説明

溶湯保持炉

【目的】 炉体内に溶湯が漏れ出たときに確実に自動排出可能とする。また、炉体内に溶湯が漏れ出ても炉床れんがに溶湯が固着するのを防ぐ。
【構成】 炉対1の底部の最も低い所の壁部に溶湯の温度よりも低い融点を有する金属板15で塞がれた溶湯排出口14を設置し、るつぼから溶湯が漏れ出たときに、それが溶湯排出口14に集まり、溶湯の温度より低い融点の金属板15を溶かして炉体外に自動的に排出させるようにしている。また、炉底の炉床レンガ13の上にガラスウール12を敷設し、溶湯の漏れが発生した場合にも、溶湯排出口14から自動的に排出される前に付着した溶湯が炉床れんが13に固着するのを防ぐようにしている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶湯保持炉に関する。更に詳述すると、本発明はアルミや銅などの金属の溶湯をるつぼに収容して保温する溶湯保持炉の炉体構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】溶湯保持炉は、るつぼの周りが炉体で囲繞されて外からは見ることができないため、るつぼが割れて溶湯が漏れ出てもそのことを直ちに知ることができない。このため、炉床れんがに溶湯が固着しその修復に多大の時間を要する虞が生じる。
【0003】そこで、従来は、図4に示されるように、黒鉛製るつぼ101の周りを囲繞する炉体102の底面に下に向かって径が漸次広がるテーパ状の溶湯流出路103を開け、これをセラミックスやアスベスト、グラスウールなどの耐熱材から成る栓体104で塞ぐようにしている(実開昭61−69800号参照)。そして、栓体104を溶湯の自重により抜け落とさせることで漏れた溶湯を自動的に排出するように設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、溶湯の自重により自動排出させるもので、十分な自重がないと栓が抜けない。また、逆に少しの自重で栓を抜けさせようとすると、栓の嵌合抵抗を小さくとらざるを得ず振動等により栓が自然に抜け落ちてしまう虞がある。
【0005】本発明は、炉体内に溶湯が漏れ出たときに確実に自動排出される溶湯保持炉を提供することを目的とする。更に、本発明は炉体内に溶湯が漏れ出ても炉床れんがに溶湯が固着するのを防ぐ構造の溶湯保持炉を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため、本発明の溶湯保持炉は、炉底部の最も低い所の壁部に溶湯の温度よりも低い融点を有する金属板で塞がれた溶湯排出口を設置するようにしている。
【0007】また、本発明の溶湯保持炉は、炉底部にガラスウールを敷設するようにしている。
【0008】
【作用】したがって、るつぼから溶湯が漏れ出たとしても、炉床の最も低い所にある溶湯排出口に溶湯が集まり金属板を溶かして炉外へ自動的に排出される。
【0009】また、請求項2の発明の場合、るつぼから漏れ出た溶湯がまずセラミックウールと接触して固まるため炉床れんがに直接固着するのを防ぐ。そこで、セラミックウールを交換するだけで炉床の修復を完了できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の構成を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【0011】図1〜図3に本発明の溶湯保持炉の一実施例を示す。尚、本実施例はアルミ溶湯保持炉に適用したものである。このアルミ溶湯保持炉は、例えば鋼板製ケーシングの内側を耐火断熱材で内張りした炉体1と、この炉体1の中央に吊り下げられるようにして収容されるるつぼ3と、熱源となるバーナシステム4とから構成されている。本実施例の場合、熱源としては、燃料二段供給式の蓄熱型バーナシステムを採用している。
【0012】炉体1は、アルミ溶湯を入れたるつぼ3を囲繞するようにして支持し、るつぼ3及びその周りをアルミ溶湯の保温に適した温度に保つためのもので、例えば図示の如くほぼ有底円筒形を成し、中央にるつぼ3を吊り下げるように設けられている。るつぼ3は、アルミ溶湯を収容する黒鉛などの耐火物製るつぼ3aとこれを収容する金属製るつぼ3bとによって構成され、金属製るつぼ3bの上端のフランジ部分3cが炉体1に載置されて、そのフランジ3cより下の部分が炉体1内に挿入されて吊り下げられるように設けられている。そして、炉体1の底部には吊り下げられるるつぼ3の下に空間2を形成するように設けられている。また、空間2部分には仕切壁18が設けられ、炉体1内がほぼC字形に区画されている。更に、炉体1の内壁面には非常用の電気ヒータ11が設置されている。この電気ヒータ11は週末の休炉時などに電力のみでるつぼ内のアルミ溶湯を最低温度に保持するためのもので、例えばリボンヒータが採用されている。尚、炉体1の内部はるつぼ3によって密閉され、更にるつぼ3には図示していない溶湯を加圧可能とするための蓋とるつぼ底部からアルミ溶湯を取り出すための注湯筒が配置される。
【0013】また、炉底部の最も低所の側壁部分には溶湯を排出するための排出口(以下溶湯排出口という)14が設けられている。溶湯排出口14は、溶湯の温度より融点が低い材料、例えば亜鉛などで製作された板15で塞がれ、通常は外気ないし燃焼ガスが出入りしないように設けられている。該溶湯排出口14は炉内温度の最も低い所、より好ましくは排出口14を塞ぐ金属板15の融点よりも低い箇所に設けられる。例えば、本実施例の場合、一対の蓄熱型バーナ5,6の間の側壁部分に炉体1を貫通する排出用ダクト16を設け、該ダクト16の炉体外に突出した開口部17を亜鉛の板15で塞ぐように設けられている。このとき、亜鉛の板15の周辺は炉内ガス温度よりは低くなり、溶湯の接触以外によって破られることはない。
【0014】更に、炉床には軽量セラミックウール12が敷設されている。このセラミックウール12は、るつぼ3が割れたりひびが入ったときに空間2に漏れ出る溶湯が炉床れんが13に固着するのを防ぐものである。るつぼ3の割れなどによって溶湯が漏れ出てもウール12に付着するため、このウール12を交換するだけで修復が可能となる。
【0015】炉体1の底部の空間2部分には少なくとも1システム以上の蓄熱型バーナシステム4が配置されている。本実施例の場合、仕切壁18を挟んでシステムを構成する一対のバーナ5,6が配置されている。この蓄熱型バーナシステム4はその構造及び燃焼方式に特に限定を受けるものではないが、本実施例では蓄熱体7をバーナボディ19に内蔵して蓄熱体7とバーナ5,6とを一体化したものを2基組合せて交互に燃焼させ、燃焼させていない停止中のバーナ及び蓄熱体を通して排ガスを排出し得るように設けたものが使用されている。例えば、図2に示すように、2基のバーナ5,6のそれぞれの蓄熱体7,7に対し燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給系8と燃焼ガスを排出する燃焼ガス排気系9とを四方弁10の介在によって選択的に接続可能とし、一方のバーナ5(あるいは6)には蓄熱体7を通して燃焼用空気の供給を図る一方、他方のバーナ6(あるいは5)からは蓄熱体7を通して燃焼ガスの排出を図るように設けられている。燃料は、例えば図示していない三方弁などを介していずれか一方のバーナ5,6に選択的に交互に接続され燃料を供給する。燃料ノズルは、上流側に配置された一次燃料ノズル21と下流側に配置された二次燃料ノズル22とから成り、双方に二段に分けて燃料が供給されるか、あるいはいずれか一方を用いて供給される。また、図中の符号20はバーナタイル、23はバーナスロートである。
【0016】以上のように構成されたアルミ溶湯保持炉によれば、溶湯の漏れが起きた場合にも次のようにして溶湯の漏れを知ることができると共に炉床れんが13を保護できる。即ち、るつぼ3から溶湯が漏れ出たとしても、炉床の最も低い所に設けられた溶湯排出口14に溶湯が集まり、金属板15を溶かして炉体1の外へ自動的に排出される。また、るつぼ3から漏れ出た溶湯は、まずセラミックウール12と接触して固まるため炉床れんが13に直接固着するのが防がれる。そして、溶湯排出口14より溶湯が排出されることによって、溶湯の漏れを知ることができるので、修復作業を行う。ここで、炉体1の修復作業は、セラミックウール12を交換するだけで炉床の修復を完了できる。
【0017】尚、上述の実施例は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施例では主にアルミ溶湯保持炉について説明したが、これに限定されるものではなく銅やその他の非鉄金属などの溶湯の保温あるいは溶解などにも適用できるものである。また、本実施例では、熱源としてハニカム状の通気孔を有する蓄熱体を利用した蓄熱型の交番燃焼式バーナが用いられた場合について主に説明したが、これに特に限定されるものではなく、通常の連続燃焼式のバーナや電気ヒータ等を熱源とした溶湯保持炉に適用することもできる。
【0018】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の溶湯保持炉は、炉底部の最も低い所の壁部に溶湯の温度よりも低い融点を有する金属板で塞がれた溶湯排出口を設置しているので、るつぼから溶湯が漏れ出ても、溶湯排出口に集まり、溶湯の温度より低い融点の金属板を溶かして炉体外に適確に自動排出させることができる。
【0019】また、請求項2の発明によれば、炉底部にガラスウールを敷設しているので、溶湯の漏れが発生した場合にも、溶湯排出口から自動的に排出される前に付着した溶湯が炉床れんがに固着するのを防ぐことができ、セラミックウールの交換だけでその修復が完了する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶湯保持炉の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1の断面平面図である。
【図3】溶湯排出口の構造を示す断面図である。
【図4】従来の溶湯保持炉を示す概略図である。
【符号の説明】
1 炉体
3 るつぼ
12 セラミックウール
14 溶湯排出口
15 溶湯温度より融点の低い金属板
16 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶湯を収容するるつぼと、該るつぼを囲繞して支持する炉体と、前記るつぼを加熱する熱源を有する溶湯保持炉において、炉底部の最も低い所の壁部に溶湯の温度よりも低い融点を有する金属板で塞がれた溶湯排出口を設置したことを特徴とする溶湯保持炉。
【請求項2】 炉底部にガラスウールを敷設したことを特徴とする請求項1記載の溶湯保持炉。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開平8−29065
【公開日】平成8年(1996)2月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−187853
【出願日】平成6年(1994)7月18日
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000229748)日本ファーネス工業株式会社 (8)
【出願人】(592238397)株式会社セム (1)