説明

漏水防止用安全弁を備えた旅客機搭載用スチームオーブン

【課題】旅客機に搭載される機内食加熱用スチームオーブンにおいて、スチーム発生器に水を供給する水供給通路内に設けられた調整弁が、水垢等により固着したり、駆動機構、電源系統あるいは制御系統の異常により全開状態になったとき、所定時間以上の水供給の継続に伴い作動する漏洩防止用安全弁により、水供給通路を自動的に閉鎖し、旅客機厨房内に水噴出が継続し、水浸しになるのを確実に防止する。
【解決手段】スチーム発生器に水を供給する水供給通路内に設けられた調整弁の上流又は下流に、調整弁が所定の駆動信号で正常に開閉作動している間は全閉せず、かつ、調整弁が全開異常となったとき、水流により徐々に閉動作し、所定時間経過後に水供給通路を全閉状態に維持する漏洩防止用安全弁を設けることにより、スチームオーブンが電気的制御によることなく、単体として水噴出を自動的に停止する機構を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームオーブン、更に詳細には、旅客機に搭載され、機内食を加熱・加湿して、機内食として供するためのスチームオーブンに関する。
【背景技術】
【0002】
旅客機に搭載されるスチームオーブンでは、調理室の内部に滴下した水を送風機によって霧状態とし、その後、調理室のヒーターが高温であることに起因して、この霧を加熱することにより蒸気が発生される。
調理室内の圧力は比較的高圧であるため、給水は機体に配備されたポンプ等によって強制的に行う必要があり、調理室の内部で発生される蒸気の量を制御するために、調理室の内部に温度センサが設けられ、測定された調理室内の温度が所定以下に下がったときは、調整弁により水の供給量を増加させて蒸気の量を増加させ、逆に、所定以上に上がったときは、水の供給量を減少させて蒸気の量を減少させる。
この種のスチームオーブンは、下記の特許文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,209,941号明細書
【特許文献2】特開2003−227612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、このようなスチームオーブンにおいては、高精度な加熱・加湿を実現するため、調整弁を電子制御装置の駆動信号で開閉駆動し、蒸気排出孔出口付近に設けた温度センサの検出値に基づいて、所定の蒸気温度が得られるように、駆動信号、すわなち、開動作の回数頻度をフィードバック制御することが行われている。
しかし、万一、調整弁が水垢等により固着したり、駆動機構、電源系統あるいはCPUの暴走等、制御系統の異常により全開状態になったとき、水供給管が開放状態を維持することとなり、加圧された水が調理室内に噴出し続け、乗務員がこれに気付かずスチームオーブンの扉を開けた際には、この水が一気にスチームオーブン外に流出し、加えて客室乗務員がパニックを起こした場合など、元栓の閉鎖が遅れ、航空機内の厨房を水浸しにしたり、最悪の場合、旅客機の電気系統をショートさせ、重大な事故につながる可能性がある。
そのため、調整弁あるいは制御系統を二重にしたり、水供給管内に継続的な水流が発生しているのを電気的に検出して、別途設けたソレノイド式の安全弁等により水供給通路を閉鎖することなどが検討されているが、コストアップを招くとともに、このような電気的に作動する安全装置を設けても、電源異常等には、結局、調整弁と同様な異常発生の可能性を否定できず、逆に、安全弁が誤作動により全閉すると、調整弁が正常に作動するにもかかわらず、水供給通路が全閉となって、機内食の加熱が不可能になるなどの不都合が発生する。
万一にも発生し得る重大事故を懸念する旅客機製造メーカーは、電気的に作動する安全装置では、上述のような異常発生を確実に防止することができないのではないかという一抹の不安を払拭することができず、スチームオーブンの仕様として、なんらの電気回路に依存することなく、調整弁が全開異常となったときでも、確実に水の噴出を短時間で停止させることのできる機構を備えることが強く求められている。
【0005】
本発明の目的は、こうした旅客機製造メーカーの要求に対応すべく開発されたものであり、旅客機に搭載される機内食加熱用スチームオーブンにおいて、スチーム発生器に水を供給する調整弁が、水垢等により固着したり、駆動機構、電源系統あるいは制御系統の異常により全開状態になったとき、所定時間以上の水供給の継続に伴い作動する漏水防止用安全弁を水供給管内に設け、水供給管を自動的かつ確実に閉鎖し、旅客機の厨房内で水噴出が継続し、水浸しになるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の実施形態によれば、調理室内部のスチーム発生用給水ノズルに給水する水供給管に設けた調整弁を、電子制御装置の駆動信号で開閉駆動し、該駆動信号の開閉タイミングを調整することにより蒸気発生量を制御するようにした、旅客機内に設置される機内食加熱用のスチームオーブンにおいて、前記水供給管内に開口部を有する弁座を設け、前記調整弁が開状態となったとき、水供給管内に発生する水流により、前記弁座開口部を閉鎖する方向に移動するとともに、前記調整弁が閉状態になったとき、その自重あるいはスプリングにより、前記弁座開口部を開放する方向に復帰する漏水防止用安全弁を配設し、前記調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、前記漏水防止用安全弁により前記弁座開口部を完全に閉鎖し、以後、上流側の水圧によりこの閉鎖を維持し、水の噴出を防止するようにした。
【0007】
本発明の第2の実施形態によれば、漏水防止用安全弁は球状弁であり、その水供給管上流側の半球部分が水供給管内の水流を受ける受圧面を形成し、かつ水供給管下流側の半球部分が所定間隙を介して、弁座開口部を閉鎖する閉鎖面となるようにした。
【0008】
本発明の第3の実施形態によれば、水供給管の内部に、水流通孔を備えた上流側の固定板、下流側の押圧板及びこれらを連結するスプリングが設けられており、水供給管に固定された固定板にスプリングを介して押圧板を連結し、調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、押圧板に作用する水流により、押圧板が前記スプリングの復元力に抗して漏水防止用安全弁を移動させることにより、弁座開口部を閉鎖し、以後、上流側の水圧によりこの閉鎖を維持し、水の噴出を防止するようにした。
【0009】
本発明の第4の実施形態によれば、漏水防止用安全弁は、底面が水供給管の上流側に対向する円筒部と、該円筒部に一体形成され、軸方向ガイドの水供給管の下流側に設けられた弁座開口部に対向する円錐部分とからなり、円筒部は、水供給通路内に設けられ、かつ、水流を確保するガイドにより案内され、調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、その円筒部の底面に作用する水流により、円錐部の側表面により、弁座開口部を閉鎖するようにした。
【0010】
本発明の第5の実施形態によれば、弁座開口部を有するとともに、この弁座開口部から水供給管の上流側に向けて膨出する膨出部を設け、該膨出部に漏水防止用安全弁を収納した。
【0011】
本発明の第6の実施形態によれば、少なくとも漏水防止用安全弁及び弁座開口部の接触部表面に自己潤滑性のある樹脂を塗布した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の実施形態によれば、調理室内部のスチーム発生用給水ノズルに給水する水供給通路内に設けた調整弁を、電子制御装置の駆動信号で開閉駆動し、該駆動信号の開閉タイミング、すなわち調整弁の開動作頻度を調整することにより蒸気発生量を制御するようにした、旅客機内に設置される機内食加熱用のスチームオーブンにおいて、前記水供給通路内に開口部を有する弁座を設け、前記調整弁が開状態となったとき、水供給通路内に発生する水流により、前記弁座を閉鎖する方向に移動するとともに、該調整弁が閉鎖状態になったとき、その自重あるいはスプリングにより、前記弁座開口を開放する方向に復帰する漏水防止用安全弁を配設し、前記調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、前記漏水防止用安全弁により前記弁座開口を完全に閉鎖し、上流側の水圧によりこの閉鎖状態を維持することにより、たとえ、調整弁が、水垢等により固着したり、電源あるいは電子制御装置の異常により、正常範囲を超えて全開を維持したときでも、漏水防止用安全弁に作用する水流により、自重あるいはスプリングの反発力に抗して、漏水防止用安全弁が弁座に向けて移動し、スプリングの直線部が水供給管の弁座下流側に収納されて、弁座が漏水防止用安全弁により閉鎖され、確実に水の噴出を防止することができる。
【0013】
本発明の第2の実施形態によれば、漏水防止用安全弁を球状弁とし、その水供給通路上流側の半球部分が水供給通路内の水流を受ける受圧面を形成し、かつ水供給下流側半球部分が所定間隙を介して、前記弁座開口を閉鎖する閉鎖面となるようにすることにより、請求項1に係る発明を、よりシンプルな構造で、かつ低コストで実現することができる。
【0014】
本発明の第3の実施例によれば、水供給管の内部に、水流通孔を備えた上流側の固定板、下流側の押圧板及これらを連結するスプリングを設け、水供給管に固定された固定板にスプリングを介して押圧板を連結し、調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、押圧板に作用する水流により、押圧板がスプリングの復元力に抗して漏水防止用安全弁を移動させ、弁座開口部を閉鎖し、以後、上流側の水圧によりこの閉鎖を維持し、水の噴出を防止するようにしたことにより、漏洩防止用安全弁を、水平方向にも設置することができる。
【0015】
本発明の第4の実施形態によれば、漏水防止用安全弁を、底面が水供給管の上流側に対向する円筒部と、該円筒部に一体形成され、水供給管の下流側に設けられた弁座開口部に対向する円錐部分とにより構成し、この円筒部を、水供給通路内に設けられ、かつ、水流を確保するガイドにより軸方向に案内させ、調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、その円筒部の底面に作用する水流により、円錐部の側表面により、前記弁座開口部を閉鎖することにより、調整弁の全開異常の際、ガイドにより漏水防止用安全弁を円滑かつ正確に作動させることができ、また、円筒部の直径を選定することにより、水流を受ける受圧面を容易に調整することができる。
【0016】
本発明の第5の実施形態によれば、前記弁座開口部を有するとともに、この弁座開口部から水供給管の上流側に向けて膨出する膨出部を設け、該膨出部に前記漏水防止用安全弁を収納することにより、漏水防止用安全弁の周囲に十分な流路を確保でき、水供給に与える抵抗を最小限にすることができる。
【0017】
本発明の第6の実施形態によれば、少なくとも前記漏水防止用安全弁及び弁座開口部の接触部表面に自己潤滑性のある樹脂を塗布することにより、漏水防止用安全弁をより長期にわたりより確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明のスチーム発生器を示す図である。
【図2】図2は、本発明のスチームオーブンの横断面を示す図である。
【図3】図3は、本発明のスチームオーブンに使用するラック示す図である。
【図4】図4は、本発明のスチーム発生器を背面からみた図である。
【図5】図5は、本発明の給水系統を示す図である。
【図6】図6は、本発明の調整弁12a、12bに出力される駆動信号の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施例を示す図である。
【図8】図8(a)ないし図8(c)は、本発明の第2実施例を示す図であり、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図、図8(c)は、図8(a)のB−B断面図を示す。
【図9】図9は、本発明の第3実施例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
(スチームオーブンの全体構成)
図1、図2から明らかなように、本発明によるスチームオーブン1は、機内食等の食品が配置される調理室2と、この調理室2の上部に設けられた制御操作部3からなる。
調理室2の背面には、食品の調理、特に加熱や加湿を行うために必要な装置を収容する収容ボックス4が設けられており、これらの装置は制御操作部3内の電子制御装置により制御される。
制御操作部3の前面には、オペレータがスチームオーブン1を操作するために必要なスイッチ等31が多数設けられている。
【0020】
食品は、調理室2の前面に設けられた扉5を通じて、図3に示されるようなラック6に複数段載せられ、調理室2の内部に自由に出し入れできるようになっている。
なお、図3の7は、キャセロールを示す。
次に、主に図1、図2及び図4を参照して、各部をより詳細に説明する。
スチームオーブン1の調理室2内に蒸気を発生させるスチーム発生器は、給水ノズル8、ファン9、オーブンヒータ10等から構成されている。
図1、2に示すとおり、給水ノズル8は、調理室2の後部内壁2aからその内部に突出した状態で設けられている。この給水ノズル8は、調理室2の外部からその内部に水を導くもので、調理室2を貫通しているが、調理室2の内部と外部(背面)の境界は密閉状態で隔てられている。
【0021】
収容ボックス4内部の示す図4を参照すると、給水ノズル8の後端部は、水供給管11のうち、やや斜め下方に延びる上部水供給管11aの一端に結合されており、この上部水供給管11aの他端は、ジョイント11bを介して、収容ボックス4の下方に設けられたプラグ11cに連結される下部水供給管11dの上端に接続されている。
なお、上部水供給管11a及び下部水供給管11dは、直径2.5φ程度のパイプであり、また、図5に示されるように、プラグ11cには、調理室2の外部に設けた貯水タンクから水を吸入し、加圧送水するポンプに配管で接続されている。ポンプから加圧送水された水は、プラグ11c、下部水供給管11d,調整弁12b,12a、ジョイント11b、そして、上部水供給管11aを介して、給水ノズル8から、調理室内に噴射されるようになっている。
【0022】
図1に示されるように、デルタ結線された3本のオーブンヒータ10が、調理室2の後部内壁2aから多少離した状態で設けられており、調理室2の内部を加熱するとともに、給水ノズル8からオーブンヒータ10に噴射された水を蒸気に変える。
これらのオーブンヒータ10は、給水ノズル8から噴射された水がオーブンヒータ10の端部の隙間を通過し、オーブンヒータ10の最下側あるいはその近傍に落下するような形状をしている。
各オーブンヒータ10の端部は、調理室2の外部(背面)に設けた電気供給源(図示されていない)に接続されており、これらの各端部は調理室2を貫通した状態で設けられているが、調理室2の内部と外部(背面)の境界は密閉状態で隔てられているため、調理室2内の蒸気がこれらから漏れることはない。
【0023】
環状のファン9は遠心式のものであり、オーブンヒータ10によって取り囲まれた状態で、調理室2のほぼ中心に設けられている。ファン9は、その中心部でナットによって、調理室2を貫通するモータ13のモータ軸にしっかりと固定されている。
モータ13の作動によってファン9が回転すると、ファン9の中心部付近から取り込まれた空気は、その外側周囲に配置された多数の羽根の働きによってその周囲に噴出され、この結果、ファン9を取り囲むようにして配置されたオーブンヒータ10の熱と蒸気は調理室2内に拡散される。
【0024】
なお、図2から明らかなように、ファン9はその前面全体をバッフルプレート14によって覆われているが、バッフルプレート14の中心部に設けた複数の空気取込口(図示されていない)を通じて空気を取り込むことができる。
一方、ファン9によって噴出された空気は、バッフルプレート14によって妨げられるため、図2の破線矢印Bで示されるように、バッフルプレート14と調理室2の上下左右の内壁との隙間から調理室2の内部に噴出される。このファン9の働きによって調理室2内の空気は攪拌され、蒸気を含んだ熱風が調理室内に配置されたすべての食品に行き渡る。
【0025】
オーブンヒータ10の端部の隙間に、後部内壁2aから突出した状態で、ファン9によって生じた熱と蒸気がちょうど通過するような位置に調理室温度センサ16が設けられている。
【0026】
オーブンヒータ10とファン9の間に、調理室2の内部に開放された状態で、蒸気通路17の入口17aが設けられている。調理室2の内部で発生された蒸気は、図2の矢印Cに示すように、この入口17aから、やや斜め上方に延びる蒸気通路17を通ってスチームオーブン1の外部に排出される。
これら入口17a、蒸気通路17は、常時開放され、調理室2の内部とスチームオーブン1の外部は、常時連通された状態とされ、したがって、調理室2は常に外気に開放されている。
【0027】
蒸気通路17の蒸気排出口17b近傍に、蒸気温度センサ18が設けられ、蒸気排出口17bから排出される蒸気の温度を測定し、この蒸気温度センサ18の検出値は、調理室温度センサ16とともに制御操作部4の電子制御装置に伝達され、電子制御装置は、これらの検出値に応答して、後述するように、調整弁12a、12bを駆動する駆動信号、すなわち開動作頻度を調整し、給水ノズル8を通じて給水され、調理室2の内部に滴下される水の量を調整する。
なお、蒸気温度センサ18は、必ずしも蒸気排出口17bの近傍に設ける必要はなく、蒸気通路17の中間等に設けてもよい。ただし、排出される蒸気は蒸気排出口17bの近傍で最も落ち着くことから、蒸気温度を正確に測定するにはこの付近で測定するのが好ましい。
【0028】
(第一実施例)
ここで、調整弁12a、12bによる蒸気発生のための水供給量制御について詳述する。
前述のように、調理室2内部に設けられた給水ノズル8に給水する水供給管11には、旅客機内の貯水槽からポンプ等を介して加圧された水が供給されるようになっている。
図5に示されるように、ポンプの下流側に設けられた調整弁12a、12bは、制御操作部4内の電子制御装置の駆動信号により開閉制御される常時閉形のソレノイド弁であり、開動作頻度を増加させることにより、給水ノズル8から噴射される水の供給量を増量させ、逆に開動作頻度を減少させることにより、水の供給量を減量させることができる。
ここで、図6に、電子制御装置から出力される調整弁12a、12bの駆動信号の例が図示されており、調理期間1においては、調整弁12aに対し、終始全開を維持する全開信号が出力され、調整弁12bに対し、開動作頻度が所定の値となるよう、駆動信号が与えられる。
一方、調理期間1の調理が終了し、次に行う調理期間2においては、調整弁12bに対し、終始全開を維持する全開信号が出力され、調整弁12aに対し、開動作頻度が所定の値となるよう、駆動信号が与えられる。
このように、調整弁12a、12bを、交互に切り換えて、開閉動作を行わせることにより、ソレノイド弁としての寿命を高めている。
なお、高精度な加熱が必要とされない場合は、蒸気が不足したとき、例えば一定の開動作信号で、調整弁12a、12bの一方を駆動し、蒸気が十分に満たされているときは、この調整弁を常時オフ(閉)とするような制御を行ってもよい。
なお、この実施例では、寿命を高めるため、調整弁を2個設けているが、高寿命のソレノイド弁を採用した場合は、1個でも問題はない。
【0029】
一方、水供給管11のジョイント11bの下流で鉛直方向に延びる部分には、調整弁12a、12bの下流側に位置して図5にみられるような、膨出部11eが設けられ、図7にみられるように、この膨出部11eの内部に、ステンレス等で形成された水より比重が大きい球状の漏水防止用安全弁19が収容されている。
スチームオーブン1を使用しないときは、調整弁12a、12bは常時閉状態を維持しているため、漏水防止用安全弁19に水流が作用することはなく、その自重により、膨出部11eの底部に着地し、膨出部11e上端の水供給管11のジョイント11bとの接続部に設けられた弁座11fの開口部11g(図7参照)は全開状態となっている。
一方、スチームオーブン1の使用を開始し、必要な水蒸気を発生させるため、調整弁12a、12bのいずれかに全開信号、他方に所定の駆動信号が供給されると、調整弁12a、12bがともに開状態の間水が流れ、水供給管11の最下流に接続された給水ノズル8から水が噴出され、ファン9に水が滴下され、その外周に設けられたヒーター10に霧状になって吹き付けられ、瞬時に水蒸気となって、調理器2内に供給されることになる。
【0030】
その際、水流は、球状の漏水防止用安全弁19と膨出部11eの内壁との間を流れるが、漏水防止用安全弁19の上流側(図7では下側)の半球状表面には、ポンプからの加圧された水流が作用し、上流側の半球状表面が受圧面となって、漏水防止用安全弁19は、徐々に、膨出部11e上端の弁座11fの開口部11gに向かい上昇することになる。
しかし、次の調整弁12a、12bのいずれか一方への閉鎖信号により、調整弁12a又は12bの一方が再び閉鎖されるので、漏水防止用安全弁19に作用する水流が停止し、漏水防止用安全弁19の自重により再び膨出部11eの底部に復帰する。
球状の漏水防止用安全弁19の感圧特性は、漏水防止用安全弁19の半径(受圧面積)、比重、さらには漏水防止用安全弁19と膨出部14の内壁との間隙等により変化するが、これらは、調整弁12a、12bが正常に作動している間は、上述した挙動を繰り返し、前記弁座11fの開口部11gを封鎖することには到らないように選定されており、水供給になんら影響を及ぼさない。
【0031】
しかし、調整弁12a又は12bの一方が水垢等により固着したり、その両者が電源あるいは電子制御装置の異常等により、たとえばオン(開信号)が正常範囲を超えて継続し、全開を維持したときは、漏水防止用安全弁19は弁座11fの開口部11gに向かって上昇を続け、ついには漏水防止用安全弁19の下流側(図7では上側)の半球状表面が、開口部11gを閉止し、その後は漏水防止用安全弁19の上流側に作用する加圧された水の圧力により閉止状態が維持され、調整弁12a又は12bの全開異常による水の噴出を、所定時間後に確実に防止することができる。
【0032】
(第2実施例)
第1実施例では、水より比重の大きい球状の漏水防止用安全弁19を用いて、調整弁12a、12bが正常に作動する間、調整弁12a又は12bの閉鎖時に自重により弁座11fの開口部11gを閉鎖しないよう、下方に復帰するようにしたが、図8に示すように、漏水防止用安全弁19Aを比重の大きい素材(例えばスレンレススチール)で構成し、水流通孔20aを備えた固定板20(図8−(b)参照)、押圧板21及びスプリング22により構成した押圧装置により、調整弁12a、12bが所定時間以上開状態を継続したときのみ、押圧板21に作用する水流により、スプリング22に抗して、弁座11fの開口部11gを完全に閉鎖するようにしてもよい。
すなわち、スプリング22の上流端22a(図8では下端)は、固定板20に固定されており、スプリング22の内部に、押圧板21のシャフト部21aが挿通され、スプリング22の下流端22b(図8では上端)は、押圧板21の下面に連結されている。押圧板21も外周に水流通孔21a(図8−(c)参照)を備えており、押圧板20の下流側表面(図8では上側表面)の中央に、水流がまったく作用しない状態で、漏水防止用安全弁19Aが着地する半球状の凹部21bが設けられている。
この状態で、漏水防止用安全弁19Aに重力や振動が作用しても、押圧板21の半球状の凹部21bと、膨出部11eの上面内壁との間に形成される空間内に留まるよう、漏水防止用安全弁19Aの半径、半球状の凹部21b,及び膨出部11e上面の内壁の形状等が定められている。
前述のように、調整弁12a、12bが正常に作動している間は、漏水防止用安全弁19Aはその自重により、半球状の凹部21b内に位置し、押圧板21は、水流通路20aを介して断続的な水流を受け、スプリング22の作用により、漏水防止用安全弁19Aを、弁座11fに向けて接近させたり、離隔させたりすることを繰り返すが、漏水防止用安全弁19Aが弁座11fの開口部11gを閉鎖するには到らない。
しかし、調整弁12a又は12bの一方が水垢等により固着したり、その両者が電源あるいは電子制御装置の異常等により、たとえばオン(開信号)が正常範囲を超えて継続し、全開を維持したときは、継続的に作用する水流により、押圧板21は、スプリング22の復元力に抗して弁座11fの開口部11gに向って移動し、漏水防止用安全弁19Aを弁座11fの開口部11gに向けて移動させ、弁座11fの開口部11gを閉止する。
その後は押圧板21に作用する水圧により閉止状態が維持され、第1実施例と同様に、調整弁12a、12bの全開異常による水の噴出を、所定時間後に確実に防止することができる。
この実施例によれば、押圧板21に継続的に作用する水流により、スプリング22の復元力に抗して、漏水防止用安全弁19Aを移動させ、弁座11fの開口部11gを閉鎖させるものであるから、感圧特性は、主として受圧面の面積すなわち押圧板21の面積及びスプリング15の復帰力(弾性係数)により決定され(漏水防止用安全弁19Aを鉛直方向に作動するよう配置した場合は、漏水防止用安全弁19Aの重量、浮力等を加味する必要がある)、膨出部11eを鉛直方向に限らず、水平方向に配置することもできる。
なお、漏水防止用安全弁19Aを押圧板21と一体的に結合してもよい。
【0033】
(第3実施例)
また、漏水防止用安全弁を必ずしも球状とする必要はなく、図9に示すように、円筒部23aと、弁座11fに対向する円錐形状部23bとから構成し、この円筒部23aを、水供給管11の内部に設けたガイド24により軸方向に案内するようにしてもよい。
すなわち、ガイド24は、水流下流側(図9では上方)が、膨出部11e内面に設けられた弁座11fの外周に取り付けられており、側面に水流を確保するスリットあるいは編み目、底面に漏水防止用安全弁23の脱落を防止するストッパ24bを有するガイド24により案内させ、円筒部23aの底面で水流を受け、調整弁12a、12bの全開異常時、円錐形状部23bにより弁座11fの開口部11gを閉鎖するように構成する。
このようにすれば、ガイド24により漏水防止用安全弁23を円滑かつ正確に作動させることができ、また、円筒部23aの直径を選定することにより、水流を受ける受圧面を容易に調整することができる。
【0034】
第1実施例ないし第3実施例では、調整弁12a、12bの下流側に、膨出部11e及び漏水防止用安全弁を設けたが、上流側に設けても差し支えない。
また、水流が確保できる限り、必ずしも膨出部11eを形成することなく、第10図に示すように、漏水防止用安全弁19の径を水供給管11の径より小さくし、水供給管11の内部に、漏水防止用安全弁19の径より小さい径の弁座11f、及び落下を防止するフランジ25を設け、漏水防止用安全弁19を弁座11fとフランジ25の間に挿入するようにしてもよい。
また、少なくとも、漏水防止用安全弁と弁座11fとの接触部分表面に自己潤滑性のある樹脂等を塗布しておけば、さらに作動の信頼性を高めるとともに、高寿命化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、旅客機用スチームオーブンに適用することにより、スチーム発生器に水を供給する水供給通路内に設けられた調整弁が、水垢等により固着したり、駆動機構、電源系統あるいは制御系統の異常により全開状態になったとき、所定時間以上の水供給の継続に伴い作動する漏水防止用安全弁により、水供給通路を自動的に閉鎖し、旅客機厨房内に水噴出が継続し、水浸しになるのを確実に防止することができ、信頼性の高い旅客機用スチームオーブンを提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・スチームオーブン
2・・・・調理室
3・・・・制御操作部
4・・・・収容ボックス
5・・・・扉
6・・・・ラック
7・・・・キャセロール
8・・・・給水ノズル
9・・・・ファン
10・・・オーブンヒータ
11・・・水供給管
11e・・膨出部
11f・・弁座
11g・・開口部
12a、12b・・・調整弁
13・・・モータ
14・・・バッフルプレート
16・・・調理温度センサ
17・・・蒸気通路
18・・・蒸気温度センサ
19、23・・・漏洩防止用安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理室内部のスチーム発生用給水ノズルに給水する水供給管に設けた調整弁を、電子制御装置の駆動信号で開閉駆動し、該駆動信号の開動作頻度を調整することにより蒸気発生量を制御するようにした、旅客機内に設置される機内食加熱用のスチームオーブンにおいて、
前記水供給管内に開口部を有する弁座を設け、前記調整弁が開状態となったとき、水供給管内に発生する水流により、前記弁座開口部を閉鎖する方向に移動するとともに、前記調整弁が閉状態になったとき、その自重あるいはスプリングにより、前記弁座開口部を開放する方向に復帰する漏水防止用安全弁を配設し、
前記調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、前記漏水防止用安全弁により前記弁座開口部を閉鎖し、以後、上流側の水圧によりこの閉鎖を維持し、水の噴出を防止するようにしたことを特徴とするスチームオーブン。
【請求項2】
請求項1記載のスチームオーブンにおいて、前記漏水防止用安全弁は球状弁であり、その水供給管上流側の半球部分が水供給管内の水流を受ける受圧面を形成し、かつ水供給管下流側の半球部分が所定間隙を介して、前記弁座開口部を閉鎖する閉鎖面となるようにしたことを特徴とするスチームオーブン。
【請求項3】
請求項1記載のスチームオーブンにおいて、前記水供給管の内部に、水流通孔を備えた上流側の固定板、下流側の押圧板及びこれらを連結するスプリングが設けられており、前記水供給管に固定された前記固定板に前記スプリングを介して前記押圧板を連結し、前記調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、前記押圧板に作用する水流により、前記押圧板が前記スプリングの復元力に抗して前記漏水防止用安全弁を移動させることにより、前記弁座開口部を閉鎖し、以後、上流側の水圧によりこの閉鎖を維持し、水の噴出を防止するようにしたことを特徴とするスチームオーブン。
【請求項4】
請求項1記載のスチームオーブンにおいて、前記漏水防止用安全弁は、底面が前記水供給管の上流側に対向する円筒部と、該円筒部に一体形成され、前記水供給管の下流側に設けられた弁座開口部に対向する円錐部分とからなり、前記円筒部は、水供給通路内に設けられ、かつ、水流を確保するガイドにより軸方向に案内され、前記調整弁が所定時間以上開状態を継続したときのみ、その前記円筒部の底面に作用する水流により、前記円錐部の側表面により、前記弁座開口部を閉鎖するようにしたことを特徴とするスチームオーブン。
【請求項5】
請求項1ないし3記載のスチームオーブンにおいて、前記弁座開口部を有するとともに、この弁座開口部から水供給管の上流側に向けて膨出する膨出部を設け、該膨出部の内部に前記漏水防止用安全弁を収納したスチームオーブン。
【請求項6】
請求項1ないし4記載のスチームオーブンにおいて、少なくとも前記漏水防止用安全弁及び弁座開口部の接触部表面に自己潤滑性のある樹脂を塗布したスチームオーブン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−210118(P2010−210118A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54789(P2009−54789)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000132013)株式会社ジャムコ (53)