潜像印刷物
【課題】 本発明は、基材上に形成した第一の画線の上に、カラーフリップフロップ性を有する透明なインキで形成した盛り上がりを有する画線を重ね合わせて形成することで、浅い観察角度と深い観察角度の両方でそれぞれ異なる潜像を視認することが可能な潜像印刷物に関する。
【解決手段】 基材の上に、基材の色と異なるインキにより第一の印刷層を印刷し、その上に、カラーフリップフロップ性のインキにより、画線面積率の差異で形成される第一の画像と、位相の差異で形成される第二の画像から成る第二の印刷層を形成する。光源、印刷物及び観察者の位置関係によって、正反射光領域で第一の画像が視認され、第一の拡散反射光領域で第一の印刷層が視認され、第二の拡散反射光領域で第二の画像が視認される。
【解決手段】 基材の上に、基材の色と異なるインキにより第一の印刷層を印刷し、その上に、カラーフリップフロップ性のインキにより、画線面積率の差異で形成される第一の画像と、位相の差異で形成される第二の画像から成る第二の印刷層を形成する。光源、印刷物及び観察者の位置関係によって、正反射光領域で第一の画像が視認され、第一の拡散反射光領域で第一の印刷層が視認され、第二の拡散反射光領域で第二の画像が視認される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に万線を形成し、カラーフリップフロップ性を備えた盛り上がりのある画線を、面積率や位相に差異を設けて万線の上に重ね合わせて形成することによって、光を入射させることで第一の潜像画像が出現し、印刷物を深く傾けて観察することで第二の潜像が出現する潜像印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券や諸証券、郵券等のセキュリティが必要な印刷物には、偽造を抑止するために真正品と偽造品を区別するための真偽判別要素の付与が不可欠である。また、付与する真偽判別要素は、特別な道具を必要とすることなく、自然光によって万人が真偽判別できる要素であることが望まれる。
【0003】
自然光で真偽判別が可能な真偽判別要素の一例としては、日本銀行券に施されているパール印刷やすき入れ、潜像模様等が挙げられる。パール印刷のように観察角度に応じて画像に付与された色彩が変化するもの、すき入れのように特定の条件下でのみ観察可能なもの、潜像模様のようにそれまで観察できなかった画像(潜像)が出現するもの等、これらは、対面販売のような一般的な物品とセキュリティ印刷物との交換時にユーザが真偽を目視で判断できる要素として付与されている。
【0004】
それら様々な種類の真偽判別要素の中でも、基材や画線の凹凸を利用して形成する潜像模様は、正対して観察した場合には潜像画像が視認されず、傾けることで潜像画像が出現する効果を有しているため、カラーコピーやプリンターを用いた単純な複製による再現は不可能である。
【0005】
本出願人は、すき入れや凹版印刷、エンボス等によって形成した凹凸と印刷画線を重ね合わせることで、印刷物を傾けると潜像が出現する潜像印刷物に係わる発明を出願している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
更に、本出願人は、基材表面に印刷した第1の画線と、その上に印刷された盛り上がりのある透明又は半透明な画線によって、真上から観察したときは画像が認識されず、観察角度を変化させることにより画像が認識できる偽造防止形成体に係わる発明を出願している(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0007】
また、基材上に凹凸を形成し、かつ、その上に第1コーティングと第2コーティングの二つのコーティングを施し、そのうちの第2コーティングは光学可変構造体を備えることを特徴としたデータ担体が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
また、有色インキで印刷した万線状の第1のパターンと、凹凸を成す画素で構成した第2のパターンと、所定の反射角度でのみ視認されるインキで印刷された第3のパターンを形成し、第1のパターンの万線に直交する方向から印刷面を傾けて観察した時に印刷面とのなす観察角度が小さい順に第3のパターン、第2のパターンが順に視認される潜像パターンを有する印刷物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2615401号公報
【特許文献2】特許2600094号公報
【特許文献3】特開2005−205897号公報
【特許文献4】特許3686953号公報
【特許文献5】特表2005−535485号公報
【特許文献6】特許3789874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、すき入れや凹版印刷等で形成した凹凸構造に対して、平行な印刷画線を重ね合わせる技術であり、凹凸の高さが高ければ高いほど、潜像が観察できる角度を浅くすることが可能である。しかし、印刷物の流通適性や堅牢性等を考慮すると、基材に形成して良い凹凸の高さには限界があり、これらの限界を考慮して印刷物を形成すると、少なくとも70°以上は傾けなければ潜像を観察することができない。
【0011】
また、特許文献3及び特許文献4に記載の技術は、基材表面に印刷した第一の画線の上に、透明又は半透明な盛り上がりのある画線を重ね合わせることで、盛り上がりのある画線によって生じる光の反射・屈折・回折等によって潜像を出現させる技術であるが、特許文献1及び特許文献2に記載の技術と比較して潜像が出現する傾け角度は小さくなるものの、印刷物として流通させることが可能な画線高さで形成した場合には、やはり潜像が出現する傾き角度は深くなる傾向にある。
【0012】
したがって、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術が付与されたセキュリティ印刷物の真偽を判定するにあたっては、潜像を視認するために印刷物を深く傾けて観察する必要が生じる。この動作は大きな動作となりがちであり、真偽判別を行っていることが、居合わせた人に察知されることとなる。対面販売においては、代金として手渡された紙幣は、客の目の前で迅速に真偽判別を行う必要があるが、自分の渡した紙幣が真偽判別の対象となっていることを知った場合の客の心象は良いものではない。よって、真偽判別自体は極力さりげない動作で行えることがより好ましいと考えられ、潜像の認証角度が深いということは問題となる場面がある。
【0013】
特許文献5及び特許文献6に記載の技術は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術を補強することを意図したものであり、傾ける角度が凹凸による潜像を観察できる角度に達するまでは、光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキで形成した異なる画像を視認させることによって、浅い傾け角度においても真偽判別機能を補完するものである。この場合、光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキにはパールインキや高光沢なインキ等が使用される。
【0014】
パールインキや高光沢なインキ等で形成した画像は、印刷物に光を入射させることで、その画像を可視化、色変化を生じさせることが可能である。よって、真偽判別のためには、印刷物に光を入射させてわずかに傾ければ良く、その場合の認証角度は、多くの場合、浅い傾け角度で良い。以上のように、特許文献4及び特許文献5に記載の技術においては、潜像を認証するために深く傾けなくとも良いという特徴を有する。
【0015】
ただし、この二つの技術は、凹凸を形成したのち、第1のパターン(又は第1のコーティング)及び第3のパターン(又は第2のコーティング)を形成する必要があり、少なくとも二つの異なるインキ及び二つの印刷版面を用いて形成する必要がある。また、第1のパターン(又は第1のコーティング)はオフセット印刷で可能であっても、第3のパターン(又は第2のコーティング)を形成する光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキの効果を高めて付与したい場合には、オフセット印刷では充分でない場合が多く、グラビア印刷方式やスクリーン印刷方式又は凹版印刷方式であることが望ましい。以上のことから、第1のパターン(又は第1のコーティング)及び第3のパターン(又は第2のコーティング)を形成する印刷方式自体も異なった印刷方式を要求する場合が多い。
【0016】
よって、特許文献5及び特許文献6に記載の技術は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術と比較すると、多色印刷で形成する必要があり、印刷工程が複雑になるという問題が生じる。
【0017】
以上のことから、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術に関しては、潜像画像の認証角度が深くなりすぎるという問題があり、特許文献5及び特許文献6に記載の技術に関しては、浅い角度で光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキによって形成した異なる画像を認証できるものの、印刷工程が複雑になるという問題が生じていた。
【0018】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、基材上に形成した第一の画線の上に、カラーフリップフロップ性を有する透明なインキで形成した盛り上がりを有する画線を重ね合わせて形成することで、浅い観察角度と深い観察角度の両方でそれぞれ異なる潜像を視認することが可能な潜像印刷物を極めて単純で安価な方法によって提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明における潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、印刷領域に、基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、第一の印刷層は、盛り上がりのある画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、第二の印刷層は、複数の画線群から成り、複数の画線群は、画線を第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、画線を第二の画線群の画線と同一の位相で、第一の方向に複数配列して成る第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、画線を第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第四の画線群と、画線を第三の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、第一の方向に複数配列して成る第三の面積率を有する第五の画線群を備え、第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、第一の画像は、面積率の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、第二の画像は、画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、第一の画像の情報部は、第三の画線群及び第五の画線群から成り、第一の画像の背景部は、第二の画線群及び第四の画線群から成り、第二の画像の情報部は、第四の画線群及び第五の画線群から成り、第二の画像の背景部は、第二の画線群及び第三の画線群から成り、第五の画線群は、第一の画像及び第二の画像の共有の情報部と成り、第二の画線群は、第一の画像及び第二の画像の共有の背景部と成り、観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第一の印刷層が視認され、観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、第一の画像が視認され、観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第二の画像が視認されることを特徴とする支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第二の画像が視認されることを特徴とする。
【0020】
本発明における潜像印刷物は、第一の画像における情報部の面積率と背景部の面積率の差異が、10%以上75%以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明における潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、前記印刷領域に、前記基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、前記第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、前記第一の印刷層は、画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、前記第二の印刷層は、複数の画線群から成り、前記複数の画線群は、盛り上がりのある画線を第一の角度で分断した破線を前記第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、前記画線を前記第一の角度とは異なる第二の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、前記画線を第一の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率を有する第四の画線群と、前記画線を第二の角度で分断した破線を前記第三の画線群の画線に対して位相を前記特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第三の面積率を有する第五の画線群を備え、前記第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、前記第一の画像は、前記面積率の違い及び/又は前記第一の角度と前記第二の角度の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第二の画像は、前記画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第一の画像の情報部は、前記第三の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第一の画像の背景部は、前記第二の画線群及び前記第四の画線群から成り、前記第二の画像の情報部は、前記第四の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第二の画像の背景部は、前記第二の画線群及び第三の画線群から成り、前記第五の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の情報部と成り、前記第二の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の背景部と成り、観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第一の印刷層が視認され、前記観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、前記第一の画像が視認され、前記観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第二の画像が視認されることを特徴とする。
【0022】
本発明における潜像印刷物は、第一の角度と第二の角度の角度差が、15°以上90°以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明における潜像印刷物は、第二の面積率と第三の面積率の差異は、画線群を構成する画線における画線幅の太細、画線の粗密のいずれか、又はその両方によって形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明における潜像印刷物は、第一の面積率、第二の面積率及び第三の面積率は、0%及び100%を除いた面積率であることを特徴とする。
【0025】
本発明における潜像印刷物は、画線群を構成する画線におけるピッチは、20μm以上2mm以下であることを特徴とする。
【0026】
本発明における潜像印刷物は、第二の画線群における画線と第四の画線群における画線を特定の距離ずらして成る位相差及び第三の画線群における画線と第五の画線群における画線を特定の距離ずらして成る位相差は、画線のピッチに対して1/4以上1/1未満であることを特徴とする。
【0027】
本発明における潜像印刷物は、カラーフリップフロップ性を有するインキによる画線の盛り上がりの高さは、3μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【0028】
本発明における潜像印刷物は、第一の印刷層は、有意味情報を含み、有意味情報は、画線を第一の画線群の画線と同一の位相で、第一の方向に複数配列して成り、第一の面積率とは異なる面積率から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明における潜像印刷物は、第二の印刷層中に面積率の差異によって形成した第一の画像が、印刷物に蛍光灯や日光の光を当てるだけで出現するため、わずかに傾けるだけの極めて浅い観察角度で観察した場合にでも第一の画像を視認することができる。
【0030】
本発明における潜像印刷物は、第二の印刷層中に画線の位相の違いによって形成した第二の画像が、深く傾けた場合にのみ出現するため、浅い観察角度における第一の画像の認証に加えて、深い観察角度における第二の画像の認証の二段階の認証が可能であり、真偽判別性に優れている。
【0031】
本発明における潜像印刷物は、第一の印刷層を印刷する第一の印刷工程と、第二の印刷層を印刷するための第二の印刷工程のみの、わずか2工程で形成することが可能であり、エンボス層の形成を含めると3工程必要であった特許参考文献5及び6に記載の技術と比較してより簡単な印刷工程で安価に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態における潜像印刷物を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における第一の印刷層を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における画線の形態及び一定面積中における面積率の大小を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における第一の印刷層と第二の印刷層の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における第一の印刷層を構成する画線と第二の印刷層を構成する画線の位置関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における観察角度領域Cにおける観察において、第二の画像が出現する原理を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における第二の印刷層の各画線群における画線を特定の角度で分断した破線を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における画線を特定の角度で分断した破線とした場合の面積率の差異を示す図である。
【図12】本発明の実施例1における潜像印刷物を示す図である。
【図13】本発明の実施例1における第一の印刷層を示す図である。
【図14】本発明の実施例1における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図15】本発明の実施例1における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図16】本発明の実施例1において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図17】本発明の実施例2における潜像印刷物を示す図である。
【図18】本発明の実施例2における第一の印刷層を示す図である。
【図19】本発明の実施例2における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図20】本発明の実施例2における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図21】本発明の実施例2において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図22】本発明の実施例3における潜像印刷物を示す図である。
【図23】本発明の実施例3における第一の印刷層を示す図である。
【図24】本発明の実施例3における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図25】本発明の実施例3における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図26】本発明の実施例3において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図27】本発明の潜像印刷物の第一の印刷層を複数の異なる色の画線で構成する例を示す図である。
【図28】本発明の潜像印刷物の第三の印刷層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0034】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態における潜像印刷物を示す図である。図2は、本発明の実施の形態における第一の印刷層を示す図である。図3は、本発明の実施の形態における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図4は、本発明の実施の形態における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図5は、本発明の実施の形態における画線の形態及び一定面積中における面積率の大小を示す図である。図6は、本発明の実施の形態における第一の印刷層と第二の印刷層の構成を示す図である。図7は、本発明の実施の形態における第一の印刷層を構成する画線と第二の印刷層を構成する画線の位置関係を示す図である。図8は、本発明の実施の形態において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図9は、本発明の実施の形態における観察角度領域Cにおける観察において、第二の画像が出現する原理を示す図である。図10は、本発明の実施の形態における第二の印刷層の各画線群における画線を特定の角度で分断した破線を示す図である。図11は、本発明の実施の形態における画線を特定の角度で分断した破線とした場合の面積率の差異を示す図である。図12は、本発明の実施例1における潜像印刷物を示す図である。図13は、本発明の実施例1における第一の印刷層を示す図である。図14は、本発明の実施例1における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図15は、本発明の実施例1における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図16は、本発明の実施例1において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図17は、本発明の実施例2における潜像印刷物を示す図である。図18は、本発明の実施例2における第一の印刷層を示す図である。図19は、本発明の実施例2における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図20は、本発明の実施例2における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図21は、本発明の実施例2において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図22は、本発明の実施例3における潜像印刷物を示す図である。図23は、本発明の実施例3における第一の印刷層を示す図である。図24は、本発明の実施例3における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図25は、本発明の実施例3における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図26は、本発明の実施例3において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図27は、本発明の潜像印刷物の第一の印刷層を複数の異なる色の画線で構成する例を示す図である。図28は、本発明の潜像印刷物の第三の印刷層を示す図である。
【0035】
図1は、本発明の潜像印刷物(1)を示す図であり、基材(2)上の印刷領域(3)に第一の印刷層(4)と第二の印刷層(5)とを形成している。図2は、第一の印刷層(4)を示す図であり、画線幅(W1)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置し、第一の面積率を有する第一の画線群(4a)を構成している。図3(a)は、第二の印刷層(5)を示す図であり、第二の印刷層(5)中に図3(b)に示す第一の画像(6)と図3(c)に示す第二の画像(7)が含まれている。第一の画像(6)は、「桜」の模様を構成している情報部(8)とその周囲を囲む四角形の背景部(9)から成り、第二の画像(7)は、「NIPPON」の文字を構成している情報部(10)とその周囲を囲む四角形の背景部(11)から成っている。
【0036】
第二の印刷層(5)における第一の画像(6)と第二の画像(7)は、四種類の画線群によって構成されている。図4は、四種類の画線群(12、13、14、15)である第二の画像郡(12)、第三の画線群(13)、第四の画線群(14)及び第五の画線群(15)を拡大したものである。第二の画線群(12)は、画線幅(W1)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の面積率を有している。第三の画線群(13)は、画線幅(W2)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12)における画線と同一の位相で、第二の面積率とは異なる第三の面積率を有している。第四の画線群(14)は、第二の画線群(12)における画線の位相を特定の距離だけ第一の方向(a)にずらした画線を、第一の方向と複数配列して成り、第二の面積率を有している。第五の画線群(15)は、第三の画線群(13)における画線の位相を特定の距離だけ第一の方向(a)にずらした画線を、第一の方向と複数配列して成り、第三の面積率を有している。
【0037】
なお、第一の印刷層(4)及び第二の印刷層(5)における各画線群を構成する「画線」とは、図5に示すように、(a)点線や破線の分断線、(b)直線、(c)曲線、(d)波線、(e)中抜け画線及び(f)網点などのことであり、如何なる画線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれる。また、図5に示すように、「面積率」とは、印刷領域の一定面積中(図中の点線の領域中)に占める画線群の割合のことであり、面積率の差異は、(g)画線の太細による画線幅の差異のみで形成してもよく、(h)画線の粗密、いわゆる画線密度の差異をもって形成してもよく、この両方を用いて形成してもよい。ただし、面積率は、ピッチと画線幅が決まった場合に自動的に決定するものであり、本実施の形態でいえば、第二の印刷層(5)における四種類の画線群(12、13、14、15)のピッチが同一であることから、画線幅(W1)の画線で構成した第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)は、第二の面積率を有し、画線幅(W2)の画線で構成した第三の画線群(13)及び第五の画線群(15)は、第三の面積率を有することとなる。
【0038】
第一の画像(6)の情報部(8)と背景部(9)は、画線群における面積率の違いによって形成されて成り、第二の画像(7)の情報部(10)と背景部(11)は、画線群における画線の位相の違いによって形成されて成る。つまり、第一の画像(6)の情報部(8)である「桜」の模様は、画線幅(W2)の画線の集合であり、第三の面積率を有する第三の画線群(13)及び第五の画線群(15)によって構成し、第一の画像(6)の背景部(9)である「桜」の模様を囲む四角形は、画線幅(W1)の画線の集合であり、第二の面積率を有する第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)によって構成している。また、第二の画像(7)の情報部(10)である「NIPPON」の文字は、位相が同じ第二の画線群(12)と第三の画線群(13)によって構成し、第二の画像(7)の背景部(11)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12)と第三の画線群(13)の位相をずらして構成した第四の画線群(14)と第五の画線群(15)によって構成している。
【0039】
第一の印刷層(4)は、基材と異なる色を有する材料で形成し、第二の印刷層(5)は、透明あるいは半透明で、カラーフリップフロップ性を有して盛り上がりのある形状で形成する。
【0040】
第一の印刷層(4)は画線の盛り上がりを必要としないことから、印刷方式に特に制限はなく、あらゆる印刷方式で形成することが可能であり、またインキジェットプリンターやレーザプリンター等のデジタル印刷機器を用いて形成しても何ら問題はない。また、第二の印刷層(5)については、盛り上がりが必要であることから、フレキソ印刷やグラビア印刷でも形成可能であるが、高い画線の盛り上がりが容易に形成可能な凹版印刷やスクリーン印刷で形成することが望ましい。
【0041】
また、ここで言うカラーフリップフロップ性とは、正反射した場合に、色相が変化する特性のことであり、光沢インキや金属インキ等が有する明暗のみが変化する明暗フリップフロップ性とは異なり、正反射時の色変化に富んだ性質のことである。このカラーフリップフロップ性を備えた材料としては、近年多種多様な顔料が販売されているが、現在市販されている代表的な顔料としては、虹彩色パール顔料、鱗片状マイカ顔料、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等が存在する。これらの顔料を適量分散させてインキ化し印刷することで、透明性あるいは半透明であって、カラーフリップフロップ性を備えた画線を形成することが可能である。本明細書中では、主に虹彩色パール顔料を用いて第二の印刷層(5)の画線群を形成している。虹彩色パール顔料を含んで形成された画線は、拡散反射光下では無色透明であり、正反射光が生じた場合にのみパール顔料の特徴である干渉色を発する特徴を有している。
【0042】
図6には、第一の画線群を含む第一の印刷層(4)と四つの画線群を含む第二の印刷層(5)の位置関係を示している。図のように、第一の印刷層(4)の上に盛り上がりを有した画線で構成された第二の印刷層(5)が重なって形成されている。
【0043】
また、その際、図6のA−A´断面を見た場合、第一の印刷層(4)を構成する第一の画線群(4a)
と、第二の印刷層(5)を構成する盛り上がりを有した画線(5a)の位置関係を図7(a)から図7(e)に説明する。ただし、以下に説明で用いる第二の印刷層(5)を構成する盛り上がりを有した画線(5a)とは、第二の印刷層(5)を構成する四つの画線群(12、13、14、15)のうちのいずれかひとつの画線群中の画線を代表して例示したものであり、いずれかの画線群に限定するものではない。第一の画線群(4a)と第二の印刷層の画線群(5a)の重なり合いの位置関係は、図7(a)から図7(d)に示すように、第一の画線群(4a)の上のいずれかの位置に、第二の印刷層の画線群(5a)が重なり合って成るか、あるいは図7(e)に示すように第一の画線群(4a)の上に第二の印刷層の画線群(5a)が重なり合わなくともよい。
【0044】
次に、本発明の潜像印刷物が有する効果とその効果が生じる原理について説明する。まず、図8を用いて、本発明の効果を説明する。図8(d)は、観察者の視点(16)、光源(17)及び本発明の潜像印刷物(1)の位置関係を示した図である。光源(17)から潜像印刷物(1)に入射角度―45°で光が入射した場合、受光角度45°±15°近傍に正反射光が多く存在する領域が生じる。この領域を本明細書においては、「観察角度領域B」と定義する。また、この観察角度領域以外の領域は、正反射光がほとんど存在せず、拡散反射光が多く存在する領域となる。この領域のうち、観察角度0°から30°及び観察角度60°から70°までの角度を第一の拡散反射光が多く存在する「観察角度領域A」と定義する。また、盛り上がりのある画線が生じさせる画線の向こう側の画像を遮蔽する効果(この効果については後記する。)が強く発揮される観察角度70°から90°までの角度を第二の拡散反射光が多く存在する「観察角度領域C」と定義する。
【0045】
観察者の視点(16)が、「観察角度領域A」の中にある場合、観察者には、図8(a)に示す第一の印刷層(4)のみが見える。これは、正反射光がほとんど存在せず、拡散反射光のみが多く存在する「観察角度領域A」において、第二の印刷層(5)を形成している画線群がカラーフリップフロップ性を発揮することはなく、更に第二の印刷層(5)は、透明あるいは不透明であることから不可視であるため、結果として基材と異なる色を有して形成された第一の印刷層(4)のみが視認されることとなる。
【0046】
次に、観察者の視点(16)が「観察角度領域B」の中にある場合、観察者には、図8(b)に示す第二の印刷層(5)が有する第一の画像(6)のみが視認される。これは、「観察角度領域B」においては、正反射光が多く存在することから、第二の印刷層(5)を形成している画線群がカラーフリップフロップ性を発揮することに起因する。虹彩色パール顔料を含んでいる場合、画線群はパール効果による干渉色を発し、第二の印刷層(5)がこのパールの干渉色によって可視化するためである。第二の印刷層(5)が有する第一の画像(6)と第二の画像(7)のうち、「観察角度領域B」においては、第二の画像(7)は視認されず、第一の画像(6)のみが視認されるが、その原理について説明する。
【0047】
第二の印刷層(5)における第二の画線群(12)と第四の画線群(14)は、同じ面積率であることから、同じ程度の視認性となり、更に、第三の画線群(13)と第五の画線群(15)も、同じ面積率であることから、同じ程度の視認性となる。逆に、第二の画線群(12)と第四の画線群(14)の組合せと、第三の画線群(13)と第五の画線群(15)の組合せでは、その面積率の差異により異なる視認性となる。すなわち、この「観察角度領域B」においては、面積率によって反射する光の強弱が生じ、面積率の大きい方が面積率の小さい方よりも強い光を反射することになる。よって、面積率の違いによって形成した第一の画像(6)のみが可視化され観察者に視認されることとなる。
【0048】
次に、観察者の視点(16)が「観察角度領域C」の中にある場合、観察者には、図8(c)に示す第二の印刷層(5)が有する第二の画像(7)のみが視認される。これは、「観察角度領域C」においては、第二の印刷層(5)を形成する盛り上がりのある画線群(5a)が、観察者から見て画線群(5a)の奥側にある画線を遮蔽する効果が生じるためである。
【0049】
この効果及び原理を、図9(a)、図9(b)及び図9(c)に示す。図9(a)に、本発明の潜像印刷物における印刷領域(3)中の構成の一例として、第一の印刷層(4)を形成する第一の画線群(4a)の上に、第二の印刷層(5)を形成する盛り上がりを有する画線群のうち位相の異なる二つの画線群(5b、5c)が重なって形成された図を示す。この例において、盛り上がりを有する画線群(5b、5c)の画線幅は、ピッチの半分であり、盛り上がりを有する一つの画線群(5b)ともう一つの画線群(5c)は、それぞれ位相がピッチの約半分ずれている。そのため、画線群(4a)と画線群(5b)が重なり合って形成されている場合には、画線群(4a)と画線群(5c)は、重ならないで形成されることになる。
【0050】
画線群(4a)と画線群(5b)が重なった画像をA−A´に示すラインで切断して「観察角度領域C」で観察した断面図を図9(b)に示し、画線群(4a)と画線群(5c)が重なった画像をB−B´に示すラインで切断して「観察角度領域C」で観察した断面図を図9(c)に示す。透明又は不透明で盛り上がりのある画線群(5b、5c)は、「観察角度領域C」のように極めて深い角度から観察した場合、画線群の表面は、画線群を形成する材料に含まれている顔料成分による光の散乱や屈折が大きくなり、盛り上がりのある画線群(5b、5c)の透明度が低下し、透明あるいは半透明だった画線が不透明なやや白みがかった色に変化する。よって、正対した状態では透明あるいは半透明であった第二の印刷層(5)の画線群(5b、5c)が、「観察角度領域C」においては、第一の印刷層(4)を形成する画線群(4a)や基材(2)を観察者の視点(16)から遮蔽する壁として機能することとなる。
【0051】
すなわち、図9(b)の視点(16)においては、観察者が主として視認できるのは、盛り上がりのある画線群(5b)の白い画線と基材(2)の一部のみとなる。また、図9(c)の視点(16)においては、観察者が主として視認できるのは、盛り上がりのある画線群(5b)の白い画線と第一の印刷層(4)の画線群(4a)の一部のみとなる。よって、図9(b)の条件で観察者が視認する画像と、図9(c)の観察条件で観察者が視認する画像とは全く異なった色彩となる。この現象によって、第二の印刷層(5)における画線群の位相のずれが強調され可視化される。
【0052】
第一の印刷層(4)を形成する画線群(4a)と第二の印刷層(5)を形成する画線群の重なり合いの関係において、一つの画線群の組合せ(例えば、画線群(4a)と画線群(5b)の組合せ)と、もう一方の画線群の組合せ(画線群(4a)と画線群(5c)の組合せ)では、第一の印刷層(4)の画線群(4a)に対する画線群(5b)と第一の印刷層(4)の画線群(4b)に対する画線群(5c)の位置関係は常に異なっている。つまり、この二つの画線群の位置関係が最も大きく異なるように形成するためには、図9(a)に示す画線群(5b)と画線群(5c)のように、位相がピッチの半分にあたる距離分ずらして形成する場合であり、二つの画線群がこの位置関係にある場合、この「観察角度領域C」における観察では最も大きなコントラストが生じる。
【0053】
一方、面積率の差が、「観察角度領域C」で観察される画像に与える影響について考えると、盛り上がりのある画線群の面積率の違いによっても、二つの盛り上がりのある画線群と第一の印刷層(4)を形成する画線群(4a)との位置関係の差は生じる。ただし、第二の面積率で形成する画線幅(W1)の画線群(例えば、第二の画線群)と第三の面積率で形成する画線幅(W2)の画線群(例えば、第三の画線群)は、第一の印刷層(4)を形成する画線群(4b)と位相が同一であり、加えて画線の中心位置が同一であることを考慮すると、画線の片側の面を基準にすると画線幅(W1)と画線幅(W2)の差の半分にあたる位置関係の差しか生じない。よって、画線幅(W1)と画線幅(W2)の差異を極めて大きくすることで面積率の差を大きく設計しない限り、「観察角度領域C」における観察においては、大きなコントラストを生じさせることができない。よって、「観察角度領域C」においては、画線の位相のずれによって形成した第二の画像(7)のみが可視化され、観察者に視認される。以上が、本発明の潜像印刷物における効果と、その効果が生じる原理である。
【0054】
次に、本発明における潜像印刷物を得るための詳細な条件について述べる。まず、面積率について説明する。本発明を実施するための形態においては、面積率の差異を画線幅の差異によって形成、つまり、第一の印刷層(4)を形成する画線の画線幅について画線幅(W1)とし、第二の印刷層(5)を形成する第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)も同じ画線幅で形成したが、これに限定するものではなく、全く画線が存在しないか(面積率0%)、あるいは完全に塗りつぶされた状態の画線幅(面積率100%)以外であれば、任意の幅で設計しても問題はない。ただし、印刷時に生じるドットゲインやハイライトの転移不良等の品質のアバレや、「観察角度領域C」における第二の画像(7)の視認性を考慮すると、20%から80%にあたる面積率の範囲にとどまるように設計することがより望ましい。
【0055】
また、第一の印刷層は、図2に示したように、画線幅(W1)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置し、第一の面積率を有する第一の画線群(4a)のみで構成しても良いが、「観察角度領域A」で視認できる有意味情報を含む構成としても良い。有意味情報は、画線を、第一の画線群の画線と同一の位相で、かつ、第一の方向(a)に複数配列して成り、第一の面積率とは異なる面積率の画線群によって形成する。この場合、有意味情報を構成する画線群の面積率は、第一の面積率に対して、10%から25%の範囲で形成する。これは、画線面積率の差異が小さすぎる場合には、「観察角度領域A」において有意味情報が視認しづらくなり、逆に、画線面積率の差異が大きすぎる場合には、「観察角度領域Cに」おいて有意味情報と第二の画像が混ざり合って視認されてしまうためである。
【0056】
更に、1色の画線群でのみ形成する必要はなく、2色の組合せ(これについては後述する)や3色の組合せで画線群を形成することも可能である。
【0057】
また、第二の印刷層(5)の画線群の盛り上がりの高さについては、最低3μm以上あれば「観察角度領域C」において第二の画像(7)を視認することは可能である。また、効果の面から考えると画線の盛り上がりは高いほど良いが、流通適性や印刷で容易に付与可能な画線高さ等を考慮すると、50μm以下とする。
【0058】
ピッチ(P)を小さくすることで、第二の画像(7)を観察するための傾け角度を小さくすることが可能であり、解像度も高く設計することが可能である。逆に、大きすぎる場合には、傾け角度が大きくなるとともに、画像の解像度が低下してしまう。よって、印刷で実現可能なピッチを考慮すると、ピッチ(P)は、20μm以上2mm以下とする。
【0059】
第一の画像(6)を可視化するため、第一の画像(6)の情報部(8)と背景部(9)の面積率の差異ついては、できる限り大きく設けることが望ましい。盛りあがりを有する画線のカラーフリップフロップ性の高低にも左右されるが、「観察角度領域B」において、第一の画像(4)の視認性を高く保つには、面積率の差で10%を超えている必要があり、より好ましくは20%以上であることが望ましい。また、逆に、差異が大きすぎる場合には、「観察角度領域C」においても第一の画像(6)の視認性が高まり、第二の画像(7)と混ざり合ってしまう場合があることから、上限は大きくとも75%以下にする必要がある。
【0060】
第二の画線群(12)における画線と第四の画線群(14)における画線の位相差及び第三の画線群(13)における画線と第五の画線群(15)における画線の位相差については、同一である必要があり、面積率の差異にも影響を受けるが、少なくともピッチの4分の1にあたる距離以上の位相差を設けることが望ましく、最も好ましい位相差は、ピッチ(P)の半分の距離である。
【0061】
パール顔料を含有させて第二の印刷層(5)を形成する場合のパール顔料について説明する。パール顔料の粒子の大きさは、使用する印刷方式に応じて選択するものであるが、1μm〜50μmであり、好ましいのは、平均粒径は5〜15μm程度である。また、使用するパール顔料の鱗片状顔料の配向性(リーフィング効果)を向上させるためには、印刷時に3μm〜150μmの盛り上がりを有する画像の表面で顔料が配向するような処理を施すことが好ましい。具体的には、例えば、特開2001−106937号公報に記載されたような撥水及び撥油性処理等の顔料の表面処理を行うことで、印刷部の画線表面で顔料を配向させることができ、正反射光によるパールの干渉色をより鮮やかに出現させることが可能となる。
【0062】
また、実施例3で後述するが、図10に示すように、第二の印刷層(5)の各画線群における画線を特定の角度で分断した破線としてもよい。第二の印刷層(5)を構成する四つの画線群(12、13、14、15)のうち、第二の画線群(12)は、画線幅(W3)の画線がピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置されているが、それぞれの画線は、第一の角度(θ1)の非画線によって分断された破線となっている。この破線は、ピッチ(P)で画線幅(W1)の画線部と画線幅(P−W1)の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第三の画線群(13)は、画線幅(W3)の画線がピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12)に対し、同一の位相で成るが、それぞれの画線は、第二の角度(θ2)の非画線によって分断された破線となっている。この破線は、ピッチ(P)で画線幅(W2)の画線部と画線幅(P−W2)の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第四の画線群(14)は、第二の画線群(12)と構成は同じ破線であって、第二の画線群(12)に対し、位相が第一の方向(a)にピッチ(P)の半分のピッチずれて成る。第五の画線群(15)は、第三の画線群(13)と構成は同じ破線であって、第三の画線群(13)に対し、位相が第一の方向(a)にピッチ(P)の半分のピッチずれて成る。つまり、第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)は、第一の角度(θ1)で分割し、第三の画線群(13)及び第五の画線群(15)は、第二の角度(θ2)で分割した破線としている。
【0063】
このように、画線を特定の角度で分断した破線とする場合には、第一の画像(6)における情報部(8)の面積率と、第一の画像(6)における背景部(9)の面積率の差異については、差異が全くないか、又はより小さく留めても「観察角度領域B」において第一の画像(6)を視認することが可能となる。これは、盛り上がりのある画線は、「観察角度領域B」において各画線表面に対して垂直に入射した光を特に強く反射することに起因するものであり、第二の印刷層(5)のそれぞれの画線を、特定の角度で分断した破線とすることで、それぞれの画線が最も光を強く反射する角度に違いが生じるためであり。よって、分断角度に差異を設けることによって干渉色の強弱が生じさせることが可能であり、この効果を用いた場合には、第一の画像(6)を面積率の差異を用いて形成しなくとも可視化することができる。
【0064】
ただし、画線を特定の角度で分断した破線とする場合でも、第一の画像(6)における情報部(8)の面積率と第一の画像(6)における背景部(9)の面積率に差異を設けた方が、視認性が高くなる。したがって、この場合においても10%以上の面積率の差異を設けてもよく、面積率の差異の上限は、同様に75%以下である。
【0065】
第一の画像(6)における情報部(8)の面積率と第一の画像(6)における背景部(9)の面積率に差異を設ける方法として、画線の太細による画線幅の差異のみで形成してもよく、画線の粗密、いわゆる画線密度の差異をもって形成してもよく、この両方を用いて形成してもよい、と前述したところである。しかし、本形態のように画線を特定の角度で分断した破線とした場合、面積率の差異は、画線の太細による画線幅の差異で形成するか、又は画線の粗密で形成する差異は、図11に示すように、第一の方向(a)によって粗密を変化させるのではなく、第一の方向(a)に対して垂直方向に粗密を変化させることが望ましい。図11の場合、図11(a)は画線幅(W1)ピッチ(P1)の破線であるのに対し、図11(b)は、画線幅(W1)は同じ幅で、ピッチは、ピッチ(P1)より小さいピッチ(P2)の破線であることから、面積率は、図11(a)の方が図11(b)よりも小さくなる。
【0066】
これは、第一の方向(a)に粗密を変化させて第一の画像(6)を形成する場合、「観察角度領域C」において第二の画像(7)を出現させることを考慮すると、第一の印刷層の第一の画線群の粗密も第二の印刷層の画線群に対応した粗密を構成することになり、結果として、第一の印刷層中に第二の画像(7)が現れてしまうことから望ましくない。また、第一の方向(a)に粗密を変化させて第一の画像(6)を形成するにもかかわらず、第一の印刷層の第一の画線群に粗密を設けない場合には、粗な領域と密な領域のいずれか、あるいはその両方の領域において、モアレ模様が発生して鮮明な第二の画像(7)を視認させることが困難となることから、同様に望ましくない。いずれにしても、第一の方向(a)によって粗密を変化させるのではなく、第一の方向(a)に対して垂直方向に粗密を変化させることが望ましい。
【0067】
また、第一の角度(θ1)と第二の角度(θ2)の角度差については、15°以上90°以下の角度差を設ける必要があり、最も望ましい角度差は90°である。これは、角度差を15°以下の角度差で、かつ、第一の画像(6)に面積率の差異を設けない場合、第一の画像(6)の視認性は低くなるためである。
【0068】
また、図10に示す第二の画線群(12)と第四の画線群(14)の組み合わせを示す拡大図において、第二の画線群(12)の画線と第四の画線群(14)画線の位相をずらした際に、第二の画線群(12)の非画線部と第四の画線群(14)非画線部が一直線と成るように規則性を持って構成されている。しかし、これに限定される必要ことはなく、例えば、第二の画線群(12)と第四の画線群(14)の境目において、第二の画線群(12)における非画線部の途中に、第四の画線群(14)における画線部がくるような構成にし、非画線部が一直線に成らない構成としても良く、規則性を有する必要はない。
【実施例1】
【0069】
実施例1においては、第一の印刷層(4´)をオフセット印刷で形成し、第二の印刷層(5´)をスクリーン印刷で形成して潜像印刷物(1´)を形成する例について、図12から図16を用いて説明する。
【0070】
図12は、実施例1における潜像印刷物(1´)を示す図であり、基材(2´)上に印刷領域(3´)を備え、印刷領域(3´)中に第一の印刷層(4´)と第二の印刷層(5´)が重ね合わせて形成されて成る。
【0071】
図13は、第一の印刷層(4´)を示す図であり、画線幅0.25mmの青色の画線をピッチ0.50mmで第一の方向(a)の方向に複数配置して第一の画線群(4a´)を構成して成る。第一の画線群(4a´)の面積率は、50%である。この第一の印刷層(4´)を青色インキ(大日本インキ化学工業株式会社製 Dai Cure RT−8 藍)を用いてオフセット印刷方式で一般的なコート紙である基材(2´)に印刷した。
【0072】
図14(a)は、第二の印刷層(5´)を示す図であり、第二の印刷層(5´)は、図14(b)に示す第一の画像(6´)と図14(c)に示す第二の画像(7´)を有している。図14(b)に示す第一の画像(6´)は、画線の太細によって形成しており、情報部(8´)である「桜」の模様と背景部(9´)である「桜」の模様を囲む四角形から成る。図14(c)に示す第二の画像(7´)は、画線の位相のずれによって形成しており、情報部(10´)である「NIPPON」の文字と背景部(11´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形から成る。
【0073】
図15は、第二の印刷層(5´)を構成する四つの画線群(12´、13´、14´、15´)を示すものであり、第二の画線群(12´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成る。第三の画線群(13´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)に対し、同一の位相で成る。第四の画線群(14´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第五の画線群(15´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)及び第三の画線群(13´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第二の画線群(12´)及び第四の画線群(14´)の面積率は、50%であり、第三の画線群(13´)及び第五の画線群(15´)の面積率は、70%である。
【0074】
第一の画像(6´)の情報部(8´)である「桜」の模様は、第三の画線群(13´)及び第五の画線群(15´)によって構成し、第一の画像(6´)の背景部(9´)である「桜」の模様を囲む四角形は、第二の画線群(12´)及び第四の画線群(14´)によって構成している。
【0075】
また、第二の画像(7´)の情報部(10´)である「NIPPON」の文字は、第二の画線群(12´)と第三の画線群(13´)によって構成し、第二の画像(7´)の背景部(11´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12´)と第三の画線群(13´)の位相をずらして構成した第四の画線群(14´)と第五の画線群(15´)によって構成している。
【0076】
図14(a)に示した第二の印刷層(5´)を表1に示す配合のスクリーンインキを用いて、第一の印刷層(4´)上に重ね合わせてUV乾燥方式のスクリーン印刷によって印刷した。画線の盛り上がりの高さは約15μmである。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すインキは、光が入射することで金色の干渉色を発する虹彩色パール顔料を含んでおり、本インキで形成した画線は、正反射光が生じない状態では無色透明であって、正反射光が生じた状態では金色の干渉色を発する画線となる。
【0079】
以上の印刷を経て完成した本発明の潜像印刷物(1´)の効果について、図16を用いて説明する。「観察角度領域A」における観察では、図16(a)に示す第一の印刷層(4´)のみが視認でき、「観察角度領域B」における観察では、図16(b)に示す第一の画像(6´)が金色の干渉色を伴って光る画像として視認でき、「観察角度領域C」における観察では、図16(c)に示す第二の画像(7´)が第一の印刷層(4´)を構成する第一の画線群(4a)の色である青色の濃淡を伴って視認できた。以上、正対して観察した場合には、第一の印刷層(4´)のみが視認され、わずかに傾けた浅い観察角度では、第一の画像(6´)のみが視認され、深く傾けた観察角度では、第二の画像(7´)のみが視認できることが確認できた。
【実施例2】
【0080】
実施例2においては、第一の印刷層(4´)をインキジェットプリンターで形成し、第二の印刷層(5´)をスクリーン印刷で形成して潜像印刷物(1´)を形成する例であって、第一の印刷層(4´´)の第一の画線群の画線幅に太細を設けることで、第一の画像(6´´)及び第二の画像(7´´)とは異なる有意味情報を形成する例について、図17から図21を用いて説明する。
【0081】
図17は実施例2における潜像印刷物(1´´)を示す図であり、基材(2´´)上に印刷領域(3´´)を備え、印刷領域(3´´)中に第一の印刷層(4´´)と第二の印刷層(5´´)が重ね合わせて形成されて成る。
【0082】
図18は第一の印刷層(4´´)を示す図であり、画線幅0.25mmの青色の画線をピッチ0.50mmで第一の方向(a)にそれぞれ複数配置して形成した第一の画線群(4a´´)の中に、画線幅0.35mmの領域を設け、この領域によって「JPN」の有意味情報を形成している。第一の画線群(4a´´)の面積率は、50%であり、「JPN」の有意味情報を構成する画線群の面積率は、70%である。この第一の印刷層(4´´)を市販のインキジェットプリンター(EPSON製 PM−770c)を用いて一般的な上質紙である基材(2´´)に緑色で印刷した。
【0083】
図19(a)は、第二の印刷層(5´´)を示す図であり、第二の印刷層(5´´)は、図19(b)に示す第一の画像(6´´)と図19(c)に示す第二の画像(7´´)を有している。図19(b)に示す第一の画像(6´´)は、画線の太細によって形成しており、情報部(8´´)である「桜」の模様と背景部(9´´)である「桜」の模様を囲む四角形から成る。図19(c)に示す第二の画像(7´´)は、画線の位相のずれによって形成しており、情報部(10´´)である「NIPPON」の文字と背景部(11´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形から成る。
【0084】
図20は、第二の印刷層(5´´)を構成する四つの画線群(12´´、13´´、14´´、15´´)を示すものであり、第二の画線群(12´´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成る。第三の画線群(13´´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´´)に対し、同一の位相で成る。第四の画線群(14´´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第五の画線群(15´´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´´)及び第三の画線群(13´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第二の画線群(12´´)及び第四の画線群(14´´)の面積率は、50%であり、第三の画線群(13´´)及び第五の画線群(15´´)の面積率は、70%である。
【0085】
第一の画像(6´´)の情報部(8´´)である「桜」の模様は、第三の画線群(13´´)及び第五の画線群(15´´)によって構成し、第一の画像(6´´)の背景部(9´´)である「桜」の模様を囲む四角形は、第二の画線群(12´´)及び第四の画線群(14´´)によって構成している。
【0086】
また、第二の画像(7´´)の情報部(10´´)である「NIPPON」の文字は、第二の画線群(12´´)と第三の画線群(13´´)によって構成し、第二の画像(7´´)の背景部(11´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12´´)と第三の画線群(13´´)の位相をずらして構成した第四の画線群(14´´)と第五の画線群(15´´)によって構成している。
【0087】
図19(a)に示した第二の印刷層(5´´)を表2に示す配合のスクリーンインキを用いて、第一の印刷層(4´´)上に重ね合わせてUV乾燥方式のスクリーン印刷によって印刷した。画線の盛り上がりの高さは約15μmである。
【0088】
【表2】
【0089】
表1に示すインキは、光が入射することで赤色の干渉色を発する虹彩色パール顔料を含んでおり、本インキで形成した画線は、正反射光が生じない状態では無色透明であって、正反射光が生じた状態では赤色の干渉色を発する画線となる。
【0090】
以上の印刷を経て完成した本発明の潜像印刷物(1´´)の効果について、図21を用いて説明する。
【0091】
「観察角度領域A」における観察では、図21(a)に示す第一の印刷層(4´´)の「JPN」の有意味情報が視認できた。「観察角度領域B」における観察では、図21(b)に示す第一の画像(6´´)が赤色の干渉色を伴って光る画像として視認できた。「観察角度領域C」における観察では、図21(c)に示す第二の画像(7´´)が第一の印刷層(4´´)を構成する第一の画線群(4a´´)の色である緑色の濃淡を伴って視認できた。このように、正対して観察した場合には第一の印刷層(4´´)のみが視認され、わずかに傾けた浅い観察角度では第一の画像(6´´)のみが視認され、深く傾けた観察角度では第二の画像(7´´)のみが視認できることが確認できた。
【0092】
本実施例2に記載したように、第一の印刷層(4´´)に画線の太細で有意味情報を形成する場合、有意味情報部を付与する部位とそれ以外の部位における画線の画線幅の差異は、画線の濃度に左右されるが画線面積率の差異で10%以上25%以下程度に留めることが望ましい。これは、前述もしたとおり、画線面積率の差異が小さすぎる場合には、「観察角度領域A」において有意味情報が視認しづらくなることに加え、逆に、画線面積率の差異が大きすぎる場合には、「観察角度領域Cに」おいて有意味情報と第二の画像が混ざり合って視認されてしまうためである。
【実施例3】
【0093】
実施例3においては、第一の印刷層(4´´´)をオフセット印刷で形成し、第二の印刷層(5´´´)をスクリーン印刷で形成して潜像印刷物(1´´´)を形成する例であって、第二の印刷層(5´´´)の各画線群における画線を、特定の角度に分断した破線とすることによって、「観察角度領域B」において出現する第一の画像により変化に富んだ視覚効果の付与を可能とした例について、図22から図26を用いて説明する。
【0094】
図22は、実施例3における潜像印刷物(1´´´)を示す図であり、基材(2´´´)上に印刷領域(3´´´)を備え、印刷領域(3´´´)中に第一の印刷層(4´´´)と第二の印刷層(5´´´)が重ね合わせて形成されて成る。
【0095】
図23は、第一の印刷層(4´´´)を示す図であり、画線幅0.25mmの青色の画線をピッチ0.50mmで第一の方向(a)にそれぞれ配置して第一の画線群(4a´´´)を構成して成る。第一の画線群(4a´´´)の面積率は、50%である。この第一の印刷層(4´´´)を青色インキ((大日本インキ化学工業株式会社製 Dai Cure RT−8 藍)を用いてUV乾燥型オフセット印刷方式で一般的なコート紙である基材(2´´´)に印刷した。
【0096】
図24(a)は、第二の印刷層(5´´´)を示す図であり、第二の印刷層(5´´´)は、図24(b)に示す第一の画像(6´´´)と図24(c)に示す第二の画像(7´´´)を有している。図24(b)に示す第一の画像(6´´´)は、画線の太細によって形成しており、情報部(8´´´)である「桜」の模様と背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形から成る。図24(c)に示す第二の画像(7´´´)は、画線の位相のずれによって形成しており、情報部(10´´´)である「NIPPON」の文字と背景部(11´´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形から成る。
【0097】
図25は、第二の印刷層(5´´´)を構成する四つの画線群(12´´´、13´´´、14´´´、15´´´)を示すものであり、第二の画線群(12´´´)は、画線幅0.40mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置されているが、それぞれの画線は、角度45°の非画線によって分断された破線となっている。この破線はピッチ0.5mmで0.25mm幅の画線部と0.25mm幅の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第三の画線群(13´´´)は、画線幅0.40mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)に対し、同一の位相で成るが、それぞれの画線は、角度−45°の非画線によって分断された破線となっている。この破線は、ピッチ0.5mmで0.32mm幅の画線部と0.18mm幅の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第四の画線群(14´´´)は、第二の画線群(12´´´)と構成は同じ破線であって、第二の画線群(12´´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第五の画線群(15´´´)は、第三の画線群(13´´´)と構成は同じ破線であって、第三の画線群(13´´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。本実施例3においては、水平方向の画線幅の差異はないものの、45°あるいは−45°方向の破線方向に画線幅の差異を設けた構成となっている。第二の画線群(12´´´)及び第四の画線群(14´´´)の面積率は、32%であり、第三の画線群(13´´´)及び第五の画線群(15´´´)の面積率は、51%である。
【0098】
第一の画像(6´´´)の情報部(8´´´)である「桜」の模様は、第三の画線群(13´´´)及び第五の画線群(15´´´)によって構成し、第一の画像(6´´´)の背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形は、第二の画線群(12´´´)及び第四の画線群(14´´´)によって構成している。
【0099】
また、第二の画像(7´´´)の情報部(10´´´)である「NIPPON」の文字は、第二の画線群(12´´´)と第三の画線群(13´´´)によって構成し、第二の画像(7´´´)の背景部(11´´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12´´´)と第三の画線群(13´´´)の位相をずらして構成した第四の画線群(14´´´)と第五の画線群(15´´´)によって構成している。
【0100】
図24(a)に示した第二の印刷層(5´´´)を表1に示す配合のスクリーンインキを用いて、第一の印刷層(4´´´)上に重ね合わせてUV乾燥方式のスクリーン印刷によって印刷した。画線の盛り上がりの高さは約10μmである。
【0101】
以上の印刷を経て完成した本発明の潜像印刷物(1´´´)の効果について、図26を用いて説明する。「観察角度領域A」における観察では、図26(a)に示す第一の印刷層(4´´´)のみが視認できた。
【0102】
また、「観察角度領域B」における観察では、図26(b)に示す第一の画像(6´´´)が金色の干渉色を伴って光る画像として視認できた。また、本実施例3において、第一の画像(6´´´)の情報部(8´´´)である「桜」の模様と背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形は、破線の分断角度が45°と−45°で大きく異なっていることから、「観察角度領域B」において潜像印刷物(1´´´)の観察角度をわずかに変えると、入射する光の角度に応じて最も強く光る面が変化し、情報部(8´´´)である「桜」の模様が強く光った場合には背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形が弱く光り、背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形が強く光った場合には情報部(8´´´)である「桜」の模様が弱く光る、いわゆるネガポジ反転の効果が金色に光るパール効果に加味され、より視覚効果に富んだ表現が可能となった。
【0103】
また、「観察角度領域C」における観察では、図26(c)に示す第二の画像(7´´´)が第一の印刷層(4´´´)を構成する第一の画線群(4a´´´)の色である青色の濃淡を伴って視認できた。
【0104】
このように、正対して観察した場合には第一の印刷層(4´´´)のみが視認され、わずかに傾けた浅い観察角度では第一の画像(6´´´)のみが視認され、深く傾けた観察角度では第二の画像(7´´´)のみが視認できることが確認できた。
【0105】
また、図27に、第一の印刷層(4´´´´)を一つの色のみで構成するのではなく、複数の色によって構成する場合の画線構成を示す。図27は、二色の異なる色の画線(18、19)の集合によって第一の印刷層(4´´´´)を形成したものであり、第一の色の画線(18)と第二の色の画線(19)が交互に、それぞれ0.125mmの画線幅で、0.50mmのピッチで複数配置されて成る。
【0106】
第一の色の画線(18)と第二の色の画線(19)は、視認性の効果を勘案すると、交互に配置するのが良い。第一の色の画線(18)と第二の色の画線(19)を交互に配置するのではなく、例えば、第一の色の画線(18)を一として、第二の色の画線(19)を二の割合で配置(一対二の割合で配置)した場合、つまり、第一の色の画線(18)、第二の色の画線(19)、第二の色の画線(19)、第一の色の画線(18)、・・・、第二の色の画線(19)とした場合、潜像印刷物を「観察角度領域C」で観察した際に「NIPPON」の文字が視認できず、文字が崩れた意味不明な状態となってしまう。
【0107】
また、色の数については、二色以上であっても何ら問題ない。ただし、この場合も、画線の配置は、全ての色を順番に配置する。例えば、四色の異なる色の画線で構成する場合は、第一の色の画線、第二の色の画線、第三の色の画線、第四の色の画線、第一の色の画線、・・・、第四の色の画線と順に配置する。
【0108】
このような第一の印刷層(4´´´´)を複数の色の画線で構成し、図14(a)に示したような第二の印刷層(5´)を重ね合わせて潜像印刷物を形成することで、「観察角度領域C」における観察において出現する第二の画像の情報部と背景部のそれぞれの領域に第一の色と第二の色の色相の違いを反映させることが可能である。この場合、単色の色で第一の印刷層を形成した場合と異なり、色の濃淡だけでなく、第一の色と第二の色の色相の違いが第二の画像に反映されるため、より色彩表現豊かな第二の画像を形成することが可能である。
【0109】
また、これまで、発明を実施するための形態及び実施例において、潜像印刷部は、基材上に第一の印刷層と第二の印刷層を形成して成る形態で説明をしてきたが、それらとは別に、別の印刷層を設けても良い。図28に、第一の印刷層及び第二の印刷層とは別の第三の印刷層(20)を設ける場合の画線構成を示す。第三の印刷層(20)は、第二の印刷層よりも下に配置されている必要があり、第一の印刷層と第二の印刷層の間、又は基材と第一の印刷層の間に配置される。第三の印刷層は、地紋画線(21)や背景画像(22)を形成しても良い。地紋画線(21)を形成する場合は、第一の印刷層の画線群との干渉を避ける必要がある。そのため、地紋画線(21)の画線は、第一の方向(a)とは異なる方向に配列されて成り、第二の拡散反射領域で強く出現しないように形成する。この場合、第二の拡散反射光領域で強く出現しなければ良く、完全に消失はしなくてもよい。また、背景画像(22)を形成する場合も、第一の印刷層の画線群との干渉を避ける必要がある。第一の印刷層の画線群の色とは異なる色の網点を複数配列して成り、第二の拡散反射領域で強く出現しないように形成する。この場合も、地紋画線(21)と同様、第二の拡散光反射領域で強く出現しなければ、完全に消失はしなくてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、1´、1´´、1´´´ 潜像印刷物
2、2´、2´´、2´´´ 基材
3、3´、3´´、3´´´ 画像領域
4、4´、4´´、4´´´、4´´´´ 第1の印刷層
4a、4a´、4a´´、4a´´´ 第一の画線群
5、5´、5´´、5´´´ 第二の印刷層
5a、5b、5c 第二の印刷層を構成する画線群
6、6´、6´´、6´´´ 第一の画像
7、7´、7´´、7´´´ 第二の画像
8、8´、8´´、8´´´ 第一の画像の情報部
9、9´、9´´、9´´´ 第一の画像の背景部
10、10´、10´´、10´´´ 第二の画像の情報部
11、11´、11´´、11´´´ 第二の画像の背景部
12、12´、12´´、12´´´ 第二の画線群
13、13´、13´´、13´´´ 第三の画線群
14、14´、14´´、14´´´ 第四の画線群
15、15´、15´´、15´´´ 第五の画線群
16 観察者の視点
17 光源
18 第一の色の画線
19 第二の色の画線
20 第三の印刷層
21 地紋画線
22 背景画像
a 第一の方向
W1、W2、W3 画線幅
P ピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に万線を形成し、カラーフリップフロップ性を備えた盛り上がりのある画線を、面積率や位相に差異を設けて万線の上に重ね合わせて形成することによって、光を入射させることで第一の潜像画像が出現し、印刷物を深く傾けて観察することで第二の潜像が出現する潜像印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券や諸証券、郵券等のセキュリティが必要な印刷物には、偽造を抑止するために真正品と偽造品を区別するための真偽判別要素の付与が不可欠である。また、付与する真偽判別要素は、特別な道具を必要とすることなく、自然光によって万人が真偽判別できる要素であることが望まれる。
【0003】
自然光で真偽判別が可能な真偽判別要素の一例としては、日本銀行券に施されているパール印刷やすき入れ、潜像模様等が挙げられる。パール印刷のように観察角度に応じて画像に付与された色彩が変化するもの、すき入れのように特定の条件下でのみ観察可能なもの、潜像模様のようにそれまで観察できなかった画像(潜像)が出現するもの等、これらは、対面販売のような一般的な物品とセキュリティ印刷物との交換時にユーザが真偽を目視で判断できる要素として付与されている。
【0004】
それら様々な種類の真偽判別要素の中でも、基材や画線の凹凸を利用して形成する潜像模様は、正対して観察した場合には潜像画像が視認されず、傾けることで潜像画像が出現する効果を有しているため、カラーコピーやプリンターを用いた単純な複製による再現は不可能である。
【0005】
本出願人は、すき入れや凹版印刷、エンボス等によって形成した凹凸と印刷画線を重ね合わせることで、印刷物を傾けると潜像が出現する潜像印刷物に係わる発明を出願している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
更に、本出願人は、基材表面に印刷した第1の画線と、その上に印刷された盛り上がりのある透明又は半透明な画線によって、真上から観察したときは画像が認識されず、観察角度を変化させることにより画像が認識できる偽造防止形成体に係わる発明を出願している(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0007】
また、基材上に凹凸を形成し、かつ、その上に第1コーティングと第2コーティングの二つのコーティングを施し、そのうちの第2コーティングは光学可変構造体を備えることを特徴としたデータ担体が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
また、有色インキで印刷した万線状の第1のパターンと、凹凸を成す画素で構成した第2のパターンと、所定の反射角度でのみ視認されるインキで印刷された第3のパターンを形成し、第1のパターンの万線に直交する方向から印刷面を傾けて観察した時に印刷面とのなす観察角度が小さい順に第3のパターン、第2のパターンが順に視認される潜像パターンを有する印刷物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2615401号公報
【特許文献2】特許2600094号公報
【特許文献3】特開2005−205897号公報
【特許文献4】特許3686953号公報
【特許文献5】特表2005−535485号公報
【特許文献6】特許3789874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、すき入れや凹版印刷等で形成した凹凸構造に対して、平行な印刷画線を重ね合わせる技術であり、凹凸の高さが高ければ高いほど、潜像が観察できる角度を浅くすることが可能である。しかし、印刷物の流通適性や堅牢性等を考慮すると、基材に形成して良い凹凸の高さには限界があり、これらの限界を考慮して印刷物を形成すると、少なくとも70°以上は傾けなければ潜像を観察することができない。
【0011】
また、特許文献3及び特許文献4に記載の技術は、基材表面に印刷した第一の画線の上に、透明又は半透明な盛り上がりのある画線を重ね合わせることで、盛り上がりのある画線によって生じる光の反射・屈折・回折等によって潜像を出現させる技術であるが、特許文献1及び特許文献2に記載の技術と比較して潜像が出現する傾け角度は小さくなるものの、印刷物として流通させることが可能な画線高さで形成した場合には、やはり潜像が出現する傾き角度は深くなる傾向にある。
【0012】
したがって、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術が付与されたセキュリティ印刷物の真偽を判定するにあたっては、潜像を視認するために印刷物を深く傾けて観察する必要が生じる。この動作は大きな動作となりがちであり、真偽判別を行っていることが、居合わせた人に察知されることとなる。対面販売においては、代金として手渡された紙幣は、客の目の前で迅速に真偽判別を行う必要があるが、自分の渡した紙幣が真偽判別の対象となっていることを知った場合の客の心象は良いものではない。よって、真偽判別自体は極力さりげない動作で行えることがより好ましいと考えられ、潜像の認証角度が深いということは問題となる場面がある。
【0013】
特許文献5及び特許文献6に記載の技術は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術を補強することを意図したものであり、傾ける角度が凹凸による潜像を観察できる角度に達するまでは、光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキで形成した異なる画像を視認させることによって、浅い傾け角度においても真偽判別機能を補完するものである。この場合、光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキにはパールインキや高光沢なインキ等が使用される。
【0014】
パールインキや高光沢なインキ等で形成した画像は、印刷物に光を入射させることで、その画像を可視化、色変化を生じさせることが可能である。よって、真偽判別のためには、印刷物に光を入射させてわずかに傾ければ良く、その場合の認証角度は、多くの場合、浅い傾け角度で良い。以上のように、特許文献4及び特許文献5に記載の技術においては、潜像を認証するために深く傾けなくとも良いという特徴を有する。
【0015】
ただし、この二つの技術は、凹凸を形成したのち、第1のパターン(又は第1のコーティング)及び第3のパターン(又は第2のコーティング)を形成する必要があり、少なくとも二つの異なるインキ及び二つの印刷版面を用いて形成する必要がある。また、第1のパターン(又は第1のコーティング)はオフセット印刷で可能であっても、第3のパターン(又は第2のコーティング)を形成する光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキの効果を高めて付与したい場合には、オフセット印刷では充分でない場合が多く、グラビア印刷方式やスクリーン印刷方式又は凹版印刷方式であることが望ましい。以上のことから、第1のパターン(又は第1のコーティング)及び第3のパターン(又は第2のコーティング)を形成する印刷方式自体も異なった印刷方式を要求する場合が多い。
【0016】
よって、特許文献5及び特許文献6に記載の技術は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術と比較すると、多色印刷で形成する必要があり、印刷工程が複雑になるという問題が生じる。
【0017】
以上のことから、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術に関しては、潜像画像の認証角度が深くなりすぎるという問題があり、特許文献5及び特許文献6に記載の技術に関しては、浅い角度で光学的可変構造体や特定の反射角度でのみ視認されるインキによって形成した異なる画像を認証できるものの、印刷工程が複雑になるという問題が生じていた。
【0018】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、基材上に形成した第一の画線の上に、カラーフリップフロップ性を有する透明なインキで形成した盛り上がりを有する画線を重ね合わせて形成することで、浅い観察角度と深い観察角度の両方でそれぞれ異なる潜像を視認することが可能な潜像印刷物を極めて単純で安価な方法によって提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明における潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、印刷領域に、基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、第一の印刷層は、盛り上がりのある画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、第二の印刷層は、複数の画線群から成り、複数の画線群は、画線を第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、画線を第二の画線群の画線と同一の位相で、第一の方向に複数配列して成る第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、画線を第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第四の画線群と、画線を第三の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、第一の方向に複数配列して成る第三の面積率を有する第五の画線群を備え、第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、第一の画像は、面積率の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、第二の画像は、画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、第一の画像の情報部は、第三の画線群及び第五の画線群から成り、第一の画像の背景部は、第二の画線群及び第四の画線群から成り、第二の画像の情報部は、第四の画線群及び第五の画線群から成り、第二の画像の背景部は、第二の画線群及び第三の画線群から成り、第五の画線群は、第一の画像及び第二の画像の共有の情報部と成り、第二の画線群は、第一の画像及び第二の画像の共有の背景部と成り、観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第一の印刷層が視認され、観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、第一の画像が視認され、観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第二の画像が視認されることを特徴とする支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第二の画像が視認されることを特徴とする。
【0020】
本発明における潜像印刷物は、第一の画像における情報部の面積率と背景部の面積率の差異が、10%以上75%以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明における潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、前記印刷領域に、前記基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、前記第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、前記第一の印刷層は、画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、前記第二の印刷層は、複数の画線群から成り、前記複数の画線群は、盛り上がりのある画線を第一の角度で分断した破線を前記第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、前記画線を前記第一の角度とは異なる第二の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、前記画線を第一の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率を有する第四の画線群と、前記画線を第二の角度で分断した破線を前記第三の画線群の画線に対して位相を前記特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第三の面積率を有する第五の画線群を備え、前記第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、前記第一の画像は、前記面積率の違い及び/又は前記第一の角度と前記第二の角度の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第二の画像は、前記画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第一の画像の情報部は、前記第三の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第一の画像の背景部は、前記第二の画線群及び前記第四の画線群から成り、前記第二の画像の情報部は、前記第四の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第二の画像の背景部は、前記第二の画線群及び第三の画線群から成り、前記第五の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の情報部と成り、前記第二の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の背景部と成り、観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第一の印刷層が視認され、前記観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、前記第一の画像が視認され、前記観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第二の画像が視認されることを特徴とする。
【0022】
本発明における潜像印刷物は、第一の角度と第二の角度の角度差が、15°以上90°以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明における潜像印刷物は、第二の面積率と第三の面積率の差異は、画線群を構成する画線における画線幅の太細、画線の粗密のいずれか、又はその両方によって形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明における潜像印刷物は、第一の面積率、第二の面積率及び第三の面積率は、0%及び100%を除いた面積率であることを特徴とする。
【0025】
本発明における潜像印刷物は、画線群を構成する画線におけるピッチは、20μm以上2mm以下であることを特徴とする。
【0026】
本発明における潜像印刷物は、第二の画線群における画線と第四の画線群における画線を特定の距離ずらして成る位相差及び第三の画線群における画線と第五の画線群における画線を特定の距離ずらして成る位相差は、画線のピッチに対して1/4以上1/1未満であることを特徴とする。
【0027】
本発明における潜像印刷物は、カラーフリップフロップ性を有するインキによる画線の盛り上がりの高さは、3μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【0028】
本発明における潜像印刷物は、第一の印刷層は、有意味情報を含み、有意味情報は、画線を第一の画線群の画線と同一の位相で、第一の方向に複数配列して成り、第一の面積率とは異なる面積率から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明における潜像印刷物は、第二の印刷層中に面積率の差異によって形成した第一の画像が、印刷物に蛍光灯や日光の光を当てるだけで出現するため、わずかに傾けるだけの極めて浅い観察角度で観察した場合にでも第一の画像を視認することができる。
【0030】
本発明における潜像印刷物は、第二の印刷層中に画線の位相の違いによって形成した第二の画像が、深く傾けた場合にのみ出現するため、浅い観察角度における第一の画像の認証に加えて、深い観察角度における第二の画像の認証の二段階の認証が可能であり、真偽判別性に優れている。
【0031】
本発明における潜像印刷物は、第一の印刷層を印刷する第一の印刷工程と、第二の印刷層を印刷するための第二の印刷工程のみの、わずか2工程で形成することが可能であり、エンボス層の形成を含めると3工程必要であった特許参考文献5及び6に記載の技術と比較してより簡単な印刷工程で安価に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態における潜像印刷物を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における第一の印刷層を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における画線の形態及び一定面積中における面積率の大小を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における第一の印刷層と第二の印刷層の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における第一の印刷層を構成する画線と第二の印刷層を構成する画線の位置関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における観察角度領域Cにおける観察において、第二の画像が出現する原理を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における第二の印刷層の各画線群における画線を特定の角度で分断した破線を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における画線を特定の角度で分断した破線とした場合の面積率の差異を示す図である。
【図12】本発明の実施例1における潜像印刷物を示す図である。
【図13】本発明の実施例1における第一の印刷層を示す図である。
【図14】本発明の実施例1における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図15】本発明の実施例1における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図16】本発明の実施例1において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図17】本発明の実施例2における潜像印刷物を示す図である。
【図18】本発明の実施例2における第一の印刷層を示す図である。
【図19】本発明の実施例2における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図20】本発明の実施例2における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図21】本発明の実施例2において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図22】本発明の実施例3における潜像印刷物を示す図である。
【図23】本発明の実施例3における第一の印刷層を示す図である。
【図24】本発明の実施例3における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。
【図25】本発明の実施例3における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。
【図26】本発明の実施例3において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。
【図27】本発明の潜像印刷物の第一の印刷層を複数の異なる色の画線で構成する例を示す図である。
【図28】本発明の潜像印刷物の第三の印刷層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0034】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態における潜像印刷物を示す図である。図2は、本発明の実施の形態における第一の印刷層を示す図である。図3は、本発明の実施の形態における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図4は、本発明の実施の形態における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図5は、本発明の実施の形態における画線の形態及び一定面積中における面積率の大小を示す図である。図6は、本発明の実施の形態における第一の印刷層と第二の印刷層の構成を示す図である。図7は、本発明の実施の形態における第一の印刷層を構成する画線と第二の印刷層を構成する画線の位置関係を示す図である。図8は、本発明の実施の形態において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図9は、本発明の実施の形態における観察角度領域Cにおける観察において、第二の画像が出現する原理を示す図である。図10は、本発明の実施の形態における第二の印刷層の各画線群における画線を特定の角度で分断した破線を示す図である。図11は、本発明の実施の形態における画線を特定の角度で分断した破線とした場合の面積率の差異を示す図である。図12は、本発明の実施例1における潜像印刷物を示す図である。図13は、本発明の実施例1における第一の印刷層を示す図である。図14は、本発明の実施例1における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図15は、本発明の実施例1における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図16は、本発明の実施例1において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図17は、本発明の実施例2における潜像印刷物を示す図である。図18は、本発明の実施例2における第一の印刷層を示す図である。図19は、本発明の実施例2における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図20は、本発明の実施例2における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図21は、本発明の実施例2において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図22は、本発明の実施例3における潜像印刷物を示す図である。図23は、本発明の実施例3における第一の印刷層を示す図である。図24は、本発明の実施例3における第二の印刷層と第一の画像及び第二の画像を示す図である。図25は、本発明の実施例3における第二の印刷層を構成する四つの画線群を示す図である。図26は、本発明の実施例3において、潜像印刷物中に視認される画像が、観察角度の変化に応じて変化する効果を示す図である。図27は、本発明の潜像印刷物の第一の印刷層を複数の異なる色の画線で構成する例を示す図である。図28は、本発明の潜像印刷物の第三の印刷層を示す図である。
【0035】
図1は、本発明の潜像印刷物(1)を示す図であり、基材(2)上の印刷領域(3)に第一の印刷層(4)と第二の印刷層(5)とを形成している。図2は、第一の印刷層(4)を示す図であり、画線幅(W1)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置し、第一の面積率を有する第一の画線群(4a)を構成している。図3(a)は、第二の印刷層(5)を示す図であり、第二の印刷層(5)中に図3(b)に示す第一の画像(6)と図3(c)に示す第二の画像(7)が含まれている。第一の画像(6)は、「桜」の模様を構成している情報部(8)とその周囲を囲む四角形の背景部(9)から成り、第二の画像(7)は、「NIPPON」の文字を構成している情報部(10)とその周囲を囲む四角形の背景部(11)から成っている。
【0036】
第二の印刷層(5)における第一の画像(6)と第二の画像(7)は、四種類の画線群によって構成されている。図4は、四種類の画線群(12、13、14、15)である第二の画像郡(12)、第三の画線群(13)、第四の画線群(14)及び第五の画線群(15)を拡大したものである。第二の画線群(12)は、画線幅(W1)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の面積率を有している。第三の画線群(13)は、画線幅(W2)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12)における画線と同一の位相で、第二の面積率とは異なる第三の面積率を有している。第四の画線群(14)は、第二の画線群(12)における画線の位相を特定の距離だけ第一の方向(a)にずらした画線を、第一の方向と複数配列して成り、第二の面積率を有している。第五の画線群(15)は、第三の画線群(13)における画線の位相を特定の距離だけ第一の方向(a)にずらした画線を、第一の方向と複数配列して成り、第三の面積率を有している。
【0037】
なお、第一の印刷層(4)及び第二の印刷層(5)における各画線群を構成する「画線」とは、図5に示すように、(a)点線や破線の分断線、(b)直線、(c)曲線、(d)波線、(e)中抜け画線及び(f)網点などのことであり、如何なる画線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれる。また、図5に示すように、「面積率」とは、印刷領域の一定面積中(図中の点線の領域中)に占める画線群の割合のことであり、面積率の差異は、(g)画線の太細による画線幅の差異のみで形成してもよく、(h)画線の粗密、いわゆる画線密度の差異をもって形成してもよく、この両方を用いて形成してもよい。ただし、面積率は、ピッチと画線幅が決まった場合に自動的に決定するものであり、本実施の形態でいえば、第二の印刷層(5)における四種類の画線群(12、13、14、15)のピッチが同一であることから、画線幅(W1)の画線で構成した第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)は、第二の面積率を有し、画線幅(W2)の画線で構成した第三の画線群(13)及び第五の画線群(15)は、第三の面積率を有することとなる。
【0038】
第一の画像(6)の情報部(8)と背景部(9)は、画線群における面積率の違いによって形成されて成り、第二の画像(7)の情報部(10)と背景部(11)は、画線群における画線の位相の違いによって形成されて成る。つまり、第一の画像(6)の情報部(8)である「桜」の模様は、画線幅(W2)の画線の集合であり、第三の面積率を有する第三の画線群(13)及び第五の画線群(15)によって構成し、第一の画像(6)の背景部(9)である「桜」の模様を囲む四角形は、画線幅(W1)の画線の集合であり、第二の面積率を有する第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)によって構成している。また、第二の画像(7)の情報部(10)である「NIPPON」の文字は、位相が同じ第二の画線群(12)と第三の画線群(13)によって構成し、第二の画像(7)の背景部(11)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12)と第三の画線群(13)の位相をずらして構成した第四の画線群(14)と第五の画線群(15)によって構成している。
【0039】
第一の印刷層(4)は、基材と異なる色を有する材料で形成し、第二の印刷層(5)は、透明あるいは半透明で、カラーフリップフロップ性を有して盛り上がりのある形状で形成する。
【0040】
第一の印刷層(4)は画線の盛り上がりを必要としないことから、印刷方式に特に制限はなく、あらゆる印刷方式で形成することが可能であり、またインキジェットプリンターやレーザプリンター等のデジタル印刷機器を用いて形成しても何ら問題はない。また、第二の印刷層(5)については、盛り上がりが必要であることから、フレキソ印刷やグラビア印刷でも形成可能であるが、高い画線の盛り上がりが容易に形成可能な凹版印刷やスクリーン印刷で形成することが望ましい。
【0041】
また、ここで言うカラーフリップフロップ性とは、正反射した場合に、色相が変化する特性のことであり、光沢インキや金属インキ等が有する明暗のみが変化する明暗フリップフロップ性とは異なり、正反射時の色変化に富んだ性質のことである。このカラーフリップフロップ性を備えた材料としては、近年多種多様な顔料が販売されているが、現在市販されている代表的な顔料としては、虹彩色パール顔料、鱗片状マイカ顔料、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等が存在する。これらの顔料を適量分散させてインキ化し印刷することで、透明性あるいは半透明であって、カラーフリップフロップ性を備えた画線を形成することが可能である。本明細書中では、主に虹彩色パール顔料を用いて第二の印刷層(5)の画線群を形成している。虹彩色パール顔料を含んで形成された画線は、拡散反射光下では無色透明であり、正反射光が生じた場合にのみパール顔料の特徴である干渉色を発する特徴を有している。
【0042】
図6には、第一の画線群を含む第一の印刷層(4)と四つの画線群を含む第二の印刷層(5)の位置関係を示している。図のように、第一の印刷層(4)の上に盛り上がりを有した画線で構成された第二の印刷層(5)が重なって形成されている。
【0043】
また、その際、図6のA−A´断面を見た場合、第一の印刷層(4)を構成する第一の画線群(4a)
と、第二の印刷層(5)を構成する盛り上がりを有した画線(5a)の位置関係を図7(a)から図7(e)に説明する。ただし、以下に説明で用いる第二の印刷層(5)を構成する盛り上がりを有した画線(5a)とは、第二の印刷層(5)を構成する四つの画線群(12、13、14、15)のうちのいずれかひとつの画線群中の画線を代表して例示したものであり、いずれかの画線群に限定するものではない。第一の画線群(4a)と第二の印刷層の画線群(5a)の重なり合いの位置関係は、図7(a)から図7(d)に示すように、第一の画線群(4a)の上のいずれかの位置に、第二の印刷層の画線群(5a)が重なり合って成るか、あるいは図7(e)に示すように第一の画線群(4a)の上に第二の印刷層の画線群(5a)が重なり合わなくともよい。
【0044】
次に、本発明の潜像印刷物が有する効果とその効果が生じる原理について説明する。まず、図8を用いて、本発明の効果を説明する。図8(d)は、観察者の視点(16)、光源(17)及び本発明の潜像印刷物(1)の位置関係を示した図である。光源(17)から潜像印刷物(1)に入射角度―45°で光が入射した場合、受光角度45°±15°近傍に正反射光が多く存在する領域が生じる。この領域を本明細書においては、「観察角度領域B」と定義する。また、この観察角度領域以外の領域は、正反射光がほとんど存在せず、拡散反射光が多く存在する領域となる。この領域のうち、観察角度0°から30°及び観察角度60°から70°までの角度を第一の拡散反射光が多く存在する「観察角度領域A」と定義する。また、盛り上がりのある画線が生じさせる画線の向こう側の画像を遮蔽する効果(この効果については後記する。)が強く発揮される観察角度70°から90°までの角度を第二の拡散反射光が多く存在する「観察角度領域C」と定義する。
【0045】
観察者の視点(16)が、「観察角度領域A」の中にある場合、観察者には、図8(a)に示す第一の印刷層(4)のみが見える。これは、正反射光がほとんど存在せず、拡散反射光のみが多く存在する「観察角度領域A」において、第二の印刷層(5)を形成している画線群がカラーフリップフロップ性を発揮することはなく、更に第二の印刷層(5)は、透明あるいは不透明であることから不可視であるため、結果として基材と異なる色を有して形成された第一の印刷層(4)のみが視認されることとなる。
【0046】
次に、観察者の視点(16)が「観察角度領域B」の中にある場合、観察者には、図8(b)に示す第二の印刷層(5)が有する第一の画像(6)のみが視認される。これは、「観察角度領域B」においては、正反射光が多く存在することから、第二の印刷層(5)を形成している画線群がカラーフリップフロップ性を発揮することに起因する。虹彩色パール顔料を含んでいる場合、画線群はパール効果による干渉色を発し、第二の印刷層(5)がこのパールの干渉色によって可視化するためである。第二の印刷層(5)が有する第一の画像(6)と第二の画像(7)のうち、「観察角度領域B」においては、第二の画像(7)は視認されず、第一の画像(6)のみが視認されるが、その原理について説明する。
【0047】
第二の印刷層(5)における第二の画線群(12)と第四の画線群(14)は、同じ面積率であることから、同じ程度の視認性となり、更に、第三の画線群(13)と第五の画線群(15)も、同じ面積率であることから、同じ程度の視認性となる。逆に、第二の画線群(12)と第四の画線群(14)の組合せと、第三の画線群(13)と第五の画線群(15)の組合せでは、その面積率の差異により異なる視認性となる。すなわち、この「観察角度領域B」においては、面積率によって反射する光の強弱が生じ、面積率の大きい方が面積率の小さい方よりも強い光を反射することになる。よって、面積率の違いによって形成した第一の画像(6)のみが可視化され観察者に視認されることとなる。
【0048】
次に、観察者の視点(16)が「観察角度領域C」の中にある場合、観察者には、図8(c)に示す第二の印刷層(5)が有する第二の画像(7)のみが視認される。これは、「観察角度領域C」においては、第二の印刷層(5)を形成する盛り上がりのある画線群(5a)が、観察者から見て画線群(5a)の奥側にある画線を遮蔽する効果が生じるためである。
【0049】
この効果及び原理を、図9(a)、図9(b)及び図9(c)に示す。図9(a)に、本発明の潜像印刷物における印刷領域(3)中の構成の一例として、第一の印刷層(4)を形成する第一の画線群(4a)の上に、第二の印刷層(5)を形成する盛り上がりを有する画線群のうち位相の異なる二つの画線群(5b、5c)が重なって形成された図を示す。この例において、盛り上がりを有する画線群(5b、5c)の画線幅は、ピッチの半分であり、盛り上がりを有する一つの画線群(5b)ともう一つの画線群(5c)は、それぞれ位相がピッチの約半分ずれている。そのため、画線群(4a)と画線群(5b)が重なり合って形成されている場合には、画線群(4a)と画線群(5c)は、重ならないで形成されることになる。
【0050】
画線群(4a)と画線群(5b)が重なった画像をA−A´に示すラインで切断して「観察角度領域C」で観察した断面図を図9(b)に示し、画線群(4a)と画線群(5c)が重なった画像をB−B´に示すラインで切断して「観察角度領域C」で観察した断面図を図9(c)に示す。透明又は不透明で盛り上がりのある画線群(5b、5c)は、「観察角度領域C」のように極めて深い角度から観察した場合、画線群の表面は、画線群を形成する材料に含まれている顔料成分による光の散乱や屈折が大きくなり、盛り上がりのある画線群(5b、5c)の透明度が低下し、透明あるいは半透明だった画線が不透明なやや白みがかった色に変化する。よって、正対した状態では透明あるいは半透明であった第二の印刷層(5)の画線群(5b、5c)が、「観察角度領域C」においては、第一の印刷層(4)を形成する画線群(4a)や基材(2)を観察者の視点(16)から遮蔽する壁として機能することとなる。
【0051】
すなわち、図9(b)の視点(16)においては、観察者が主として視認できるのは、盛り上がりのある画線群(5b)の白い画線と基材(2)の一部のみとなる。また、図9(c)の視点(16)においては、観察者が主として視認できるのは、盛り上がりのある画線群(5b)の白い画線と第一の印刷層(4)の画線群(4a)の一部のみとなる。よって、図9(b)の条件で観察者が視認する画像と、図9(c)の観察条件で観察者が視認する画像とは全く異なった色彩となる。この現象によって、第二の印刷層(5)における画線群の位相のずれが強調され可視化される。
【0052】
第一の印刷層(4)を形成する画線群(4a)と第二の印刷層(5)を形成する画線群の重なり合いの関係において、一つの画線群の組合せ(例えば、画線群(4a)と画線群(5b)の組合せ)と、もう一方の画線群の組合せ(画線群(4a)と画線群(5c)の組合せ)では、第一の印刷層(4)の画線群(4a)に対する画線群(5b)と第一の印刷層(4)の画線群(4b)に対する画線群(5c)の位置関係は常に異なっている。つまり、この二つの画線群の位置関係が最も大きく異なるように形成するためには、図9(a)に示す画線群(5b)と画線群(5c)のように、位相がピッチの半分にあたる距離分ずらして形成する場合であり、二つの画線群がこの位置関係にある場合、この「観察角度領域C」における観察では最も大きなコントラストが生じる。
【0053】
一方、面積率の差が、「観察角度領域C」で観察される画像に与える影響について考えると、盛り上がりのある画線群の面積率の違いによっても、二つの盛り上がりのある画線群と第一の印刷層(4)を形成する画線群(4a)との位置関係の差は生じる。ただし、第二の面積率で形成する画線幅(W1)の画線群(例えば、第二の画線群)と第三の面積率で形成する画線幅(W2)の画線群(例えば、第三の画線群)は、第一の印刷層(4)を形成する画線群(4b)と位相が同一であり、加えて画線の中心位置が同一であることを考慮すると、画線の片側の面を基準にすると画線幅(W1)と画線幅(W2)の差の半分にあたる位置関係の差しか生じない。よって、画線幅(W1)と画線幅(W2)の差異を極めて大きくすることで面積率の差を大きく設計しない限り、「観察角度領域C」における観察においては、大きなコントラストを生じさせることができない。よって、「観察角度領域C」においては、画線の位相のずれによって形成した第二の画像(7)のみが可視化され、観察者に視認される。以上が、本発明の潜像印刷物における効果と、その効果が生じる原理である。
【0054】
次に、本発明における潜像印刷物を得るための詳細な条件について述べる。まず、面積率について説明する。本発明を実施するための形態においては、面積率の差異を画線幅の差異によって形成、つまり、第一の印刷層(4)を形成する画線の画線幅について画線幅(W1)とし、第二の印刷層(5)を形成する第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)も同じ画線幅で形成したが、これに限定するものではなく、全く画線が存在しないか(面積率0%)、あるいは完全に塗りつぶされた状態の画線幅(面積率100%)以外であれば、任意の幅で設計しても問題はない。ただし、印刷時に生じるドットゲインやハイライトの転移不良等の品質のアバレや、「観察角度領域C」における第二の画像(7)の視認性を考慮すると、20%から80%にあたる面積率の範囲にとどまるように設計することがより望ましい。
【0055】
また、第一の印刷層は、図2に示したように、画線幅(W1)の画線を、ピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置し、第一の面積率を有する第一の画線群(4a)のみで構成しても良いが、「観察角度領域A」で視認できる有意味情報を含む構成としても良い。有意味情報は、画線を、第一の画線群の画線と同一の位相で、かつ、第一の方向(a)に複数配列して成り、第一の面積率とは異なる面積率の画線群によって形成する。この場合、有意味情報を構成する画線群の面積率は、第一の面積率に対して、10%から25%の範囲で形成する。これは、画線面積率の差異が小さすぎる場合には、「観察角度領域A」において有意味情報が視認しづらくなり、逆に、画線面積率の差異が大きすぎる場合には、「観察角度領域Cに」おいて有意味情報と第二の画像が混ざり合って視認されてしまうためである。
【0056】
更に、1色の画線群でのみ形成する必要はなく、2色の組合せ(これについては後述する)や3色の組合せで画線群を形成することも可能である。
【0057】
また、第二の印刷層(5)の画線群の盛り上がりの高さについては、最低3μm以上あれば「観察角度領域C」において第二の画像(7)を視認することは可能である。また、効果の面から考えると画線の盛り上がりは高いほど良いが、流通適性や印刷で容易に付与可能な画線高さ等を考慮すると、50μm以下とする。
【0058】
ピッチ(P)を小さくすることで、第二の画像(7)を観察するための傾け角度を小さくすることが可能であり、解像度も高く設計することが可能である。逆に、大きすぎる場合には、傾け角度が大きくなるとともに、画像の解像度が低下してしまう。よって、印刷で実現可能なピッチを考慮すると、ピッチ(P)は、20μm以上2mm以下とする。
【0059】
第一の画像(6)を可視化するため、第一の画像(6)の情報部(8)と背景部(9)の面積率の差異ついては、できる限り大きく設けることが望ましい。盛りあがりを有する画線のカラーフリップフロップ性の高低にも左右されるが、「観察角度領域B」において、第一の画像(4)の視認性を高く保つには、面積率の差で10%を超えている必要があり、より好ましくは20%以上であることが望ましい。また、逆に、差異が大きすぎる場合には、「観察角度領域C」においても第一の画像(6)の視認性が高まり、第二の画像(7)と混ざり合ってしまう場合があることから、上限は大きくとも75%以下にする必要がある。
【0060】
第二の画線群(12)における画線と第四の画線群(14)における画線の位相差及び第三の画線群(13)における画線と第五の画線群(15)における画線の位相差については、同一である必要があり、面積率の差異にも影響を受けるが、少なくともピッチの4分の1にあたる距離以上の位相差を設けることが望ましく、最も好ましい位相差は、ピッチ(P)の半分の距離である。
【0061】
パール顔料を含有させて第二の印刷層(5)を形成する場合のパール顔料について説明する。パール顔料の粒子の大きさは、使用する印刷方式に応じて選択するものであるが、1μm〜50μmであり、好ましいのは、平均粒径は5〜15μm程度である。また、使用するパール顔料の鱗片状顔料の配向性(リーフィング効果)を向上させるためには、印刷時に3μm〜150μmの盛り上がりを有する画像の表面で顔料が配向するような処理を施すことが好ましい。具体的には、例えば、特開2001−106937号公報に記載されたような撥水及び撥油性処理等の顔料の表面処理を行うことで、印刷部の画線表面で顔料を配向させることができ、正反射光によるパールの干渉色をより鮮やかに出現させることが可能となる。
【0062】
また、実施例3で後述するが、図10に示すように、第二の印刷層(5)の各画線群における画線を特定の角度で分断した破線としてもよい。第二の印刷層(5)を構成する四つの画線群(12、13、14、15)のうち、第二の画線群(12)は、画線幅(W3)の画線がピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置されているが、それぞれの画線は、第一の角度(θ1)の非画線によって分断された破線となっている。この破線は、ピッチ(P)で画線幅(W1)の画線部と画線幅(P−W1)の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第三の画線群(13)は、画線幅(W3)の画線がピッチ(P)で第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12)に対し、同一の位相で成るが、それぞれの画線は、第二の角度(θ2)の非画線によって分断された破線となっている。この破線は、ピッチ(P)で画線幅(W2)の画線部と画線幅(P−W2)の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第四の画線群(14)は、第二の画線群(12)と構成は同じ破線であって、第二の画線群(12)に対し、位相が第一の方向(a)にピッチ(P)の半分のピッチずれて成る。第五の画線群(15)は、第三の画線群(13)と構成は同じ破線であって、第三の画線群(13)に対し、位相が第一の方向(a)にピッチ(P)の半分のピッチずれて成る。つまり、第二の画線群(12)及び第四の画線群(14)は、第一の角度(θ1)で分割し、第三の画線群(13)及び第五の画線群(15)は、第二の角度(θ2)で分割した破線としている。
【0063】
このように、画線を特定の角度で分断した破線とする場合には、第一の画像(6)における情報部(8)の面積率と、第一の画像(6)における背景部(9)の面積率の差異については、差異が全くないか、又はより小さく留めても「観察角度領域B」において第一の画像(6)を視認することが可能となる。これは、盛り上がりのある画線は、「観察角度領域B」において各画線表面に対して垂直に入射した光を特に強く反射することに起因するものであり、第二の印刷層(5)のそれぞれの画線を、特定の角度で分断した破線とすることで、それぞれの画線が最も光を強く反射する角度に違いが生じるためであり。よって、分断角度に差異を設けることによって干渉色の強弱が生じさせることが可能であり、この効果を用いた場合には、第一の画像(6)を面積率の差異を用いて形成しなくとも可視化することができる。
【0064】
ただし、画線を特定の角度で分断した破線とする場合でも、第一の画像(6)における情報部(8)の面積率と第一の画像(6)における背景部(9)の面積率に差異を設けた方が、視認性が高くなる。したがって、この場合においても10%以上の面積率の差異を設けてもよく、面積率の差異の上限は、同様に75%以下である。
【0065】
第一の画像(6)における情報部(8)の面積率と第一の画像(6)における背景部(9)の面積率に差異を設ける方法として、画線の太細による画線幅の差異のみで形成してもよく、画線の粗密、いわゆる画線密度の差異をもって形成してもよく、この両方を用いて形成してもよい、と前述したところである。しかし、本形態のように画線を特定の角度で分断した破線とした場合、面積率の差異は、画線の太細による画線幅の差異で形成するか、又は画線の粗密で形成する差異は、図11に示すように、第一の方向(a)によって粗密を変化させるのではなく、第一の方向(a)に対して垂直方向に粗密を変化させることが望ましい。図11の場合、図11(a)は画線幅(W1)ピッチ(P1)の破線であるのに対し、図11(b)は、画線幅(W1)は同じ幅で、ピッチは、ピッチ(P1)より小さいピッチ(P2)の破線であることから、面積率は、図11(a)の方が図11(b)よりも小さくなる。
【0066】
これは、第一の方向(a)に粗密を変化させて第一の画像(6)を形成する場合、「観察角度領域C」において第二の画像(7)を出現させることを考慮すると、第一の印刷層の第一の画線群の粗密も第二の印刷層の画線群に対応した粗密を構成することになり、結果として、第一の印刷層中に第二の画像(7)が現れてしまうことから望ましくない。また、第一の方向(a)に粗密を変化させて第一の画像(6)を形成するにもかかわらず、第一の印刷層の第一の画線群に粗密を設けない場合には、粗な領域と密な領域のいずれか、あるいはその両方の領域において、モアレ模様が発生して鮮明な第二の画像(7)を視認させることが困難となることから、同様に望ましくない。いずれにしても、第一の方向(a)によって粗密を変化させるのではなく、第一の方向(a)に対して垂直方向に粗密を変化させることが望ましい。
【0067】
また、第一の角度(θ1)と第二の角度(θ2)の角度差については、15°以上90°以下の角度差を設ける必要があり、最も望ましい角度差は90°である。これは、角度差を15°以下の角度差で、かつ、第一の画像(6)に面積率の差異を設けない場合、第一の画像(6)の視認性は低くなるためである。
【0068】
また、図10に示す第二の画線群(12)と第四の画線群(14)の組み合わせを示す拡大図において、第二の画線群(12)の画線と第四の画線群(14)画線の位相をずらした際に、第二の画線群(12)の非画線部と第四の画線群(14)非画線部が一直線と成るように規則性を持って構成されている。しかし、これに限定される必要ことはなく、例えば、第二の画線群(12)と第四の画線群(14)の境目において、第二の画線群(12)における非画線部の途中に、第四の画線群(14)における画線部がくるような構成にし、非画線部が一直線に成らない構成としても良く、規則性を有する必要はない。
【実施例1】
【0069】
実施例1においては、第一の印刷層(4´)をオフセット印刷で形成し、第二の印刷層(5´)をスクリーン印刷で形成して潜像印刷物(1´)を形成する例について、図12から図16を用いて説明する。
【0070】
図12は、実施例1における潜像印刷物(1´)を示す図であり、基材(2´)上に印刷領域(3´)を備え、印刷領域(3´)中に第一の印刷層(4´)と第二の印刷層(5´)が重ね合わせて形成されて成る。
【0071】
図13は、第一の印刷層(4´)を示す図であり、画線幅0.25mmの青色の画線をピッチ0.50mmで第一の方向(a)の方向に複数配置して第一の画線群(4a´)を構成して成る。第一の画線群(4a´)の面積率は、50%である。この第一の印刷層(4´)を青色インキ(大日本インキ化学工業株式会社製 Dai Cure RT−8 藍)を用いてオフセット印刷方式で一般的なコート紙である基材(2´)に印刷した。
【0072】
図14(a)は、第二の印刷層(5´)を示す図であり、第二の印刷層(5´)は、図14(b)に示す第一の画像(6´)と図14(c)に示す第二の画像(7´)を有している。図14(b)に示す第一の画像(6´)は、画線の太細によって形成しており、情報部(8´)である「桜」の模様と背景部(9´)である「桜」の模様を囲む四角形から成る。図14(c)に示す第二の画像(7´)は、画線の位相のずれによって形成しており、情報部(10´)である「NIPPON」の文字と背景部(11´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形から成る。
【0073】
図15は、第二の印刷層(5´)を構成する四つの画線群(12´、13´、14´、15´)を示すものであり、第二の画線群(12´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成る。第三の画線群(13´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)に対し、同一の位相で成る。第四の画線群(14´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第五の画線群(15´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)及び第三の画線群(13´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第二の画線群(12´)及び第四の画線群(14´)の面積率は、50%であり、第三の画線群(13´)及び第五の画線群(15´)の面積率は、70%である。
【0074】
第一の画像(6´)の情報部(8´)である「桜」の模様は、第三の画線群(13´)及び第五の画線群(15´)によって構成し、第一の画像(6´)の背景部(9´)である「桜」の模様を囲む四角形は、第二の画線群(12´)及び第四の画線群(14´)によって構成している。
【0075】
また、第二の画像(7´)の情報部(10´)である「NIPPON」の文字は、第二の画線群(12´)と第三の画線群(13´)によって構成し、第二の画像(7´)の背景部(11´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12´)と第三の画線群(13´)の位相をずらして構成した第四の画線群(14´)と第五の画線群(15´)によって構成している。
【0076】
図14(a)に示した第二の印刷層(5´)を表1に示す配合のスクリーンインキを用いて、第一の印刷層(4´)上に重ね合わせてUV乾燥方式のスクリーン印刷によって印刷した。画線の盛り上がりの高さは約15μmである。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すインキは、光が入射することで金色の干渉色を発する虹彩色パール顔料を含んでおり、本インキで形成した画線は、正反射光が生じない状態では無色透明であって、正反射光が生じた状態では金色の干渉色を発する画線となる。
【0079】
以上の印刷を経て完成した本発明の潜像印刷物(1´)の効果について、図16を用いて説明する。「観察角度領域A」における観察では、図16(a)に示す第一の印刷層(4´)のみが視認でき、「観察角度領域B」における観察では、図16(b)に示す第一の画像(6´)が金色の干渉色を伴って光る画像として視認でき、「観察角度領域C」における観察では、図16(c)に示す第二の画像(7´)が第一の印刷層(4´)を構成する第一の画線群(4a)の色である青色の濃淡を伴って視認できた。以上、正対して観察した場合には、第一の印刷層(4´)のみが視認され、わずかに傾けた浅い観察角度では、第一の画像(6´)のみが視認され、深く傾けた観察角度では、第二の画像(7´)のみが視認できることが確認できた。
【実施例2】
【0080】
実施例2においては、第一の印刷層(4´)をインキジェットプリンターで形成し、第二の印刷層(5´)をスクリーン印刷で形成して潜像印刷物(1´)を形成する例であって、第一の印刷層(4´´)の第一の画線群の画線幅に太細を設けることで、第一の画像(6´´)及び第二の画像(7´´)とは異なる有意味情報を形成する例について、図17から図21を用いて説明する。
【0081】
図17は実施例2における潜像印刷物(1´´)を示す図であり、基材(2´´)上に印刷領域(3´´)を備え、印刷領域(3´´)中に第一の印刷層(4´´)と第二の印刷層(5´´)が重ね合わせて形成されて成る。
【0082】
図18は第一の印刷層(4´´)を示す図であり、画線幅0.25mmの青色の画線をピッチ0.50mmで第一の方向(a)にそれぞれ複数配置して形成した第一の画線群(4a´´)の中に、画線幅0.35mmの領域を設け、この領域によって「JPN」の有意味情報を形成している。第一の画線群(4a´´)の面積率は、50%であり、「JPN」の有意味情報を構成する画線群の面積率は、70%である。この第一の印刷層(4´´)を市販のインキジェットプリンター(EPSON製 PM−770c)を用いて一般的な上質紙である基材(2´´)に緑色で印刷した。
【0083】
図19(a)は、第二の印刷層(5´´)を示す図であり、第二の印刷層(5´´)は、図19(b)に示す第一の画像(6´´)と図19(c)に示す第二の画像(7´´)を有している。図19(b)に示す第一の画像(6´´)は、画線の太細によって形成しており、情報部(8´´)である「桜」の模様と背景部(9´´)である「桜」の模様を囲む四角形から成る。図19(c)に示す第二の画像(7´´)は、画線の位相のずれによって形成しており、情報部(10´´)である「NIPPON」の文字と背景部(11´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形から成る。
【0084】
図20は、第二の印刷層(5´´)を構成する四つの画線群(12´´、13´´、14´´、15´´)を示すものであり、第二の画線群(12´´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成る。第三の画線群(13´´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´´)に対し、同一の位相で成る。第四の画線群(14´´)は、画線幅0.25mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第五の画線群(15´´)は、画線幅0.35mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´´)及び第三の画線群(13´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第二の画線群(12´´)及び第四の画線群(14´´)の面積率は、50%であり、第三の画線群(13´´)及び第五の画線群(15´´)の面積率は、70%である。
【0085】
第一の画像(6´´)の情報部(8´´)である「桜」の模様は、第三の画線群(13´´)及び第五の画線群(15´´)によって構成し、第一の画像(6´´)の背景部(9´´)である「桜」の模様を囲む四角形は、第二の画線群(12´´)及び第四の画線群(14´´)によって構成している。
【0086】
また、第二の画像(7´´)の情報部(10´´)である「NIPPON」の文字は、第二の画線群(12´´)と第三の画線群(13´´)によって構成し、第二の画像(7´´)の背景部(11´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12´´)と第三の画線群(13´´)の位相をずらして構成した第四の画線群(14´´)と第五の画線群(15´´)によって構成している。
【0087】
図19(a)に示した第二の印刷層(5´´)を表2に示す配合のスクリーンインキを用いて、第一の印刷層(4´´)上に重ね合わせてUV乾燥方式のスクリーン印刷によって印刷した。画線の盛り上がりの高さは約15μmである。
【0088】
【表2】
【0089】
表1に示すインキは、光が入射することで赤色の干渉色を発する虹彩色パール顔料を含んでおり、本インキで形成した画線は、正反射光が生じない状態では無色透明であって、正反射光が生じた状態では赤色の干渉色を発する画線となる。
【0090】
以上の印刷を経て完成した本発明の潜像印刷物(1´´)の効果について、図21を用いて説明する。
【0091】
「観察角度領域A」における観察では、図21(a)に示す第一の印刷層(4´´)の「JPN」の有意味情報が視認できた。「観察角度領域B」における観察では、図21(b)に示す第一の画像(6´´)が赤色の干渉色を伴って光る画像として視認できた。「観察角度領域C」における観察では、図21(c)に示す第二の画像(7´´)が第一の印刷層(4´´)を構成する第一の画線群(4a´´)の色である緑色の濃淡を伴って視認できた。このように、正対して観察した場合には第一の印刷層(4´´)のみが視認され、わずかに傾けた浅い観察角度では第一の画像(6´´)のみが視認され、深く傾けた観察角度では第二の画像(7´´)のみが視認できることが確認できた。
【0092】
本実施例2に記載したように、第一の印刷層(4´´)に画線の太細で有意味情報を形成する場合、有意味情報部を付与する部位とそれ以外の部位における画線の画線幅の差異は、画線の濃度に左右されるが画線面積率の差異で10%以上25%以下程度に留めることが望ましい。これは、前述もしたとおり、画線面積率の差異が小さすぎる場合には、「観察角度領域A」において有意味情報が視認しづらくなることに加え、逆に、画線面積率の差異が大きすぎる場合には、「観察角度領域Cに」おいて有意味情報と第二の画像が混ざり合って視認されてしまうためである。
【実施例3】
【0093】
実施例3においては、第一の印刷層(4´´´)をオフセット印刷で形成し、第二の印刷層(5´´´)をスクリーン印刷で形成して潜像印刷物(1´´´)を形成する例であって、第二の印刷層(5´´´)の各画線群における画線を、特定の角度に分断した破線とすることによって、「観察角度領域B」において出現する第一の画像により変化に富んだ視覚効果の付与を可能とした例について、図22から図26を用いて説明する。
【0094】
図22は、実施例3における潜像印刷物(1´´´)を示す図であり、基材(2´´´)上に印刷領域(3´´´)を備え、印刷領域(3´´´)中に第一の印刷層(4´´´)と第二の印刷層(5´´´)が重ね合わせて形成されて成る。
【0095】
図23は、第一の印刷層(4´´´)を示す図であり、画線幅0.25mmの青色の画線をピッチ0.50mmで第一の方向(a)にそれぞれ配置して第一の画線群(4a´´´)を構成して成る。第一の画線群(4a´´´)の面積率は、50%である。この第一の印刷層(4´´´)を青色インキ((大日本インキ化学工業株式会社製 Dai Cure RT−8 藍)を用いてUV乾燥型オフセット印刷方式で一般的なコート紙である基材(2´´´)に印刷した。
【0096】
図24(a)は、第二の印刷層(5´´´)を示す図であり、第二の印刷層(5´´´)は、図24(b)に示す第一の画像(6´´´)と図24(c)に示す第二の画像(7´´´)を有している。図24(b)に示す第一の画像(6´´´)は、画線の太細によって形成しており、情報部(8´´´)である「桜」の模様と背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形から成る。図24(c)に示す第二の画像(7´´´)は、画線の位相のずれによって形成しており、情報部(10´´´)である「NIPPON」の文字と背景部(11´´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形から成る。
【0097】
図25は、第二の印刷層(5´´´)を構成する四つの画線群(12´´´、13´´´、14´´´、15´´´)を示すものであり、第二の画線群(12´´´)は、画線幅0.40mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置されているが、それぞれの画線は、角度45°の非画線によって分断された破線となっている。この破線はピッチ0.5mmで0.25mm幅の画線部と0.25mm幅の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第三の画線群(13´´´)は、画線幅0.40mmの画線がピッチ0.50mmで第一の方向(a)に複数配置して成り、第二の画線群(12´)に対し、同一の位相で成るが、それぞれの画線は、角度−45°の非画線によって分断された破線となっている。この破線は、ピッチ0.5mmで0.32mm幅の画線部と0.18mm幅の非画線部が繰り返し配置された構成となっている。第四の画線群(14´´´)は、第二の画線群(12´´´)と構成は同じ破線であって、第二の画線群(12´´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。第五の画線群(15´´´)は、第三の画線群(13´´´)と構成は同じ破線であって、第三の画線群(13´´´)に対し、位相が第一の方向(a)に0.25mmずれて成る。本実施例3においては、水平方向の画線幅の差異はないものの、45°あるいは−45°方向の破線方向に画線幅の差異を設けた構成となっている。第二の画線群(12´´´)及び第四の画線群(14´´´)の面積率は、32%であり、第三の画線群(13´´´)及び第五の画線群(15´´´)の面積率は、51%である。
【0098】
第一の画像(6´´´)の情報部(8´´´)である「桜」の模様は、第三の画線群(13´´´)及び第五の画線群(15´´´)によって構成し、第一の画像(6´´´)の背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形は、第二の画線群(12´´´)及び第四の画線群(14´´´)によって構成している。
【0099】
また、第二の画像(7´´´)の情報部(10´´´)である「NIPPON」の文字は、第二の画線群(12´´´)と第三の画線群(13´´´)によって構成し、第二の画像(7´´´)の背景部(11´´´)である「NIPPON」の文字を囲む四角形は、第二の画線群(12´´´)と第三の画線群(13´´´)の位相をずらして構成した第四の画線群(14´´´)と第五の画線群(15´´´)によって構成している。
【0100】
図24(a)に示した第二の印刷層(5´´´)を表1に示す配合のスクリーンインキを用いて、第一の印刷層(4´´´)上に重ね合わせてUV乾燥方式のスクリーン印刷によって印刷した。画線の盛り上がりの高さは約10μmである。
【0101】
以上の印刷を経て完成した本発明の潜像印刷物(1´´´)の効果について、図26を用いて説明する。「観察角度領域A」における観察では、図26(a)に示す第一の印刷層(4´´´)のみが視認できた。
【0102】
また、「観察角度領域B」における観察では、図26(b)に示す第一の画像(6´´´)が金色の干渉色を伴って光る画像として視認できた。また、本実施例3において、第一の画像(6´´´)の情報部(8´´´)である「桜」の模様と背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形は、破線の分断角度が45°と−45°で大きく異なっていることから、「観察角度領域B」において潜像印刷物(1´´´)の観察角度をわずかに変えると、入射する光の角度に応じて最も強く光る面が変化し、情報部(8´´´)である「桜」の模様が強く光った場合には背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形が弱く光り、背景部(9´´´)である「桜」の模様を囲む四角形が強く光った場合には情報部(8´´´)である「桜」の模様が弱く光る、いわゆるネガポジ反転の効果が金色に光るパール効果に加味され、より視覚効果に富んだ表現が可能となった。
【0103】
また、「観察角度領域C」における観察では、図26(c)に示す第二の画像(7´´´)が第一の印刷層(4´´´)を構成する第一の画線群(4a´´´)の色である青色の濃淡を伴って視認できた。
【0104】
このように、正対して観察した場合には第一の印刷層(4´´´)のみが視認され、わずかに傾けた浅い観察角度では第一の画像(6´´´)のみが視認され、深く傾けた観察角度では第二の画像(7´´´)のみが視認できることが確認できた。
【0105】
また、図27に、第一の印刷層(4´´´´)を一つの色のみで構成するのではなく、複数の色によって構成する場合の画線構成を示す。図27は、二色の異なる色の画線(18、19)の集合によって第一の印刷層(4´´´´)を形成したものであり、第一の色の画線(18)と第二の色の画線(19)が交互に、それぞれ0.125mmの画線幅で、0.50mmのピッチで複数配置されて成る。
【0106】
第一の色の画線(18)と第二の色の画線(19)は、視認性の効果を勘案すると、交互に配置するのが良い。第一の色の画線(18)と第二の色の画線(19)を交互に配置するのではなく、例えば、第一の色の画線(18)を一として、第二の色の画線(19)を二の割合で配置(一対二の割合で配置)した場合、つまり、第一の色の画線(18)、第二の色の画線(19)、第二の色の画線(19)、第一の色の画線(18)、・・・、第二の色の画線(19)とした場合、潜像印刷物を「観察角度領域C」で観察した際に「NIPPON」の文字が視認できず、文字が崩れた意味不明な状態となってしまう。
【0107】
また、色の数については、二色以上であっても何ら問題ない。ただし、この場合も、画線の配置は、全ての色を順番に配置する。例えば、四色の異なる色の画線で構成する場合は、第一の色の画線、第二の色の画線、第三の色の画線、第四の色の画線、第一の色の画線、・・・、第四の色の画線と順に配置する。
【0108】
このような第一の印刷層(4´´´´)を複数の色の画線で構成し、図14(a)に示したような第二の印刷層(5´)を重ね合わせて潜像印刷物を形成することで、「観察角度領域C」における観察において出現する第二の画像の情報部と背景部のそれぞれの領域に第一の色と第二の色の色相の違いを反映させることが可能である。この場合、単色の色で第一の印刷層を形成した場合と異なり、色の濃淡だけでなく、第一の色と第二の色の色相の違いが第二の画像に反映されるため、より色彩表現豊かな第二の画像を形成することが可能である。
【0109】
また、これまで、発明を実施するための形態及び実施例において、潜像印刷部は、基材上に第一の印刷層と第二の印刷層を形成して成る形態で説明をしてきたが、それらとは別に、別の印刷層を設けても良い。図28に、第一の印刷層及び第二の印刷層とは別の第三の印刷層(20)を設ける場合の画線構成を示す。第三の印刷層(20)は、第二の印刷層よりも下に配置されている必要があり、第一の印刷層と第二の印刷層の間、又は基材と第一の印刷層の間に配置される。第三の印刷層は、地紋画線(21)や背景画像(22)を形成しても良い。地紋画線(21)を形成する場合は、第一の印刷層の画線群との干渉を避ける必要がある。そのため、地紋画線(21)の画線は、第一の方向(a)とは異なる方向に配列されて成り、第二の拡散反射領域で強く出現しないように形成する。この場合、第二の拡散反射光領域で強く出現しなければ良く、完全に消失はしなくてもよい。また、背景画像(22)を形成する場合も、第一の印刷層の画線群との干渉を避ける必要がある。第一の印刷層の画線群の色とは異なる色の網点を複数配列して成り、第二の拡散反射領域で強く出現しないように形成する。この場合も、地紋画線(21)と同様、第二の拡散光反射領域で強く出現しなければ、完全に消失はしなくてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、1´、1´´、1´´´ 潜像印刷物
2、2´、2´´、2´´´ 基材
3、3´、3´´、3´´´ 画像領域
4、4´、4´´、4´´´、4´´´´ 第1の印刷層
4a、4a´、4a´´、4a´´´ 第一の画線群
5、5´、5´´、5´´´ 第二の印刷層
5a、5b、5c 第二の印刷層を構成する画線群
6、6´、6´´、6´´´ 第一の画像
7、7´、7´´、7´´´ 第二の画像
8、8´、8´´、8´´´ 第一の画像の情報部
9、9´、9´´、9´´´ 第一の画像の背景部
10、10´、10´´、10´´´ 第二の画像の情報部
11、11´、11´´、11´´´ 第二の画像の背景部
12、12´、12´´、12´´´ 第二の画線群
13、13´、13´´、13´´´ 第三の画線群
14、14´、14´´、14´´´ 第四の画線群
15、15´、15´´、15´´´ 第五の画線群
16 観察者の視点
17 光源
18 第一の色の画線
19 第二の色の画線
20 第三の印刷層
21 地紋画線
22 背景画像
a 第一の方向
W1、W2、W3 画線幅
P ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、
前記印刷領域に、前記基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、
前記第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、
前記第一の印刷層は、画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、
前記第二の印刷層は、複数の画線群から成り、前記複数の画線群は、盛り上がりのある画線を前記第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、前記画線を前記第二の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、前記画線を前記第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率を有する第四の画線群と、前記画線を前記第三の画線群の画線に対して位相を前記特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第三の面積率を有する第五の画線群を備え、
前記第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、前記第一の画像は、面積率の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第二の画像は、前記画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、
前記第一の画像の情報部は、前記第三の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第一の画像の背景部は、前記第二の画線群及び前記第四の画線群から成り、前記第二の画像の情報部は、前記第四の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第二の画像の背景部は、前記第二の画線群及び第三の画線群から成り、
前記第五の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の情報部と成り、前記第二の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の背景部と成り、
観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第一の印刷層が視認され、前記観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、前記第一の画像が視認され、前記観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第二の画像が視認されることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項2】
前記第一の画像における前記情報部の面積率と、前記第一の画像における前記背景部の面積率の差異は、10%以上75%以下であることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
【請求項3】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、
前記印刷領域に、前記基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、
前記第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、
前記第一の印刷層は、画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、
前記第二の印刷層は、複数の画線群から成り、前記複数の画線群は、盛り上がりのある画線を第一の角度で分断した破線を前記第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、前記画線を前記第一の角度とは異なる第二の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、前記画線を第一の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率を有する第四の画線群と、前記画線を第二の角度で分断した破線を前記第三の画線群の画線に対して位相を前記特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第三の面積率を有する第五の画線群を備え、
前記第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、前記第一の画像は、前記面積率の違い及び/又は前記第一の角度と前記第二の角度の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第二の画像は、前記画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、
前記第一の画像の情報部は、前記第三の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第一の画像の背景部は、前記第二の画線群及び前記第四の画線群から成り、前記第二の画像の情報部は、前記第四の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第二の画像の背景部は、前記第二の画線群及び第三の画線群から成り、
前記第五の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の情報部と成り、前記第二の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の背景部と成り、
観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第一の印刷層が視認され、前記観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、前記第一の画像が視認され、前記観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第二の画像が視認されることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項4】
前記第一の角度と前記第二の角度の角度差は、15°以上90°以下であることを特徴とする請求項3記載の潜像印刷物。
【請求項5】
前記第二の面積率と第三の面積率の差異は、前記画線群を構成する前記画線における画線幅の太細、画線の粗密のいずれか、又はその両方によって形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項6】
前記画線群を構成する前記画線におけるピッチは、20μm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項7】
前記第二の画線群における画線と第四の画線群における画線を前記特定の距離ずらして成る位相差及び第三の画線群における画線と第五の画線群における画線を前記特定の距離ずらして成る位相差は、前記画線のピッチに対して1/4以上1/1未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項8】
前記カラーフリップフロップ性を有するインキによる前記画線の盛り上がりの高さは、3μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項9】
前記第一の印刷層は、有意味情報を含み、前記有意味情報は、前記画線を前記第一の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成り、前記第一の面積率とは異なる面積率から成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、
前記印刷領域に、前記基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、
前記第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、
前記第一の印刷層は、画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、
前記第二の印刷層は、複数の画線群から成り、前記複数の画線群は、盛り上がりのある画線を前記第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、前記画線を前記第二の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、前記画線を前記第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率を有する第四の画線群と、前記画線を前記第三の画線群の画線に対して位相を前記特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第三の面積率を有する第五の画線群を備え、
前記第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、前記第一の画像は、面積率の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第二の画像は、前記画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、
前記第一の画像の情報部は、前記第三の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第一の画像の背景部は、前記第二の画線群及び前記第四の画線群から成り、前記第二の画像の情報部は、前記第四の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第二の画像の背景部は、前記第二の画線群及び第三の画線群から成り、
前記第五の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の情報部と成り、前記第二の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の背景部と成り、
観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第一の印刷層が視認され、前記観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、前記第一の画像が視認され、前記観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第二の画像が視認されることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項2】
前記第一の画像における前記情報部の面積率と、前記第一の画像における前記背景部の面積率の差異は、10%以上75%以下であることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
【請求項3】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、少なくとも二つの印刷層を備えて成る潜像印刷物において、
前記印刷領域に、前記基材の色と異なる色を有する第一の印刷層と、
前記第一の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を有するインキによって、透明又は半透明な色を有する第二の印刷層を有し、
前記第一の印刷層は、画線を第一の方向に第一の面積率で複数配置した第一の画線群から成り、
前記第二の印刷層は、複数の画線群から成り、前記複数の画線群は、盛り上がりのある画線を第一の角度で分断した破線を前記第一の方向に複数配列して成る第二の面積率を有する第二の画線群と、前記画線を前記第一の角度とは異なる第二の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率とは異なる第三の面積率を有する第三の画線群と、前記画線を第一の角度で分断した破線を前記第二の画線群の画線に対して位相を特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第二の面積率を有する第四の画線群と、前記画線を第二の角度で分断した破線を前記第三の画線群の画線に対して位相を前記特定の距離ずらして、前記第一の方向に複数配列して成る前記第三の面積率を有する第五の画線群を備え、
前記第二の印刷層は、第一の画像及び第二の画像から成り、前記第一の画像は、前記面積率の違い及び/又は前記第一の角度と前記第二の角度の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、前記第二の画像は、前記画線の位相の違いによって形成されて成る情報部と背景部から構成され、
前記第一の画像の情報部は、前記第三の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第一の画像の背景部は、前記第二の画線群及び前記第四の画線群から成り、前記第二の画像の情報部は、前記第四の画線群及び前記第五の画線群から成り、前記第二の画像の背景部は、前記第二の画線群及び第三の画線群から成り、
前記第五の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の情報部と成り、前記第二の画線群は、前記第一の画像及び前記第二の画像の共有の背景部と成り、
観察者の視点を第一の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第一の印刷層が視認され、前記観察者の視点を正反射光が支配的な観察角度に置いて観察した場合、前記第一の画像が視認され、前記観察者の視点を第二の拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第二の画像が視認されることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項4】
前記第一の角度と前記第二の角度の角度差は、15°以上90°以下であることを特徴とする請求項3記載の潜像印刷物。
【請求項5】
前記第二の面積率と第三の面積率の差異は、前記画線群を構成する前記画線における画線幅の太細、画線の粗密のいずれか、又はその両方によって形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項6】
前記画線群を構成する前記画線におけるピッチは、20μm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項7】
前記第二の画線群における画線と第四の画線群における画線を前記特定の距離ずらして成る位相差及び第三の画線群における画線と第五の画線群における画線を前記特定の距離ずらして成る位相差は、前記画線のピッチに対して1/4以上1/1未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項8】
前記カラーフリップフロップ性を有するインキによる前記画線の盛り上がりの高さは、3μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【請求項9】
前記第一の印刷層は、有意味情報を含み、前記有意味情報は、前記画線を前記第一の画線群の画線と同一の位相で、前記第一の方向に複数配列して成り、前記第一の面積率とは異なる面積率から成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の潜像印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図14】
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【図16】
【図17】
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【図19】
【図20】
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【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−5641(P2011−5641A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148176(P2009−148176)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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