説明

濁水の浄化装置

【課題】 河川や海浜の大量濁水を短時間で濾過処理する。
【解決手段】 略円筒形の回転フィルター11を回転させつつ、その上方から濁水を散水し、水と砂とをメッシュフィルターによって瞬時に分離する(請求項1)。水は、回転フィルターの内部空間を下方に落下し、砂は、回転フィルターの表面のメッシュフィルターに付着し、回転ブラシ30によって掻き落とされる。砂粒の表面に付着している泥は、その一部は水とともに下方落下し、残りは砂の表面に付着したまま砂とともに回転ブラシ30によって掻き落とされる。河川の浚渫工事や海浜の整備工事では、濁水から砂を除去できればよいので、回転フィルター11によって砂と水を瞬時に分離し、回転ブラシ30により砂を掻き落とせば、短時間で大量の濁水から砂を分離除去することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の浚渫工事や海浜の整備工事等で使用する濁水の浄化装置に係り、とくに、泥砂まじりの濁水を水と砂とに分離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の改修工事や砂浜海岸の整備工事では、泥砂まじりの濁水を浄化して河川や海に戻すことが必要である。
【0003】
従来、このような工事における濁水の浄化方法としては、例えば、ポンプで汲み上げた濁水を沈殿濾過させる方法、凝集剤を用いた化学反応による濾過方法(特許文献1)、曝気処理(特許文献2)などが知られている。
【特許文献1】特開平09−038659号公報
【特許文献2】特開2000−005782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
問題は、いずれの方法を用いるにせよ、濁水の浄化に時間がかかる点にある。このため、従来の方式では、給排水能力に優れた大型ポンプを用いて短時間で大量の浄化処理を行うことが出来なかった。
【0005】
例えば、大型ポンプを用いて沈殿濾過を行うためには、大量の水を蓄える大型の貯水槽が必要であるし、これを避けるためには長尺の濁水搬送経路を必要とする。凝集剤を用いる場合や曝気処理を行う場合も大量の水を蓄える貯水槽が必要である。
【0006】
しかしながら、給排水能力に優れた大型のポンプ装置を用いる場合でも、従前通りの浄化処理を行っていたのでは、高額のポンプ装置にみあう工事コストを実現することは出来ない。工期の短縮も難しい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、大量の濁水を短時間で濾過処理する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る濁水の浄化装置は、略円筒形の回転フィルターを回転させつつ、その上方から濁水を散水し、微細な孔または網目をもったメッシュフィルターによって水と砂とを瞬時に分離する(請求項1)。メッシュフィルターはステンレス等の難錆金属または樹脂を用いる。
【0009】
水は、回転フィルターの内部空間を下方に落下し、砂は、回転フィルターの表面のメッシュフィルターに付着し、回転ブラシによって掻き落とされる。
【0010】
砂粒の表面に付着している泥は、その一部は水とともに下方落下し、残りは砂の表面に付着したまま砂とともに回転ブラシによって掻き落とされる。
【0011】
河川の浚渫工事や海浜の整備工事では、濁水から砂の成分を除去できればよいので、回転フィルターによって砂と水を瞬時に分離し、回転ブラシにより砂を掻き落とせば、短時間で大量の濁水から砂を分離除去することが出来る。
【0012】
請求項2は、ひとつの散水装置を用い、二つの回転フィルターに同時散水することで水と砂の分離を行うものである。これにより、砂と水の分離能力をさらに高める。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る濁水の浄化装置によれば、濁水の水と砂を速やかに分離して、短時間で大量の濾過処理を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に係る濁水の浄化装置の一実施形態を示すものである。この浄化装置は、図1に示すように、モータにより駆動される回転軸10に支持させた略円筒形の回転フィルター11に対して、濁水を斜め上方から散水する散水装置20を設けるとともに、回転フィルター11の表面に付着した泥砂を掻き落とす回転ブラシ30とを備える。
【0015】
散水装置20は、回転フィルター11を支持する回転軸10と略平行に設けた給水管21と、この給水管21に対して濁水を送り込むポンプ装置23と、給水管21に設けた横長の吐水開口25とを備えるよう構成する。吐水開口25は、海水や河川水などの濁水に含まれる砂が目詰まりしないよう開口寸法を設定する。例えば、上下寸法を1cm以上、左右寸法を5cm以上とするのが望ましいが、この実施形態では、左右寸法を回転フィルター11の長手寸法と略同一または若干小さな寸法とし、吐水開口25から排出される濁水中の砂を、出来るだけ多く回転フィルター11の表面に付着させるようにしてある。符号27は、ポンプ装置23から給水管21へ水を送るための給水経路である。給水経路27は、可撓性のあるホースや硬質の管材によって構成できる。なお、ポンプ装置23の吸水口(図示せず)には砂利の進入を防ぐ格子やネットを設け、給水管21に砂利(小石)が進入しないよう配慮する。
【0016】
回転フィルター11は、金属等の骨材を用いて略円筒形の回転基材を作り、この回転基材の表面に透水性のある肉薄のメッシュフィルターを設ける。メッシュフィルターは、好ましくはステンレス製のメッシュ(微小孔を備える網状物)を用いる。耐久性に優れるからである。回転基材Bは、例えば図2に示すように、対向配置させた円形の端面骨子(端面骨子)12と、この円形の端面骨子12に掛け渡した横材14とを備え、横材14の適宜箇所に補強材15を設けて構成する。
【0017】
回転フィルター11は、モータを介して駆動される回転軸10によって支持させる。このため、少なくとも円形の端面骨子(端面骨子)12には、図3に示すように回転軸10を固定するための筋交部材17を設け、この筋交部材17の交点、つまり円形の端面骨子12の中央に回転軸が位置するようにしておく。この実施形態のように円形の補強材15を複数設ける場合は、補強材15にも筋交部材(図示せず)を設けて回転軸10のぐらつきを少なくすることが望ましい。
【0018】
回転基材Bを構成する円形の端面骨子12、横材14、補強材15のうち、円形の端面骨子12は回転軸10の軸ぶれを防止するためにも、他の部材(14、15、17)に較べて強度を高めておくことが望ましい。上下方向の幅を大きくしたり、あるいは肉厚を大きくする等である。
【0019】
回転基材Bの表面に設けるメッシュフィルターは、透水性があり、砂粒を通さない肉薄のメッシュ地を用いる。砂粒の表面に付着している細かな泥(土)は、メッシュフィルターを通過しても構わない。つまり図4に示すように、メッシュフィルター40は、砂泥まじりの濁水を散水したときに、メッシュフィルター40の表面に砂粒(泥砂)41が残り、砂粒の表面に付着している泥の一部が濁水として透過する程度の目の細かさであればよい。砂粒41の表面の泥まで綺麗に濾過する目の細かさまでは要求しない。メッシュフィルター40の目を過剰に細かくすると、泥(土粒)によって目詰まりが起こり実用に耐えないからである。用途によって目の粗さは異なるが通常は1mm以下のものを用いる。
【0020】
回転ブラシ30は、メッシュフィルター40の表面の砂粒を掻き落として下方に落下させることが望ましい。このため、回転ブラシ30は、回転フィルター11の回転方向とは反対方向に回転駆動する。例えば、回転フィルター11を時計回りに回転させときは、同一方向から見て、回転ブラシ30は半時計回りに回転させる。
【0021】
図4は、回転フィルター11、給水管21、回転ブラシ30の位置関係を例示するものである。
【0022】
側面から見て、回転フィルター11を時計回りに回転させるとき、回転ブラシ30は反時計回りに回転させ、回転フィルター11の表面に付着した砂粒41を掻き落とす。回転ブラシ30は、掻き落とした砂粒41を直下に落下させるよう、回転フィルター11の真横近傍に配することが望ましい。回転ブラシ30によって掻き落とした砂粒41は、例えば、直下に設けたケース38に貯留するか、直下に配したベルトコンベア等の搬送手段(図示せず)を介して外部に搬送させる。
【0023】
回転ブラシ30の表面には、例えば樹脂繊維を植毛するか、弾力性のあるゴム板を配し、回転によって、回転フィルター11の表面の砂粒41を掻き落とすように構成する。大量の砂粒41を掻き落とすので、単なるゴムへらのような動きのない部材を配しても効率的な処理を行うことは困難である。
【0024】
なお、符号61は、回転フィルター11の回転軸10を駆動するモータ、62は、このモータ61の回転力を回転軸10に伝達する動力伝達部材(ベルトまたはチェーン等)である。符号71は、回転ブラシ30の回転軸33を駆動するモータ、72は、このモータ71の回転力を回転軸33に伝達する動力伝達部材(ベルトまたはチェーン等)である。
【0025】
一方、給水管21は、時計回りに回転する回転フィルター11の斜め上方から濁水を散水するように配置する。吐水開口25の位置は、例えば、時計の文字盤で云えば10時〜11時(例えば45度斜め上方)になるよう配置する。回転フィルター11の表面で分離された砂粒41が、12時方向(上頂点)に向かって回転し、水と砂の分離を十分に終えて表面に付着したまま回転ブラシ30によって掻き落とされるようにするためである。なお時計の文字盤でいえば、回転ブラシ30は略3時(下流90度)に位置させる。吐水開口25は、仕切のない長尺の開口として大量の濁水を回転フィルター11に散水させることが望ましい。短時間大量処理のためである。
【0026】
給水管21の吐水開口25から排出される濁水は、砂泥が回転フィルター11の表面に付着して残るが、水(砂を含まない泥水)は、メッシュフィルター40を通過して重力に従い落下する。
【0027】
図4において、符号80は、メッシュフィルター40を通過して落下した泥水を受け止める貯水ケースである。この貯水ケース80は、略中央に配した排水管85に向かって下降傾斜する傾斜面をもつよう成形する。排水管85を介して泥水を、例えば河川や海に戻すためである。排水管85の経路上には排水ポンプ(図示せず)を設け、大量の水を速やかに河川や海に戻すようにする。
【0028】
かかる構成によれば、河川の泥水や泥砂混じりの海水を、給水管21を介して吐水開口25から回転フィルター11に斜め上方から吐水すると、メッシュフィルター40によって水と砂が瞬時に分離されるとともに、泥砂はメッシュフィルター40の表面に残って回転し、回転ブラシ30によって下方のケース38に掻き落とすことができる。水は、メッシュフィルター40を通過して貯水ケース80に溜まり、その略中央に配した排水管85を介して河川や海に戻すことができる。
【0029】
河川工事や海浜の整備工事の場合、泥水から砂を除去できれば、ポンプを用いて比較的長い距離でも水は河川や海に戻すことが出来る。従って、回転フィルター11は、必ずしも河川わきや海浜近傍に設ける必要はない。回収した砂を他の場所にトラックで搬送するような場合は、トラックに対する積み込みが容易な場所に回転フィルター11等を設けてもよい。
【0030】
図5は、二台の回転フィルター11−1、11−2を設け、この回転フィルター11−1、11−2に対して、ひとつの給水管21から濁水を吐出する構成を示すものである。この場合、給水管21はふたつの吐水開口25−1、25−2を備え、それぞれの吐水開口25−1、25−2から濁水を回転フィルター11−1、11−2に吐出する。
【0031】
回転フィルター11−1、11−2の横近傍には、表面に付着した泥砂を掻き落とすため、それぞれ回転ブラシ30−1、30−2を設ける。掻き落とされた泥砂を受け止めるケース38−1、38−2も、それぞれ回転ブラシ30−1、30−2の下方に配しておく。回転フィルター11−1、11−2を通過して下方に落下する水を受け止める貯水ケース80は、ひとつ設けておくだけでよい。貯水ケース80の略中央に配する排水管85も、径を大きくすればひとつ設けるだけで排出機能を保証できる。
【0032】
かかる構成によれば、給排水能力が高い大型ポンプを用いて河川工事や海浜の整備工事を行う場合でも、大量の泥砂/水の分離作業を行うことが可能となる。これにより、凝集剤や沈殿に基づく従来の工事に較べて、大型ポンプを用いた高効率、短工期、低コストを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係る濁水の浄化装置の構成を例示する斜視図である。
【図2】実施形態に係る回転基材Bの構成を例示する斜視図である。
【図3】図2の回転基材Bに回転軸を配した状態を示す図である。
【図4】図1の浄化装置を側面から例示した図である。
【図5】回転フィルターをふたつ設けた場合の実施形態を例示する図である。
【符号の説明】
【0034】
10、33 回転軸
11、11−1、11−2 回転フィルター
12 円形の端面骨子
14 横材
15 補強材
17 筋交部材
20 散水装置
21 給水管
23 ポンプ装置
25、25−1、25−2 吐水開口
27 給水経路
30、30−1、30−2 回転ブラシ
38、38−1、38−2 ケース
40 メッシュフィルター
41 砂粒(砂泥)
61、71 モータ
62、72 動力伝達部材
80 貯水ケース
85 排水管
B 回転基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される回転軸に支持させた略円筒形の回転フィルターと、
この回転フィルターに対して濁水を斜め上方から散水する散水装置と、
回転フィルターの表面に付着した泥砂を掻き落とす回転ブラシとを備えてなり、
前記回転フィルターは、
対向配置させた円形の端面骨子と、この端面骨子に掛け渡した横材とを備えてなる回転基材と、
この回転基材の表面に配したメッシュフィルターとを備えるよう構成し、
前記散水装置は、
回転フィルターを支持する回転軸と略平行に設けた給水管と、
この給水管に対して濁水を送り込むポンプ装置と、
給水管に設けた横長の吐水開口とを備えるよう構成し、
前記回転ブラシは、
回転フィルターの近傍横位置に配して、回転フィルターの回転方向と逆回転させることを特徴とする濁水の浄化装置。
【請求項2】
回転軸が平行な、逆回転する左右二つの回転フィルターと、
二つの回転フィルターの中央上部に配した一の給水管を備え、
この給水管は、二つの回転フィルターに対して濁水を散水する横長の吐水開口を左右二つ備えることを特徴とする請求項1記載の濁水の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−289798(P2007−289798A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117192(P2006−117192)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(503106270)株式会社クリエイター (4)
【Fターム(参考)】