説明

溶接器及び溶接装置

【課題】溶接器において、火口部の角度に自由度を有することである。
【解決手段】溶接器100において、溶接用可燃ガスを燃焼させて着火させる火口部102と、握り部104と、握り部104と火口部102との間の中間部120とを備え、中間部120は、溶接用可燃ガスを流通させ、火口部102側に耐熱処理が施されたホース112と、ホース112の軸周りにおいて軸方向に沿って巻回され、ホース112が真っ直ぐになる方向に復元力が働く弾性部114と、一方端が火口部102側に取り付けられ、他方端が握り部104側に取り付けられるワイヤ部116と、ワイヤ部116を他方端側において巻き取ることで中間部110の火口部102側を湾曲させ、巻取状態を固定することで火口部の先端位置を変更した状態を維持するリール部118を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接器及び溶接装置に係り、特に、溶接用可燃ガスを用いて溶接作業を行う溶接器及び溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の様々な場所に空調システムが設置されている。空調システムには、空調用の配管、圧縮機等といった機器を配置する必要があり、それらの配置の際に、溶接装置を使用した溶接作業を行うことがある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、ガスろう付装置として、マニピュレータアームにトーチが設けられ、そのトーチのチップ先端からろう材ワイヤが送り出されるようにすると共に、そのろう材ワイヤを溶融させるガスバーナをそのトーチに設け、そのマニピュレータアームの作動によりそのトーチをワークの所要ろう付ラインに沿い移動させるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−136759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空調システムの配管工事を行う場合に、配管の裏側へ手が入りにくい等の作業を行いにくい場所がある。このような場所で作業を行う場合に、溶接用可燃ガスを燃焼させて着火させる火口部の先端部の向きがよくないまま溶接作業を行うと非常に作業時間がかかってしまう等という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、作業場所に応じて火口部の先端部の向きを変更できる溶接器及びその溶接器を備えた溶接装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶接器は、溶接用可燃ガスを燃焼させて着火させる火口部と、手で握ることが可能な握り部と、握り部と火口部との間に設けられた中間部と、を備え、中間部は、外力を加えることで任意の湾曲形状に曲がり、外力を除いてもその湾曲形状を維持する部材を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る溶接器において、中間部は、溶接用可燃ガスを流通させることが可能なホースであって、少なくとも火口部側に耐熱処理が施されたホースと、ホースの軸周りにおいて軸方向に沿って巻回され、ホースが真っ直ぐになる方向に復元力が働く弾性部材と、一方端が火口部側に取り付けられ、他方端が握り部側に取り付けられるワイヤ部と、ワイヤ部を他方端側において巻き取ることで中間部の火口部側を湾曲させ、巻取状態を固定することで火口部の先端位置を変更した状態を維持する巻取手段と、を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る溶接器において、巻取手段は、ワイヤ部を他方端から巻き取るリールを含んで構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る溶接器において、ワイヤ部とそれに対応するリールを1組の湾曲巻取部として、複数の組の湾曲巻取部がホースの周方向に間隔をおいて設けられることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る溶接器において、弾性部材は、コイルバネであることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る溶接器において、中間部は、溶接用可燃ガスを流通させ、少なくとも火口部側に耐熱処理が施されたフレキシブルホースであることが好ましい。
【0013】
上記いずれか1に記載の溶接器と、第1ガスが収容される第1ガス用ボンベと、第2ガスが収容される第2ガス用ボンベと、第1ガス用ボンベと溶接器とを連通する第1ガス用配管と、第2ガス用ボンベと溶接器とを連通する第2ガス用配管と、を備え、中間部は、第1ガスと第2ガスとを混合して溶接用可燃ガスとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の溶接器及び溶接装置によれば、外力を加えることで中間部を任意の湾曲形状に曲げて、外力を除いてもその湾曲形状を維持することができる。これにより、作業場所に応じて火口部の先端部の向きを変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施の形態において、溶接装置を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、溶接器を示す構成図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、溶接器の火口部の先端部の方向を変えた様子を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、変形例の溶接器を火口部の先端側(図2におけるA方向)から見た様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、別の変形例の溶接器を示す構成図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、別の変形例の溶接器の火口部の先端部の方向を変えた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、酸素とアセチレンとを混合した溶接用可燃ガスを用いて溶接作業を行うものとして説明するが、これに限定されるものでなく、その他の溶接用可燃ガスを用いて溶接作業を行うものであってもよい。
【0017】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0018】
図1は、溶接装置10を示す図である。溶接装置10は、空調システムの配管工事において溶接作業を行うための装置である。溶接装置10は、酸素ボンベ20と、酸素用圧力調整器22と、酸素用ホース24と、アセチレンボンベ30と、アセチレン用圧力調整器32と、アセチレン用ホース34と、溶接器100とを含んで構成される。
【0019】
酸素ボンベ20は、溶接用可燃ガスとして用いられる酸素を収容する容器であり、酸素が適当な圧力値に圧縮されて収容されている。酸素用圧力調整器22は、酸素ボンベ20に収容された酸素を溶接用可燃ガスとして用いるのに適当な圧力値に調整するための調整器である。酸素用ホース24は、酸素用圧力調整器22によって圧力値が調整された酸素を溶接器100に向かって流通させるための流路である。
【0020】
アセチレンボンベ30は、溶接用可燃ガスとして用いられるアセチレンを収容する容器であり、アセチレンが適当な圧力値に圧縮されて収容されている。アセチレン用圧力調整器32は、アセチレンボンベ30に収容されたアセチレンを溶接用可燃ガスとして用いるのに適当な圧力値に調整するための調整器である。アセチレン用ホース34は、アセチレン用圧力調整器32によって圧力値が調整されたアセチレンを溶接器100に向かって流通させるための流路である。
【0021】
次に、図2を用いて溶接器100について説明する。図2は、溶接器100を示す構成図である。溶接器100は、酸素とアセチレンとを混合した溶接用可燃ガスを燃焼して着火させて溶接作業を行うための器具である。溶接器100は、火口部102と、握り部104と、中間部110とを含んで構成される。
【0022】
火口部102は、溶接用可燃ガスを燃焼して着火させて溶接作業を行うためのトーチである。また、火口部102は、適当な耐熱性を有する耐熱材料で構成されている。
【0023】
握り部104は、酸素とアセチレンを混合して溶接用可燃ガスとし、火口部102に向かって溶接用可燃ガスを供給する機能を有する部分である。また、握り部104は、溶接作業員が手で握って作業をしやすい外形部分を有している。
【0024】
中間部110は、握り部104と火口部102との間に設けられ、握り部104から供給された溶接用可燃ガスを流通させる機能を有する。また、中間部110は、ホース112と、弾性部114と、ワイヤ部116と、リール部118とを含んで構成される。
【0025】
ホース112は、溶接用可燃ガスを流通させるホースである。また、ホース112は、適当な柔軟性を有する材料で構成されており、外力を与えることで任意の湾曲形状に曲げることができる。さらに、ホース112は、適当な耐熱性を有する耐熱材料で構成されており、特に、火口部102側の耐熱性を高める処理が施されている。
【0026】
弾性部114は、ホース112が真っ直ぐになる方向(図2における矢印Aに沿った方向)に復元力が働く弾性部材である。弾性部114は、一方端が火口部102に取り付けられて、ホース112の軸周りを巻回されて、他方端が握り部104に取り付けられる。かかる弾性部114は、例えば、コイルバネで構成することができる。
【0027】
ワイヤ部116は、火口部102の先端部の向く方向(先端位置)を変えるための部材である。また、ワイヤ部116の一方端は、火口部102に取り付けられ、ワイヤ部116の他方端は、リール部118に巻回されている。かかるワイヤ部116は、例えば、合成繊維で構成することができる。
【0028】
リール部118は、レバー118aを用いて、ワイヤ部116を他方端から巻き取るための器具である。また、リール部118は、レバー118aをワイヤ部116が巻き取られる方向には自由に回転することができるが、その反対方向には自由に回転できず、巻取り状態を固定するストッパ機構が設けられている。そして、リール部118のレバー118aを回転させることでワイヤ部116を介してホース112に溶接作業員による外力が加わって、ホース112の火口部102側を湾曲させることができる。なお、リール部118には、ストッパ機構の代わりにラッチ機構が設けられていてもよい。
【0029】
続いて、上記構成の溶接装置10の溶接器100の作用について、図1〜図3を用いて説明する。図3は、溶接器100の火口部102の先端部の向く方向を変えた様子を示す図である。空調システムの配管工事において、配管に対して溶接装置10による溶接作業を行うことがある。空調システムの配管の配置場所によっては、配管の裏側に手が入りにくい等の作業を行いにくい場所がある。そして、溶接作業員は、溶接装置10の溶接器100の火口部102の先端部の向く方向(先端位置)をこのような場所に適した方向となるようにリール部118のレバー118aを回転させて調整を行う。
【0030】
このとき、ホース112に対して溶接作業員による外力を与えるためにリール部118によってワイヤ部116を巻き取ると、リール部118と火口部102との間のワイヤ部116の長さは短くなる。このため、図3に示されるように、ホース112が湾曲した形状となって、ワイヤ部116の一方端に接続される火口部102の先端部が向く方向を変えることができる。このとき、リール部118のレバー118aは巻取り方向と反対方向には自由に回転できないため、溶接作業員のホース112に対する外力を除いてもホース112の湾曲形状をそのまま維持して、変更後の火口部102の先端部の向く方向を保つことができる。これにより、溶接器100の火口部102の先端部の向きを自由に変更することができるため、溶接作業員は配管の裏側に手が入りにくい場所であっても容易に溶接作業を行うことができる。
【0031】
また、溶接作業を終えて、火口部102の先端部の向きをもとの状態に戻す場合には、リール部118のストッパ機構を解除して、レバー118aをワイヤ部116の巻取り方向と反対方向に回転させる。このとき、リール部118と火口部102との間のワイヤ部116の長さは長くなり、弾性部114の復元力によって、ホース112が真っ直ぐになる方向となり、火口部102の先端部の向きをもとの状態に戻すことができる。
【0032】
次に、溶接器100の変形例である溶接器200について説明する。溶接器200と溶接器100との相違は、ワイヤ部116と対応するリール部118を1組とした湾曲巻取部が複数設けられる点である。図4は、溶接器200を火口部102の先端部側(図2におけるA方向)から見た様子を示す図である。
【0033】
図4に示されるように溶接器200は、ワイヤ部116とそのワイヤ部116に対応するリール部118を1組とした4つの組の湾曲巻取部が火口部102の周方向に均等な間隔を置いて配置されている。ここで、上記溶接器100では火口部102の曲がる方向は1つの方向であるが、溶接器200によれば、4つの組の湾曲巻取部のリール部118を用いれば、火口部102を複数の方向に曲げることができる。なお、4つの組の湾曲巻取部が火口部102の周方向に均等な間隔でなく、適当な間隔を置いて配置されるものであってもよい。
【0034】
次に、溶接器100の別の変形例である溶接器300について説明する。溶接器300と溶接器100との相違は、中間部120のみである。図5は、溶接器300を示す構成図である。図6は、溶接器300の火口部102の先端部の向く方向を変えた様子を示す図である。
【0035】
中間部120は、握り部104と火口部102との間に設けられ、溶接用可燃ガスを流通させるフレキシブルホースである。また、中間部120は、ステンレス製の薄いパイプに波付加工し、外装にステンレスのワイヤを編み込んだホースで両端に管継手を取付けたチューブからなり、外力を与えて所望の湾曲形状とすることができる。そして、中間部120は、適当な耐熱性を有する耐熱材料で構成されており、特に、火口部102側の耐熱性を高める処理が施されている。
【0036】
このように、溶接器300によれば、フレキシブルホースが用いられているため、溶接作業員が外力を与えることで、図6に示されるように任意の湾曲形状とし、その後に溶接作業員による外力を除いてもその状態を維持することができるため、火口部102の先端部の向きを自由に変えることができる。これにより、溶接作業員は配管の裏側に手が入りにくい場所であっても容易に溶接作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
10 溶接装置、20 酸素ボンベ、22 酸素用圧力調整器、24 酸素用ホース、30 アセチレンボンベ、32 アセチレン用圧力調整器、34 アセチレン用ホース、100,200,300 溶接器、102 火口部、104 握り部、110,120 中間部、112 ホース、114 弾性部、116 ワイヤ部、118 リール部、118a レバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接用可燃ガスを燃焼させて着火させる火口部と、
手で握ることが可能な握り部と、
握り部と火口部との間に設けられた中間部と、
を備え、
中間部は、
外力を加えることで任意の湾曲形状に曲がり、外力を除いてもその湾曲形状を維持する部材を有することを特徴とする溶接器。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接器において、
中間部は、
溶接用可燃ガスを流通させることが可能なホースであって、少なくとも火口部側に耐熱処理が施されたホースと、
ホースの軸周りにおいて軸方向に沿って巻回され、ホースが真っ直ぐになる方向に復元力が働く弾性部材と、
一方端が火口部側に取り付けられ、他方端が握り部側に取り付けられるワイヤ部と、
ワイヤ部を他方端側において巻き取ることで中間部の火口部側を湾曲させ、巻取状態を固定することで火口部の先端位置を変更した状態を維持する巻取手段と、
を有することを特徴とする溶接器。
【請求項3】
請求項2に記載の溶接器において、
巻取手段は、ワイヤ部を他方端から巻き取るリールを含んで構成されることを特徴とする溶接器。
【請求項4】
請求項3に記載の溶接器において、
ワイヤ部とそれに対応するリールを1組の湾曲巻取部として、複数の組の湾曲巻取部がホースの周方向に間隔をおいて設けられることを特徴とする溶接器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の溶接器において、
弾性部材は、コイルバネであることを特徴とする溶接器。
【請求項6】
請求項1に記載の溶接器において、
中間部は、
溶接用可燃ガスを流通させ、少なくとも火口部側に耐熱処理が施されたフレキシブルホースであることを特徴とする溶接器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の溶接器と、
第1ガスが収容される第1ガス用ボンベと、
第2ガスが収容される第2ガス用ボンベと、
第1ガス用ボンベと溶接器とを連通する第1ガス用配管と、
第2ガス用ボンベと溶接器とを連通する第2ガス用配管と、
を備え、
中間部は、第1ガスと第2ガスとを混合して溶接用可燃ガスとすることを特徴とする溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−240706(P2010−240706A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93870(P2009−93870)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)