説明

滑り防止に用いる敷物の裏張り材

【課題】 滑り防止機能、吸音機能及びクッション機能を持つ敷物の裏張り材をを提供する。
【解決手段】 この裏張り材は、ネット状ラッセル編地1と短繊維集積体6とが積層されてなる。ラッセル編地1は、経糸2である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されている。経糸2は、鎖編みされている地糸3a,3bと、一定コースでループパイルを形成しているパイル糸4とよりなる。パイル糸4は、二本のモノフィラメント5,5で構成されている。ループパイル長さ中において、モノフィラメント5,5は少なくとも一回以上の撚りが施されている。ループパイルは頂上近傍で切断され、カットパイルが形成されている。カットパイル形成側の反対側には、短繊維集積体6が積層されている。短繊維集積体6中の短繊維7相互間は絡合して、その形態を維持している。また、短繊維7とネット状ラッセル編地1の経糸2中の地糸3a,3b及び緯糸とは絡合して、一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用床マット、室内カーペット、ホットカーペット、玄関用マット、台所用マットなどの各種敷物の裏張り材に関し、特に、ラッセル編地と短繊維集積体とが積層一体化されてなる、滑り止め機能と、吸音機能やクッション機能等が付加された裏張り材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の床全面や室内の床全面には、敷物が敷設されていることが多い。そして、この敷物の上に更に、比較的小さな形状の敷物が重ねて敷設されることもある。なお、ここでは、床全面に敷設される敷物のことを一次敷物と言い、この一次敷物の上に敷設された敷物を二次敷物と言う。
【0003】
二次敷物は、一次敷物の表面状態にもよるが、単に一次敷物上に重ねているだけなので、ずれやすいということがあった。すなわち、一次敷物の表面と二次敷物の裏面との摩擦係数が低く、二次敷物が滑って、ずれるということがあった。このため、二次敷物の裏面にラッセル編地を貼着し、特殊な加工を施して、二次敷物に滑り止め機能を付加し、二次敷物をずれにくくすることが行われている。たとえば、ラッセル編地に多数のループパイルを形成し、このループパイルを二次敷物の裏面に配置することが行われている。この場合、二次敷物裏面のループパイルが一次敷物表面に食い込み、二次敷物が滑りにくくなる。しかしながら、一般的に、ラッセル編地にループパイルを形成した場合、当該ループパイルは編成方向に傾斜している。したがって、ループパイルを設けて、このループパイルを一次敷物に食い込ませても、ループパイルが傾斜している方向には、ずれにくいが、その反対方向には、ずれやすいという欠点があった。また、ループパイルは、その先端が丸くなっているため、基本的に、一次敷物に食い込みにくいという欠点もあった。
【0004】
このため、ラッセル編地に形成した各ループパイルの4分の1以上を加熱溶融して、各ループパイルを切断すると共に切断端に溶融玉を形成し、更に加熱溶融時にループパイルを押圧してランダム方向に傾斜させることが行われている(特許文献1)。二次敷物の裏面に、このような溶融玉付きカットパイルが存在していると、この溶融玉付きカットパイルのアンカー効果によって、二次敷物がよりずれにくくなるのである。また、ランダム方向に傾斜させることによって、いずれの方向にもずれにくくなるのである。しかしながら、特許文献1記載の方法では、ラッセル編地に形成されたパイルをランダム方向に傾斜させるため、加熱時に、ループパイルを押圧しなければならないということがあった。加熱時に、ループパイルを押圧すると、加熱体とラッセル編地とが近接し、火災の危険がある。
【0005】
【特許文献1】特公平3−60483号公報(第2頁第3欄第37行目乃至第4欄第3行目、第2頁第4欄第41〜43行目、第4頁の図面)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1記載の技術の欠点を解決するために、特願2003−317772明細書記載の技術を提案している。この技術は、ループパイルを少なくとも二本のモノフィラメントで構成し、ループパイル中で少なくとも一回以上の撚りをかけたラッセル編地を準備し、このループパイルの頂上付近を切断することにより、パイルをランダム方向に傾斜させるというものである。この技術は、単にループパイルを刃物で切断すればよいだけであり、非常に合理的な技術である。
【0007】
本発明は、特願2003−317772明細書記載の技術を利用したものであって、ラッセル編地と短繊維集積体とを組み合わせることにより、滑り止め機能だけではなく、吸音機能やクッション機能等を更に付加しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、ネット状ラッセル編地と短繊維集積体とが積層されてなる敷物の裏張り材であって、前記ネット状ラッセル編地は、経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されており、該経糸は鎖編みされている地糸と、一定コースでループパイルを形成し、該一定コース間では鎖編みされているパイル糸とよりなり、該パイル糸は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、該ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されており、且つ、該ループパイルは、その頂上近傍で切断されてカットパイルとなり、該カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて傾斜して起立しており、前記短繊維集積体は、短繊維相互間が絡合していると共に、前記ネット状ラッセル編地と前記短繊維集積体とは、前記短繊維集積体中の前記短繊維と、前記ネット状ラッセル編地の前記経糸の前記地糸及び前記緯糸とが絡合することによって、一体化していることを特徴とする滑り防止に用いる敷物の裏張り材に関するものである。
【0009】
本発明に係る裏張り材は、ネット状ラッセル編地1と短繊維集積体6とが積層一体化されてなるものである。この裏張り材は、短繊維集積体6側がカーペット本体11に貼合乃至貼着されて用いられる。
【0010】
本発明で用いるネット状ラッセル編地1は、角目、菱目、亀甲目等の目を持つ網状のラッセル編地であって、経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されている。ネット状ラッセル編地1が伸縮性を持たないようにするためには、目を角目とすればよい。また、伸縮性を与えたいときは、菱目又は亀甲目とすればよい。本発明において、経糸2は、地糸3とパイル糸4とで構成されている。地糸3としては、従来公知の糸が用いられ、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸などが用いられる。本発明においては、パイル糸4としてモノフィラメントが用いられるので、地糸3もモノフィラメントを用いるのが好ましい。モノフィラメントの種類としては、ポリオレフィンモノフィラメント、ポリエステルモノフィラメント又はポリアミド(ナイロン)モノフィラメントなどが用いられ、その繊度は100デニール以上、好ましくは300デニール程度が好ましい。
【0011】
図2は、ネット状ラッセル編地1の経糸2のみを示したものであり、緯糸である挿入糸は省略されている。図2においては、地糸3は、地糸3aと地糸3bの二本が用いられている。すなわち、二本の地糸3a,3bを用いて、二枚筬で、各々左右対称に鎖編みされて、経糸2が形成されている。このように、左右対称に鎖編みされることによって、鎖編糸で構成される経糸2の方向性がなくなり、地糸3a及び3bから上に浮き上がるループパイルが、直立しやすくなるので、好ましい。
【0012】
パイル糸4も、地糸3と同様に鎖編みされているが、一定コースでループパイルが形成されている。たとえば、図2に示す如く、4コース間で鎖編みされ、次のコースでループパイルが形成され、この後は再び4コース間で鎖編みされ、更に次のコースでループパイルが形成され、以下順次同様の編成がなされる。すなわち、4コース毎にループパイルが形成されていることになる。各経糸2においても、同様にループパイルが形成されているが、隣り合う経糸2,2・・・においては、同一コースにループパイルが形成されずに、千鳥状にループパイルが形成されているのが好ましい。この方が満遍なく、一次敷物表面に食い込むパイルが得られるからである。
【0013】
図3は、図2の経糸2を構成しているパイル糸4、地糸3a及び地糸3bを分解して模式的に示したものである。図3からも明らかなように、本発明の一実施例では、経糸2はパイル糸4が一本で、地糸3が二本で、合計三本の糸で構成されている。しかし、経糸2には、地糸3とパイル糸4が存在すればよいので、地糸3が一本でパイル糸が一本の合計二本で構成されていてもよい。また、地糸3が二本でパイル糸が二本の合計四本で構成されていてもよい。さらに、地糸3及びパイル糸4の合計本数を五本以上としてもよい。
【0014】
本発明において、パイル糸4は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されている。このモノフィラメントの種類も、ポリエチレンモノフィラメント、ポリエステルモノフィラメント又はポリアミド(ナイロン)モノフィラメント等が用いられ、その繊度は100デニール以上、好ましくは300デニール程度が好ましい。そして、この少なくとも二本のモノフィラメントには撚りが掛けられていることが必要で、しかも、その撚り回数が一定以上であることが必要である。撚り回数は、形成されているループパイルの長さにおいて、少なくとも一回以上の撚り回数である。すなわち、ループパイルの長さにおいて、各モノフィラメントが一回り以上旋回しているため、このループパイルを頂上近傍で切断すると、この旋回が解けて、切断端がランダム方向に向くのである。したがって、切断されたカットパイルもまた、ランダム方向に傾斜して起立することになるのである。なお、旋回が解けるのは、各モノフィラメント5,5・・・に剛性があるからである。このような剛性を与える点から、モノフィラメント5,5・・・の繊度は大きい方が好ましく、具体的には、上記した100デニール以上となるのである。
【0015】
本発明で用いるネット状ラッセル編地1の緯糸である挿入糸としては、従来公知の糸が用いられ、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸等が用いられる。
【0016】
本発明において、ネット状ラッセル編地1には、短繊維集積体6が積層されている。短繊維集積体6は、短繊維7が多数集積されてなるものである。短繊維7としては、従来公知のポリエステル短繊維、ポリオレフィン短繊維、ポリアミド短繊維、レーヨン短繊維等が用いられる。そして、短繊維7相互間が絡合することによって、その形態が維持されている。短繊維集積体6の目付は任意であるが、一般的に、100〜800g/m2程度であるのが好ましい。目付が100g/m2未満になると、吸音機能やクッション機能が低下する傾向が生じる。また、目付が800g/m2を超えると、裏張り材の重量が重くなり、取り扱いにくくなる傾向が生じる。
【0017】
短繊維集積体6中の短繊維7は、ネット状ラッセル編地1を形成している経糸2の地糸3及び緯糸と絡合している。そして、この絡合によって、ネット状ラッセル編地1と短繊維集積体6とが一体化している。短繊維7相互間の絡合や、短繊維7と地糸3及び緯糸との絡合は、従来公知のニードルパンチ等の手段によって、行うことができる。
【0018】
本発明において、短繊維7の一部として低融点短繊維を混合するのが好ましい。この低融点短繊維を溶融又は軟化させることによって、短繊維7相互間や、短繊維7と地糸3及び緯糸とを接着させることができるからである。この接着によって、短繊維集積体6の形態安定性が向上し、また、短繊維集積体6とネット状ラッセル編地1との一体化も強固になる。低融点短繊維は、短繊維集積体6中の全短繊維に対して、5〜50質量%程度混合するのが一般的である。低融点短繊維が5質量%未満であると、短繊維7相互間の接着等が不十分となる傾向が生じる。また、低融点短繊維が50質量%を超えると、短繊維集積体6が硬くなりすぎて、吸音機能やクッション機能が低下する傾向が生じる。
【0019】
低融点短繊維としては、融点が150℃以下程度のポリエステル繊維やポリオレフィン繊維等が用いられる。低融点短繊維としては、繊維全体が低融点成分で形成されているものを使用してもよいが、好ましくは、芯成分が高融点成分で鞘成分が低融点成分よりなる芯鞘型複合短繊維を用いるのがよい。芯鞘型複合短繊維の場合、鞘成分が溶融又は軟化することによって、短繊維7相互間等が接着する。そして、芯成分は当初の繊維形態を維持したままであるので、短繊維集積体6が硬くなりにくく、吸音機能やクッション機能等の低下を防止することができる。また、芯鞘型複合短繊維に代えて、横断面が半月状である高融点成分と低融点成分とを貼り合わせた、サイドバイサイド型複合短繊維も用いることができる。この場合も、高融点成分が当初の繊維形態を維持しているため、短繊維集積体6が硬くなるのを防止しうる。
【0020】
本発明に係る敷物の裏張り材は、以下のような準備工程(A)、積層工程(B)及び絡合工程(C)によって製造することができる。準備工程(A)は、ネット状ラッセル編地1を準備する工程である。ネット状ラッセル編地1は、前記したように、経糸2である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成され、経糸2は鎖編みされている地糸3と、一定コースでループパイルを形成し、この一定コース間では鎖編みされているパイル糸4とよりなる。パイル糸4は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されているものである。そして、ループパイルは、その頂上近傍で刃物等で切断されてカットパイルとなる。この切断によって、カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて、ランダムな方向に傾斜して起立した状態となる。すなわち、図4に示したようなカットパイルを持つネット状ラッセル編地1が得られるのである。ループパイルを切断してカットパイルとするのは、一般的に、ラッセル編地を編成し、ループパイルを形成した直後に行う。もちろん、一定数量のラッセル編地を編成し、その後で切断工程を経て、カットパイルとしてもよい。なお、カットパイルの端部は、そのままであってもよいし、毛焼きや熱ヒーターなどの手段によって加熱溶融し、溶融玉を作製して、より滑りにくい構造としてもよい。
【0021】
次に、ネット状ラッセル編地1に、短繊維を集積させてなる短繊維ウェブを積層する(積層工程(B))。一般的には、ネット状ラッセル編地1のカットパイルが形成されている側の反対側に、短繊維7を集積させて短繊維ウェブを積層する。カットパイルが形成されている側に、短繊維7を多量に集積すると、カットパイルが短繊維ウェブ中に埋もれてしまうからである。しかしながら、集積する短繊維7の量が少量であるときは、カットパイルが形成されている側に、短繊維を集積させてもよい。
【0022】
積層工程(B)の後、ニードルパンチを施す。ニードルパンチは、一般的に、短繊維ウェブ側から施す。ニードルパンチを施す絡合工程(C)によって、短繊維ウェブ中の各短繊維7相互間が絡合すると共に、短繊維7は、ネット状ラッセル編地1を形成している経糸2中の地糸3や、緯糸(挿入糸)とも絡合する。この絡合によって、短繊維ウェブは形態安定性のある短繊維集積体6となる。また、短繊維集積体6とネット状ラッセル編地1とは一体化され、剥離しにくくなる。
【0023】
本発明に係る裏張り材は、上記した準備工程(A)、積層工程(B)及び絡合工程(C)を経て製造されるものであるが、絡合工程(C)の後、加熱工程(D)を付加してもよい。加熱工程(D)を付加するときは、短繊維集積体6中に低融点短繊維を混合させておく。そして、加熱工程(D)で、低融点短繊維を溶融又は軟化させ、短繊維7相互間を接着すると共に、短繊維7とネット状ラッセル編地1の経糸2中の地糸3及び緯糸(挿入糸)とを接着する。加熱工程(D)は、短繊維集積体6とネット状ラッセル編地1との積層物を、熱風乾燥機中に導入することにより、又は一対の加熱ロール間に導入するなど、従来公知の方法で行うことができる。
【0024】
本発明に係る裏張り材は、カーペット本体11の裏面に貼合乃至貼着されて用いられる。カーペット本体11の裏面に当接する側は、短繊維集積体6側である。そして、ネット状ラッセル編地1は、床面側に当接し、ぱらけて傾斜して起立したモノフィラメントによって、滑り防止機能が発揮されるのである。したがって、本発明に係る裏張り材は、一般的に、床全面に敷設された一次敷物の上に敷設される二次敷物の裏張り材として用いられるのが好ましい。しかし、これに限られず、本発明に係る裏張り材は、一次敷物の裏張り材としても用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る敷物の裏張り材において、ネット状ラッセル編地に形成されるループパイルを構成するパイル糸は、特定の構成となっている。すなわち、パイル糸は少なくとも二本のモノフィラメントで構成され、ループパイルの長さにおいて、少なくとも一回以上の撚り回数となっている。したがって、このループパイルを頂上近傍で切断すると、少なくとも一回り旋回している各モノフィラメントは、その旋回が解けてばらけ、その切断端はランダム方向に向く。そして、その切断端を持つカットパイルもランダム方向に向いて、傾斜して起立することになる。よって、本発明によれば、単にループパイルを切断するだけで、ランダム方向に傾斜して起立したカットパイルが得られ、これを一次敷物などの上に敷設すれば、いずれの方向にもずれにくい敷物が得られる。
【0026】
また、本発明に係る敷物の裏張り材は、ネット状ラッセル編地に短繊維集積体が積層一体化されている。この短繊維集積体の存在によって、敷物に吸音機能やクッション機能を与えうるという効果も奏する。
【0027】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る裏張り材を敷物に適用すれば、非常に簡便な方法で、いずれの方向にも滑りにくい滑り止め機能、及び吸音機能やクッション機能を持った敷物が得られるという効果を奏する。
【実施例】
【0028】
実施例1
地糸として300デニールのポリエチレンモノフィラメントを2本準備した。また、パイル糸として、300デニールのポリエステルモノフィラメントが2本、撚り回数180回/mで撚られたもの1本を準備した。緯糸となる挿入糸としては、ポリエステル繊維とアクリル繊維とが混合された、3.5番手の紡績糸を準備した。そして、この地糸、パイル糸及び挿入糸を用い、図2(図3)で示した編組織で、経糸及び緯糸からなるラッセル編地を編成すると共に、ループパイルを4コース毎に形成した。なお、ゲージ数は2ゲージ/インチとし、コース数は10コース/インチとし、形成したループパイルの長さは10mmとした。また、隣り合う経糸間では、ループパイルは千鳥状に配置した。そして、ループパイルを形成した直後に、ループパイルの頂上近傍を刃物で切断し、カットパイルとした。この結果、カットパイルは、ランダムな方向に傾斜して起立していた。その後、カットパイルの切断端を熱ヒーターで加熱し、切断端に溶融玉を作製した。以上のようにして、ネット状ラッセル編地を準備した。
【0029】
このネット状ラッセル編地のカットパイルが形成されている側の反対側に、ポリエステル短繊維85質量%と低融点ポリエステル短繊維(融点:130℃)15質量%とを混合した混合綿を集積し、目付300g/m2の繊維ウェブを積層した。この後、繊維ウェブ側から、ニードルパンチを施して、繊維ウェブ中の短繊維相互間を絡合させて短繊維集積体を形成すると共に、短繊維とネット状ラッセル編地の経糸中の地糸及び緯糸とを絡合させ、ネット状ラッセル編地と短繊維集積体とが積層一体化した積層物を得た。
【0030】
この後、積層物を熱風乾燥機中に導入し、135℃に加熱して、低融点ポリエステル短繊維を溶融又は軟化させ、短繊維集積体中の短繊維相互間、及び短繊維とネット状ラッセル編地とを接着させた。以上のようにして、カットパイルを持つネット状ラッセル編地と、短繊維集積体とが積層一体化されてなる裏張り材を得た。
【0031】
実施例2
パイル糸として、300デニールのポリエステルモノフィラメントが2本、撚り回数180回/mで撚られたもの2本を準備し、図2(図3)に示した編組織に、更にもう一本のパイル糸を追加した他は、実施例1と同様にして、裏張り材を得た。
【0032】
実施例3
挿入糸として、2400デニール/192フィラメントのポリプロピレンマルチフィラメントを用いる他は、実施例1と同様にして、裏張り材を得た。
【0033】
実施例4
地糸として、300デニールのポリエステルモノフィラメントを用いる他は、実施例1と同様にして、裏張り材を得た。
【0034】
使用例1
カーペット本体の裏面にSBR系接着剤水溶液を塗布し、更にその上に、実施例1〜4で得られた各裏張り材を積層した。なお、各裏張り材の短繊維集積体側が接着剤と接触するように、積層した。そして、SBR系接着剤水溶液を乾燥及び硬化させ、カーペット本体、接着剤層、裏張り材の順に積層接着された四種類の敷物を得た。各敷物を、一次敷物の上に敷設したところ、いずれの敷物も、ネット状ラッセル編地に形成されたカットパイルが、一次敷物の表面によく食い込み、いずれの方向へもずれにくいものであった。また、短繊維集積体の存在によって、良好なクッション機能及び吸音機能を奏するものであった。
【0035】
使用例2
カーペット本体の裏面に、溶融させたポリオレフィン系ホットメルト接着剤を噴霧し、更にその上に、実施例1〜4で得られた各裏張り材を積層し加圧した。なお、各裏張り材の短繊維集積体側がホットメルト接着剤と接触するように、積層した。そして、溶融したホットメルト接着剤が固化することによって、カーペット本体、接着剤層、裏張り材の順に積層接着された四種類の敷物を得た。各敷物を、一次敷物の上に敷設したところ、いずれの敷物も、ネット状ラッセル編地に形成されたカットパイルが、一次敷物の表面によく食い込み、いずれの方向へもずれにくいものであった。また、短繊維集積体の存在によって、良好なクッション機能及び吸音機能を奏するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一例に係る裏張り材が、カーペット本体の裏側に貼合されてなる敷物の模式的側面図である。
【図2】本発明で用いるネット状ラッセル編地の編組織の一例を示す模式図である。
【図3】図2における経糸の編組織を、各糸毎に示した模式図である。
【図4】図2に示したネット状ラッセル編地のループパイルを、その頂上近傍で切断してカットパイルを形成した場合の模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ネット状ラッセル編地
2 経糸
3,3a,3b 地糸
4 パイル糸
5 パイル糸を構成しているモノフィラメント
6 短繊維集積体
7 短繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネット状ラッセル編地と短繊維集積体とが積層されてなる敷物の裏張り材であって、
前記ネット状ラッセル編地は、経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されており、該経糸は鎖編みされている地糸と、一定コースでループパイルを形成し、該一定コース間では鎖編みされているパイル糸とよりなり、該パイル糸は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、該ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されており、且つ、該ループパイルは、その頂上近傍で切断されてカットパイルとなり、該カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて傾斜して起立しており、
前記短繊維集積体は、短繊維相互間が絡合していると共に、
前記ネット状ラッセル編地と前記短繊維集積体とは、前記短繊維集積体中の前記短繊維と、前記ネット状ラッセル編地の前記経糸の前記地糸及び前記緯糸とが絡合することによって、一体化している
ことを特徴とする滑り防止に用いる敷物の裏張り材
【請求項2】
短繊維集積体中には低融点短繊維が混合されており、該低融点短繊維の溶融又は軟化によって、短繊維相互間が接着しており、かつ、該短繊維集積体中の該低融点短繊維と、ネット状ラッセル編地の経糸の地糸及び緯糸とが接着している請求項1記載の滑り防止に用いる敷物の裏張り材。
【請求項3】
隣り合う経糸間において、ループパイルが千鳥状に設けられている請求項1記載の滑り防止に用いる敷物の裏張り材。
【請求項4】
ネット状ラッセル編地の目が、角目、菱目及び亀甲目よりなる群から選ばれた一つの目である請求項1記載の滑り防止に用いる敷物の裏張り材。
【請求項5】
経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成され、該経糸は鎖編みされている地糸と、一定コースでループパイルを形成し、該一定コース間では鎖編みされているパイル糸とよりなり、該パイル糸は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、該ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されており、且つ、該ループパイルは、その頂上近傍で切断されてカットパイルとなり、該カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて傾斜して起立しているネット状ラッセル編地を準備する準備工程(A)、
前記ネット状ラッセル編地に、短繊維が集積されてなる短繊維ウェブを積層する積層工程(B)、
前記積層工程(B)の後、ニードルパンチを施して、前記短繊維ウェブ中の前記短繊維相互間を絡合すると共に、前記短繊維集積体中の前記短繊維と、前記ネット状ラッセル編地の前記経糸の前記地糸及び前記緯糸とを絡合する絡合工程(C)
とを具備することを特徴とする滑り防止に用いる敷物の裏張り材の製造方法。
【請求項6】
短繊維ウェブ中に低融点短繊維を混合し、絡合工程(C)の後で加熱工程(D)を付加し、該低融点短繊維を溶融又は軟化させて、短繊維相互間を接着すると共に、該短繊維集積体中の該低融点短繊維と、ネット状ラッセル編地の経糸の地糸及び緯糸とを接着する請求項5記載の敷物の裏張り材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−175126(P2006−175126A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373622(P2004−373622)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000238957)福井ファイバーテック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】