説明

滑り止めコーティング層を有するサンドペーパー

サンドペーパーシートは、対向する第1及び第2主表面を有する支持層と、第1主表面上の接着剤メークコートと、メークコートに少なくとも部分的に埋設されることにより研磨面を画定する研磨粒子と、第2主表面上の滑り止めコーティング層と、を含む。かかるサンドペーパーの製造方法及び使用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2008年6月30日出願の米国特許仮出願第61/076821号及び2009年6月15日出願の同第12/484605号の利益を主張し、その開示事項は参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して、例えば可撓性シート状研磨物品などの、加工面を研磨するための研磨物品に関する。
【背景技術】
【0003】
シート状研磨物品は、例えば木の表面を手で研磨するなどの様々な研磨作業においてよく用いられる。手による研磨では、使用者は研磨物品を手に直接持ち、加工面全体に研磨物品を動かす。手による研磨は当然ながら、大変な作業である場合がある。
【0004】
シート状研磨物品には、例えば従来のサンドペーパーが含まれる。従来のサンドペーパーは通常、比較的薄く、概して伸長性及び弾力性がなく、非多孔性の支持体(例えば紙)に研磨材料を貼着して製造される。従来のサンドペーパー支持体材料の薄く平らで滑り易い性質のため、従来のサンドペーパーは掴み難く、持ち難く、扱い難い。従来のサンドペーパーは滑り易い性質のため、サンドペーパーシートをしっかり掴むために、使用者はサンドペーパーシートを親指と残りの1つ以上の指の間で掴もうとする。このようにしてサンドペーパーを持つのは快適ではなく、筋肉の痙攣及び疲労につながる可能性があり、長時間に渡って維持するのは困難である。加えて、親指は通常サンドペーパーの研磨面に接するため、皮膚が刺激を受けたり傷ついたりする可能性がある。また、親指がサンドペーパーと加工面との間に位置するため、このようにしてサンドペーパーを掴むと研磨作業の妨げにもなる。つまり、親指のこの位置のせいで、サンドペーパーの研磨面の一部が研磨中に加工面から持ち上げられてしまう。持ち上げられた部分は加工面に接しないため、サンドペーパー研磨面の全体が利用されず、このためサンドペーパーの有効性が低減される。
【0005】
手による研磨中、使用者は指先を使ってサンドペーパーに圧力をかけることがよくある。従来のサンドペーパーで用いられる支持体材料の薄い性質により、指の圧力はこれが加えられている領域に集中する。この結果、サンドペーパーの摩耗及び/又はサンドペーパーの負荷が不均一となるため、加工面上に不均一な研磨パターンが形成されてしまう。
【0006】
従来のサンドペーパーは通常、例えば22.9×27.9cm(9×11インチ)の規格サイズのシートとして販売されている。サンドペーパーをより使い易くするため、使用者はサンドペーパーを折り畳んで、より扱い易い小さなシートにすることが多い。しかし、サンドペーパーを折り畳むとギザギザの縁ができ、また、サンドペーパーの折り目部分を弱めてしまう。苛酷な研磨の間にこの弱い折り目部分が裂けて、サンドペーパーの早期破損につながる場合がある。
【0007】
手による研磨をより簡単及び/又は快適にする研磨物品を提供するための様々な試みがなされてきた。例えば米国意匠特許第372,111号(Zeigler)は、手袋とサンドペーパーとの組合せを開示している。米国意匠特許第526,180号(Holden)は、サンドペーパー手袋を開示している。より快適な研磨物品を製造するその他の試みは、米国特許第6,613,113号(Minickら)、同第7,285,146号(Petersen)、同第7,235,114号(Minickら)、及び米国特許公開第2007/0243802号(Petersenら)に開示されており、これらはそれぞれ本発明と同一の譲受人に譲渡されている。
【0008】
米国特許第3,813,231号(Gilbertら)は、ASTM試験D1238−57Tにより測定したとき約10〜約50のメルトインデックスを有するエチレン及びアクリル酸のコポリマーの支持体を含む可撓性研磨シートを開示し、コポリマーの重量の約15〜約20%の重合アクリル酸、及びエチレンアクリル酸コポリマーの支持体に部分的に埋設された研磨砂粒とを含有する。
【0009】
米国特許第4,240,807号(Kronzer)は、可撓性研磨シートの製作に用いる支持体材料を開示している。支持体材料は、好ましくは硬い含侵紙の、一表面上に熱活性可能な結合剤コーティングを有する可撓性ウェブ基板を含む。同コーティングは、周囲温度で非粘着性の固体であり、基板を熱分解するには不十分な温度に加熱されると軟化し粘性の液状となるため、研磨砂粒を軟化したコーティング上に堆積し静電気により整列させると、砂粒が自身の重さのみによって、即ち重力によって、熱を除去しコーティングが固体の非粘着状態に戻った後にコーティングと強固に結合する深さまで、コーティング中に沈む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
工業界では常に、より簡単で快適に使用でき耐久性がより高く、より簡易及び安価に製造することができ、研磨物品としての所望の性能特性を有する、サンドペーパーなどの改善された研磨物品が求められている。取扱性を改善する滑り止め面を有することで、簡単及び快適に使用でき、簡易及び安価に製造でき、切れ味及び耐久性が改善され、類似のサンドペーパーシートより微細な傷を作り出すサンドペーパーを提供することは望ましいと言える。
【0011】
本発明は、対向する第1及び第2主表面を有する支持層と、第1主表面上の接着剤メークコートと、メークコートに少なくとも部分的に埋設されることにより研磨面を画定する研磨粒子と、第2主表面上の滑り止めコーティング層と、を備える、サンドペーパーシートを提供する。
【0012】
一実施形態において、滑り止めコーティング層はエラストマーであってもよい。別の態様では、滑り止めコーティング層は粘着性又は非粘着性のいずれでもよい。更に別の態様では、滑り止めコーティング層は連続的でも非連続的でもよく、透明でもよく、概して平面の(即ち平滑な)外表面を画定してもよく、あるいは、滑り止めコーティング層は、ざらつき又は模様のある外表面を含んでもよく、該外表面は均一にざらつかせてもよいし又は表面の触感が変化するものであってもよい。
【0013】
一実施形態において、滑り止めコーティング層は、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫ゴム、ウレタン、アクリル、熱可塑性オレフィン、及びこれらの組合せから成る群から選択される材料であってもよい。具体的な実施形態において、滑り止めコーティング層は、ゴム及び粘着付与剤を含んでもよい。更に具体的な実施形態において、滑り止めコーティング層は、少なくとも約70%のゴム及び約30%以下の粘着付与剤を含んでもよい。一実施形態において、ゴムは、スチレンイソプレンスチレン(SIS)ブロックコポリマーを含んでもよい。
【0014】
別の実施形態においては、滑り止めコーティング層は、アクリル系ポリマーコーティング、又は再付着性感圧接着剤を含んでもよい。より具体的な態様において、滑り止めコーティング層は、ASTM D2979−88(Standard Test Method for Tack of Pressure−Sensitive Adhesives Using an Inverted Probe Machine)により、滞留時間を10秒、プローブ除去速度を1センチメートル/秒(cm/s)として測定した場合に、約200グラム以下、約250グラム以下、約300グラム以下、及び約350グラム以下の平均粘着度を有してもよい。
【0015】
別の態様においては、滑り止めコーティング層は、自身に付着された場合に、二材間結合接着力(即ち、滑り止めコーティング層の支持層への接着力)より低い接着力を有してもよく、これにより滑り止めコーティング層を自身から離すときに滑り止めコーティング層は支持層から離れない。別の態様においては、滑り止めコーティング層は、自身に付着された場合に、滑り止めコーティング層の凝集力より低い接着力を有してもよく、これにより滑り止めコーティング層を自身から離すときに滑り止めコーティング層は損傷しない。
【0016】
より具体的な態様においては、滑り止めコーティング層は、約254〜762マイクロメートル(10ミル〜約30ミル)の厚さを有するゴムを含むか、又は滑り止めコーティング層は、約1.3〜76マイクロメートル(0.05ミル〜約3ミル)の厚さを有する低粘着性アクリル系ポリマーコーティング若しくは再付着性感圧接着剤を含んでもよい。
【0017】
別の態様においては、ASTM D1894−08(Standard Test Method for Static and Kinetic Coefficients of Friction of Plastic Film and Sheeting)に従い、23℃にて、オハイオ州ストロングビルのインスツルメンターズ社市販のIMASSスリップ/ピールテスター(SP2000)を用いて計測したとき、滑り止めコーティング層は、少なくとも約1グラム、少なくとも約1.25グラム、若しくは少なくとも約1.5グラムの平均ピーク静的摩擦係数、並びに/又は少なくとも約0.75グラム、少なくとも約1グラム、及び少なくとも約1.25グラムの平均動的摩擦係数を有してもよい。
【0018】
様々な実施形態において、支持層は、A重量〜C重量の範囲の重さを有する紙、布材料、又は高分子フィルムなどのフィルムで形成されてもよい。
【0019】
別の実施形態においては、メークコートは、フェノール樹脂、ペンダントα、β−不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン系不飽和樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フルオレン変性エポキシ樹脂、及びこれらの組合せから成る群から選択されてもよい。
【0020】
別の実施形態においては、サンドペーパーは、対向する上下縁及び左右側縁を有し、上縁から下縁までの距離は、約25.4cm(10インチ)〜約30.5cm(12インチ)の範囲であり、左側縁から右側縁までの距離は、約20.3cm(8インチ)〜約25.4cm(10インチ)の範囲であってもよい。別の実施形態においては、上縁から下縁までの距離は、約20.3cm〜約25.4cm(約8〜約10インチ)の範囲であり、左側縁から右側縁までの距離は、約7.6〜10.2cm(約3〜約4インチ)、又は約12.7〜約15.2cm(約5〜約6インチ)の範囲であってもよい。
【0021】
更に別の態様においては、本発明は、対向する第1及び第2主表面を有する紙製支持層を提供する工程と、第1主表面上に接着剤メークコートをコーティングする工程と、メークコートに研磨粒子を少なくとも部分的に埋設することにより研磨面を形成する工程と、液体ホットメルト感圧接着剤を提供する工程と、ホットメルト感圧接着剤を第2主表面上にコーティングする工程と、ホットメルト感圧接着剤を(例えば紫外線放射を用いて)硬化することによりホットメルト感圧接着剤の粘着度を所望レベルに低減して滑り止めコーティング層を形成する工程と、を含む、ホットメルトコーティングによる滑り止めコーティング層を有するサンドペーパーシートの製造方法を提供する。
【0022】
具体的実施形態においては、本発明は、対向する第1及び第2主表面を有する紙製支持層と、支持層の第1主表面上の接着剤メークコートと、接着剤メークコートに少なくとも部分的に埋設されることにより研磨面を画定する研磨粒子と、支持層の第2主表面上の滑り止めコーティング層であって、本質的に低粘着度を有するアクリル系ポリマーコーティングからなり、約50.8マイクロメートル(2ミル)以下の厚さを有する、滑り止めコーティング層と、を備える、加工面を手で研磨するためのサンドペーパーシートを提供する。
【0023】
本発明はまた、上で定義した滑り止めコーティング層を含むサンドペーパーシートを提供する工程と、滑り止めコーティング層を手で、手及び手動ツールのうちの少なくとも1つと係合させる工程と、サンドペーパーを手で加工面上の複数方向に動かす工程と、を含む、加工面を手で研磨する方法を提供する。
【0024】
別の具体的実施形態においては、本発明は、対向する第1及び第2主表面を有する紙製支持層と、第1及び第2主表面のうちの少なくとも1つの上の接着剤メークコートと、メークコートに少なくとも部分的に埋設されることにより研磨面を画定する研磨粒子と、主表面のメークコートとは反対側にある滑り止めコーティング層と、からなるサンドペーパーシートを提供する。滑り止めコーティング層は、例えば、エラストマー、アクリル系ポリマー、又は再付着性接着剤であってよい。
【0025】
本発明の特定の実施形態の利点としては、サンドペーパーを、従来のサンドペーパーより使い易く、また使い心地のよいものとする滑り止めコーティング層を有するサンドペーパーを提供することが挙げられる。加えて、滑り止めコーティング層の製造は比較的簡易及び安価であり、研磨物品の所望の性能特性に別段影響することがない。更なる利点としては、耐久性の向上、可撓性の向上、耐水性の向上、並びに使用時の握り易さ及び手触り感の向上が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付図面を参照し本発明を更に説明する。
【図1】本発明によるサンドペーパーシートの断面図。
【図2】本発明の第2実施形態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで図面を参照すると、図1はサンドペーパーシートなどのシート状研磨物品10の断面を示し、該研磨物品は、対向する第1及び第2主表面12a、12bを有する可撓性支持層12と、支持層の第1主表面12a上の可撓性滑り止めコーティング層14と、支持層の第2主表面12b上の接着剤メークコート層16と、メークコート層16に少なくとも部分的に埋設された複数の研磨粒子18と、を備える。研磨物品10は、例えば、個々のシートの積層体で、又は研磨物品10の長さが特に定められないロール状で提供されることができる。
【0028】
本明細書で使用する際の「シート状」という表現は、概して、研磨物品10の幅広で、薄く、柔軟な性質を指す。本明細書で使用する際の「コーティング」という表現は、概して、ある面に直接適用される液体や固体粉末などの流動性材料の少なくとも1つの層を指す。したがって、コーティングは、別個の材料シートがある面上に積層されたものを含まない。本明細書で使用する際の「層」という表現は、概して、支持層12上に別個の層を形成する滑り止め材料を指す(即ち、滑り止め材料は支持層12の厚み全体を通って浸透しない)。
【0029】
本発明の最終用途の1つにおいて、シート状研磨物品10は、木の表面又は加工品などの加工面を手で研磨するのに用いることができる。即ち、研磨物品10は、滑り止めコーティング層14を介して手で直接研磨物品10に触り(即ち研磨ブロックなどの用具の助けなく)、次いで研磨物品10を加工面に対し動かすことで、ある面から材料を除去するのに用いることができる。本発明はまた、手動の研磨ツール及び研磨ブロック、又は電動ツールとともに用いることができることも認識されるであろう。
【0030】
支持層12、滑り止めコーティング層14、接着剤メークコート層16、研磨粒子18を、それぞれ以下で詳述する。
【0031】
支持体12
支持層12に適した材料は、例えば紙、布(綿、ポリエステル、レーヨン)、熱可塑性フィルムなどの高分子フィルム、発泡体、及びその積層体を含む、サンドペーパー製造に一般に用いられる任意の材料が挙げられる。支持層12は、処理中での取り扱いに充分な強度、意図する最終用途での使用に充分な強度、及びその主表面の少なくとも1つの上に塗布される滑り止めコーティング14及びメークコート16を有する能力を有する。
【0032】
例示の実施形態においては、支持層12は紙で形成される。紙は簡単に入手でき通常は安価であるため、支持層12の材料として望ましい。しかし、紙製の支持層を有する従来のサンドペーパーは耐久性が限られ、平滑で滑り易い表面を有するために、従来のサンドペーパーを加工面上で動かすことは難しく、このため研磨を困難にする。
【0033】
紙製の支持体は様々な重量のものが入手でき、普通はAからFまでの文字を用いて指定される。Aの文字が最も軽い紙を指すのに用いられ、Fの文字が最も重い紙を指すのに用いられる。以下により詳細に説明するが、本発明では、上述した従来のサンドペーパーの支持体に関する欠点に悩むことなく、いかなる重さの紙を使用することもできる。
【0034】
例示の実施形態においては、支持層12は連続的である。即ち、支持層12は、Z軸方向(即ち、厚さ又は高さ寸法)に延び、材料自体の製作時に材料間にランダムに形成される空間より大きい穴、開口部、スリット、空隙、又は通路を含まない。支持体はまた、開口部を含んで(即ち、穿孔されて)もよく、又はスリットを含んでもよい。支持層12はまた、概して非伸長性である。非伸長性とは、材料が通常約25%以下、約10%以下、又は約5%以下の破断点伸びを有することを指す。
【0035】
支持層12が紙で形成されるなどの特定の実施形態においては、支持層12を比較的薄くすることができ、通常は約1.5mm以下、約1mm以下、又は約0.75mm以下の厚さを有する。このような実施形態では、支持層12は概して弾力的でない。支持層12はまた、多孔性でも多孔性でなくてもよい。支持体が発泡材料などの別の実施形態においては、支持層をやや厚くすることができる。例えば、発泡体の支持層を有する実施形態においては、支持層は少なくとも約2mm、少なくとも約5mm、又は少なくとも約10mmの厚さを有することができる。
【0036】
支持層12はまた、布材料又は高分子フィルムなどのフィルムから形成してもよい。布材料は通常破れ難く、概して紙及びフィルム材料より耐久性があるので望ましい。加えて、布製支持体は使用中に繰り返し曲げたり撓ませてもこれに耐えることができる。布製支持体は概して、コーティングされた研磨剤支持体としての使用に適するよう処理された綿又は合成繊維糸の織布から形成される。紙製支持体と同様に、布製支持体は様々な重量のものが入手でき、普通はJからMまでの文字を使って指定される。Jの文字は最も軽い布を指し、Mの文字は最も重い布を指す。
【0037】
支持層12に適したフィルム材料としては、ポリオレフィンフィルム(例えば二軸延伸ポリプロピレンを含むポリプロピレン、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、セルロースエステルフィルム)などの下地処理フィルムを含む高分子フィルムが挙げられる。
【0038】
滑り止めコーティング層14
本発明の一態様によれば、サンドペーパー10は滑り止めコーティング層14を含み、該コーティング層は滑り止め、又は滑り難い、サンドペーパー10の外表面14aを画定する。「滑り止め」又は「滑り難い」コーティング、層、又は材料は、滑り止め材料が塗布される支持層面の摩擦係数を高める傾向があるコーティング、層、又は材料を指す。即ち、滑り止めコーティング層を塗布する支持層12aの表面が、コーティング塗布前に摩擦係数「x」を有する場合、コーティングが、支持体表面に塗布されることで「x」より大きい摩擦係数を有する表面をもたらすのであれば、該コーティングは「滑り止め」コーティングである。言い換えると、コーティングが塗布される支持体表面の摩擦係数を高める傾向があれば、このコーティングは「滑り止め」コーティングと言える。
【0039】
一実施形態において、滑り止めコーティング層14は、ASTM D1894−08(Standard Test Method for Static and Kinetic Coefficients of Friction of Plastic Film and Sheeting)に従い、23℃にて、オハイオ州ストロングビルのインスツルメンターズ社市販のIMASSスリップ/ピールテスター(SP2000)を用いて計測したとき、約1グラム、少なくとも約1.25グラム、若しくは少なくとも約1.5グラムの平均ピーク静的摩擦係数、及び/又は少なくとも約0.75グラム、少なくとも約1グラム、若しくは少なくとも約1.25グラムの平均動的摩擦係数を有する。
【0040】
滑り止めコーティング層14は、支持層12の第1主表面12a上の、メークコート16及び研磨粒子18とは反対側に設けられる。滑り止めコーティング層14の外表面14aは粘着性を有さないか、又は低粘着度を有するものとすることができる。本明細書で使用する際の粘着又は粘着性とは、ある材料の粘性又は接着性を指す。非粘着性とは、粘性又は接着性を一切有さない材料を指すのに対し、粘着性材料は粘性又は接着性をある程度有する。非粘着性材料は高い摩擦係数を有し得るため、滑り止めコーティングとしても有用である。
【0041】
滑り止めコーティングが粘着性の場合、コーティングは低粘着度を有することが望ましい。低粘着度とは、ASTM D2979−88(反転プローブ装置を用いた感圧接着剤の粘着性の標準試験方法)に従い、滞留時間を10秒、プローブ除去速度を1cm/sとして測定した場合に、滑り止めコーティングが約200グラム以下、約250グラム以下、約300グラム以下、及び約350グラム以下の平均粘着度を有することを意味する。滑り止めコーティング層14の形成に用いる材料は、支持層12に直接結合するのが望ましい。滑り止め材料が支持層と有効に結合しない場合は、滑り止め材料が支持層12とより有効に結合するよう支持層12を下地処理してもよい。
【0042】
一実施形態において、滑り止めコーティング14はやや粘着性であり、滑り止めコーティング自体の凝集力より低い自己接着性を有し、更に、「二材間結合」接着力より低い自己接着性を有する。当業者には知られているように、「二材間結合」接着力とは、滑り止めコーティング14と滑り止めコーティング層が塗布される支持層12との間の接着力である。したがって、滑り止めコーティング14を自身に折り重ねると、滑り止め層に凝集破壊を起こすことなく、かつ、滑り止め層14を支持層12から剥離することなく、接触するそれぞれの滑り止め面を再び解放することができる。
【0043】
別の態様では、滑り止めコーティングは、自身に繰り返し結合することのできる面を提供する。別のやや関連する態様では、滑り止めコーティング14は再付着性でもよい。本明細書で使用する際の「再付着性」とは、コーティングが、滑り止めコーティング又は表面を傷つけることなく、自身に又は表面に対し繰り返し付着、取り外し、及び再付着することのできることを指す。
【0044】
加えて、滑り止めコーティング層14の自己接着性が時間経過とともに大幅に増大しないことが望ましい。そうすることで、滑り止めコーティング層14が自身に接触するようにして研磨物品10を折って自身に重ねても、後から簡単に、滑り止めコーティング14又は支持層12を傷つけることなく、滑り止めコーティング層14を離して研磨物品10を広げることができる。
【0045】
滑り止めコーティング層14に適した材料として、例えばエラストマーが挙げられる。好適なエラストマーとしては、天然ゴム、及び合成ゴム、例えば合成ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブロックコポリマー、例えばクレイトンゴム、ポリスチレンポリイソプレンポリスチレン(SIS)ゴム、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ゴム、ニトリルゴム(ブナ−Nゴム)、水素添加ニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ネオプレン、EPMゴム(エチレンプロピレンゴム)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)、アクリルゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアセテート(PVA)、並びにその他種類のエラストマー、例えば、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫ゴム、例えばサントプレン熱可塑性ゴム、ウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタン、及び熱可塑性オレフィンが挙げられる。このようなゴム材料は、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社市販のウィングタックプラス樹脂などの粘着付与剤を更に含んでもよい。このようなエラストマーの滑り止めコーティング層の粘着性は、炭酸カルシウムなどの充填剤を材料に加えることにより調節することができる。
【0046】
一態様においては、滑り止めコーティング層は、少なくとも約−80℃、少なくとも約−70℃、及び少なくとも約−65℃のガラス転移温度、かつ、約−5℃以下、約−15℃以下、及び約−25℃以下のガラス転移温度を有することができる。より具体的な態様では、滑り止めコーティング層14は、少なくとも約−80℃、少なくとも約−70℃、及び少なくとも約−65℃のガラス転移温度、かつ、約−5℃以下、約−15℃以下、及び約−25℃以下のガラス転移温度を有するコーティング層を形成する水溶液で形成される。
【0047】
エラストマーの滑り止めコーティング層の製造に適した市販材料としては、ニュージャージー州フローラムパークのBASF社市販のブトファンNS209(カルボキシル化スチレンブタジエンアニオン性分散液)、並びにオハイオ州ウィックリフのルブリゾル社市販のエラストマー分散液、ハイストレッチV−29、V−43、及びV−60が挙げられる。エチレンビニルアセテート(EVA)分散液を用いることもできる。
【0048】
滑り止めコーティング層14の製造に適した材料にはまた、アクリレート及びアクリル系ポリマーも含まれる。加えて、滑り止めコーティング層14の製造に適した材料には、粘着改良成分を含んでも含まなくてもよいアクリル系接着剤などの感圧接着剤、再付着性接着剤、又はホットメルトアクリル系接着剤が含まれる。特定の組成により、また、処理の度合い(例えば重合度)により、かかるホットメルトアクリル系接着剤は、粘着特性及び非粘着特性の双方を含む様々な物理特性を有するように製造することができる。
【0049】
滑り止めコーティング層14の特定の厚さは、例えば、滑り止めコーティング層14を形成するために選択される材料、及び研磨物品10の意図する最終用途によって、様々であり得る。例えば、ゴム又はウレタンベースの材料で形成された滑り止めコーティング層14は、少なくとも約2.5マイクロメートル(0.1ミル)、少なくとも約25マイクロメートル(1ミル)、及び少なくとも約254マイクロメートル(10ミル)の厚さを有することができ、かつ、約1270マイクロメートル(50ミル)以下、約762マイクロメートル(30ミル)以下、及び約635マイクロメートル(25ミル)以下の厚さを有することができる。一方、アクリル系ポリマーコーティングで形成される滑り止めコーティング層14はこれより薄くてよく、少なくとも約2.5マイクロメートル(0.1ミル)、少なくとも約12.7マイクロメートル(0.5ミル)、及び少なくとも約25.4マイクロメートル(1ミル)の厚さを有することができ、かつ、約50.8マイクロメートル(2ミル)以下、約127マイクロメートル(5ミル)以下、及び約254マイクロメートル(10ミル)以下の厚さを有することができる。
【0050】
乾燥スチレンブタジエンゴム分散液又は乾燥ラテックス分散液から形成される滑り止めコーティング層14は、少なくとも約1グラム/平方メートル(g/m)(0.24グレーン/24平方インチ(grains/24in))、少なくとも約3g/m(0.72grains/24in)、又は少なくとも約4g/m(0.96grains/24inのコーティング重量を有し、かつ、約20g/m(4.8grains/24in)以下、約15g/m(3.6grains/24in)以下、又は約12g/m(2.9grains/24in)以下のコーティング重量を有することができる。
【0051】
一実施形態において、感圧接着剤を用い、重合可能な感圧接着剤組成物を支持層12上にコーティングし、次いで感圧接着剤組成物を重合して、所望の特性を有する滑り止めコーティング層を製造することにより、又は、再付着性感圧接着剤を支持層12上にコーティングすることにより、好適な滑り止めコーティング層14を製造することができる。
【0052】
具体的な一実施形態において、感圧接着剤はアクリル系ホットメルト接着剤であり、これは、例えば重合可能な液体モノマー混合物を、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)で形成される密封袋内に提供し、液体モノマー混合物を例えば化学線(例えば、紫外線)に露出することにより液体モノマー混合物を少なくとも部分的に重合し、部分的に重合された液体を袋の形成に用いられているEVA材料とブレンドすることにより、コーティング可能な感圧接着剤組成物を形成し、この感圧接着剤組成を支持層12上にコーティングすることにより、製造することができる。感圧接着剤組成物を支持層12上にコーティングした後、感圧接着剤を更に重合して、低粘着度を有する又は粘着性を有さないコーティング層などの、所望特性を有する滑り止めコーティング層を形成することにより、滑り止め層14を形成する。
【0053】
追加の重合度は様々であってよく、例えば滑り止め層14の所望特性に依存する。感圧接着剤の粘着度を所望レベルに低減するのに充分な量にて、感圧接着剤を例えば更なる紫外線に露出することにより、又は熱重合によって、更なる重合を行なってもよい。
【0054】
好適な重合可能な液体モノマー混合物としては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、及びニューヨーク州ホーソーンのチバガイギー社市販のイルガキュア651などの光反応開始剤の混合物を挙げることができる。イソオクチルチオグリコール酸塩、ヘキサンジオールジアクリレート、アルファベンゾフェノン、及びニューヨーク州タリータウンのチバスペシャルティケミカルズ社市販の酸化防止剤イルガノックス1076などの任意の添加剤も、重合可能な液体モノマー混合物内に含まれてよい。
【0055】
滑り止めコーティング層14は通常、水性分散液などの液体懸濁液、ラテックスなどの水性エマルション、又はホットメルト接着剤として塗布される。
【0056】
液体は、例えばロールコーティング(例えば、輪転グラビアコーティング)、転写ロールコーティング、溶媒コーティング、ホットメルトコーティング、メイヤーロッドコーティング、及びドロップダイコーティングを含む、様々な既知の印刷及び/又はコーティング技術を用いて塗布することができる。水性エマルション及び分散液を塗布する特に望ましい技術としては、メイヤーロッドコーティング、輪転グラビア及び転写ロールコーティング技術が挙げられる。次いで、かかる水性エマルション及び分散液を乾燥させて、滑り止めコーティング層14を製造する。アクリレートホットメルト接着剤などのホットメルト接着剤を塗布する特に望ましい技術としては、ドロップダイコーティングが挙げられる。次いで、かかるホットメルトコーティングされた接着剤を更に重合して、所望特性を有する滑り止めコーティング層14を製造する。
【0057】
一実施形態において、滑り止めコーティング層14には面触感が提供される。このようなざらつきのある面は、例えばマイクロセルフォームローラを用いて液体エマルション又は液体分散液を支持層12に塗布することにより提供されることができる。特定の実施形態においては、マイクロセルフォームローラを用いて、コーティング重量が約200グラム/m(約3グレーン/24平方インチ)となるように液体エマルション又は液体分散液を塗布する。次いで、液体コーティングを、例えば225°Fの強制空気炉内で5分間乾燥させることにより、滑り止めコーティング層を製造することができる。
【0058】
図1に例示する実施形態においては、滑り止めコーティング14は、サンドペーパー10のメークコート16及び研磨粒子18とは反対側に概して平面の外表面14aを画定する。即ち、滑り止めコーティング層14は、ざらつきのある面又は巨視的な三次元トポグラフィーを含まない、滑らかな外表面を画定する。コーティング層14は連続的でも非連続的でもよく、並びに/又は点及び線などのランダムな若しくは繰り返し模様にて塗布されてもよい。
【0059】
一実施形態において、滑り止めコーティング層14は透明であってもよい。そうすれば、支持体12上に印刷された情報又は印は、滑り止めコーティング層14を通して可視のままである。加えて、サンドペーパーの外見は、使用者の見慣れた従来のサンドペーパーの外見と似たままである。
【0060】
図2に示すように、滑り止めコーティング層14の外表面14aは、規則的模様の面触感又は形状を含んでもよい。例示の具体的実施形態においては、滑り止めコーティング層14の外表面14aの面触感模様は、サンドペーパー10をそれ自身に折り重ねたときに模様が自身と相互に係合するようであってもよい。即ち、外表面14aは、凸部14a’領域及び凹部14a”領域を含み、これらは、外表面14aをそれ自身に折り重ねたとき、互いに係合する。
【0061】
図1又は図2に示すいずれの実施形態でも、滑り止めコーティング層14は充填剤材料又は粒子を更に含んで、滑り止めコーティング層14の外表面14aに粗い又はランダムにざらつきのある面を提供してもよい。このような粗い又はざらつきのある面は、滑り止めコーティング層14の静止摩擦特性を向上させる機能をする。
【0062】
メークコート16
一般に、研磨粒子18を支持層12に接着するために、いかなる接着剤メークコート16を用いてもよい。「メークコート」とは、サンドペーパー10の支持層12上の硬化樹脂層を指す。接着剤メークコート16に適した材料としては、例えば、フェノール樹脂、ペンダントα、β−不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン系不飽和樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フルオレン変性エポキシ樹脂、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0063】
メークコート16を支持層12上にコーティングするには、ナイフコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、輪転グラビアコーティング、カーテンコーティングその他など、いかなる従来の技術を用いてもよい。サンドペーパー10はまた、任意サイズのコーティング(図示せず)を含んでもよい。
【0064】
研磨粒子18
一般に、本発明にはいかなる研磨粒子18を用いてもよい。好適な研磨粒子としては、例えば、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、アルミナ系セラミックス、炭化ケイ素、ジルコニア、アルミナジルコニア、ザクロ石、エメリー、ダイヤモンド、セリア、立方晶窒化ホウ素、すりガラス、石英、二ホウ化チタン、ゾルゲル研磨剤、及びこれらの組合せが挙げられる。研磨粒子18は成形(例えば、棹状、三角、又はピラミッド型)されていてもよいし成形されていなくても(即ち、不規則)よい。「研磨粒子」という用語は、研磨グレイン、粒塊、又はマルチグレインの研磨粒剤を包含する。研磨粒子をメークコート16上に堆積するには、静電コーティング又はドロップコーティングなどいかなる従来の技術を用いてもよい。
【0065】
添加物
メークコート16及び/又は任意サイズのコーティングは、例えば充填剤、繊維、潤滑剤、研削補助剤、湿潤剤、増粘剤、耐荷重剤、界面活性剤、顔料、染料、カップリング剤、光反応開始剤、可塑剤、懸濁化剤、静電防止剤その他などの任意の添加剤を含んでもよい。充填剤として可能なものには、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、アルミナ三水和物、氷晶石、マグネシア、カオリン、石英、及びガラスが挙げられる。研削補助剤として機能し得る充填剤には、氷晶石、ホウフッ化カリウム、長石、及びイオウが挙げられる。これら材料の量は、当業者には既知であるように、所望性能をもたらすように選択される。
【0066】
具体的な一実施形態においては、サンドペーパー10は標準的な22.9×27.9cm(9×11インチ)のシートのサンドペーパーである。別の実施形態では、サンドペーパー10は、約7.6〜10.2cm(約3〜約4インチ)、又は約12.7〜約15.2cm(約5〜約6インチ)の幅、及び約20.3〜約25.4cm(約8〜約10インチ)又は約25.4〜約30.5cm(約10〜約12インチ)の長さを有してもよい。
【0067】
別の態様では、本発明はサンドペーパーシートの積層体を含むサンドペーパーパッケージを提供する。積層体は、少なくとも2枚のシート、少なくとも約6枚のシート、又は少なくとも約10枚のシートを含むことができる。
【0068】
製造方法
上述の様々な実施形態は様々な技術を用いて製造することができ、滑り止めコーティング層14の製造に用いられる特定材料により様々であり得る。例えば、研磨物品10は、紙製支持層を提供し、支持層の一主表面上に接着剤メークコートをコーティングし、研磨粒子をメークコートに少なくとも部分的に埋設することにより研磨面を形成し、ゴムと粘着付与剤との混合物などの滑り止めコーティング材料をトルエンなどの炭化水素溶媒中に溶解することによりコーティング可能な滑り止め材料を形成し、滑り止め材料及び溶媒を支持層のメークコートとは反対側の表面にコーティングし、溶媒を滑り止め材料から蒸発させることにより滑り止めコーティング層14を支持層12上に形成することにより、製造することができる。この技法を用いる場合、滑り止めコーティング層14は支持体上に「溶媒コートされた」と言う。
【0069】
研磨物品10の別の製造方法では、水性エマルション又は水性分散液を支持層12上のメークコート16とは反対側にコーティングし、乾燥させることにより、滑り止めコーティング層14を形成する。
【0070】
あるいは、研磨物品10は、紙製支持層12を提供し、支持層12の一主表面上に接着剤メークコート16をコーティングし、研磨粒子18を接着剤メークコート16に少なくとも部分的に埋設することにより研磨面を形成し、ゴムと粘着付与剤との混合物などの滑り止め材料を提供し、滑り止め材料を加熱することによりコーティング可能な滑り止め材料を形成し、滑り止め材料を支持層12のメークコート16とは反対側の表面にコーティングすることにより滑り止めコーティング層14を形成することにより、製造することができる。この技法の場合、例えばロールコーティング、ホットメルトコーティング、又はドロップダイコーティング技術を用いて、滑り止めコーティング層14を支持層12上にコーティングすることができる。
【0071】
一実施形態において、コーティング可能な滑り止め材料を塗布するのに用いるローラはフォームローラであり、これにより滑り止めコーティング層に面触感が与えられる。あるいは、滑り止めコーティング層14を支持層12上にコーティングした後の滑り止めコーティング層14の後処理にフォームローラを用いることにより、滑り止めコーティング層に面触感を与えてもよい。
【0072】
研磨物品10の別の製造方法では、アクリル系ホットメルト接着剤などの接着剤を支持層12上のメークコート16とは反対側にコーティングし、例えば重合又は乾燥により硬化させることにより、滑り止めコーティング層14を形成する。
【0073】
上述のいずれの技法においても、滑り止めコーティング層14及びメークコート層16を支持層12上に塗布する順序を変えてもよいことが認識されるであろう。即ち、滑り止めコーティング層14は、メークコート16を支持層12に塗布する前又は後のいずれに塗布してもよい。
【0074】
加えて、支持層12、メークコート16、及び研磨粒子18は、予め形成された(即ちその他の方法で完成された)研磨シートの形態で提供してもよいことが認識されるであろう。即ち、支持層12を提供し、次いでこれをメークコート16でコーティングし研磨粒子18を供給して研磨シートを形成するのではなく、支持体、メークコート、及び研磨粒子を含む予め形成された研磨シートを提供してもよい。そうすれば、滑り止めコーティング層14をこの予め形成された研磨シートに直接塗布することができる。
【0075】
予め形成された研磨シートの好適な代表例として、ミネソタ州セントポールのスリーエム社から製品名称216Uとして市販されるものがある。216Uは、A重量の支持体、フェノール系メークコート、酸化アルミニウム研磨粒子、及び負荷を最小限にするために設けられたステアリン酸超大型コーティングを有するサンドペーパーである。予め形成された研磨シートを使用する場合、滑り止めコーティング層14は、例えば溶媒コーティング、ロールコーティング、ホットメルトコーティング、ドロップダイコーティング、又はパウダーコーティング技術を用いて、支持層12に塗布することができる。製造を簡易にするため、前もって完成品のサンドペーパーをバルク形態で提供し、次いでこのバルク形態のサンドペーパーを滑り止めコーティング材料でコーティングした後に、エンドユーザが最終的に使用する個々のサンドペーパーシートを製造することが望ましい。
【0076】
多種多様な支持体材料(例えば、紙、フィルム、布)、重量(例えば、A、B、又はC重量の紙)、及び研磨粒子を有する、従来から市販される多種多様なサンドペーパー構造体に、本発明による滑り止めコーティングをコーティングすることができる。
【0077】
本明細書に記載の本発明をより完全に理解できるよう、以下に実施例を説明する。これらの実施例は単に例示目的であり、本発明をいかなる方法でも制限するものではないと理解されたい。
【実施例】
【0078】
以下に述べる実施例のそれぞれにおいて、製品名称「216U P150 Production RN Paper A Weight,Open Coat,Fre−Cut」としてミネソタ州セントポールのスリーエム社が市販するサンドペーパーを用いて、図1に示す構造を有する研磨物品10を製造した。216Uサンドペーパーは、A重量紙の支持体と、一面にコーティングされたフェノール樹脂と、フェノール樹脂に少なくとも部分的に埋設された酸化アルミニウム研磨粒子と、を有する多目的サンドペーパーである。次いで、サンドペーパーの第2面(即ち、研磨面とは反対の非研磨面)に、以下に述べる滑り止めコーティング層の1つでコーティングした。
【0079】
実施例1〜8のそれぞれにおいて、得られた滑り止めコーティング層14は低粘着度を有し、このため滑り止めコーティング層14は自身に折り重ねることができ、滑り止めコーティング層のいずれの面も傷つけることなく、また、下の支持体12を傷つける又はこれから離れることなく、接触する面を容易に離すことができた。
【0080】
実施例2〜8のそれぞれ、並びに、2つの比較例−標準的な216Uサンドペーパー(即ち、支持体の第2面に滑り止め層を適用しないもの)の1つ、及びスリーエム社の標準的なウェット・オア・ドライサンドペーパーの1つ−について、ASTM D1894−08(Standard Test Method for Static and Kinetic Coefficients of Friction of Plastic Film and Sheeting)において規定される試験方法に従い、23℃にて、オハイオ州ストロングビルのインスツルメンターズ社市販のIMASSスリップ/ピールテスター(SP2000)を用いて、平均ピーク静的摩擦係数及び平均動的摩擦係数を3度計測した。3つの計測値の平均結果を下の表1に示す。
【0081】
比較例A
比較例Aは、ミネソタ州セントポールのスリーエム社市販の3MグレードP150の「216U Production RN Paper A Weight Open Coat Fre−Cut」サンドペーパーとした。
【0082】
比較例B
比較例Bは、やはりスリーエム社市販の、グレードP320の「213Q Imperial Wetordry Production Paper A Weight」とした。
【0083】
(実施例1)
実施例1は、テキサス州ヒューストンのクレイトンポリマー社市販のブロックコポリマー、クレイトンD−1161K SISを90重量%、及びペンシルバニア州エクストンのサートマー社市販の粘着付与剤ウィングタックプラスを10重量%を、得られる溶液の固形分が40重量%となるようにトルエン中に溶解した配合物で、216Uサンドペーパーの第2面をコーティングしたものである。ナイフコーターを用いて配合物を支持層12上に38.1マイクロメートル(1.5ミル)の厚さにコーティングし、周囲条件下で乾燥させてトルエンを完全に蒸発させた。実施例1の平均摩擦係数は計測しなかったため、表1には含まれていない。
【0084】
(実施例2)
実施例2は、液体モノマー混合物をまずエチレンビニルアセテート(EVA)袋内で紫外線に露出することにより部分的に重合して製造したアクリル系ホットメルト接着剤で、216Uサンドペーパーの第2面をコーティングしたものである。液体モノマー混合物は、アクリル酸2−エチルヘキシルを14重量%、アクリル酸ブチルを42重量%、アクリル酸メチルを44重量含み、更に、以下の添加剤を含むものとした(添加剤百分率pphaで示す):ニューヨーク州ホーソーンのチバガイギー社市販の光反応開始剤イルガキュア651を0.17ppha、イソオクチルチオグリコール酸塩を0.06ppha、ヘキサンジオールジアクリレートを0.004ppha、アルファベンゾフェノンを0.092ppha、及びニューヨーク州タリータウンのチバスペシャルティケミカルズ社市販の酸化防止剤イルガノックス1076を0.4ppha。次いで、部分的に重合したモノマー混合物を、二軸押し出し機を用いてEVAの袋とブレンドし、部分的に重合したモノマー混合物の配合物が4pphaのエチレンビニルアセテート(EVA)も含むようにした。次いで、部分的に重合した感圧接着剤を、ドロップダイコーターを用いて支持層12上に約38.1マイクロメートル(1.5ミル)の厚さにコーティングした。次いで、支持層12上にコーティングした、部分的に重合した感圧接着剤を、接着剤を紫外線に露出することにより更に重合した。
【0085】
(実施例3)
実施例3は、216Uサンドペーパーの第2面を、ミシガン州ミッドランドのダウコーニング社市販の高硬度シリコーンゴム、シラスティックにてコーティングしたものであった。ナイフコーターを用いてシラスティックシリコーンゴムを支持層12上に38.1マイクロメートル(1.5ミル)の厚さにコーティングし、室温で24時間かけて硬化させた。
【0086】
(実施例4)
実施例4は、#50のメイヤーロッドを用いて、およそ200グラム/m(約3grains/24in)のコーティング重量にて、216Uサンドペーパーの第2面を、BASF社市販のカルボキシル化スチレンブタジエンアニオン性分散液ブトファンNS209でコーティングし、次いで、107℃(225°F)の強制空気炉内で5分間乾燥させたものであった。
【0087】
(実施例5)
実施例5は、ブトファンNS 209の滑り止めコーティング層がおよそ600グラム/m(9grains/24in)の重量でコーティングされた以外は実施例4と同様であった。
【0088】
(実施例6)
実施例6は、#9のメイヤーロッドを用いて、およそ167グラム/m(約2.5grains/24in)のコーティング重量にて、216Uサンドペーパーの第2面を、ルブリゾル社市販のエラストマーエマルション、ハイストレッチV−29でコーティングし、次いで、107℃(225°F)の強制空気炉内で5分間乾燥させたものであった。
【0089】
(実施例7)
実施例7は、#9のメイヤーロッドを用いて、およそ167グラム/m(約2.5grains/24in)のコーティング重量にて、216Uサンドペーパーの第2面を、ルブリゾル社市販のエラストマーエマルション、ハイストレッチV−43でコーティングし、次いで、107℃(225°F)の強制空気炉内で5分間乾燥させたものであった。
【0090】
(実施例8)
実施例8は、#9のメイヤーロッドを用いて、およそ167グラム/m(約2.5grains/24in)のコーティング重量にて、216Uサンドペーパーの第2面を、ルブリゾル社市販のエラストマーエマルション、ハイストレッチV−60でコーティングし、次いで、107℃(225°F)の強制空気炉内で5分間乾燥させたものであった。
【0091】
【表1】

【0092】
上述の発明には、発明の概念から逸脱することなく様々な変更や修正ができることは、当業者には理解されよう。したがって、本発明の範囲を本出願に記載の構造に限定すべきではなく、特許請求の範囲の文言によって記載の構造物及びそれらの同等物によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対向する第1及び第2主表面を有する支持層と、
(b)前記第1主表面上の接着剤メークコートと、
(c)前記メークコートに少なくとも部分的に埋設されることにより研磨面を画定する研磨粒子と、
(d)前記第2主表面上の滑り止めコーティング層と、
を備える、サンドペーパーシート。
【請求項2】
前記滑り止めコーティング層がエラストマーである、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項3】
前記滑り止めコーティング層が非粘着性である、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項4】
前記滑り止めコーティング層が粘着性である、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項5】
前記滑り止めコーティング層が、天然ゴム、合成ゴム、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアセテート(PVA)、熱可塑性加硫ゴム、アクリレート、アクリル系ポリマー、熱可塑性オレフィン、及びこれらの組合せから成る群から選択される材料を含む、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項6】
前記合成ゴムが、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンターポリマー(EPDMゴム)、シリコーンゴム、及びポリウレタンゴムから成る群から選択される、請求項5に記載のサンドペーパーシート。
【請求項7】
前記滑り止めコーティング層が、約−25℃〜約−65℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項8】
前記滑り止めコーティング層が、アクリル系ポリマーコーティングを含む、請求項7に記載のサンドペーパーシート。
【請求項9】
前記滑り止めコーティング層が、ASTM D2979−88により、滞留時間を10秒、プローブ除去速度を1cm/sとして測定した場合に、約300グラム以下の平均粘着度を有する、請求項8に記載のサンドペーパーシート。
【請求項10】
前記滑り止めコーティング層が、自身に付着された場合に、前記滑り止めコーティング層の支持層への二材間結合接着力より低い接着力を有し、これにより前記滑り止めコーティング層を自身から離すときに前記滑り止めコーティング層が前記支持層から離れない、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項11】
前記滑り止めコーティング層が、自身に付着された場合に、前記滑り止めコーティング層の凝集力より低い接着度を有し、これにより前記滑り止めコーティング層を自身から離すときに前記滑り止めコーティング層が損傷しない、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項12】
前記滑り止めコーティング層が、少なくとも約5.1マイクロメートル(0.2ミル)〜約1270マイクロメートル(50ミル)以下の厚さを有する、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項13】
前記滑り止めコーティング層が、少なくとも約4g/mかつ約20g/m以下のコーティング重量を有する、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項14】
前記滑り止めコーティング層が、前記研磨粒子の反対側に、連続的で均一の、ざらつきのある外表面を含む、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項15】
前記支持層が、A重量〜C重量の範囲の重さを有する紙である、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項16】
前記滑り止めコーティング層が、ASTM D 1894−08に従って計測したとき、少なくとも約1グラムの平均ピーク静的摩擦係数を有する、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項17】
前記滑り止めコーティング層が、ASTM D 1894−08に従って計測したとき、少なくとも約0.75グラムの平均動的摩擦係数を有する、請求項1に記載のサンドペーパーシート。
【請求項18】
加工面を手で研磨するためのサンドペーパーシートであって、
(a)対向する第1及び第2主表面を有する紙製支持層と、
(b)前記支持層の第1主表面上の接着剤メークコートと、
(c)前記接着剤メークコートに少なくとも部分的に埋設されることにより研磨面を画定する研磨粒子と、
(d)前記支持層の第2主表面上にあり、ASTM D2979−88により、滞留時間を10秒、プローブ除去速度を1cm/sとして測定した場合に、約300グラム以下の平均粘着度を有するエラストマーコーティング層を含み、約203.2マイクロメートル(8ミル)以下の厚さを有する、滑り止めコーティング層と、
を備える、サンドペーパーシート。
【請求項19】
加工面を手で研磨する方法であって、
(a)請求項1に記載のサンドペーパーシートを提供する工程と、
(b)前記滑り止めコーティング層を手で、手及び手動ツールのうちの少なくとも1つと係合させる工程と、
(c)前記サンドペーパーを手で前記加工面上の複数方向に動かす工程と、
を含む、方法。
【請求項20】
滑り止めコーティング層を有するサンドペーパーシートの製造方法であって、
(a)対向する第1及び第2主表面を有する紙製支持層を提供する工程と、
(b)前記第1主表面上に接着剤メークコートをコーティングする工程と、
(c)前記メークコートに研磨粒子を少なくとも部分的に埋設することにより研磨面を形成する工程と、
(d)前記支持層の第2主表面に水性エマルションをコーティングする工程と、
(e)前記水性エマルションを乾燥させることにより滑り止めコーティングを形成する工程と、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526845(P2011−526845A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516659(P2011−516659)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/048646
【国際公開番号】WO2010/002697
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】