説明

湿紙の脱水装置及び古紙再生処理装置

【課題】湿紙の脱水に大掛かりな装置を必要とせず、装置の小型化を可能する湿紙の脱水装置及び古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】湿紙の脱水装置Pは、湿潤状態にある湿紙64を挟持し搬送する一対の無端状脱水ベルト10と、前記一対の脱水ベルト10の内方にそれぞれ設置され、一対の脱水ベルト10により挟持された湿紙64を前記脱水ベルト10を介して狭圧する一対のプレスローラ16,17とを備え、脱水ベルト10のうち少なくとも一方は通水性を有する素材により形成され、該通水性を有する素材により形成される脱水ベルト10の内方に設置されたプレスローラ17の外周面には、湿紙64を挟圧することにより生じた水分を吸収する吸水部37を設けてなる湿紙の脱水装置Pであって、一対のプレスローラ16,17の湿紙挟持圧力を、解除又は増減する挟持圧力可変手段27を設けた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿紙の脱水装置及び古紙再生処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙原料液を抄紙し得られた湿紙を脱水し、乾燥する湿紙の脱水装置が知られており、下記特許文献1には、フェルト等により構成され、吸水性を有する上下一対の脱水ベルトの間に湿紙を挟持し、挟持された湿紙をサクションローラによって吸引挟圧し脱水する技術が開示されている。
【0003】
この脱水装置は、サクションローラにより吸引しつつ挟圧し脱水するための非常に大掛かりな吸引装置を用いているので、この吸引装置を設置するために大きな空間を必要とし、古紙再生処理装置全体の大型化の原因となっている。
【0004】
そこで、下記特許文献2では、サクションローラに替えて、脱水層を備えたプレスローラにより脱水を行っている。脱水層は、湿紙の挟圧により生じた水分を吸水することができるので、大掛かりな吸引装置を設置する必要がなく、装置を小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平9−506937号公報
【特許文献2】特開2008−174877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の脱水装置では、プレスローラによる湿紙の脱水の際の挟持圧力の調整ができず、運転条件に応じて挟持圧力を変更し、効率よく脱水することができなかった。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、湿紙の脱水に大掛かりな装置を必要とせず、装置の小型化を可能とし、脱水効率を向上できる湿紙の脱水装置及び古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の湿紙の脱水装置は、湿潤状態にある湿紙を挟持し搬送する一対の無端状脱水ベルトと、前記一対の脱水ベルトの内方にそれぞれ設置され、一対の脱水ベルトにより挟持された湿紙を前記脱水ベルトを介して狭圧する一対のプレスローラとを備え、脱水ベルトのうち少なくとも一方は通水性を有する素材により形成され、該通水性を有する素材により形成される脱水ベルトの内方に設置されたプレスローラの外周面には、湿紙を挟圧することにより生じた水分を吸収する吸水部を設けてなる湿紙の脱水装置であって、一対のプレスローラの湿紙挟持圧力を、解除又は増減する挟持圧力可変手段を設けた構成にしてある。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の湿紙の脱水装置において、挟持圧力可変手段は、プレスローラの回転軸を軸支し、ガイドに案内されつつ装置フレームに摺接する挟持用摺接板と、挟持用摺接板を装置フレームに沿って摺動させる挟持用摺動駆動部とを備えている。
【0010】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の湿紙の脱水装置において、吸水部を設けたプレスローラに圧接し、吸水部に含まれる水分を搾り出す搾り部材を備えるものである。
【0011】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の湿紙の脱水装置において、吸水部を設けたプレスローラに対する搾り部材の押圧力を、解除又は増減する搾り圧力可変手段を備えたものである。
【0012】
更に、請求項5に記載の発明は、至請求項4に記載の湿紙の脱水装置において、搾り圧力可変手段は、プレスローラ及び搾り部材のうち少なくとも一方を装置フレームに沿って摺動する搾り用摺接板と、搾り用摺接板を装置フレームに沿って摺動させる搾り用摺動駆動部とを備えている。
【0013】
更に、請求項6に記載の発明は、古紙を給水部から供給された水とともに攪拌し、古紙パルプ液を製造する古紙パルプ液製造装置と、前記古紙パルプ液製造装置で製造された古紙パルプ液を抄紙ワイヤーにより抄紙し、湿紙を形成する湿紙形成装置と、湿紙形成装置により形成された湿紙を脱水する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水装置とを一体に備えた古紙再生処理装置に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の湿紙の脱水装置は、一対のプレスローラの湿紙挟持圧力を、解除又は増減する挟持圧力可変手段を設けているので、プレスローラにより湿紙の脱水の際の挟持圧力を最適な大きさに設定でき、吸引手段を用いなくても十分に脱水でき、脱水効率を向上できる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、挟持圧力可変手段は、プレスローラの回転軸を軸支し、ガイドに案内されつつ装置フレームに摺接する挟持用摺接板と、挟持用摺接板を装置フレームに沿って摺動させる挟持用摺動駆動部とを備えているので、プレスローラの湿紙挟持圧力を最適な大きさに調整する際に、簡単な構造の手段を用いて容易に行うことができる。
できる。
【0016】
そして、請求項3に記載の発明によれば吸水部を設けたプレスローラに圧接し、吸水部に含まれる水分を搾り出す搾り部材を備えたので、プレスローラの吸水部から容易に水分を搾り出すことができ、吸水部の吸水性を簡単に回復することが可能である。
【0017】
更に、請求項4に記載の発明によれば、吸水部を設けたプレスローラに対する搾り部材の押圧力を、解除又は増減する搾り圧力可変手段を備えたので、プレスローラに対する搾り部材の押圧力を最適な大きさに容易に設定でき、脱水効率を向上できる。
【0018】
更に、請求項5に記載の発明によれば、搾り圧力可変手段は、プレスローラ及び搾り部材のうち少なくとも一方を装置フレームに沿って摺動する搾り用摺接板と、搾り用摺接板を装置フレームに沿って摺動させる搾り用摺動駆動部とを備えたので、搾り部材のプレスローラに対する押圧力を、簡単な構造より容易に増減し、調整することができる。
【0019】
更に、請求項6に記載の発明によれば、古紙を給水部から供給された水とともに攪拌し、古紙パルプ液を製造する古紙パルプ液製造装置と、前記古紙パルプ液製造装置で製造された古紙パルプ液を抄紙ワイヤーにより抄紙し、湿紙を形成する湿紙形成装置と、湿紙形成装置により形成された湿紙を脱水する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水装置とを一体に備えたので、プレスローラによる湿紙の挟持圧力を調整することができ、湿紙の脱水効率を向上可能である。また、得られる再生紙の品質を向上できるとともに、古紙再生処理装置の運転停止時に、一対のプレスローラの圧力を解除することで、プレスローラの吸水部を復元し、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙再生処理装置の構成概略図である。
【図2】前記古紙再生処理装置の古紙パルプ液製造部の内部構造を示す概略図である。
【図3】前記古紙再生処理装置の脱墨処理部の平面図及び断面図である。
【図4】前記古紙再生処理装置のワイヤー装置の構成概略図である。
【図5】前記古紙再生処理装置の湿紙の脱水装置の構成概略図である。
【図6】前記古紙再生処理装置の湿紙の乾燥装置の構成概略図である。
【図7】前記脱水装置の部分拡大図である。
【図8】前記脱水装置のプレスローラ、搾り部材、挟持圧力可変手段及び搾り圧力可変手段の分解斜視図である。
【図9】前記脱水装置の挟持圧力及び搾り圧力を解除した状態の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる古紙再生処理装置の構成概略図である。図1において、古紙再生処理装置100は、古紙パルプ液製造部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排液処理部5、制御部(図示省略)を一体的に備えるものである。
【0022】
古紙パルプ液製造部1は、古紙6を離解して古紙パルプを製造するものであり、脱墨パルプ部2は、古紙パルプ液製造部1において製造された古紙パルプを脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨パルプ部2において得られた脱墨パルプを抄紙するものであり、仕上げ部4は、抄紙部3において抄紙された仕上げ前の再生紙を裁断等することにより仕上げを行って再生紙7を得るものである。
【0023】
(古紙パルプ液製造部)
図2は、古紙パルプ液製造部1の内部構造を示す概略図である。古紙パルプ液製造部1は、古紙パルプ液製造装置Wにより構成され、パルパー18を備えている。該パルパー18は古紙6を水及び離解促進剤の液体中において、繊維、つまり古紙パルプにまで離解させるものである。
【0024】
パルパー18には、古紙6が投入される攪拌槽181と、攪拌槽181に給水するための給水部182と、離解促進剤供給部183とを設けている。離解促進剤供給部183から供給される古紙6の離解を促進する離解促進剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができ、更に、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤、界面活性剤、漂白剤、PH安定剤、キレート剤、分散剤などを補助的に用いることもできる。
【0025】
攪拌槽181の底部には、古紙6を給水部182から給水された水とともに攪拌し離解するための攪拌羽根184が設けられ、前記攪拌羽根184を回転駆動するモータ等の駆動手段188を有している。また、得られた古紙パルプ液を取り出すための古紙パルプ液取出部187を設けている。
【0026】
(脱墨パルプ部)
図1に示すように、 脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21及び脱墨処理部22を備え、各部の間には配管、ポンプ等からなる移送部(図示省略)を設けている。
【0027】
脱墨前希釈部21は、パルパー18から送られた古紙パルプ液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは0.1重量%〜5.0重量%程度、より好ましくは0.3重量%〜2.0重量%程度にまで希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤等を投入する希釈液供給部(図示省略)を備えている。脱墨前希釈部21において繊維濃度を0.1重量%〜5.0重量%とすることにより、後の脱墨処理部22においてトナー成分と脱墨剤とを効率よく接触させトナー成分等を容易に除去することができる。
【0028】
図3(a)に脱墨処理部22を構成する脱墨処理装置Bの平面図を、同図(b)に図3(a)のA−A線矢視断面図を示す。脱墨処理装置Bは、古紙パルプ液に溶解又は混合されてなるインク成分、トナー成分等の印刷成分を分離して脱墨パルプを製造するためのものであり、脱墨槽221、ブレード222、オーバーフロー槽223を備えている
【0029】
脱墨槽221は、脱墨前希釈部21で希釈液の供給により所定濃度に調整されたインク成分、トナー成分等の印刷成分を含有する古紙パルプ液を流通させるものである。脱墨槽221内は、複数の仕切壁224により複数の脱墨室225に区画されており、図3(a)の平面図において示すように、仕切壁224の左方または右方が交互に開口することで全ての脱墨室225は連通している。図3(b)に示すように、各脱墨室225の底部には、脱墨槽221内を流通する古紙パルプ液中に、微細な気泡を供給するための気泡供給部226を設けている。
【0030】
また、脱墨槽221内のうち、古紙パルプ液の流速が低下し該古紙パルプ液が淀みやすい所定位置に淀んだ古紙パルプ液を攪拌し下流側へと流動させるための攪拌翼(図示省略)を配置している。攪拌翼としては種々のものがあるが、例えば複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の攪拌翼等が挙げられる。更に、古紙パルプ液を脱墨槽221内に流入させる流入部229aと、脱墨処理後生じた脱墨パルプを含有する脱墨パルプ液を脱墨槽221外に流出させる流出部229bとを設けている。
【0031】
また、各脱墨室225内の古紙パルプ液の温度の検出を行う温度センサ227と、ヒータ228とを仕切壁224の表裏面にそれぞれ設けているが、古紙パルプ液の温度管理を行わない場合には、温度センサ227及びヒータ228を設けない構成としても構わない。
【0032】
ブレード222は、脱墨槽221の上方に設けられ、モータ222aの駆動によりガイドレール222bに案内されつつ往復移動するもので、脱墨槽221の上部を浮遊する気泡を、脱墨槽221の周壁を溢流させオーバーフロー槽223側へ掃き出すためのものである。
【0033】
図3(a)に示すように、オーバーフロー槽223は、脱墨槽221の外周を取り囲むように設けられ、気泡供給部226から古紙パルプ液中に供給された気泡が脱墨槽221から溢流した際にこの気泡を受け止めるものである。図3(b)に示すように、オーバーフロー槽223には、オーバーフロー槽223の内壁面に付着した気泡や繊維を洗い流し、消泡するための液体供給手段211を設けている。液体供給手段211は、オーバーフロー槽223の内壁面の上段部及び中段部に全周に亘って配備された液体供給配管212を備えており、この液体供給配管212には複数の液体供給口213が所定間隔で形成されている。
【0034】
液体供給配管212は、水道水を供給する水道水供給部(図示省略)及び後述する白水を貯留する白水タンク54に接続され、制御部が制御することで、これらのうちいずれかから液体が供給されるようになっている。
【0035】
更に、オーバーフロー槽223は、必要により、生じた気泡に温風又は熱風を吹き付けて気泡の水分を吹き飛ばすことで気泡を消滅させる風供給部(図示省略)等を備えることとしてもよい。
【0036】
オーバーフロー槽223の底部には、オーバーフロー槽223内に集められた液体を取り出す取出部214を設けている。オーバーフロー槽223内に集められた液体とは、液体供給口213から供給された消泡液または洗浄液の少なくともいずれかと、気泡の消滅により生じた、脱墨槽221から気泡とともに溢流した水、インク成分やトナー成分等の印刷成分及び古紙パルプ等を含有する液とが混合された排液である。取出部214に接続された配管(図示省略)は図1に示す排液タンク53に接続されている。
【0037】
(抄紙部)
抄紙部3は、脱墨の終了した古紙パルプ液を抄紙する図4に示すワイヤー部32と、図5に示す脱水部33と、図6に示す乾燥部34とを備えた抄紙装置Sにより構成される。ワイヤー部32は湿紙形成装置Kにより構成され、該ワイヤー部32にはヘッドボックス31が設けられ、該ヘッドボックス31の上部は開口しており、下部に古紙パルプ液の供給口31aが形成されている。古紙パルプ液の供給口31aの幅方向両端部には、古紙パルプ液を抄紙する抄紙ワイヤー323の両側縁部に沿って所定長さを有するガイド部材31bが片持ち支持されている。ガイド部材31bは、ヘッドボックス31から抄紙ワイヤー323上に供給された古紙パルプ液が抄紙ワイヤー323の側縁から外方に流れ落ちるのを防止するとともに、湿紙64の抄紙幅を所定長さとなるよう設定し、維持するようになっている。
【0038】
抄紙ワイヤー323は、 複数の回転ローラ321に掛け渡して展張され、無端軌道を形成している。また、上側の抄紙ワイヤー323aの下方には、抄紙ワイヤー323の網目から流下する水を受ける受水部325を設けている。受水部325は、図1に示す後述する排液処理部5の白水タンク54に接続されている。
【0039】
図5に示すように、脱水部33は脱水装置Pにより構成され、脱水ベルト10と、プレスローラ15と、搾り部材24と、挟持圧力可変手段27と、搾り圧力可変手段29と、受水部30とを備えている。脱水ベルト10は、抄紙ワイヤー323から転移された湿潤状態にある湿紙64を搬送する上側の無端状脱水ベルト11と、前記脱水ベルト11に一部が当接し走行する下側の脱水ベルト12とを備えている。上側の脱水ベルト11は、金属製や合成樹脂製等の平滑ベルトといった通水性をほとんど有しない素材により構成されている。一方、下側の脱水ベルト12は、布地、ワイヤーや穿孔素材等の通水性を有する素材により形成され、特に、例えば、フェルト等の通水性のみならず吸水性をも有する素材により形成されることが湿紙64の脱水効率を向上させる点で好ましい。上側の脱水ベルト11及び下側の脱水ベルト12は複数の回転ローラ35に掛け渡されている。
【0040】
プレスローラ15は、上下に対向配置された一対のプレスローラ16,17が湿紙64の搬送方向に沿って複数並設されている。上側のプレスローラ16は、いずれも上側の脱水ベルト11の内方に設置され、上側の脱水ベルト11を介して湿紙64を上方より押圧する。この上側のプレスローラ16は、金属製や強化合成樹脂製等の剛性を有する部材により形成され、湿紙64の搬送方向に沿って両側方に立設された装置フレーム36に回動自在に軸支されている。
【0041】
下側のプレスローラ17は、いずれも上側のプレスローラ16の各対向位置であって、下側の脱水ベルト12の内方に設置され、下側の脱水ベルト12を介して湿紙64を下方より押圧する。図7に示すように、この下側のプレスローラ17の外周面には、湿紙64を挟圧することにより生じた水分を吸収する吸水部37を設けてなる。吸水部37は、例えば、微細な多数の連続気泡を備えた発泡ポリウレタン等の合成樹脂を円筒状に形成し、回転軸44に装着したものや、フェルト等の布地を回転軸44に巻回してなるものなどが挙げられる。
【0042】
図5に示すように、搾り部材24は、下側のプレスローラ17に圧接し、吸水部37に含まれる水分を搾り出すものであり、金属製や合成樹脂製等の剛性を有し外周面が平滑な部材により形成され、本実施形態における搾り部材24は、回転軸50を軸心に回転可能に設置された搾りローラ25により構成されている。尚、搾りローラ25を上記金属製等の部材に替えてパンチングメタル等の穿孔板材を円筒状に形成してなるローラを用い搾水することも可能である。
【0043】
下側のプレスローラ17の各回転軸44は装置フレーム36外へ延びた一端が互いに複数の無端状のベルト(図示省略)で連結され、モータ(図示省略)に連結されて回転させられる。上側のプレスローラ16及び搾りローラ25は下側のプレスローラ17の回転により従動する。
【0044】
挟持圧力可変手段27は、一対のプレスローラ16,17の湿紙挟持圧力を、解除又は増減するものであり、本実施形態では、下側のプレスローラ17の設置高さを昇降することで、上側のプレスローラ16に対する押圧力を可変としている。また、搾り圧力可変手段29は、吸水部37を設けたプレスローラ15に対する搾り部材24の押圧力を、解除又は増減するものであり、搾り部材24の設置高さを昇降することで、下側のプレスローラ17に対する押圧力を可変としている。
【0045】
図7に、上下のプレスローラ16,17、搾り部材25、挟持圧力可変手段27及び搾り圧力可変手段29の拡大図を、図8にこれらの分解斜視図を示す。挟持圧力可変手段27は装置フレーム36の外面に摺接する挟持用摺接板48と、挟持用摺接板48を装置フレーム36に沿って摺動させる挟持用摺動駆動部49とを備えている。搾り圧力可変手段29は、プレスローラ16,17及び搾り部材24のうち少なくとも一方を装置フレーム36に沿って摺動する搾り用摺接板51と、搾り用摺接板51を装置フレーム36に沿って摺動させる搾り用摺動駆動部52とを備えている。本実施形態では、搾り圧力可変手段29は、下側のプレスローラ17に対し搾り部材24を摺動するようになっている。
【0046】
挟持用摺接板48は装置フレーム36の外面に摺接し、搾り用摺接板51は、挟持用摺接板48の外面に摺接する。これら挟持用摺接板48及び搾り用摺接板51は、ともにガイド56によって案内され、個別に上下方向に摺動可能となっている。ガイド56は装置フレーム36に螺子57により螺合され、また、装置フレーム36に設けた突部58に孔部59が嵌合することにより固定されている。
【0047】
挟持用摺接板48の上部には下側のプレスローラ17の回転軸44を軸支するベアリング45が設置されている。下側のプレスローラ17の回転軸44は、装置フレーム36に形成された開口部46に挿通された後、前記ベアリング45により回動自在に軸支されている。挟持用摺接板48の下部には搾りローラ25の回転軸50が挿通する上下方向に長い長孔61が形成されている。挟持用摺接板48の下端部には、略直角に屈曲し外方に突出して形成された屈曲部62を備えている。屈曲部62の両端部近傍には、挟持用摺動駆動部49の一部を構成する案内棒挿通孔63が上下方向に貫通して形成され、下方より案内棒66が挿通するようになっている。また、屈曲部62の上面の略中央部には搾り用摺動駆動部52の一部を構成する挿通孔86が下方向に貫通して形成され、下方より搾り圧力可変螺子68が挿通するようになっている。
【0048】
挟持用摺動駆動部49は、前記案内棒挿通孔63に加え、コイルバネ70、案内棒66、基台71、昇降台72、挟持圧力可変螺子74及びモータ75を備えている。コイルバネ70は、内部に案内棒66が挿通され、上端部が屈曲部62の下面に当接する。基台71及び昇降台72は、挟持用摺接板48の下方に配備される。基台71は、2本の案内棒66の間に配設され、装置フレーム36との当接面より外方に向け貫通して形成された螺子孔77を設けている。螺子孔77は、装置フレーム36に挿通された固定用ボルト78が螺合することで、該基台71は装置フレーム36に固定されている。また、基台71上面の中央部には、下向きに貫通して螺子孔82が形成されている。該螺子孔82は、挟持用摺接板48を昇降するための挟持圧力可変螺子74が下方より挿通され、螺合するようになっている。
【0049】
昇降台72は、基台71の下方に配設され、昇降台72の上面の両端部近傍に案内棒66が立設され、上面の中央部には下向きに貫通して挟持圧力可変螺子74が挿通する挿通孔80が形成されている。昇降台72の下面には、スラストベアリング81が固設され、該スラストベアリング81の下面に挟持圧力可変螺子74のキャップ部83が固着されている。
【0050】
挟持圧力可変螺子74は、六角孔つきボルトにより構成され、キャップ部83の下面にモータ75が接続されている。モータ75は、モータ支持部材85に螺子88,89が挿通され、案内棒66の下部及びモータ75に各々螺合することで昇降台72の下面に垂下されている。
【0051】
モータ75の駆動によって、挟持圧力可変螺子74が回動し、基台71の螺子孔82内を挟持圧力可変螺子74が螺進することで、装置フレーム36に固定された基台71に対し、昇降台72が近接し、また離間する。昇降台72の昇降に伴って案内棒66が昇降し、2本のコイルバネ70の付勢により屈曲部62を押し上げた際に、挟持用摺接板48を上昇させ、下側のプレスローラ17と上側のプレスローラ16との挟持圧力を高める。逆に、昇降台72が基台71より離間すると、2本のコイルバネ70の付勢を原因とする屈曲部62を押し上げる力が弱まり、挟持用摺接板48を降下させ、下側のプレスローラ17と上側のプレスローラ16とによる湿紙64の挟持圧力を低くする。下側のプレスローラ17が上側のプレスローラ16から離間することで、上下のプレスローラ16、17の湿紙挟持圧力が解除される。
【0052】
搾り用摺動板51には、搾りローラ25の回転軸50を軸支するベアリング55が設けられている。そして、搾りローラ25の回転軸50は、装置フレーム36の開口部46及び挟持用摺接板48の長孔61に挿通された後、この搾り用摺接板51に設けたベアリング55により軸支されている。搾り用摺動板51の下部には、下方に突出して螺子孔79が形成され、下方より搾り圧力可変螺子68が挿通し、螺合する。
【0053】
搾り用摺動駆動部52は、前記螺子孔79に加え、搾り圧力可変螺子68、モータ69を備えている。搾り圧力可変螺子68は、上部が屈曲部62の挿通孔86に挿通された後、搾り用摺接板51の螺子孔79内に螺合し、下端部がモータ69に接続さている。モータ69はモータ支持部材73を介して螺子90がモータ69の上面に螺着することで屈曲部62の下面に垂下されている。モータ69の駆動により搾り圧力可変螺子68が搾り用摺接板51の螺子孔79内を螺進し上昇することで、下側のプレスローラ17と搾りローラ25の軸心間の距離を短くし、下側のプレスローラ17に対する搾りローラ25の押圧力を高くする。逆に、搾り圧力可変螺子68の回転により搾り用摺接板51を下降し、下側のプレスローラ17と搾りローラ25の軸心間の距離を長くすることで、下側のプレスローラ17に対する搾りローラ25の押圧力を低くする。搾りローラ25が下側のプレスローラ17から離れた場合には、下側のプレスローラ17に対する搾りローラ25の押圧力が解除されることとなる。
【0054】
図9に、挟持圧力可変手段27及び搾り圧力可変手段29を操作し、上側のプレスローラ16に対する下側のプレスローラ17の湿紙挟持圧力、及び下側のプレスローラ17に対する搾りローラ25の押圧力をいずれも解除した状態を示す。同図に示すように、挟持用摺動駆動部49を駆動し、装置フレーム36、ガイド部材56及び基台71に対し、挟持用摺接板48、案内棒66、昇降台72及びモータ75等を降下し、下側のプレスローラ17を上側のプレスローラ16から離間して挟持圧力を解除する。そして、搾り用摺動駆動部52を駆動し、挟持用摺接板48に対し、搾り用摺接板51を降下し、下側のプレスローラ17に対する搾りローラ25の押圧力を解除する。
【0055】
搾りローラ25の下方には、受水部30が設けられ、湿紙64をプレスローラ15により挟圧することにより生じた水分、及び搾り部材24によって吸水部37から搾り出された水分を受け止めるようになっている。受水部30は図1に示す白水タンク54に接続されている。
【0056】
図6に示すように、乾燥部34は、湿紙の乾燥装置Rにより構成され、フード341内に複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343を配置し、この複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343の間に掛け渡した乾燥用ベルト342を上下一対備えている。乾燥用ベルト342の材質は特に限定されず、例えば、布地、耐熱樹脂または金属等とし、上下の乾燥用ベルト342は一部が当接した状態で走行し、上下の乾燥用ベルト342の当接箇所に複数の乾燥ローラ343が配置されている。乾燥ローラ343は、内部にヒータ345を備えるとともに、外周面に乾燥用ベルト342を巻回しており、また、乾燥ローラ343の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0057】
(仕上げ部)
図1に示すように、仕上げ部4は、カレンダー部41及びカット部42を有しており、カレンダー部41は紙の平坦度を上げるための複数のプレスローラ(図示省略)を備え、カット部42は紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0058】
(排液処理部)
図1に示すように排液処理部5は、排液タンク53、白水タンク54の各槽体を有し、汚染の程度が高く再利用が困難な排液タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を行って無毒化した後古紙再生処理装置100の外部に排出するよう構成されている。汚染の程度が低く再利用が可能な白水タンク54内の排水は、必要によりフィルターを通してインク、トナー等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、もう一度パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用可能に構成されている。
【0059】
(第1の実施形態の作用)
本実施形態にかかる古紙再生処理装置100の作用につき以下に説明する。
まず、図2に示すように、古紙6をパルパー18に投入する。パルパー18では、投入される古紙6の量に応じて予め給水部182から所定量の給水をしておき、駆動手段188を作動して攪拌羽根184を回転し、攪拌槽181内の水を攪拌しておく。このような状態で、上記のようにして攪拌槽181内へ古紙6を投入する。そして、離解促進剤供給部183より離解促進剤を攪拌槽181に投入する。
【0060】
攪拌羽根184の回転により攪拌槽181内で古紙6を攪拌して古紙パルプ液を形成する。パルパー18において得られた古紙パルプを含有する古紙パルプ液を古紙パルプ液取出部187より取り出した後、図1に示すように、脱墨パルプ部2へ送る。
【0061】
脱墨パルプ部2では、まず、古紙パルプ液を脱墨前希釈部21において脱墨に適した繊維濃度になるよう希釈液供給部から希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤を投入して古紙パルプ液の希釈を行う。次に、所定の古紙パルプ濃度に調整された古紙パルプ液を脱墨処理部22に送る。
【0062】
脱墨処理部22では、図3に示す古紙パルプ液流通槽221に流入部229aから流入した古紙パルプ液を、仕切壁224の左方または右方の開口から隣接する脱墨室225へ順次流通させる。各脱墨室225では脱墨剤の存在下、古紙パルプ液中に気泡供給部226から微細な気泡を吹き込み、脱墨剤の存在によって、消失することなく多量に発生した気泡の表面にトナー粒子等の疎水性の異物を付着させて各脱墨室225の上部に浮上させる。また、必要により攪拌翼を作動し、古紙パルプ流通槽221内の古紙パルプ液の円滑な流通を促すようにする。
【0063】
親水性の古紙パルプは、水とともに脱墨室225を順次流通していく。このようにして古紙パルプ液からトナー成分等を除去する脱墨を行う。その際、必要により温度センサ227で古紙パルプ液の温度の検出を行い、ヒータ228で古紙パルプ液を所定温度に維持するよう加熱する温度制御を行ってもよいが、この脱墨処理部22での温度管理は必ずしも行わなくても構わない。
【0064】
脱墨処理部22に古紙パルプ液を導入した後、所定時間経過し、脱墨処理が進行して各脱墨室225の上部に気泡が浮遊した際に、モータ222aを駆動し、ガイドレール222bに案内させつつブレード222を図3(a)において上下方向に往復移動し、古紙パルプ液流通槽221の上部に浮遊する気泡を気泡排出槽223に掃き出す。気泡排出槽223に掃き出された気泡は、洗浄液噴出部223aから噴出した洗浄液によって洗い流され、気泡排出槽223内に溜まった洗浄液、脱墨剤、トナー成分等を含む液体は排液タンク53に送られる。
【0065】
古紙パルプ液流通槽221内の全ての脱墨室225に古紙パルプ液を流通させ、古紙パルプ液を脱墨して脱墨パルプを得て、得られた脱墨パルプを含む古紙パルプ液(脱墨パルプ液)を流出部229bから流出させ、抄紙部3に送る。
【0066】
抄紙部3では、図4に示すように、ヘッドボックス31から走行する抄紙ワイヤー323上に、脱墨後の古紙パルプ含有液をガイド部材31bに案内させつつ均一に供給し、水切りして水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64を形成する。抄紙ワイヤー323の下方に流下した水は受水部325に受水され、該受水部325から白水タンク54に送られる。
【0067】
抄紙ワイヤー323上の湿紙64が往路軌道の終端部に至ると、図5に示すように、脱水部33の上側の脱水ベルト11に転移される。その後下側の脱水ベルト11との間に湿紙64を挟持し、湿紙64に含まれる水分を、通水性を有する下側の脱水ベルト12を通水させて下方へ導き、プレスローラ15の設置箇所において上下のプレスローラ15で脱水ベルト11,12を介して湿紙64を狭圧して脱水する。
【0068】
このとき、湿紙64の搬送方向に沿って複数並設された上下一対のプレスローラ15のうち、上流側のプレスローラ19による挟圧の時点では、該上流側のプレスローラ19より下流側に設置されたプレスローラ20,23による挟圧の時点よりも湿紙64の含水率が高い状態にある。そこで、挟持圧力可変手段27により複数並設された上下一対のプレスローラ19,20,23による挟持圧力を、湿紙64の搬送方向上流側から順に下流側に進むに従い徐々に高くするように設定する。
【0069】
上流側のプレスローラ19の挟持圧力を、該上流側のプレスローラ20より下流側に設置されたプレスローラ20,23より低い圧力とし、プレスローラ19の挟圧により湿紙64から溢れ出した水分が、プレスローラ19の挟圧箇所より上流側へと逆流することで、一旦均一に形成された繊維の層を乱してしまうのを防止することが可能であり、得られる再生紙7について良好な地合を実現できる。
【0070】
また、下流側のプレスローラ20、23の挟持圧力を上流側より徐々に高い圧力とすることで、良好な地合を維持しつつ脱水効率を向上させることができ、乾燥部34でのヒータ345の消費電力を節約可能である。更に、湿紙64を乾燥し、仕上げした後に得られる再生紙の強度を向上させることができる。
【0071】
加えて、下流側のプレスローラ23で、湿紙64を該下流側に設置されたプレスローラ23よりも上流側に設置されたプレスローラ19、20に比較して高い圧力で挟圧することにより、湿紙64とともに吸水性を有する脱水ベルト10を挟圧し、脱水することが可能である。吸水性を有する脱水ベルト10は、上流側のプレスローラ19による挟圧の際に生じた水分を吸水することで、水分を非常に多く含んだ状態となっている。そこで、この水分を非常に多く含んだ脱水ベルト10を下流側のプレスローラ20、23で圧搾し、脱水することができるのである。これにより、上下の脱水ベルト11,12が相互に離間し、湿紙64の搬送経路の上流側に周回した後、改めて湿紙64に当接する際、下側の脱水ベルト12が吸水性を有する場合は吸水能力の高い状態で湿紙64に当接できるので、脱水効率を向上させることができる。
【0072】
また、挟持圧力可変手段27は、プレスローラ17の回転軸44を軸支し、ガイド部材56に案内されつつ装置フレーム36に摺接する挟持用摺接板48と、挟持用摺接板48を装置フレーム36に沿って摺動させる挟持用摺動駆動部49とを備えているので、プレスローラ15の湿紙挟持圧力を、個々のプレスローラ19,20,23対毎に容易に増減し、調整することができる。
【0073】
挟圧により多量の水分を吸収した下側のプレスローラ17を、搾り部材24によって圧搾することで吸水部37の水分を搾り出す。このように、吸水部37を設けたプレスローラ15に圧接し、吸水部37に含まれる水分を搾り出す搾り部材24を備えているので、プレスローラ15の吸水部37から容易に水分を搾り出すことができ、吸水部37の吸水性を簡単に回復することが可能である。
【0074】
搾り部材24によるプレスローラ15の押圧力は、搾り圧力可変手段29により搾り用摺動駆動部52を駆動することで増減することが可能である。このように、搾り圧力可変手段29により搾り部材24によるプレスローラ15の押圧力を増減することで、プレスローラ15の吸水部37の含水率に応じて、適正な押圧力で吸水部37に含まれる水分を搾り出すことができ、上流側のプレスローラ19のように、含水率が非常に高い場合には搾り部材24の押圧力を高くして多くの水分を吸水部37から搾り出し、逆に下流側のプレスローラ20、23のように、上流側より含水率が低い場合には押圧力を若干弱くして、吸水部37を構成する発泡合成樹脂やフェルト等の劣化しやすい部材の耐久性を向上させることができる(?)吸水部37の耐久性が向上することで、吸水部37の吸水効率の低下を原因とするプレスローラ15の交換作業等といったメンテナンスの頻度を低くできる。
【0075】
また、搾り圧力可変手段29は、搾り部材24を挟持用摺接板48に摺動する搾り用摺接板51と、搾り用摺接板51を装置フレーム36に沿って摺動させる搾り用摺動駆動部52とを備えているので、搾り部材24のプレスローラ15に対する押圧力を、個々の搾り部材24毎に容易に増減し、調整することができ、最適な条件でプレスローラ15を圧搾することができる。
【0076】
湿紙64をプレスローラ15により挟圧することにより生じた水分、及び搾り部材24により吸水部37を圧搾することで生じた水分は、下方に流下し、受水部30に受け止められた後、白水タンク54へ送られ、収容される。
【0077】
乾燥用ベルト342に転移した湿紙64は、乾燥部34へと搬送され、フード49内において挟持用ベルト342に当接され、該挟持用ベルト342と乾燥用ベルト342との間に挟持されて搬送される。そして、ヒータ345により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ343に、乾燥用ベルト342及び挟持用ベルト342を介して当接されつつ搬送されることで、湿紙64の乾燥が行われ仕上げ前の再生紙65を得る。
【0078】
乾燥部34を出た仕上げ前の再生紙65は図1に示すカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラの間に通され、仕上げ前の再生紙の平坦度を向上させ、更に、カット部42で所定の大きさに裁断されて再生紙7が完成する。
【0079】
カット部42において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、図1に示すようにパルパー18に戻され、再度再生紙の製造に利用される。
【0080】
各工程において排液処理部5へ送られた排水のうち汚染の程度が高く再利用が困難な排液タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を施した後古紙再生処理装置100の外部に排出する。汚染の程度が低く再利用が可能な白水タンク54内の排水は、必要によりフィルターを通してインク成分、トナー成分等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用する。
【0081】
古紙再生処理装置100の古紙再生処理の終了後、例えば、企業における夜間や休業日等といった比較的長時間古紙再生処理装置の運転を再開しないときは、脱水部33の挟持圧力可変手段27により一対のプレスローラ15の間の圧力を解除し、また、搾り圧力可変手段29により下側のプレスローラ17に対する搾り部材24の押圧力を解除する。これにより、プレスローラ15の吸水部37を、圧縮変形した状態から元の状態へと解放することができる。
【0082】
仮に劣化しやすい発泡合成樹脂やフェルト等により構成される吸水部37が長時間押圧されたままで部分的に圧縮変形を継続した場合のように、吸水部37の復元力が低下し、短期間のうちに劣化が進行して吸水力が低下し、脱水効率を低下させ、乾燥部34の負荷が増大し、得られた再生紙7の品質が悪くなるといったことを抑制可能である。そして、吸水部37の耐久性を向上させ、メンテナンスが容易となる。
【0083】
また、大型の製紙工場に設置されるプレス装置のように、湿紙から水分を吸引するための吸引手段を設けることなく脱水を行うことができるので、大掛かりな装置を必要とせず、装置を小型化することが可能である。
【0084】
また、古紙再生処理装置100を長期間使用した場合、プレスローラ15は使用時には、加圧状態を継続しているので、プレスローラ15の吸水部37の吸水力が低下した際には、プレスユニット87を引きだし、プレスローラ15を他の新たなプレスローラ15と交換する。このように、吸水力の低下したプレスローラ15はプレスユニット87を引き出すことで非常に用意に交換することが出来る。
【0085】
以上より、本発明にかかる古紙再生処理装置100は、一対のプレスローラの湿紙挟持圧力を、解除又は増減する挟持圧力可変手段を設けた湿紙の脱水装置を備えているので、プレスローラ15による湿紙64の挟持圧力を調整することができ、湿紙64の脱水効率を向上することができ、得られる再生紙の品質を向上できるとともに、古紙再生処理装置100の運転停止時に、一対のプレスローラ15の圧力を解除することで、プレスローラ15の吸水部37を復元し、耐久性を向上させることができる。
【0086】
尚、上記各実施形態では、湿紙の脱水装置と湿紙形成装置とを個別に設けたが、本発明にかかる湿紙の脱水装置では、これに替えて、湿紙形成装置の内部に湿紙を脱水する脱水部を設けてもよい。この場合、脱水部は抄紙ワイヤーが下側の脱水ベルトを兼ねて構成し、該抄紙ワイヤーと上側の脱水ベルトを介して上下のプレスローラで湿紙を挟圧し脱水することとなる。
【0087】
また、上側の脱水ベルト11を通水性をほとんど有しない素材としたが、上側の脱水ベルト11を下側の脱水ベルト12と同じ通水性を有する素材としても構わない。この場合、上側の脱水ベルト11の内方に設置される上側のプレスローラ16を、湿紙の挟圧により生じる水分を吸収する吸水部を設けてもよく、更に、該上側のプレスローラ16の吸水部の水分を搾り出す搾り部材を設けてもよい。これにより、湿紙の脱水効率を向上することができる。搾り部材は、上側のプレスローラの回転軸より、湿紙の搬送方向上流側においてプレスローラに圧接することとし、搾り部材により吸水部から搾り出された水分は、プレスローラと搾り部材との圧接部分の上方に溜まり、側方へと導かれた後、脱水ベルト11の外方より受水部30へと流下する。
【0088】
また、搾り部材24をプレスローラ15に圧接し、回転する搾りローラ25により構成したが、これに替えて、プレスローラ15の吸水部37に所定圧力で摺接する板状または柱状の部材(図示省略)としてもよい。
【0089】
また、上記実施形態1では脱墨パルプ部2を設けた古紙再生処理装置100を示したが、これに限定されず、脱墨パルプ部2を設けない構成をしてもよい。このように脱墨パルプ部2を設けない場合には、古紙再生処理装置が古紙を原料とする再生紙製造装置である時はヘッドボックスに供給され、抄紙ワイヤーにより抄紙される古紙パルプ液は印刷成分を含有した状態のものものとなる。
【符号の説明】
【0090】
S 抄紙装置
32 湿紙形成装置
334,334e プレスローラ対
44 第1プレスローラ
45 第2プレスローラ
47,47a,47e 吸水用ベルト
10,11,12 脱水ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤状態にある湿紙を挟持し搬送する一対の無端状脱水ベルトと、
前記一対の脱水ベルトの内方にそれぞれ設置され、一対の脱水ベルトにより挟持された湿紙を前記脱水ベルトを介して狭圧する一対のプレスローラとを備え、
脱水ベルトのうち少なくとも一方は通水性を有する素材により形成され、
該通水性を有する素材により形成される脱水ベルトの内方に設置されたプレスローラの外周面には、湿紙を挟圧することにより生じた水分を吸収する吸水部を設けてなる湿紙の脱水装置であって、
一対のプレスローラの湿紙挟持圧力を、解除又は増減する挟持圧力可変手段を設けた湿紙の脱水装置。
【請求項2】
挟持圧力可変手段は、プレスローラの回転軸を軸支し、ガイドに案内されつつ装置フレームに摺接する挟持用摺接板と、
挟持用摺接板を装置フレームに沿って摺動させる挟持用摺動駆動部とを備えた請求項1に記載の湿紙の脱水装置。
【請求項3】
吸水部を設けたプレスローラに圧接し、吸水部に含まれる水分を搾り出す搾り部材を備えた請求項1または請求項2に記載の湿紙の脱水装置。
【請求項4】
吸水部を設けたプレスローラに対する搾り部材の押圧力を、解除又は増減する搾り圧力可変手段を備えた請求項3に記載の湿紙の脱水装置。
【請求項5】
搾り圧力可変手段は、プレスローラ及び搾り部材のうち少なくとも一方を装置フレームに沿って摺動する搾り用摺接板と、
搾り用摺接板を装置フレームに沿って摺動させる搾り用摺動駆動部とを備えた請求項4に記載の湿紙の脱水装置。
【請求項6】
古紙を給水部から供給された水とともに攪拌し、古紙パルプ液を製造する古紙パルプ液製造装置と、
前記古紙パルプ液製造装置で製造された古紙パルプ液を抄紙ワイヤーにより抄紙し、湿紙を形成する湿紙形成装置と、
湿紙形成装置により形成された湿紙を脱水する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水装置とを一体に備えた古紙再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−241490(P2011−241490A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112397(P2010−112397)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】