説明

澱粉老化防止機能を有する穀類、及びその製造方法

【課題】 米などの穀類としての特性を実質的に変化させずに、澱粉老化防止機能を有する穀類、その製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも1種類の外来性アミロース親和性物質を含有することを特徴とする穀類、アミロース親和性物質を溶解させた水溶液中で穀類を高圧処理することを特徴とする、澱粉老化防止機能が付与された穀類の製造方法、並びに、該穀類の加熱調理食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉老化防止機能を有する穀類とその製造方法に関する。さらに詳細には、水溶性食物繊維などのアミロース親和性物質を、穀類中のアミロースとの相溶状態として含有させることによって製造される澱粉老化防止機能などの機能性に優れた穀類、高圧処理を利用した該穀類の製造方法、及び該穀類の加熱調理食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米、小麦、雑穀などの澱粉含有穀類は、水分存在下で加熱調理され、食されてきた。このような加熱調理された穀類は、室温に放置しておいたり、冷蔵・冷凍などの低温下に放置すると、一旦糊化した澱粉が白濁したり、ゲル化する現象が認められる。このような現象は澱粉の老化と呼ばれているが、澱粉老化は腐敗と並ぶ食品劣化の主要因であるとされており、米飯、パン、ケーキ、餅などの澱粉含有穀類を用いた各種食品の澱粉老化の防止は極めて重要な問題となっている。
【0003】
従来から、澱粉老化を防止する方法としては種々の方法が開発されているが、いずれも充分な効果が得られるものではなく、より効果の優れた方法の開発が望まれていた。
【0004】
特に、穀類の中でも、米は、脱殻した玄米の表皮を削り取る精白作業の後に米粒としての形状を保持したまま、炊飯調理されて食される穀類であって、米粒としての外観や、食感、さらには呈味や風味が厳格に求められている食品であるので、特に米としての形状や組織構造をあまり壊さない澱粉老化の防止方法の開発が必要であった。
【0005】
すなわち、米飯の老化防止剤として種々の物質が利用されており、例えば、トレハロースと麦芽糖を混合した米飯用改質剤(例えば、特許文献1参照)や、三糖類以上の重合度、好ましくは重合度が3〜10の非還元糖及び/又は還元オリゴ糖を炊飯前又は炊飯後の米飯に添加混合する方法(例えば、特許文献2参照)などの多くが開示されている。
【0006】
しかし、これらのいずれの場合においても、充分な老化防止や食味及び食感の改質効果と作業性効率などは得られていないのが現状であった。
【0007】
ところで、米などの穀類を高圧処理する技術が知られている(例えば特許文献3及び特許文献4参照)。特許文献3には、穀類を加圧室内の液中に入れ、内部変質するのに必要な1000〜9000気圧の圧力をかけて処理する方法が開示されている。この方法による利点として、調理の際の炊き上がりが均一でかつ美味であること、また電子レンジでの炊飯が可能になることが記載されている。特許文献4にも同様に、穀類を高圧処理する方法が開示され、この方法では、電子レンジでの再加熱によって糊化を高めておいしさを増すことが記載されている。しかし、いずれの特許文献も、澱粉老化防止についての記載はない。
【0008】
このような状況において、穀類としての特性(外観、食感、風味、呈味など)をなるべく変化させずに、穀類に充分な澱粉老化防止機能を付与するための、従来法と比べてより有効な方法が求められていた。
【0009】
【特許文献1】特開平8−173065号公報
【特許文献2】特開平6−141797号公報
【特許文献3】特公平6−7777号公報
【特許文献4】特開2000−152756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、米などの穀類としての特性を実質的に変化させずに、澱粉老化防止機能を付与しうる、有効な方法の開発に成功した例は、未だ報告されていない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、米などの穀類としての特性を実質的に変化させずに、澱粉老化防止機能を有する穀類、その製造方法、並びに該穀類の加熱調理食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ね、アミロース親和性物質を溶解させた水溶液中で穀類を高圧処理することによって、穀類中に該アミロース親和性物質を含浸させることが可能であることを見出し、さらに含浸したアミロース親和性物質は穀類中のアミロースと相溶状態を形成して、穀類の加熱調理を容易にしたり、澱粉老化防止機能を増強することなどが可能になることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
またアミロース親和性物質として例えば健康機能を有するなどの高分子量の有効物質を選択して、上記の処理を行えば、抗糖尿病などの健康機能に優れた特性を米に付与しうることも見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(11)に関する。
(1) 少なくとも1種類の外来性アミロース親和性物質を含有することを特徴とする穀類。
(2)高圧処理された穀類であることを特徴とする上記(1)に記載の穀類。
(3)アミロース親和性物質を穀類中のアミロースとの相溶状態として含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の穀類。
(4)アミロース親和性物質の含有量が0.1〜10重量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の穀類。
(5)アミロース親和性物質が水溶性食物繊維であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の穀類。
(6)澱粉老化防止機能を有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の穀類。
(7)穀類が米であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の穀類。
(8)アミロース親和性物質を溶解した水溶液中で穀類を高圧処理することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の穀類の製造方法。
(9)さらに穀類を乾燥することを含む上記(8)に記載の方法。
(10)上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の穀類の加熱調理食品。
(11)炊飯物であることを特徴とする上記(10)に記載の加熱調理食品。
【0015】
本発明に係る用語の定義は、以下のとおりである。
【0016】
「澱粉老化防止機能」とは、糊化した澱粉の白濁、ゲル化、離水などに伴う澱粉の老化を防止又は抑制する作用をいう。
【0017】
アミロース親和性物質について「外来性」という用語は、穀類中に元々内在する内在しないに拘らず、穀粒の外部から導入されるアミロース親和性物質について使用される。
【0018】
「相溶状態」とは、穀類中のアミロースとアミロース親和性物質が、お互いに相分離せずに分子状に混合する状態をいう。
【0019】
「アミロース親和性物質」とは、アミロースと相分離せずに分子状に混合、あるいは特異的に複合体を形成する物質をいう。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高圧処理によって少なくとも1種類の外来性アミロース親和性物質を含有させた澱粉老化防止機能に優れた穀類、例えば米、麦、雑穀、これらの混合物など、特に水溶性食物繊維を含有させた澱粉老化防止機能に優れた穀類が提供される。さらに、特に水溶性食物繊維を溶解した水中で穀類を高圧処理することによって得られる、澱粉老化防止機能とともに、健康機能などにも優れた穀類、及びその加熱調理食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の穀類としては、米、小麦、雑穀(例えば粟、稗など)、それらの混合物などが例示されるが、中でも特に米が好ましい。
【0022】
これらの穀類の外殻(籾など)を除いて得られる玄米、玄麦、玄穀などや、さらに外皮(糠、フスマなど)を除去した精白米、精白麦、精白穀類などが使用されるが、これらを割砕した状態のもの、また、ある程度粉砕したものなども利用可能である。
【0023】
また、アミロース親和性物質としては、澱粉中のアミロースと親和性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、キシロース、トレハロース、スクラロース、マンノース、パラチノース、ラフィノース、ラクチュロース、マルトース、アガロビオースなどの少糖類、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、パラチニットなどの糖アルコール、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、アガロオリゴ糖、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどのオリゴ糖、それらの還元物である還元キシロオリゴ糖など、カードラン、ローカストビーンガム、アラビアガムなどの多糖類、アミロペクチン、高度分岐環状デキストリン、ヒドロキシプロピル澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、リン酸架橋澱粉などの化工澱粉類、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの加工多糖類、蔗糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどの、食品に利用可能なものから選択される。本発明においては、このようなアミロース親和性物質を1種又は複数組み合わせて穀類中に含有させる。
【0024】
これらのアミロース親和性物質のうち、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、カードラン、ローカストビーンガムなどの水溶性食物繊維は、より澱粉老化防止効果が高く、また、水溶性食物繊維が本来有する種々の健康機能を穀類に同時に付与しうることからも、より好ましい。
【0025】
難消化性デキストリンは、基本的には焙焼デキストリンを原料として、例えばα−アミラーゼ及びトランスグリコシダーゼからなる酵素で処理する方法(特開平2−100695号公報)、有機酸もしくは無機酸を平衡吸着した多糖を湿熱処理して1,6結合を高率で生成し分岐多糖とする方法(特開平8−41104号公報)などの方法で製造されるものであれば良く、具体的には、パインファイバー(松谷化学工業社製)などが挙げられる。
【0026】
また、より好ましいアミロース親和性物質の一例として、高度分岐環状デキストリン(例えば、「フーズ・アンド・フードイングラヂエンツ・ジャーナル・オブ・ジャパン(Foods Food Ingredients J. Jpn.)」、209巻、4号、p.320〜329、2004年参照)が挙げられる。
【0027】
高度分岐環状デキストリンは、アミロペクチンを原料にして、ブランチングエンザイムの作用により製造される。ブランチングエンザイムは、アミロペクチンのクラスター構造に作用して、環状化を行いながら分解するので、澱粉の基本的な構造単位であるクラスター構造を、ほぼそのまま保持していると考えられている。高度分岐環状デキストリンの具体例としては、クラスターデキストリン(江崎グリコ社製)などが挙げられる。
【0028】
これらの水溶性食物繊維には、消化管の働きを活発化し、便容量を増加させ、便通を助けて大腸癌などの消化管系の病気を予防し、また、余分なコレステロールや糖分などの消化吸収を抑える作用によって、血清コレステロールを抑制したり、血糖上昇抑制作用などの種々の健康機能があるとされており、本発明では、水溶性食物繊維を好適に使用可能である。
【0029】
本発明においては、上記の原料を適宜選択し、必要に応じて適宜前処理、例えば洗浄や浸漬などを施した後、高圧処理を行って、目的の穀類を製造する。その製造のための非限定的な条件は以下のとおりである。
【0030】
洗浄し精白した穀類又は精白しない玄穀類を1食(例えば200g)から数食分づつ複数の密封容器に入れ、或いはより大量の1つの密封容器に投入する。
【0031】
密封容器としては、袋(バッグ)など圧力を内部に伝達可能な種々の容器が利用可能であり、また、高圧に耐えられるような軟質材で構成された容器が望ましい。
【0032】
次に、外来性アミロース親和性物質を、予め水中に所定濃度で溶解した水溶液として調製しておき、該水溶液を該密封容器に適量注入する。
【0033】
該水溶液中のアミロース親和性物質の濃度は、約0.5〜約20重量/容量%、通常約1〜約10重量/容量%であるが、この範囲に限定されない。
【0034】
また、該容器への該水溶液の注入量も特に制限はないが、密封容器の容積や投入された穀類の容積を考慮して適宜調節され、通常は穀類の2〜3倍量程度の該水溶液が注入される。
【0035】
穀類及びアミロース親和性物質を密封容器に注入後、密封容器内の空気を抜き、該容器を密封する。空気抜きは、密封容器内に気泡の存在が確認されない程度に行えばよく、例えば密封容器から該水溶液を溢れさせることによって気泡を追い出す程度でも良いが、さらには真空ポンプを用い、真空ポンプから該容器に接続されたチューブを該容器に挿入して行うなどの適宜手段が採用される。
【0036】
密封された該容器は、場合によっては0〜5℃程度で約1〜数時間放置し、これによって穀粒中にある程度水溶液を吸収させる工程を設けてもよい。
【0037】
このようにして調製された該容器は、高圧処理機の加圧室中にセットされるが、高圧処理機としては、加圧室内の液体に高圧を作用させることができる種々の装置を使用することができ、石川島播磨重工業社製や神戸製鋼所社製など、その他市販の食品用高圧処理機が使用可能である。
【0038】
加圧室は、水、酸化防止剤入りの液体、その他適切な加圧用液体で満たされる。その後、加圧処理機において、加圧室に高圧を適宜加圧する。加圧する際の圧力としては、処理する物に応じて適宜設定すれば良いが、通常は約100〜約9000気圧で実施され、1000〜6000気圧程度が望ましい。加圧圧力があまりに低いと充分な効果が得られず、9000気圧を超える加圧を行うには、極度に大掛かりな加圧装置を要するので好ましくない。
【0039】
加圧時間は、用いる穀類やアミロース親和性物質の種類、量などによっても異なるが、通常は5〜30分程度でよい。
【0040】
加圧処理前に、適宜必要成分(例えば、殺菌剤やpH調整剤など)を含有する水溶液に穀類を浸漬して必要成分を浸透させておいたり、該必要成分を密封容器に注入する水溶液中に溶解させておいたりすることも適宜採用可能である。
【0041】
加圧の際の前記加圧室内の液温は0℃以上であるのが好ましく、また穀類成分の変質を生じて食味食感が劣化するのを防止する意味で50℃以下にするのが好ましい。
【0042】
さらに、加圧処理により、穀類中のアミロースと浸透されたアミロース親和性物質とが相溶状態をより強固に形成させるためには、液温は5℃〜40℃程度が好ましい。
【0043】
このようにして加圧処理された穀類は、加圧室内を常圧(大気圧)までに減圧した後、加圧室内から該容器を取り出し、開封した該容器から取り出されて水切処理される。
【0044】
加圧処理を終えた穀類は、水切り後、直接加熱調理(例えば炊飯)工程に供される場合もあるが、その後、乾燥工程を経て、乾燥精白米などの乾燥穀類として供給することも可能である。
【0045】
乾燥穀類は、乾燥状態を維持しつつ、プラスチック製、金属製などの容器内に封入し、必要に応じて脱酸素剤もしくは酸化防止剤入りの小袋と一緒に保存するか、或いは、一定温度及び湿度に制御された乾燥室内で保存するのが望ましい。乾燥工程を経た乾燥穀類は、長期保存が可能である。
【0046】
乾燥後の穀類の含水率は10〜30重量%程度とするのがよく、30重量%を超えると雑菌が繁殖しやすく、長期保存に適さなくなる。含水率を10重量%未満にすると、米やその他穀類の表面にひび割れが入りやすくなり、適さない。より好ましい水分含量としては、15〜20重量%である。
【0047】
また、上記の方法によって製造された穀類中の外来性アミロース親和性物質の含有量は、澱粉老化防止機能を付与するかぎり特に制限されないが、0.1〜10重量%、好ましくは1〜7重量%、より好ましくは3〜6重量%である。
【0048】
本発明はさらに、上記のようにして製造される、少なくとも1種類の外来性アミロース親和性物質を含有する穀類、好ましくは米、さらに好ましくは精白米、を加熱調理して得られる食品を提供する。
【0049】
加熱調理食品の例は、炊飯物、リゾット、粥、雑炊などであるが、これらに限定されない。好ましくは、このような食品を、殺菌した例えばプラスチック製、プラスチックもしくはアルミをラミネートしたアルミ製もしくはプラスチック製などのバッグに真空状態で封入して、商品としうる。好ましい加熱調理食品は、米の炊飯物又は粥である。バッグに包装された加熱調理食品は、室温又は冷蔵で保存され、食前に電子レンジ又は沸騰水中で加温もしくは加熱される。
【0050】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。実施例では、穀類として米(精白米)を用い、アミロース親和性物質として水溶性食物繊維の一種である難消化性デキストリン(パインファイバー)を用いた場合について説明するが、本発明は、これらの実施例によって制限されないものとする。
【実施例1】
【0051】
精白米の処理
精白米150gをプラスチックバッグに入れ、375mlの5重量/容量%濃度のパインファイバー(松谷化学工業社製)水溶液を加えた。
【0052】
該プラスチックバッグの口を熱シールした後、高圧処理機(神戸製鋼所社製)を用いて高圧処理(6000気圧、25℃、10分)を行った。なお、6000気圧までに昇圧するのに3分を要した。
【0053】
高圧処理後、1分を掛けて大気圧まで減圧し、該バッグを取り出した。その後、該バッグから精白米を取り出し、ザルにあけて水切りした後、水分含量が27重量/重量%程度になるまで乾燥し、高圧処理した精白米(高圧処理パインファイバー添加区)を得た。
【0054】
なお、比較例として、パインファイバーを添加しない水だけで上記と同様に高圧処理を行って、高圧処理した精白米(高圧処理無添加区)を得た。
【0055】
以上の操作を、各々10回繰り返した。
【実施例2】
【0056】
高圧処理米の解析
(1)炊飯試験
実施例1で得た高圧処理した精白米(高圧処理パインファイバー添加区及び高圧処理無添加区)を常法通り加水して炊飯した。なお、無処理の精白米を常法通り加水して炊飯した比較例(無処理無添加水炊飯区)、ならびに無処理の精白米にパインファイバーを19.8g添加した水を加水して炊飯した比較例(無処理パインファイバー水炊飯区)を調製した。
【0057】
すなわち、炊飯は上記の高圧処理した精白米ならびに無処理の精白米をそれぞれ450g用い、高圧処理した精白米は洗浄せずに直接、また無処理の精白米は水で洗浄した後、各々600gの無添加の水、又はパインファイバーを添加した水と共に炊飯ジャー(松下電器産業社製)に投入し、以下、常法通り炊飯して、各炊飯米を得た。
【0058】
このようにして調製した各炊飯米について、炊飯直後の食味を官能評価した。
【0059】
さらに、得られた各炊飯米を冷蔵庫(4℃)に5日間保管し、その後、冷蔵庫から取り出して、電子レンジで加熱後、再び食味を官能評価した。
【0060】
官能評価は、外観、食感、風味、呈味、総合の好ましさについて無添加水炊飯区を対照とし、1(無添加水炊飯区よりかなり悪い)、2(無添加水炊飯区よりやや悪い)、3(無添加水炊飯区と同程度)、4(無添加水炊飯区よりやや良い)、5(無添加水炊飯区よりかなり良い)、の5段階で評価し、平均値で表わした。特に食感は、澱粉老化の指標として用いられた。食感における数字が大きいほど、老化の防止効果が高いことを示す。
【0061】
以上の評価結果を表1にまとめた。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示した炊飯直後の官能評価から、パインファイバー水炊飯区で特に外観、風味などが劣る結果が得られたが、他の処理区では通常の炊飯米である無添加水炊飯区とほぼ同等の炊飯米が得られ、特に高圧処理パインファイバー添加区においても炊飯直後の評価が劣ることはなく、本発明の実施が可能であるとの評価が得られた。
【0064】
さらに、冷蔵保存後の各炊飯米を評価した結果では、無処理パインファイバー水炊飯区で特に外観の評価が低かった以外は、高圧処理区において全ての評価項目で優れた効果が認められ、特に高圧処理パインファイバー添加区においては食感において優れた効果が認められ、したがって高圧処理パインファイバー添加区の優れた澱粉老化防止効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、米などの穀類の加熱調理を容易にし、かつ穀類の澱粉老化防止機能を増強することなどが可能になり、食感のよい穀類の加熱調理食品を提供することができる。また、アミロース親和性物質として難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維を使用する場合には、澱粉老化防止機能に加えて抗糖尿病などの健康機能に優れた特性を米などの穀類に付与しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の外来性アミロース親和性物質を含有することを特徴とする穀類。
【請求項2】
高圧処理された穀類であることを特徴とする請求項1に記載の穀類。
【請求項3】
アミロース親和性物質を穀類中のアミロースとの相溶状態として含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の穀類。
【請求項4】
アミロース親和性物質の含有量が0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の穀類。
【請求項5】
アミロース親和性物質が水溶性食物繊維であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の穀類。
【請求項6】
澱粉老化防止機能を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の穀類。
【請求項7】
穀類が米であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の穀類。
【請求項8】
アミロース親和性物質を溶解した水溶液中で穀類を高圧処理することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の穀類の製造方法。
【請求項9】
さらに穀類を乾燥することを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の穀類の加熱調理食品。
【請求項11】
炊飯物であることを特徴とする請求項10に記載の加熱調理食品。