潤滑剤、その再利用方法、潤滑剤供給装置、プロセスユニット、及び画像形成装置
【課題】再利用に必要な容量を確保しつつ、有効活用することが可能な潤滑剤を提供する。
【解決手段】本発明は、回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤20に係るものである。潤滑剤20の未使用状態における高さL2を、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さAとBを合わせた高さ以上に設定した。
【解決手段】本発明は、回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤20に係るものである。潤滑剤20の未使用状態における高さL2を、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さAとBを合わせた高さ以上に設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の表面に供給される潤滑剤、その再利用方法、前記潤滑剤を備えた潤滑剤供給装置、プロセスユニット、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置においては、従来から、感光体や中間転写ベルト等の像担持体の画像転写性やクリーニング性の向上、長寿命化などを図る目的で、像担持体の表面に潤滑剤を供給することが行われている。像担持体に潤滑剤を供給する方法としては、例えば、回転するブラシによって固形の潤滑剤を削り取って塗布する方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、近年では、先進諸国を中心として世界的に環境問題への取り組みが行われており、画像形成装置メーカーにおいては、その取り組みの一つとして、ユーザから装置やその部品を回収して、必要な処置を施してから再度市場に投入する再生産が行われている。例えば、上述の潤滑剤と、感光体やクリーニングブレード、帯電ローラなどを、一体的に構成した画像形成ユニットにおいては、各構成部材の耐用寿命はそれぞれ異なるが、その中で最も短い耐用寿命が当該ユニットの製品寿命として設定される。特に、上記潤滑剤は削り取られて消耗するため、感光体や帯電ローラ等の部品に比べ交換時期が早く到来する。このため、潤滑剤が枯渇するタイミングをユニットの製品寿命として取り扱う場合がある。従来、このような画像形成ユニットを再利用する場合は、潤滑剤を新しいものと交換するのが一般的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、潤滑剤の製造には、粉状の潤滑剤を固形のバー状に成型し、それを板金に接着する工程を要する。環境負荷や製造コストの観点からすれば、再利用時に新しい潤滑剤に取り替えるよりも、予め通常の2倍の容量がある潤滑剤を取り付けておき、それを再度使用する方が、潤滑剤の成型や板金加工、板金への潤滑剤の接着工程に要する材料やエネルギーを削減でき、好ましい。
【0005】
そこで、潤滑剤の容量を増やすには、その長手方向か、幅方向、あるいは、潤滑剤が消費される方向の高さ方向にサイズを大きくすることが考えられる。しかし、長手方向サイズは像担持体上の画像担持領域よりも若干大きい程度がよく、幅方向サイズは回転するブラシの直径よりも小さいサイズが好ましい。このため、潤滑剤の容量を増やすには、高さ方向(消費される方向)にサイズを大きくするのが現実的である。しかし、潤滑剤のサイズの増大は画像形成ユニット等の大型化に繋がるため、サイズを無制限に大きくすることはできない。
【0006】
また、図10(a)に示すように、潤滑剤200は、一般に長手状にほぼ均一な高さL0で形成されているが、様々な要因によって、その長手方向の両端部における消費量が、像担持体の回転軸(又は像担持体の表面における移動方向と交差する方向)の一端側と他端側とで異なる。このため、製品寿命に達する頃になると、図10(b)に示すように、潤滑剤200の両端部における高さに違いが生じ、有効活用しにくいといった問題もある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑み、再利用に必要な容量を確保しつつ、有効活用することが可能な潤滑剤、その再利用方法、前記潤滑剤を備えた潤滑剤供給装置、プロセスユニット、及び画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤において、未使用状態における高さを、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さを合わせた高さ以上に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再利用時期になったとき、潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることで、再利用前の使用によって生じた潤滑剤の一端と他端における消費偏差を、再利用後の使用によって解消することができるので、潤滑剤を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置に搭載された潤滑剤供給装置の概略構成図である。
【図3】プロセスユニットの再生産工程の説明図である。
【図4】プロセスユニットを構成する部品ごとの利用回数を記載した表を示す図である。
【図5】前記潤滑剤供給装置が有する潤滑剤の正面図である。
【図6】前記潤滑剤の使用に伴う高さの経時変化を示す図である。
【図7】一方の端面に着色を施した潤滑剤の側面図である。
【図8】異なる2色で着色を施した潤滑剤の側面図である。
【図9】他方の端面に着色を施した潤滑剤の側面図である。
【図10】従来の潤滑剤の正面図である。
【図11】再利用に必要な容量を確保した比較例の潤滑剤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラー画像形成装置であり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。なお、現像剤としては、トナーから成る一成分現像剤を用いてもよいし、トナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いても構わない。
【0013】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、潜像担持体(又は像担持体)としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラや帯電ローラクリーナー等を有する帯電装置3と、感光体2の表面にトナーを供給する現像ローラ等を有する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード等を有する感光体クリーニング装置5と、感光体2の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置6などを備える。図1では、イエローのプロセスユニット1Yが備える感光体2、帯電装置3、現像装置4、感光体クリーニング装置5、潤滑剤供給装置6のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1C,1M,1Bkにおいては符号を省略している。
【0014】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体2の表面に静電潜像を書き込む書込装置7が配設されている。書込装置7は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0015】
また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、転写装置8が配設されている。転写装置8は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト9を有する。中間転写ベルト9は、支持部材としての複数のローラによって張架されており、そのうちの1つのローラが回転駆動することにより、中間転写ベルト9は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。また、中間転写ベルト9の外周には、中間転写ベルト9の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。
【0016】
4つの感光体2に対向した位置には、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト9の内周面を押圧しており、中間転写ベルト9の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。また、各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0017】
中間転写ベルト9を張架するローラの1つに対向して、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト9の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト9とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12には、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。また、二次転写ローラ12の外周には、二次転写ローラ12の表面をクリーニングするローラクリーニング装置10が配設されている。
【0018】
画像形成装置本体100の下部には、給紙部14が設けられている。この給紙部14には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙トレイ15や、給紙トレイ15から用紙Pを搬出する給紙ローラ16等が設けてある。なお、上記用紙Pは、厚紙、はがき、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等を含む。さらに、記録媒体には、用紙P以外に、OHPシートもしくはOHPフィルム等のシート材も含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構を設けてもよい。
【0019】
また、画像形成装置本体100内には、給紙部14から給送された用紙を二次転写ニップを通って装置外へ搬送するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙を二次転写ニップへ搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ17が配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙を搬送する搬送装置18と、用紙に転写された未定着画像を定着する定着装置19が配設されている。
【0020】
上記画像形成装置は以下のように動作する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2が図示しない駆動装置によって図の反時計回りに回転駆動され、各感光体2の表面が帯電装置3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体2の表面には、書込装置7からレーザー光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に書き込まれる画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0021】
続いて、中間転写ベルト9を張架するローラの1つが回転駆動されることにより、中間転写ベルト9が図の矢印で示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト9上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト9はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
【0022】
上記トナー画像の転写を終えた後、各感光体2上に残留するトナーは、感光体クリーニング装置5によって除去される。次いで、潤滑剤供給装置6によって、各感光体2の表面に潤滑剤が供給される。
【0023】
一方、給紙部14では、給紙ローラ16が回転駆動することによって、給紙トレイ15に収容される用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ17によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト9との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト9上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト9上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。あるいは、二次転写ローラ12に対向するローラに対しトナーの帯電極性と同極性の転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト9上のトナー画像を用紙Pに転写するようにしてもよい。その後、用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト9上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去される。
【0024】
トナー画像が転写された用紙Pは、搬送装置18によって定着装置19へと搬送され、定着装置19において用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。その後、用紙Pは図示しない一対の排紙ローラによって装置外へ排出される。
【0025】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0026】
次に、上記潤滑剤供給装置6の構成及び動作について詳しく説明する。
なお、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkが有する潤滑剤供給装置6は、それぞれ同様の構成であるので、図2に基づき、1つの潤滑剤供給装置6について説明する。
【0027】
図2に示すように、潤滑剤塗布装置6は、潤滑剤20と、感光体2の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材としての潤滑剤塗布ブラシ21と、潤滑剤20を保持する潤滑剤保持部材22と、潤滑剤保持部材22を付勢する付勢部材としての加圧スプリング23と、感光体2に供給された潤滑剤を均す均し部材としての均しブレード24とを有する。
【0028】
潤滑剤塗布ブラシ21は、感光体2の表面に接触しており、図示しない駆動手段によって感光体2の回転方向に対してトレーリング方向(順方向)に回転するように構成されている。潤滑剤保持部材22は、板金等によって形成され、加圧スプリング23によって潤滑剤塗布ブラシ21側へ付勢されている。これにより、潤滑剤20が、潤滑剤塗布ブラシ21に接触した状態で保持されている。
【0029】
上記のように、本実施形態では、潤滑剤20を潤滑剤塗布ブラシ21に接触させるために加圧スプリング23を用いているが、潤滑剤20に錘を設け、その錘に生じる重力によって潤滑剤20を潤滑剤塗布ブラシ21に接触させるようにしてもよい。あるいは、潤滑剤20をその自重によって潤滑剤塗布ブラシ21に接触させるように構成することも可能である。
【0030】
また、潤滑剤20は、長方形状の固形の潤滑剤であり、潤滑剤塗布ブラシ21又は感光体2の回転軸方向(又は感光体2の表面における移動方向と交差する方向)に長手状に配設されている。潤滑剤保持部材22への潤滑剤20の固定は、両面粘着テープや接着剤等によって行っている。潤滑剤20の材料としては、脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等から成るものを使用できるが、感光体2の摩擦を低減する効果の大きい点で、特に脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、スタエリン酸、アレイン酸等の直鎖状炭化水素の脂肪酸金属塩が挙げられる。金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム、チラン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄などが好ましく、特にステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0031】
上記のように構成された潤滑剤供給装置6は、以下のように動作する。
上述のように、画像転写後の感光体2が感光体クリーニング装置5によってクリーニングされると、その感光体2の表面に、回転する潤滑剤塗布ブラシ21によって削り取られた潤滑剤が塗布(供給)される。その後、均しブレード24によって、潤滑剤が感光体2上で均一な厚さに均される。以降、感光体2に画像が形成されるたびに、上記潤滑剤供給動作が同様に行われる。
【0032】
以下、プロセスユニットの再利用方法について説明する。
プロセスユニットは、製品寿命が到来した後、回収され、必要な部品を再利用して再生産される。そのため、プロセスユニットは、分解して必要な部品を交換できるように構成されている。プロセスユニットの再生産工程は、例えば、図3に示す工程からなる。
【0033】
図3に示すように、プロセスユニットの再生産にあたっては、まず、製品寿命が到来したプロセスユニットの回収を行う。そして、回収したプロセスユニットを必要なレベルまで分解し、再利用可能な部品と交換を要する部品とに仕分けする。ここで、交換を要する部品については、廃棄し、代わりに新品を用意する。一方、再利用可能な部品は、洗浄し、再利用可能か否かの検査を行う。その結果、再利用できないものについては、廃棄し、新品を用意する。そして、検査をクリアした部品と用意した新品を用いて、プロセスユニットの再組立を行う。その後、完成したプロセスユニットを梱包して、一連の再生産工程が完了する。なお、図3に示す工程は一例であり、これら以外の工程を含む場合であってもよい。
【0034】
図4に、プロセスユニットを構成する部品ごとの利用回数を記載した表を示す。
表中の利用回数が1回の部品(帯電ローラクリーナー、現像剤、クリーニングブレード)は、製品寿命が到来したプロセスユニットを回収し、再生産するたびに新品への交換を要する部品である。これに対し、利用回数が2回の部品(帯電ローラ、潤滑剤、潤滑剤塗布ブラシ)は、上記検査の必要項目をクリアすれば、再度プロセスユニットに取り付けられ再利用される部品である。また、利用回数が3回の部品(現像ローラ)は、検査の必要項目をクリアすれば、最大で2回再利用可能な部品である。
【0035】
利用回数が2回の部品を再利用する場合は、当該部品に2回目の利用であることを示すマーキングを行う。これにより、3回目の再生産時に、すでに2回利用済みであることを簡単に確認できるので、検査工程を経ずとも廃棄することができる。同様に、利用回数が3回の部品を再利用する場合も、マーキングを行う。ただし、この場合は、当該部品が2回目の利用であるか、3回目の利用であるかを確認できるようなマーキングを行う。マーキング方法の例としては、部品の適当な箇所にペンなどで印を書き込んだり、シールを貼ったりするなどの方法がある。あるいは、部品の一部に予め設けられている破断可能な爪を破断することで、2回目の利用であることを確認できるようにしてもよい。また、利用回数が3回の部品については、2回目の利用であるか、3回目の利用であるかを判別するために、マーキングの色を変えたり、色の異なるシールを貼ったりすればよい。また、再生産時にプロセスユニットのケーシングから部品を取り外す必要がない場合は、2回目又は3回目の利用を示すマーキングをプロセスユニット自体に行ってもよい。
【0036】
ここで、潤滑剤を再利用する方法としては、単純に、潤滑剤の高さを1回使用する分の高さの2倍にする方法が考えられる。しかし、一般に、潤滑剤は一端と他端において消費偏差があるため、潤滑剤の高さは消費量が多い方の端部の消費高さの2倍以上の高さに設定しなければならない。仮に、潤滑剤の高さを消費量が少ない方の端部の消費高さの2倍に設定すると、2回目の使用において潤滑剤が枯渇する可能性がある。
【0037】
従って、図10(b)に示す潤滑剤200において、消費量が多い方の端部における製品寿命までの消費高さをAとすると、再利用するには、図11(a)(b)に示すように、未使用状態での高さL1を、多い方の消費高さAの2倍以上の高さに設定する必要がある(L1≧A+A)。
【0038】
しかしながら、未使用状態での高さを多い方の消費高さの2倍以上の高さに設定すると、一方の端部側で残る潤滑剤量も通常の2倍以上となるため、潤滑剤を有効活用することができず、潤滑剤の製造コストが無駄にかかるといった問題がある。また、結果的に、潤滑剤のサイズが大きくなり、画像形成ユニット等が大型化するといった問題もある。
そこで、本実施形態では、以下のように潤滑剤の高さを設定し、再利用するようにしている。
【0039】
図5は、本実施形態に係る潤滑剤をその長手方向と直交する方向から見た正面図である。
図5に示すように、未使用状態(初期状態)での潤滑剤20は、長手方向に渡ってほぼ均一な高さL2に形成されている。ただし、この潤滑剤20は、上記と同様に、長手方向の両端部における消費量が、感光体の回転軸(又は感光体の表面における移動方向と交差する方向)の一端と他端とで異なる。図5に示す例では、図の右側に配設された端部における消費量の方が、図の左側に配設された端部における消費量よりも多くなる。ここで、潤滑剤20の使用開始から再利用時期までに消費すると予想される、両端部における消費高さをそれぞれA及びBとすると、本実施形態では、未使用状態での高さL2を、前記両端部における消費高さAとBを合わせた高さに、さらに余裕分の高さCを加えた高さに設定している(L2=A+B+C)。
【0040】
続いて、本実施形態に係る潤滑剤の再利用方法について説明する。
図6は、本実施形態における潤滑剤の使用に伴う高さの経時変化を示す図である。同図中、(a)は未使用時の状態、(b)は1回目の製品寿命が到来したときの状態、(c)は2回目の利用開始時の状態、(d)は2回目の製品寿命が到来したときの状態を示している。また、図6(a)〜(d)において、右側が感光体の回転軸の一端側、左側がその他端側とする。
【0041】
図6(a)に示すように、未使用状態では、潤滑剤20は、長手方向に渡ってほぼ均一な高さL2に形成されている。しかし、潤滑剤20が削り取られていくと、両端部20a,20bにおいてそれぞれ消費量が異なるため、図6(b)に示すように、1回目の製品寿命が到来した時点では、図の右側に配設された端部20aと図の左側に配設された端部20bとで高さに違いが生じる。この場合、図の右側に配設された端部20aにおける消費量(消費高さA)の方が、図の左側に配設された端部20bにおける消費量(消費高さB)よりも大きい。
【0042】
上述のように、潤滑剤20は2回利用可能な部品であるので、プロセスユニットの1回目の製品寿命が到来した場合、上記再生産工程を経て潤滑剤20を再利用する。このとき、潤滑剤20をプロセスユニットに対して長手方向に逆にして付け替える。本実施形態では、図6(b)に示す潤滑剤20と潤滑剤保持部材22とを一体的に左右逆に付け替え、図6(c)に示す状態にする。
【0043】
そして、再生産したプロセスユニットを画像形成装置に搭載して使用し、2回目の製品寿命が到来すると、そのときまでに潤滑剤20は上記1回目の利用時と同様に消費され、図6(d)に示す状態になる。すなわち、再生産直後の図6(c)に示す状態から、図の右側に配設された端部20bではさらに高さAだけ消費され、図の左側に配設された端部20aではさらに高さBだけ消費される。その結果、図6(d)に示すように、2回目の製品寿命が到来した時点で、潤滑剤20の各端部20a,20bにおける未使用状態からの消費量の合計が、いずれも同じ量(A+B)となる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、2回目の製品寿命が到来した時点で、潤滑剤20の各端部20a,20bにおける消費高さが同じとなるので、潤滑剤20の残量も各端部20a,20bにおいて同じとなる。すなわち、長手方向の両端部における消費量が、感光体の回転軸の一端と他端とで異なる潤滑剤であっても、再利用時に潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることで、再利用前の使用によって生じた消費偏差を、再利用後の使用によって解消することができる。これにより、潤滑剤残量を減らすことができ、潤滑剤を有効活用することができるようになる。
【0045】
なお、上述の例では、便宜的に、1回分の製品寿命で消費する各端部における消費高さA,Bを、上記潤滑剤の再利用時期までに消費すると予想される消費高さA,B(図5参照)と同じ量として説明している。実際の潤滑剤の消費高さは、種々の要因でばらつきが生じるため、予想される消費高さと一致しない可能性も大きいが、本実施形態では、余裕分の高さCを設けているため、実際の消費高さが予想される消費高さ対して多少増加しても潤滑剤が枯渇する不具合が生じることはない。また、余裕分の高さCの大きさは、潤滑剤の消費量のばらつき度合いに応じて適宜変更することが可能である。特に、潤滑剤の消費量にばらつきが無い場合や、ばらつきがあっても極めて微量である場合は、余裕分の高さCを限りなく0に近づけることが可能である。従って、そのような場合は、未使用状態における高さL2を、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さAとBを合わせた高さ(L2=A+B)に設定することができる。
【0046】
また、上記のように、潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えるようにすることで、図11に示す長手方向を逆にして付け替えない潤滑剤に比べて、潤滑剤の高さを低くすることができる。以下、これについて詳しく説明する。
【0047】
図11に示す比較例の潤滑剤200において、余裕分の高さをCとすると、2回分の製品寿命に足りる潤滑剤の容量を確保するためには、未使用状態での高さL1を、大きい方の消費高さAの2倍に、余裕分の高さCを加えた高さに設定する必要がある(L1=A+A+C)。
【0048】
これに対し、本発明の実施形態では、上述のように、未使用状態での必要な高さL2は、1回目の製品寿命が到来するときまでの、各端部における消費高さAとBを合わせた高さに、余裕分の高さCを加えた高さとなる(L2=A+B+C)。
【0049】
ここで、上記比較例の潤滑剤200の未使用状態の高さL1から、本発明の実施形態に係る潤滑剤20の未使用状態の高さL2を差し引くと、A−Bとなるが、A>Bであるので、比較例の潤滑剤200は本実施形態の潤滑剤20よりも、A−Bだけ高いということになる。言い換えると、本実施形態の潤滑剤20は、比較例の潤滑剤200よりも、A−Bだけ低く形成することができる。このように、本発明の実施形態に係る潤滑剤は、比較例の潤滑剤に比べて、その高さ方向のサイズを小さくすることが可能である。
【0050】
また、上記本発明の実施形態に係る潤滑剤に、再利用したか否かを判別可能な目印を付けてもよい。図7に、その潤滑剤の構成を示す。
【0051】
図7は、潤滑剤の長手方向の一方の端面を示す側面図である。図7において、(a)は未使用時の状態、(b)は1回目の製品寿命が到来したときの状態、(c)は2回目の製品寿命が到来したときの状態を示している。図中、一点鎖線E1は、1回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置を示し、一点鎖線E2は、2回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置を示す。
【0052】
また、図中、符号Aは、図示する一方の端面において再利用時期(1回目の製品寿命到来時)までに消費すると予想される消費高さであり、符号Bは、反対側の他方の端面において再利用時期(1回目の製品寿命到来時)までに消費すると予想される消費高さである。また、符号Cは、余裕分の高さである。すなわち、この実施形態においても、上記実施形態と同様に、未使用状態における潤滑剤20の高さL2は、再利用時期(1回目の製品寿命が到来するとき)までの、各端部における消費高さAとBを合わせた高さに、余裕分の高さCを加えた高さに設定されている。
【0053】
なお、この場合も、余裕分の高さCは、潤滑剤の消費量のばらつき度合いに応じて適宜変更することが可能である。従って、上記と同様に、潤滑剤の消費量にばらつきが無い場合や、ばらつきがあっても極めて微量である場合は、未使用状態における高さL2を、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さAとBを合わせた高さ(L2=A+B)に設定することができる。
【0054】
この実施形態では、再利用したか否かを判別するために、潤滑剤20の一端面に着色を施している。図7(a)又は(b)に示す斜線部がその着色部分である。具体的に、着色部分は、図7(a)に示す未使用状態における潤滑剤20の先端から、上記1回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E1と、上記2回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E2との間の位置まで施されている。
【0055】
上記のように着色された潤滑剤20をプロセスユニットに取り付けて使用した場合、1回目の製品寿命が到来した時点では、図7(b)に示すように、潤滑剤20が先端から一点鎖線E1の位置まで削り取られているが、着色部分は残っている。その後、上述のように潤滑剤20を再利用し、2回目の製品寿命が到来した時点では、図7(c)に示すように、潤滑剤20が一点鎖線E2の位置まで削り取られているため、着色部分は残らない。
【0056】
以上のように、1回目の製品寿命が到来した時点では着色部分が残り、2回目の製品寿命が到来した時点では着色部分が残らないようになっているので、着色部分の有無を確認することによって、製品寿命が何回到来したか(潤滑剤20を再利用したか否か)を容易に判別することが可能である。
【0057】
すなわち、この実施形態では、1回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E1から、上記2回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E2までの間で、着色の有無による境界Gを表示することによって、製品寿命が何回到来したかを判別可能にしている。さらに、言い換えれば、一方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さAから、その消費高さAにさらに他方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さBを加えた高さまでの間で、着色による境界Gを表示するようにしている。このように、再利用したか否かを目視で容易に確認できる目印(境界G)を潤滑剤20に付けておくことで、廃棄すべき潤滑剤を誤ってプロセスユニットに取り付けてしまうミスも起こり難くなる。
【0058】
なお、図7に示す例においても、便宜的に、1回分の製品寿命で消費する各端部における消費高さA,Bを、上記潤滑剤の再利用時期までに消費すると予想される消費高さA,Bと同じ量として説明しているが、実際には消費高さにばらつきが生じる。このため、上記着色による境界Gを、図7に示す一点鎖線E1又はE2の近い位置に配設していると、潤滑剤消費量のばらつきによって、1回目の製品寿命到来時に着色部分が全てなくなってしまったり、2回目の製品寿命到来時に着色部分が残っていたりする可能性もある。
【0059】
そのため、着色による境界Gの位置は、図7に示す一点鎖線E1から一点鎖線E2へ向かって、20%の位置から80%の位置までの間で設定するのが好ましい。言い換えれば、着色による境界Gを、製品寿命の1.2倍から1.8倍までの間に消費すると予想される消費高さの範囲内に配設するのがよい。これにより、潤滑剤の消費量にばらつきがあっても、潤滑剤を再利用したか否かについて判別できる可能性が高まる。
【0060】
また、図8に示す実施形態のように、潤滑剤の端面に異なる2色の着色を行うことで、境界Gを表示するようにしてもよい。また、境界Gがわかれば、着色以外の方法であってもよい。
【0061】
図9は、図7に示す端面とは反対側の端面に着色をした場合の側面図である。
図9に示す端面では、符号AとBで示す領域が図7に示す例とは上下逆になるが、この場合においても、着色による境界Gを、1回目の製品寿命到来時点での潤滑剤先端面の予想位置E1と、2回目の製品寿命到来時点での潤滑剤先端面の予想位置E2との間に配設している。これにより、上記と同様に、潤滑剤を再利用したか否かについて容易に判別することができる。
【0062】
また、この場合も、異なる2色の着色によって、あるいはその他の方法によって、境界Gを表示してもよい。また、上記のように、境界Gを、製品寿命の1.2倍から1.8倍までの間に消費すると予想される消費高さの範囲内に配設することによって、潤滑剤の消費量にばらつきがあっても、潤滑剤を再利用したか否かについて判別できる可能性を高めることができる。なお、上記着色などによる境界Gは、潤滑剤20の両端面にそれぞれ設けてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、感光体に供給される潤滑剤を例に挙げて説明したが、本発明に係る潤滑剤は、これに限らず、中間転写ベルト等の像担持体やそれ以外の回転体の表面に供給される潤滑剤であってもよい。また、本発明に係る潤滑剤供給装置を備える画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0064】
以上のように、本発明によれば、潤滑剤を再利用することができるので、新たな潤滑剤の製造に要する材料やエネルギー等のコストを削減することができると共に、環境への負荷を軽減することができる。また、潤滑剤を再利用する際、潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることで、再利用前の使用によって生じた消費偏差を、再利用後の使用によって解消することができ、潤滑剤を有効活用することができる。また、本発明の潤滑剤は、再利用に必要な容量を確保しつつ、図11に示す比較例の潤滑剤に比べて高さを低くすることができる。具体的には、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さのうち、消費量の多い方の消費高さをAとすると、未使用状態における高さL2をその消費高さAの2倍未満に設定することができる(L2<A+A)。このため、必要な潤滑剤の容量を減らすことができ、さらなるコスト削減と環境負荷の軽減を図ることができる。また、潤滑剤の高さを低くすることができるため、潤滑剤を備える装置やユニットの大型化の抑制にも寄与できる。
【符号の説明】
【0065】
1Y,1C,1M,1Bk プロセスユニット
2 感光体(像担持体)
6 潤滑剤供給装置
20 潤滑剤
21 潤滑剤塗布ブラシ(潤滑剤供給部材)
L2 未使用状態における高さ
A 長手方向の一端部での消費高さ
B 長手方向の他端部での消費高さ
C 余裕分の高さ
G 境界
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2001−305907号公報
【特許文献2】特開2009−204652号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の表面に供給される潤滑剤、その再利用方法、前記潤滑剤を備えた潤滑剤供給装置、プロセスユニット、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置においては、従来から、感光体や中間転写ベルト等の像担持体の画像転写性やクリーニング性の向上、長寿命化などを図る目的で、像担持体の表面に潤滑剤を供給することが行われている。像担持体に潤滑剤を供給する方法としては、例えば、回転するブラシによって固形の潤滑剤を削り取って塗布する方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、近年では、先進諸国を中心として世界的に環境問題への取り組みが行われており、画像形成装置メーカーにおいては、その取り組みの一つとして、ユーザから装置やその部品を回収して、必要な処置を施してから再度市場に投入する再生産が行われている。例えば、上述の潤滑剤と、感光体やクリーニングブレード、帯電ローラなどを、一体的に構成した画像形成ユニットにおいては、各構成部材の耐用寿命はそれぞれ異なるが、その中で最も短い耐用寿命が当該ユニットの製品寿命として設定される。特に、上記潤滑剤は削り取られて消耗するため、感光体や帯電ローラ等の部品に比べ交換時期が早く到来する。このため、潤滑剤が枯渇するタイミングをユニットの製品寿命として取り扱う場合がある。従来、このような画像形成ユニットを再利用する場合は、潤滑剤を新しいものと交換するのが一般的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、潤滑剤の製造には、粉状の潤滑剤を固形のバー状に成型し、それを板金に接着する工程を要する。環境負荷や製造コストの観点からすれば、再利用時に新しい潤滑剤に取り替えるよりも、予め通常の2倍の容量がある潤滑剤を取り付けておき、それを再度使用する方が、潤滑剤の成型や板金加工、板金への潤滑剤の接着工程に要する材料やエネルギーを削減でき、好ましい。
【0005】
そこで、潤滑剤の容量を増やすには、その長手方向か、幅方向、あるいは、潤滑剤が消費される方向の高さ方向にサイズを大きくすることが考えられる。しかし、長手方向サイズは像担持体上の画像担持領域よりも若干大きい程度がよく、幅方向サイズは回転するブラシの直径よりも小さいサイズが好ましい。このため、潤滑剤の容量を増やすには、高さ方向(消費される方向)にサイズを大きくするのが現実的である。しかし、潤滑剤のサイズの増大は画像形成ユニット等の大型化に繋がるため、サイズを無制限に大きくすることはできない。
【0006】
また、図10(a)に示すように、潤滑剤200は、一般に長手状にほぼ均一な高さL0で形成されているが、様々な要因によって、その長手方向の両端部における消費量が、像担持体の回転軸(又は像担持体の表面における移動方向と交差する方向)の一端側と他端側とで異なる。このため、製品寿命に達する頃になると、図10(b)に示すように、潤滑剤200の両端部における高さに違いが生じ、有効活用しにくいといった問題もある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑み、再利用に必要な容量を確保しつつ、有効活用することが可能な潤滑剤、その再利用方法、前記潤滑剤を備えた潤滑剤供給装置、プロセスユニット、及び画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤において、未使用状態における高さを、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さを合わせた高さ以上に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再利用時期になったとき、潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることで、再利用前の使用によって生じた潤滑剤の一端と他端における消費偏差を、再利用後の使用によって解消することができるので、潤滑剤を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置に搭載された潤滑剤供給装置の概略構成図である。
【図3】プロセスユニットの再生産工程の説明図である。
【図4】プロセスユニットを構成する部品ごとの利用回数を記載した表を示す図である。
【図5】前記潤滑剤供給装置が有する潤滑剤の正面図である。
【図6】前記潤滑剤の使用に伴う高さの経時変化を示す図である。
【図7】一方の端面に着色を施した潤滑剤の側面図である。
【図8】異なる2色で着色を施した潤滑剤の側面図である。
【図9】他方の端面に着色を施した潤滑剤の側面図である。
【図10】従来の潤滑剤の正面図である。
【図11】再利用に必要な容量を確保した比較例の潤滑剤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラー画像形成装置であり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。なお、現像剤としては、トナーから成る一成分現像剤を用いてもよいし、トナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いても構わない。
【0013】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、潜像担持体(又は像担持体)としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラや帯電ローラクリーナー等を有する帯電装置3と、感光体2の表面にトナーを供給する現像ローラ等を有する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード等を有する感光体クリーニング装置5と、感光体2の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置6などを備える。図1では、イエローのプロセスユニット1Yが備える感光体2、帯電装置3、現像装置4、感光体クリーニング装置5、潤滑剤供給装置6のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1C,1M,1Bkにおいては符号を省略している。
【0014】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体2の表面に静電潜像を書き込む書込装置7が配設されている。書込装置7は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0015】
また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、転写装置8が配設されている。転写装置8は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト9を有する。中間転写ベルト9は、支持部材としての複数のローラによって張架されており、そのうちの1つのローラが回転駆動することにより、中間転写ベルト9は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。また、中間転写ベルト9の外周には、中間転写ベルト9の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。
【0016】
4つの感光体2に対向した位置には、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト9の内周面を押圧しており、中間転写ベルト9の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。また、各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0017】
中間転写ベルト9を張架するローラの1つに対向して、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト9の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト9とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12には、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。また、二次転写ローラ12の外周には、二次転写ローラ12の表面をクリーニングするローラクリーニング装置10が配設されている。
【0018】
画像形成装置本体100の下部には、給紙部14が設けられている。この給紙部14には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙トレイ15や、給紙トレイ15から用紙Pを搬出する給紙ローラ16等が設けてある。なお、上記用紙Pは、厚紙、はがき、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等を含む。さらに、記録媒体には、用紙P以外に、OHPシートもしくはOHPフィルム等のシート材も含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構を設けてもよい。
【0019】
また、画像形成装置本体100内には、給紙部14から給送された用紙を二次転写ニップを通って装置外へ搬送するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙を二次転写ニップへ搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ17が配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙を搬送する搬送装置18と、用紙に転写された未定着画像を定着する定着装置19が配設されている。
【0020】
上記画像形成装置は以下のように動作する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2が図示しない駆動装置によって図の反時計回りに回転駆動され、各感光体2の表面が帯電装置3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体2の表面には、書込装置7からレーザー光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に書き込まれる画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0021】
続いて、中間転写ベルト9を張架するローラの1つが回転駆動されることにより、中間転写ベルト9が図の矢印で示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト9上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト9はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
【0022】
上記トナー画像の転写を終えた後、各感光体2上に残留するトナーは、感光体クリーニング装置5によって除去される。次いで、潤滑剤供給装置6によって、各感光体2の表面に潤滑剤が供給される。
【0023】
一方、給紙部14では、給紙ローラ16が回転駆動することによって、給紙トレイ15に収容される用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ17によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト9との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト9上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト9上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。あるいは、二次転写ローラ12に対向するローラに対しトナーの帯電極性と同極性の転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト9上のトナー画像を用紙Pに転写するようにしてもよい。その後、用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト9上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去される。
【0024】
トナー画像が転写された用紙Pは、搬送装置18によって定着装置19へと搬送され、定着装置19において用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。その後、用紙Pは図示しない一対の排紙ローラによって装置外へ排出される。
【0025】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0026】
次に、上記潤滑剤供給装置6の構成及び動作について詳しく説明する。
なお、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkが有する潤滑剤供給装置6は、それぞれ同様の構成であるので、図2に基づき、1つの潤滑剤供給装置6について説明する。
【0027】
図2に示すように、潤滑剤塗布装置6は、潤滑剤20と、感光体2の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材としての潤滑剤塗布ブラシ21と、潤滑剤20を保持する潤滑剤保持部材22と、潤滑剤保持部材22を付勢する付勢部材としての加圧スプリング23と、感光体2に供給された潤滑剤を均す均し部材としての均しブレード24とを有する。
【0028】
潤滑剤塗布ブラシ21は、感光体2の表面に接触しており、図示しない駆動手段によって感光体2の回転方向に対してトレーリング方向(順方向)に回転するように構成されている。潤滑剤保持部材22は、板金等によって形成され、加圧スプリング23によって潤滑剤塗布ブラシ21側へ付勢されている。これにより、潤滑剤20が、潤滑剤塗布ブラシ21に接触した状態で保持されている。
【0029】
上記のように、本実施形態では、潤滑剤20を潤滑剤塗布ブラシ21に接触させるために加圧スプリング23を用いているが、潤滑剤20に錘を設け、その錘に生じる重力によって潤滑剤20を潤滑剤塗布ブラシ21に接触させるようにしてもよい。あるいは、潤滑剤20をその自重によって潤滑剤塗布ブラシ21に接触させるように構成することも可能である。
【0030】
また、潤滑剤20は、長方形状の固形の潤滑剤であり、潤滑剤塗布ブラシ21又は感光体2の回転軸方向(又は感光体2の表面における移動方向と交差する方向)に長手状に配設されている。潤滑剤保持部材22への潤滑剤20の固定は、両面粘着テープや接着剤等によって行っている。潤滑剤20の材料としては、脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等から成るものを使用できるが、感光体2の摩擦を低減する効果の大きい点で、特に脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、スタエリン酸、アレイン酸等の直鎖状炭化水素の脂肪酸金属塩が挙げられる。金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム、チラン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄などが好ましく、特にステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0031】
上記のように構成された潤滑剤供給装置6は、以下のように動作する。
上述のように、画像転写後の感光体2が感光体クリーニング装置5によってクリーニングされると、その感光体2の表面に、回転する潤滑剤塗布ブラシ21によって削り取られた潤滑剤が塗布(供給)される。その後、均しブレード24によって、潤滑剤が感光体2上で均一な厚さに均される。以降、感光体2に画像が形成されるたびに、上記潤滑剤供給動作が同様に行われる。
【0032】
以下、プロセスユニットの再利用方法について説明する。
プロセスユニットは、製品寿命が到来した後、回収され、必要な部品を再利用して再生産される。そのため、プロセスユニットは、分解して必要な部品を交換できるように構成されている。プロセスユニットの再生産工程は、例えば、図3に示す工程からなる。
【0033】
図3に示すように、プロセスユニットの再生産にあたっては、まず、製品寿命が到来したプロセスユニットの回収を行う。そして、回収したプロセスユニットを必要なレベルまで分解し、再利用可能な部品と交換を要する部品とに仕分けする。ここで、交換を要する部品については、廃棄し、代わりに新品を用意する。一方、再利用可能な部品は、洗浄し、再利用可能か否かの検査を行う。その結果、再利用できないものについては、廃棄し、新品を用意する。そして、検査をクリアした部品と用意した新品を用いて、プロセスユニットの再組立を行う。その後、完成したプロセスユニットを梱包して、一連の再生産工程が完了する。なお、図3に示す工程は一例であり、これら以外の工程を含む場合であってもよい。
【0034】
図4に、プロセスユニットを構成する部品ごとの利用回数を記載した表を示す。
表中の利用回数が1回の部品(帯電ローラクリーナー、現像剤、クリーニングブレード)は、製品寿命が到来したプロセスユニットを回収し、再生産するたびに新品への交換を要する部品である。これに対し、利用回数が2回の部品(帯電ローラ、潤滑剤、潤滑剤塗布ブラシ)は、上記検査の必要項目をクリアすれば、再度プロセスユニットに取り付けられ再利用される部品である。また、利用回数が3回の部品(現像ローラ)は、検査の必要項目をクリアすれば、最大で2回再利用可能な部品である。
【0035】
利用回数が2回の部品を再利用する場合は、当該部品に2回目の利用であることを示すマーキングを行う。これにより、3回目の再生産時に、すでに2回利用済みであることを簡単に確認できるので、検査工程を経ずとも廃棄することができる。同様に、利用回数が3回の部品を再利用する場合も、マーキングを行う。ただし、この場合は、当該部品が2回目の利用であるか、3回目の利用であるかを確認できるようなマーキングを行う。マーキング方法の例としては、部品の適当な箇所にペンなどで印を書き込んだり、シールを貼ったりするなどの方法がある。あるいは、部品の一部に予め設けられている破断可能な爪を破断することで、2回目の利用であることを確認できるようにしてもよい。また、利用回数が3回の部品については、2回目の利用であるか、3回目の利用であるかを判別するために、マーキングの色を変えたり、色の異なるシールを貼ったりすればよい。また、再生産時にプロセスユニットのケーシングから部品を取り外す必要がない場合は、2回目又は3回目の利用を示すマーキングをプロセスユニット自体に行ってもよい。
【0036】
ここで、潤滑剤を再利用する方法としては、単純に、潤滑剤の高さを1回使用する分の高さの2倍にする方法が考えられる。しかし、一般に、潤滑剤は一端と他端において消費偏差があるため、潤滑剤の高さは消費量が多い方の端部の消費高さの2倍以上の高さに設定しなければならない。仮に、潤滑剤の高さを消費量が少ない方の端部の消費高さの2倍に設定すると、2回目の使用において潤滑剤が枯渇する可能性がある。
【0037】
従って、図10(b)に示す潤滑剤200において、消費量が多い方の端部における製品寿命までの消費高さをAとすると、再利用するには、図11(a)(b)に示すように、未使用状態での高さL1を、多い方の消費高さAの2倍以上の高さに設定する必要がある(L1≧A+A)。
【0038】
しかしながら、未使用状態での高さを多い方の消費高さの2倍以上の高さに設定すると、一方の端部側で残る潤滑剤量も通常の2倍以上となるため、潤滑剤を有効活用することができず、潤滑剤の製造コストが無駄にかかるといった問題がある。また、結果的に、潤滑剤のサイズが大きくなり、画像形成ユニット等が大型化するといった問題もある。
そこで、本実施形態では、以下のように潤滑剤の高さを設定し、再利用するようにしている。
【0039】
図5は、本実施形態に係る潤滑剤をその長手方向と直交する方向から見た正面図である。
図5に示すように、未使用状態(初期状態)での潤滑剤20は、長手方向に渡ってほぼ均一な高さL2に形成されている。ただし、この潤滑剤20は、上記と同様に、長手方向の両端部における消費量が、感光体の回転軸(又は感光体の表面における移動方向と交差する方向)の一端と他端とで異なる。図5に示す例では、図の右側に配設された端部における消費量の方が、図の左側に配設された端部における消費量よりも多くなる。ここで、潤滑剤20の使用開始から再利用時期までに消費すると予想される、両端部における消費高さをそれぞれA及びBとすると、本実施形態では、未使用状態での高さL2を、前記両端部における消費高さAとBを合わせた高さに、さらに余裕分の高さCを加えた高さに設定している(L2=A+B+C)。
【0040】
続いて、本実施形態に係る潤滑剤の再利用方法について説明する。
図6は、本実施形態における潤滑剤の使用に伴う高さの経時変化を示す図である。同図中、(a)は未使用時の状態、(b)は1回目の製品寿命が到来したときの状態、(c)は2回目の利用開始時の状態、(d)は2回目の製品寿命が到来したときの状態を示している。また、図6(a)〜(d)において、右側が感光体の回転軸の一端側、左側がその他端側とする。
【0041】
図6(a)に示すように、未使用状態では、潤滑剤20は、長手方向に渡ってほぼ均一な高さL2に形成されている。しかし、潤滑剤20が削り取られていくと、両端部20a,20bにおいてそれぞれ消費量が異なるため、図6(b)に示すように、1回目の製品寿命が到来した時点では、図の右側に配設された端部20aと図の左側に配設された端部20bとで高さに違いが生じる。この場合、図の右側に配設された端部20aにおける消費量(消費高さA)の方が、図の左側に配設された端部20bにおける消費量(消費高さB)よりも大きい。
【0042】
上述のように、潤滑剤20は2回利用可能な部品であるので、プロセスユニットの1回目の製品寿命が到来した場合、上記再生産工程を経て潤滑剤20を再利用する。このとき、潤滑剤20をプロセスユニットに対して長手方向に逆にして付け替える。本実施形態では、図6(b)に示す潤滑剤20と潤滑剤保持部材22とを一体的に左右逆に付け替え、図6(c)に示す状態にする。
【0043】
そして、再生産したプロセスユニットを画像形成装置に搭載して使用し、2回目の製品寿命が到来すると、そのときまでに潤滑剤20は上記1回目の利用時と同様に消費され、図6(d)に示す状態になる。すなわち、再生産直後の図6(c)に示す状態から、図の右側に配設された端部20bではさらに高さAだけ消費され、図の左側に配設された端部20aではさらに高さBだけ消費される。その結果、図6(d)に示すように、2回目の製品寿命が到来した時点で、潤滑剤20の各端部20a,20bにおける未使用状態からの消費量の合計が、いずれも同じ量(A+B)となる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、2回目の製品寿命が到来した時点で、潤滑剤20の各端部20a,20bにおける消費高さが同じとなるので、潤滑剤20の残量も各端部20a,20bにおいて同じとなる。すなわち、長手方向の両端部における消費量が、感光体の回転軸の一端と他端とで異なる潤滑剤であっても、再利用時に潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることで、再利用前の使用によって生じた消費偏差を、再利用後の使用によって解消することができる。これにより、潤滑剤残量を減らすことができ、潤滑剤を有効活用することができるようになる。
【0045】
なお、上述の例では、便宜的に、1回分の製品寿命で消費する各端部における消費高さA,Bを、上記潤滑剤の再利用時期までに消費すると予想される消費高さA,B(図5参照)と同じ量として説明している。実際の潤滑剤の消費高さは、種々の要因でばらつきが生じるため、予想される消費高さと一致しない可能性も大きいが、本実施形態では、余裕分の高さCを設けているため、実際の消費高さが予想される消費高さ対して多少増加しても潤滑剤が枯渇する不具合が生じることはない。また、余裕分の高さCの大きさは、潤滑剤の消費量のばらつき度合いに応じて適宜変更することが可能である。特に、潤滑剤の消費量にばらつきが無い場合や、ばらつきがあっても極めて微量である場合は、余裕分の高さCを限りなく0に近づけることが可能である。従って、そのような場合は、未使用状態における高さL2を、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さAとBを合わせた高さ(L2=A+B)に設定することができる。
【0046】
また、上記のように、潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えるようにすることで、図11に示す長手方向を逆にして付け替えない潤滑剤に比べて、潤滑剤の高さを低くすることができる。以下、これについて詳しく説明する。
【0047】
図11に示す比較例の潤滑剤200において、余裕分の高さをCとすると、2回分の製品寿命に足りる潤滑剤の容量を確保するためには、未使用状態での高さL1を、大きい方の消費高さAの2倍に、余裕分の高さCを加えた高さに設定する必要がある(L1=A+A+C)。
【0048】
これに対し、本発明の実施形態では、上述のように、未使用状態での必要な高さL2は、1回目の製品寿命が到来するときまでの、各端部における消費高さAとBを合わせた高さに、余裕分の高さCを加えた高さとなる(L2=A+B+C)。
【0049】
ここで、上記比較例の潤滑剤200の未使用状態の高さL1から、本発明の実施形態に係る潤滑剤20の未使用状態の高さL2を差し引くと、A−Bとなるが、A>Bであるので、比較例の潤滑剤200は本実施形態の潤滑剤20よりも、A−Bだけ高いということになる。言い換えると、本実施形態の潤滑剤20は、比較例の潤滑剤200よりも、A−Bだけ低く形成することができる。このように、本発明の実施形態に係る潤滑剤は、比較例の潤滑剤に比べて、その高さ方向のサイズを小さくすることが可能である。
【0050】
また、上記本発明の実施形態に係る潤滑剤に、再利用したか否かを判別可能な目印を付けてもよい。図7に、その潤滑剤の構成を示す。
【0051】
図7は、潤滑剤の長手方向の一方の端面を示す側面図である。図7において、(a)は未使用時の状態、(b)は1回目の製品寿命が到来したときの状態、(c)は2回目の製品寿命が到来したときの状態を示している。図中、一点鎖線E1は、1回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置を示し、一点鎖線E2は、2回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置を示す。
【0052】
また、図中、符号Aは、図示する一方の端面において再利用時期(1回目の製品寿命到来時)までに消費すると予想される消費高さであり、符号Bは、反対側の他方の端面において再利用時期(1回目の製品寿命到来時)までに消費すると予想される消費高さである。また、符号Cは、余裕分の高さである。すなわち、この実施形態においても、上記実施形態と同様に、未使用状態における潤滑剤20の高さL2は、再利用時期(1回目の製品寿命が到来するとき)までの、各端部における消費高さAとBを合わせた高さに、余裕分の高さCを加えた高さに設定されている。
【0053】
なお、この場合も、余裕分の高さCは、潤滑剤の消費量のばらつき度合いに応じて適宜変更することが可能である。従って、上記と同様に、潤滑剤の消費量にばらつきが無い場合や、ばらつきがあっても極めて微量である場合は、未使用状態における高さL2を、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さAとBを合わせた高さ(L2=A+B)に設定することができる。
【0054】
この実施形態では、再利用したか否かを判別するために、潤滑剤20の一端面に着色を施している。図7(a)又は(b)に示す斜線部がその着色部分である。具体的に、着色部分は、図7(a)に示す未使用状態における潤滑剤20の先端から、上記1回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E1と、上記2回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E2との間の位置まで施されている。
【0055】
上記のように着色された潤滑剤20をプロセスユニットに取り付けて使用した場合、1回目の製品寿命が到来した時点では、図7(b)に示すように、潤滑剤20が先端から一点鎖線E1の位置まで削り取られているが、着色部分は残っている。その後、上述のように潤滑剤20を再利用し、2回目の製品寿命が到来した時点では、図7(c)に示すように、潤滑剤20が一点鎖線E2の位置まで削り取られているため、着色部分は残らない。
【0056】
以上のように、1回目の製品寿命が到来した時点では着色部分が残り、2回目の製品寿命が到来した時点では着色部分が残らないようになっているので、着色部分の有無を確認することによって、製品寿命が何回到来したか(潤滑剤20を再利用したか否か)を容易に判別することが可能である。
【0057】
すなわち、この実施形態では、1回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E1から、上記2回目の製品寿命が到来した時点での潤滑剤先端面の予想位置E2までの間で、着色の有無による境界Gを表示することによって、製品寿命が何回到来したかを判別可能にしている。さらに、言い換えれば、一方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さAから、その消費高さAにさらに他方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さBを加えた高さまでの間で、着色による境界Gを表示するようにしている。このように、再利用したか否かを目視で容易に確認できる目印(境界G)を潤滑剤20に付けておくことで、廃棄すべき潤滑剤を誤ってプロセスユニットに取り付けてしまうミスも起こり難くなる。
【0058】
なお、図7に示す例においても、便宜的に、1回分の製品寿命で消費する各端部における消費高さA,Bを、上記潤滑剤の再利用時期までに消費すると予想される消費高さA,Bと同じ量として説明しているが、実際には消費高さにばらつきが生じる。このため、上記着色による境界Gを、図7に示す一点鎖線E1又はE2の近い位置に配設していると、潤滑剤消費量のばらつきによって、1回目の製品寿命到来時に着色部分が全てなくなってしまったり、2回目の製品寿命到来時に着色部分が残っていたりする可能性もある。
【0059】
そのため、着色による境界Gの位置は、図7に示す一点鎖線E1から一点鎖線E2へ向かって、20%の位置から80%の位置までの間で設定するのが好ましい。言い換えれば、着色による境界Gを、製品寿命の1.2倍から1.8倍までの間に消費すると予想される消費高さの範囲内に配設するのがよい。これにより、潤滑剤の消費量にばらつきがあっても、潤滑剤を再利用したか否かについて判別できる可能性が高まる。
【0060】
また、図8に示す実施形態のように、潤滑剤の端面に異なる2色の着色を行うことで、境界Gを表示するようにしてもよい。また、境界Gがわかれば、着色以外の方法であってもよい。
【0061】
図9は、図7に示す端面とは反対側の端面に着色をした場合の側面図である。
図9に示す端面では、符号AとBで示す領域が図7に示す例とは上下逆になるが、この場合においても、着色による境界Gを、1回目の製品寿命到来時点での潤滑剤先端面の予想位置E1と、2回目の製品寿命到来時点での潤滑剤先端面の予想位置E2との間に配設している。これにより、上記と同様に、潤滑剤を再利用したか否かについて容易に判別することができる。
【0062】
また、この場合も、異なる2色の着色によって、あるいはその他の方法によって、境界Gを表示してもよい。また、上記のように、境界Gを、製品寿命の1.2倍から1.8倍までの間に消費すると予想される消費高さの範囲内に配設することによって、潤滑剤の消費量にばらつきがあっても、潤滑剤を再利用したか否かについて判別できる可能性を高めることができる。なお、上記着色などによる境界Gは、潤滑剤20の両端面にそれぞれ設けてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、感光体に供給される潤滑剤を例に挙げて説明したが、本発明に係る潤滑剤は、これに限らず、中間転写ベルト等の像担持体やそれ以外の回転体の表面に供給される潤滑剤であってもよい。また、本発明に係る潤滑剤供給装置を備える画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0064】
以上のように、本発明によれば、潤滑剤を再利用することができるので、新たな潤滑剤の製造に要する材料やエネルギー等のコストを削減することができると共に、環境への負荷を軽減することができる。また、潤滑剤を再利用する際、潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることで、再利用前の使用によって生じた消費偏差を、再利用後の使用によって解消することができ、潤滑剤を有効活用することができる。また、本発明の潤滑剤は、再利用に必要な容量を確保しつつ、図11に示す比較例の潤滑剤に比べて高さを低くすることができる。具体的には、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さのうち、消費量の多い方の消費高さをAとすると、未使用状態における高さL2をその消費高さAの2倍未満に設定することができる(L2<A+A)。このため、必要な潤滑剤の容量を減らすことができ、さらなるコスト削減と環境負荷の軽減を図ることができる。また、潤滑剤の高さを低くすることができるため、潤滑剤を備える装置やユニットの大型化の抑制にも寄与できる。
【符号の説明】
【0065】
1Y,1C,1M,1Bk プロセスユニット
2 感光体(像担持体)
6 潤滑剤供給装置
20 潤滑剤
21 潤滑剤塗布ブラシ(潤滑剤供給部材)
L2 未使用状態における高さ
A 長手方向の一端部での消費高さ
B 長手方向の他端部での消費高さ
C 余裕分の高さ
G 境界
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2001−305907号公報
【特許文献2】特開2009−204652号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤において、
未使用状態における高さを、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さを合わせた高さ以上に設定したことを特徴とする潤滑剤。
【請求項2】
前記未使用状態における高さを、消費量の多い方の前記消費高さの2倍未満に設定した請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
再利用したか否かを判別可能な目印を付けた請求項1又は2に記載の潤滑剤。
【請求項4】
長手方向の少なくとも一方の端面に着色を行い、当該着色によって、一方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さから、その消費高さにさらに他方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さを加えた高さまでの間に、境界を表示した請求項3に記載の潤滑剤。
【請求項5】
回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤の再利用方法であって、
前記潤滑剤の未使用状態における高さが、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さを合わせた高さ以上に設定されており、
再利用時に、前記潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることを特徴とする潤滑剤の再利用方法。
【請求項6】
潤滑剤と、回転体の表面に前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材とを備える潤滑剤供給装置において、
前記潤滑剤として請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑剤を備え、当該潤滑剤を長手方向に逆にして付け替え可能に構成したことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項7】
画像を担持する像担持体と、当該像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置とを少なくとも備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスユニットにおいて、
前記潤滑剤供給装置として、請求項6に記載の潤滑剤供給装置を備えたことを特徴とするプロセスユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤において、
未使用状態における高さを、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さを合わせた高さ以上に設定したことを特徴とする潤滑剤。
【請求項2】
前記未使用状態における高さを、消費量の多い方の前記消費高さの2倍未満に設定した請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
再利用したか否かを判別可能な目印を付けた請求項1又は2に記載の潤滑剤。
【請求項4】
長手方向の少なくとも一方の端面に着色を行い、当該着色によって、一方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さから、その消費高さにさらに他方の端面において再利用時期までに消費すると予想される消費高さを加えた高さまでの間に、境界を表示した請求項3に記載の潤滑剤。
【請求項5】
回転体の表面に供給され、前記回転体の回転軸の一端と他端における消費量が異なる画像形成装置に用いられる潤滑剤の再利用方法であって、
前記潤滑剤の未使用状態における高さが、再利用時期までに消費すると予想される両端部における消費高さを合わせた高さ以上に設定されており、
再利用時に、前記潤滑剤を長手方向に逆にして付け替えることを特徴とする潤滑剤の再利用方法。
【請求項6】
潤滑剤と、回転体の表面に前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材とを備える潤滑剤供給装置において、
前記潤滑剤として請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑剤を備え、当該潤滑剤を長手方向に逆にして付け替え可能に構成したことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項7】
画像を担持する像担持体と、当該像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置とを少なくとも備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスユニットにおいて、
前記潤滑剤供給装置として、請求項6に記載の潤滑剤供給装置を備えたことを特徴とするプロセスユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−97242(P2013−97242A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241110(P2011−241110)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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