説明

濁水処理装置

【課題】濁水処理装置において、沈殿物によって埋まることによるフィルター有効面積の低減を防止する。
【解決手段】濁水を浄化するフィルター9をタンク1内に横置きに設置する。具体的には、フィルター9は濾過材料を円柱状に形成したもので、その円柱状のフィルター9を上下で向きを互い違いに設置する。そして、ノッチタンク1内において、フィルター9を、下方に流入口5を有する流入側仕切り材4と、上方に排水口7を有する排水側仕切り材6との間に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、土砂工事により生じる濁水を浄化するための濁水処理池に使用される濾過材料であって、該濁水処理池で使用される濾過材料は、乾燥植物体を圧縮成形した成形体であり、長尺状に形成されて、その長さ方向に沿う外面が乾燥植物体を用いて形成されたロープ又はネットで包囲されていることを特徴とする濁水処理池用の濾過材料の発明が開示されている。
具体的には、濾過材料は円柱状に形成されており、その外周面が乾燥植物体を用いて形成されたロープ又はネットで包囲されている。そして、濾過材料は複数積み重ねられて掘池を区画しており、該複数の濾過材料は、段違いに積み重ねられて、掘池に垂直に設けられる支持部材で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3679968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、フィルターを縦置きに設置しているため、その縦置きにされたフィルターの下部が沈殿物によって埋まることにより、フィルター有効面積が低減してしまう。
【0005】
本発明の課題は、濁水処理装置において、沈殿物によって埋まることによるフィルター有効面積の低減を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、濁水を浄化するフィルターをタンク内に横置きに設置した濁水処理装置を特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の濁水処理装置であって、前記フィルターは濾過材料を円柱状に形成したもので、その円柱状のフィルターを上下で向きを互い違いに設置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の濁水処理装置であって、ノッチタンク内において、前記フィルターを、下方に流入口を有する流入側仕切り材と、上方に排水口を有する排水側仕切り材との間に設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、沈殿物によってフィルターが埋まることがなく、フィルター有効面積の低減を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した濁水処理装置の一実施形態の構成を示すもので、ノッチタンクの一例を示した縦断正面図である。
【図2】図1の横置きフィルター部分の拡大図である。
【図3】図1のノッチタンク内の沈殿物の堆積を示す図である。
【図4】図1の横置きフィルターによる断面の自由度を説明する図である。
【図5】図1の横置きフィルターにかかる水圧を説明する図である。
【図6】実施形態2を示すもので、本発明を適用した濁水処理装置を濁水処理プラントの前処理に適用した例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した濁水処理装置の一実施形態の構成としてノッチタンク1の一例を示したもので、2は注入口、3は吐出口、4は流入側仕切り材、5は流入口、6は排出側仕切り材、7は排出口、8は底板、9はフィルターである。
【0012】
図示のように、ノッチタンク1には、外面上部に対向する注入口2及び吐出口3が備えられて、内部に対向する流入側仕切り材4及び排出側仕切り材6が配置されている。流入側仕切り材4は、下方に流入口5を有し、排出側仕切り材6は、上方に排出口7を有している。これら流入側仕切り材4と排出側仕切り材6との間には、水を流通する多孔板またはグレーチング等による底板8が架設されて、この底板8の上に、濁水を浄化する円柱状のフィルター9が水平に上下二段載置されている。
【0013】
ここで、フィルター9として、実施形態では、乾燥植物体を円筒状に成形して同質のネットで包んだバイオログナチュラルフィルター(バイオログは登録商標)を使用する。
【0014】
なお、フィルター9は、鋼材やパイプをボルトや溶接やジョイント等を使用して底部及び側面から複数の材料で支持されている。
また、図示例では、フィルター9を水平配置としたが、単位当たりの面積を多くするために、水平ではなく、斜め(例えば右下がり)配置でもよい。
【0015】
図2は横置きフィルター9部分を拡大したもので、図示のように、円柱状のフィルター9を上下二段で向きを90度変えて互い違いに設置している。
【0016】
このように、円柱状のフィルター9を上下二段で向きを90度変えて互い違いに設置することで、上段の円柱状のフィルター9と下段の円柱状のフィルター9との接点を90度変えて、濁水の流れに対する濾過材の密度を均一化することができる。
【0017】
図3はノッチタンク1内の沈殿物Sの堆積を示すもので、横置き配置したフィルター9に対して、矢印で示すように、濁水の通過面を下から上にすることによって、自然沈降による濁度の低減が促されるのと同時に、沈殿物Sによってもフィルター9が埋まることがなく、フィルター9の有効面積の低減を防止することができる。
【0018】
図4は横置きフィルター9による断面の自由度を説明するもので、横置きのフィルター9の場合は、矢印で示すように、流入側仕切り材4及び排出側仕切り材6の設置位置の調整でフィルター9の総断面の調整ができるので、対応流量の自由度が大きい。
【0019】
図5は横置きフィルター9にかかる水圧を説明するもので、横置きのフィルター9の場合は、一定の水深に設置されているので、矢印で示すように、フィルター9の設置位置による水圧の影響を受けにくい。すなわち、横置きのフィルター9に対して水圧が均等にかかることで、フィルター9を通る濁水は均等に浄化処理される。
【0020】
また、仕切り材4・6とフィルター9を組み合わせることで、流入から流出までの距離を迂回させ、滞留時間を長くすることができる。
【0021】
そして、縦置きの場合と比べ横置きは、列数は増設するが、段数が少なくなるので、フィルター9の交換が容易になる。
つまり、鉛直に設置されたフィルターを交換する場合、処理前と処理後の濁水が混合しないように水槽内の濁水をいったん排水する必要がある。
しかしながら、フィルター9を水平設置する場合は、フィルター9を撤去しても処理前と処理後の濁水が混合しないため、水槽内の濁水を排水することなく、フィルター9の交換が可能となる。
【0022】
また、縦置き設置よりも横置き設置の場合は、荒い粒子が自然沈降している。このため、フィルター9の負担が軽減され、濁水浄化処理効果の持続が可能となる。つまり、濁水は下から上に向かって流れるため、汚泥は水平に設置されたフィルター9の底部に付着する。この際、重力の影響を受けて一部の汚泥は落下するため、フィルター9への汚泥付着は低減されることとなる。
【0023】
また、実施形態のように、濁水処理ウォータータンク(ノッチタンク1)に用いることで、沈砂池設置用地や沈砂池の掘削許可が得られない場合でも対応ができる。
特に都市土木での濁水処理対策として期待される。
【0024】
さらに、汚泥はタンク1の底面に堆積するため、鉛直設置に比べて汚泥回収は容易となる。
【0025】
(実施形態2)
図6は実施形態2を示すもので、本発明を適用した濁水処理装置を濁水処理プラントPの前処理に適用した例を示したものであり、前述した実施形態1と同様、1はノッチタンク、4は流入側仕切り材、5は流入口、6は排出側仕切り材、7は排出口、8は底板、9はフィルターであって、11は第三仕切り材、12は流路である。
【0026】
図示のように、実施形態1と同様のノッチタンク1内に、流入側仕切り材4、流入口5、排出側仕切り材6、排出口7、底板8、横置きフィルター9に加えて、第三仕切り材11及びその下方の流路12を配置して構成される濁水処理装置を、濁水処理プラントPの前処理に設置している。
【0027】
このように、本発明による濁水処理装置である、横置きフィルター9を備えたノッチタンク1を、最終処理工程を行う濁水処理プラントPの前処理に設置することにより、濁水処理プラントPで使用する薬品量や濁水処理プラントPから排出される汚泥を低減することができ、環境負担の軽減が可能となる。
【0028】
なお、以上の実施形態においては、ノッチタンクとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のタンクであっても良い。
また、実施形態では乾燥植物体を圧縮成形したバイオログナチュラルフィルターとしたが、乾燥植物体を圧縮成形した成形体以外のフィルター、例えば細かい繊維を使用したループ状のモールコードや、熱可塑性合成樹脂を加熱溶融してノズルより押し出し、繊條としたものをカールさせたまま積み重ね、繊條の相互接点を溶着成型して一体化したポーラス材等でもよい。
さらに、タンク、仕切り材、流入口、排水口、フィルターの形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 タンク(ノッチタンク)
2 注入口
3 吐出口
4 流入側仕切り材
5 流入口
6 排出側仕切り材
7 排出口
8 底板
9 フィルター
11 第三仕切り材
12 流路
P 濁水処理プラント
S 沈殿物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁水を浄化するフィルターをタンク内に横置きに設置したことを特徴とする濁水処理装置。
【請求項2】
前記フィルターは濾過材料を円柱状に形成したもので、その円柱状のフィルターを上下で向きを互い違いに設置したことを特徴とする請求項1に記載の濁水処理装置。
【請求項3】
ノッチタンク内において、前記フィルターを、下方に流入口を有する流入側仕切り材と、上方に排水口を有する排水側仕切り材との間に設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の濁水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−161389(P2011−161389A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28440(P2010−28440)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(500133587)株式会社ウエスコット (2)