説明

滅菌デバイス、滅菌装置及び滅菌デバイスの製造方法

【課題】コンパクトに構成可能であり小電圧の印加で細胞や菌の効率的な破壊・滅菌が可能な滅菌デバイス、滅菌装置及び滅菌デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】この滅菌デバイス10は、基板11と、細胞や菌を液体により搬送可能なように基板上に設けられた微細な流路12と、流路に略直交し流路の側壁に対向するように設けられた少なくとも一組の対向電極13,14と、を備え、流路を液体とともに流れる細胞、菌を死滅させまたは滅菌するために対向電極に電圧を加えて流路に高電界を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の生体細胞や菌などを滅菌する滅菌デバイス、滅菌装置及び滅菌デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液等の各種物質における殺菌・減菌のために熱殺菌に代わって高電圧パルス殺菌が提案されているが、この高電圧パルス殺菌は、電界が15〜50kV/cmであり、μsオーダーのパルス電圧を印加し、細胞にダメージを与える殺菌方法である。高電圧パルスによって瞬間的に大きな電流が流れるため、細胞膜を構成している脂質分子が乱され、細胞膜に穴があく。比較的弱い電界や短時問では、修復可能な可逆的破壊が起こるが、強い電界を長時間印加すると、不可逆的破壊を起こし、細胞が死滅する。
【0003】
下記特許文献1は、殺菌対象液体を収容できるようにした空間部の両側に所要間隔で対峙させた一対の平板状の電界印加電極を配設して、電界印加電極間を高電界印加領域とし、この高電界印加領域に高電界パルスを印加させるようにした高電界パルス殺菌装置を開示する。
【0004】
下記特許文献2は、対向する電極と、電極間に形成される電界の絞り部と、電極間に電極と平行な方向に被処理液を流す通液装置と、電極間に同じ極性の高電圧パルスを印加する電源装置とを含む液中微生物の殺菌装置を開示する。
【特許文献1】特開2000−262261号公報
【特許文献2】特開2001−17980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来のパルス殺菌装置では、電圧を印加する電極間隔が大きく、大きな電界を発生させる場合には高電圧を必要とし、装置が大がかりであった。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、コンパクトに構成可能であり小電圧の印加で細胞や菌の効率的な破壊・滅菌が可能な滅菌デバイス、滅菌装置及び滅菌デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による滅菌デバイスは、基板と、細胞や菌を液体により搬送可能なように前記基板上に設けられた微細な流路と、前記流路に略直交し前記流路の側壁に対向するように設けられた少なくとも一組の対向電極と、を備え、前記流路を液体とともに流れる細胞、菌を死滅させまたは滅菌するために前記対向電極に電圧を加えて前記流路に電界を印加することを特徴とする。
【0008】
この滅菌デバイスによれば、一組の対向電極は、細胞、菌が液体とともに流れる微細な流路に略直交し微細な流路の側壁で対向しているので、一組の対向電極の間隔が狭くなり、小さな電圧であっても流路に大きな電界を発生させることができ、これにより、液体中の細胞、菌を効率的に死滅させまたは滅菌することができるとともに、コンパクトな滅菌デバイスを構成することができ、チップ状のの小型の滅菌デバイスを実現できる。なお、対向電極に加える電圧は、パルス電圧が好ましいが、直流電圧や交流電圧であってもよい。
【0009】
上記滅菌デバイスにおいて前記対向電極はシリコンからなる基板上に形成されることが好ましい。これにより、微細な流路を効率的に形成可能となる。
【0010】
また、前記基板の流路に外部の流路と接続可能に設けられた接続用パイプを備えることが好ましい。なお、この場合、接続用パイプは、前記基板の流路の入口側と出口側となる両端に設けられることが好ましく、また、前記基板の流路が延びる方向に設けてよく、または、基板の平面に対し略直立に設けてもよい。
【0011】
また、前記基板を覆うように設けられた蓋部を備えることが好ましく、蓋部を設けることで流路をシールできる。
【0012】
また、上述の滅菌デバイスを複数組み合わせて滅菌デバイスを構成するようにしてもよい。この滅菌デバイスによれば、複数の滅菌デバイスを積み重ねる等して並列的に接続することで、滅菌デバイスに流すことのできる液体量を増やすことができ、死滅・滅菌すべき細胞、菌を含む液体の単位時間あたりの処理量が増え、効率的な死滅・滅菌処理を行うことができる。また、複数の滅菌デバイスを直列的に接続することで、より確実な死滅・滅菌処理が可能となる。更に、複数の滅菌デバイスを並列接続したものを複数直列接続するようにしてもよい。
【0013】
本発明による滅菌装置は、上述の滅菌デバイスと、液体を前記滅菌デバイスに送るかまたは前記滅菌デバイスから吸引するポンプと、を備えることを特徴とする。
【0014】
この滅菌装置によれば、ポンプで液体を滅菌デバイスに向けて送ることにより、滅菌デバイスで細胞、菌の死滅・滅菌処理がされた液体を外部に排出することができる。また、ポンプで外部の液体を吸引して滅菌デバイスに送ることにより、外部の液体について滅菌デバイスで細胞、菌の死滅・滅菌処理を行うことができる。なお、滅菌デバイスとポンプとの間に液体を暫定的に溜めておくピペットを配置してもよい。
【0015】
上記滅菌装置において液体を貯留する液体タンクを更に備え、前記ポンプにより、前記液体タンク内の液体を前記滅菌デバイスに送るかまたは前記滅菌デバイスから液体を前記液体タンクへと吸引するようにできる。液体タンクを処理対象の液体貯留用とし、ポンプで液体タンク内の液体を滅菌デバイスに向けて排出することにより、滅菌デバイスで細胞、菌の死滅・滅菌処理がされた液体を外部に排出することができる。また、液体タンクを処理済みの液体貯留用とし、ポンプで外部の液体を吸引して滅菌デバイスに送ることにより、滅菌デバイスで細胞、菌の死滅・滅菌処理がされた液体を液体タンクに貯留することができる。
【0016】
本発明による滅菌デバイスの製造方法は、微細な流路を液体とともに流れる細胞、菌を死滅させまたは滅菌するために一組の対向電極に電圧を加えて前記流路に電界を印加する滅菌デバイスを製造するための方法であって、シリコンからなる基板上に溝を形成するステップと、前記溝内に金属の穴埋め加工を行うステップと、前記金属が埋め込まれた溝を横断するように前記基板に前記流路のための凹状部を形成するステップと、を含み、前記一組の対向電極が前記凹状部の両側壁に露出した金属部から形成されることを特徴とする。
【0017】
この滅菌デバイスの製造方法によれば、シリコンからなる基板上に形成した溝内に金属を埋め込み、この金属が埋め込まれた溝を横断して凹状部を形成し、この凹状部を微細な流路とするとともに、溝内の金属が切断されて微細な流路(凹状部)の両側壁に露出した金属部が流路を挟んで対向し、一組の対向電極を形成できる。これにより、微細な流路と、微細な流路に略直交し微細な流路の側壁で対向する一組の対向電極と、を備える滅菌デバイスを簡単な工程で効率よく製造することができる。また、凹状部の幅を調整することで、対向電極の間隔を制御でき、対向電極の間隔を狭くすることで、対向電極に加える電圧が小さくても流路に大きな電界を発生させることができ、液体中の細胞、菌を効率的に死滅させまたは滅菌することが可能でコンパクトな滅菌デバイスを製造できる。
【0018】
上記滅菌デバイスの製造方法において、前記溝を前記基板上に複数形成し、前記金属が埋め込まれた複数の溝を横断するようにして前記流路を形成することで、前記対向電極を複数組形成することができる。これにより、複数組の対向電極を基板上に簡単に形成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の滅菌デバイス、滅菌装置によれば、コンパクトに構成可能であり小電圧の印加で細胞や菌の効率的な破壊・滅菌が可能である。
【0020】
また、本発明の滅菌デバイスの製造方法によれば、上述の滅菌デバイスを簡単かつ効率的に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
〈第1の実施の形態〉
【0023】
図1は第1の実施の形態による滅菌デバイスを概略的に拡大して示す上面図である。図2は図1の滅菌デバイスをII-II線方向に切断して見た要部断面図である。
【0024】
図1,図2に示すように、本実施の形態による滅菌デバイス10は、シリコンからなる基板11と、シリコン基板11の図の横方向に延びて形成された微細な流路12と、流路12にほぼ直交し流路12の両側壁12a、12bに露出し流路12を挟んで互いに対向する複数組の対向電極13,14と、基板11を覆うように接着等により貼り合わされて流路12をシールするガラス板等からなる蓋部15と、を備える。
【0025】
複数組の対向電極13,14には、図1のように、外部の電源からパルス電圧を電気配線16,17を通して加えることができる。
【0026】
また、滅菌デバイス10の微細な流路12の断面形状は、生体細胞Cや菌が液体とともに流れる程度の大きさに構成されており、図2のように、略矩形状になっており、側壁12a、12bを有している。
【0027】
また、対向電極13,14は、微細な流路12の側壁12a、12bに露出し微細な流路12を挟んで対向しているので、対向電極13と14との間隔を狭くすることができる。このため、対向電極13,14に加える電圧が小さな電圧であっても流路12に大きな電界を発生させることができる。
【0028】
図1,図2の滅菌デバイス10によれば、微細な流路12を挟んで対向する対向電極13と14との間隔が狭く、微細な流路12を生体細胞Cや菌が液体とともに流れる際に、対向電極13,14に小さな電圧を加えても流路12に大きな電界を印可できるので、液体中の生体細胞、菌を効率的に死滅させまたは滅菌することができる。
【0029】
また、滅菌デバイス10は、シリコン基板11に微細な流路12を形成したものであるので、コンパクトに構成でき、チップ状に小型化が可能である。
【0030】
〈第2の実施の形態〉
【0031】
図3は、第2の実施の形態による滅菌デバイスの製造方法を説明するための図であり、滅菌デバイスの作製の各ステップ(a)乃至(i)を概略的に示す図である。
【0032】
本実施の形態は、図1,図2と同様の構成の滅菌デバイスをマイクロマシニング技術とめっき技術を用いて作製するものである。
【0033】
まず、(100)方位のシリコン(Si)基板21上に酸化シリコン(SiO2)をマスク材として用いてラインアンドスペースパターンをパターニングした後、シリコン基板21にウェットエッチングを行うことで、異方性エッチングにより、図3(a)のようにシリコン基板21上に所定角度を有するV字状溝22を複数形成する。
【0034】
次に、図3(b)のように、図3(a)のV字状溝22が形成されたシリコン基板21の表面に絶縁膜23を形成してから、シード層24を形成する。なお、絶縁膜23は、SiO2やSi34等からなり、熱酸化、CVDのような成膜プロセスにより形成できる。また、シード層24は、ニッケルや銅等の金属からなり、蒸着、スパッタリングのような成膜プロセスにより形成できる。
【0035】
次に、図3(c)のように、図3(b)のシリコン基板21の表面にニッケルや銅などの金属をめっき加工することによって、V字状溝22内を金属で穴埋めし、金属部25を形成する。この後、図3(d)のように、図3(c)のシリコン基板21の表面を研磨加工する。
【0036】
上述のステップ(a)〜(d)によりシリコン基板21上には、図3(e)のように、V字状溝22に穴埋めされた金属部25が直線状に複数形成されるが、このシリコン基板21の図の横方向略中央に直線状の金属部25を横断し左右端に貫通して凹状の切り込みを形成することで、図3(f)のように断面形状が矩形状の凹状部26を形成する。凹状部26は例えばダイシングソーなどの半導体チップの切断に用いられる切断装置を用いて加工できる。
【0037】
図3(f)のように、断面形状が矩形状の凹状部26を図の横方向に直線状の金属部25に略直交して形成することで、凹状部26で直線状の金属部25を切断するが、これにより、直線状の金属部25は、一方の側の金属部25aと、他方の側の金属部25bとに分割されるとともに、凹状部26の側壁27に金属部25a,25bの各端面が露出する。
【0038】
上述のように分割された一方の金属部25aと他方の金属部25bとが図1,図2と同様の対向電極となり、凹状部26が図1,図2の微細な流路となる。上述のように、複数の金属部25を横断して切断することで、複数組の金属部25a,25bからなる複数組の対向電極をシリコン基板21上に簡単に形成できる。
【0039】
次に、必要であれば金属部(対向電極)25a,25bを含むシリコン基板21の表面に絶縁層を形成してから、図3(g)のように、ガラス板28を図2の蓋部15として接着剤等により貼り合わせる。
【0040】
次に、図3(h)のように、外部の流路と接続可能なように一対の接続用パイプ29,30を、シリコン基板21の流路(凹状部)26の両端に流路26の延びる方向に側面接続が可能なように固定する。接続用パイプ29,30には例えば外部の容器等に接続するためのパイプが接続される。また、複数の対向電極25aをまとめて電気接続する電気接続部31及び複数の対向電極25bをまとめて電気接続する電気接続部32を形成する。
【0041】
なお、上記接続用パイプ29,30の流路(凹状部)26の両端において接続口等も図3(f)のダイシングソー等による加工ステップのときに一緒に加工できる。
【0042】
上述のようにして、図3(h)のような外部の流路に対し側面接続が可能な滅菌デバイス10Aを簡単な工程で効率よく作製できる。
【0043】
また、図3(i)のように、外部の流路と接続可能なように一対の接続用パイプ29,30を、シリコン基板21の流路(凹状部)26の両端近傍にシリコン基板21に直立して上面接続が可能なように固定してもよく、この場合、流路(凹状部)26の両端を封止材33,34でシールする。
【0044】
また、図3(h)と同様に電気接続部31及び電気接続部32を形成し、電気接続部31,32には一対の電気配線35,36を介して外部の電源37が電気接続されるようになっている。なお、図3(h)でも、電気接続部31,32には図3(i)と同様に一対の電気配線35,36を介して外部の電源37が電気接続される。
【0045】
また、図3(g)のガラス板28の流路(凹状部)26の両端近傍に形成された孔28a、28bは、図3(i)のように接続用パイプ29,30を直立して設ける場合に流路(凹状部)26と接続するためのものであり、図3(h)のように側面接続に構成する場合は不要である。
【0046】
上述のようにして、図3(i)のような外部の流路に対し上面接続が可能な滅菌デバイス10Bを簡単な工程で効率よく作製できる。
【0047】
また、上記滅菌デバイス10A、10Bは、図3(e)のようなチップ状の大きさであり、その平面寸法は、例えば、1500μm×1500μmであり、流路26の幅(対向電極25a,25bの間隔)は、ダイシングソー等による加工幅で調整可能であり、例えば50μmと狭くすることができるが、これらの平面寸法、対向電極の間隔は、一例であって、適宜変更が可能である。
【0048】
以上のように、シリコン基板21上に複数の直線状の金属部25を作製し、複数の金属部25を横断するように微細な流路26を加工することで、複数の対向電極25a,25bを簡単に作製できる。そして、ダイシングソー等による流路(凹状部)26の加工幅を調整することで、対向電極25a,25bの間隔を制御でき、対向電極25a,25bの間隔を狭くすることができるので、電源37から対向電極25a,25bに加える電圧が小さくても流路26に大きな電界を発生させることができる。
【0049】
例えば、対向電極25a,25bの間隔を50μmとし、電圧100Vを対向電極25a,25bに加えることで、20kV/cmの高電界を流路26に印加することができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、流路26を流れる液体中の細胞、菌を高電界の印加により効率的に死滅させまたは滅菌することが可能でコンパクトな小型の滅菌デバイス10A,10Bを簡単な工程で製造することができる。
【0051】
なお、比較的広いシリコン基板を用いて図3(a)〜(d)の各ステップを実行してから、比較的広いシリコン基板について流路形成のための凹状部26の溝加工とともにダイシングソー等による切断を行うことで、図3(f)のような凹状部26が形成された小型でチップ状の基板21を多数効率的に作製することができる。
【0052】
〈第3の実施の形態〉
【0053】
図4は、第3の実施の形態による滅菌装置の概略的構成を示す図(a)及び図4(a)の滅菌装置の滅菌デバイスの構成を拡大して概略的に示す斜視図(b)である。
【0054】
図4(a),(b)のように、第3の実施の形態による滅菌装置50は、ピぺット52の先端52aに、積層させた複数の滅菌デバイス51を備えて液体の滅菌処理を行うものである。
【0055】
すなわち、滅菌装置50は、図3(h)の滅菌デバイス10Aを複数積み重ねて並列接続した滅菌デバイス51と、滅菌デバイス51と一端52a側が接続されたピペット52と、ピペット52の他端側にパイプ55により接続されたポンプ53と、ポンプ53にパイプ56により接続された液体タンク54と、を備える。ポンプ53は、液体タンク54内の液体(滅菌処理の対象液体)を滅菌デバイス51に向けて排出するように作動する。
【0056】
滅菌デバイス51は、図4(b)のように、図3(h)の滅菌デバイス10Aを複数積み重ねており、各滅菌デバイス10Aの複数の接続用パイプ29が一方の接続部材38に接続されて複数の流路26が合流し、もう一方の複数の接続用パイプ30が他方の接続部材39に接続されて複数の流路26が合流するように構成されることで、複数の滅菌デバイス10Aが並列接続されている。
【0057】
また、接続部材38にはピペット52の一端52aが接続され、接続部材39には、排出用パイプ40が接続されている。
【0058】
図4(a),(b)の滅菌装置50によれば、液体タンク54に蓄積した滅菌すべき液体がポンプ53によって加圧され、ピペット52に送られて暫定的に溜められてから、接続部材38で流路を分岐させて各滅菌デバイス10Aの流路26を通過させて滅菌処理した後、接続部材39で再び合流させて、滅菌処理後の液体を排出用パイプ40を通して外部に排出する。
【0059】
上述のように、滅菌装置50は複数の滅菌デバイス10Aを並列接続した滅菌デバイス51を備えるので、滅菌すべき液体の単位時間あたりの処理量を増やすことができ、液体の効率的な滅菌処理を行うことができる。なお、滅菌装置50において、並列接続する滅菌デバイス10Aの数を増やすことで、滅菌すべき液体の単位時間あたりの処理量を更に大きくすることができる。
【0060】
また、図4(a)、(b)の滅菌装置50を、逆に、ピぺット52で吸い込んだ液体を滅菌処理する用途にも使用できる。すなわち、ポンプ53を、パイプ40から外部の液体を吸引して滅菌デバイス51に送り込んで、滅菌デバイス51で滅菌処理がされた液体をピペット52を通して液体タンク54に貯留するように作動させることで、かかる用途を実現できる。
【0061】
なお、図1,図2の滅菌デバイス10及び図3(h)、(i)の滅菌デバイス10A,10Bは、液体を滅菌処理する上でコンパクトで小型の構成であるから、液体や溶液の滅菌処理が必要な様々な装置に簡単に取り付けることができ、様々な用途に使用可能である。
【0062】
また、図1,図2の滅菌デバイス10及び図3(h)、(i)の滅菌デバイス10A,10Bにおいて、対向電極13,14の間隔、対向電極25a,25bの間隔は、20〜100μmの範囲内が好ましい。
【0063】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図4(b)の複数の滅菌デバイス10Aを直列的に接続するように構成してもよく、この場合、より確実な滅菌処理が可能となる。
【0064】
また、図4(b)のように複数の滅菌デバイス10Aを並列接続した複数の滅菌デバイス51を直列的に接続するようにしてもよい。
【0065】
また、流路12,26の断面形状は、矩形状に限定されず、略三角状や略半円状等であってもよい。また、対向電極26a,26bのための図3(a)のV字状溝22も矩形状溝等に加工してもよい。更に、対向電極26a,26bのための溝22の加工はドライエッチング等の他のプロセスを使用してもよく、また、V字状溝22に金属を埋める方法は他の成膜プロセスを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態による滅菌デバイスを概略的に拡大して示す上面図である。
【図2】図1の滅菌デバイスをII-II線方向に切断して見た要部断面図である。
【図3】第2の実施の形態による滅菌デバイスの製造方法を説明するための図であり、滅菌デバイスの製造の各ステップ(a)乃至(i)を概略的に示す図である。
【図4】第3の実施の形態による滅菌装置の概略的構成を示す図(a)及び図4(a)の滅菌装置の滅菌デバイスの構成を拡大して概略的に示す斜視図(b)である。
【符号の説明】
【0067】
10 滅菌デバイス
11 基板
12 流路
12a,12b 側壁
13,14 対向電極
15 蓋部
16,17 電気配線
10A,10B 滅菌デバイス
21 シリコン基板
22 V字状溝
25 金属部
25a,25b 分割された金属部、対向電極
26 凹状部、流路
27 側壁
28 ガラス板
29,30 接続用パイプ
31,32 電気接続部
33,34 封止材
35,36 電気配線
37 電源
38,39 接続部材
40 排出用パイプ
50 滅菌装置
51 滅菌デバイス
52 ピペット
52a ピペットの一端、先端
53 ポンプ
54 液体タンク
C 生体細胞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
細胞や菌を液体により搬送可能なように前記基板上に設けられた微細な流路と、
前記流路に略直交し前記流路の側壁に対向するように設けられた少なくとも一組の対向電極と、を備え、
前記流路を液体とともに流れる細胞、菌を死滅させまたは滅菌するために前記対向電極に電圧を加えて前記流路に電界を印加することを特徴とする滅菌デバイス。
【請求項2】
前記対向電極がシリコンからなる基板上に形成されている請求項1に記載の滅菌デバイス。
【請求項3】
前記基板の流路に外部の流路と接続可能に設けられた接続用パイプを備える請求項1または2に記載の滅菌デバイス。
【請求項4】
前記基板を覆うように設けられた蓋部を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の滅菌デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の滅菌デバイスを複数組み合わせて構成されたことを特徴とする滅菌デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の滅菌デバイスと、
液体を前記滅菌デバイスに送るかまたは前記滅菌デバイスから吸引するポンプと、を備えることを特徴とする滅菌装置。
【請求項7】
液体を貯留する液体タンクを更に備え、
前記ポンプにより、前記液体タンク内の液体を前記滅菌デバイスに送るかまたは前記滅菌デバイスから液体を前記液体タンクへと吸引する請求項6に記載の滅菌装置。
【請求項8】
微細な流路を液体とともに流れる細胞、菌を死滅させまたは滅菌するために一組の対向電極に電圧を加えて前記流路に電界を印加する滅菌デバイスを製造するための方法であって、
シリコンからなる基板上に溝を形成するステップと、
前記溝内に金属の穴埋め加工を行うステップと、
前記金属が埋め込まれた溝を横断するように前記基板に前記流路のための凹状部を形成するステップと、を含み、
前記一組の対向電極が前記凹状部の両側壁に露出した金属部から形成されることを特徴とする滅菌デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記溝を前記基板上に複数形成し、
前記金属が埋め込まれた複数の溝を横断するようにして前記流路を形成することで、前記対向電極を複数組形成する請求項8に記載の滅菌デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−188334(P2008−188334A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27923(P2007−27923)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】