説明

溶接電源のロック制御方法。

【課題】 溶接電源に複数のロックモードを有し、ロック設定用キースイッチの操作によって所望のロックモードを選択することができるようにすること。
【解決手段】 溶接電源は第1ロックモード及び第2ロックモードを有し、溶接電源に設けられたロック設定部によって第1ロックモードを選択すると、溶接電源のフロントパネル及び溶接電源外部からの複数の指令信号の中から溶接起動・停止指令信号、溶接ワイヤを送給させるインチング指令信号及びシールドガスを放流させるガスチェック指令信号の入力を許可しその他の指令信号の入力を禁止してロックし、ロック設定部によって第2ロックモードを選択すると指令信号の中から溶接起動・停止指令信号、インチング指令信号、ガスチェック指令信号、出力電流指令信号及び出力電圧指令信号の入力を許可し、その他の指令信号の入力を禁止してロックすることを特徴とする溶接電源のロック制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接電源に複数のロックモードを設け、この複数のロックモードの中から1つを選択して溶接電源をロックするロック制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接を行う際に、作業者がワークに適した溶接条件を設定する必要がある。溶接条件には数多くのパラメータがあり、例えば、炭酸ガスアーク溶接では溶接電圧及び溶接電流等の溶接条件を設定する。作業者がアーク溶接を行っている際に、昼休み等によってアーク溶接を一旦中断し、終了後に再びアーク溶接を開始することは多々ある。このとき、何らかの理由によってフロントパネルのスイッチ等を誤って操作してしまうと溶接条件が変更され、ワークに適した溶接条件を再設定する必要がある。この再設定は作業者にとって面倒な作業である。また、市場では溶接条件の変更を禁止するロック機能を設けた溶接電源が販売されている。以下、ロック機能を有する溶接電源について説明する。
【0003】
図11は、従来技術の溶接電源WPSのブロック図である。同図において、溶接電源WPSは、所定の位置にロック及びロック解除を行うキースイッチKSが設けられている。
【0004】
図11に示す電源主回路INVは、3相200V等の商用電源を入力し、交流の商用電源を直流電圧に整流し、インバータ制御等の出力制御を行い溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwに変換して出力する。溶接ワイヤ2は、ワイヤ送給モータ4によって溶接トーチ1内を送給し被加工物2との間にアークを発生する。
【0005】
電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出して電圧検出信号Vdとして出力する。誤差増幅回路EAは、後述する電圧設定信号Vrと電圧検出信号Vdとを誤差増幅して誤差増幅信号Eaを出力し電源主回路INVを定電圧特性にする。
【0006】
トーチスイッチTSは、溶接トーチ1に設けられている。トーチスイッチTSは、溶接起動・停止指令信号(以後、トーチスイッチ指令信号という)Tsを出力する。キースイッチKSは、鍵を差し所定の位置まで回して抜くとキースイッチ指令信号Ksを出力し、逆に抜いた鍵を差して元の位置まで回して抜くとキースイッチ指令信号Ksの出力を停止する。
【0007】
図11に示す溶接電源WPSにおいて、ガスチェックスイッチGSはガスチェック指令信号Gsを出力し、インチングスイッチINはインチング指令信号Inを出力し、溶接法選択スイッチWDはCO2又はMAG溶接を選択する溶接法選択指令信号Wdを出力し、ワイヤ径選択スイッチIDはワイヤ径を選択するワイヤ径選択指令信号Idを出力し、アークスポットスイッチATはアークスポット指令信号Atを出力し、一元・個別スイッチUIは一元又は個別を選択する一元・個別指令信号Uiを出力する。また、溶接電源WPSの外部に接続されたトーチスイッチTSは、トーチスイッチ指令信号Tsを出力し、リモートコントロールREは、予め定めた出力電圧指令信号Vs及び出力電流指令信号Isを出力する。
【0008】
ロック設定回路RKは記憶機能を有し、ガスチェック指令信号Gs、インチング指令信号In、アークスポット指令信号At、一元・個別指令信号Ui、ワイヤ径選択指令信号Id、溶接法選択指令信号Wd、トーチスイッチ指令信号Ts、出力電圧指令信号Vs及び出力電流指令信号Isを入力とし、キースイッチ指令信号Ksの出力が停止のとき、上記全ての指令信号を書き込んで逐次記憶し、続いて上記記憶した全ての指令信号を読み出して主制御回路SCの出力する。次に、キースイッチKSに鍵を差し所定の位置まで回して抜きキースイッチ指令信号Ksを出力すると、ロック設定回路RKは、ロックと判別してトーチスイッチ指令信号Tsを書き込んで逐次記憶し、その他全ての指令信号の書き込みを禁止する。そして、読み出しは記憶されたトーチスイッチ指令信号Tsとロック前に記憶したその他全ての指令信号とを出力する。
【0009】
主制御回路SCは、ロック前に記憶したその他全ての指令信号を入力し、トーチスイッチ指令信号Tsに応じて電源主回路INV及び送給制御回路SWの制御を行う。
【0010】
続いて、キースイッチKSに抜いた鍵を差して元の位置まで回して抜くとキースイッチ指令信号Ksは出力を停止する。ロック設定回路RSは、キースイッチ指令信号Ksの出力が停止するとロック解除と判別して全ての指令信号の書き込みを許可し、主制御回路SCに新たに記憶された全ての指令信号を出力する。このとき、ロック解除となる。
【0011】
上述に示すように、溶接電源WPSにキースイッチKSを設け、このキースイッチKSによってロック及びロック解除を行う方法が提案されている。(例えば、特許文献1)
【0012】
【特許文献1】特開2005−313219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
作業者が溶接電源のフロントパネル等に配設したスイッチ類及びツマミ類を誤って操作し、最適な溶接条件を変更してしまう操作ミスが多々ある。このとき、従来技術では溶接電源にロック設定用キースイッチを設け、このキースイッチによってロックを行い、トーチスイッチ指令信号Tsを除く全ての指令信号の更新を禁止してスイッチ類及びツマミ類の誤操作による溶接条件変更を防止していた。
【0014】
しかし、溶接作業において、ガス流量の調整及び溶接ワイヤの溶接トーチへの送給調整が頻繁に行われが、従来のロック制御方法ではガス流量を調整するガスチェック指令信号及び溶接ワイヤを送給するインチング指令信号の入力も禁止するので、作業者が上記調整を行うたびに溶接電源のロックを解除しなければならなかった。
【0015】
さらに、溶接作業において工作物等を交換するときも多々ある。このとき、工作物の交換に応じて溶接電源の出力電圧及び出力電流の調整を必要とする。しかし、リモートコントロールからの出力電圧指令信号及び出力電流指令信号の入力も禁止するので、作業者が工作物を交換するたびに溶接電源のロックを解除しなければならい。このロック解除は面倒であり溶接作業の効率性も悪くする。よって、溶接電源がロックのときでも上述に示す各調整等を行うことができるロック制御方法が求められる。
【0016】
そこで、本発明では、上述した課題を解決することができる溶接電源のロック制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、溶接電源は第1ロックモード及び第2ロックモードを有し、溶接電源に設けられたロック設定部によって上記第1ロックモードを選択すると、溶接電源のフロントパネル及び溶接電源外部からの複数の指令信号の中から溶接起動・停止指令信号、溶接ワイヤを送給させるインチング指令信号及びシールドガスを放流させるガスチェック指令信号の入力を許可し、その他の指令信号の入力を禁止してロックし、上記ロック設定部によって上記第2ロックモードを選択すると、上記指令信号の中から溶接起動・停止指令信号、上記インチング指令信号、上記ガスチェック指令信号、出力電流指令信号及び出力電圧指令信号の入力を許可し、その他の指令信号の入力を禁止してロックする、ことを特徴とする溶接電源のロック制御方法である。
【0018】
第2の発明は、溶接電源はさらに第3ロックモードを有し、上記ロック設定部によって上記第3ロックモードを選択すると、上記溶接起動・停止指令信号を除く指令信号全ての入力を禁止してロックする、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源のロック制御方法である。
【0019】
第3の発明は、上記ロック設定部が各ロックモードに対応したパスワードを入力してロックモードを選択するロック設定部である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の溶接電源のロック制御方法である。
【0020】
第4の発明は、上記ロック設定部への上記パスワードの入力を、回転式設定部によって行う、ことを特徴とする請求項3記載の溶接電源のロック制御方法である。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、溶接電源に第1ロックモード及び第2ロックモードを設け、第1ロックモードを選択すると溶接起動・停止指令信号、インチング指令信号及びガスチェック指令信号の入力を許可するので、ロックのときでも溶接ワイヤの溶接トーチへの送給の調整及びガスの流量調整ができる。また、第2ロックモードを選択すると、溶接起動・停止指令信号、インチング指令信号及びガスチェック指令信号に加えて出力電流指令信号及び出力電圧指令信号の入力も許可するので、ロックのときに工作物を交換しても出力電圧及び出力電流の調整ができる。よって、溶接作業の効率化がはかれる。
【0022】
第2の発明によれば、溶接電源に第3ロックモードを設け、この第3ロックモードを選択すると溶接起動・停止指令信号を除く全ての指令信号の入力を禁止するので、他人が勝手に溶接電源を使用できなくなる。
【0023】
第3の発明によれば、各ロックモードにパスワードを設け、このパスワードによって各ロックモードを選択するので、ロックモードを選択する高価な多点切換キースイッチを使用しなくてもよい。
【0024】
第4の発明によれば、各ロックモードに対応するパスワードの入力をフロントパネルに設けた回転式設定部によって行うので、パスワードの入力の簡素化と部品の併用ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る溶接電源WPSのブロック図である。同図において、図11に示す従来技術の溶接電源WPSのブロック図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0026】
図1に示す溶接電源WPSにおいて、ロック設定部は、下記に述べるロックモード選択回路RMSと多点切換キースイッチKMとで形成される。また、多点切換キースイッチKMは、鍵の抜き差しがA点、B点及びC点の3点の位置で行われ、鍵を差して所定の位置からA点まで回すと予め定めた時間で1パルスが出力する第1キースイッチ指令信号Km1を出力し、B点まで回すと予め定めた時間で2パルスが出力する第2キースイッチ指令信号K2mを出力し、C点まで回すと予め定めた時間で3パルスが出力する第3キースイッチ指令信号Km3を出力する。
【0027】
図1に示すロックモード選択回路RMSは、ロック選択回路RSと溶接指令記憶回路AMとで形成され、ロック選択回路RSは、第1ロックモードRS1、第2ロックモードRS2、第3ロックモードRS3及びロックモード無しRS0を有し、ロック選択回路RSは、第1キースイッチ指令信号Km1によって第1ロックモードRS1を選択し、第2キースイッチ指令信号Km2によって第2ロックモードRS2を選択し、第3キースイッチ指令信号Km3によって第3ロックモードRS3を選択し、多点切換キースイッチKMからのキースイッチ指令信号が入力されないとロックモード無しRS0を選択する。
【0028】
次に、作業者が溶接電源の各ロックモードを選択したときの動作は以下のようになる。 図3は、多点切換キースイッチKMによって第1ロックモードRS1が選択されたときの動作を説明する詳細図である。同図において、ロック選択回路RSは、トーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs、インチング指令信号In、出力電圧指令信号Vs、及び出力電流指令信号Is、溶接法選択指令信号Wd、ワイヤ径選択指令信号Id、アークスポット指令信号At、一元・個別指令信号Uiを入力とし、第1キースイッチ指令信号Km1によって第1ロックモードRS1が選択されると、ロック選択回路RSは、トーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs及びインチング指令信号Inを選択して図3に示す溶接指令記憶回路AMに出力する。
【0029】
溶接指令記憶回路AMは、上記選択されたトーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs及びインチング指令信号Inを書き込んで逐次記憶し、その他の指令信号の書き込みを禁止する。続いて、読み出しは逐次記憶された指令信号を、トーチスイッチ指令信号Tsk、ガスチェック指令信号Gsk及びインチング指令信号Inkとし、第1ロックモードRS1が選択される前に記憶したその他の指令信号を、出力電圧指令信号Vsm、出力電流指令信号Ism、溶接法選択指令信号Wdm、ワイヤ径選択指令信号Idm、アークスポット指令信号Atm及び一元・個別指令信号Uimとして出力する。このとき、主制御回路SCは、出力されるトーチスイッチ指令信号Tsk、インチング指令信号Ink及びガスチェック指令信号Gskに基づいて、溶接電源がロックのときでも溶接ワイヤ2の溶接トーチ1への送給の調整及びガスの流量調整が可能となる。
【0030】
図4は、第2ロックモードRS2が選択されたときの動作を説明する詳細図である。同図において、ロック選択回路RSは、トーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs、インチング指令信号In、出力電圧指令信号Vs、及び出力電流指令信号Is、溶接法選択指令信号Wd、ワイヤ径選択指令信号Id、アークスポット指令信号At、一元・個別指令信号Uiを入力とし、第2キースイッチ指令信号Km2によって第2ロックモードRS2が選択されると、トーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs、インチング指令信号In、出力電圧指令信号Vs及び出力電流指令信号Isを選択して図4に示す溶接指令記憶回路AMに出力する。
【0031】
溶接指令記憶回路AMは、上記選択されたトーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs、インチング指令信号In、出力電圧指令信号Vs及び出力電流指令信号Isを書き込んで逐次記憶し、その他の指令信号の書き込みを禁止する。続いて、読み出しは逐次記憶された指令信号を、トーチスイッチ指令信号Tsk、ガスチェック指令信号Gsk、インチング指令信号Ink、出力電圧指令信号Vsk及び出力電流指令信号Iskとし、第2ロックモードRS2が選択される前に記憶したその他の指令信号を、溶接法選択指令信号Wdm、ワイヤ径選択指令信号Idm、アークスポット指令信号Atm及び一元・個別指令信号Uimとして出力する。このとき、主制御回路SCは、出力されるトーチスイッチ指令信号Tsk、ガスチェック指令信号Gsk、インチング指令信号Ink、出力電圧指令信号Vsk及び出力電流指令信号Iskに基づいて、溶接電源がロックのときでも溶接ワイヤ2の溶接トーチ1への送給の調整、ガスの流量調整に加えて溶接電源の出力電圧及び出力電流の調整も可能となる。
【0032】
図5は、第3ロックモードRS3が選択されたときの動作を説明する詳細図である。同図において、ロック選択回路RSは、図3及び図4に示す指令信号と同一の指令信号を入力とし、第3キースイッチ指令信号Km3によって第3ロックモードRS3が選択されると、トーチスイッチ指令信号Tsを選択して溶接指令記憶回路AMに出力する。
【0033】
溶接指令記憶回路AMは、上記選択されたトーチスイッチ指令信号Tsを書き込んで逐次記憶し、その他の指令信号の書き込みを禁止する。続いて、読み出しは逐次記憶された指令信号を、トーチスイッチ指令信号Tskとし、第3ロックモードRS3が選択される前に記憶したその他の指令信号を、ガスチェック指令信号Gsm、インチング指令信号Inm、出力電圧指令信号Vsm、出力電流指令信号Ism、溶接法選択指令信号Wdm、ワイヤ径選択指令信号Idm、アークスポット指令信号Atm及び一元・個別指令信号Uimとして出力する。このとき、主制御回路SCは、トーチスイッチ指令信号Tskのみが更新され、その他の指令信号の更新が禁止されるので、溶接電源がロックのときに他人が勝手に溶接電源を使用できなくなる。
【0034】
次に、作業者が溶接電源のロックを解除するときは以下のように行う。作業者は多点切換キースイッチKMに抜いた鍵を、例えばA点の位置に差し所定の位置に戻して鍵を抜くと多点切換キースイッチKMは、第1キースイッチ指令信号Km1の出力を停止する。
【0035】
図2は、ロックモード無しのときの動作を説明する詳細図である。同図において、ロック選択回路RSは、トーチスイッチ指令信号Ts、ガスチェック指令信号Gs、インチング指令信号In、出力電圧指令信号Vs、及び出力電流指令信号Is、溶接法選択指令信号Wd、ワイヤ径選択指令信号Id、アークスポット指令信号At、一元・個別指令信号Uiを入力とし、第1キースイッチ指令信号Km1の入力が停止するとロックモード無しRS0が選択される。このとき、入力信号である上記全ての指令信号を選択して溶接指令記憶回路AMに出力する。
【0036】
溶接指令記憶回路AMは、上記全ての指令信号を書き込んで逐次記憶し、続いて、読み出しは逐次記憶された上記全ての指令信号を、トーチスイッチ指令信号Tsk、ガスチェック指令信号Gsk、インチング指令信号Ink、出力電圧指令信号Vsk、出力電流指令信号Isk、溶接法選択指令信号Wdk、ワイヤ径選択指令信号Idk、アークスポット指令信号Atk及び一元・個別指令信号Uikとして出力する。このとき、溶接指令記憶回路AMは、上記全ての指令信号の書き込みを許可するので、ロック解除となる。
【0037】
[実施の形態2]
実施形態1と実施形態2の違いは、図1に示す多点切換キースイッチKMを図6に示すパスワード対応モード設定回路PMSに置換したのみであり、その他の構成物は、図1に示す実施形態1に係る溶接電源WPSのブロック図と同一構成であるので説明は省略する。
【0038】
図6は、パスワード対応モード設定回路PMSの詳細図であり、パスワード対応モード設定回路PMSは、表示器10、実行キー20、選択キー30、回転式設定器DS及びパスワード・モード設定回路PMによって形成される。図7は、溶接電源WPSのフロントパネルFPに設けられたロック/パスワード設定部の一例を示す外観図であり、液晶等の表示器10には、設定したロックモード及びパスワードの番号を表示する。実行キー20は、設定したロックモード又はパスワードを確定するときに使用する。選択キー30は、モード設定又はパスワード設定を選択するときに使用する。回転式設定器DSは、図7に示すように、ダイヤルと0〜9までの目盛とを設け、ダイヤルを目盛1に合わせると、図10(A)に示す、予め定めた時間に1パルスが出力され、目盛3に合わせると図10(C)に示す、3パルスが出力し、目盛9に合わせると図示省略の9パルスが出力する。上記より回転式設定器DSは、ダイヤルの目盛を大きくしていくとパルスが1個づつ増加する。
【0039】
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係る溶接電源のロック制御方法の動作を説明するフローチャートである。同図を参照して実施形態2のロックモードの選択及びパスワードの設定方法について説明する。
【0040】
図8に示すステップST01において、実行キー20及び選択キー30を同時に予め定めた時間押すと、図6に示すパスワード・モード設定回路PMはモード設定に入る。
【0041】
ステップST02において、図7に示す回転式設定器DSのダイヤルを目盛1に合わせると、パスワード・モード設定回路PMに図10(A)に示す1パルスの回転式設定信号Ds1が入力される。
【0042】
ステップST03において、表示器10にモード設定番号1が表示され、作業者が表示器10によって第1モードを設定することを確認する。
【0043】
ステップST04において、作業者が実行キー20を押すとパスワード・モード設定回路PMに回転式設定器DSのダイヤル目盛1に基づいて第1モードの設定が確定する。
【0044】
ステップST05において、作業者が選択キー30を押してモード設定からパスワード設定に移行させる。
【0045】
図9に示すステップST06において、パスワード設定になり、このとき回転式設定器DSのダイヤルを、例えば、目盛6に合わせると、パスワード・モード設定回路PMに、図10(D)に示す6パルスの回転式設定信号Ds6が入力され第1モードにパスワード6が入力される。
【0046】
ステップST7において、第1モードに入力したパスワードが予め定めたパスワードと同一であるかを確認し、NOの場合は、選択キー30を押してステップST06に戻り、回転式設定器DSによって再度パスワードを入力する。YESの場合は、ステップST09に進み、実行キー20を押して第1モードにパスワード6の設定を確定する。このとき、パスワード・モード設定回路PMは、第1モード設定信号Pm1をロックモード選択回路RMSに出力する。ロックモード選択回路RMSは、第1モード設定信号Pm1に基づいて第1ロックモードRS1を選択する。
【0047】
上述において、パスワードに1桁の番号を用いているが、パスワードに数桁の番号を用いてもよい。
【0048】
次に、作業者が溶接電源のロックを解除するときは以下のように行う。ロックのときに実行キー20と選択キー30とを同時に予め定めた期間押すとパスワード・モード設定回路PMはモード設定からモード解除に移行する。
【0049】
モード解除に移行すると、図9に示すステップ06〜ステップ10と同一処理を行い、設定したパスワード6と同一パスワードを再度入力して実行キー20を押す。このとき、パスワード・モード設定回路PMは、モード解除と判別して第1モード設定信号Pm1の出力を停止する。続いて、ロックモード選択回路RMSは、第1モード設定信号Pm1の出力が停止するとロックモード無しRS0を選択してロック解除とする。よって本実施の形態2では、ロックモードの選択を高価な多点切換キースイッチを使用しなくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態1に係る溶接電源WPSのブロック図である。
【図2】ロックモード無しを選択したときの動作を説明する詳細図である。
【図3】第1ロックモードを選択したときの動作を説明する詳細図である。
【図4】第2ロックモードを選択したときの動作を説明する詳細図である。
【図5】第3ロックモードを選択したときの動作を説明する詳細図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るパスワード対応モード設定回路PMSの詳細図 である。
【図7】溶接電源のフロントパネルに設けられたロック/パスワード設定部の一例 を示す外観図である。
【図8】実施形態2に係る溶接電源のロック制御方法を示すフローチャートである。
【図9】実施形態2に係る溶接電源のロック制御方法を示すフローチャートである。
【図10】回転式設定器の動作を説明する波形図である。
【図11】従来技術の溶接電源WPSのブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 溶接トーチ
2 溶接ワイヤ
3 被加工物
4 ワイヤ送給モータ
AC 商用周波数の交流電源
AM 溶接指令記憶回路
AT アークスポットスイッチ
At アークスポット指令信号At
DS 回転式設定器
Ds 回転式設定信号
EA 誤差増幅回路
Ea 誤差増幅信号
ID ワイヤ径選択スイッチ
Id ワイヤ径選択指令信号
IN インチングスイッチ
In インチング指令信号
Ir 電流設定信号
Is 出力電流指令信号
Iw 溶接電流
INV 電源主回路
GS ガスチェックスイッチ
Gs ガスチェック指令信号
KS キースイッチ
Ks キースイッチ指令信号
KM 多点切換キースイッチ
Km1 第1キースイッチ指令信号
Km2 第2キースイッチ指令信号
Km3 第3キースイッチ指令信号
RE リモートコントロール
RK ロック設定回路
PM パスワード・モード設定回路
RS ロック選択回路
SC 主制御回路
SW 送給制御回路
Sw 送給制御信号
TS トーチスイッチ
Ts トーチスイッチ指令信号(溶接起動・停止指令信号)
UI 一元・個別スイッチ
Ui 一元・個別指令信号
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
Vr 電圧設定信号
Vs 出力電圧指令信号
Vw 溶接電圧
WD 溶接法選択スイッチ
Wd 溶接法選択指令信号
WPS 溶接電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源は第1ロックモード及び第2ロックモードを有し、溶接電源に設けられたロック設定部によって前記第1ロックモードを選択すると、溶接電源のフロントパネル及び溶接電源外部からの複数の指令信号の中から溶接起動・停止指令信号、溶接ワイヤを送給させるインチング指令信号及びシールドガスを放流させるガスチェック指令信号の入力を許可し、その他の指令信号の入力を禁止してロックし、前記ロック設定部によって前記第2ロックモードを選択すると、前記指令信号の中から溶接起動・停止指令信号、前記インチング指令信号、前記ガスチェック指令信号、出力電流指令信号及び出力電圧指令信号の入力を許可し、その他の指令信号の入力を禁止してロックする、ことを特徴とする溶接電源のロック制御方法。
【請求項2】
溶接電源はさらに第3ロックモードを有し、前記ロック設定部によって前記第3ロックモードを選択すると、前記溶接起動・停止指令信号を除く全ての指令信号の入力を禁止してロックする、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源のロック制御方法。
【請求項3】
前記ロック設定部が各ロックモードに対応したパスワードを入力してロックモードを選択するロック設定部である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の溶接電源のロック制御方法。
【請求項4】
前記ロック設定部への前記パスワードの入力を、回転式設定部によって行う、ことを特徴とする請求項3記載の溶接電源のロック制御方法。
























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−210007(P2007−210007A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32185(P2006−32185)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】