説明

溶融ガラス供給装置及びガラス成形体製造装置

【課題】流出管の先端部の温度低下をより抑制できる溶融ガラス供給装置及び方法、並びにガラス成形体製造装置及び方法を提供すること。
【解決手段】溶融ガラス供給装置10は、溶融ガラスを流出する流出管20と、この流出管20の先端部23を加熱する加熱部30と、を備える。先端部23は、外方に間隔をあけて配置された被覆部40で被覆され、加熱部30は、被覆部40の外周に巻回されたコイル31と、このコイル31に高周波電流を供給する高周波電源33と、を有し、先端部23を誘導加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスを供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融槽に収容された溶融ガラスを流出管を通して流出し、ガラス成形体を成形する方法が広く知られている。ここで、ガラス成形体の失透を抑制するためには、流出管の開口が形成された先端部の温度低下を抑制する必要がある。
【0003】
そこで従来、流出管の先端部を加熱する機構が開発されてきた。例えば特許文献1には、流出管の先端部の外周にコイルを巻回し、このコイルに高周波電流を供給することで、先端部を誘導加熱する機構が開示されている。
【特許文献1】特開2006−143563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の機構では、流出管の先端部の温度低下の抑制が充分ではなく、ガラス成形体の失透を確実に防止するのが困難である場合もあった。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、流出管の先端部の温度低下をより抑制できる溶融ガラス供給装置及び方法、並びにガラス成形体製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、流出管の外周が間隔をあけて被覆された状態下、先端部を誘導加熱することで、先端部の温度低下が大幅に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のようなものを提供する。
【0007】
(1) 溶融ガラスを流出する流出管と、前記流出管の先端部を加熱する加熱手段と、を備える溶融ガラス供給装置であって、
前記先端部は、外方に間隔をあけて配置された被覆部で被覆され、
前記加熱手段は、前記被覆部の外周に巻回されたコイルと、このコイルに高周波電流を供給する高周波電流供給手段と、を有し、前記先端部を誘導加熱する溶融ガラス供給装置。
【0008】
(2) 前記被覆部は、前記流出管の先端より基部側へ所定距離の位置で、前記先端部に接続されている(1)記載の溶融ガラス供給装置。
【0009】
(3) 前記被覆部は、前記流出管の先端より下方へ延出する(1)又は(2)記載の溶融ガラス供給装置。
【0010】
(4) 前記被覆部は、前記流出管の先端に接続され、前記流出管の基部側に向けて拡径する形状を有する(1)記載の溶融ガラス供給装置。
【0011】
(5) 前記先端部と前記被覆部との間に配置されて前記先端部の温度を検出する検出手段を更に備える(1)から(4)いずれか記載の溶融ガラス供給装置。
【0012】
(6) 前記検出手段の検出値に基づいて、前記高周波電流供給手段を制御する制御手段を更に備える(5)記載の溶融ガラス供給装置。
【0013】
(7) 前記加熱手段は、前記先端部及び前記被覆部に配置された一対の電極と、これら電極間に電流を流す電気流通手段と、を更に有し、前記先端部を通電加熱する(1)から(6)いずれか記載の溶融ガラス供給装置。
【0014】
(8) (1)から(7)いずれか記載の溶融ガラス供給装置と、この溶融ガラス供給装置から供給される溶融ガラスを成形する成形手段と、を備えるガラス成形体製造装置。
【0015】
(9) 流出管から溶融ガラスを流出する流出工程と、前記流出管の先端部を加熱する加熱工程と、を有する溶融ガラス供給方法であって、
前記先端部を、外方に間隔をあけて配置された被覆部で被覆し、
前記加熱工程では、前記被覆部の外周に巻回されたコイルに高周波電流を供給することで、前記先端部を誘導加熱する溶融ガラス供給方法。
【0016】
(10) 前記被覆部を、前記流出管の先端より基部側へ所定距離の位置で、前記先端部に接続する(9)記載の溶融ガラス供給方法。
【0017】
(11) 前記被覆部を、前記流出管の先端より下方へ延出させる(9)又は(10)記載の溶融ガラス供給方法。
【0018】
(12) 前記被覆部を、前記流出管の先端に接続し、前記流出管の基部側に向けて拡径させる(9)記載の溶融ガラス供給方法。
【0019】
(13) 前記先端部と前記被覆部との間に検出手段を配置し、この検出手段で前記先端部の温度を検出する工程を更に有する(9)から(12)いずれか記載の溶融ガラス供給方法。
【0020】
(14) 前記検出手段の検出値に基づいて、高周波電流の供給条件を制御する制御工程を更に有する(13)記載の溶融ガラス供給方法。
【0021】
(15) 前記加熱工程は、前記先端部及び前記被覆部に配置された一対の電極間に電流を流すことで、前記先端部を通電加熱する工程を更に有する(9)から(14)いずれか記載の溶融ガラス供給方法。
【0022】
(16) (9)から(15)いずれか記載の溶融ガラス供給方法で供給した溶融ガラスを成形する工程を有するガラス成形体製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、先端部を被覆する被覆部の外周に巻回されたコイルに高周波電流が供給されるので、先端部が誘導加熱される。これにより、先端部は、それ自身が加熱されるのに加え、被覆部によって外気への放熱が抑制されるので、流出管の先端部の温度低下をより抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る溶融ガラス供給装置10の概略構成図である。図2は図1の溶融ガラス供給装置10の要部拡大図である。
【0026】
<溶融ガラス供給装置>
溶融ガラス供給装置10は、溶融ガラスを流出する流出管20と、この流出管20を加熱する加熱手段としての加熱部30と、を備える。各構成要素について、詳細に説明する。
【0027】
[流出管]
流出管20は基部21を有し、この基部21は溶融ガラスを収容する溶融槽29の内部に挿通されている。これにより、溶融槽29内の溶融ガラスは基部21へと導入され、基部21及び先端部23を通り、やがて、先端25に形成された開口から外部へと導出(流出)されることになる。
【0028】
開口から流出した溶融ガラスは、外気によって急激に冷却されやすく、その結果、製造されるガラス成形体に失透が生じやすい。失透を充分に抑制するためには、流出管20の先端部23の温度低下を充分に抑制することが望まれる。本発明は、後述のように先端部23を誘導加熱する構成を採用しているので、流出管20のうち少なくとも先端部23は、誘導加熱可能な素材、好ましくは白金又は白金合金等の金属で形成されていることが好ましい。
【0029】
また、後述のように、基部21を通電加熱する場合には、基部21は、電気伝導性を有する素材、好ましくは白金又は白金合金等の金属で形成されていることが好ましい。なお、基部21及び先端部23は同一又は異なる素材で形成されていてよい。
【0030】
[被覆部]
流出管20の先端部23は、外方に間隔をあけて配置された被覆部40で被覆されている。これにより、先端部23は、それ自身の誘導加熱に加え、先端部23から外気への放熱が抑制されるため、温度低下が充分に抑制されることになる。ここで、被覆部40を誘導加熱可能な素材、好ましくは白金又は白金合金等で形成すれば、先端部23は、誘導加熱された被覆部40からの輻射熱による加熱もなされるため、更に温度低下が抑制される。また、被覆部40を断熱性素材で形成すれば、外気による被覆部40の温度低下が抑制されて、先端部23への輻射熱が高レベルに維持される結果、先端部23の温度低下を更に抑制できる。
【0031】
本明細書において「先端部」とは、溶融ガラスが流出する開口が形成された先端を含み、この先端から基部側へと加熱が望まれる所定範囲の部位を指す。所定範囲は溶融ガラスの組成や温度、先端部23の素材等に応じて適宜設定されてよい。また、「被覆」とは、好ましくは先端部の全周を包囲することを指すが、これに限られず部分周のみを包囲する態様も含む。
【0032】
図2に示されるように、被覆部40は、流出管20の先端25より基部21側へ所定距離Dの位置で、先端部23に接続されていることが好ましい。具体的に本実施形態では、流出管20の先端25より基部21側へ所定距離Dの位置に設けられた連結部45を介して、先端部23と被覆部40とが連結されている。なお、これに限られず、被覆部40は、図3に示されるように、流出管20の先端25に設けられた連結部45Aを介して先端部23に連結されていてもよい。ただし、図3の態様では、溶融ガラスが先端25から連結部45A、被覆部40へと濡れて移行しやすく、流出量の一定化が困難になったり、連結部45Aや被覆部40で冷え固まったガラスによって溶融ガラスMGが汚染されたりといった不具合が生じ得る。これに対し、図2に示される態様は、連結部45が先端25より所定距離Dだけ離れているので、MGが連結部45へと濡れて移行する(いわゆる濡れ上がり)事態は生じにくい点で好ましい。
【0033】
また、図4に示されるように、被覆部40Bが流出管20の先端25に接続されていても、流出管20の基部21側に向けて拡径する形状を有することで、溶融ガラスMGの濡れ上がりを抑制できる。なお、図2及び図3に示される態様では、先端部23及び被覆部40が連結部45を介して連結されているが、これに限られず、先端部23及び被覆部40が分離した別体であってもよい。ただし、別体の態様では、後述の通電加熱によって先端25を充分に加熱することは困難になりやすいため、図2〜図4に示される態様が好ましい。
【0034】
図2に戻って、所定距離Dは、溶融ガラスの連結部45への濡れ上がりを充分に抑制できる点で、その下限が1mmであることが好ましく、より好ましくは2mm、最も好ましくは3mmである。他方、後述のカップル51を設置するスペースを確保する観点から、所定距離Dの上限は40mmであることが好ましく、より好ましくは30mm、最も好ましくは15mmである。
【0035】
また、連結部45の幅(つまり、先端部23と被覆部40との間隔)は、被覆部40からの輻射熱を先端部23へと効率的に到達できる点で、その上限が10mmであることが好ましく、より好ましくは9mm、最も好ましくは7mmである。他方、後述のカップル51を設置するスペースを確保する場合には、連結部45の幅は3mm以上であることが好ましい。
【0036】
連結部45は、従来周知の素材で形成されてよいが、後述のように先端25を通電加熱する態様においては、電気伝導性を有する素材、好ましくは白金又は白金合金等の金属で形成されていることが好ましい。なお、基部21、先端部23及び連結部45は、同一又は異なる素材で形成されていてよい。
【0037】
本実施形態のように、被覆部40は、流出管20の先端25より下方へ延出することが好ましい。これにより、先端25の開口から流出した溶融ガラスMGが被覆部40で囲まれ、その急激な冷却を抑制されるため、失透をより確実に抑制できる。また、かかる態様は、最も冷却されやすい先端25が周方向(図2における左右方向)のみならず、下方向からも温度低下を抑制されるため、溶融ガラスMGの冷却を間接的にも更に抑制できる点で好ましい。
【0038】
上記の効果がより得られる点で、被覆部40の流出管20の先端25より下方へ延出する延出長さEの下限は、3mmであることが好ましく、より好ましくは5mm、最も好ましくは7mmである。他方、延出長さEが過大であると、流出管20の先端25から、溶融ガラスを受ける成形型までの間隔が長くならざるを得ず、これにより、ガラスが過度に冷却されやすかったり、落下衝撃によって溶融ガラス塊の形状が崩れやすかったりする。そこで、延出長さEの上限は、200mmであることが好ましく、より好ましくは150mm、最も好ましくは100mmである。
【0039】
[加熱部]
加熱部30は、被覆部40の外周に巻回されたコイル31を有し、このコイル31には高周波電流供給手段としての高周波電源33が電線を通じて高周波電流を供給することで、先端部23を誘導加熱する。すると、先端部23は、それ自身が加熱されるのに加え、被覆部40によって外気への放熱が抑制されるので、先端部23の温度低下をより抑制できることになる。なお、高周波電源33は後述の制御部61によって出力制御される。
【0040】
コイル31が巻回される範囲は、被覆部40の全周であることが好ましいが、被覆部40の部分周であってもよい。なお、図1では説明の便宜上、被覆部40が5周巻回されているが、巻回数がこれに限られないことは当然である。また、使用する高周波電源33は、従来周知のものであってよい。
【0041】
加熱部30は、図1に示されるように、先端部23及び被覆部40に配置された一対の電極35a’,35aを更に有し、これら電極35a’,35a間には電気流通手段としての交流電源36が電流を流す。これにより、先端部23及び被覆部40が通電加熱されるため、ガラスの失透をより確実に抑制できる。なお、交流電源36は後述の制御部61によって出力制御される。
【0042】
ここで、最も冷却されやすい先端25を通電加熱で効率的に加熱するためには、通電した電流が先端25を通過しやすい構成、例えば図3及び図4のように、被覆部が先端25において先端部23に接続されている構成が好ましい。
【0043】
また、通電加熱は、先端部23のみならず、基部21に対して行ってもよい。これにより、溶融ガラスが基部21を流れる間に受ける温度変化を抑制できるため、流出する溶融ガラスMGの正確な温度制御をしやすくなる。具体的に図1では、一対の電極37a,37a’が基部21に設けられ、これら電極37a,37a’には交流電源38からの電流が供給される。なお、図1には、電極37a,37a’しか示していないが、電極のセットを更に多数設けてもよい(詳細は特開2006−143563号公報参照)。
【0044】
[検出装置]
溶融ガラス供給装置10は、先端部23と被覆部40との間に配置されて先端部23の温度を検出する検出手段としてのカップル51を更に備える。本発明では、先端部23と被覆部40との間にスペースが形成されるので、このスペースを活用してカップル51を容易に設置することができる。これにより、先端部23の温度が把握されるので、高周波電源33、交流電源36、交流電源38の出力、供給時間、タイミング等を適切に調節することで、失透の発生を計画的に抑制できる。なお、カップル51及び後述の送信部53は検出装置50を構成する。
【0045】
また、溶融ガラス供給装置10は、カップル51の検出値に基づいて高周波電源33を制御する制御手段としての制御装置60を備えることが好ましい。これにより、高周波電源33の出力、供給時間、タイミング等が自動的に調節されるため、人為的ミスを回避して失透の発生をより確実に抑制できる。図1に示されるように、制御装置60の制御部61は、カップル51で測定された温度データを送信部53から受信し、この検出値に基づいて高周波電源33を制御している。具体的に制御部61は、検出値が所定範囲を下回ると、高周波電源33の出力及び/又は供給時間を増加させ、逆に検出値が所定範囲を超えると、高周波電源33の出力及び/又は供給時間を減少させる。なお、送受信の方式は従来周知のものであってよい。
【0046】
なお、先端部23の温度の変動を抑制できる点で、カップル51で検出した温度データをフィードバックして高周波電源33を制御する周期は、0.08秒以下であることが好ましく、より好ましくは0.05秒以下、最も好ましくは0.04秒以下である。
【0047】
制御部61は、高周波電源33のみならず、交流電源36及び/又は交流電源38の出力、供給時間、タイミング等も制御することが好ましい。これにより、通電加熱の程度も適切に調節されるため、溶融ガラスMGの温度管理をより最適化できる。
【0048】
本発明に係るガラス成形体装置は、以上の溶融ガラス供給装置10と、この溶融ガラス供給装置10から供給される溶融ガラスMGを成形する成形手段としての成形装置(図示せず)とを備える。この成形装置は、溶融ガラス供給装置10の流出管20から流出した溶融ガラスを受け止める成形型を有する。具体的に用いる成形装置の構成は、目的に応じて適宜選択されてよい。特に限定されないが、溶融ガラスが高温であることを考慮すると、成形面が多孔質部材からなるものを用い、成形面から気体を噴出することで、浮上成形を行うことが好ましい。また、成形装置を構成する成形型を複数種用いてもよく、例えばプリフォーム形成用の成形型、精密プレス成形用の成形型等を併用してもよい。
【0049】
<ガラス成形体製造方法>
本発明の実施形態に係るガラス成形体製造方法は、溶融ガラス流を供給する供給工程と、溶融ガラスを成形する成形工程とを有する。各工程を、以上の溶融ガラス供給装置10を参照しつつ説明する。
【0050】
[供給工程]
供給工程は、流出管20から溶融ガラスMGを流出する流出工程と、流出管20の先端部23を加熱する加熱工程と、を有する。本発明の製造方法では、先端部23を、外方に間隔をあけて配置された被覆部40で被覆し、加熱工程で、被覆部40の外周に巻回されたコイル31に高周波電源33から高周波電流を供給することで、先端部23を誘導加熱する。これにより、先端部23は、それ自身の誘導加熱に加え、先端部23から外気への放熱が抑制されるため、温度低下が充分に抑制されることになる。
【0051】
図2に示されるように、被覆部40を、流出管20の先端25より基部21側へ所定距離Dの位置で、先端部23に接続することが好ましい。これにより、MGが連結部45へと濡れて移行する(いわゆる濡れ上がり)事態を生じにくくすることができる。なお、これに限られず、被覆部40を、図3に示されるように、流出管20の先端25に設けられた連結部45Aを介して先端部23に連結されていてもよい。ただし、図3の態様では、溶融ガラスが先端25から連結部45A、被覆部40へと濡れて移行しやすく、流出量の一定化が困難になったり、連結部45Aや被覆部40で冷え固まったガラスによって溶融ガラスMGが汚染されたりといった不具合が生じ得る。
【0052】
そこで、被覆部を流出管の先端に接続する場合には、図4に示されるように、被覆部40Bを流出管20の基部21側に向けて拡径させることが好ましい。これにより、溶融ガラスMGの濡れ上がりを抑制できる。
【0053】
また、図2に示されるように、被覆部40を、流出管20の先端25より下方へ延出させることが好ましい。これにより、先端25の開口から流出した溶融ガラスMGが被覆部40で囲まれ、その急激な冷却を抑制されるため、失透をより確実に抑制できる。また、かかる態様は、最も冷却されやすい先端25が周方向(図2における左右方向)のみならず、下方向からも温度低下を抑制されるため、溶融ガラスMGの冷却を間接的にも更に抑制できる点で好ましい。
【0054】
供給工程は、先端部23と被覆部40との間にカップル51を配置し、このカップル51で先端部23の温度を検出する工程を更に有することが好ましい。これにより、先端部23の温度が把握されるので、高周波電源33、交流電源36、交流電源38の出力、供給時間、タイミング等を適切に調節することで、失透の発生を計画的に抑制できる。
【0055】
供給工程は、カップル51の検出値に基づいて、高周波電流の供給条件を制御する制御工程を更に有することが好ましい。これにより、高周波電源33の出力、供給時間、タイミング等が自動的に調節されるため、人為的ミスを回避して失透の発生をより確実に抑制できる。具体的に制御工程では、検出値が所定範囲を下回ると、高周波電源33の出力及び/又は供給時間を増加させ、逆に検出値が所定範囲を超えると、高周波電源33の出力及び/又は供給時間を減少させる。なお、送受信の方式は従来周知のものであってよい。
【0056】
加熱工程は、先端部23及び被覆部40に配置された一対の電極35a’,35a間に交流電源36から電流を流すことで、先端部23を通電加熱する工程を更に有することが好ましい。これにより、先端部23及び被覆部40が通電加熱されるため、ガラスの失透をより確実に抑制できる。
【0057】
[成形工程]
成形工程では、供給工程で供給した溶融ガラスMGを成形し、ガラス成形体を形成する。具体的な手順は、目的に応じて適宜選択してよい。特に限定されないが、溶融ガラスが高温であることを考慮すると、成形面が多孔質部材からなるものを用い、成形面から気体を噴出することで、浮上成形を行うことが好ましい。また、成形装置を構成する成形型を複数種用いてもよく、例えばプリフォーム形成用の成形型、精密プレス成形用の成形型等を併用してもよい。また、成形面が分割可能なものを用いることで、他の成形型への移送を円滑に行うこともできる。
【0058】
このようにして製造されたガラス成形体は、失透が少ない又は存在しないため、情報磁気記録媒体用基板ブランク、光学素子製造用のプリフォーム、光学素子等に有用である。
【実施例】
【0059】
<実施例>
SiO−Li2O系のガラスを溶融し、この溶融ガラスを、図1及び2に示される溶融ガラス供給装置(連結部45の幅3mm、距離D3mm、距離E10mm、被覆部40の長さ60mm、流出管20の内径9mm)の流出管20の先端25から流出し、成形型の下型で受け、上型でプレスして成形を行った。この間、高周波電流をコイル31に供給することで、加熱を行い続けた。なお、カップル51で検出した温度データに基づく高周波電源33の制御の周期は0.03秒とした。
【0060】
作製されたガラス成形体には失透が確認されなかった。また、溶融ガラスの流出量が一定である結果、得られるガラス成形体の重量もほぼ均一であった。
【0061】
(比較例)
加熱部30及び被覆部40が設けられていない流出管を用い、流出管の先端をリングバーナで加熱した点を除き、実施例と同様の手順でガラス成形体を作製した。
【0062】
リングバーナに供給するガス圧力が変動しやすく、これによって流出管の先端部の温度が不安定であった。また、作製されたガラス成形体には失透が生じているものが混在し、特に、溶融ガラス流出初期に作製されたガラス成形体には失透が生じているものが多かった。
【0063】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る溶融ガラス供給装置の概略構成図である。
【図2】図1の溶融ガラス供給装置の要部拡大図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る溶融ガラス供給装置の要部拡大図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る溶融ガラス供給装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0065】
10 溶融ガラス供給装置
20 流出管
21 基部
23 先端部
25 先端
29 溶融槽
30 加熱部(加熱手段)
31 コイル
33 高周波電源(高周波電流供給手段)
35 電極
36 交流電源
37 電極
38 交流電源
40 被覆部
45 連結部
50 検出装置
51 カップル(検出手段)
53 送信部
60 制御装置
61 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを流出する流出管と、前記流出管の先端部を加熱する加熱手段と、を備える溶融ガラス供給装置であって、
前記先端部は、外方に間隔をあけて配置された被覆部で被覆され、
前記加熱手段は、前記被覆部の外周に巻回されたコイルと、このコイルに高周波電流を供給する高周波電流供給手段と、を有し、前記先端部を誘導加熱する溶融ガラス供給装置。
【請求項2】
前記被覆部は、前記流出管の先端より基部側へ所定距離の位置で、前記先端部に接続されている請求項1記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項3】
前記被覆部は、前記流出管の先端より下方へ延出する請求項1又は2記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項4】
前記被覆部は、前記流出管の先端に接続され、前記流出管の基部側に向けて拡径する形状を有する請求項1記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項5】
前記先端部と前記被覆部との間に配置されて前記先端部の温度を検出する検出手段を更に備える請求項1から4いずれか記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項6】
前記検出手段の検出値に基づいて、前記高周波電流供給手段を制御する制御手段を更に備える請求項5記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記先端部及び前記被覆部に配置された一対の電極と、これら電極間に電流を流す電気流通手段と、を更に有し、前記先端部を通電加熱する請求項1から6いずれか記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか記載の溶融ガラス供給装置と、この溶融ガラス供給装置から供給される溶融ガラスを成形する成形手段と、を備えるガラス成形体製造装置。
【請求項9】
流出管から溶融ガラスを流出する流出工程と、前記流出管の先端部を加熱する加熱工程と、を有する溶融ガラス供給方法であって、
前記先端部を、外方に間隔をあけて配置された被覆部で被覆し、
前記加熱工程では、前記被覆部の外周に巻回されたコイルに高周波電流を供給することで、前記先端部を誘導加熱する溶融ガラス供給方法。
【請求項10】
前記被覆部を、前記流出管の先端より基部側へ所定距離の位置で、前記先端部に接続する請求項9記載の溶融ガラス供給方法。
【請求項11】
前記被覆部を、前記流出管の先端より下方へ延出させる請求項9又は10記載の溶融ガラス供給方法。
【請求項12】
前記被覆部を、前記流出管の先端に接続し、前記流出管の基部側に向けて拡径させる請求項9記載の溶融ガラス供給方法。
【請求項13】
前記先端部と前記被覆部との間に検出手段を配置し、この検出手段で前記先端部の温度を検出する工程を更に有する請求項9から12いずれか記載の溶融ガラス供給方法。
【請求項14】
前記検出手段の検出値に基づいて、高周波電流の供給条件を制御する制御工程を更に有する請求項13記載の溶融ガラス供給方法。
【請求項15】
前記加熱工程は、前記先端部及び前記被覆部に配置された一対の電極間に電流を流すことで、前記先端部を通電加熱する工程を更に有する請求項9から14いずれか記載の溶融ガラス供給方法。
【請求項16】
請求項9から15いずれか記載の溶融ガラス供給方法で供給した溶融ガラスを成形する工程を有するガラス成形体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−105888(P2010−105888A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281831(P2008−281831)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)