説明

溶融転写印刷用途に適した放射線硬化性固体インク組成物

【課題】圧電式の溶融転写印刷プロセスによって印刷することが可能であり、さらに、低温で、少エネルギー消費で処理することが可能であり、堅ろう性が向上しており、吐出信頼性および吐出許容度が向上した固体インクの提供。
【解決手段】インクビヒクルと、硬化性ワックスと、非硬化性エステルワックスとを含む、室温で40より大きい初期硬度を有する、放射線硬化性固体インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、放射線硬化性固体インク、画像を作成する際(例えば、溶融転写印刷によって)に放射線硬化性固体インクを使用することに関する。より特定的には、本開示は、固体モノマーと反応性ワックスとを含む放射線硬化性固体インク(例えば、縮みが少ない放射線硬化性固体インク)に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融転写印刷システムは、当該技術分野で既知であり、したがって、このデバイスに関する詳細な記載は、ここでは必要としない。固体インク(相変化インクまたは「ホットメルト」インクとも呼ばれる)は、運搬、長期保存などの間、室温で固体のままであるため、溶融転写印刷システムに望ましい。それに加え、液体インクジェットインクだとインクが蒸発してノズルが詰まることに関連する問題は、ほぼ解消し、それにより、溶融転写印刷の信頼性が高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶融転写印刷システムとともに用いられる典型的な固体インクは、ワックス系インクビヒクル、例えば、結晶性のワックス系インクビヒクルを含んでいる。このような固体インクは、鮮明なカラー画像を与える。典型的なシステムでは、結晶性ワックスインクを約120〜約140℃の温度で転写体(例えば、アルミニウムドラム)に吐出する。このワックス系インクを、転写体に効率よく適切に吐出するために濃度を下げるには、このような高温に加熱する。転写体は、典型的には約60℃の温度であり、その結果、ワックスは、十分に冷やされ、固化するか、または結晶化するであろう。記録媒体(例えば、紙)の上を転写体が回転するにつれて、ワックス系インクで構成された画像が、紙に押しつけられる。
【0004】
現時点で入手可能なインク組成物は、これらの目的には適しているが、圧電式の溶融転写印刷プロセスによって印刷することが可能な、新しい種類の固体インクの必要性が依然として存在する。さらに、もっと低温で、もっと少ないエネルギー消費で処理することが可能で、堅ろう性が向上しており、吐出信頼性および吐出許容度が向上したインク組成物が必要とされている。それに加え、吐出温度で望ましい低い粘度を示し、見た目および質感が向上した画像を作り出し、硬度および靱性が向上した画像を作り出し、多くの一般的に用いられる基板に適した新しい種類の固体インク組成物が依然として必要である。毒性の化合物またはそれ以外の有害な化合物を固体インク組成物に使用することが可能な程度まで、このような物質が上述の新しい種類のインクから移動し、蒸発するか、または抽出されるのを制御し、または軽減することが可能な固体インク組成物がさらに必要とされている。特定の用途(例えば、食品包装)で用いる場合、例えば、環境、健康、安全性に関する要求を満たすために、存在する抽出可能な種の量を減らすか、または完全になくしてしまうことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、いくつかの実施形態では、ワックス、樹脂、モノマー、硬化性ワックス、顔料、遊離ラジカル光開始剤のブレンドを含む放射線硬化性固体インク組成物を与えることによって、上述の1つ以上の必要性に対処する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書には、放射線硬化性固体インク組成物が開示されており、この放射線硬化性固体インク組成物は、インクビヒクルと、硬化性ワックスと、非硬化性ワックスとを含み、放射線硬化性固体インクは、硬化前または初期の硬度が、室温(約25℃)でPTC Durometerで測定した場合、40よりも大きい。インクビヒクル候補物質の硬化前および硬化後の硬度は、Model 476 Standを利用し、標準的な負荷1kgを用いたPTC Durometer Model PS 6400−0−29001で得た。
【0007】
いくつかの実施形態では、粘度が低く、吐出温度および溶融転写温度が低い放射線硬化性固体インクが開示されている。
【0008】
用語「官能基」は、例えば、その基が結合している基および分子の化学的性質を決定づけるような様式で整列している原子群を指す。官能基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0009】
用語「長鎖」は、例えば、nが、鎖中の炭素原子数をあらわし、nが、約8〜約60、例えば、約20〜約45、または約30〜約40の炭化水素鎖(CHを指す。用語「短鎖」は、nが、鎖中の炭素原子数をあらわし、例えば、nが、約1〜約7、例えば、約2〜約5、または約3〜約4の炭化水素鎖を指す。
【0010】
用語「硬化性」は、例えば、重合(例えば、遊離ラジカル経路を含む)によって硬化させることが可能な物質、および/または放射線感受性の感光剤を用いることによって、重合が光によって開始するような物質を記述するものである。用語「放射線硬化性」は、例えば、開始剤が存在する状態または存在しない状態を含め、放射線源(光源および熱源を含む)にさらされると硬化するすべての形態を指す。放射線による硬化技術の例としては、限定されないが、例えば、場合により、光開始剤および/または増感剤存在下、例えば、200〜400nmの紫外(UV)光、またはもっと希には可視光の波長を有する光を用いた硬化、場合により光開始剤非存在下、電子線照射による硬化、高温熱開始剤(これらは、吐出温度ではほとんど不活性であってもよい)存在下または非存在下、熱による硬化を用いた硬化、およびこれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0011】
例示的なインク組成物は、溶融転写印刷プロセスの要求を満たしつつ、優れた画質を与える。例示的なインク組成物は、インクビヒクルと硬化性ワックスとを含み、このインク組成物の硬度は、室温で40より大きい。特に、例示的なインク組成物は、ワックス、樹脂、モノマー、硬化性ワックス、遊離ラジカル光開始剤を含むインクビヒクルを含んでいる。さらに、例示的なインク組成物では、インクビヒクルの成分は、40℃では臭気がほとんどないか、まったくない固体である。このようなインク組成物を調製する例示的な方法や、このようなインク組成物を用いる例示的な方法も記載している。
【0012】
いくつかの実施形態では、インク組成物は、室温で固体である。いくつかの実施形態では、放射線硬化性固体硬化性インク組成物は、粘度が、吐出温度で約11cPs、例えば、約9cPs〜約15cPsである。特定の実施形態では、インク組成物を約100℃より低い温度で吐出し、例えば、約60℃〜約100℃、または約70℃〜約95℃、例えば、約80℃〜約90℃、例えば、約85℃で吐出する。
【0013】
いくつかの実施形態では、上述のインクは、室温(約25℃)で、初期硬度が約40より大きくなるように配合されていてもよく、例えば、約30〜約70、約50〜約60、または約55であるように配合されていてもよい。本発明の固体インク組成物は、室温でも非常に効率よく光化学によって硬化させることができ、従来から利用可能な固体インクよりも耐汚れ性に優れ、硬化させた後に高い硬度を有する画像を作成することができる。さらに、吐出温度から室温にしたときのインクの収縮度は、約6.5%未満、例えば、4.0%未満、3.0%未満、1.5%未満、1.0%未満である。これらの収縮率は、結晶性ワックスを用いた固体インク組成物と比べ、少なくとも50%向上している。
【0014】
開示されている固体放射線硬化性インク組成物の利点の1つは、従来の標準的なホットメルトインクジェットインクと比較して、吐出温度、硬化温度、溶融転写温度が低いことである。開示されている固体放射線硬化性インク組成物の別の利点は、標準的なホットメルトインクよりも収縮度が小さいことである。標準的なホットメルクインクジェットインクは、非常に高温で吐出させなければならず、一方、本明細書で開示している固体インク組成物は、上に記載し、下にも記載しているように、約100℃以下の温度で吐出し、約40℃以下の温度で固体であってもよい。
【0015】
開示されている固体放射線硬化性インク組成物の別の利点は、約25℃〜約70℃、例えば、約45℃〜約65℃、または約55℃の温度で溶融転写させることが可能なことである。
【0016】
放射線硬化性固体インク組成物で用いる硬化性ワックスとしては、室温で固体であり、1個以上の不飽和官能基(例えば、1個以上のアルケン反応性基、アルキン反応性基、アクリレート反応性基、またはメタクリレート反応性基)を有する放射線硬化性材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、低分子量の硬化性ワックスである。本明細書で使用される場合、低分子量との用語は、重量平均分子量が約500g/mol以下、例えば、約150〜約450g/mol、または約200〜約400g/molの化合物を指す。
【0017】
いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、アルキルアリールアクリレート、アリールアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アリールメタクリレート、アルキルアリールメタクリレート、アリールアルキルメタクリレートである。
【0018】
硬化性ワックスとして用いる例示的な不飽和モノマーとしては、例えば、以下のモノマーおよびその混合物が挙げられる。オクタデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートヒドロキシオクタデシルアクリレート、ヒドロキシオクタデシルメタクリレート、ヒドロキシラウリルメタクリレート、ヒドロキシラウリルアクリレート、フェネチルアクリレート、フェネチルメタクリレート、6−フェニルヘキシルアクリレート、6−フェニルヘキシルメタクリレート、フェニルラウリルアクリレート、フェニルラウリルメタクリレート、3−ニトロフェニル−6−ヘキシルメタクリレート、3−ニトロフェニル−18−オクタデシルアクリレート、アクリレートビニルオクチルケトン、ヘプタフルオロブチルメタクリレートビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ビニルビフェニル、アミノエチルフェニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ウンデセニルアクリレート、ウンデセニルメタクリレート;室温で固体のジエン類;飽和グリコールまたはジオールと不飽和モノカルボン酸とのエステル、ジビニルベンゼンのような多官能芳香族化合物。
【0019】
適切な硬化性ワックスの例としては、硬化性基で官能基化されたものを挙げることができる。硬化性基としては、限定されないが、アクリレート、メタクリレート、アルケン、ビニル、アリルエーテルが挙げられる。これらのワックスは、変換可能な官能基(例えば、カルボキシルおよびヒドロキシル)を含むワックスの反応によって合成されてもよい。いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、末端がヒドロキシルのポリエチレンワックスであってもよい。末端がヒドロキシルのポリエチレンワックスの例としては、CH3−(CH2)n−CH2OH(鎖nの混合物が存在する)の構造を有する長鎖炭化水素の混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、炭素鎖は、約16〜約50個の炭素を有している。いくつかの実施形態では、硬化性ワックスとしては、上の鎖長の低分子量の直鎖ポリエチレンが挙げられる。例示的なワックスとしては、限定されないが、Baker−Petroliteから入手可能なUNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、UNILIN(登録商標)700が挙げられ、それぞれ、Mnは、約375、約460、約550、約700g/molである。Guerbetアルコールは、2,2−ジアルキル−1−エタノールで特徴づけられるが、これも適切な化合物である。例示的なGuerbetアルコールとしては、16〜36個の炭素を有するものが挙げられ、これらは、Jarchem Industries Inc.(ニュージャージー州ニューアーク)から入手可能である。いくつかの実施形態では、PRIPOL(登録商標)2033が選択され、PRIPOL(登録商標)2033は、以下の式を有する異性体
【化1】



と、不飽和基および環状基を含んでいてもよい他の分枝鎖異性体とを含む、Uniqema(デラウェア州ニューキャッスル)から入手可能なC−36ダイマージオール混合物である。
【0020】
これらのアルコールを、UV硬化部分がついたカルボン酸と反応させ、反応性エステルを作成してもよい。これらの酸の例としては、限定されないが、Sigma−Aldrich Co.から入手可能なアクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。特定の硬化性モノマーとしては、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、UNILIN(登録商標)700のアクリレートが挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、末端がカルボン酸のポリエチレンワックスであってもよい。硬化性基で官能基化されていてもよい、末端がカルボン酸のポリエチレンワックスの例としては、限定されないが、CH3−(CH2)n−COOH(鎖nの混合物が存在する)の構造を有する長鎖炭化水素の混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、炭素鎖は、約16〜約50個の炭素を有している。いくつかの実施形態では、硬化性ワックスとしては、上の鎖長の低分子量の直鎖ポリエチレンが挙げられる。このようなワックスとしては、限定されないが、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550、UNICID(登録商標)700が挙げられ、それぞれ、Mnは、約390、約475、約565、約720に等しい。他の例示的なワックスは、構造CH3−(CH2)n−COOHを有し、例えば、n=14のヘキサデカン酸またはパルミチン酸、n=15のヘプタデカン酸またはマルガリン酸またはダツル酸、n=16のオクタデカン酸またはステアリン酸、n=18のエイコサン酸またはアラキジン酸、n=20のドコサン酸またはベヘン酸、n=22のテトラコサン酸またはリグノセリン酸、n=24のヘキサコサン酸またはセロチン酸、n=25のヘプタコサン酸またはカルボセリン酸、n=26のオクタコサン酸またはモンタン酸、n=28のトリアコンタン酸またはメリシン酸、n=30のドトリアコンタン酸またはラクセロン酸、n=31のトリトリアコンタン酸またはセロメリシン酸またはフィリン酸、n=32のテトラトリアコンタン酸またはゲディン酸、n=33のペンタトリアコンタン酸またはセロプラスチン酸である。Guerbet酸は、2,2−ジアルキルエタン酸で特徴づけられるが、これも適切な化合物である。例示的なGuerbet酸としては、16〜36個の炭素を有するものが挙げられ、多くは、Jarchem Industries Inc.(ニュージャージー州ニューアーク)から入手可能である。PRIPOL(登録商標)1009(以下の式を有する異性体
【化2】



と、不飽和基および環状基を含んでいてもよい他の分枝鎖異性体とを含み、Uniqema(デラウェア州ニューキャッスル)から入手可能であるC−36ダイマー酸)。
【0022】
これらのカルボン酸を、UV硬化部分がついたアルコールと反応させ、反応性エステルを作成してもよい。これらのアルコールの例としては、限定されないが、Sigma−Aldrich Co.製の2−アリルオキシエタノール;
【化3】



Sartomer Company,Inc.製のSR495B(登録商標);The Dow Chemical Company製のTONE(登録商標)M−101(R=H、nの平均=1)、TONE(登録商標)M−100(R=H、nの平均=2)、TONE(登録商標)M−201(R=Me、nの平均=1);
【化4】



Sartomer Company,Inc.製のCD572(登録商標)(R=H、n=10)、SR604(登録商標)(R=Me、n=4)が挙げられる。いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、融点が約50〜約90℃の硬化性アクリレートワックスである。
【0023】
いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、Baker Hughes,Inc.から入手可能なUnilin(登録商標)350アクリレートの硬化性アクリレートワックス(C22、C23、C24の混合物、融点は約50〜約90℃)である。Unilin(登録商標)350の硬化性アクリレートワックスの合成は、米国特許第7,559,639号に記載されている。
【0024】
いくつかの実施形態の放射線硬化性固体インク組成物は、1つ以上の硬化性ワックスを、インクビヒクルの合計重量を基準として、約1重量%〜約40重量%、例えば、約2重量%〜約30重量%、または約3重量%〜約20重量%の範囲の量で含んでいてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、インクビヒクルは、1種類以上のコモノマーを含んでいてもよい。コモノマーは、任意の適切な放射線硬化性モノマーから選択されてもよい。
【0026】
上述の組成物の少なくとも1つの硬化性モノマーの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、Sartomer製のSR−9003)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、これらの混合物などが挙げられる。比較的非極性のモノマーとして、イソデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレートから作られるものが挙げられる。それに加え、多官能アクリレートモノマー/オリゴマーは、反応性希釈剤としてだけではなく、硬化した画像の架橋密度を高めることが可能な物質として用いてもよく、それにより、硬化した画像の靱性が高まる。
【0027】
用語「硬化性モノマー」は、硬化性オリゴマーを包含することを意図しており、これも、組成物中で用いてもよい。組成物で使用可能な適切な放射線硬化性オリゴマーの例は、低粘度のもの、例えば、約50cPs〜約10,000cPs、例えば、約75cPs〜約7,500cPs、または約100cPs〜約5,000cPsのものである。このようなオリゴマーの例としては、CN549、CN131、CN131B、CN2285、CN 3100、CN3105、CN132、CN133、CN132(Sartomer Company,Inc.、ペンシルバニア州エクセターから入手可能)、Ebecryl 140、Ebecryl 1140、Ebecryl 40、Ebecryl 3200、Ebecryl 3201、Ebecryl 3212(Cytec Industries Inc、ジョージア州スミュルナから入手可能)、PHOTOMER 3660、PHOTOMER 5006F、PHOTOMER 5429、PHOTOMER 5429F(Cognis Corporation、オハイオ州シンシナティから入手可能)、LAROMER PO 33F、LAROMER PO 43F、LAROMER PO 94F、LAROMER UO 35D、LAROMER PA 9039V、LAROMER PO 9026V、LAROMER 8996、LAROMER 8765、LAROMER 8986(BASF Corporation、ニュージャージー州フローラムパークから入手可能)などが挙げられる。多官能アクリレートおよび多官能メタクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2 エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6 ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミンで修飾されたポリエーテルアクリレート(PO 83 F、LR 8869、および/またはLR 8889として入手可能(すべてBASF Corporationから入手可能))、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ−/ヘキサ−アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer Co.Inc.からSR 494として入手可能)などで作られるものが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、コモノマーは、短鎖アルキルグリコールジアクリレートまたはエーテルジアクリレート、例えば、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートから選択されてもよく、非蛍光コモノマーは、短鎖アルキルエステル置換基を含むアクリレート、例えば、カプロラクトンアクリレート、商業的に入手可能なCD536、CD2777、CD585、CD586(Sartomer Co.Inc.から入手可能)から選択されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、コモノマーは、二官能脂環式アクリレートモノマー、三官能モノマー、アクリレートエステル、またはこれらの混合物または組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、コモノマーは、Sartomer Company,Inc.から入手可能な二官能脂環式アクリレートモノマー(シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、融点が約78℃)CD−406(登録商標)、Sartomer Company,Inc.から入手可能な三官能モノマー(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、融点が約50〜約55℃)SR368(登録商標)、Sartomer Company,Inc.製のアクリレートエステル(融点が約55℃)CD587(登録商標)、またはこれらの混合物または組み合わせであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態の放射線硬化性固体インク組成物は、1種類以上のコモノマーを、インクビヒクルの合計重量を基準として、約20重量%〜約90重量%、例えば、約30重量%〜約80重量%、または約40重量%〜約70重量%の範囲の量で含んでいてもよい。
【0031】
非硬化性ワックスは、室温で固体の任意の適切な非硬化性ワックスであってもよい。非硬化性とは、その成分が、遊離ラジカル重合によって反応しないか、または放射線硬化性ではないか、または顕著な放射線硬化性ではないことを意味する。いくつかの実施形態では、非硬化性ワックスは、一価アルコールまたは多価アルコールでエステル化した酸ワックス、または異なるエステル化度を有する酸ワックスのブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群のものであってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、非硬化性ワックスは、エステルワックスである。他の実施形態では、非硬化性ワックスは、モンタンワックス誘導体である。一実施形態では、非硬化性ワックスは、Clariantから入手可能なエステルワックスであるLicoWax(登録商標)KFOである。
【0033】
いくつかの実施形態では、上述の組成物は、非硬化性ワックスをエステルワックスと組み合わせて含んでおり、ここで、エステルワックスは、約15より大きく、約100より小さい酸価(mg KOH/g)を有しており、または、約40〜約95の酸価を有している。酸価は、当業者に既知の方法によって測定することができる(例えば、ASTM標準試験法 ASTM D 974)。
【0034】
いくつかの実施形態では、放射線硬化性固体インク組成物は、融点が約40〜約95℃のエステルワックスを含む非硬化性ワックスを含有している。
【0035】
非硬化性ワックスは、任意の適切な量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、非硬化性ワックスは、硬化性固体インク組成物の合計重量を基準として、約15重量%〜約55重量%、または約25重量%〜約50重量%、または約30重量%〜約45重量%の量で存在していてもよい。
【0036】
放射線硬化性固体インク組成物は、場合により、開始剤(例えば、光開始剤)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、このような開始剤は、インクを硬化しやすくするのに望ましい。
【0037】
いくつかの実施形態では、放射線(例えば、UV光放射線)を吸収し、インクの硬化性成分の硬化を開始させる光開始剤を用いてもよい。遊離ラジカル重合によって硬化する、いくつかの実施形態のインク組成物(例えば、アクリレート基を含むインク組成物、またはポリアミドで構成されるインク)の光開始剤として、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アルコキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、Ciba製の商品名IRGACUREおよびDAROCURで販売されているアシルホスフィン光開始剤のような光開始剤から作られるものを挙げることができる。適切な光開始剤の特定の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPOとして入手可能);2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPO−Lとして入手可能);2−イソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン(Ciba Darocur ITXとして入手可能);1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを含むα−ヒドロキシケトン光開始剤(Ciba IRGACURE 184として入手可能);ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(Ciba IRGACURE 819として入手可能)、他のアシルホスフィン;2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Ciba IRGACURE 907として入手可能)、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba IRGACURE 2959として入手可能);2−ベンジル 2−ジメチルアミノ 1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1(Ciba IRGACURE 369として入手可能);2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba IRGACURE 127として入手可能);2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン(Ciba IRGACURE 379として入手可能);チタノセン;イソプロピルチオキサントン;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾフェノン;4−メチルベンゾフェノン;ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン);2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン;ベンジル−ジメチルケタール;およびこれらの混合物が挙げられる。アミン共力剤(すなわち、光開始剤に水素原子を供与し、ラジカル種を生成して重合を開始させる補助開始剤で作られているものも挙げられ(アミン共力剤は、酸素が遊離ラジカル重合を阻害するため、インク中に溶解する酸素を消費し、酸素を消費することによって重合速度を高めてもよい)、例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートである。このリストは排他的なものではなく、UV光のような望ましい波長の放射線にさらされると遊離ラジカル反応を開始させるような任意の既知の光開始剤を限定することなく使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、硬化を開始させるために、約200〜約420nmの波長の放射線を吸収してもよいが、もっと長い波長を吸収する開始剤(例えば、560nmまでの光を吸収することが可能なチタノセン)を限定することなく用いることができる。
【0039】
インク組成物中に含まれる開始剤の合計量は、例えば、インク組成物の約3重量%〜約20重量%、例えば、約4重量%〜約10重量%であってもよい。
【0040】
インク組成物は、場合により、着色剤を含んでいてもよい。染料、顔料、これらの混合物などを含む任意の望ましい着色剤または有効な着色剤をインク組成物で利用してもよいが、ただし、着色剤は、インクビヒクルに溶解するか、または分散させることができる。顔料は、典型的には、染料よりも安価で、堅ろう性が高く、特定の実施形態に含まれていてもよい。多くの染料の色は、硬化段階中に起こる重合プロセスによって変わる場合があり、これはおそらく、これらの分子構造を遊離ラジカルが攻撃するからであろう。上述の組成物を、従来のインク着色材料(例えば、Color Index(C.I.)Solvent Dyes、Disperse Dyes、改変されたAcid and Direct Dyes、Basic Dyes、Sulphur Dyes、Vat Dyesなど)と組み合わせて用いてもよい。
【0041】
相変化インクの着色剤として、顔料も適している。
【0042】
米国特許第6,472,523号、米国特許第6,726,755号、米国特許第6,476,219号、米国特許第6,576,747号、米国特許第6,713,614号、米国特許第6,663,703号、米国特許第6,755,902号、米国特許第6,590,082号、米国特許第6,696,552号、米国特許第6,576,748号、米国特許第6,646,111号、米国特許第6,673,139号、米国特許第6,958,406号、米国特許第6,821,327号、米国特許第7,053,227号、米国特許第7,381,831号、米国特許第7,427,323号に開示されている着色剤も適している。
【0043】
着色剤は、インク組成物中に、例えば、インク組成物の約0.1重量%〜約25重量%、例えば約0.2重量%〜約8重量%の量で含まれていてもよい。
【0044】
放射線硬化性固体インク組成物は、場合により、酸化防止剤を含んでいてもよい。インク組成物に場合により含まれる酸化防止剤は、インク調製プロセスの加熱部分の間、画像が酸化しないように保護し、さらに、インク成分が酸化しないように防ぐ。
【0045】
酸化防止剤が存在する場合、場合により含まれる酸化防止剤は、実施形態のインク組成物に、任意の望ましい量または有効な量で存在し、例えば、インク組成物の少なくとも約10重量%、少なくとも約5重量%、または少なくとも約0.25重量%の量で存在する。
【0046】
いくつかの実施形態のインクは、硬化性成分の混合物であってもよく、場合により、反応性希釈剤、着色剤、開始剤、酸化防止剤、任意の従来の添加剤を含むさらなる物質を含んでいてもよい。このような従来の添加剤としては、例えば、消泡剤、すべり剤およびレベリング剤、顔料分散剤などが挙げられる。インクは、所望な場合、さらなるモノマー材料またはポリマー材料を含んでいてもよい。
【0047】
開示されている放射線硬化性固体インク組成物のいくつかの実施形態は、場合により、アミドゲル化剤を含んでいてもよい。任意の適切なアミドゲル化剤を用いてもよい。例示的なアミドゲル化剤は、米国特許第7,279,587号に記載されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、
【化5】



を含む混合物を含んでいてもよく、式中、−C3456+a−は、分枝鎖アルキレン基をあらわし、この基は、不飽和部および環状基を含んでいてもよく、変数「a」は、0〜12の整数である。
【0049】
アミドゲル化剤が存在する場合、場合により含まれるアミドゲル化剤は、実施形態のインク組成物に、任意の望ましい量または有効な量で存在し、例えば、インク組成物の少なくとも約15重量%、少なくとも約5重量%、または少なくとも約0.1重量%の量で存在する。
【0050】
いくつかの実施形態の放射線硬化性固体インクは、任意の適切な技術によって調製されてもよい。一例として、インクは、第1に、硬化性成分(インク組成物の約85重量%より少なく、約35重量%より多くてもよい)を混合し、非硬化性成分(約55重量%より少なく、約15重量%より多くてもよい)を加え、光開始剤(約6.5重量%より少なく、約3.5重量%より多くてもよい)を加え、場合により、任意の添加剤(例えば、ゲル化剤)を加え、顔料を加えることによって調製されてもよい。この混合物を加熱して均一な混合物を得る。次いで、インク組成物を、場合により高温でフィルタによって濾過し、無関係な大きな粒子および/または塵粒子を除去する。インク組成物を調製する方法を、インク組成物を調製するのに用いる成分の種類に合うように変えてもよい。
【0051】
本明細書に記載のインク組成物を、約100℃未満の温度で吐出し、例えば、約70℃〜約100℃、または約80℃〜90℃、または約85℃の温度で吐出してもよい。したがって、インク組成物は、圧電式インクジェットデバイスで用いるのに理想的に適している。
【0052】
インク組成物を、間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で利用してもよく、溶融したインクの液滴が記録基板上に画像の形になるように放出される場合、記録基板は中間転写体であり、画像の形のインクが、中間転写体から最終的な記録基板へと転写される。
【0053】
インク組成物は、中間転写基板(例えば、中間溶融転写ドラムまたはベルト)に吐出するのに適している。適切な設計で、例えば、中間溶融転写体をインクジェットヘッドに対して4〜18回回転させている間(増分移動)に適切な色のインク組成物を吐出することによって画像を塗布してもよい。言い換えると、それぞれの回転の間に、基板に対して印刷ヘッドを小さく移動させる。この手法によって印刷ヘッドの設計が簡単になり、小さな移動によって、液滴の位置決めが簡単になる。溶融転写によって、転写体を迅速に回転させて高品質の画像を積み重ねることができるため、溶融転写、つまり転写および溶融の工程が望ましい。溶融転写は、典型的には、インクジェットから中間転写体(例えば、溶融転写体のようなベルトまたはドラム)にインク組成物を吐出することを含む。これにより、画像が、溶融転写体に迅速に蓄積し、その後に、受像基板に転写し、融合させることができる。または、画像基板(例えば、紙)に同じ画像を直接蓄積させてもよい。
【0054】
中間転写体の表面は、約25℃〜約70℃、例えば、約30℃〜約65℃、または約35℃〜約60℃に維持されてもよい。この様式で、インクは、受像基板に転写されるまでは、転写体の表面に維持される。このように、インクを第1の温度まで加熱し、この温度で、インクは、例えば、インク組成物の固体転移温度より高い温度で吐出されてもよく、第1の温度は、例えば、約40℃〜約100℃である。固体が生成する第2の温度は、第1の温度よりも低く、例えば、約25℃〜約70℃である。
【0055】
本明細書に記載のインク組成物を、約30℃〜約60℃、例えば、約30℃〜約55℃、約35℃〜約50℃、例えば、約40℃で溶融転写してもよい。
【0056】
中間転写体の表面にのせたら、吐出されたインク組成物に、中間転写体表面にあるインクを限定的に効果させるように、限定的な程度まで放射線をあててもよい。この中間硬化は、インク組成物を完全に硬化させるためのものではないが、受像基板に適切な透過度で転写することができるように、吐出したインクを固定させるためのものであり、転写前に、インクが特定のレオロジーを有していることが必要である。中間硬化をおこなう際の硬化度を制御するために、同時係属中の米国特許公開第2006/0158496号および第2006/0119686号を参照する。
【0057】
中間転写体への吐出、さらに場合により、中間硬化の後に、インク組成物を受像基板に転写する。基板は、例えば、非多孔性の可とう性食品包装基材、食品包装紙用の接着剤、ホイルによるラミネート加工、布地、プラスチック、ガラス、金属などのような任意の適切な材料であってもよい。
【0058】
基板に転写した後、または直接印刷を利用する場合には基板に吐出した後、基板上の画像に放射線をあてることによって、インク組成物を硬化する。例えば、適切な波長の放射線(主に、インク開始剤が吸収する波長の放射線)を用いてもよい。これにより、インク組成物の硬化反応が開始する。放射線をあてる時間は長くなくてもよく、例えば、約0.05〜約10秒、例えば、約0.2〜約2秒であってもよい。放射線をあてる時間は、インク組成物の基板がUVランプの下を通る時間としてあらわされることが多い。例えば、UV Fusionから利用可能な、マイクロ波によってエネルギーを与えられ、ドープされた水銀球を10cm幅の楕円鏡の集合体に置き、複数のユニットを並べて置いてもよい。このように、ベルトの速度0.1ms−1は、画像の一点が1個のユニットの下を通るのに1秒必要ということであり、一方、ベルトの速度4.0ms−1は、4個の球の集合体の下を通るのに0.2秒必要ということである。上述の組成物の放射線硬化性成分の架橋を始めるのに用いられるエネルギー源は、化学線(例えば、スペクトルの紫外線または可視光領域の波長を有する放射線)、加速粒子(例えば、電子線放射線、熱、例えば、熱または赤外線による照射)などであってもよい。いくつかの実施形態では、化学線は、架橋の開始および速度を良好に制御することができるため、上述のエネルギーは化学線である。適切な化学線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、発光ダイオード、日光、電子線エミッターなどが挙げられる。硬化用の光は、所望な場合、または必要な場合、フィルタにかけられてもよく、収束させてもよい。インク組成物の硬化性成分が反応し、適切な硬度および堅ろう性を有する硬化または架橋した網状構造が得られる。いくつかの実施形態では、硬化は、実質的に終了するか、または完全に終了する。すなわち、硬化性成分の少なくとも75%が硬化する(反応し、および/または架橋する)。これにより、インク組成物が実質的に硬くなり、これにより、耐引っ掻き性がかなり増し、また、基板上の透けを十分に制御することができる。
【0059】
しかし、インクが塗布される基板は、インクの粘度が高くなる(例えば、10〜10mPa−sの粘度の)温度であってもよい。例えば、基板は、約80℃以下の温度、より特定的には、約0℃〜約50℃の温度に維持されていてもよく、ただし、基板の温度は、吐出温度より低い。特定の実施形態では、基板の温度は、第1の温度よりも少なくとも10℃低いか、または、基板の温度は、吐出温度よりも10〜50℃低い。
【0060】
インクが液体である温度でインクを吐出し、基板の温度を、インクの粘度が高くなる温度にすることによって、相変化させることができる。この相変化によって、組成物が基板に迅速に染みこむのを防ぎ、透けを防ぐか、または少なくとも最低限にする。それに加え、基板上でインクに放射線をあて、硬化性モノマーの重合を開始させ、堅ろう性の画像を得る。特定の実施形態では、インク組成物を、直接的な印刷インクジェットプロセスで用いてもよく、溶融したインクの液滴が記録基板上に画像の形になるように放出される場合、記録基板は最終的な記録基板であり、例えば、紙に直接塗布されるが、基板は紙に限定されない。基板は、紙、ボール紙、厚紙、布地、透明物、プラスチック、ガラス、木材などの任意の適切な材料であってもよいが、上述のインクは、最も特定的には、紙上で画像を作成するのに用いられる。
【0061】
放射線硬化性固体インク組成物の以下の例によって、上述の実施形態をさらに説明する。これらの例は、本開示を実施する際に利用可能な、異なる組成物および条件を示している。すべての比率は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。しかし、本開示は、多くの種類の組成物を用いて実施することができ、上述の開示にしたがって、以下に指摘されているように、多くの異なる用途を有していることが明らかであろう。
【0062】
無色の硬化性固体インクを、以下の表1に示されるように、グラムで表した量の成分とともに、30mLの褐色ガラス瓶に、以下の順序でインク成分を配合した。CD406、SR368、CD587、Unilin 350アクリレート、LicoWax KFO、Irgacure 819、Irgacure 184、Irgacure 907、選択したサンプルについて、Darocur ITX。この混合物に、撹拌棒を加え、混合物をVariomag反応ブロックに置いた。インク混合物を約90℃で加熱し、300RPMで少なくとも20分間撹拌するか、または混合物が均質になるまで撹拌した。温度を約5分間で100℃まで上げた。この混合物を90℃に戻し、90分間撹拌した。
【表1】



【0063】
すべてのインクについて、硬化前または初期の硬度、硬化速度(初期の勾配)、硬化後の硬度(最終的な硬度)、粘度および体積収縮のデータを得た。結果を表2に示す。インクビヒクル候補物質の硬化前および硬化後の硬度は、Model 476 Standを利用し、標準的な負荷1kgを用いたPTC Durometer Model PS 6400−0−29001で得た。市販の固体インク(ColorQubeTM 9200 Seriesの固体インク)の硬度は、この装置では67と測定された。
【0064】
硬化速度を、UV光の露光に対する硬度の変移を用いて測定した。Fusion UV Systems Inc.のLighthammerにD球を取り付け、これを用いてビヒクルに照射し、特定の照射時間後に硬度を測定した。硬化速度に対する硬度(s/ft)のプロットを用い、インクビヒクルの初期硬化速度を得た。表2で、以下の式を用いて、露光時間に対する硬度のプロットから、初期硬度、初期勾配(硬化速度)、最終硬度を得た。y=m+m・(1−exp(−m・x))、式中、mは、初期硬度である(硬化前);m、mは、初期勾配であり(硬化速度)、m+mは、最終硬度である(硬化後の硬度)。粘度は、Rheometrics Fluid Rheometer RFS3で得た。体積収縮または縮みは、溶融したインク約6.7mlを、直径35mm、高さ7mmの銅型に注ぐことによって測定した。インクを少なくとも12時間放置して冷却し、固化したインクの直径および型の直径から縮みを決定し、y方向およびx方向(高さ)の縮みの概算値は同じであった。
【表2】



【0065】
すべてのサンプルの硬化前または初期の硬度は、40より大きいことがわかり、硬化速度は、約25から80を超えるものまであり、最終硬度は、全ての場合で標準的な固体インクよりも大きかった。それに加え、インクに含まれる結晶性ワックスは低濃度であるため、吐出温度から冷却した際の縮みは、ほとんどの実施例で6%未満であり、この値は、標準的な固体インクの約50%未満である。実施例AおよびBにおいて、縮みは1.5%未満であった。これにより、現在のメンテナンス周期を大きく改良することができるか、またはなくすことができるであろう。
【0066】
実施例Fのインクを選び、改良型Xerox Phaser 8400プリンタで、さらに印刷および溶融転写を評価した。このインク約120gを上に記載した様式で配合して少量のインクサンプルを作るが、この場合、表3に示すように、着色剤を配合物に加えた。
【表3】



【0067】
CX紙を用い、実施例FのインクをBuzz 1 fixture(周波数=36Khz、設定吐出温度T=99.6℃;355×464dpi)で評価した。以下の転写固着条件を用いた。ドラム=35℃;前加熱=50℃;圧力=385lbs;速度=20ips。転写固着ドラムで印刷した後、経過時間に対しても転写固着を評価した。
【0068】
転写固着性は、印刷工程と溶融転写工程との間の経過時間が増えるほど向上することがわかった。30秒経過した後、ドラム上に残留するインク(追跡シートに転写することによって実証される)は、経過時間がない場合よりもかなり少なくなっており、許容範囲であった。経過時間0での最適性能は、インクの配合および転写条件、圧力および温度をさらに最適化することによって得られると予想される。
【0069】
さらに、実施例Fのインクを直接紙に印刷した。溶融転写した画像と、紙に直接印刷した画像の両方を、D球を取り付けたFusion UV Systems Inc.のLighthammerで、32〜240ft/分の速度で硬化した。硬化した画像は、汚れがなく、溶融転写画像は、優れた耐引っ掻き性を有しており、圧力を加えると、紙にインクが良好に浸透し、すでに述べたように、硬化プロセスによって、標準的な固体インクよりもインクの硬度が高まる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性固体インク組成物であって、
インクビヒクルと;
硬化性ワックスと;
非硬化性エステルワックスとを含み、
この放射線硬化性固体インク組成物が、室温で40より大きい初期硬度を有する、放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項2】
前記初期硬度が、室温で40〜約70である、請求項1に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項3】
溶融転写の温度が、約30〜約60℃である、請求項1に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項4】
溶融物を冷却したときの体積収縮が、約1.5%〜約7.0%である、請求項1に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項5】
前記放射線硬化性固体インク組成物の吐出温度が、約70〜約100℃である、請求項1に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項6】
前記硬化性ワックスが、融点が約50〜約90℃のアクリレートワックスである、請求項1に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項7】
前記非硬化性エステルワックスの酸価(mg KOH/g)が、約15より大きく、約100より小さい、請求項1に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項8】
前記硬化性モノマーが、二官能脂環式アクリレートモノマー、三官能モノマー、アクリレートエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上である、請求項12に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項9】
前記インクビヒクルが、2−イソプロピルチオキサントンおよび2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンを含むα−ヒドロキシケトン光開始剤からなる群から選択される遊離ラジカル光開始剤を含む、請求項12に記載の放射線硬化性固体インク組成物。
【請求項10】
前記インクビヒクルが、アミドゲル化剤をさらに含む、請求項12に記載の放射線硬化性固体インク組成物。

【公開番号】特開2012−21153(P2012−21153A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144973(P2011−144973)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】