説明

滋養強壮飲料

【課題】血流改善効果や精力増強を含めた滋養強壮効果が大幅に高められ、しかもアルギニンが有する独特の生臭い風味と苦味を感じることない嗜好性に優れた滋養強壮飲料を提供する。
【解決手段】アルギニンと、柑橘系オイルと、を含有した滋養強壮飲料であって、アルギニンの含量を飲料1l当たり10g以上とする。さらには、カフェインやコエンザイムQ10を含有させる。これによって、血流改善作用や精力増強作用を有するアルギニンが高含有されていて、しかも嗜好性に優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滋養強壮飲料に関し、特に、アルギニンを高含有し男性機能回復を含めた滋養強壮効果を高めた滋養強壮飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
お酒は昔から、百薬の長と言われるように、適度にたしなむと、健康を増進し、長生きにつながる飲み物である。このお酒の効果を増進するものとして、いわゆる薬用酒がある。しかし、これらのお酒は主として、民間伝承的な漢方生薬やハーブを酒類に溶かし込んだもので、いわゆる滋養強壮、体質改善に有効とされているが、必ずしも現代栄養学的見地に基づいたものとは言いがたい。
【0003】
そこで、生理機能の解明された、栄養成分が含有され、効果がはっきりとした現代版薬膳酒類をつくることは意義がある。その中でも、アルコールの血流改善効果を促進し、精力増強につながる健康酒類は、ひろく求められている。
【0004】
一方、血流改善効果を促進し、精力増強につながる成分としてアルギニンが注目され、例えば、特許文献1〜4に記載されているようなアルギニンを含有した精力改善剤やダイエット飲食物、滋養強壮飲食物が開発されている。また、例えば、アルギニンを主要成分として含有した飲料が市販されている。また、アメリカでは一袋あたり3gのアルギニンを含有した粉末飲料が市販されており、この飲料を摂取することで血流改善効果が顕著に得られるとして、アミノ酸の1種のアルギニンタブレット市場が誕生している。
【0005】
また、特許文献5〜7には、アルコール飲料にアルギニンを配合した酒類が開示されている。
【特許文献1】特許第3232067号公報
【特許文献2】特許第3018053号公報
【特許文献3】特開2001−187736号公報
【特許文献4】特開2004−242509号公報
【特許文献5】特開2001−37462号公報
【特許文献6】特開平06−78740号公報
【特許文献7】特開昭62−272966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1〜4の精力改善剤やダイエット用または滋養強壮飲食物は、アルギニンが独特の生臭さや苦味を有するので、摂取する際の風味等の嗜好性の面から配合量が制限され、より高含量のアルギニンを含有する飲料とすることができない。また、アルコール飲料ではなく、血流改善としてアルコールとの相乗効果を企図した物では無い。
【0007】
また、特許文献5〜7に開示されたものは、ビールや発泡酒の製造方法において、麦芽や蜂蜜を発酵させる際の酵母の栄養成分としてのアルギニンに注目して開発されたものであり、アルギニンの血流改善効果や精力増強を企図したものではない。
【0008】
そこで、アルギニンの含量を高めて男性機能回復を含め精力増強や滋養強壮効果をより増強させて、かつ、美味しく摂取できる飲料、特に血流改善としてアルコールとの相乗効果を有する滋養強壮飲料の開発が求められている。
【0009】
本発明の目的は、血流改善効果や精力増強を含めた滋養強壮効果が大幅に高められ、しかもアルギニンが有する独特の生臭い風味と苦味を感じることない嗜好性に優れた滋養強壮飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の課題について鋭意検討した結果、柑橘系オイルを配合することで、アルギニンを高含有させてもアルギニンの独特の生臭い風味や苦味を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1) アルギニンと、柑橘系オイルと、を含有してなる滋養強壮飲料。
【0013】
本発明によれば、柑橘系オイルが有する力強くて爽やかな香りであるリモネン等と、グレープフルーツに含まれるナリンギンやレモンに含まれるヘスペリジンなどの柑橘類特有の苦味成分が、アルギニンの魚介類的生臭さを感じ難くするとともに、苦味を心地よいものとする。このため、アルギニンが高含量であっても、アルギニンが有する独特の生臭い風味や苦味が抑制され、嗜好性に優れたものとなる。また、アルギニンの含量を高めることで以下のようなアルギニンによる滋養強壮効果が増強される。
【0014】
アルギニンは、血管拡張因子の一酸化窒素(NO)の生体内における唯一の前駆体として作用する。アルギニンを摂取することで、体内に神経伝達物質であるNOが産生され、NOが産生されると、NOがグアニル酸シクラーゼのヘム成分と結合することにより一酸化窒素合成酵素が活性化さる。これによりグアノシントリホスフェートからサイクリックグアノシンモノホスフェート(cGMP)が合成され、末梢血管においてcGMPが増加し、末梢血管を拡張する指令が出される。このcGMPは、平滑筋細胞中のカルシウム濃度を減少させるため、cGMP濃度の増大に伴い平滑筋の弛緩が進行し、毛細血管が拡張されて血流が増大されることになる(このNOの体内伝達物質としての役割解明は、1992年のノーベル賞受賞研究で報告されている)。このため、動脈硬化を防ぎ、活性酸素を除く役割を果たすので、動脈硬化、高血圧、痴呆、骨粗しょう症、胃潰瘍、肝障害などの老化病(生活習慣病を含む)の予防改善となる。また、陰茎動脈の血流が増加するので、陰茎への血流が不十分であることに起因する男性の勃起不良(インポテンス)が解消され、精力が増強されることになる。
【0015】
また、柑橘系オイルは、グレープフルーツ等の柑橘系果実から抽出したエッセンシャルオイル(精油)であって、飲料に配合するには、この柑橘系オイルをグレープフルーツ等の柑橘系果汁のパルプ質に吸着させて分散させたアロマ果汁、あるいは、乳化剤を用いて乳化した乳化香料の形で配合するのが好ましい。尚、柑橘系オイルとしては、天然物より抽出されたエッセンシャルオイルの他に、柑橘系果汁の香気成分を分析して特徴的な香気成分を明らかにし、それら香気成分を化学的手段で合成して調合することにより得られる合成香料であってもよい。
【0016】
(2) 前記アルギニンは、飲料1l当たり10g以上含有される(1)に記載の滋養強壮飲料。
【0017】
本発明の滋養強壮飲料を飲用することで、高含量のアルギニンを摂取できることになるので、滋養強壮や精力増強の効果が一層高められることになる。
【0018】
尚、アルギニンは、日常生活において、タンパク質から毎日5g程度は摂取しているので、血流改善、滋養強壮効果を顕著に体感するためには、一回当たりの飲用で3g程度か、それ以上の量を摂取できるように含有されているのが望ましい。したがって、飲料1l当たり10g以上、好ましくは10〜30g含有されていることで、一回の飲用で上記の量のアルギニンを摂取できる。
【0019】
(3) 前記柑橘系オイルは、飲料1l当たり0.03g以上0.4g以下の範囲で含有される(1)または(2)に記載の滋養強壮飲料。
【0020】
(4) 前記柑橘系オイルは、アロマ果汁である(1)から(3)いずれか記載の滋養強壮飲料。
【0021】
本発明によれば、アロマ果汁が有する甘味により、飲料の甘味度が上がり、味も濃くなるので、アルギニンの生臭さや苦味等の香味をより目立たなくすることができる。ここで、アロマ果汁とは、柑橘系オイル成分が1%程度含有された果汁を意味し、パルプを含有する柑橘系果汁に、柑橘系オイルを1%程度配合して、ホモジナイズすることで、オイルが微細化され果汁中のパルプに吸着されて、均一に分散されることで得られるオイルの浮きが生じない安定した柑橘の風味が強化された果汁であり、柑橘系オイルが有する力強くて爽やかな香りが強化されたものである。そのため、アルギニンの独特の風味や苦味をマスキングする効果が高く、飲料中にアルギニンを高含有させても、嗜好性に優れることになる。
【0022】
(5) 前記飲料は、カフェインをさらに含有するものである(1)から(4)いずれか記載の滋養強壮飲料。
【0023】
カフェインは、バイアグラ(Viagra(商標)(クエン酸シルデナフィル))のようにcGMPを分解する酵素(ホスホジエステラーゼ)を阻害し、cGMP濃度を高く保つ働きがあり、その結果、血管の収縮を遅らせることになる。この働きは、バイアグラほど局所的ではなく、強力でもないが、同様の効果が得られる。したがって、カフェインをさらに配合することで、上記のように、アルギニンにより、NOが発生さ、血管が拡張されことによる血管内の血流量増大作用、およびNOの刺激により産生するcGMP濃度の増大による平滑筋弛緩作用と、カフェインで血管の収縮を遅らせる作用とにより、陰茎海綿体の血流量の増大が顕著に得られることになり、男性機能の回復とともに、精力もより一層増強され、また、その効果も持続されることになる。
【0024】
(6) 前記飲料は、コエンザイムQ10をさらに含有するものである(5)に記載の滋養強壮飲料。
【0025】
コエンザイムQ10は、体のエネルギー生産性を高め、元気の元となる栄養素で、別名ユビキノン、ビタミンQともいう。このコエンザイムQ10は、加齢とともに減少し、ATP産生能を衰退させるので、筋肉にエネルギーを供給できなくなり、この結果、『疲れ』を感じさせることになるが、合わせて配合することにより、ATP産生能が活性化され、ATP(アデノシン三リン酸)が効率的に生産されることになり、スタミナアップにつながる。
【0026】
また、アルギニンは、アルギニン代謝経路、尿素回路中でクレアチンに変換され、このクレアチンが筋肉内に取り込まれ、クレアチンリン酸としてADP(アデノシン二リン酸)へのリン酸供給源としてコエンザイムQ10の効果をより高める。
【0027】
(7) 前記飲料は、アルコール飲料である(1)から(6)いずれか記載の滋養強壮飲料。
【0028】
アルコール飲料にすることで、アルギニンの生臭さを感じ難くすることができる。また、アルコールによる血流改善と、アルギニンによる血流改善との相乗効果によって、男性機能の回復を含めた滋養強壮効果がより一層増強されることになる。
【0029】
(8) 前記アルコール飲料は、チューハイである(7)に記載の滋養強壮飲料。
【0030】
(9) アルギニンを含有する飲料に柑橘系オイルを添加することで、アルギニンの風味を改善する方法。
【0031】
本発明によれば、柑橘系オイルが有する力強くて爽やかな香りとグレープフルーツの苦さでアルギニンの独特の風味や苦味をマスキングして、嗜好性の好ましいものとすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の滋養強壮飲料は、アルギニンを10g/1l以上と高含有され、また、柑橘系オイルを含有しているので、男性機能の回復を含めた滋養強壮効果が増強されていると共に、柑橘系オイルによりアルギニンの生臭さや苦味が抑制され、嗜好性に優れたものとなる。
【0033】
また、柑橘系オイルをグレープフルーツ等の果汁に分散させたアロマ果汁として配合することで、果汁の甘味により、飲料の甘味度が上がり、味も濃くなるので、アルギニンの生臭さや苦味等の香味をより目立たなくすることができ、飲用し易くなる。
【0034】
さらに、カフェインやコエンザイムQ10を併せて配合することで、男性機能の回復を含めた滋養強壮効果が一層増強され、スタミナアップとなるとともに、その効果を持続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の滋養強壮飲料は、アルギニンを高含有するとともに、柑橘系オイルを含有してなる。さらに、カフェインやコエンザイムQ10を含有しているのが好ましい。
【0036】
本発明におけるアルギニンとしては、化学式1に示す、5−グアニジノ−2−アミノ吉草酸を有する準必須アミノ酸である。アルギニンは、「L」体と称される生理的活性体で用いることが好ましい。アルギニンは遊離のアミノ酸でもよいし、塩の形態でもよい。塩の形態としては塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩のアルギニンの塩類であってよい。このアルギニンは、大豆、ナッツ果肉等からの天然のタンパク質を塩酸などによって加水分解し、L−アルギニンの混合物を得たあと、分離・精製してアルギニンの結晶を得る抽出法や糖またはグルコースを原料とし、無機窒素源などを加えた培地中で微生物(アルギニン生産菌)を培養してアルギニン他のアミノ酸を蓄積させ、これを分離・精製してアルギニンの結晶を得る発酵法等により工業規模で生産、市販されており、例えば味の素社などの市販品をそのまま用いることができる。また、必要によって市販品を公知の方法で再精製して用いることもできる。
【0037】
【化1】

【0038】
本発明の滋養強壮飲料中のアルギニン含量は、日常生活において、タンパク質から毎日5gは摂取している関係で、血流改善、滋養強壮効果を顕著に体験するためには、一回当たりに3g程度以上摂取できるのが好ましい。すなわち、摂取する形態等によっても異なるが飲料1l当たり10〜100g程度、より好ましくは10〜30g含有されている。10gより少ないと、一回当たりの摂取量が少なくので、血流改善や滋養強壮効果が顕著に得られないことになる。また、100gを超えるとアルギニンの魚介類的生臭い風味や苦味が強すぎて、後述する柑橘系オイルを配合しても、風味や苦味をマスキングができないので、嗜好性に劣り飲用し難くなる。
【0039】
本発明における柑橘系オイルとしては、柑橘類果実から抽出されたオイル成分であって、柑橘類果実は、ミカン科、ミカン亞科に属するものをすべて包含するものであり、例えば、グレープフルーツ、レモン、ライム、スウィーティー、ブンタン、バンペイユ、八朔、夏柑、甘夏柑、スイートオレンジ、伊予柑、ユズ、スダチ、カボス、温州ミカン、ポンカン等が挙げられるが、なかでもグレープフルーツが苦味の解消において好ましい。
【0040】
本発明において、オイル成分としては、例えば次のものが包含される。柑橘類果実の果皮を圧搾することにより得られるオイル成分。または、柑橘類果実の搾汁液を濃縮する際に遊離物質を回収することにより得られるオイル成分。さらに、これらのオイル成分を蒸留、抽出、分画したりしたものも含む。また、油層、水層成分どちらも該当し、香料、アロマ、香気成分、エッセンス、芳香成分、精油成分なども同類である。尚、オイル成分の最終形態としては、液状の他、ゲル状、カプセル状のもの、粉末化したオイルおよびアロマでも問題ない。
【0041】
オイル成分としては、上記したように、果皮を圧搾して得られるオイル(ピールオイル)、および搾汁工程で得られたストレートジュースを濃縮した濃縮ジュース由来のオイルおよび香り成分(エッセンスオイル、アロマ)が主として包含されるが、それらの処理物も本発明の柑橘系オイルのオイル成分に包含される。柑橘系オイルの主要成分はリモネンであるが、リモネンの香りと苦味は、アルギニンの生臭い香味を改善するのに、特に有効である。
【0042】
本発明の滋養強壮飲料中の柑橘系オイル含量は、配合されているアルギニンの含量にもよるが、飲料1l当たり0.03g以上、より好ましくは0.03〜0.4gである。0.03gより少ないとアルギニンの生臭い風味や苦味をマスキングできず、嗜好性に劣ることになる。
【0043】
上記柑橘系オイルは油溶性であり、飲料にそのまま配合すると分離して浮き上がるため、例えば柑橘系オイルが1%程度含有されたアロマ果汁として配合するのが好ましい。また、アロマ果汁にすることで、果汁が有する甘味で飲料の甘味度が上昇され、味が濃くなるので、アルギニンの生臭さや苦味等の香味を一層目立たなくすることができる。尚、アロマ果汁として配合する場合には、飲料1lに当たり3〜40g程度添加するのが好ましい。
【0044】
ここで、アロマ果汁は、パルプを含有する柑橘類等のセミクリア果汁または混濁果汁に柑橘系オイルを例えば1質量%程度配合し、これをホモジナイズして果汁中にオイルを均質に分散させることによって得られる。これによって、柑橘系オイルは果汁中のパルプに吸着されて均質に分散され、オイルが遊離することのない安定化された風味強化果汁を得ることができる。ここで、ホモジナイズとは、液体分散媒中に存在する乳濁物質、粒子状物質を機械的に破砕・微細化し、液分離(分離浮上、沈殿など)を抑え、液中に均質に分散させることをいい、ホモジナイザー(均質機)により行われる。このホモジナイザーとしては、一般に高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等の高圧高速型、ホモミキサー、コロイドミル等の高速回転型、超音波ホモジナイザー、連続乳化分散機等のキャビテーション型、プロペラ撹拌、タービン撹拌等の撹拌分散型等が挙げられるが、高速ホモミキサーでよく攪拌均一化した後、高圧ホモジナイザーで更に微粒子化するのが好ましく用いられる。このホモジナイズは、使用するホモジナイザーの種類にもよるが、例えば、高速ホモミキサーで3000rpm、15分間良く攪拌均一化した後、高圧ホモジナイザーで、圧力250kg/cmの条件でより微細にし、均質化を行うことができる。
【0045】
尚、柑橘系オイルを飲料に配合するには、上記のアロマ果汁として配合する以外に、柑橘系オイルを乳化剤等で乳化して得られた乳化香料であってもよい。この乳化香料は、通常に行われているように、柑橘系オイルを植物性天然ガム質溶液であるアラビアガム溶液、あるいは化工でん粉、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのごとき乳化剤、界面活性剤などを用いて、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等により乳化して得られる。
【0046】
本発明の滋養強壮飲料は、さらにカフェインを飲料1lに対して10〜1000mg、より好ましくは100〜500mg程度含有してもよい。このカフェインを含有することで、cGMPを分解する酵素(ホスホジエステラーゼ)が阻害され、cGMP濃度を高く保つことができるので、血管の収縮を遅らせることになる。これによって、アルギニンによる血管内の血流量増大作用、およびNOの刺激により産生するcGMP濃度の増大による平滑筋弛緩作用と、カフェインによる血管の収縮を遅らせる作用とによって、陰茎海綿体の血流量の増大が顕著に得られることになり、男性機能の回復とともに、精力も増強され、また、その効果も持続されることになる。尚、カフェインの含量が10mgより少ないと、cGMPを分解する酵素(ホスホジエステラーゼ)の阻害に対して有効に寄与しないことになる。また、1000mgを超えると、カフェインの苦味が強くなり、嗜好性が劣ることになる。
【0047】
本発明におけるカフェインは、プリン環を持つプリンアルカロイドの一種で、コーヒー、コーラ、緑茶、紅茶、ガラナ、ココアなどに含まれるものであって、天然の抽出カフェイン、およびカフェイン含有成分としてカフェイン含有量が高い食品濃縮物、あるいは合成カフェインなどを用いることができる。この天然の抽出カフェインには、例えば、カフェインレスコーヒーの残滓や規格外の茶などから抽出した、天然食品添加物茶素(白鳥製薬製、純度98.5%以上)等がある。
【0048】
本発明の滋養強壮飲料は、さらにコエンザイムQ10を飲料1lに対して30〜1000mg、より好ましくは90〜300mg程度含有していてもよい。このコエンザイムQ10を含有することで、ATP産生能が活性化され、ATP(アデノシン三リン酸)が効率的に生産されることになり、スタミナアップにつながる。
【0049】
また、アルギニンは、アルギニン代謝経路、尿素回路中でクレアチンに変換され、このクレアチンが筋肉内に取り込まれ、クレアチンリン酸としてADP(アデノシン二リン酸)へのリン酸供給源としてコエンザイムQ10の効果をより高める。
【0050】
コエンザイムQ10を飲料に配合するには、コエンザイムQ10を有機酸の存在下、水溶性物質溶液に乳化・分散して調製された水溶性組成物として用いるのが好ましい。この水溶性組成物において、乳化・分散した粒子の平均粒径は5μm以下、好ましくは1μ以下である。
【0051】
コエンザイムQ10の分散・乳化に使用される水溶性物質は、保護コロイド形成してコエンザイムQ10を微細な粒子に分散・乳化し、均一で且つ安定なエマルジョンを維持しうるものである。そのような水溶性物質には、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、デキストリン、カルメロースナトリウム(CMCナトリウム)、D−マンニット、プルラン、コーンファイバー、デンプン、グラーガムおよびペクチン等の植物由来の水溶性多糖類等ならびにポリビニルピロリドン(PVP)などの合成高分子物質が包含され、これらの中から選択される少なくとも1種類の水溶性物質を用いる。これら水溶性物質の中でも、アラビアガムは独自の機能性を持つ天然植物由来の物質であり、高濃度の水溶液としても比較的低粘性で流動性のある溶液状態を保つことから特に好ましい。
【0052】
また、上記有機酸としては、例えばクエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸および/または酒石酸であり、好ましくはリンゴ酸、酒石酸またはこれらの混合物である。
【0053】
コエンザイムQ10含有水溶性組成物の調製に際して、脂溶性薬剤であるコエンザイムQ10を予め溶融し、これを有機酸の存在下、水溶性物質中に分散・乳化して、微細な粒子のエマルジョンを形成させる。このため、水溶性物質の水溶液、つまり水性保護コロイド溶液を調製し、予め加温しておくことが好ましい。この保護コロイド溶液に、予め加熱・融解したコエンザイムQ10を導入し、次いで公知の手段、例えば高圧ホモジナイザーを使用して、所望の平均粒径まで微細に分散・乳化させることにより、均一で、且つ微細なエマルジョンを形成させることができる。これらの工程は、コエンザイムQ10の融点より高い温度、例えば約45〜90℃、好ましくは50〜70℃で実施する。また、予め加温(約45〜90℃、好ましくは50〜70℃)した水性保護コロイド溶液に、コエンザイムQ10粉末を直接添加・分散し、該溶液中で融解させ、次いで乳化させてもよい。この方法は、作業性を効率化し、原材料の損失を抑制できるために好ましい。
【0054】
本発明の滋養強壮飲料は、本発明における有効成分と飲料素材(果汁やゼリーなども含む)、乳成分、炭酸、希釈剤、あるいはさらに甘味剤、糖、油脂類等のタンパク質、クエン酸等の酸味料、糖質原料やビタミン、ミネラルなどから選ばれた一種或いは二種以上と混合した清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、アルコール飲料等とし、これを缶飲料、ボトル飲料などに調製して提供される。なかでも、アルコール飲料とすることで、アルコールによる血流改善効果がアルギニンによる血流改善効果と相乗しあって、男性機能の回復を含めた滋養強壮効果が一層増強される等で好ましい。
【0055】
また、アルコール飲料としては、焼酎を炭酸水、果汁、甘味料等で割ったチューハイであるのが好ましいが、カクテルやサワー等であってもよい。また、アルコール含量が3〜10%程度のものが好ましい。ここで、チューハイとは、焼酎を果汁と炭酸で割った飲料であり、カクテルとは、ウイスキー・ブランデー・ジン・ウオツカなどアルコール度の高い蒸留酒をベースとし、リキュール・シロップ・果汁・香料などを混合し氷を加えて作った飲料であり、サワーとは、カクテルの一種で、ウイスキー・ジンなどにレモン・ライムなどのジュースを入れて酸味をもたせた飲料をいう。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
95%醸造用アルコール54ml、55%果糖ぶどう糖液糖100g、アルギニン30g(味の素社製)、カフェイン500mg(白鳥製薬社製)、コエンザイムQ10乳化剤(10%溶液)3g(日清ファルマ社製)、クエン酸4g、グレープフルーツアロマ果汁20g、グレープフルーツ香料3mlに水を加えて1000mlに調合し、公知の手段で混合してアルコール飲料を調製した。ついで、この調製したアルコール飲料を100mlのビンに詰めてビン入り滋養強壮アルコール飲料とし、飲用に供した。
【0058】
得られた滋養強壮アルコール飲料は、1ビン(100ml)当たり、アルコールが5%、アルギニンが3g、カフェインが50mg、コエンザイムQ10が30mg含有される。また、アルギニンの苦味、生臭さは感じられなかった。
【0059】
<実施例2>
95%醸造用アルコール54ml、55%果糖ぶどう糖液糖100g、アルギニン10g(味の素社製)、カフェイン0.3g、コエンザイムQ10乳化剤(10%溶液)1g(日清ファルマ社製)、クエン酸4g、グレープフルーツアロマ果汁10g、グレープフルーツ香料2mlに水を加えて1000mlに調合し、公知の手段で混合して炭酸ガスを含ませ、アルコール飲料を調製した。ついで、この調製したアルコール飲料を350mlの缶に詰めて缶入り滋養強壮アルコール炭酸飲料とし、飲用に供した。
【0060】
得られた滋養強壮アルコール炭酸飲料は、1缶(350ml)当たり、アルコールが5%、アルギニンが3.5g、カフェインが105mg、コエンザイムQ10が35mg含有される。また、アルギニンの苦味、生臭さは感じられなかった。
【0061】
<実施例3>
95%醸造用アルコール76ml、55%果糖ぶどう糖液糖50g、アルギニン10g(味の素社製)、クエン酸3g、レモンアロマ果汁5g、レモン香料2mlに水を加えて1000mlに調合し、公知の手段で混合して炭酸ガスを含ませアルコール飲料を調製した。ついで、この調製したアルコール飲料を350mlの缶に詰めて缶入り滋養強壮アルコール炭酸飲料とし、飲用に供した。
【0062】
得られた滋養強壮アルコール炭酸飲料は、1缶(350ml)当たり、アルコールが7%、アルギニンが3.5g含有される。アルギニンの苦味、生臭さは感じられなかった。
【0063】
<比較例1>
55%果糖ぶどう糖液糖140g、アルギニン10g(味の素社製)、クエン酸3g、リンゴ香料2mlに水を加えて1000mlに調合し、公知の手段で混合し炭酸ガスを含ませて飲料を調製した。ついで、この調製した飲料を350mlの缶に詰めて缶入り滋養強壮炭酸飲料とし、飲用に供した。
【0064】
得られた滋養強壮炭酸飲料は、1缶(350ml)当たり、アルギニンが3.5g含有されるが、アルギニンの苦さ、生臭さは消えていなかった。これは、柑橘系オイルによるマスキング手法を用いなかったからである。
【0065】
年齢・性別についてランダムに選んだパネラー7人によって、実施例1〜3、比較例1のそれぞれの滋養強壮アルコール飲料、滋養強壮アルコール炭酸飲料等を飲用してもらい、風味・飲み易さについての官能評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、パネラー全員が、実施例1〜3については、生臭さや苦味を呈しておらず、香味が良好で、飲み易いとの評価であった。また、飲用直後から疲労感が軽減されるとともに、血流が良くなり、体が暖かくなり、元気が湧き出るのが実感された。一方、比較例1については、パネラー全員が、生臭さや苦味を呈し、後味が悪く、飲み難いとの評価であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニンと、柑橘系オイルと、を含有してなる滋養強壮飲料。
【請求項2】
前記アルギニンは、飲料1l当たり10g以上含有される請求項1に記載の滋養強壮飲料。
【請求項3】
前記柑橘系オイルは、飲料1l当たり0.03g以上0.4g以下の範囲で含有される請求項1または2に記載の滋養強壮飲料。
【請求項4】
前記柑橘系オイルは、アロマ果汁である請求項1から3いずれか記載の滋養強壮飲料。
【請求項5】
前記飲料は、カフェインをさらに含有するものである請求項1から4いずれか記載の滋養強壮飲料。
【請求項6】
前記飲料は、コエンザイムQ10をさらに含有するものである請求項5に記載の滋養強壮飲料。
【請求項7】
前記飲料は、アルコール飲料である請求項1から6いずれか記載の滋養強壮飲料。
【請求項8】
前記アルコール飲料は、チューハイである請求項7に記載の滋養強壮飲料。
【請求項9】
アルギニンを含有する飲料に柑橘系オイルを添加することで、アルギニンの風味を改善する方法。