説明

漁網洗浄剤及び漁網洗浄方法

【課題】海洋汚染を発生させることなく漁網に付着した海藻類を良好に除去する漁網洗浄剤及び漁網洗浄方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄剤において、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物とすることにした。また、本発明では、漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄方法において、炭酸ナトリウムを含有する漁網洗浄剤に漁網を含浸させ、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物として、漁網から海藻類を除去することにした。さらに、本発明では、前記漁網洗浄剤に過炭酸ナトリウムを含有させることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄剤及び漁網洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、漁網は、海水中で使用される間に海藻類が付着しやすく、使用後に付着した海藻類等を除去する洗浄作業が必要となる。
【0003】
また、漁網のうちでも海苔等の海藻類の養殖で使用される養殖網では、養殖した海藻類を収穫した後に、養殖網に残存する海藻類を除去する洗浄作業が必要となる。
【0004】
そのため、従来においては、漁網に高圧で洗浄液を噴射して、漁網に付着した海藻類等を除去するようにしていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−112257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の漁網の洗浄においては、漁網から海藻類を完全に除去することが困難であり、洗浄後に残存する海藻類が腐敗して悪臭を発生するといった問題が起こっていた。
【0007】
また、漁網に付着した海藻類を有機洗浄剤で溶解させる方法も考えられるものの、洗浄に使用した有機洗浄剤が漁網に残留してしまい、残留した有機洗浄剤が次回の使用時に海中を汚染してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄剤において、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物とすることにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、過炭酸ナトリウムを含有することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄方法において、炭酸ナトリウムを含有する漁網洗浄剤に漁網を含浸させ、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物として、漁網から海藻類を除去することにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項3に係る本発明において、前記漁網洗浄剤が過炭酸ナトリウムを含有することにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、炭酸ナトリウムを含有する漁網洗浄剤に漁網を含浸させ、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物として、漁網から海藻類を除去することにしているために、残留物質による海洋汚染を発生させることなく、漁網から海藻類を良好に除去することができる。
【0014】
特に、漁網洗浄剤に過炭酸ナトリウムを含有させた場合には、漁網の漂白、除菌、消臭をも同時に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る漁網洗浄剤及び漁網洗浄方法の具体的な構成について説明する。
【0016】
漁網洗浄剤は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含有したものを用い、好ましくは、過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)を含有したものを用いる。
【0017】
たとえば、漁網洗浄剤は、粉末状の炭酸ナトリウム(Na2CO3)と粉末状の過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)とを重量比で1:1の割合で混合し、これを水に溶かして水溶液としたものを用いることができる。
【0018】
漁網洗浄方法としては、上記漁網洗浄剤を貯留した容器に漁網を投入し、漁網を漁網洗浄剤に所定時間(たとえば10分間)含浸させる。
【0019】
漁網に付着した海藻類は、アルギン酸を多量に含有しており、このアルギン酸は、カルシウム等の多価の陽イオンと結合してアルギン酸カルシウム等の不溶性の塩を形成している。
【0020】
そして、海藻類が付着した漁網を炭酸ナトリウムを含有する漁網洗浄剤に含浸させると、アルギン酸カルシウム等のアルギン酸化物となって不溶性の塩を形成する陽イオンが炭酸ナトリウムに含有されるナトリウムイオンとイオン交換による置換が行われ、その結果、アルギン酸ナトリウム等の水溶性のアルギン酸化物となり、漁網洗浄剤中に溶出させることができる。
【0021】
これにより、漁網から付着した海藻類を良好に除去することができる。しかも、漁網洗浄剤に有機物質を含有していないために、洗浄後に漁網に有機物質が残留することがなく、次回の使用時に有機物質が海中に流出するおそれがなく、海洋汚染を発生させることがない。
【0022】
特に、漁網洗浄剤に過炭酸ナトリウムを含有する場合には、水溶液化させた際に過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)が炭酸ナトリウム(Na2CO3)と過酸化水素水(H2O2)とに分離し、さらに、過酸化水素水(H2O2)が水(H2O)と酸素(O2)とに分離することになる。
【0023】
そして、過炭酸ナトリウムから分離した炭酸ナトリウムは、上記したようにイオン交換によって不溶性のアルギン酸化物を水溶性のアルギン酸化物とし、漁網から海藻類を除去することができる。
【0024】
しかも、過炭酸ナトリウムから最終的に分離した酸素は、その酸化力によって漁網を漂白し、除菌し、消臭することができる。
【0025】
以上に説明したように、本発明では、炭酸ナトリウムを含有する漁網洗浄剤に漁網を含浸させ、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物として、漁網から海藻類を除去することにしているために、残留物質による海洋汚染を発生させることなく、漁網から海藻類を良好に除去することができる。
【0026】
特に、漁網洗浄剤に過炭酸ナトリウムを含有させた場合には、漁網の漂白、除菌、消臭をも同時に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄剤であって、
海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物とすることを特徴とする漁網洗浄剤。
【請求項2】
過炭酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の漁網洗浄剤。
【請求項3】
漁網に付着した海藻類を除去するための漁網洗浄方法であって、
炭酸ナトリウムを含有する漁網洗浄剤に漁網を含浸させ、海藻類に含有される不溶性のアルギン酸化物を炭酸ナトリウムで置換反応させて水溶性のアルギン酸化物として、漁網から海藻類を除去することを特徴とする漁網洗浄方法。
【請求項4】
前記漁網洗浄剤が過炭酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項3に記載の漁網洗浄方法。

【公開番号】特開2011−45270(P2011−45270A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195108(P2009−195108)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(596047056)メイワ機材有限会社 (1)
【Fターム(参考)】