する等して離解途中の古紙が乾燥して固くなり、離解促進剤供給部183の供給口を詰まらせるといったことが生じる恐れがあるが、上記のように、攪拌槽181の上方に離解促進剤の供給口を開閉可能に設けた場合にはそのようなことは起こり得ない。給水部182についても同様である。
【0037】
攪拌槽181の底部には、古紙の裁断紙片61を給水部182から給水された水とともに攪拌し離解するための攪拌羽根184が設けられ、前記攪拌羽根184を回転駆動するモータ等の駆動手段188を有している。
【0038】
攪拌槽181には攪拌槽181内に貯留する再生パルプ、古紙の裁断紙片61、水、離解促進剤を含有するパルプ懸濁液を所定温度まで加温するためのヒータ186および温度センサ185を設けてある。尚、ヒータ186及び温度センサ185は、温度管理を行わない場合には設けなくて構わない。更に、攪拌槽181の底部には、パルパー18にて古紙6から製造された再生パルプ及び水等を含有するパルプ懸濁液を取り出すパルプ懸濁液取出部187を設けている。パルプ懸濁液取出部187は、ポンプ209a及び開閉弁208aを備えた配管207aに接続されており、パルプ懸濁液取出部187からポンプ209aにより取り出したパルプ懸濁液を開閉弁208aを介してニーダー19へ送るようになっている。
【0039】
ニーダー19は、再生パルプに混入しているトナー成分等を該再生パルプから分離させるように混練するものであり、公知のニーダー装置により構成される。
【0040】
(脱墨パルプ部)
図1に示すように、 脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21、脱墨部22、すすぎ部23を備え、各部の間には配管、ポンプ等からなる移送部(図示省略)を設けている。
【0041】
脱墨前希釈部21は、ニーダー19から送られたパルプ懸濁液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは0.1重量%〜5.0重量%程度、より好ましくは0.3重量%〜2.0重量%程度にまで希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤等を投入する希釈液供給部(図示省略)を備えている。
【0042】
繊維濃度が0.1重量%〜5.0重量%であることにより、後の脱墨部22においてトナー成分と脱墨剤とを効率よく接触させトナー成分等を容易に除去することができる。
【0043】
図3に脱墨部22の斜視図を、図4(a)に脱墨部22の平面図を、同図(b)に図4(a)のA−A線矢視断面図を示す。脱墨部22は、パルプ懸濁液に溶解又は混合されてなるインク成分、トナー成分等の印刷成分を分離して脱墨パルプを製造するためのものであり、パルプ懸濁液流通槽221、ブレード222及び気泡排出槽223を備えている。
【0044】
パルプ懸濁液流通槽221は、脱墨前希釈部21で希釈液の供給により所定濃度に調整されたインク成分、トナー成分等の印刷成分を含有するパルプ懸濁液を流通させるものである。パルプ懸濁液流通槽221内は、複数の仕切壁224により複数の脱墨室225に区画されており、図4(a)の平面図において示すように、仕切り壁224の左方または右方が交互に開口することで全ての脱墨室225は連通している。各脱墨室225の底部には、パルプ懸濁液流通槽221内を流通するパルプ懸濁液中に、微細な気泡を供給するための気泡供給部226を設けている。
【0045】
また、パルプ懸濁液流通槽221内のうち、パルプ懸濁液の流速が低下し該パルプ懸濁液が淀みやすい所定位置に淀んだパルプ懸濁液を攪拌し下流側へと流動させるための攪拌翼(図示省略)を配置している。攪拌翼としては種々のものがあるが、例えば複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の攪拌翼等が挙げられる。更に、パルプ懸濁液をパルプ懸濁液流通槽221内に流入させる流入部229aと、脱墨処理後生じた脱墨パルプを含有するパルプ懸濁液(脱墨パルプ液)をパルプ懸濁液流通槽221外に流出させる流出部229bとを設けている。
【0046】
また、各脱墨室225内のパルプ懸濁液の温度の検出を行う温度センサ227と、ヒータ228とを仕切壁224の表裏面にそれぞれ設けているが、パルプ懸濁液の温度管理を行わない場合には、温度センサ227及びヒータ228を設けない構成としても構わない。
【0047】
ブレード222は、パルプ懸濁液流通槽221の上部を浮遊する気泡を、パルプ懸濁液流通槽221の周壁を溢流させ気泡排出槽223側へ掃き出すためのものであり、パルプ懸濁液流通槽221の上方に設けられ、モータ222aの駆動によりガイドレール222bに案内されつつ往復移動するよう構成されている。
【0048】
図4(a)に示すように、気泡排出槽223は、パルプ懸濁液流通槽221の外周を取り囲むよう平面視ロ字状に設けられ、脱墨の際パルプ懸濁液流通槽221内で生じ、ブレード222により掃き出された気泡を一旦貯留するようになっている。図3,4(b)に示すように、気泡排出槽223には、気泡排出槽223内及びブレード222等に付着した気泡を洗い流すための水などの洗浄液を噴出する洗浄液噴出部223aを設けている。洗浄液噴出部223aは、気泡排出槽内の壁面の上段部及び中段部の全周に亘って複数配備されている。
【0049】
更に、気泡排出槽223は、生じた気泡を消滅させるための消泡部(図示省略)を備えていることが好ましい。消泡部は気泡を消滅させることができればその構造は限定されないが、例えば、消泡剤を添加するための消泡剤添加部、温風や熱風を供給する風供給部(図示省略)等が挙げられる。風供給部は気泡に温風又は熱風を吹き付けて気泡の水分を吹き飛ばすことで気泡を消滅させるものである。かかる風供給部を設ける場合には、風供給部からの温風や熱風を水分含有量の低い乾燥した温風又は熱風とすることがより好ましい。これにより、気泡の水分をより容易に吹き飛ばすことができるからである。
【0050】
図1に示すすすぎ部23は、脱墨部22において得られた脱墨パルプを含むパルプ懸濁液(脱墨パルプ液)中の脱墨剤を洗浄し除去するものであり、公知のすすぎ装置により構成される。パルプ懸濁液をすすぐことによって生じた廃液はすすぎ排水タンク52に送られるよう構成されている。
【0051】
(抄紙部)
抄紙部3は、すすぎ部23によるすすぎの終了したパルプ懸濁液を抄紙する図5に示す湿紙形成装置32と、抄紙により得られた湿紙64を脱水及び乾燥する図6に示す湿紙の脱水乾燥装置48とを備えた抄紙装置Sにより構成される。
【0052】
図5に示すように、湿紙形成装置32にはヘッドボックス31が設けられ、該ヘッドボックス31の上部は開口しており、下部にパルプ懸濁液の供給口31aが形成されている。パルプ懸濁液の供給口31aの幅方向両端部には、パルプ懸濁液を抄紙する抄紙ワイヤー323の両側縁部に沿って所定長さを有するガイド部材31bが片持ち支持されている。ガイド部材31bは、ヘッドボックス31から抄紙ワイヤー323上に供給されたパルプ懸濁液が抄紙ワイヤー323の側縁から外方に流れ落ちるのを防止するとともに、湿紙64の抄紙幅を所定長さとなるよう設定し、維持するようになっている。
【0053】
抄紙ワイヤー323は、 複数の回転ローラ321に掛け渡して展張され、無端軌道を形成している。また、上側の抄紙ワイヤー323aの下方には、抄紙ワイヤー323の網目から流下する水を受ける受水部325を設けている。受水部325は後述する排液処理部5の抄紙排水タンク54に接続されている。
【0054】
図6に示すように、湿紙の脱水乾燥装置48は、脱水部33及び乾燥部34を有し、脱水部33は抄紙ワイヤー323から転移された湿潤状態にある湿紙64を搬送する無端状の脱水用ベルト55と、前記脱水用ベルト55の内方に設置された第1脱水ローラ44と、前記脱水用ベルト55の第1脱水ローラ44の設置箇所に外接し、脱水用ベルト55から湿紙64を転移させ、乾燥部34に搬送する無端状の乾燥用ベルト56と、前記乾燥用ベルトの内方であって、第1脱水ローラ44の対向位置に設置された第2脱水ローラ45とを備えている。
【0055】
脱水用ベルト55は、例えば、フェルト等の吸水性を有する素材により構成され、複数の回転ローラ331に掛け渡されてなる。乾燥用ベルト56は、脱水部33と乾燥部34の双方に亘って配設されている。該乾燥用ベルト56は通水性を有する素材により構成されることが好ましく、例えば、網目状部材、複数の通水孔(図示省略)が形成された合成樹脂や金属部材等を用いることができる。網目状部材としてより詳しくは、天然繊維又は合成繊維よりなる布製メッシュ、金属製メッシュ、天然又は合成の樹脂製メッシュなどにより構成される。これらのうち通水性及び耐久性が高く、軽量、安価であるという点で天然繊維又は合成繊維よりなる布製メッシュが特に好ましい。
【0056】
乾燥用ベルト56が網目状部材又は通水孔の形成された部材である場合、その開孔率は、通水性がよく且つ湿紙64の転移が容易である点で、22%〜38%程度であることが好ましく、更に26%〜28%程度であることがより好ましい。
【0057】
また、乾燥用ベルト56が網目状部材よりなる場合、網目の粗さは例えば150メッシュ〜350メッシュ、好ましくは250メッシュ〜300メッシュとすることが好ましい。
網目の粗さを150メッシュより大きくすることで、乾燥用ベルト56の網目が粗すぎないために、脱水用ベルト55から乾燥用ベルト56への湿紙64の転移が容易となる。また、乾燥用ベルト56を構成する線条の直径を63μm程度より小さくし、網目状部材の厚さを105μm程度より薄くすることとなるので、乾燥用ベルト56の網目に保持される水分を少なくすることができ、乾燥部34における乾燥時間及び消費電力量を低減可能である。
【0058】
逆に、350メッシュより小さくすることで、乾燥用ベルト56を構成する線条の直径を30μm程度より大きくし、乾燥用ベルト56の厚さを45μm程度より厚くすることとし、乾燥用ベルト56の捩れや撓みなどを原因とする湿紙64の皺の発生を防止することができる。
【0059】
第1脱水ローラ44及び第2脱水ローラ45は脱水ローラ対334を構成している。脱水ローラ対334は脱水用ベルト55及び乾燥用ベルト56の当接箇所において当接面の両側より湿紙64を挟圧し両ベルト間に挟持された湿紙64を脱水しつつ脱水用ベルト55から乾燥用ベルト56に湿紙64を転移させるようになっている。
【0060】
また、脱水ローラ対334は、湿紙の搬送経路に沿って複数対配設され、上流側の脱水ローラ対334aによる挟圧を、下流側の脱水ローラ対334bの挟圧より低い圧力となるよう設定することが好ましい。
【0061】
乾燥用ベルト56の内方には吸水用ベルト47が設置されている。吸水用ベルト47は、フェルト等の吸水性を有する素材により無端状に形成され、周回する乾燥用ベルト56のうち少なくとも脱水ローラ対334の挟圧範囲において乾燥用ベルト56に内接するようになっている。そして、吸水用ベルト47の内方に第2脱水ローラ45が設置されることで、脱水ローラ対334によって脱水用ベルト55及び乾燥用ベルト56とともに吸水用ベルト47も挟圧するようになっている。
【0062】
また、脱水用ベルト55と、乾燥用ベルト56及び吸水用ベルト47とは、上流側の脱水ローラ対334aの設置箇所の直前から当接開始し、下流側の脱水ローラ対334bの設置箇所の直後で離間するようになっている。これにより、吸水性のある脱水用ベルト55に担持している間に湿紙64をある程度脱水し、含水率を若干低下させた後に乾燥用ベルト56に当接するようにすることで地合を比較的安定させることができる。一方、下流側の脱水ローラ対334bによる挟圧の直後に両ベルトが離間することにより、脱水効率を向上させることができる。
【0063】
更に、図6に示すように、脱水用ベルト55と、乾燥用ベルト56及び吸水用ベルト47とのなす角度γが比較的小さい所定角度とされ、これら上下のベルトが徐々に接近するよう配設されている。これにより、乾燥用ベルト56及び吸水用ベルト47が、脱水用ベルト55に担持された湿紙64に徐々に当接していくようにすることができる。
【0064】
この結果、抄紙ワイヤー323において一旦均一な層に形成され、脱水用ベルト55に転移された湿紙64を、この乾燥用ベルト及び吸水用ベルトに当接させたために上流側へと逆流させ、押し戻させて、繊維を乱れさせてしまうといったことがなく、湿紙64を搬送されてきたままの状態で脱水することができ、最終的に得られる再生紙7の地合を良好なものとすることができる。
【0065】
脱水ローラ対334の下方には受水皿57が設置され、脱水ローラ対334の脱水により生じた水を受けるようになっている。受水皿57は後述する排液処理部5の抄紙排水タンク54に接続されている。
【0066】
乾燥部34は、フード49が形成され、該フード49内に前記した乾燥用ベルト56が複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343に掛け渡されてなる。また、フード49内において該乾燥用ベルト56との間で湿紙64を挟持するよう乾燥用ベルト56に当接して走行する挟持用ベルト342が設けられている。
【0067】
挟持用ベルト342は例えば、布地、耐熱樹脂または金属等により構成されるが、乾燥用ベルト56のような通水性は必ずしも必要でない。複数の乾燥ローラ343は、内部にヒータ345を備えており、乾燥ローラ343の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0068】
(仕上げ部)
図1に示すように、仕上げ部4は、カレンダー部41及びカット部42を有しており、カレンダー部41は紙の平坦度を上げるための複数のプレスローラ(図示省略)を備え、カット部42は紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0069】
(排液処理部)
図1に示すように排液処理部5は、脱墨排水タンク53、すすぎ排水タンク52、抄紙排水タンク54の各槽体を有し、汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を行って無毒化した後製紙装置100の外部に排出するよう構成されている。汚染の程度が低く再利用が可能な抄紙排水タンク54、すすぎ排水タンク52内の排水は、フィルターを通してインク、トナー等を除去し、必要により薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、もう一度パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用可能に構成されている。
【0070】
(第1の実施形態の作用)
本実施形態にかかる製紙装置100の作用につき以下に説明する。
まず、図2に示すように、古紙6を古紙投入部11よりホッパー12内に投入すると、シュレッダー13が投入された古紙6を裁断処理して再生パルプの製造に適した所定の大きさに紙片化し、金属片除去部14がステープラーの針等の金属類を除去する。そして、シュレッダータンク16内に裁断された紙片を一時的に貯留する。
【0071】
シュレッダータンク16内に一定量以上の古紙の裁断紙片61を貯留する場合、二点鎖線で示すように、昇降手段152によって押圧部材151を降下し裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを低減させる。
【0072】
次に、排出装置164を作動して古紙の裁断紙片61を裁断紙量調整部17に徐々に投下し、投下された裁断紙片61の重量を計測する。そして、計測により得られた値が設定値に達した時点で排出装置164を停止し、裁断紙量調整部17を水平姿勢からパルパー18へ向けて傾斜させ、側壁171bを傾倒して古紙の裁断紙片61を攪拌槽181へ投入する。
【0073】
パルパー18では、古紙の裁断紙片61の攪拌槽181への投入に先立って予め投入される古紙の裁断紙片61の量に応じた量の水を、給水部182から供給しておき、駆動手段188を作動して攪拌羽根184を回転し、攪拌槽181内の水を攪拌しておく。このような状態で、上記のようにして攪拌槽181内へ古紙の裁断紙片61の投入を行う。これにより、古紙の裁断紙片61と水とを容易に混合することができる。そして、離解促進剤供給部183より離解促進剤を攪拌槽181に投入する。
【0074】
この離解促進剤供給部183からの攪拌槽181への離解促進剤の投入は、古紙の裁断紙片61の投入後、所定時間経過後に行うことが好ましい。これにより、まず水により裁断紙片61を十分膨潤させた後、膨潤した裁断紙片61の内部に離解促進剤を速やかに浸透させることができ、離解処理の時間を短縮可能である。
【0075】
そして、攪拌羽根184の回転により攪拌槽181内で古紙の裁断紙片61を攪拌してパルプ懸濁液を形成する。この間、必要により温度センサ185で攪拌槽181内の温度を検出し、温度ヒータ186を通電することで攪拌槽181内に貯留するパルプ懸濁液を離解処理に適する所定温度に維持するようにしてもよいが、このパルパー18での温度管理は必ずしも行わなくても構わない。
【0076】
パルパー18での滞留時間を長くすることにより古紙の裁断紙片61の離解の度合いが高くなり、逆に短くすることにより古紙6の離解の度合いが低くなる。このため単位処理量当たりの運転時間を可変調整することにより、パルパー18の離解の度合いを任意の度合いに設定することができ、この結果、処理時間の短縮を重視するか得られる再生紙7の品質を重視するかについてユーザーが任意に選択の上で、再生紙を製造することが可能となる。
【0077】
パルパー18において得られた再生パルプを含有するパルプ懸濁液をパルプ懸濁液取出部187より取り出した後、このパルプ懸濁液をニーダー19へ送り、再生パルプを混練し、混練後の再生パルプを含むパルプ懸濁液を、図1に示すように、脱墨パルプ部2へ送る。
【0078】
脱墨パルプ部2では、まず、パルプ懸濁液を脱墨前希釈部21において脱墨に適した繊維濃度になるよう希釈液供給部から希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤を投入してパルプ懸濁液の希釈を行う。次に、所定の繊維濃度に調整されたパルプ懸濁液を脱墨部22に送る。
【0079】
脱墨部22では、図3,4に示すパルプ懸濁液流通槽221に流入部229aから流入したパルプ懸濁液を、仕切壁224の左方または右方の開口から隣接する脱墨室225へ順次流通させる。各脱墨室225では脱墨剤の存在下、パルプ懸濁液中に気泡供給部226から微細な気泡を吹き込み、脱墨剤の存在によって、消失することなく多量に発生した気泡の表面にトナー粒子等の疎水性の異物を付着させて各脱墨室225の上部に浮上させる。また、必要により攪拌翼を作動し、再生パルプ流通槽221内のパルプ懸濁液の円滑な流通を促すようにする。
【0080】
親水性の繊維は、水とともに脱墨室225を順次流通していく。このようにしてパルプ懸濁液からトナー成分等を除去する脱墨を行う。その際、必要により温度センサ227でパルプ懸濁液の温度の検出を行い、ヒータ228でパルプ懸濁液を所定温度に維持するよう加熱する温度制御を行ってもよいが、この脱墨部22での温度管理は必ずしも行わなくても構わない。
【0081】
脱墨部22にパルプ懸濁液を導入した後、所定時間経過し、脱墨処理が進行して各脱墨室225の上部に気泡が浮遊した際に、モータ222aを駆動し、ガイドレール222bに案内させつつブレード222を図4(a)において上下方向に往復移動し、パルプ懸濁液流通槽221の上部に浮遊する気泡を気泡排出槽223に掃き出す。気泡排出槽223に掃き出された気泡は、洗浄液噴出部223aから噴出した洗浄液によって洗い流され、気泡排出槽223内に溜まった洗浄液、脱墨剤、トナー成分等を含む液体は脱墨排水タンク53に送られる。
【0082】
パルプ懸濁液流通槽221内の全ての脱墨室225にパルプ懸濁液を流通させ、パルプ懸濁液を脱墨して脱墨パルプを得て、得られた脱墨パルプを含むパルプ懸濁液(脱墨パルプ液)を流出部229bから流出させ、すすぎ部23に送り、パルプ懸濁液に洗浄液を噴射しパルプ懸濁液中の脱墨剤を洗浄する。すすぎを終了した脱墨パルプは、パルプ懸濁液中の繊維濃度を0.3〜1.0重量%程度となるように調整された上で、抄紙部3へ送られ、すすぎにより生じた液体は、すすぎ排水タンク52へ送られる。
【0083】
抄紙部3では、湿紙形成装置32において、ヘッドボックス31から走行する抄紙ワイヤー323上に、脱墨後の脱墨パルプを含むパルプ懸濁液をガイド部材31bに案内させつつ均一に供給し、水切りして水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64を形成する。抄紙ワイヤー323の下方に流下した水は受水部325に受水され、該受水部325から抄紙排水タンク54に送られる。
【0084】
抄紙ワイヤー323上の湿紙64が上側の抄紙ワイヤー323aの終端部に達した後傾斜設置された面に至ると、図6に示すように、脱水用ベルト55に転移され、脱水用ベルト55と、乾燥用ベルト56及び吸水用ベルト47との間に挟持され、脱水ローラ対334によって脱水用ベルト55及び乾燥用ベルト56の当接面の両側より挟圧し、湿紙64に含まれる水分を脱水する。
【0085】
脱水により生じた水分は、脱水用ベルト55が吸水性を有する場合には湿紙64上面より脱水用ベルト55に吸水される。さらに、乾燥用ベルト56が通水性を有する場合には、湿紙64の下面より乾燥用ベルト56を通水した後吸水用ベルト47に吸水され、脱水用ベルト56及び吸水用ベルト47の吸水可能量を超えて、過剰に生じた水分は受水皿57により受水される。受水皿57内の水は抄紙排水タンク54に送られる。
【0086】
この脱水ローラ対334の挟圧によって、湿紙64は脱水用ベルト55から乾燥用ベルト56に湿紙64を転移させる。脱水ローラ対334の挟圧の際、一般に、上流側の脱水ローラ対334aによる挟圧の時点では、下流側の脱水ローラ対334bによる挟圧の時点よりも湿紙64の含水率が高い状態である。上流側の脱水ローラ対334aの挟圧を下流側の脱水ローラ対334bよりも低い圧力とした場合には、挟圧により生じた水分を上流側の脱水ローラ対334aより下流側へも若干流出させて、湿紙64中の繊維成分が脱水ローラ対334aより上流側へと逆流するのを防止し、均一な繊維の層を形成可能として良好な地合を実現できる。
【0087】
一方、上流側の脱水ローラ対334aによって一旦比較的低い圧力で挟圧されある程度脱水された後、下流側の脱水ローラ対334bによって上流側の脱水ローラ対334aより高い圧力で挟圧する場合は、良好な地合を維持しつつ効率よく脱水することができるとともに、該湿紙64を乾燥し、仕上げした後に得られる再生紙の強度を向上させることができる。
【0088】
また、下流側の脱水ローラ対334bにより比較的高い圧力で挟圧することにより、上流側の脱水ローラ対334aの挟圧の際吸水し、水分を多く含んだ状態にある脱水用ベルト55及び吸水用ベルト47自体を脱水することができる。これにより、脱水用ベルト55及び吸水用ベルト47が相互に離間し湿紙64の搬送経路の上流側に周回した後、改めて湿紙64に当接する際、吸水能力の高い状態で当接できるので湿紙64の脱水効率を向上させることができる。
【0089】
乾燥用ベルト56に転移した湿紙64は、乾燥部34へと搬送され、フード49内において挟持用ベルト342に当接され、該挟持用ベルト342と乾燥用ベルト56との間に挟持されて搬送される。そして、ヒータ345により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ343に、乾燥用ベルト56及び挟持用ベルト342を介して当接されつつ搬送されることで、湿紙64の乾燥が行われ仕上げ前の再生紙65を得る。
【0090】
乾燥部34を出た仕上げ前の再生紙65は図1に示すカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラの間に通され、仕上げ前の再生紙の平坦度を向上させ、更に、カット部42で所定の大きさに裁断されて再生紙7が完成する。
【0091】
カット部42において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、図1に示すようにシュレッダー13又はシュレッダータンク16に戻され、再度再生紙の製造に利用される。
【0092】
各工程において排液処理部5へ送られた排水のうち汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を施した後製紙装置100の外部に排出する。汚染の程度が低く再利用が可能な抄紙排水タンク54、すすぎ排水タンク52内の排水は、必要によりフィルターを通してインク成分、トナー成分等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用する。
【0093】
以上より、本発明にかかる湿紙の脱水乾燥装置48は、湿潤状態にある湿紙64を搬送する無端状の脱水用ベルト55と、脱水用ベルト55の内方に設置された第1脱水ローラ44と、脱水用ベルト55の第1脱水ローラ44の設置箇所に外接し、脱水用ベルト55から転移させた湿紙64を乾燥部34に搬送する無端状の乾燥用ベルト56と、乾燥用ベルト56の内方であって、第1脱水ローラ44の対向位置に設置された第2脱水ローラ45とを備え、第1脱水ローラ44及び第2脱水ローラ45により脱水ローラ対334を構成し、脱水ローラ対334は、脱水用ベルト55及び乾燥用ベルト56の当接箇所において当接面の両側より湿紙64を挟圧し両ベルト間に挟持された湿紙64を脱水しつつ脱水用ベルト55から乾燥用ベルト56に転移させるので、湿紙64の脱水と転移とを脱水ローラ対334の挟圧によって同時に行うことができ、真空吸引装置等が不要となり湿紙の脱水乾燥装置48の小型化が可能である。また、挟圧によって脱水用ベルト55に担持された湿紙64を簡単、且つ確実に乾燥用ベルト56に転移させることができる。
【0094】
また、周回する乾燥用ベルト56のうち少なくとも脱水ローラ対334による挟圧範囲において乾燥用ベルト56に内接する無端状の吸水用ベルト47を設け、脱水ローラ対334は、乾燥用ベルト56と吸水用ベルト47との内接部分で、これら双方のベルトを脱水用ベルト55とともに挟圧するので、湿紙64を脱水用ベルト55から乾燥用ベルト56へ転移する際、脱水ローラ対334の挟圧により生じた水を吸水用ベルト47によって吸水することができ、湿紙64の脱水効率を格段に向上させることができる。
【0095】
そして、乾燥用ベルト56が通水性を有する部材により構成される場合には、脱水ローラ対334の脱水により生じた水分を乾燥用ベルト56を通水させて湿紙64から除去でき、脱水効率を向上させることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
本発明にかかる製紙装置の湿紙の脱水乾燥装置について第2の実施形態を以下に示す。尚、以下の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の構成については説明を省略する。図7は、第2の実施形態としての湿紙の脱水乾燥装置48Aの構成概略図である。上記第1の実施形態では、乾燥用ベルト56と吸水用ベルト47との脱水用ベルト55に対する外接開始箇所が上流側の脱水ローラ対334aの直前という同じ位置であったが、本第2の実施形態においては、乾燥用ベルト56aと吸水用ベルト47aとの、脱水用ベルト55aへの外接開始箇所を異ならせており、乾燥用ベルト56aの方が吸水用ベルト47aよりも湿紙64の搬送経路の上流側で脱水用ベルト55aに外接するようになっている。
【0097】
(第3の実施形態)
第3の実施形態としての湿紙の脱水乾燥装置48Bは、図8に示すように、脱水用ベルト55bが、抄紙ワイヤー323との当接箇所から、上流側の脱水ローラ対334aの設置箇所までの間が、水平方向に対し搬送方向下流側が下方に傾斜して配設されている。この結果、抄紙ワイヤー323から脱水用ベルト55bへの湿紙64の転移の前後において、抄紙ワイヤー323における湿紙64の搬送面と、脱水用ベルト55bにおける搬送面とのなす角度はαとなる。
【0098】
これに対し、上記第1の実施形態では脱水用ベルト55が湿紙64の搬送面の全体に亘って略水平に設置され、抄紙ワイヤー323における湿紙64の搬送面と、脱水用ベルト55における搬送面とのなす角度はθとなり、本第3の実施形態の角度αの方が角度θより小さくなっている。この角度α、θは、図8において、拡大して示すように、転移の際に湿紙64が回転ローラ331bの外周に沿って湾曲しつつ搬送される角度に相当するので、角度αを角度θより小さくすることで、湿紙64が回転ローラ331bの外周に沿って湾曲し、湿紙64の表裏両面で圧縮及び伸張がされることによって湿紙64の内部に亀裂が生じるのを少なくすることができる。この結果、転移の際の湿紙64の損傷を低減し、乾燥後得られる紙に皺等が発生し難くすることができる。
【0099】
(第4の実施形態)
第4の実施形態としての湿紙の脱水乾燥装置48Dは、図9に示すように、脱水用ベルト55dによって湿紙64を担持する範囲、及び乾燥用ベルト56dとともに湿紙64を挟持する範囲全体を水平方向より搬送方向下流側が上方となるよう傾斜させて配設している。そして、抄紙ワイヤー323dから脱水用ベルト55dへ湿紙64を転移する箇所を上側の抄紙ワイヤー323dの水平部分としている。
【0100】
本第4の実施形態の場合、前記第3の実施形態と同様に、抄紙ワイヤー323dにおける湿紙64の搬送面と、脱水用ベルト55dにおける搬送面とのなす角度βを比較的小さい角度、特に第1の実施形態の角度θより小さい角度とし、転移の際に湿紙64が回転ローラ331dの外周に沿って湾曲しつつ搬送され圧縮及び伸張されことによって湿紙64の内部に亀裂が生じるのを少なくすることができる。
【0101】
更に、抄紙ワイヤー323dの水平部分において湿紙64を転移させるので、第1〜3の実施形態のように、抄紙ワイヤー323dに搬送方向下流側が下方に傾斜する傾斜面を形成しなくても転移の前後搬送面のなす角度αを小さくすることができる。このように抄紙ワイヤー323dの水平部分で湿紙64を転移すれば抄紙ワイヤー323dを掛け渡す回転ローラ321dの個数を少なくすることができ、製造コストの節約及び占有面積の狭小化が可能である。
【0102】
(第5の実施形態)
第5の実施形態としての湿紙の脱水乾燥装置48Eは、図10に示すように、乾燥部34eを抄紙部32e及び脱水部33eより上方に配置し、乾燥用ベルト56eを脱水用ベルト55eより上方に配設してなる。そして、脱水用ベルト55eを略三角形状に周回するよう配設し、傾斜して形成された搬送面において脱水用ベルト55eを乾燥用ベルト56e及び吸水用ベルト47eに当接させ、両ベルトの当接面の両側に設置された脱水ローラ対334eによって湿紙64を挟圧するようになっている。
【0103】
これより、抄紙ワイヤー323eより脱水用ベルト55eに転移された湿紙64は、まず脱水用ベルト55eに担持されつつ略水平方向に搬送された後、搬送方向を上向きに変更された後、乾燥用ベルト56e及び吸水用ベルト47eに当接し、脱水用ベルト55dとの間で挟持され、当接面の両側から脱水ローラ対334eによって挟圧される。
【0104】
第5の実施形態にかかる湿紙の脱水乾燥装置48Eは、抄紙部32e、脱水部33e及び乾燥部34eを上下方向に配設するので、該湿紙の脱水乾燥装置48Eの水平方向の長さを短くすることが可能である。
【0105】
尚、上記各実施形態では、乾燥用ベルト56の内方に吸水用ベルト47を設けたが、本発明にかかる湿紙の脱水乾燥装置は、これに限定されず、吸水用ベルトを設置しない構成であってもよく、吸水用ベルト47に替えて外周面に吸水性を有する層を形成したローラ等の吸水ローラを設けることとしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態1では脱墨パルプ部2を設けた製紙装置100を示したが、これに限定されず、脱墨パルプ部2を設けない構成をしてもよい。このように脱墨パルプ部2を設けない場合には、製紙装置が古紙を原料とする再生紙製造装置である時はヘッドボックスに供給され、抄紙ワイヤーにより抄紙されるパルプ懸濁液は印刷成分を含有した状態のものものとなる。
【符号の説明】
【0107】
S 抄紙装置
32 湿紙形成装置
334,334e 脱水ローラ対
44 第1脱水ローラ
45 第2脱水ローラ
47,47a,47e 吸水用ベルト
55,55a,55b,55d,55e 脱水用ベルト
56,56a,56d,56e 乾燥用ベルト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤状態にある湿紙を搬送する無端状の脱水用ベルトと、
前記脱水用ベルトの内方に設置された第1脱水ローラと、
前記脱水用ベルトの第1脱水ローラの設置箇所に外接し、脱水用ベルトから転移させた湿紙を乾燥部に搬送する無端状の乾燥用ベルトと、
前記乾燥用ベルトの内方であって、第1脱水ローラの対向位置に設置された第2脱水ローラとを備え、
第1脱水ローラ及び第2脱水ローラにより脱水ローラ対を構成し、
該脱水ローラ対は、脱水用ベルト及び乾燥用ベルトの当接箇所において当接面の両側より湿紙を挟圧し両ベルト間に挟持された湿紙を脱水しつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトに転移させることを特徴とする湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項2】
周回する乾燥用ベルトのうち少なくとも脱水ローラ対による挟圧範囲において乾燥用ベルトに内接する無端状の吸水用ベルトを設け、
脱水ローラ対は、前記乾燥用ベルトと吸水用ベルトとの内接部分で、これら双方のベルトを脱水用ベルトとともに挟圧することを特徴とする請求項1に記載の湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項3】
乾燥用ベルトは、通水性を有する部材により構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項4】
乾燥用ベルトは、網目状部材又は通水孔の形成された部材により構成され、開口率が22%〜38%に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項5】
乾燥用ベルトは、網目状部材により構成され、網目の粗さは150メッシュ〜350メッシュに設定されている請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項6】
乾燥用ベルトは、網目状部材により構成され、網目を構成する繊維の太さは直径30μm〜50μmに設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項7】
脱水ローラ対が、湿紙の搬送経路に沿って複数対配設され、上流側の脱水ローラ対による挟圧を、下流側の脱水ローラ対の挟圧より低い圧力となるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置。
【請求項8】
パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーにより抄紙して湿紙を形成する湿紙形成装置と、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の湿紙の脱水乾燥装置とを備えた抄紙装置。
【請求項9】
パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーにより抄紙して湿紙を形成し、
得られた湿紙を抄紙ワイヤーより脱水用ベルトに転移して脱水部に搬送し、
脱水部において前記脱水用ベルトと、該脱水用ベルトに外接する乾燥用ベルトとの間で湿紙を挟持し脱水ローラ対により挟圧して脱水しつつ脱水用ベルトから乾燥用ベルトに転移し、
転移した湿紙を乾燥用ベルトにより乾燥部へ搬送し、
乾燥部において湿紙を乾燥させることを特徴とする抄紙方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−69015(P2011−69015A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220878(P2009−220878)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】