説明

溶接ロボットシステム及び可搬式教示操作装置

【課題】
溶接時の施工条件と、この条件で得られた溶接ビードの外観検査の分析結果とを容易にデータベース化することができない。
【解決手段】
ティーチペンダント10は溶接ロボットRの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像装置30、画像を表示するディスプレイ17、ティーチペンダント10の測定点から溶接ビードの幅方向の両側縁までの距離を取得する測距センサ37と、測距センサ37が取得した距離を使用して溶接ビード幅を算出する溶接ビード幅演算部25を備える。コントローラ40のハードディスク44は、溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶するとともに作業プログラムに従って溶接ロボットRが施工した溶接ビードの施工条件と、溶接ビード幅を関連付けしてデータベースとして記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットシステム及び可搬式教示操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のロボットシステムが公知である。特許文献1では、溶接条件をデータベース化しておき、このデータベースに基づいて所望の溶接結果を得るための溶接条件を算出することが行われている。より詳細には、過去の溶接結果記録データに対して相関分析等を行い、溶接前に所望する溶接結果を得るための溶接条件を導出するようにしている。
【0003】
又、特許文献2では、特許文献1と同様に、溶接条件をデータベース化することが行われている。特許文献2が特許文献1と異なる点は、溶接施工時に収集した条件(トーチ角度、溶接電流、溶接電圧)と共に、溶接を行った際の様子、ワーク状態、溶接結果などを静止画像又は動画として視覚的にも記録してデータベース化している点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3675304号公報
【特許文献2】特許3047890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、溶接施工時に収集した条件(トーチ角度、溶接電流、溶接電圧)と共に、撮像した画像をデータベース化することによって、溶接を行った際の様子、ワーク状態、溶接結果などを視覚的に表示確認することができる利点を有する。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、溶接施工時に収集した施工条件は、数値で記録されるが、溶接結果の状態となる画像からは数値化、定量化はされておらず、特許文献1とは異なり、溶接前に所望する溶接結果を推定することには使用できない。
【0007】
なお、特許文献1は、過去の溶接結果記録データに関してどのような手段にて取得するかの技術は提案されていない。
本発明の目的は、溶接時の施工条件と溶接結果の溶接ビードの外観検査の分析結果で構成されるデータベースを容易に構築できる溶接ロボットシステムを提供することにある。又、本発明の他の目的は、上記システムに使用可能な可搬式操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、可搬式教示操作装置とロボット制御装置を含む溶接ロボットシステムであって、前記可搬式教示操作装置は、溶接ロボットの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像手段と、前記溶接ビードの画像を表示する表示手段と、前記表示された前記溶接ビードの幅(以下、溶接ビード幅という)を算出するための幅算出パラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記パラメータ取得手段が取得した幅算出パラメータを使用して前記溶接ビード幅を算出する溶接ビード幅算出手段を備え、前記ロボット制御装置は、溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶手段と、前記作業プログラムに従って前記溶接ロボットが施工した前記溶接ビードの施工条件と、前記溶接ビード幅を関連付けしてデータベースとして記憶するデータベース記憶手段とを備えることを特徴とする溶接ロボットシステムを要旨としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、測距対象物に対してスポット光を照射する投光手段を備え、前記パラメータ取得手段は、前記投光手段から投光されたスポット光により指定された溶接ビードのエッジまでの距離を測距する測距手段であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記可搬式教示操作装置は、教示データを入力する教示データ入力手段を備える教示操作装置本体と、前記教示操作装置本体に対して有線接続されて移動自在にされた分離体を備え、前記撮像手段及び測距手段が前記分離体に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、可搬式教示操作装置とロボット制御装置と画像処理装置を含む溶接ロボットシステムであって、前記可搬式教示操作装置は、溶接ロボットの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像手段と、前記画像を表示する表示手段を備え、前記画像処理装置は、前記画像から二値化画像処理を行う画像処理手段と、二値化画像から、前記溶接ビードの幅(以下、溶接ビード幅という)を算出する溶接ビード幅算出手段を備え、前記ロボット制御装置は、溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶手段と、前記作業プログラムに従って前記溶接ロボットが施工した前記溶接ビードの施工条件と、前記溶接ビード幅を関連付けしてデータベースとして記憶するデータベース記憶手段とを備えることを特徴とする溶接ロボットシステムを要旨としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4において、前記表示手段は、前記溶接ビードの画像を表示するとともに、前記溶接ビード幅算出手段が算出した前記溶接ビード幅を示すスケールを表示するものであり、又、前記可搬式教示操作装置は、前記表示手段に表示された前記スケールが示す幅を手動で調整する調整手段を備え、前記データベース記憶手段は、前記調整手段により調整した後の幅を前記施工条件と関連付けして記憶することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、溶接ロボットの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像手段と、前記溶接ビードの画像を表示する表示手段と、前記表示された前記溶接ビードの幅(以下、溶接ビード幅という)を算出するための幅算出パラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記パラメータ取得手段が取得した幅算出パラメータを使用して前記溶接ビード幅を算出する溶接ビード幅算出手段を備えることを特徴とする可搬式教示操作装置を要旨としている。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6において、測距対象物に対してスポット光を照射する投光手段を備え、前記パラメータ取得手段は、前記投光手段から投光されたスポット光により指定された溶接ビードのエッジまでの距離を測距する測距手段であることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7において、教示データを入力する教示データ入力手段を備える教示操作装置本体と、前記教示操作装置本体に対して有線接続されて移動自在にされた分離体を備え、前記撮像手段及び測距手段が前記分離体に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び請求項4の発明によれば、溶接時の施工条件と溶接結果の溶接ビードの外観検査の分析結果で構成されるデータベースを容易に構築できる効果を奏する。
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えて、スポット光により投光された溶接ビードのエッジ(側縁)を指定するだけで、溶接ビード幅が算出されて、該溶接ビード幅と溶接の施工条件とで構成されるデータベースを容易に構築できる効果を奏する。
【0017】
請求項3の発明によれば、撮像手段及び測距手段が分離体に設けられていることにより、教示装置本体から分離体を自由に移動させることができ、溶接ビードを撮像及び測距する際の撮像位置及び測定点の自由度を上げることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、表示手段に表示されたスケールが示す幅を手動で調整して、調整後の溶接ビード幅を前記施工条件と関連付けしてデータベース記憶手段に記憶することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、請求項1の溶接ロボットシステムに使用することができる可搬式教示操作装置を提供できる。
請求項7の発明によれば、請求項2の溶接ロボットシステムに使用することができる可搬式教示操作装置を提供できる。
【0020】
請求項8の発明によれば、請求項3の溶接ロボットシステムに使用することができる可搬式教示操作装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は第1実施形態のシステムの概略ブロック図、(b)はティーチペンダントの背面図。
【図2】ティーチペンダントとコントローラをそれぞれ構成する各部のブロック図。
【図3】第1実施形態の作業プログラムと溶接ビード幅のデータ合成を行う場合の説明図。
【図4】溶接ビード幅を算出する場合の原理の説明図。
【図5】溶接区間の説明図。
【図6】(a)は第2実施形態のシステムの概略ブロック図、(b)はティーチペンダントの背面図。
【図7】第2実施形態のシステムの概略ブロック図。
【図8】第2実施形態の作業プログラムと溶接ビード幅のデータ合成を行う場合の説明図。
【図9】(a),(b)は他の実施形態の溶接ビード幅の算出原理の説明図。
【図10】他の実施形態のティーチペンダント10の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の溶接ロボットシステム(以下、単にシステムという)を具体化した第1実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
【0023】
図1(a)に示すように、システムは、可搬式教示操作装置としてのティーチペンダント10と、溶接トーチRaを備えた関節が6軸の溶接ロボットマニピュレータ(以下、単に溶接ロボットという)Rを制御するロボット制御装置(以下、コントローラという)40を備える。
【0024】
(1. ティーチペンダント10)
図2に示すようにティーチペンダント10はCPU(中央処理装置)11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、通信I/F(通信インターフェイス)15、キーボード16、及びディスプレイ17の各部を備えているとともに各部はバス19を介して接続されている。ディスプレイ17は表示手段に相当する。
【0025】
図1(a)に示すようにティーチペンダント10の表面に、前記キーボード16、ディスプレイ17及び非常停止スイッチ38が設けられているとともにティーチペンダント10の裏面には、図1(b)に示すように撮像装置30の撮像レンズ34a、補助光源としてのフラッシュライト35及び測距センサ37が設けられている。
【0026】
図2に示すように、撮像手段としての撮像装置30は、撮像光学系駆動部33、撮像素子部34、フラッシュライト35及び撮像信号処理部36を有する。
撮像光学系駆動部33は、撮像レンズ34aや、絞り、ズームレンズ、フォーカスレンズなどを備えて構成されるレンズ系、及びレンズ系に対してフォーカス動作やズーム動作を行わせるための駆動系等を有する。
【0027】
撮像素子部34は、撮像光学系で得られる撮像光を検出し、光電変換を行うことで撮像信号を生成する固体撮像素子アレイを有する。前記固体撮像素子アレイとしては、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサアレイや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサアレイがある。
【0028】
フラッシュライト35は、例えば、LED等からなり、撮像対象及びその周囲が暗い場合に、コントローラ40の撮像装置制御部52からの制御信号に基づいて発光する。
撮像信号処理部36は、固体撮像素子によって得られる撮像信号に対して、公知のゲイン調整や波形整形を行うサンプルホールド/AGC(Automatic Gain Control)回路や、ビデオA/Dコンバータ等を備え、デジタルデータである画像を得る。
【0029】
測距センサ37は、赤外線のスポット光を投光する投光手段としての投光部37aと、受光部37bを備える。なお、赤外線の代わりにレーザ光であってもよい。測距センサ37は、投光部37aからスポット光を射出して、物体からの反射光を前記受光部に設けてあるPDS(Position Sensitive Device)で受光することにより、PDS上の入射光の位置に基づいて、測距センサ37(すなわち、ティーチペンダント10)から前記物体までの距離を計測するものである。測距センサ37は、パラメータ取得手段に相当し、前記距離は溶接ビード幅を算出するためのパラメータに相当する。
【0030】
ROM12は、ティーチペンダント10からの溶接ロボットRの操作、通信を実行するための各種プログラム、並びに、ディスプレイ17に各種のデータを表示するための表示処理プログラム、及び通信処理プログラム、キーボード16のキー入力を監視するキー入力監視プログラム、測距データ演算処理プログラム等の各種プログラムを記憶する。
【0031】
前記表示処理プログラムは、コントローラ40から送出されて取得した画像、及び、撮像装置30での撮像時に取得された静止画を表示制御するため、並びに後述する作業プログラムが、コントローラ40のCPU41に読み込まれた際にその作業プログラム(教示データ)等の画面データをディスプレイ17に表示制御するためのものである。
【0032】
通信処理プログラムには、ティーチペンダント10とコントローラ40とのデータ通信等の通信処理プログラム及び接続/切断処理プログラムが含まれる。
又、ROM12には、CPU11をパソコンとして機能させるための各種プログラムが格納されている。RAM13は、CPU11のワーキングエリアとして用いられ、計算途中のデータが一時的に格納されている。
【0033】
ハードディスク14には、前記各種のプログラムの実行変数が格納されている。ティーチペンダント10はケーブル21を介してコントローラ40に接続されており、通信I/F15は、そのコントローラ40との接続に使用される通信機である。
【0034】
ディスプレイ17は、例えば液晶表示装置からなり、作業者が溶接ロボットRの操作条件や動作状態を確認するための表示機、並びに、撮像装置30が起動された際に、撮像素子部34から得られた画像をリアルタイムに映し出す電子ビューファインダーとして使用される。
【0035】
CPU11は、前記通信処理プログラム、接続/切断処理プログラムを実行する通信制御部22、前記表示処理プログラムに従ってディスプレイ17を表示制御する表示制御部23、キー入力監視プログラムを実行するキー入力監視部24、測距センサ37が測定した測距データ(距離)を使用して溶接ビード幅を演算する溶接ビード幅演算部25、及びデータ合成部26を備えている。
【0036】
溶接ビード幅演算部25は、測距センサ37が測定した、ティーチペンダント10から物体までの距離に基づいて、溶接ビード幅を算出する。
ここで、溶接ビード幅の測定について説明する。
【0037】
図4に示すように、ティーチペンダント10を溶接ビードの上方に位置する測定点Pから溶接ビードGの幅方向の一方の側縁(エッジ)P1までの距離bと、測定点Pから他方の側縁(エッジ)P2までの距離cを計測することにより、溶接ビード幅aは、√(c^2−b^2)で求められる。なお、「^」はべき乗を示す。距離b,cは、幅算出パラメータに相当する。
【0038】
なお、距離bの測定の場合、ワーク面Wの境界に位置する側縁P1に対して測定点Pはワーク面Wから直交する直線上に位置するようにする。
溶接ビード幅演算部25は、上記のようにして溶接ビード幅aを算出する。
【0039】
前記溶接ビード幅演算部25は、溶接ビード幅算出手段に相当する。
データ合成部26は、コントローラ40のハードディスク44に格納されている作業プログラムに書き込まれた溶接の施工条件と溶接ビード幅演算部25が算出した前記溶接ビード幅とをデータ合成し、すなわち、関連付けする。関連付けされた合成データは、コントローラ40に送信されハードディスク44のデータベースDBに記憶される。ここで、溶接の施工条件は、加工作業を行う際のトーチの位置、トーチ角度、溶接条件(溶接電圧、溶接電流)等を含み、溶接を実行する際に作業プログラムに書き込まれる。
【0040】
キーボード16はティーチペンダント10の操作者(すなわち、作業者)が溶接ロボットRの動作を示す教示データを入力するためのインターフェイスとして使用される。キーボード16は、教示データ入力手段に相当する。
【0041】
又、キーボード16は、図1(a)に示すように撮像装置30を起動するための、起動スイッチ16aが設けられている。起動スイッチ16aがオン操作されると、前記キー入力監視部24は、起動要求信号を、通信I/F15、ケーブル21を介してコントローラ40に送信する。なお、ティーチペンダント10とコントローラ40間の通信は、通信I/F15,ケーブル21,通信I/F45を介して行われるため、以下では、説明の便宜上、単にティーチペンダント10とコントローラ40間の通信(或いは送信、又は受信)という。
【0042】
又、前記キーボード16は、ディスプレイ17に映し出された画像を静止画として取得するためのシャッターとして機能するシャッターキー16b、絞り調整のための絞り調整キー16c、ズームを行うためのズーム操作キー16dを備えている。
【0043】
これらのキーの操作(すなわち、撮像操作)に基づいてキー入力監視部24は、シャッターキー16bの操作では、シャッター要求信号を、絞り調整キー16cの操作では、絞り要求信号を、ズーム操作キー16dの操作では、ズーム要求信号を、それぞれコントローラ40に送信する。
【0044】
これら各種要求信号は操作信号に相当する。又、前記撮像装置30を撮像操作するための前記キーを備えるキーボード16は、操作手段に相当する。
又、前記キーボード16は、撮像装置30で撮像して取得した画像を作業プログラムと関連付けするために手動入力するためのキー(以下、関連付け入力キー16eという)を備えている。関連付け入力キー16eの操作がされると、前記キー入力監視部24は、そのキー操作に応じて、関連付け要求信号を、コントローラ40に送信する。
【0045】
前記関連付けするために手動入力するためのキーを備える前記キーボード16は、関連付け入力手段に相当する。
又、キーボード16には、測定スイッチ16fが設けられている。前記キー入力監視部24は、測定スイッチ16fの操作状態(すなわち、半押し状態か全押し状態)に応じて、測距センサ37を作動する。すなわち、測定スイッチ16fが半押しされると、測距センサ37の投光部37aから赤外線のスポット光が投光され、測定スイッチ16fが全押しされると、測距センサ37により、ティーチペンダント10から物体までの距離が測定される。
【0046】
又、前記非常停止スイッチ38がオン操作されると、CPU11は、そのオン操作に基づいて、コントローラ40に非常停止信号を送信する。コントローラ40は、前記非常停止信号を受信すると、動作中の溶接ロボットRを停止制御する。
【0047】
(2.コントローラ40)
コントローラ40は、CPU41、ROM42、RAM43、ハードディスク44、通信I/F45、及び動作制御部46(サーボドライバ)の各部を備えているとともに各部はバス47を介して接続されている。
【0048】
前記ROM42には、コントローラ40とティーチペンダント10との通信を行うための通信処理プログラム、接続/切断処理プログラム、表示処理プログラム、撮像装置制御プログラム等の各種プログラムを記憶する。RAM43は、CPU41のワーキングエリアとして用いられ、計算途中のデータが一時的に格納される。
【0049】
前記ハードディスク44は、不揮発性の記憶手段である。又、不揮発性の記憶手段として、ハードディスク44に代えて、半導体メモリ等の他の書換可能な記憶装置であってもよい。ハードディスク44は、作業プログラム記憶手段に相当する。
【0050】
ハードディスク44には、溶接ロボットRの作業が教示されたデータ(教示データS、すなわち、作業プログラム)、データベースDB、及び、撮像装置30で取得されて、ティーチペンダント10から送信された複数の静止画が画像データGDとして格納される。前記教示データSは、複数の作業プログラムを含む。データベースDBは、前記複数の静止画と、前記作業プログラムとが関連付けされたデータ群である。
【0051】
ハードディスク44は、データベース記憶手段に相当する。
通信I/F45は、ティーチペンダント10との接続に使用される通信機である。
動作制御部46は、溶接ロボットRの各関節を駆動する図示しないモータに接続され、該モータに通電させる電流を制御する。
【0052】
CPU41は、ROM42に格納された前記通信処理プログラム、及び接続/切断処理プログラムを実行する通信処理部50、表示処理プログラムを実行する表示処理部51、及び撮像装置制御プログラムを実行する撮像装置制御部52を備えている。
【0053】
撮像装置制御部52は、ティーチペンダント10から操作信号(前記各種要求信号)を入力すると、撮像装置制御プログラムに従ってその操作信号に応じた撮像装置30の制御信号をティーチペンダント10に対して送信する。前記制御信号には、後述する起動信号、シャッター信号、ズーム信号等を含む。
【0054】
(第1実施形態の作用)
上記のように構成されたシステムの作用を説明する。
作業者は、ティーチペンダント10を使って、前記キーボード16の起動スイッチ16aをオン操作する。この起動スイッチ16aのオン操作により、キー入力監視部24は、起動要求信号をコントローラ40に送信する。
【0055】
コントローラ40の撮像装置制御部52は、入力した起動要求信号に基づいて、起動信号をティーチペンダント10に送信する。ティーチペンダント10のCPU11は、この起動信号を撮像光学系駆動部33に出力する。これにより、内蔵された撮像装置30が起動されて、撮像素子部34を介して入力される画像がディスプレイ17に表示される。
【0056】
作業者が、キーボード16のシャッターキー16bのシャッター操作を行うと、キー入力監視部24がシャッター要求信号をコントローラ40に送信する。
撮像装置制御部52は、シャッター要求信号を入力すると、シャッター要求信号に基づいて、シャッター信号をティーチペンダント10に送信する。ティーチペンダント10のCPU11は、このシャッター信号を撮像光学系駆動部33に出力する。これにより撮像光学系駆動部33は、被写体を静止画の画像データを得る。
【0057】
得た静止画は、表示制御部23によりデジタルカメラと同じようにディスプレイ17の表示画面18に表示される。
又、CPU11は、静止画をコントローラ40に送信する。コントローラ40では、受信した静止画をハードディスク44に取り込んで保存(記憶)する。
【0058】
又、被写体の撮像時に、ズーム操作キー16dが操作されると、ズーム要求信号が、コントローラ40に送信される。撮像装置制御部52は、前記ズーム要求信号に応じて、ズーム信号をティーチペンダント10に送信する。ティーチペンダント10のCPU11は、このズーム信号を撮像光学系駆動部33に出力する。撮像光学系駆動部33は、ズーム信号に基づいてズーム動作する。
【0059】
上記のようにして、撮像装置30によって被写体を撮像して静止画がハードディスク44に保存される。
(溶接ビード幅の測距)
前記ディスプレイ17が電子ビューファインダーとして機能している状態で、ワークに施工された溶接ビードの溶接ビード幅を測距する場合について説明する。
【0060】
図4に示すように、ティーチペンダント10(測距センサ37)を測定点Pに位置させて溶接ビードGに向けた状態で、図1に示す測定スイッチ16fが半押されると、測距センサ37の投光部37aから赤外線のスポット光が投光される。このスポット光を、溶接ビードGの幅方向の側縁P1に当てて、測定スイッチ16fが全押しされると、測距センサ37により、ティーチペンダント10から側縁P1までの距離bが測定される。
【0061】
次に、図1に示す測定スイッチ16fが半押しされて、測距センサ37の投光部37aからのスポット光を、溶接ビードGの幅方向の側縁P2に当て、この後、測定スイッチ16fが全押しされると、測距センサ37により、ティーチペンダント10から側縁P2までの距離cが測定される。
【0062】
この両距離b,cが取得されると、溶接ビード幅演算部25は、溶接ビード幅aを、√(c^2−b^2)で算出することにより得る。
(手動による関連付け)
測距センサ37による前記溶接ビードの側縁までの距離の測距時期が、前記溶接ビードを形成した作業プログラムの全ステップの実行を終了した後の場合は、前記作業プログラムと手動で関連付けする。
【0063】
この場合、一旦、前記作業プログラムのファイル名をCPU41に読み込ませた状態にする。この状態は、後述する自動関連付けとは異なり、作業プログラムのファイル名が読み込まれた状態である。この状態で、作業者は、関連付け入力キー16eを操作する。すると、ティーチペンダント10のキー入力監視部24は、関連付け要求信号をコントローラ40に送信する。
【0064】
コントローラ40は、前記関連付け要求信号が入力されると、図3に示すように読み込まれている作業プログラムの施工条件(トーチの位置、トーチ角度、溶接条件(溶接電圧、溶接電流等)を、ティーチペンダント10に送信する。
【0065】
ティーチペンダント10のデータ合成部26(CPU11)は、送信された作業プログラムの施工条件と前記溶接ビード幅aとをデータ合成し、すなわち、関連付けする。関連付けされた合成データは、コントローラ40に送信されてハードディスク44のデータベースDB(溶接条件データベース)に記憶される。
【0066】
なお、溶接ビードの静止画と作業プログラムの手動による関連付けは、測距センサ37を使用する代わりに、シャッターキー16bが操作されて、静止画が取得された際、前記溶接ビード幅aが取得されたときと同様の方法により行われる。
【0067】
すなわち、コントローラ40に送信された際、CPU41は、その静止画をハードディスク44に記憶するとともに前記静止画と関連付けた記録データをデータベースDBに記憶する。
【0068】
(自動関連付け)
次に、自動関連付けについて説明する。
自動関連付けは、関連付けしたい作業プログラム(すなわち、ファイル)が、CPU41に読み込まれて、開いた状態、すなわち、ディスプレイ17に作業プログラムのステップが表示された状態、又は溶接区間を選択した状態で、測距センサ37により距離b,cを測距して溶接ビード幅aを算出すると、関連付けを、自動的に行う。すなわち、溶接ビード幅aは、現在選択されている教示データ(作業プログラム)に関連付けられる。
【0069】
又、溶接区間を選択した状態で、作業プログラムの溶接区間に対して自動的に関連付けを行う場合を具体的に説明する。
図5は、4つの溶接区間A,B,C,Dが作業プログラムに含まれる場合を示している。この作業プログラムでは、各溶接区間A,B,C,Dの開始位置及び終了位置に、それぞれ溶接開始命令AS、溶接終了命令AEがそれぞれ教示されている。
【0070】
そして、作業者は、作業プログラムを実行して溶接ロボットRによる1つの溶接区間の溶接が終了する毎に、すなわち、溶接終了命令AEが実行された後、作業プログラムの実行をティーチペンダント10を操作して、一旦停止する。
【0071】
この後、作業者は測距センサ37により、当該溶接区間の溶接ビードのエッジまでの距離b,cを測距し、溶接ビード幅演算部25により溶接ビード幅aを算出させる。この溶接ビード幅aの算出が終了すると、ティーチペンダント10のCPU11は、関連付け要求信号をコントローラ40に送信する。
【0072】
コントローラ40は、前記関連付け要求信号が入力されると、当該作業プログラムの当該溶接区間の施工条件(トーチの位置、トーチ角度、溶接条件(溶接電圧、溶接電流等)を、ティーチペンダント10に送信する。
【0073】
ティーチペンダント10のデータ合成部26(CPU11)は、送信された作業プログラムの当該溶接区間の施工条件と前記溶接ビード幅aとをデータ合成し、すなわち、関連付けする。関連付けされた合成データは、コントローラ40に送信されてハードディスク44のデータベースDB(溶接条件データベース)に記憶される。
【0074】
この後、作業者はティーチペンダント10を操作して、次の溶接区間の溶接を開始させる。
以後、同様に、各溶接区間の溶接が終了する毎に、作業プログラムの実行を停止して、撮像装置30にその溶接区間における溶接結果の溶接ビード幅aを取得し、各溶接区間の施工条件と。取得した溶接ビード幅aを自動的に関連付けする。
【0075】
なお、静止画と、作業プログラムの溶接区間との自動関連付けは、上記のように溶接区間の溶接が終了する毎に、測距センサ37による距離b,c及び溶接ビード幅aの取得の代わりに、シャッターキー16bが操作されて、静止画が取得された際、前記溶接ビード幅aが取得されたときと同様の方法により行われる。
【0076】
上記のようにして、前記溶接ビード幅aが、作業プログラムの施工条件と手動関連付け又は自動関連付けされてデータベースDBに記録された後、作業者は、ティーチペンダント10のキーボード16を操作することにより、作業プログラムの施工条件とその施工条件で行われた溶接ビード幅aを、ディスプレイ17に表示することにより、新たなワークに対して溶接を行う場合に、参考にすることが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、作業プログラムの施工条件、溶接ビード幅a及び溶接ビードの静止画も合わせてデータベースとして容易に構築できるとともに、新たなワークに対して溶接を行う場合に、参考にすることが可能となる。
【0078】
本実施形態は、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のシステムでは、ティーチペンダント10(可搬式教示操作装置)は、溶接ロボットRの溶接により形成された溶接ビードGを撮像し、画像を取得する撮像装置30(撮像手段)と、溶接ビードGの画像を表示するディスプレイ17(表示手段)を備える。又、ティーチペンダント10は、ディスプレイ17に表示された溶接ビードの幅を算出するために、ティーチペンダント10の測定点Pから溶接ビードGの幅方向の側縁P1,P2までの距離b,c(幅算出パラメータ)を取得する測距センサ37(パラメータ取得手段)と、測距センサ37が取得した距離b,cを使用して溶接ビード幅aを算出する溶接ビード幅演算部25(溶接ビード幅算出手段)を備える。
【0079】
一方、コントローラ40(ロボット制御装置)は、ハードディスク44を備え、該ハードディスク44は、溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶手段と、作業プログラムに従って溶接ロボットRが施工した溶接ビードGの施工条件と、溶接ビード幅aを関連付けしてデータベースとして記憶するデータベース記憶手段として機能する。この結果、本実施形態のシステムによれば、溶接時の施工条件と溶接結果の溶接ビードの外観検査の分析結果で構成されるデータベースを容易に構築できる。
【0080】
(2) 本実施形態のシステムでは、ティーチペンダント10は、測距対象物である溶接ビードGに対してスポット光を照射する投光部37a(投光手段)を備える。又、ティーチペンダント10は、測距センサ37は、投光部37aから投光されたスポット光により指定された溶接ビードGの側縁P1,P2(エッジ)までの距離を測距する測距手段として機能する。この結果、本実施形態のシステムによれば、上記(1)の効果に加えて、スポット光により投光された溶接ビードGの側縁P1,P2を指定するだけで、溶接ビード幅aが算出されて、該溶接ビード幅aと溶接の施工条件とで構成されるデータベースを容易に構築できる効果を奏する。
【0081】
(3) 本実施形態のティーチペンダント10(可搬式教示操作装置)は、溶接ロボットRの溶接により形成された溶接ビードGを撮像し、画像を取得する撮像装置30(撮像手段)と、溶接ビードGの画像を表示するディスプレイ17(表示手段)を備える。又、ティーチペンダント10は、ディスプレイ17に表示された溶接ビードの幅を算出するために、ティーチペンダント10の測定点Pから溶接ビードGの幅方向の側縁P1,P2までの距離b,c(幅算出パラメータ)を取得する測距センサ37(パラメータ取得手段)と、測距センサ37が取得した距離b,cを使用して溶接ビード幅aを算出する溶接ビード幅演算部25(溶接ビード幅算出手段)を備える。この結果、本実施形態によれば、上記(1)の溶接ロボットシステムに使用することができるティーチペンダント10を提供できる。
【0082】
(4) 本実施形態のティーチペンダント10は、測距対象物である溶接ビードGに対してスポット光を照射する投光部37a(投光手段)を備える。又、ティーチペンダント10は、測距センサ37は、投光部37aから投光されたスポット光により指定された溶接ビードGの側縁P1,P2(エッジ)までの距離を測距する測距手段として機能する。この結果、上記(2)の溶接ロボットシステムに使用することができるティーチペンダント10を提供できる。
【0083】
(第2実施形態)
次に第2実施形態のシステムを図6〜図8を参照して説明する。
なお、第1実施形態のシステムと同一又は相当する構成については、同一符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0084】
本実施形態のシステムは、図6に示すように、ティーチペンダント10と、溶接ロボットRを制御するコントローラ40と、ティーチペンダント10とコントローラ40間にケーブル21(通信ケーブル)で接続された画像処理装置20を備える。
【0085】
第2実施形態では、第1実施形態のティーチペンダント10の構成中、図6(a)、(b)に示すように溶接ビード幅演算部25、測距センサ37、測定スイッチ16fが省略されるとともに、前記画像処理装置20が設けられているところが第1実施形態と異なっている。
【0086】
又、ティーチペンダント10には、図6(a)に示すように、調整手段としてのジョグダイヤル16gが設けられている。調整手段は、ジョグダイヤル16gの代わりにスライドキーとしてもよい。ジョグダイヤル16gはディスプレイ17に表示される後述のスケールSKの大きさを調整するためのものである。
【0087】
画像処理装置20は、コンピュータからなり、図7に示すように、画像処理手段としての画像処理部27、溶接ビード幅算出手段としての溶接ビード幅演算部28及び通信I/F15、45に対してケーブル21を介して接続された図示しない通信I/Fを備えている。ティーチペンダント10とコントローラ40間の通信は、画像処理装置20の図示しない前記通信I/Fによりを介して行われる。
【0088】
そして、第2実施形態では、撮像装置30にて撮像した静止画を画像処理装置20で画像処理を行って、溶接ビード幅を算出するところが第1実施形態と主に異なっている。
(第2実施形態の作用)
上記のように構成されたシステムの作用を説明する。
【0089】
なお、シャッターキー16bの操作により、静止画をティーチペンダント10が取得する場合は、第1実施形態と同じであるため、ここでは、溶接ビードの静止画を取得した時点から説明する。
【0090】
ティーチペンダント10の撮像信号処理部36は取得した静止画を、画像処理装置20に送信する。
画像処理装置20の画像処理部27は、前記静止画を二値化処理する。この二値化処理は、ワーク面上の溶接ビードGと、前記ワーク面とを区画するための処理であり、画像に応じて決定された閾値に基づいて行う。この閾値の決定は公知であるため、説明を省略する。二値化処理の後、画像処理部27は、二値化画像を膨張、収縮処理によりノイズ除去を行う。この後、溶接ビードGとワーク面との境界部分、すなわち、溶接ビードGのエッジ検出を行う。このエッジ検出は、画像の画素列毎に行うことにより、二値化画像に関する溶接ビードのエッジを検出する。
【0091】
このエッジが検出された二値化画像において、幅方向に位置するエッジ間のセンサ画素数に基づいて、溶接ビード幅演算部28は、溶接ビードGの幅(溶接ビード幅a)の算出を行う。
【0092】
溶接ビード幅の算出は、下記のようにして行う。
溶接ビード幅演算部28は、撮像時のティーチペンダント10から溶接ビードG迄の距離(高さ)、レンズ焦点距離、撮像素子部34のセンサ幅、センサ画素数から、1画素[pix]に対する実寸法[mm]の度合いである画像分解能[mm/pix]を計算するとともに、溶接ビード部分の画像上の幅と画像分解能との乗算を行うことで、各画素列の溶接ビード幅を算出する。
【0093】
そして、溶接ビード幅演算部28は、当該二値化画像で画素列毎に算出した各溶接ビード幅を全合計した後、全画素列数で割った平均値を、当該二値化画像における溶接ビード幅aとする。
【0094】
なお、ティーチペンダント10と溶接ビードG迄の距離(高さ)は、予め定められた距離(高さ)の位置でティーチペンダント10を位置させて、その値を、予めティーチペンダント10に計算で使用する固定値としてキーボード16により入力するといった方法で行う。
【0095】
この算出結果である溶接ビード幅a、及び算出の根拠となったニ値化画像を、溶接ビード幅演算部28は、ティーチペンダント10に送信する。
ティーチペンダント10の表示制御部23は、このニ値化画像をディスプレイ17に表示するとともに、算出された溶接ビード幅aに基づいてスケールSK(図)をディスプレイ17に表示する。図6(a)には、ディスプレイ17に表示したニ値化画像である画像中、Gaが溶接ビードの表示領域を示し、SKが2本の平行な点線で示されている。この平行な2本の点線間が、スケールSKの大きさ(長さ)を示している。
【0096】
作業者は、このスケールSKの大きさと、画面上の溶接ビードGaの幅(溶接ビード幅)とを比較して、スケールSKの大きさが妥当であれば、作業者はキーボード16の決定キー16hをオン操作することにより、溶接ビード幅が決定される。
【0097】
又、作業者は、このスケールSKの大きさと、画面上の溶接ビードGaの幅(溶接ビード幅)とを比較して、スケールSKの大きさが妥当ではないと判断した場合には、ジョグダイヤル16gを回して、スケールSKの長さを長く、或いは短くするようにして、すなわち、2本の点線で示す平行線の間隔を変更して適切な長さとする。変更した後、作業者がキーボード16の決定キー16hをオン操作することにより、溶接ビード幅が決定される(図8参照)。
【0098】
上記のようにして、適切な溶接ビード幅が得られる。
なお、溶接ビード幅を手動で作業プログラムと関連付けする場合、或いは溶接ビード幅を自動で作業プログラムと関連付けする場合、第1実施形態と同様に行う。
【0099】
本実施形態は、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のシステムは、ティーチペンダント10(可搬式教示操作装置)とコントローラ40(ロボット制御装置)と画像処理装置20により構成されている。又、ティーチペンダント10は、溶接ロボットRの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する30(撮像手段)と、画像を表示するディスプレイ17(表示手段)を備える。画像処理装置20は、前記画像から二値化画像処理を行う画像処理部27(画像処理手段)と、二値化画像から溶接ビード幅を算出する溶接ビード幅演算部28(溶接ビード幅算出手段)を備える。又、コントローラ40(ロボット制御装置)は、ハードディスク44を備え、該ハードディスク44は、溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶手段と、作業プログラムに従って溶接ロボットRが施工した溶接ビードGの施工条件と、溶接ビード幅aを関連付けしてデータベースとして記憶するデータベース記憶手段として機能する。この結果、本実施形態のシステムによれば、溶接時の施工条件と溶接結果の溶接ビードの外観検査の分析結果で構成されるデータベースを容易に構築できる。
【0100】
(2) 本実施形態のシステムでは、ディスプレイ17(表示手段)は、溶接ビードの画像を表示するとともに、溶接ビード幅演算部28(溶接ビード幅算出手段)が算出した溶接ビード幅を示すスケールSKを表示する。ティーチペンダント10は、ディスプレイ17に表示されたスケールSKが示す溶接ビード幅を手動で調整するジョグダイヤル16g(調整手段)を備える。そして、ハードディスク44(データベース記憶手段)は、ジョグダイヤル16g(調整手段)により調整した後の溶接ビード幅を施工条件と関連付けして記憶するようにした。
【0101】
この結果、本実施形態のシステムによれば、ディスプレイ17に表示されたスケールSKが示す幅(長さ)を手動で調整して、調整後の溶接ビード幅を施工条件と関連付けしてハードディスク44に記憶することができる。このため、溶接ビード幅を作業者が視認した結果の溶接ビード幅をデータベースに記憶することができる。
【0102】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・ 前記実施形態では、溶接ロボットRは、関節を6軸としたが、6軸に限定するものではない。例えば、5軸、或いは、7軸以上であってもよい。また、アーク溶接ロボットに限らず、スポット溶接ロボットでもよい。この場合、溶接ビード幅に代えてナゲットと呼ばれる溶接痕の直径値等をデータベースに記憶するようにする。
【0103】
・ 第1実施形態では、図4に示すように、距離bを測定する場合、ワーク面Wの境界に位置する側縁P1に対して測定点Pをワーク面Wから直交する直線上に位置するようにするとともに、溶接ビード幅aを、√(c^2−b^2)で求めるようにした。
【0104】
この代わりに、図9(a)、(b)に示す下記の方法により溶接ビード幅aを求めてもよい。
すなわち、溶接ビード幅演算部25は、測定点Pから溶接ビードGの側縁P1までの距離bと、測定点Pから溶接ビード幅方向の他方の側縁P2までの距離c、測定点Pと側縁P1と側縁P2とで構成する角度θを算出した後、溶接ビード幅aを√(b^2+c^2−2bccosθ)で求めることができる。
【0105】
測定点Pと側縁P1間の距離b、及び測定点Pと側縁P2間の距離c並びに角度θは、溶接ビード幅を算出するための幅算出パラメータに相当する。この場合、溶接ビード幅演算部25は、測距センサ37とともにパラメータ取得手段に相当する。
【0106】
前記角度θについては、溶接ビード幅演算部25は、図9(a)に示すディスプレイ17(電子ピューファインダ)の幅rとディスプレイ17に写された溶接ビードGの幅tとの比率t/rと、撮像素子部34の画角を使用して、t/r*画角を算出することにより求める。なお、広角側端或いは望遠側端を基点とすることにより撮像光学系駆動部33のズーム信号に基づいて現在の画角を求めることができる。
【0107】
又、図9(a)では、溶接ビードは左右方向に延びているが、溶接ビードが図9(a)において上下方向に延びている場合は、溶接ビード幅aの幅方向は、図9(a)において左右方向になる。この場合は、幅rは、ディスプレイ17の上下幅にし、幅tはディスプレイ17の左右方向とする。
【0108】
なお、撮像装置30がズーム機能を有しない場合は、撮像装置30の画角は変化しないため、固有値としての画角の値を採用すればよい。
なお、上記の方法以外に、角度θは、周知の角度センサを用いて測定してもよい。この場合、角度センサは、ティーチペンダント10に設けられて、測定点Pから溶接ビードGの側縁P1までの距離bを測定する状態から、測定点Pから溶接ビードGの側縁P2を測定する状態のときの角度θを測定する。
【0109】
この場合、角度センサは、測距センサ37とともにパラメータ取得手段に相当する。
・ 第1実施形態及び第2実施形態では、撮像装置30及びフラッシュライト35、又は撮像装置30、測距センサ37及びフラッシュライト35は、ティーチペンダント10の裏面側に設けた構成とした。この代わりに、図10に示すように、ティーチペンダント10を、教示データを入力するキーボード16を有する教示操作装置本体としてのティーチペンダント本体10Aと、ティーチペンダント本体10Aから分離した分離体10Bを備える構成としてもよい。この場合、分離体10Bには、撮像装置30(又は撮像装置30、測距センサ37)、フラッシュライト35を設ける。又、分離体10Bは、ティーチペンダント本体10Aに対して、可撓性を有する通信線29(ケーブル)で接続する。分離体10Bとティーチペンダント本体10Aとの接続は、例えば、USB接続でもよい。分離体10Bを使用する場合のみ通信線29でティーチペンダント本体10Aに対して接続し、使用しない場合には、外してティーチペンダント本体10Aのみを使用する。
【0110】
上記のように構成されたティーチペンダント10では、分離体10Bをティーチペンダント本体10Aに通信線29で接続した状態で、溶接ビードの画像を取得したり、或いは、測距センサ37で溶接ビード幅aを算出するための幅算出パラメータである測定点Pと側縁P1間の距離b、及び測定点Pと側縁P2間の距離cを測距する。
【0111】
測距センサ37を分離体10Bに設けると、ティーチペンダント本体10Aから分離体10Bを自由に移動させることができ、溶接ビード迄の距離を測距する際の測定点の位置の自由度を上げることができる。
【0112】
又、撮像装置30を分離体10Bに設けると、ティーチペンダント本体10Aから分離体10Bを自由に移動させることができ、溶接ビードを撮像する際の撮像位置の自由度を上げることができる。
【0113】
なお、各実施形態においては、フラッシュライト35は、必ずしも必要な構成ではなく、省略してもよい。
・前記第2実施形態において、ティーチペンダント10と溶接ビードG迄の距離(高さ)は、第1実施形態で説明した測距センサ37を使用するようにしてもよい。
【0114】
・前記第2実施形態において、画像処理装置20をコントローラ40とは別体としたが、これに代えて、画像処理装置20の各部(画像処理部27、溶接ビード幅演算部28)の機能をコントローラ40に内蔵し、画像処理装置20を省略してもよい。
【符号の説明】
【0115】
R…溶接ロボット、
10…ティーチペンダント(可搬式教示操作装置)、
10A…ティーチペンダント本体、10B…分離体、
16…キーボード(教示データ入力手段)、
16g…ジョグダイヤル(調整手段)、
25…溶接ビード幅演算部(溶接ビード幅算出手段)、
26…データ合成部、
27…画像処理部(画像処理手段)、
28…溶接ビード幅演算部(溶接ビード幅算出手段)、
30…撮像装置(撮像手段)、
37…測距センサ(パラメータ取得手段、測距手段)、
40…コントローラ(ロボット制御装置)、
41…CPU、
44…ハードディスク(作業プログラム記憶手段、データベース記憶手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式教示操作装置とロボット制御装置を含む溶接ロボットシステムであって、
前記可搬式教示操作装置は、溶接ロボットの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像手段と、前記溶接ビードの画像を表示する表示手段と、前記表示された前記溶接ビードの幅(以下、溶接ビード幅という)を算出するための幅算出パラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記パラメータ取得手段が取得した幅算出パラメータを使用して前記溶接ビード幅を算出する溶接ビード幅算出手段を備え、
前記ロボット制御装置は、溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶手段と、前記作業プログラムに従って前記溶接ロボットが施工した前記溶接ビードの施工条件と、前記溶接ビード幅を関連付けしてデータベースとして記憶するデータベース記憶手段とを備えることを特徴とする溶接ロボットシステム。
【請求項2】
測距対象物に対してスポット光を照射する投光手段を備え、
前記パラメータ取得手段は、前記投光手段から投光されたスポット光により指定された溶接ビードのエッジまでの距離を測距する測距手段であることを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボットシステム。
【請求項3】
前記可搬式教示操作装置は、
教示データを入力する教示データ入力手段を備える教示操作装置本体と、前記教示操作装置本体に対して有線接続されて移動自在にされた分離体を備え、前記撮像手段及び測距手段が前記分離体に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接ロボットシステム。
【請求項4】
可搬式教示操作装置とロボット制御装置と画像処理装置を含む溶接ロボットシステムであって、
前記可搬式教示操作装置は、溶接ロボットの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像手段と、前記画像を表示する表示手段を備え、
前記画像処理装置は、前記画像から二値化画像処理を行う画像処理手段と、二値化画像から、前記溶接ビードの幅(以下、溶接ビード幅という)を算出する溶接ビード幅算出手段を備え、
前記ロボット制御装置は、
溶接の施工条件を含む作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶手段と、
前記作業プログラムに従って前記溶接ロボットが施工した前記溶接ビードの施工条件と前記溶接ビード幅を関連付けしてデータベースとして記憶するデータベース記憶手段とを備えることを特徴とする溶接ロボットシステム。
【請求項5】
前記表示手段は、前記溶接ビードの画像を表示するとともに、前記溶接ビード幅算出手段が算出した前記溶接ビード幅を示すスケールを表示するものであり、
又、前記可搬式教示操作装置は、前記表示手段に表示された前記スケールが示す溶接ビード幅を手動で調整する調整手段を備え、
前記データベース記憶手段は、前記調整手段により調整した後の溶接ビード幅を前記施工条件と関連付けして記憶することを特徴とする請求項4に記載の溶接ロボットシステム。
【請求項6】
溶接ロボットの溶接により形成された溶接ビードを撮像し、画像を取得する撮像手段と、前記溶接ビードの画像を表示する表示手段と、前記表示された前記溶接ビードの幅(以下、溶接ビード幅という)を算出するための幅算出パラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記パラメータ取得手段が取得した幅算出パラメータを使用して前記溶接ビード幅を算出する溶接ビード幅算出手段を備えることを特徴とする可搬式教示操作装置。
【請求項7】
測距対象物に対してスポット光を照射する投光手段を備え、
前記パラメータ取得手段は、前記投光手段から投光されたスポット光により指定された溶接ビードのエッジまでの距離を測距する測距手段であることを特徴とする請求項6に記載の可搬式教示操作装置。
【請求項8】
教示データを入力する教示データ入力手段を備える教示操作装置本体と、前記教示操作装置本体に対して有線接続されて移動自在にされた分離体を備え、前記撮像手段及び測距手段が前記分離体に設けられていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の可搬式教示操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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