説明

潤滑オイルの水系バリア剤組成物およびその用途

【課題】有効成分濃度が処理ムラによるシミを生じない低濃度でも潤滑オイルに対するバリア性に優れた被膜を形成することができ、被処理部品に対する濡れ性の良好な水系バリア剤組成物、潤滑オイルに対するバリア性能付与方法および潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理が施された摺動部品および/または摺動部品に近接する部品の提供。
【解決手段】 分子末端基が、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基からなる群より選ばれる含フッ素基R、および
【化1】


(Rは、独立にHまたは炭素原子数1〜10のアルキル基)群より選ばれる極性基Yのそれぞれ少なくとも1つを含みいずれかである含フッ素化合物の少なくとも1種を、有効成分の主成分として水系媒体中に含む水系バリア剤組成物。含フッ素化合物は、前記含フッ素基Rおよび極性基Yを連結する2〜4価の連結基Zを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑オイルに対するバリア性能を付与するための、潤滑オイルの水系バリア剤組成物、この水系バリア剤組成物を用いる摺動部品または摺動部品に近接する部品の潤滑オイルに対するバリア性能付与方法、および潤滑オイルに対するバリア性能が付与された摺動部品および/または摺動部品に近接する部品に関する。
【背景技術】
【0002】
時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズ等の精密機械の摺動部品の摺動面には、摺動面の磨耗防止のため、摩擦抵抗を低減させる潤滑オイルが不可欠である。この潤滑オイルとして使用される鉱油等は、通常の状態では液状であるため、摺動面から周辺部へと滲み出す可能性がある。潤滑オイルが滲み出しやすいほど、摺動部品の摺動面に対する再施与の必要性が増す。また、通常、狭い領域内に複数の部品が配置されている精密機械では、潤滑オイルが滲み出すと周辺部に付着する可能性がある。潤滑オイルは、一般的に粘度が高く、ホコリ等を集積しやすいため、所定の個所以外への潤滑オイルの滲み出しは、機械の故障の原因にもなっている。
そのため、精密機械における特に摺動部品または摺動部品に近接する部品には、潤滑オイルの滲み出しを防止し、必要部分への潤滑オイルを長期保持するための、潤滑オイルのバリア処理がなされている。近年の精密機械の集積化と部品の微細化に伴い、潤滑オイルのバリア処理の需要は益々増してきている。
【0003】
上記のような潤滑オイルのバリア処理は、摺動部品および摺動面の周辺部を含む近接部位に、バリア剤を塗布して被膜を形成することにより実施されている。バリア剤としては、従来、含フッ素ポリマーを、溶媒に溶解または分散させた溶液が用いられている。この溶媒としては、難燃性と媒質の溶解性の高さからクロロフルオロカーボン(CFC)、パーフルオロカーボン(PFC)が使用されてきた(特許文献1)。
【0004】
しかし、CFCおよびPFCは、環境への配慮のために使用を減らす必要がある。CFC、PFC以外の溶媒としては、炭化水素系溶剤およびメタキシレンヘキサフルオリドなどの含フッ素芳香族炭化水素系化合物などの有機溶媒の使用が考えられる。しかしながら、これらの含フッ素芳香族炭化水素系化合物は、可燃性、臭気、毒性などを有しており、取り扱いが困難であるなど、作業性等の点で問題がある。そこで、環境への影響が少なく、作業性が良好な溶媒である水を用いた、水系のバリア剤組成物が提案されている。水系のバリア剤組成物としては、含フッ素ポリマーを水系溶剤に分散させたバリア剤組成物とモノメリックなフッ素化合物を水に分散または溶解させたバリア剤組成物が提案されている。
【0005】
含フッ素ポリマーを水系溶剤に分散させたバリア剤組成物では、含フッ素ポリマーを安定に分散させるために乳化剤の添加等が必要とされる。また、これらのバリア剤組成物は、表面張力が高いため界面活性剤の添加無しでは処理部品に対して均一にバリア処理を施しにくいことが問題点として挙げられる。被処理部品に対する水系バリア剤の濡れ性の向上は、水系のバリア剤組成物に全体に共通する課題の一つである(特許文献2参照)。
【0006】
一般に、バリア剤組成物の有効成分としては、バリア効果の耐久性を考慮して上記のようなポリマー性の含フッ素化合物が主流である。バリア剤組成物としてモノメリックな化合物を有効成分としたものとしては、溶媒が水系とは言い難いものや、水系であっても含フッ素リン酸エステル等のごく限られた化合物が知られているに過ぎない。特許文献3では、溶媒として、ケトン、アルコール、エステル等の非フッ素溶媒の使用が推奨されており、水との混合溶剤としても用いることも出来るとし、2-プロパノールまたはエタノールに水を25%含ませた具体例が示されている(特許文献3参照)。
【0007】
しかし、これらの液組成では、実質的には水系と言えるものではなく、引火性、臭気、毒性、取り扱い等などの問題は解決できていない。そのため、実質的に水系のモノメリックな水系バリア剤組成物としては、含フッ素リン酸エステルが知られているに過ぎない(特許文献4参照)。
【0008】
また、水系のバリア剤組成物では、処理剤の基材への濡れにくさ、乾燥性の悪さ等の問題により、処理ムラによるシミが被処理部品に生じてしまう問題がある。この処理ムラによるシミは、処理液中の有効成分濃度を下げてゆくことで軽減されてくるが、濃度の低下とともに潤滑オイルをバリアする性能は低下してゆく。そのため、より低い濃度で潤滑オイルに対するバリア性を発揮できる水系バリア剤組成物が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開平01−127080(第1頁 右下欄他)
【特許文献2】国際公開第04/033579号パンフレット
【特許文献3】特開2004-091785号公報
【特許文献4】特開2000-001669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、被処理部品に対する濡れ性が良好で、かつ有効成分濃度が処理ムラによるシミを生じにくい低濃度でも潤滑オイルに対するバリア性に優れた被膜を形成することができる水系バリア剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は、この水系バリア剤組成物を用いる摺動部品および/または摺動部品に近接する部品の潤滑オイルに対する性能付与方法、さらには潤滑オイルに対するバリア性能が付与された摺動部品および/または摺動部品に近接する部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的は、以下のような新規な有効成分を含む本発明の水系バリア剤組成物によって解決することができる。すなわち、本発明に係る水系バリア剤組成物は、分子末端基が、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基からなる群より選ばれる含フッ素基R、および下記群より選ばれる極性基Y:
【化1】


(Rは、独立にHまたは炭素原子数1〜10のアルキル基)
のそれぞれ少なくとも1つを含みいずれかである含フッ素化合物の少なくとも1種を、有効成分の主成分として水系媒体中に含む。
【0012】
本発明に係る水系バリア剤組成物において、上記含フッ素化合物は、通常、含フッ素基Rおよび極性基Yを連結する2〜4価の連結基Zを含む。
この連結基Zとしては、後述する2価の連結基Z、3価の連結基Zおよび4価の連結基Zからなる群より選ばれる1または複数組合わせの基が挙げられる。
本発明に係る水系バリア剤組成物において、上記Z基を含む含フッ素化合物の態様は、具体的に、たとえば(R−Z−(Y)(mは1〜3の整数、nは1以上の整数)で表すことができる。また、下記からなる群より選ばれる式で表すこともできる。
−Z22−Y
(Rm1−Z32−(Y)n1
(Rm2−Z42−(Y)n2
(式中、Z22は、1以上の2価の連結基Zからなる2価の連結基を表し、Z32は、1以上の3価の連結基Zと1以上の2価の連結基Zとからなる3価の連結基を表し、Z42は、1以上の4価の連結基Zと1以上の2価の連結基Zとからなる4価の連結基を表し、Z、Z、Zはそれぞれ請求項3の定義と同じであり、mは1又は2を表し、nは「3−m」を表し、mは1、2又は3を表し、nは「4−m」を表す。)
【0013】
本発明に係る水系バリア剤組成物の好ましい態様において、上記連結基Zは含フッ素化合物の分子間配向を促す基である。たとえば分子間で水素結合をしうる窒素含有基などが好ましい。
【0014】
本発明に係る水系バリア剤組成物において、水系媒体は、水のみまたは水と他の溶媒との混合溶媒である。他の溶媒は、1種でも2種以上であってもよく、中でも好ましくは水溶性有機溶媒であり、沸点40〜250℃の水溶性有機溶媒が特に好ましい。水系媒体が混合溶媒の場合、水の含有率が50質量%以上のものが好ましく、80質量%以上のものが好ましい。本発明に係る水系バリア剤組成物は、非引火性であることが特に好ましく、この場合、水系バリア剤組成物全体での有機溶媒の含有率が5質量%以下である。
【0015】
本発明に係る水系バリア剤組成物中の含フッ素化合物濃度は、通常、0.001〜20質量%である。
本発明に係る水系バリア剤組成物は、好ましくは、その80質量%以上が水系媒体である。したがって上記含フッ素化合物濃度は、好ましくは20質量%未満である。
【0016】
上記のような本発明に係る水系バリア剤組成物は、有効成分が低濃度でも、被処理物に潤滑オイルに対する高いバリア性能を付与することができる。
【0017】
本発明に係る水系バリア剤組成物の表面張力は、10〜40mN/m程度が好ましい。また水系バリア剤組成物の動粘性率は、1×10−3/s以下であることが望ましい。
【0018】
本発明では、上記のような水系バリア剤組成物を、摺動部品および/または摺動部品に近設する部品の表面に塗布し、潤滑オイルに対するバリア膜を形成する、摺動部品および/または摺動部品に近設する部品の潤滑オイルに対するバリア性能付与方法を提供する。
【0019】
また本発明では、上記水系バリア剤組成物から形成される被膜を表面に有し、潤滑オイルに対するバリア性能が付与された摺動部品および/または摺動部品に近接する部品を提供する。
上記摺動部品としては、時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズなどの精密機械の摺動部分などが挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、摺動部品および/または摺動部品に近接する部品に潤滑オイルに対するバリア性能を付与するための新規な水系バリア剤組成物を提供する。
本発明に係る水系バリア剤組成物は、有効成分の溶解性がよく、堅牢で、均一性に優れた被膜を形成することができる。このような被膜を、金属、プラスチックどちらの被処理面に対しても形成することができる。本発明に係る水系バリア剤組成物は、部品に対する密着性が良好で、部品に対して均一な処理を施しやすく、また有機溶媒系バリア剤に比べ、作業性が良好で、引火性が低く、好ましくは非引火性で、かつ環境への負荷の少なく、作業環境を安全に保つことが容易である。
さらに本発明に係る水系バリア剤組成物は、従来のポリマータイプの水系バリア剤組成物より低濃度でも潤滑オイルに対するバリア性被膜を形成することができ、潤滑オイルの滲み出しを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る潤滑オイルの水系バリア剤組成物は、以下に示す含フッ素化合物の少なくとも1種を有効成分の主成分として水系媒体中に含む。好ましくは、該水系バリア剤組成物は、含フッ素化合物を主溶質成分として含む水系溶液である。なお本明細書において、「有効成分」とは、溶媒以外の不揮発成分を意味し、「主成分」とは、有効成分中に最も高率で含まれる成分を意味する。
【0022】
本発明の水系バリア剤組成物に有効成分の主成分として含まれる含フッ素化合物は、分子末端基が、含フッ素基R(以下、R基と表記することもある)、および後述する極性基Y(以下、Y基と表記することもある)のそれぞれ少なくとも1つを含む。含フッ素化合物が3以上の分子末端基を有する場合には、2分子末端より残余の基はR基またはY基のいずれかである。たとえばR基骨格に複数のY基が結合した化合物などである。
【0023】
上記R基は、炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含めて同等鎖長のエーテル結合を含むオキサポリフルオロアルキル基である。また、R基は末端部分に塩素原子が存在してもよい。R基の末端部分の構造としては、CFCF−、CF−、CFCl−、(CFCF−などの構造が挙げられる。以下にR基をいくつか例示するが、これらに制限されるものではない。以下の具体例中には、構造異性の基に相当する基も含まれる。
エーテル性酸素原子を含まないポリフルオロアルキル基としては、たとえばC−、C−[F(CF−、および(CFCF−の両者を含む]、C−[F(CF−、(CFCFCF−、(CFC−、F(CFCF(CF)−を含む]、C11−[F(CF−、(CFCF(CF−、(CFCCF−、F(CFCF(CF)CF−などの構造異性の基を含む]、C13−[F(CFC(CF−などの構造異性の基を含む]、C17−、C1021−、C1225−、C1531−、HC2t−(tは1〜18の整数)、(CFCFC2s−(sは1〜15の整数)などが挙げられる。
【0024】
またエーテル性酸素原子を含まないポリフルオロアルキル基(オキサポリフルオロアルキル基)としては、オキシポリフルオロエチレン、オキシポリフルオロプロピレンなどのオキシポリフルオロアルキレン部分を有する基などが挙げられ、たとえばF(CFOCF(CF)−、F[CF(CF)CFO]sCF(CF)CFCF−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)−、F[CF(CF)CFO]CFCF−、F(CFCFCFO)CFCF−、F(CFCFO)CFCF−(sおよびtは、それぞれ独立に1〜10の整数であり、1〜3の整数が好ましい。uは2〜6の整数である。vは1〜11の整数であり、1〜4の整数が好ましい。wは1〜11の整数であり、1〜6の整数が好ましい。)などが挙げられる。
【0025】
基は、直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよいが、直鎖構造が好ましい。分岐構造である場合には、分岐部分がR基の末端部分に存在し、かつ側鎖は炭素数が1〜3程度の短鎖であることが好ましい。
また、潤滑オイルに対する高いバリア性能を得るためには、処理表面上にR基を配向させ、表面の表面エネルギーの低くさせることが重要である。そのため、R基は、ペルフルオロアルキル基であることが好ましい。なお、ペルフルオロアルキル基を、以下「R基」と表記することがあるが、単にR基と表記した場合には、ペルフルオロアルキル基を含む。
基のパッキングを良くするために構造的により高い剛直性を必要とする場合は、エーテル性酸素原子を含まないポリフルオロアルキル基が選択され、特にエーテル性の酸素原子を含まないペルフルオロアルキル基が選択される。
【0026】
バリア剤組成物によって被膜が形成された際に、フルオロアルキル基に由来する結晶構造を形成し、潤滑オイルに対するより高いバリア性能を発揮させることを考慮して、R基の鎖長は、好ましくは炭素原子数4〜14、より好ましくは6〜12である。
特に動的接触角については、前進接触角は、R基の鎖が長くなるに従い大きくなり、炭素数4以上でほぼ一定となる。また、後退接触角は、R基の鎖長が炭素数6まではほとんど変わらず、炭素数7以上になって大きくなり始め、炭素数10のときに最大になる。
本発明において、特に好ましいR基は、F(CF−[nは6〜12の整数]で表される直鎖構造のペルフルオロアルキル基である。
また含フッ素化合物が、2以上のR基を含む場合には、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0027】
含フッ素化合物の分子末端基を構成する極性基Yは、下記から選ばれる。
【化2】


(Rは、独立にHまたは炭素原子数1〜10のアルキル基)
【0028】
上記対イオンを記載しない酸イオンは、アンモニウム塩などの形態でもよく、たとえばカルボン酸イオン(−COO)は、−COONHを挙げることができる。また陽イオンは、ハロゲン塩などの形態が挙げられる。Y基としては、これらのうちでも、4級アンモニウム塩、アミンオキサイドベタインなどのアミン性イオン極性基、−OHおよび−COOが好ましい。具体的には、−COONH、−N(CHI、−N(CHCOO)(CH、−N(CHCOO)(CHCHOH)、−N(O)(CH、>N(CHCOO)(CH)、>N(CHCOO)(CHCHOH)、−OHなどが挙げられる。
含フッ素化合物が、2以上のY基を含む場合には、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
本発明に係る含フッ素化合物は、上記R基およびY基を連結する連結基Z(以下、Z基と表記することもある。)を含むことができる。このZ基としては、以下の2価の連結基Z、3価の連結基Zおよび4価の連結基Zを挙げることができる。
2価の連結基Z:単結合、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CHNH−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−CO−、−COCH−、−CH=CH−CO−、−COO−、−COS−、−CH=CH−COO−、−CONH−、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(たとえば−CH2−、−CH2CH2−)、アルケニレン基(たとえば−CH=CH−)、アルキレンオキシ基(たとえば−CHO−,−CHCHO−)、2価の4〜7員(好ましくは4〜6員)の飽和または不飽和の脂肪環基、6員芳香環基、5〜6員の複素環基およびこれら環基の縮合環;
3価の連結基Z:−CH<、−CHCH<、−CH(CH−)、−CHCH(CH−)、−CH(CHCHO−)、−CHCH(CHCHO−)、−N<、−CHN<、−N(CH−)、−N(CHCHO−)、−N(CHCHOCHCH−)、−CHN(CH−)、−CHN(CHCHO−)、−C(O)−N<、−C(O)−N(CH−)および−C(O)−N(CHCHO−);および
以下の4価の連結基Z
【化3】

【0030】
連結基Zは、上記Z、Z、Zの1つであってもよく、複数組合わせてあってもよい。組合わせの具体例としては、2価の連結基Zは、2以上の上記例示の2価の連結基の組合わせでもよい。また3価の連結基Zおよび4価の連結基Zは、上記例示の2価の連結基との組合わせでもよい。
また、Z基は含フッ素化合物が分子間で配向を促す構造をもつことが好ましい。具体的には、アミド結合などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0031】
【化4】

【0032】
また、Z基は、水系媒体への溶解性を上げるために、親水性の高い構造を含んでいても構わない。具体的には、−CHO−、−CHCHO−などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0033】
本発明において、上記のようなZ基を有する含フッ素化合物の形態は、具体的にたとえれば、(R-Z-(Y)、(m=1〜3 n=1以上)で表すことができる。本発明に係る含フッ素化合物は、非処理部品の基材表面に、R基を外側にした単分子膜を形成する事が理想的である。そのため、分子間の立体障害等から、mの数は、1または2が好ましい。また、極性基Yは、R基と離れた部位に位置していることが望ましい。
含フッ素化合物は、より具体的な態様例として、下記式で表すこともできる。
−Z22−Y
(Rm1−Z32−(Y)n1
(Rm2−Z42−(Y)n2
式中、Z22は、1以上の2価の連結基Zからなる2価の連結基を表し、Z32は、1以上の3価の連結基Zと1以上の2価の連結基Zとからなる3価の連結基を表し、Z42は、1以上の4価の連結基Zと1以上の2価の連結基Zとからなる4価の連結基を表す。ここでのZ、Z、Zは、上記例示の2〜4価の連結基である。
は1又は2を表し、nは「3−m」を表す。
は1、2又は3を表し、nは「4−m」を表す。
【0034】
含フッ素化合物の好ましい具体例をいくつか以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の具体例中には、構造異性の基に相当する基も含まれる。
【化5】

【0035】
本発明の水系バリア剤組成物は、上記のような含フッ素化合物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有してもよい。上記含フッ素化合物は、末端に極性基Yを持つことで、基材(被処理部品)への吸着性を高めている。そのため、被処理部品が複数の材質からなる場合もしくは材質の異なる複数の部品を同時に処理する場合などでは、2種以上の含フッ素化合物を含有することが有用なことがある。
【0036】
本発明に係る水系バリア剤組成物において、前述のように水系媒体は、水または他の溶媒との混合溶媒である。他の溶媒は、1種でも2種以上であってもよく、中でも好ましくは水溶性有機溶媒である。水溶性有機溶媒は、乾燥しやすさの点から沸点が40〜250℃であるものが好ましい。また20℃における水への溶解度が1重量%以上であるものが好ましい。水溶性有機溶媒としては、具体的にケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルコールなどが挙げられ、なかでもグリコール類、グリコールエーテル類、ケトン類、アルコール類が好ましく、アセトンやイソプロピルアルコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
水系媒体が混合溶媒の場合、水の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上である。非引火性の水系バリア剤組成物が求められる場合、水系バリア剤組成物全体での有機溶媒の含有率を5質量%以下とすることで、多くの場合において実質的に非引火性を達成することができる。非引火性の水系バリア剤組成物は、使用時の安全性に優れ、本発明の好ましい態様である。
【0038】
本発明の水系バリア剤組成物は、理想原理として、潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理を施す部品基材への単分子吸着に基づき被膜を形成する。そのため本発明の水系バリア剤組成物は、含フッ素化合物濃度が極めて低いものを使用しても潤滑オイルに対するバリア性能を発揮する。潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理を施す部品基材と、含フッ素化合物との組合わせによっても異なるが、水系バリア剤組成物中の含フッ素化合物濃度は、含フッ素化合物の濃度は、0.001質量%以上であることが好ましい。無機基材に対しては、含フッ素化合物の濃度が0.005質量%以上であれば、おおむね充分な潤滑オイルに対するバリア性能を発揮する。プラスチックなどの非極性基材に対しては、含フッ素化合物の吸着性が落ちるため、無機基材の場合と比べると、やや高い濃度を必要とする。
【0039】
一般に、オイルに対する接触角の大きさが潤滑オイルに対するバリア性能の指標とされる。
本発明の水系バリア剤組成物は、被処理部品の表面上に塗布し、被膜を成形した際に、塗膜表面における潤滑オイル(n-ヘキサデカンなどの炭素原子数16以上の炭化水素系潤滑オイル)との接触角が50度以上であれば、高いバリア性能が得られているといえ好ましく、65度以上であるものがより好ましい。本発明では、たとえば含フッ素化合物濃度が0.02質量%の水系バリア剤組成物をガラス板上に塗布した時に、n-ヘキサデカンに対して70度以上の接触角を得ることもできる。
含フッ素化合物の濃度が高くてもバリア性能として格別な問題は無いが、コスト面から含フッ素化合物濃度は20質量%以下であることが好ましい。これらから本発明の水系バリア剤組成物中の含フッ素化合物濃度は、通常0.001〜20質量%である。水系バリア剤組成物の好ましい態様では、その80質量%以上が水系媒体であり、したがって含フッ素化合物濃度の上限は20質量%未満であることが好ましい。本発明に係る水系バリア剤組成物の濃度(使用時)は、水系媒体および含フッ素化合物の種類、被処理部品の基材などの用途によっても異なり、一概にいえないが、上記のうちでも、0.1〜2質量%の低濃度が好ましい。
【0040】
被処理部品がプラスチックである場合もしくはプラスチックを含んでいる場合、または金属表面に防錆処理などの加工が施してある場合は、摺動部品への濡れ性および付着性の向上を図るため、水系バリア剤組成物の表面張力は低いことが望まれる。一般的なプラスチック(ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなど)でも、臨界表面エネルギーは30mN/m程度以上のものがほとんどであり、表面張力は、通常40mN/m以上であることから、本発明の水系バリア剤組成物の表面張力は40mN/m以下であることが好ましく、典型的には10〜40mN/m程度である。
含フッ素化合物濃度が0.1質量%以上であれば、本発明の水系バリア剤組成物の表面張力は20mN/m程度の低い値となり、被処理部品への処理能力を大きく向上させることができる。
【0041】
本発明の水系バリア剤組成物は、塗布などの部品への処理性の面から、動粘性率が1×10−3m/s以下であることが好ましい。
【0042】
本発明の水系バリア剤組成物は、溶解または分散安定性、潤滑オイルに対するバリア性、基材への濡れ性、または外観などに悪影響を与えない範囲であれば、上述した以外の他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、具体的に、被塗布面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、組成物を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的や未処理部品との区別をするための染料、この染料の安定剤、難燃剤、消泡剤または帯電防止剤などが挙げられる。また必要であれば、付加的な膜性成分としてポリマーを、本発明の含フッ素化合物の効果を損なわない範囲の量で含ませることができる。
【0043】
本発明に係る潤滑オイルに対するバリア性能付与方法は、上記のような水系バリア剤組成物を用いること以外は、一般的な溶液塗布による被膜形成方法を特に制限なく利用して、潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理が必要な摺動部品または摺動部品近くの部品(本明細書中、これらを「被処理部分」とも総称する)の表面に水系バリア剤組成物を塗布し、被膜を形成することにより実施することができる。処理方法としては、たとえば、浸漬塗布、スプレー塗布、またはあらかじめ水系バリア剤組成物を充填したエアゾール缶による塗布などの方法があるが、これらの方法に限定されない。この際には、あらかじめ含フッ素化合物濃度1〜20質量%の高濃度液として調製し、これを目的および用途に応じた任意の適切な濃度に希釈して使用することができる。
【0044】
上記で被処理部品の表面に塗布した水系バリア剤組成物を、乾燥することにより、表面上に塗膜を形成することができる。水系バリア剤組成物を塗布し、乾燥させた後、もしくは乾燥と共に、熱処理を施すのが好ましい。このような熱処理を行うことで、被処理表面により均一な被膜を形成することができる。
乾燥は100℃以上の温度で行うことがより好ましい。該乾燥温度は、本発明の水系バリア剤組成物を構成する水系媒体の沸点以上であることが好ましい。被処理部品の材質などにより、加熱乾燥が困難な場合には、加熱を回避して乾燥すべきことは勿論であり、加熱処理の条件は、塗布する組成物の組成、塗布面積等に応じて適宜選択すればよい。
上記のような潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理が施された摺動部品または摺動部品近くの部品も本発明の一態様として提供される。
【実施例】
【0045】
以下に本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に表記される「%」および「部」は、特に断わらない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を意味する。
また以下にRで表記される基は、炭素原子数nが平均9の−C2n+1を示す。
【0046】
(合成例1)
含フッ素化合物1:RCOONHの合成
COOHを100部と、2−プロパノール(IPA)を100部とを十分に混合させた後、25%アンモニア水溶液 15部を常温で滴下し、その後1時間熟成させた。その後、アンモニア水でpH9に調整し、標題の含フッ素化合物1の水系溶液を得た。
【0047】
(合成例2)
含フッ素化合物2:RCONH(CH(CHの合成
CONH(CHN(CH 67部、IPA 34部、イオン交換水 17部加え、30分撹拌した。40℃を超えないように冷却しながら、CHI 19部を2時間で滴下した。滴下後、40℃で8時間熟成させた。その後、アンモニア水でpH9に調整し、標題の含フッ素化合物2の水系溶液を得た。
【0048】
(合成例3)
含フッ素化合物3:RCONH(CH(CH(CHCOO)の合成
CONH(CHN(CH 152部とIPA 76部を充分混合させた後、モノクロロ酢酸 32部を加え、30分間還流させた。その後、反応器内を約80℃に保ちながら、30%NaOH水溶液 45部を1.5時間かけて滴下した後、6時間熟成させた。50℃で濾過して析出物を除き、標題の含フッ素化合物3の水系溶液を得た。
【0049】
(合成例4)
含フッ素化合物4:RCONH(CH(CH(O)の合成
CONH(CHN(CH 94部とイオン交換水 28部を混合した。65℃に保ちながら、35%過酸化水素水 15部を1時間かけて滴下した。その後、65℃で15時間熟成させ、標題の含フッ素化合物4の水溶液を得た。
【0050】
(合成例5)
【化1】


(1)アミド体の合成
COOC 110部とシクロヘキサン 220部を混合させた後、ヒドロキシエチルピペラジン 27部を加えた。IPAとシクロヘキサンを留去しながら、10時間反応させ以下に示すアミド体を得た。
【化2】


上記アミド体を124部に、IPA 9部を加え、次いでモノクロル酢酸 29部を加えた。90℃で4時間反応させた後、36%NaOH 45部を2時間かけて滴下した。滴下後、90℃で10時間熟成させた。その後、IPAを116部加えた。温度を70℃に下げたのち、析出物を濾過で除去し、濾液にイオン交換水を130部加えて、標題の含フッ素化合物5の水溶液を得た。
【0051】
(比較合成例1)
含フッ素化合物6:RCONH(CHCHO)21CHの合成
CONHCHCHOH 46部とCH−(OCHCH20−Cl 52部を混合し、撹拌しながら75℃までに加熱し溶解した。その後、75℃のまま30%NaOH水溶液 20部を滴下した。5時間の熟成後、室温まで冷ました後に、IPA 112部を加えた。反応後、35%HCl水溶液を加えてpH7に調整し、無機塩を濾別して、標題の含フッ素化合物6の水溶液を得た。
【0052】
(比較合成例2)
2−パーフルオロアルキル(C6〜14)エチルアクリレート 100部(Net)、フッ素系界面活性剤サーフロンS−141(セイミケミカル社製) 14部(Net)、アセトン 25部、イオン交換水 175部を混合した後、50℃で1時間あらかじめ乳化を行った。その後、40℃以下に冷却し、開始剤 1部を加え、反応器内を窒素で置換した後、60℃で18時間ラジカル重合を行った。反応後、析出物を濾別して、表1に示すアクリレート繰り返し単位を有する含フッ素化合物7を含む水系分散液を得た。
【0053】
[潤滑オイルの水系バリア剤組成物の調合]
(実施例1)
合成例1で得られた含フッ素化合物1の水系溶液を、含フッ素化合物(固形分)濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈して、水系バリア剤組成物とした。
【0054】
(実施例2〜5)
合成例2〜5で得られた各含フッ素化合物の水系溶液または水溶液を、それぞれ含フッ素化合物(固形分)濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈して、水系バリア剤組成物とした。
【0055】
(比較例1〜2)
合成比較例1〜2で得られた含フッ素化合物6または7の水系溶液を、含フッ素化合物(固形分)濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈して、水系バリア剤組成物とした。
【0056】
上記で調製した各水系バリア剤組成物を表1に示す。
(試験例1)表面張力の測定
上記で調製した各水系バリア剤組成物について、ウィルヘルミー表面張力計を用いて、25℃における表面張力を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(試験例2)低濃度での潤滑オイルに対するバリア性能評価
1)100倍希釈液での潤滑オイルに対するバリア性能付与処理
実施例1〜5および比較例1〜2の水系バリア剤組成物を、イオン交換水で100倍に希釈し、処理液とした。この処理液に、ガラス製のテストピースを1分間浸漬した後、取り出し、110℃で5分間乾燥した。
上記潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理を施したテストピースのn−ヘキサデカンに対する接触角を測定して潤滑オイルに対するバリア性能を評価した。結果を表1に示す。
なお、接触角の測定には、液滴式投影型接触角計(協和界面科学社製)を用いた。接触角が大きいほど潤滑オイルに対するバリア性能が高いことを意味する。
【0058】
【表1】

【0059】
2)500倍希釈液での潤滑オイルに対するバリア性能付与処理
実施例1〜4および比較例1〜2の水系バリア剤組成物を、イオン交換水で500倍に希釈し、処理液とした。この処理液を用いた以外は、上記1)と同様にして潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理を施し、n−ヘキサデカンに対する接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
(試験例3)潤滑オイルに対するバリア性能の耐久性
実施例1〜5、比較例1〜2で得られた水系バリア剤組成物を、イオン交換水で4倍に希釈し、処理液とした。各処理液に、SUS304、真鍮、ガラス製のテストピースを1分間浸漬した。次に、テストピースを取り出した後、遠心分離機(Φ=約12.5cm、約500rpm×20秒)にかけ、余分な処理液を除去した後、110℃で5分間乾燥した。
上記潤滑オイルに対するバリア性能付与の処理を施したテストピースについて、セバシン酸ジオクチルに対する接触角測定を行った(初期)。次に、セバシン酸ジオクチルをのせたまま、80℃の乾燥機内に24時間放置した後、再び接触角の測定を行った。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3に示すように、R基を含有しているものの末端に極性基を有さない化合物もしくはポリマーを有効成分(主成分)として含む比較例に対し、末端にR基と極性基とを有する化合物を有効成分(主成分)として含む本発明実施例の水系バリア剤組成物は、主成分濃度が0.02質量%程度の低濃度でも、場合によっては0.04質量%程度の極低濃度でも、潤滑オイルに対する優れたバリア性を発揮することが確認できた。また、従来、モノメリックな化合物では低いと考えられていた耐久性についても、本発明の構造では十分な耐久性を示した。したがって、従来のポリマータイプの水系バリア剤組成物より低濃度でも充分に実用的な潤滑オイルに対するバリア性能を発現するモノメリックな水系バリア剤組成物を提供できることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端基が、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基からなる群より選ばれる含フッ素基R、および
下記群より選ばれる極性基Y:
【化1】

(Rは、独立にHまたは炭素原子数1〜10のアルキル基)
のそれぞれ少なくとも1つを含みいずれかである含フッ素化合物の少なくとも1種を、有効成分の主成分として水系媒体中に含む、潤滑オイルの水系バリア剤組成物。
【請求項2】
前記含フッ素化合物が、前記含フッ素基Rおよび極性基Yを連結する2〜4価の連結基Zを含む請求項1に記載の水系バリア剤組成物。
【請求項3】
前記連結基Zが、下記Z、ZおよびZからなる群より選ばれる基の1つまたは複数組合わせである請求項2に記載の水系バリア剤組成物:
単結合、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CHNH−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−CO−、−COCH−、−CH=CH−CO−、−COO−、−COS−、−CH=CH−COO−、−CONH−、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基、2価の4〜7員の飽和または不飽和の脂肪環基、6員芳香環基、5〜6員の複素環基およびこれら環基の縮合環からなる2価の連結基Z
−CH<、−CHCH<、−CH(CH−)、−CHCH(CH−)、−CH(CHCHO−)、−CHCH(CHCHO−)、−N<、−CHN<、−N(CH−)、−CHN(CH−)、−N(CHCHO−)、−N(CHCHOCHCH−)、−CHN(CHCHO−)、−C(O)−N<、−C(O)−N(CH−)および−C(O)−N(CHCHO−)からなる3価の連結基Z;および
【化2】

からなる4価の連結基Z
【請求項4】
前記含フッ素化合物が、(R−Z−(Y)(mは1〜3の整数、nは1以上の整数)で表される化合物である請求項2または3に記載の水系バリア剤組成物。
【請求項5】
前記フッ素化合物が、下記からなる群より選ばれる式で表される化合物である請求項3または4に記載の水系バリア剤組成物。
−Z22−Y
(Rm1−Z32−(Y)n1
(Rm2−Z42−(Y)n2
(式中、Z22は、1以上の2価の連結基Zからなる2価の連結基を表し、Z32は、1以上の3価の連結基Zと1以上の2価の連結基Zとからなる3価の連結基を表し、Z42は、1以上の4価の連結基Zと1以上の2価の連結基Zとからなる4価の連結基を表し、Z、Z、Zはそれぞれ請求項3の定義と同じであり、mは1又は2を表し、nは「3−m」を表し、mは1、2又は3を表し、nは「4−m」を表す。)
【請求項6】
前記連結基Zが、前記含フッ素化合物の分子間配向を促す基である請求項2ないし5のいずれかに記載の水系バリア剤組成物。
【請求項7】
前記水系媒体は、水の含有率が50質量%以上であり、残余が沸点40〜250℃の水溶性有機溶媒である請求項1ないし6のいずれかに記載の水系バリア剤組成物。
【請求項8】
前記水系バリア剤組成物中の前記含フッ素化合物濃度が0.001〜20質量%である請求項1ないし7のいずれかに記載の水系バリア剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の水系バリア剤組成物を、摺動部品および/または摺動部品に近設する部品の表面に塗布し、潤滑オイルに対するバリア膜を形成する、摺動部品および/または摺動部品に近設する部品の潤滑オイルに対するバリア性能付与方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の水系バリア剤組成物から形成される被膜を表面に有し、潤滑オイルに対するバリア性能が付与された摺動部品および/または摺動部品に近接する部品。

【公開番号】特開2006−342224(P2006−342224A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167937(P2005−167937)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000108030)セイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】