説明

滑剤を含むセルロース繊維−プラスチック組成物

本発明は押出可能な化合物、押出法、およびポリマーと、セルロース繊維と、エトキシ化ヒダントインのエステル、エトキシ化ソルビトールまたはソルビタンのエステル、または各々のアルカノイル基に8〜14の炭素原子を含むN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類から成る群より選択された少なくとも1つの滑剤を含む押出製品を対象とする。本発明により製造された押出製品は通常の木材製品と類似している。本発明はさらに、8〜14の炭素原子を各々のアルカノイル基に独立に含み、90〜150μm、好ましくは120〜140μmの粒径をもつN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類のポリマー−セルロース繊維組成物中の滑材としての使用を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明はN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類ベースの滑材を含むポリマーセルロース繊維組成物に関する。さらに押出ポリマーセルロース繊維組成物を調製する方法および前記方法による押出組成物に関する。本発明の他の目的はある種のN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類のポリマーセルロース繊維組成物中の滑材としての使用である。
【0002】
木材のコスト上昇および成木の減少にともない、現在では将来に向かって永く継続する良質の木材代用品を探す必要がある。加えて、良質の代替木材はシロアリによる破壊および木材腐敗を受けにくいため、木材よりも耐久性があり、より長持ちする。
【0003】
過去数年来、ポリマー-木材複合材料の使用のための成長市場が、デッキ、窓、フェンス、自動車インテリアやパレットのような応用で伝統的な固形木材製品に代わって浮かび上がっている。高品質のポリマー−木材複合材を実現する1つの鍵はポリマーマトリクス中でのセルロース繊維の完全な分散である。これを達成するために、ポリエチレン−木材デッキの多くの主要な製造者は、滑剤が不可欠であることに気づいている。
【0004】
農業残渣は穀物が収穫された後に畑に残る植物の一部である。このような残渣の例は、これに限られないが、小麦、カラスムギ、米、およびとうもろこしを収穫した後に畑に残された植物の一部(たとえば藁)を含む。収穫後、農業残渣は通常、焼却または堆肥として地面に鋤き込まれる。焼却や鋤き込みの代わりに、これらの一年生刷新のリグノセルロース繊維およびリグノセルロース類は、非木材繊維複合材製品の繊維源としての用途に傑出した潜在能力をもっている。
【0005】
US 6,011,091は60〜70重量%のセルロース材料、30〜40重量%のポリ塩化ビニル材料および4重量%以下の極性熱硬化性材料を含むセルロース複合材を教示している。カルシウムステアリン酸塩、エステル、パラフィンワックスおよびアミドワックスのような普通の商用滑剤を使うことができる。しかしながら、塩化ビニルベースの熱可塑性材は通常オレフィンベースの熱可塑性材よりも処理が難しい。
【0006】
US 6,066,680はポリマー樹脂および木粉粒子を含む成形性プラスチックで形成された押出複合材を記載している。2段階プロセスを教示しており、木粉粒子を樹脂によってカプセル化してペレット化し、次にペレット片を追加の樹脂および発泡剤と混合する。ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、エステルワックス、およびAC-629酸化ポリエチレンワックスのような滑材が含まれるだろう。
【0007】
記載されているポリマー樹脂はポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニルおよびポリスチレンである。
【0008】
US 6,011,091の継続出願であるUS 6,103,791は、50〜65重量%のセルロース材料、25〜30重量%のポリ塩化ビニルおよび4重量%以下の極性熱硬化性材料を含むセルロース複合材を開示している。これらの複合材は向上した耐候性をもつと考えられている。また、それらは接着剤または拘束層の必要なしに木材によく粘着するようである。
【0009】
それゆえに、現在の必要性は、市販されている現在の製品よりもより良い耐侯性および寸法安定性をもつ容易に加工できるポリマーをベースとした優れたポリマー−木材複合材にある。
【0010】
この発明はセルロース繊維と混合した高密度ポリエチレン(HDPE)と、各々のアルカノイル基に8〜14の炭素原子を独立に含むN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類を含む滑剤とを含む押出可能な、および押出ポリマー−セルロース繊維組成物を対象としている。本発明の組成物は総組成物の重量ベースで、70〜30重量%、好ましくは60〜40重量%のセルロース繊維を含み、30〜70重量%および好ましくは40〜60重量%のポリマーと混合される。各々のアルカノイル基に8〜14の炭素原子を独立に含むN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物は、木材に用いられる現在のエチレンビスステアラミド(EBS)/亜鉛ステアリン酸塩(ZnSt)ブレンドよりも良い滑剤であることが明らかになっている。
【0011】
先行技術のEBS/ZnStブレンドに対するこれらの滑剤の利点は与えられた押出トルクにおける増大した出力、押出機の低い温度、押出プロファイルの向上した寸法安定性、および押出プロファイルの向上した外観である。本発明の組成物に用いられる滑剤はプラスチックブレンドの内部および外部滑性を向上させる。内部滑性はポリマー中の強化充填剤の分散を増強し、したがって物理特性を向上させ押出機出力を増大させる。外部滑性の主な利益は、ダイを通して押出可能な組成物を動かすために必要な力を低減することによって、押出品表面の外観を向上させることである。
【0012】
組成物は総組成物の重量ベースで1〜7重量%の滑剤を含む。好ましい実施形態はHPDE/松複合材の場合に2〜4重量%の滑材、およびHPDE/樫複合材の場合に3〜6重量%の滑材を含む。
【0013】
N,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物は8〜14の炭素原子をもつカルボン酸類の混合物、またはそれらの誘導体たとえば酸塩化物または酸無水物から誘導されるだろう。それゆえに各々のN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン分子の2つのアルカノイル基は、同じでも異なっていてもよく、各々の成分の相対比率はカルボン酸出発物質に依存する。
【0014】
好ましくは、滑材は少なくとも1つのアルカノイル基に12の炭素原子を含むN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミンを少なくとも1つ含む。
【0015】
より好ましくは、滑剤中のN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物はそれぞれ8、10,12および14の炭素原子をもつ各々のカルボン酸の少なくとも1つを含むカルボン酸出発物質の組成に対応する、それらのアルカノイル基の少なくとも1つに、それぞれ8、10,12および14の炭素原子を含む各々のN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の少なくとも1つを含む。
【0016】
最も好ましくは、N,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン混合物中で最も豊富なアルカノイル基が、主な成分としてC12カルボン酸、たとえばラウリン酸を含む、カルボン酸出発物質に対応する12の炭素原子を含むアルカノイル基である。
【0017】
好ましい実施形態で、滑剤は室温下で固体であり、その粒子径が90〜150μm、より好ましくは120〜140μmである。
【0018】
押出中、加熱速度100℃/minでの滑剤の有効融点は好ましくは160℃未満である。
【0019】
本発明の組成物に用いられているポリマーは好ましくは、これに限定されないが、たとえばHDPE、LDPE,LLDPE、UHMWPE、ポリプロピレン(単独重合体および共重合体)、PVC、およびこれらの組み合わせのようなポリオレフィンおよびポリビニル化合物を含むバージンポリマーである。特に好ましいポリオレフィンは高密度ポリエチレン(HDPE)である。適切なHDPEは、たとえば、「ベアフット」(無添加)反応器粉体、たとえば、Equister(登録商標),Petrothene(登録商標),0.4メルトインデックス(MI)をもつLB0100−00として入手できる。このポリオレフィンはテキサス州、ヒューストンのEquister(登録商標)Chemicals LPの製品である。
【0020】
様々なセルロース繊維を本発明の方法に用いることができる。例証となるセルロース繊維は、これに限定されないが、たとえば木材や木材製品、木材パルプ繊維;綿からの、藁および草たとえば米およびエスパルトからの、サトウキビおよび葦たとえばき殻からの、竹からの、靭皮繊維をもつ茎たとえば黄麻、亜麻、ケナフ、インド大麻、リネンおよびラミーからの、ならびに葉繊維たとえばマニラ麻およびシザル麻からの非木材製紙繊維を含む。1つ以上のセルロース繊維を用いてもよい。好ましくは、用いられるセルロース繊維は木材起源である。適切な木材源は軟木源たとえば松、トウヒ、およびモミ、ならびに硬木源たとえば樫、楓、ユーカリ、ポプラ、ブナおよびハコヤナギを含む。
【0021】
セルロース繊維は農業廃棄物を含んでいてもよい。例は、これに限定されないが、藁、トウモロコシの茎、米の籾殻、小麦、大麦およびカラス麦の籾殻、ココナッツ殻、ピーナッツ殻、クルミ殻、黄麻、麻、きび殻、竹、亜麻、およびケナフ、およびこれらの組み合わせを含む。
【0022】
セルロース繊維を種々のスクリーン、たとえば30-メッシュまたは40-メッシュスクリーンを通して篩い分けし、様々な径の繊維を得てもよい。本発明の組成物に用いられる繊維の径は10〜100メッシュ、好ましくは40〜100メッシュの範囲である。
【0023】
本発明の組成物に用いられる木粉は軟木および硬木ならびにこれらの組み合わせを含む。好ましい木粉は樫および松であり、それぞれ、ウィスコンシン州、スコフィールドのAmerican Wood Fibersから樫4037(40メッシュ)および松402050(40メッシュ)として入手できる。他の好ましい木粉は楓である。
【0024】
好ましくは、本発明のポリマーセルロース繊維組成物は60〜40重量%のセルロース繊維を含む。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明のポリマー−セルロース繊維組成物は2〜4重量%の滑剤を含み、ポリマーは高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維は松の木粉である。
【0026】
他の好ましい実施形態において、本発明のポリマー−セルロース繊維組成物は3〜6重量%の滑剤を含み、ポリマーは高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維は樫の木粉である。
【0027】
好ましくは、本発明のポリマー−セルロース繊維組成物は40〜60重量%のポリマーを含む。
【0028】
本発明のポリマー−セルロース繊維組成物はさらに、組成物において有利に存在していてもよい添加剤たとえばカップリング剤、相溶化剤、または混合剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は材料の物理的、機械的、熱的特性の向上を達成するために、組成物の総重量ベースで0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%の量で存在していてもよい。好ましい相溶化剤はマレイン化ポリプロピレンである。他の好ましい相溶化剤はマレイン化HDPEである。
【0029】
特に好ましい添加剤は滑石であり、組成物の総重量ベースで2〜10%の量で存在してもよい。
【0030】
他の添加剤を用いることができ、粘性安定剤、無機充填剤、加工補助剤、および着色剤を含む。
【0031】
N,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類は各々のアルカノイル基に8〜14の炭素原子を独立に含み、以下の構造式をもつ。
【化1】

【0032】
ここで各々の-C(=O)R部分は8〜14の炭素原子を含み、R’はHまたはC1-8アルキルである。好ましいN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類は、N,N’-ビスオクタノイルエチレンジアミン、N,N’-ビスデカノイルエチレンジアミン、N,N’-ビスドデカノイルエチレンジアミン、N,N’-ビステトラデカノイルエチレンジアミンおよびこれらの組み合わせである。
【0033】
本発明の固形滑剤は噴霧冷却または小球化して、90〜150μm、好ましくは120〜140μmの径範囲をもつ粒子を形成することができる。これらの粒子はポリマー−セルロース繊維複合材に混入した場合により低い有効融点をもつこと、および複合材はより大きな粒径をもつ滑剤でできた複合材と対比してより速い速度で押出すことができることがわかっている。先述の粒径範囲内の固形滑剤の使用は、より均一な押出プロファイルの複合材をもたらす。噴霧冷却工程において、材料を融点を超えて加熱し、それから噴霧された細滴の固化を引き起こす冷却空気流内に噴霧する。
【0034】
本発明の他の実施形態は、ポリマー−セルロース複合材を調製する方法であり、以下の工程を含む。
【0035】
a)30〜70重量%のポリマーと、70〜30重量%のセルロース繊維と、各々のアルカノイル基に8〜14の炭素原子をもつN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物を含む1〜7重量%の滑剤との混和物を形成し、
b)工程(a)で得られた混合物を2重量%未満の水分レベルまで乾燥し、
c)工程(b)で得られた混合物を170℃以下の温度での押出し、
d)押出プロファイルを冷却チャンバーを通過させ、
e)押出材を切断して、収集する。
【0036】
乾燥工程(b)は、たとえば、10〜16時間の間、100〜120℃の温度下、680〜720mmHgの真空度で実施し、組成物の総重量ベースで2重量%未満の水分(水)含有量を得る。
【0037】
工程(d)の冷却チャンバーは有利には複数のウォータースプレーを備えているであろう。
【0038】
本発明の方法におけるセルロース繊維は好ましくは、樫、松および楓木材、藁、ともろこし茎、米の籾殻、小麦、大麦およびカラス麦の籾殻、ココナッツ殻、ピーナッツ殻、クルミ殻、黄麻、麻、きび殻、竹、亜麻、ケナフ、およびあらゆる前記のもののあらゆる組み合わせから成る群より選択される。
【0039】
セルロース繊維は好ましくは径が10〜100メッシュまで変化する繊維の混合物であることがわかっている。
【0040】
本発明の方法におけるポリマーは好ましくは高密度ポリエチレンである。
【0041】
本発明の方法におけるポリマー−セルロース繊維組成物は好ましくは60〜40重量%のセルロース繊維を含む。
【0042】
本発明の方法におけるポリマー−セルロース繊維組成物は好ましくは40〜60重量%のポリマーを含む。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施形態において、ポリマー−セルロース繊維組成物は2〜4重量%の滑材を含み、ポリマーは高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維は松の木粉である。
【0044】
本発明の方法の他の好ましい実施形態において、ポリマー-セルロース繊維組成物は3〜6重量%の滑材を含み、ポリマーは高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維は樫の木粉である。
【0045】
本発明のさらに他の実施形態は、上記した方法によって調製された押出組成物である。
【0046】
押出しに加えて、この発明の組成物は射出形成して、商業的に使用できる製品を生産してもよい。結果として生じる製品は、木材に似た外観をもち、鋸引き、鑢がけ、成形、挽き、締めおよび/または仕上げを自然木と同じやり方で実施できるであろう。シロアリ攻撃と同様に腐敗および腐食に対して耐性があり、たとえば、家の内側または外側の装飾成形品、写真のフレーム、家具、ポーチデッキ、窓成形品、窓部材、ドア部材、屋根システムおよび他のタイプの構造構材として使われてもよい。
【0047】
本発明のさらに他の実施形態は、下記式をもつ化合物の混合物の使用であり、
【化1】

【0048】
ここで各々の-C(=O)R部分は独立にC8-14アルカノイルであり、R’はHまたはC1-8アルキルであり、90〜150μm、好ましくは120〜140μmの粒径範囲をもち、ポリマー−セルロース繊維組成物中の滑剤としての使用である。
【0049】
好ましい使用において、-C(=O)R部分はカプリロイル(オクタノイル)、カプリノイル(デカノイル)、ラウロイル(ドデカノイル)およびミリストイル(テトラデカノイル)から成る群より独立に選択される。
【0050】
滑剤粒子の調製
滑剤を160〜180℃の温度および2344〜2413kpa(340〜350psi)の圧力で作動する、25/30SSノズルを用いた噴霧冷却法により調製した。この方法は、加熱速度100℃/minで、145〜155℃、好ましくはおよそ150℃の融点をもつ所望の固形滑剤粒子をもらたした。
【0051】
押出プロセス
全ての例において、組成物材料を10Lのヘンシェルミキサーで1800rpmにて約3分混合した。混合後、複合材を16時間の間、100℃の真空オーブンにて、約90.7〜96.0kPa(680〜720mmHg)の真空度で乾燥した。乾燥した組成物は30mm Werner and Pfleiderer、共回転二軸押出機の38.1×12.7mmダイを通して長方形プロファイルに押出した。供給部からダイへの押出機の設定温度プロファイルは140℃、150℃、150℃、150℃、140℃であった。組成物材料を約10kg/h〜20kg/hの範囲の設定供給速度でK-Tron S200容積式一軸供給機を用いて押出機に供給した。スクリュー速度を175rpmに設定した。押出プロファイルを、切断および収集の前に3組のウォータスプレーを含む0.65mの冷却チャンバーを通過させた。
【0052】
所要の押出トルク(最大トルクのパーセントで与えられる)および押出出力を、押出出力(kg/h)割ることの%トルクとして定義される「加工容易性」変数に結合する。区間3は押出機で最も高いせん断力の領域であり、高いせん断力による温度上昇が実際の温度を設定温度よりも高くすることがあるので、区間3の実際の温度に注目する。
【0053】
例1-3
HDPE-樫木粉
例1-3においては、押出可能な組成物は40%のHDPE共重合体の反応器粉体(Equister(登録商標)Petrothene(登録商標)LB0100−00)およびウィスコンシン州、スコフィールドのAmerican Wood Fibersから入手できる60%の樫4037(40メッシュ)を含む。
【0054】
対照組成物は組成物に別々に加えたおよそ1:1のEBSおよびZnStの混合物を含む(「分離混合」と呼ぶ)。
【0055】
表1は本発明の範囲内の組成物を示す。
【表1】

【0056】
例1
HDPE-樫木粉
この例では、様々な量の対照滑剤および滑剤Aを押出可能な組成物に加えた。11〜18kg/hの間の供給速度を用いたHDPE/樫粉末中のこれらの滑剤パッケージの結果を図1および図2に示す。
【0057】
加工容易性の値を図1に示す。滑剤AはEBS/ZnSt対照より33%優れた加工容易性の値を有していた。
【0058】
押出機の区間3の温度を図2に示す。滑剤Aは対照よりも13℃低い温度をもたらした。これは滑剤Aを含む組成物は、対照の滑剤に比べて顕著に良好な内部滑性およびそれゆえ少ないせん断力を与えることを示している。
【0059】
例2
HDPE-樫木粉
この例では、EBS/ZnSt対照を一定の充填レベルに維持したのに対して、滑剤Bを様々な充填レベルで評価した。滑剤Bは、エチレンジアミンと45〜51%のラウリン酸、17〜20%のミリスチン酸、および5〜10%のカプリル酸およびカプリン酸の両方を含む酸の混合物との反応生成物である。
【0060】
18kg/hの供給速度でのHDPE/樫粉末の結果を図3に示す。対照滑剤パッケージは2.5phcのEBSおよび2.5phcのZnStから成る。滑剤Bは3,4および5phcで評価した。滑剤の等しい総充填量(5phc)で、滑剤Bは、出力/%押出トルクで、ほぼ14%の増大を示した。4phcの滑剤Bに対する5phcの対照滑剤において、滑剤Bはわずかに高い出力/%押出トルクをもたらした。3phcの滑剤Bに対する5phcの対照滑剤(40%少ない滑剤)において、滑剤Bは等しい出力/%押出トルクをもたらした。
【0061】
例3
HDPE-樫木粉(および他の充填剤)
この例では、押出可能な組成物はTimberTechから得られた製品である。これはこの会社の滑剤を含まない市販の製品の1つである。これはHDPEと樫木粉を比率45:55および5〜10%の滑石を含むと考えられる。滑剤Bおよび滑剤BとPOE40ソルビトールヘキサタレート(sorbitol hexatallate)との混合物を4phcで材料に加え、混合物を14kg/hrで押出した。滑剤BのPOE40ソルビトールヘキサタレートに対する比率は9:1であった。結果を図4に示す。
【0062】
滑剤BとPOE40ソルビトールヘキサタレートとの混合物は滑剤B自身よりも6.6%高い出力をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1はHDPE/樫粉末複合材中の滑剤Aを含む組成物の加工容易性への効果を示す。
【図2】図2はHDPE/樫粉末複合材中の滑剤Aを含む組成物の区間3の温度への効果を示す。
【図3】図3はHDPE/樫粉末複合材中に種々の充填レベルで滑剤Bを含む組成物の加工容易性への効果を示す。
【図4】図4はHDPE/樫粉末/充填剤複合材中の滑剤BおよびPOE40ソルビトールヘキサタレートを含む組成物の加工容易性への効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜70重量%のポリマーと、70〜30重量%のセルロース繊維材料と、1〜7重量%の滑剤の混和物とを含み、前記滑剤は各々のアルカノイル基に独立に8〜14の炭素原子を含むN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物である、ポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項2】
滑剤が少なくとも1つのアルカノイル基に12の炭素原子を含む少なくとも1つのN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミンを含む、請求項1のポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項3】
N,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物が、それらのアルカノイル基の少なくとも1つに、それぞれ8,10,12および14の炭素原子を含む、各々のN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミンの少なくとも1つを含む、請求項1または2のポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項4】
N,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物中の最も豊富なアルカノイル基が12の炭素原子を含むアルカノイル基である、請求項1〜3のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項5】
滑剤が固体であり滑剤の粒径が90〜150μm、好ましくは120〜140μmである、請求項1〜4のいずれかのポリマー-セルロース繊維組成物。
【請求項6】
押出成形のあいだ、100℃/minの加熱速度での滑剤の有効融点が160℃より低い、請求項1〜5のいずれかのポリマー-セルロース繊維組成物。
【請求項7】
ポリマーが高密度ポリエチレンである、請求項1〜6のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項8】
セルロース繊維材料が、樫、松または楓木材から、藁、トウモロコシ茎または米の籾殻から、小麦、大麦またはカラス麦の籾殻から、ココナッツ、ピーナッツまたはクルミ殻から、黄麻、麻、きび殻、竹、亜麻、ケナフ、およびあらゆる前記のもののあらゆる組み合わせから誘導された繊維材料から選択される、請求項1〜7のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項9】
セルロース繊維が木材繊維である、請求項1〜8のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項10】
組成物が60〜40重量%のセルロース繊維を含む、請求項1〜9のいずれかのポリマー-セルロース繊維組成物。
【請求項11】
組成物が2〜4重量%の滑剤を含み、ポリマーが高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維が松の木粉である、請求項1〜10のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項12】
組成物が3〜6重量%の滑剤を含み、ポリマーが高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維が樫の木粉である、請求項1〜11のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項13】
組成物が40〜60重量%のポリマーを含む、請求項1〜12のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項14】
さらに2〜10重量%の滑石を含む、請求項1〜13のいずれかのポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項15】
押出ポリマー−セルロース組成物を調製する方法であって、
f)30〜70重量%のポリマーと、70〜30重量%のセルロース繊維と、各々のアルカノイル基に8〜14の炭素原子を含むN,N’-ビスアルカノイルエチレンジアミン類の混合物を含む1〜7重量%の滑剤との混和物を形成し、
g)工程(a)で得られた混合物を2重量%未満の水分レベルまで乾燥し、
h)工程(b)で得られた混合物を170℃を以下の温度で押出し、
i)押出プロファイルを冷却チャンバーを通過させ、
j)押出材を切断し、収集する
ことを含む方法。
【請求項16】
セルロース繊維が、樫、松、楓、藁、トウモロコシ茎、米の籾殻、小麦、大麦およびカラス麦の籾殻、ココナッツ殻、ピーナッツ殻、クルミ殻、黄麻、麻、きび殻、竹、亜麻、ケナフ、およびそれらの組み合わせである、請求項15による方法。
【請求項17】
セルロース繊維が10〜100メッシュのサイズで変化する繊維の混合物である、請求項15または請求項16の方法。
【請求項18】
ポリマーが高密度ポリエチレンである、請求項15〜17のいずれかによる方法。
【請求項19】
ポリマー−セルロース繊維組成物が60〜40重量%のセルロース繊維を含む、請求項15〜18のいずれかによる方法。
【請求項20】
ポリマー−セルロース繊維組成物が60〜40重量%のポリマーを含む、請求項15〜19のいずれかによる方法。
【請求項21】
ポリマー−セルロース繊維組成物が2〜4重量%の滑剤を含み、ポリマーが高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維が松の木粉である、請求項15〜20のいずれかによる方法。
【請求項22】
ポリマー−セルロース繊維組成物が3〜6重量%の滑剤を含み、ポリマーが高密度ポリエチレンであり、セルロース繊維が樫木材粉末である、請求項15〜21のいずれかによる方法。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれかの方法で得られた押出ポリマー−セルロース繊維組成物。
【請求項24】
下記式
【化1】

(ここで、各々の-C(=O)R部分は独立にC8-14アルカノイルであり、R’はHまたはC1-8アルキルである)を有し、90〜150μm、好ましくは120〜140μmの粒径範囲を有する化合物の使用であって、ポリマー−セルロース繊維組成物中の滑剤としての使用。
【請求項25】
-C(=O)R部分はカプリロイル、カプリノイル、ラウロイルおよびミリストイルをから成る群より独立に選択される、請求項24による使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−519119(P2008−519119A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539553(P2007−539553)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011944
【国際公開番号】WO2006/048332
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(592233462)ロンザ インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】