説明

溶液組成物及びそれを用いてなる成形体

【課題】シームレスの半導電性樹脂ベルトが容易に成形可能であり、電気抵抗が高抵抗領域で安定的に制御された半導電性樹脂ベルトを製造できる溶液組成物を提供する。
【解決手段】成分(A)溶剤可溶性の液晶ポリエステル,成分(B)導電性物質(カーボンブラック等)及び成分(C)溶剤を含有してなり、成分(A)100重量部に対し、成分(B)が1〜100重量部である溶液組成物の提供。該溶液組成物は半導電性樹脂ベルトの製造用として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルを含む溶液組成物、該溶液組成物を用いて得られる成形体に関する。また、本発明は該溶液組成物を用いて得られる半導電性樹脂ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカラー方式の電子写真プロセスを採用したプリンターやFAX機能を搭載した多機能複写機では、中間転写ベルトと呼ばれる半導電性領域(抵抗値109〜1013Ω/ )の導電性を有する樹脂製のベルト(以下、「半導電性樹脂ベルト」という)が使用されている。特に近年市場が拡大している高機能・多機能複写機では、ポリイミド樹脂を用いた半導電性樹脂ベルトが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ポリイミド樹脂は、キャスト製膜による加工が容易であり、優れた難燃性を有しており、カーボンブラック等の導電性物質を分散させることにより、電気抵抗を高抵抗領域で安定に制御できることから、前記半導電性樹脂ベルトの製造用材料として有用であった。しかしながら、ポリイミド樹脂は本質的に廃材をリサイクルすることが困難であり、近年の廃棄物削減による環境負荷軽減を考慮すると、前記ポリイミド樹脂を代替し得る熱可塑性樹脂の適用が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開2008−40231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに検討されているポリイミド樹脂代替の熱可塑性樹脂は、押出成形法によって半導電性樹脂ベルトを製造しようとしていた。しかしながら、該半導電性樹脂ベルトはシームレスであることを重要視するため、該押出成形法によって成形される半導電性樹脂ベルトでは溶融樹脂の合流部(ウエルド)の発生が問題となっていた。また、その他の半導電性樹脂ベルトの必要物性に関しても、必ずしも満足できるものではなかった。
そこで本発明の目的は、リサイクルに適用可能な熱可塑性樹脂を用い、ベルトとして、キャスト製膜によるシームレスの半導電性樹脂ベルトが成形可能な溶液組成物を提供することにある。また、該溶液組成物を用いてなる半導電性樹脂ベルトとして有用な成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解消すべく鋭意研究、検討を重ねてきた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の<1>を提供する。
<1>以下の成分(A),成分(B)及び成分(C)を含有してなり、成分(A)100重量部に対し、成分(B)が1〜100重量部である溶液組成物
(A)溶剤可溶性の液晶ポリエステル
(B)導電性物質
(C)溶剤
【0007】
さらに本発明は、前記<1>に係る好適な実施態様として、以下の<2>〜<4>を提供する。
<2>前記成分(A)が、以下の式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位とを有し、全構造単位の合計に対して式(1)で表される構造単位が30〜80モル%、式(2)で表される構造単位が35〜10モル%、式(3)で表される構造単位が35〜10モル%からなる液晶ポリエステルである、<1>の溶液組成物;
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYはそれぞれ独立にO又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
<3>前記成分(B)がカーボンブラックである、<1>又は<2>の樹脂組成物;
<4>前記成分(C)が非プロトン性溶剤である、<1>〜<3>のいずれかの溶液組成物;
【0008】
また本発明は、前記いずれかの溶液組成物を用いた以下の<5>〜<8>を提供する。
<5><1>〜<4>のいずれかの溶液組成物から得られる成形体;
<6>体積抵抗率が1×107〜1×1010Ω・cmの範囲にある、<5>の成形体;
<7>半導電性樹脂ベルトとしての使用する、<5>又は<6>の成形体;
<8>転写ベルト、中間転写ベルト及び転写定着ベルトからなる群より選ばれる半導電性樹脂ベルトとしての使用する、<5>又は<6>の成形体
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶液組成物は、シームレスの半導電性樹脂ベルトを容易に製造することが可能であり、得られる半導電性樹脂ベルトは、電気抵抗が高抵抗領域で十分安定的に制御され、電子写真装置に使用される転写ベルト、中間転写ベルト又は転写定着ベルトとして有用である。また、該溶液組成物に含有される液晶ポリエステルは、リサイクルが十分可能であり、近年要求されている環境負荷低減にも対応できるため、産業上の価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<成分(A)>
本発明に用いる成分(A)の液晶ポリエステルとは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を備えたポリエステルである。この液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で表される構造単位(以下、「式(1)構造単位」という)と、下記式(2)で表される構造単位(以下、「式(2)構造単位」という)と、下記式(3)で表される構造単位(以下、「式(3)構造単位」という)とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)構造単位が30〜80モル%、式(2)構造単位が35〜10モル%、式(3)構造単位が35〜10%であるものが好ましい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;XおよびYはO又はNHを表わし、XとYが同じ構成であってもよい。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
【0012】
式(1)構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位であり、該芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸等を挙げることができる。
【0013】
式(2)構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり、該芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0014】
式(3)構造単位は、芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族ジアミンに由来する構造単位である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げることができる。
また、該フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、p−アミノフェノール、3−アミノフェノール等が挙げられ、該芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0015】
前記成分(A)に用いる液晶ポリエステルは溶剤可溶性であり、かかる溶剤可溶性とは、温度50℃において、1重量%以上の濃度で溶剤に溶解することを意味する。この場合の溶剤とは、本発明の溶液組成物の調製に用いる好適な溶剤の何れか1種であり、詳細は後述する。
このような溶剤可溶性を有する液晶ポリエステルとしては、前記式(3)構造単位として、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン及び/又は芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むものが好ましい。すなわち、式(3)で表される構造単位として、X及びYの少なくとも一方がNHである構造単位を含むと好ましく、実質的に全ての式(3)構造単位が、以下の式(3’)で表される構造単位(以下、「式(3’)構造単位」という)であることがより好ましい。
(3’)−X−Ar3−NH−
(式中、Ar3及びXは前記式(3)と同義である。)
式(3)構造単位は全構造単位の合計に対して、25〜33モル%の範囲で含むとより好ましく、こうすることにより、溶剤可溶性は一層良好になる。このように式(3’)構造単位を、式(3)構造単位として有する液晶ポリエステルは、溶剤に対する溶解性が一層優れており、後述する溶液組成物を用いての絶縁層の製造がより容易となるという利点もある。
【0016】
式(1)構造単位は全構造単位の合計に対して、30〜80モル%の範囲であり、35〜50モル%の範囲であるとより好ましい。このようなモル分率で式(1)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分維持しながらも、溶剤に対する溶解性がより優れる傾向にある。さらに、式(1)構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸及び/又は2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が容易に入手できるという点で好ましい。
【0017】
式(2)構造単位は全構造単位の合計に対して、35〜10モル%の範囲であり、25〜33モル%の範囲であるとより好ましい。このようなモル分率で式(2)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分維持しながらも、溶剤に対する溶解性がより優れる傾向にある。式(2)構造単位を誘導する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくも1種が容易に入手できるという点で好ましい。
【0018】
また、得られる液晶エステルがより高度の液晶性を発現する点では、式(2)構造単位と式(3)構造単位とのモル分率は、[式(2)構造単位]/[式(3)構造単位]で表して、0.9/1.0〜1.0/0.9の範囲が好適である。
【0019】
次に液晶ポリエステルの製造方法について簡単に説明する。
該液晶ポリエステルは、種々公知の方法により製造可能である。好適な液晶ポリエステルである、式(1)構造単位、式(2)構造単位及び式(3)構造単位からなる液晶ポリエステルを製造する場合、これら構造単位を誘導するモノマーを、エステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後、重合させて液晶ポリエステルを製造する方法が、操作が簡便であるため好ましい。
【0020】
前記エステル形成性・アミド形成性誘導体について、例を挙げて説明する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のような、カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、当該カルボキシル基が、ポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように、酸塩化物、酸無水物等の反応活性の高い基になっているものや、当該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等のような、フェノール性水酸基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
また、芳香族ジアミンのように、アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも液晶ポリエステルをより簡便に製造するうえでは、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンといったフェノール性水酸基及び/又はアミノ基を有するモノマーとを、脂肪酸無水物でアシル化してエステル形成性・アミド形成性誘導体(アシル化物)とした後、該アシル化物のアシル基と、カルボキシ基を有するモノマーのカルボキシ基とがエステル交換・アミド交換を生じるようにして重合させ、液晶ポリエステルを製造する方法が特に好ましい。
このような液晶ポリエステルの製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報又は特開2002−146003号公報に記載されている。
【0022】
アシル化においては、フェノール性水酸基とアミノ基との合計に対して、脂肪酸無水物の使用量が1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、1.05〜1.1倍当量であるとより好ましい。脂肪酸無水物の使用量が1.0倍当量未満では、重合時にアシル化物や原料モノマーが昇華して易くなって反応系が閉塞し易い傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0023】
アシル化は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化に使用される脂肪酸無水物は、価格と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸又はこれらから選ばれる2種以上の混合物が好ましく、特に好ましくは、無水酢酸である。
【0024】
アシル化に続く重合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
また、重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
【0025】
アシル化及び/又は重合の際には、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸や未反応の脂肪酸無水物は蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
【0026】
なお、アシル化や重合においては触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。
ただし、金属を含む触媒は半導電性樹脂ベルトを製造する際の電気特性に影響し易いため、前記の触媒の中でも、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
該触媒は、通常モノマーの投入時に一緒に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合には、アシル化からそのまま重合に移行することができる。
【0027】
このような重合で得られた液晶ポリエステルはそのまま、成分(A)として用いることができるが、耐熱性や液晶性という特性の更なる向上のためには、より高分子量化させることが好ましく、このような高分子量化には固相重合を行うことが好ましい。この固相重合に係る一連の操作を説明する。前記の重合で得られた、比較的低分子量の液晶ポリエステルを取り出し、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にする。続いて、粉砕後の液晶ポリエステルを、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で加熱処理するという操作により固相重合は実施できる。該固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお、後述する好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得るといった観点から、該固相重合の好適条件を詳述すると、反応温度として210℃を越えることが好ましく、より一層好ましくは220℃〜350℃の範囲である。反応時間は1〜10時間から選択されることが好ましい。
【0028】
本発明の成分(A)に用いる液晶ポリエステルとしては、その流動開始温度が250℃以上であることが好ましい。ここでいう流動開始温度とは、フローテスターによる溶融粘度の評価において、9.8MPaの圧力下で液晶ポリエステルの溶融粘度が4800Pa・s以下になる温度をいう。なお、この流動開始温度とは、液晶ポリエステルの分子量の目安として当業者には周知のものである(小出直之編,「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」,95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行)。
【0029】
該液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上330℃以下であることが更に好ましい。流動開始温度が330℃以下であれば、液晶ポリエステルの溶剤に対する溶解性がより良好になることに加え、本発明の溶液組成物を得たとき、その粘度が著しく大にならないので、該溶液組成物の取扱性が良好となる傾向がある。かかる観点から、流動開始温度が260℃以上320℃以下の液晶ポリエステルがさらに好ましい。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような好適な範囲に制御するには、前記固相重合の重合条件を適宜最適化すればよい。
【0030】
<成分(B)>
導電性物質としては、後述する半導電性を満たす範囲で選択されるものであり、該導電性物質自身の体積抵抗値と使用量(半導電性樹脂ベルト中の導電性物質含有量)とを勘案して選択する。
【0031】
前記導電性物質の体積抵抗値と液晶ポリエステル(A)に対する分散性から好適なものを例示すると、カーボンブラックやカーボンファイバー、グラファイト等のカーボン系フィラー、金属系導電性フィラー、金属酸化物系導電性フィラー、四級アンモニウム塩等のイオン導電性物質が挙げられる。これらの中でもカーボンブラックが経済性の点から有利であり好ましい。
【0032】
前記カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等が好適に使用でき、この中でも不純物としての官能基が少なく、カーボン凝集による外観不良を発生しにくいアセチレンブラックが特に好適に使用できる。更に、1次粒子径が10〜100nm、比表面積10〜200m2/g、pH値6〜11のものがより好ましい。このカーボンブラックは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0033】
<成分(C)>
成分(C)は溶剤であり、当該溶剤は使用する成分(A)の液晶ポリエステルを溶解可能なものから選択される。
成分(A)の液晶ポリエステルとして、上述した好適な液晶ポリエステル、特に前記式(3’)構造単位を含む液晶ポリエステルを用いた場合、該液晶ポリエステルはハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤に対して十分な溶解性を発現するので、当該非プロトン性溶剤が成分(C)として好適である。
ハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤とは、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;γ―ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶剤;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶剤、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン系溶剤が挙げられる。なお、上述の液晶ポリエステルの溶剤可溶性とは、これらから選ばれる少なくとも1つの非プロトン性溶剤に可溶であることを指すものである。
【0034】
成分(A)の溶剤可溶性をより一層良好にして、溶液組成物が得られやすい点では、例示した溶剤の中でも、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。中でも、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤が好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)がより好ましい。更には、前記溶剤が、1気圧における沸点が180℃以下の揮発性の高い溶剤であると、後述する成形体の製造がより容易になるので好ましく、このような点からはDMF、DMAcを用いることが特に好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明の溶液組成物には、得られる成形体が、半導電性樹脂ベルトとして好適な体積抵抗率が得られる範囲であれば、上述の成分以外に、非導電性物質を加えてもよい。非導電性物質としては、例えば各種非導電性の無機粉体や樹脂、分散剤、シリコーン系又はフッ素系の離型剤、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0036】
非導電性の無機粉体としては具体的には、例えばアルミナ、シリカ等の小径粒状物質、雲母、粘度鉱物等の板状・鱗片状物質、ホウ酸アルミ、チタン酸カリウム等の短繊維状又はウイスカー状物質等が挙げられる。
【0037】
非導電性物質である樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体に代表されるエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、これらは一種だけでなく、二種以上が添加されていてもよい。ただし、このような液晶ポリエステル以外の樹脂を用いる場合、これらの樹脂も該溶液組成物に使用した成分(C)溶剤に可溶であることが好ましい。
【0038】
この非導電性物質の添加により、例えば半導電性樹脂ベルトの機械強度等、各種物性を制御することが可能となる。また、このような非導電性物質は、導電性物質の分散を適度に補助することがある。このような分散補助性を備えた非導電性物質の添加は、該導電性物質、特に導電性粒子の凝集等を防止して、安定した体積抵抗値を発現する成形体の製造を容易にする。
【0039】
<溶液組成物>
本発明の溶液組成物は、前記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を混合することで製造することができる。その混合順は特に限定されるものではないが、該溶液組成物において成分(C)に成分(A)の一部又は全部が溶解していることが好ましいので、予め成分(A)と成分(C)とを混合し、この成分(A)を成分(C)に十分溶解させて液晶ポリエステル溶液にしておいてから、該液晶ポリエステル溶液に成分(B)を添加することが好ましい。また、本発明の溶液組成物において、前記非導電性材料等のその他の成分を含有する場合も、予め成分(A)と成分(C)とを混合して液晶ポリエステル溶液を製造してから、該液晶ポリエステル溶液に成分(B)及びその他の成分を添加することが好ましい。
【0040】
以下、本発明の溶液組成物の好適な製造方法に関し説明する。まず、適当な加温装置及び攪拌装置を備えた混合機に、成分(A)と成分(C)とを投入し、成分(C)に成分(A)を十分溶解させる。この溶解は室温から使用した成分(C)の沸点以下の温度範囲で実施可能であり、好ましくは50℃以上成分(C)の沸点以下の温度範囲から選択される。また溶解時間は、0.1〜10時間程度から選択される。また、かかる混合には液晶ポリエステルの酸化劣化を良好に防止する観点から、窒素ガス等の不活性ガスにより前記混合機内を十分置換しておくことが好ましい。
このようにして液晶ポリエステル溶液を製造した後、成分(B)又は成分(B)とその他の成分とを添加する。そして添加後は、成分(B)が液晶ポリエステル溶液に十分分散するように攪拌することが好ましい。なお、成分(B)を分散させる場合は、室温程度の温度条件でも十分である。
【0041】
本発明の溶液組成物の製造において、成分(B)やその他の成分を前記液晶ポリエステル溶液に良好に分散させるうえでは、プラネタリーミキサーやビーズミル、ボールミル、超音波、三本ロール等による混合・分散させる方法が好ましく採用される。また、このようにして混合・分散処理を行った後、脱泡処理等を行ってもよい。
【0042】
本発明の溶液組成物において、成分(B)の配合割合は、成分(A)100重量部に対して、成分(B)が1重量部以上100重量部以下であり、3重量部以上80重量部以下がさらに好ましく、5重量部以上60重量部以下がより好ましい。成分(B)の配合割合が大きすぎると、半導電性樹脂ベルトとしての体積抵抗率が低くなりすぎることに加え、該半導電性樹脂ベルトの機械特性が低下する傾向がある。一方、成分(B)の配合割合が小さすぎると、半導電性樹脂ベルトとして所望の体積抵抗率が得られないことがある。
【0043】
次に本発明の溶液組成物における成分(C)の配合割合に関し説明する。
成分(C)として好適な非プロトン性溶剤を用いた場合、該非プロトン性溶剤100重量部に対して、成分(A)が3〜50重量部、好ましくは5〜40重量部にすることが好ましい。成分(C)に対する成分(A)がこのような配合割合であれば、成分(C)に成分(A)を十分溶解することができる。また、成分(A)の配合割合がこのような範囲であると、本発明の溶液組成物をシート状に加工(シート化)して半導電性樹脂ベルトを製造する効率が良好になり、シート化した後、該シートに含有される溶剤を乾燥除去する際に、厚みムラ等が生じるといった不都合も起こり難い傾向がある。
【0044】
<成形体>
本発明の溶液組成物は、キャスト製膜法等の公知の方法により、フィルム状や板状の成形体を製造することができる。
ここでは、特に半導電性樹脂ベルトを製造する方法に関し詳述することにする。
本発明の溶液組成物は、以下に示す成形方法によりシームレスの半導電性樹脂ベルトを得ることができる。具体的には、該溶液組成物から筒状の成形体(筒状成形体)を成形することにより、半導電性樹脂ベルトを製造することができる。
【0045】
この筒状体の成形は、例えば円筒状金型を回転させた後、回転している円筒状金型の内周面又は外周面に前記溶液組成物を塗布したり、円筒状に空隙部を有する金型を用い、該空隙部に前記溶液組成物を注入したり、することで筒状形状の成形体が形成される。このようにして得られた成形体をさらに乾燥することにより、半導電性樹脂ベルト製造用として有用な筒状成形体が形成される。また、得られた筒状成形体をさらに熱処理することにより、該筒状成形体の機械強度といった特性がさらに向上して、半導電性樹脂ベルトが完成する。該溶液組成物を金型の内周面や外周面に塗布する方式には、浸漬方式、遠心方式、塗布方式等にてコートする方式が挙げられる。このような半導電性樹脂ベルトの製造方法はポリイミド樹脂を含むワニスを使用する方法として、従来より公知であり、特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等に詳細が記載されている。また、このようにして金型に塗布した後、溶液組成物に用いた成分(C)を揮発除去するために加熱処理を実施する。この加熱処理によれば、成形された筒状成形体中に含有される液晶ポリエステルの機械特性等をさらに向上させることができる。この場合の加熱処理は、200〜400℃の温度範囲で実施される。
次いで、得られた半導電性樹脂ベルトと金型とを分離する。このような半導電性樹脂ベルトの製造用に使用される金型は、溶液組成物が接する表面に離型処理等が施されていてもよい。
【0046】
上述のように、本発明の溶液組成物と適当な金型とを使用することにより、シームレスの半導電性樹脂ベルトを成形することができるが、該溶液組成物をシート状に加工した後、得られたシートを筒状にすることでも、半導電性樹脂ベルトを製造することができる。この場合、例えば、該溶液組成物から公知のキャスト製膜を使用して、長尺状シートを形成した後、得られた長尺状シートを所定の長さに切断して、その両端を接着すればよい。このような製造方法において、例えば両端の接着を、熱圧着といった方法で行えば、従来の熱可塑性樹脂押出成形で発生していたようなウエルドとは違って、実質的にシームレスの半導電性樹脂ベルトを製造することができる。
【0047】
かくして製造される半導電性樹脂ベルトの膜厚は、その使用目的などに応じて適宜決定できるが、一般に、適度な強度と適度な柔軟性等を両立させるうえでは、その膜厚は5〜500μmの範囲が好ましく、10〜300μmの範囲がさらに好ましく、20〜200μmの範囲が特に好ましい。
【0048】
本発明の溶液組成物から得られる成形体は、その体積抵抗率が1×103〜1×1012Ω・cmの範囲となり、半導電性樹脂ベルトとして好適である。該体積抵抗率は、1×105〜1×1011Ω・cmの範囲であるとさらに好ましく、1×107〜1×1010Ω・cmの範囲であると特に好ましい。なお、ここでいう体積抵抗率とは、23℃で48時間以上、成形体を保持した後、測定温度23℃、印加電圧100Vの条件で、デジタル超絶縁計で測定される値である。
【0049】
<半導電性樹脂ベルトの用途例>
本発明で得られる半導電性樹脂ベルトは、従来の半導電性樹脂ベルトに準じた各種の用途に用いることができる。特に、該半導電性樹脂ベルトは、電子写真記録装置の転写ベルト、中間転写ベルト、又は転写定着ベルトに好適に用いられる。その場合、印刷シートに像を形成する記録剤としても、静電気を介し像担持体に付着できる、各種のトナー等が使用できる。また、本発明で得られる半導電性樹脂ベルトは、熱可塑性樹脂として液晶ポリエステルを使用しているので、該半導電性樹脂ベルトを廃棄等する際に、溶剤により成分(A)液晶ポリエステルを溶解除去することで、成分(B)導電性物質と該液晶ポリエステルと分離することが可能である。したがって、この液晶ポリエステルや導電性物質の特性が著しく損なわれていないのであれば、これらをリサイクル(再使用)することが可能となる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。
【0051】
(製造例1)
〔1〕芳香族液晶ポリエステルAの製造
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)及び無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して3時間還流させた。
【0052】
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕後、比較的低分子量の液晶ポリエステルの粉末を得た。得られた粉末を島津製作所フローテスターCFT−500により流動開始温度を測定したところ、235℃であった。この液晶ポリエステル粉末を、窒素雰囲気において223℃3時間で加熱処理するといった固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルAの流動開始温度は270℃であった。
【0053】
〔2〕液晶ポリエステル溶液Aの調製
前記〔1〕で得られた液晶ポリエステルA2200gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱攪拌して溶液組成物(液晶ポリエステル溶液A)を得た。この液晶ポリエステル溶液Aの溶液粘度は320cPであった。なお、この溶融粘度は、B型粘度計(東機産業製、「TVL−20型」、ローターNo.21(回転数:5rpm)を用いて、測定温度23℃で測定した値である。
【0054】
〔3〕液晶ポリエステル溶液組成物Aの調製
前記〔2〕で得られた液晶ポリエステル溶液A85.6gに加え、市販のアセチレンブラック(電気化学工業;商品名 デンカブラック、粒状品、一次粒子径35nm、比表面積69m2/g、比重1.95g/cm3)6.65gを添加し、室温下で2時間攪拌し、液晶ポリエステル溶液組成物Aを得た。なお、液晶ポリエステルA100重量部に対するアセチレンブラックの配合割合は26重量部である。
【0055】
この液晶ポリエステル溶液組成物Aを厚み18μmの銅箔上に塗布した。塗布後、窒素雰囲気下、熱風式乾燥機により320℃で3時間熱処理を行った。冷却後、塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去することで、膜厚38μmのシート状成形体Aを得た。
得られたシート状成形体Aを23℃で72時間静置した後、デジタル超絶縁計/微少電流計(DSM−8104、東亜DKK社製、平板試料測定用電極SME-8311 印加
電圧100V)を用いて抵抗値を測定し、膜厚値で換算した結果、体積抵抗率は5.37×107Ω・cmであった。
【0056】
実施例1[半導電性樹脂ベルトの製造]
製造例1で得られた液晶ポリエステル溶液組成物Aを円筒状の金型の内面に塗布し、熱風式乾燥機により窒素雰囲気下320℃で3時間熱処理を行った後、剥離することで半導電性樹脂ベルトを得ることができる。得られる半導電性樹脂ベルトはシームレスであり、シート状成形体Aの体積抵抗率からみて、良好な半導電性のものとなる。
【0057】
(製造例2)
〔1〕芳香族液晶ポリエステルBの製造
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸941g(5.0モル)、4−アミノフェノール273g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して3時間還流させた。
【0058】
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、これを粗粉砕機で粉砕して液晶ポリエステル粉末を得た。得られた粉末を島津製作所社製フローテスターCFT−500により流動開始温度を測定したところ、185℃であった。この液晶ポリエステル粉末を、窒素雰囲気において225℃3時間で加熱処理するといった固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルBの流動開始温度は270℃であった。
【0059】
〔2〕液晶ポリエステル溶液Bの調製
前記〔1〕で得られた液晶ポリエステルB80gを、N−メチルピロリドン (NMP)920gに加え、140℃で4時間加熱して溶液組成物(液晶ポリエステル溶液B)を得た。この液晶ポリエステル溶液Bの溶液粘度は530cPであった。なお、この溶融粘度は、B型粘度計(東機産業製、「TVL−20型」、ローターNo.21(回転数:5rpm)を用いて、測定温度23℃で測定した値である。
【0060】
〔3〕液晶ポリエステル溶液組成物Bの調製
前記〔2〕で得られた液晶ポリエステル溶液B81gに加え、市販のアセチレンブラック(電気化学工業;商品名 デンカブラック、粒状品、一次粒子径35nm、比表面積69m2/g、比重1.95g/cm3)2.28gを添加し、室温下で2時間攪拌し液晶ポリエステル溶液組成物Bを得た。なお、液晶ポリエステルB100重量部に対するアセチレンブラックの配合割合は26重量部である。
【0061】
この液晶ポリエステル溶液組成物Bを厚み18μmの銅箔上に塗布した。塗布後、熱風式乾燥機により窒素雰囲気下320℃で3時間熱処理を行った。冷却後、塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去することで膜厚17μmのシート状成形体Bを得た。
得られたシート状成形体Bを23℃で72時間静置した後、デジタル超絶縁計/微少電流計(DSM−8104、東亜DKK社製、平板試料測定用電極SME-8311 印加電圧100V)を用いて抵抗値を測定し、膜厚値で換算した結果、体積抵抗率は7.09×107Ω・cmであった。
【0062】
実施例2[半導電性樹脂ベルトの製造]
製造例2で得られた液晶ポリエステル溶液組成物Bを円筒状の金型の内面に塗布し、窒素雰囲気下、熱風式乾燥機により320℃で3時間熱処理を行い剥離することで半導電性樹脂ベルトを得ることができる。得られる半導電性樹脂ベルトはシームレスであり、シート状成形体Bの体積抵抗率からみて、良好な半導電性のものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A),成分(B)及び成分(C)を含有してなり、成分(A)100重量部に対し、成分(B)が1〜100重量部であることを特徴とする溶液組成物。
(A)溶剤可溶性の液晶ポリエステル
(B)導電性物質
(C)溶剤
【請求項2】
前記成分(A)が、以下の式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位とを有し、全構造単位の合計に対して式(1)で表される構造単位が30〜80モル%、式(2)で表される構造単位が35〜10モル%、式(3)で表される構造単位が35〜10モル%からなる液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の溶液組成物。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYはそれぞれ独立にO又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
【請求項3】
前記成分(B)がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶液組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が非プロトン性溶剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の溶液組成物から得られることを特徴とする成形体。
【請求項6】
体積抵抗率が1×107〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする請求項5記載の成形体。
【請求項7】
半導電性樹脂ベルトとしての使用することを特徴とする請求項5又は6に記載の成形体。
【請求項8】
転写ベルト、中間転写ベルト及び転写定着ベルトからなる群より選ばれる半導電性樹脂ベルトとしての使用することを特徴とする請求項5又は6に記載の成形体。

【公開番号】特開2010−121025(P2010−121025A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295414(P2008−295414)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】