説明

濃度測定用イムノクロマトデバイス及びその濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法

【課題】外的環境の変化による計測値のばらつきの低減を図ることが出来る濃度測定用イムノクロマトデバイス及びそのイムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスは、メンブレン部と、メンブレン部を保持する基部と、基部又はメンブレン部に設置され、試料が添加されてから呈色物質が固定化されるまでにおこる反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測要素とを有することを特徴とする。濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いることにより、反応時の外的環境の変化を物理量として計測出来、その物理量を用いて測定時に測定値の補正ができ、測定精度を向上させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度測定用イムノクロマトデバイス及びその濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿などの生体試料中に含まれる微量物質の定性又は定量方法として、その感度の良さから免疫学的測定方法が汎用されている。その手法の内、クロマトグラフィーを用いたいわゆるイムノクロマト法は、操作が簡単であり、検定に要する時間も短いため、現在多くの場面、例えば病院における臨床検査、研究室における検定試験などに広く使用されている。ただし測定にばらつきが大きいため被測定物質の有り無し判定が主な使用目的となっている。
【0003】
イムノクロマト法を用いて被測定物質の濃度の算出を行うために様々な提案が行われている。
【0004】
下記特許文献1には被測定物質がイムノクロマトデバイスに流れる際、上流から下流に順次高くなる濃度で被測定物質捕捉抗体を複数箇所に固定したものが提案されている。この時その複数箇所の呈色パターン(呈色バンドの数など)から濃度を目視にて判定する。
【0005】
また下記特許文献2には低濃度で存在する被測定物質を識別するために照明手段LED44からの照射光から反射された光をCMOSイメージングセンサーにて感知し画像解析をおこない、テスト領域、バックグラウンド領域、コントロール領域を区分けして結果を出力する装置が提案されている。
【0006】
また下記特許文献3にはクロマトグラフィー試験片に照射された光ビームを標識試薬保持部から試薬固定化部との間に照射した状態で待機させておき、標識試薬の溶出に伴う吸光度の変化を検知し、この検知から一定時間後に自動的に測定を開始するクロマトグラフィー測定装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3519451号公報
【特許文献2】特表2002−520617号公報
【特許文献3】特開2003−4743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の濃度測定用イムノクロマトデバイスでは反応時の温度の違い、反応時間のばらつきなど試料の反応の影響因子の違いによって呈色度が異なり、そのため測定された計測値にばらつきがで、検出精度の許容範囲を超えることがあった。濃度測定用イムノクロマトデバイスはその操作の簡便性から反応そのものは測定機器のある恒温室などでは行われず、様々な外的環境下で行われることがある。本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり外的環境の変化による計測値のばらつきの低減を図ることが出来る濃度測定用イムノクロマトデバイス及びそのイムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、鋭意検討した結果、濃度測定用イムノクロマトデバイスに反応の影響因子となる物理量を測定する計測要素を取り付け、反応時のその物理量を検知することによって測定時に簡便に測定値の補正ができ、測定精度を向上することが出来る濃度測定用イムノクロマトデバイス及び濃度測定方法を提供出来ることを見いだした。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスは、抗原抗体反応によって被測定物質の濃度を測定するために用いられる濃度測定用イムノクロマトデバイスにおいて、被測定物質を含む試料を添加する試料添加部と、試料添加部から離れて形成され、被測定物質の濃度を示す呈色物質が固定化される呈色部と、を有するメンブレン部と、メンブレン部を保持する基部と、基部又はメンブレン部に設置され、試料が添加されてから呈色物質が固定化されるまでにおこる反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測要素と、からなることを特徴とする。
【0010】
イムノクロマトデバイスに、反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測要素が設置されていることによって、反応時の個々のイムノクロマトデバイスの物理量を簡便に正確に測定することが出来る。またその物理量を用いて、容易に濃度の補正をすることが出来る。従って本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いることによって、精度良く濃度測定することが出来る。
【0011】
反応に影響を与える因子の物理量として温度及び/又は反応時間を挙げることができる。試料が添加されてから呈色物質が固定化されるまでにおこる反応には抗原抗体反応や酵素反応が挙げられる。このような抗体や酵素を用いた反応では温度の影響を受けやすい。また反応は、試料添加部から呈色部までメンブレン中を毛細管現象によって試料が移動する間に行われるため、反応時間や湿度によって影響を受ける。
【0012】
特に計測要素を温度計測要素としてもよい。計測される温度は、反応中の反応温度または反応中の環境の温度の少なくとも一方であればよい。添加する試料の温度が環境の温度と大幅に異なるときは反応温度として試料の温度を計測出来る方が好ましい。ただ試料は基本的にごく微量であるため、試料添加部に添加されると外的環境温度とほぼ同様になる。また反応として挙げられる抗原抗体反応や酵素反応では、反応中の環境の温度と反応中の反応温度とがほぼ同様となると考えられ、反応中の環境の温度を計測し、反応温度と同一と見なすことが出来る。
【0013】
また温度計測要素は、温度感知部と、温度感知部で感知した温度を表示する温度表示部、温度感知部で感知した温度を記録する温度記録部及び温度感知部で感知した温度を送信する温度送信部のうちの少なくとも一つとを有することが好ましい。特に温度記録部を有する温度計測要素が望ましい。温度記録部を有することによって測定時に反応中の温度変化を正確に知ることが出来る。
【0014】
また呈色物質は酵素反応によって呈色するものであっても良い。酵素反応によって呈色させる反応を用いる測定は、特に微量な被測定物質の測定に用いられるため、濃度測定にばらつきが生じやすい。そのため本発明の効果が大きい。
【0015】
また抗原抗体反応は競合反応であっても良い。競合反応は被測定物質が標識された抗原と非標識の抗原とが一定量の抗体に競合的に結合することを利用した反応である。競合反応は免疫反応において汎用されているサンドイッチ法(非競合反応)が適用できない程度の低分子量を有する被測定物質を測定する際に用いられる反応である。また競合反応を用いる測定は微量物質を測定するのに好適に用いられるため、濃度測定にばらつきが生じやすい。そのため本発明の効果が大きい。
【0016】
また本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法は、上記濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いて被測定物質の濃度を測定する濃度測定方法であって、被測定物質を含む試料を試料添加部に添加する試料添加工程と、試料が試料添加部からメンブレン部内を移動し、それに伴い免疫反応又は酵素反応によって呈色物質が呈色部に固定される反応工程と、反応工程中の反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測工程と、反応工程後に呈色部の呈色度を光学的に測定する呈色度測定工程と、呈色度測定工程で測定された呈色度から被測定物質の濃度を換算する濃度換算工程と、計測工程で計測された物理量によって濃度換算工程で換算された濃度を補正する補正工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
個々のイムノクロマトデバイスの反応工程中の反応に影響を与える因子の物理量を用いて濃度補正を行うことが出来、精度良く濃度を測定できる。
【0018】
また反応工程は免疫反応及び酵素反応を行う工程であり、免疫反応は競合反応であり、酵素反応は呈色物質を生成させるものであり、補正工程は、物理量として温度によって濃度を補正するものとすることが出来る。競合反応を用いることによって低分子量の微量物質の濃度測定が出来る。また酵素反応によって呈色物質を生成させることによってより微量な濃度まで計測可能となる。また各反応に対して影響の大きな温度によって濃度を補正することによってより精度の高い補正を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0019】
上記のような本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスは、メンブレン部又はメンブレン部を保持する基部に反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測要素を設置されていることにより、反応時の個々のイムノクロマトデバイスの物理量を正確に測定することが出来る。そのため反応後の濃度を測定する際、反応時に測定された物理量により簡便に濃度補正をすることが出来る。従って本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いることによって、反応時の外的環境によらず、ばらつきの少ない精度良い濃度測定をすることが出来る。
【0020】
また特に計測要素を温度計測要素とすることによって、より反応に影響を与える因子である温度を用いた濃度補正をすることが簡便に出来る。
【0021】
又本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法を用いることによって外的環境によらず、ばらつきの少ない精度良い濃度測定方法とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイス及びそれを用いた濃度測定方法について詳細に説明する。
【0023】
<濃度測定用イムノクロマトデバイス>
本発明の第1実施形態の濃度測定用イムノクロマトデバイスは、メンブレン部と、メンブレン部を保持する基部と、メンブレン部又は基部に設置された計測要素とからなる。
【0024】
メンブレン部は、試料添加部と、試料添加部から離れて形成される呈色部とを有する。メンブレン部の材質は、抗体等を保持出来、また被測定物質が毛細管現象によって移動できるものであればよい。メンブレン部はナイロンやセルロース及びそれらの誘導体などの微粉末や繊維状のものや濾紙などによって形成することができる。メンブレン部の形状は特に限定されない。メンブレン部の形状として短冊形状のものが好適に用いられる。例えばメンブレン部として短冊形状のニトロセルロースメンブレンを用いることが出来る。
【0025】
試料添加部は、メンブレン部の一部でも良いし、メンブレン部とは別部材をメンブレン部に設けるものでもよい。別部材の場合もメンブレン部と同様、その材質は被測定物質が毛細管現象で移動できるものなら良い。メンブレン部と別部材の場合、その材質として上記メンブレン部の材質の他に吸水性のあるスポンジ、吸水性不織布、濾紙等からなる吸水性パッドを用いることが出来る。試料はメンブレン部或いは上記吸水性パッドに点着することが出来る。又試料をあらかじめメンブレン部または吸水性パッドに滴下固定しておいて後から展開液などを流して試料の移動を開始させても良い。
【0026】
呈色部は、呈色物質が何らかの形で捕捉され色を呈する部位である。呈色部は試料添加部から離れて形成され、試料がメンブレン部を毛細管現象で移動する移動場所中に形成される。呈色部はメンブレン部の一部でも良いし、メンブレン部とは別部材をメンブレン部に設けるものでもよい。別部材の場合もメンブレン部と同様、その材質は被測定物質が毛細管現象で移動できるものなら良く、試料添加部と同様、その材質として上記メンブレン部の材質の他に吸水性のあるスポンジ、吸水性不織布、濾紙等からなる吸水性パッドを用いることが出来る。呈色部は被測定物質の測定方法に応じて複数あっても良い。呈色部の形状は、呈色物質の色を測定する際に好適に用いられる形状であれば特に限定されない。呈色物質を集積させることにより感度良く呈色度を測定できるので、特に呈色部の形状はライン状又は帯状になっているものが好適に用いられる。これは呈色物質を捕捉するための抗体等をライン状又は帯状に呈色部に担持させることによって形成できる。
【0027】
メンブレン部を保持する基部は、上記メンブレン部の形態を保持し、また取り扱い時にメンブレン部を直接さわらなくてもいいように出来るものであれば特に限定されない。メンブレン部の下部を保持するプレート形状やトレイ形状のものでもよいし、全体を覆う容器形状のものでもよい。全体を覆う容器形状のものの場合、試料添加部に試料が添加できるように試料添加部を覆う箇所は開口や蓋などが形成される必要がある。また呈色部を覆う箇所についても呈色度を測定する際に測定を妨げないようにする必要がある。具体的には呈色部を覆う箇所が開口されているか、また蓋などが形成され測定時に開口されるか又は測定の妨げにならない透明な材質で覆う必要がある。
【0028】
計測要素は、メンブレン部又は基部に設置されている。従ってメンブレン部又は基部に設置できる大きさであることが好ましい。メンブレン部に設置されているときは、試料の移動を妨げない場所に設置される必要がある。また基部に設置される場合は、試料の添加や試料の移動及び呈色部を測定する際に邪魔にならない場所に設置される必要がある。また基部が全体を覆う容器形状の場合は、容器の内部側に設置されても良いし容器外部側に設置されても良い。
【0029】
計測要素は試料が添加されてから呈色物質が固定化されるまでにおこる反応に影響を与える因子の物理量を計測する。反応に影響を与える因子として温度、反応時間、湿度等が挙げられる。温度に関しては反応中の反応温度でも反応中の環境の温度の少なくとも一方の温度を計測すればよい。抗原抗体反応は、抗体がタンパク質からできているため微量な温度の変化にも大きな影響を受ける。また被測定物質は緩衝液や水などによって溶液の形で使用されるため、温度、反応時間、湿度などの条件によって溶液の蒸発程度が変化し、被測定物質の濃度が変化する。そのため温度、反応時間、湿度などの物理量を測定し、その物理量を元に測定結果を補正することが出来る。
【0030】
計測要素として反応時間の計測要素を用いる場合は、市販のタイマー(例えばICタイマー)が使用できる。計測要素として、試料添加から呈色物質が固定されるまでの各反応時間を測定し表示、記録またはデータ送信出来るものが好ましい。
【0031】
計測要素として温度計測要素を用いる場合は、温度感知部と、温度感知部で感知した温度を表示する温度表示部、温度感知部で感知した温度を記録する温度記録部及び温度感知部で感知した温度を送信する温度送信部のうちの少なくとも一つと、を有するものが好ましい。温度は濃度測定時の温度ではなく、試料が添加されてから呈色物質が固定化されるまでの温度を測定することが好ましい。反応時の温度を補正に利用するため、反応時の温度を表示、記録、又は送信できるように、温度表示部又は温度記録部又は温度送信部の少なくとも一つを有することが好ましい。
【0032】
例えば温度感知部と温度表示部とを有する温度計測要素でもよい。この場合は温度表示部の温度表示をみながら使用者が手動で温度記録を取る必要がある。また温度感知部と温度送信部とを有する温度計測要素でもよい。この場合温度データを送信された先に温度記録や温度表示できる他の装置を取り付けても良い。温度感知部と温度記録部とを有する温度計測要素の場合、記録された温度データをパソコンなどで取り出せるようになっていることが必要である。
【0033】
また温度感知部と温度記録部と温度送信部とを有する温度計測要素を用いることが出来る。例えば市販品として温度記録部を有する温度計測要素としてKNラボラトリーズ製、温度データロガー「サーモクロンGタイプ」(商品名)が好適に使用できる。「サーモクロンGタイプ」(商品名)は直径17mmの小さなボタン電池型の温度ロガーであり、パソコンに接続して温度記録条件を設定し、パソコンの接続を取り外し測定場所にて温度を自動計測し、再びパソコンと接続することによって計測データを回収することができる。
【0034】
また温度感知部と温度記録部と温度送信部と温度表示部とを有する温度計測要素としてもよい。
【0035】
上記説明した温度計測要素は、目的に応じて自作することも出来るし、また市販品を使用することも出来る。
【0036】
本発明のイムノクロマトデバイスで測定する被測定物質は特に限定されない。このようなイムノクロマトデバイスを適用する分野は多岐にわたり、例えば各種ウイルス検査、生体ホルモン検査、血中蛋白質、血中薬物、環境ホルモン、ダイオキシン、農薬、抗生物質などの測定に用いることが出来る。
【0037】
ここでイムノクロマトデバイスの測定原理について説明する。免疫測定方法は抗原抗体反応を利用して物質を測定する方法である。免疫測定方法には大別して非競合的結合法(主にサンドウィッチ結合法)と競合的結合法とが用いられる。
【0038】
非競合的結合法であるサンドウィッチ結合法では、被測定物質は毛細管現象でメンブレン部を移動していく途中にメンブレン部に固定された抗体に結合される。そしてその抗体に結合された被測定物質に、標識された標識抗体が結合する。つまり被測定物質を2つの抗体が挟み込んだ形となりサンドウィッチ結合法と呼称される。そして標識された標識抗体を測定することにより被測定物質の量を定量することが出来る。しかしこの方法は被測定物質が固定された又は標識された抗体と1対1で結合した後、別の固定された又は標識された抗体とも結合できる程度の高い分子量が必要である。また被測定物質が微量な場合はこの測定方法は不向きである。
【0039】
競合的結合法は一定量の抗体に被測定物質と被測定物質の擬似物質とが競合的に結合することを利用する方法である。この方法を用いると微量な被測定物質の測定をすることが出来る。また上記サンドウィッチ結合法が適用できない低分子量の被測定物質の測定に好適に適用することが出来る。
【0040】
また呈色部において呈色させる方法には様々な方法がある。呈色する標識物質をあらかじめ抗体に結合させておいてもよいし、抗体に酵素を結合させておき、捕捉された抗体に酵素基質反応によって呈色物質を産出することが出来る基質を反応させ、呈色物質を産出させることも出来る。この場合産出された呈色物質がその場にとどまり、その呈色物質を計測することによって被測定物質の定量を行うことが出来る。
【0041】
呈色物質をあらかじめ抗体に反応させておく方法では、呈色物質がある程度集積しないと色の測定が困難であるため微量な被測定物質の測定には不向きである。また酵素基質反応を利用する方法は、一般的に酵素の分子量が大きいことから抗原抗体反応に影響の出る場合もあるが、微量な被測定物質を感度良く測定することが出来る。
【0042】
これらの呈色物質、抗体、酵素、基質などはその目的に応じて、被測定物質が試料添加部に導入され、呈色部に被測定物質の濃度に関する呈色物質が捕捉されるまでに被測定物質と接触出来るように配置されていればよい。例えばこれらの物質は、メンブレン部に固定されていても良いし、メンブレン部にあらかじめ吸収されていてもよいし、被測定物質と混合しておいてもよいし、被測定物質の固定後にあとから添加されても良い。
【0043】
呈色物質として自身が発色する呈色物質を用いることが出来る。例えば呈色物質として金コロイド粒子を用いることが出来る。この場合は金コロイド粒子を抗体に標識し、金コロイド標識抗体を作製して用いることができる。金コロイド粒子は集積により赤色の発色が認められる。
【0044】
また酵素基質反応を利用する場合は、標識酵素として酵素免疫分析で多用されているアルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシターゼ等を用いることが出来る。各酵素が作用して呈色物質が生成するような基質を用いることで、呈色物質を生成させることができる。呈色物質は不溶性となって析出し、呈色部に物理的に固定されることによって発色が認められる。発光基質の場合は化学反応により発光が認められる。
【0045】
<濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法>
本発明の濃度測定方法は、上記濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いるものであり、試料添加工程と、反応工程と、計測工程と、呈色度測定工程と、濃度換算工程と、補正工程と、を有する。
【0046】
試料添加工程は被測定物質を含む試料を試料添加部に添加するものであり、反応工程は試料が試料添加部からメンブレン部内を移動し、それに伴い免疫反応及び/又は酵素反応によって呈色物質が呈色部に固定される工程である。また計測工程は反応工程中の反応に影響を与える因子の物理量を計測するものである。
【0047】
試料添加工程、反応工程、計測工程は上記濃度測定用イムノクロマトデバイスで説明したものと同様のものである。反応工程は免疫反応及び/又は酵素反応によって呈色物質が呈色部に固定される工程であり、特に免疫反応は競合反応とし、酵素反応は酵素基質反応によって呈色物質を生成させるものとすると、より低濃度のより低分子量の被測定物質を測定することが出来る。
【0048】
呈色度測定工程は、反応工程後に呈色部の呈色度を光学的に測定するものである。呈色部には呈色物質が担持され、発色されている。光学測定は呈色部にランプやLED等で光をあて、フォトダイオードなどを用いて反射された光を検出することによって呈色度を測定することが出来る。光学測定用の機器については特に限定されない。複数の呈色部を用いる場合は複数の呈色部の呈色度を測定する。
【0049】
濃度換算工程は、呈色度測定工程で測定された呈色度から被測定物質の濃度を換算するものである。あらかじめ被測定物質の濃度による呈色度の検量線を作製しておき、呈色度測定工程にて測定された光学量から濃度換算することが出来る。
【0050】
また補正工程は、計測工程で計測された物理量によって濃度換算工程で換算された濃度を補正するものである。計測工程は反応工程中の反応に影響を与える因子の物理量を反応工程時に計測するものであるので、呈色度を測定する際の環境条件にかかわらず反応時の外的環境による物理量を用いて補正することが出来、精度良い補正を行うことが出来る。
【実施例】
【0051】
上記実施形態に基づいて、免疫反応として競合反応を用い、また酵素基質反応によって呈色物質を生成させる方法に用いる濃度測定用イムノクロマトデバイスを作製し濃度測定を行った。
【0052】
以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照しつつ説明する。また本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法の説明も兼ねる。また下記に述べる寸法は、記載した寸法に限定されるものではない。
【0053】
図1は、本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第一実施形態を示す概略平面図である。図2は、本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第二実施形態を示す概略平面図である。図3は、本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第三実施形態を示す概略平面図である。図4は、本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第四実施形態を示す概略平面図である。図5は図2に記載の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第二実施形態の模式断面説明図である。
【0054】
なお第一実施形態〜第四実施形態は、計測要素6が異なるだけであるので、計測要素6以外の説明は同様のものとし、各記載は略す。
【0055】
図1、図2、図3、図4及び図5に示すようにメンブレン2は幅5mm横6cm厚み1mmの短冊形状であり、幅2cm横7cm厚み5mmのケース5内に収容されている。ケース5は厚み方向に上下2部品に分割出来、内部にメンブレン2を収容し上下2部品を嵌合させることによってメンブレン2を覆う容器となっている。試料添加部1及び第2呈色部3及び第1呈色部4はメンブレン2上にこの順番通りに端から長手方向に各々間隔をあけて形成されている。試料添加部1から第2呈色部3までの距離が約2cm程度であり、第2呈色部3から第1呈色部4までの距離が約1cm程度である。試料添加部1は上部面が直径2mm程度の略円形形状であり、第2呈色部3及び第1呈色部4は各々幅1mm程度の帯状形状である。第2呈色部3及び第1呈色部4は反応後に呈色するものである。
【0056】
ケース5はメンブレン2の全体を覆い、ケース上部品5a、ケース下部品5bが嵌合され内部にメンブレン2を保持する樹脂製の容器である。ケース5は、試料添加部1を覆う上面側に直径2mm程度の略円形の試料添加用開口7及び第2呈色部3及び第1呈色部4を覆う上面側に幅5mm長さ15mm程度の矩形の測定用開口8が開口されている。
【0057】
図1に記載の計測要素6は温度計測要素である。図1に記載の計測要素6は温度感知部6a、温度記録部6b、温度表示部6c及び温度送信部6dを有する。図1に記載の計測要素6はケース5の上面に上向きに設置されている。計測要素6の設置は、移動の際ケース5から落ちないように固定されていれば良く、接着剤や粘着剤で取り付けられていても良いし、ケース5に取り付け部を作成しそこに嵌合されていてもよい。図1に記載の計測要素6の場合、温度感知部6aで感知された温度を、例えばICチップなどの温度記録部6bに記録し、温度表示部6cで温度表示し、さらに記録された温度データをパソコンなどで取り込めるようなUSBケーブルの接続口などの温度送信部6dによって温度データを他の機器に送信し利用することが出来る。
【0058】
図2に記載の計測要素6は同様に温度計測要素である。図2に記載の計測要素6は図1に記載の計測要素6と異なるところは、温度表示部6cがないところである。図2に記載の計測要素6では温度表示はデータ送信された他の装置で行う。図2の計測要素6としてKNラボラトリーズ製、温度データロガー「サーモクロンGタイプ」(商品名)が好適に使用できる。
【0059】
図3に記載の計測要素6は同様に温度計測要素である。図3に記載の計測要素6は温度感知部6a及び温度送信部6dを有する。図3に記載のようにケース5上に温度感知部6aとセンサーケーブルである温度送信部6dが取り付けられ、ケース5に近設された他の計測装置10にある温度記録部10bと温度表示部10cと結合されている。図3に記載の計測要素6としては市販の温度端子が好適に使用できる。
【0060】
図4に記載の計測要素6は同様に温度計測要素である。図4に記載の計測要素6は温度感知部6aと温度表示部6cとを有する。この場合は市販の小型温度計が使用できる。この場合は手動で使用者が温度記録を取る必要がある。
【0061】
また図1、図2、図3及び図4で説明した第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態及び第四実施形態の計測要素6は、温度計測要素として説明したが、温度感知部を試料添加から呈色物質が固定されるまでの各反応時間を測定する時間感知部とすることにより時間計測要素として用いてもよい。
【0062】
以下に図6を用いて試料がどのように移動し、反応が起こり、呈色物質が固定されていくかを説明する。図6は、競合反応をおこなう際の一実施例の試料の流れを説明する模式説明図である。第2呈色部及び第1呈色部は必要に応じてT2、T1と略称する。
【0063】
試料添加部1に試料として被測定物質と修飾された抗体を添加する。被測定物質と修飾された抗体は混合して入れても良いし、あらかじめ修飾された抗体を試料添加部1に担持しておき、そこに被測定物質を添加しても良い。この時修飾された抗体は被測定物質よりも過剰にいれてある。そのため修飾された抗体は被測定物質と結合し、過剰な修飾された抗体は単独で試料中に残っている。
【0064】
試料添加部に滴下された試料は毛細管現象によって図6に示す矢印Y1の方向に移動していき、第2呈色部T2に到達する。第2呈色部T2では前もってT2固定物質が固定されている。競合反応の場合、第2呈色部T2には被測定物質の擬似物質が固定されており、被測定物質と結合されていない過剰な修飾された抗体はここで、固定された擬似物質と結合し固定される。続いて第2呈色部で固定されなかった、被測定物質と結合した修飾された抗体等が図6に示す矢印Y1の方向に移動し第1呈色部T1に到達する。第1呈色部T1ではT1固定物質が固定されている。T1固定物質は修飾された抗体に結合する抗体である。そのため第1呈色部T1で被測定物質と結合した修飾された抗体が固定される。
【0065】
そして第2呈色部T2と第1呈色部T1の呈色度を光学的に測定しその強度の割合から被測定物質の濃度を換算することが出来る。
【0066】
以下に試験例の説明をする。上記濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いて濃度測定を行った。
【0067】
この試験では、ビタミンC(日本薬局方)を生理食塩水に希釈したものを被測定物質とした。イムノクロマトデバイスの説明は図3を用いて説明する。
【0068】
(1)イムノクロマトデバイスの作成
幅50cm長さ6cm厚み1mmのイムノクロマト用ニトロセルロースメンブレン(日本ミリポア株式会社製)を準備した。まず幅方向に垂直に図3で示す第2呈色部3にあたる箇所にビタミンCの擬似物質であるビタミンC−BSA(バイオジェネシス社製)を、濃度0.7mg/mlで塗布した。塗布方法は幅方向に垂直に線を引くようにビタミンC−BSA溶液を重ね塗りした。同様に図3に示す第1呈色部4にあたる箇所にanti-mouse抗体(ロックランド社製)を0.4mg/mlの濃度で塗布した。塗布後ニトロセルロースメンブレンを50℃で1時間乾燥させることで乾燥固定し、幅5mm毎に切断し幅5mm長さ6cm厚み1mmのメンブレン2とした。
【0069】
上記作製したメンブレン2をケース5に設置した。ケース5はポリプロピレン製の幅2cm、長さ7cm厚み5mmの直方体形状であり、上下方向に2分割出来るようになっている。またケース5上面には試料添加用の直径2mm程度の開口7と呈色部上面にあたる幅5mm長さ15mmの矩形の開口8が形成されている。試料添加用の開口7によって開口されているメンブレン2の部分を試料添加部1とする。
【0070】
計測要素6は図3の第三実施形態で説明したような温度端子(株式会社キーエンス製)とした。温度端子は温度記録装置(株式会社キーエンス製)に接続されている。温度記録装置(株式会社キーエンス製)本体はイムノクロマトデバイスに近設して設置し、温度端子を上記イムノクロマトデバイスのケース上部に粘着テープで取り付けた。
【0071】
(2)酵素標識抗体の作製
ビタミンC抗体(abcam社製)にアルカリフォスファターゼラベリングキット(同仁化学社製)を用いてAP標識抗ビタミンC抗体を作製した。
【0072】
(3)濃度測定
(3−1)反応時間検討
試料添加後に基質をいれるまでの時間(抗原抗体反応時間)及び基質を入れてから測定までの時間(酵素基質反応時間)をタイマーで計測し、各反応時間での各呈色部の呈色を観測した。
【0073】
上記で作製したAP標識抗ビタミンC抗体をPBS緩衝液で5万倍に希釈し、希釈液100μlに対して被測定物質である0.015、0.125、1.0ppmのビタミンC希釈物10μlを混合し、25℃で30分反応させた。反応後の混合液を試料とし75μlをとり上記イムノクロマトデバイスの試料添加部に滴下した。試料添加後、各20分たってから、基質としてBCIP/NBT(5-Bromo-4-Chloro-3’-Indolylphosphatase-p-Toluidine salt /Nitro-Blue Tetrazolium Chloride)(ナカライテスク社製)を付属の希釈緩衝液にて1/100に希釈したものを75μlとり試料添加部に滴下した。各操作は25℃の恒温室で行った。また温度測定は温度記録装置(株式会社キーエンス製)の端子を上記イムノクロマトデバイスのケース上部に取り付けて測定した。
【0074】
BCIP/NBTを添加してから各1、2、3、4、5、6、7、10、15、20、30、45、60、90分たってから、第2呈色部3及び第1呈色部4の呈色度をアイシン精機株式会社製のイムノサーバー(型番:AIS−GP100)にて測定した。
【0075】
第2呈色部3及び第1呈色部4は紫色の発色がライン状に認められた。発色の測定には波長500nm〜600mnmのフィルタを介して照射する緑色LEDを斜め45°方向から2つ配置して光源としてもちい、測定対象物の上方に配置されたフォトダイオードにて検知して行った。
【0076】
結果を表1及び図7に示す。強度は第2呈色部T2のフォトダイオードの電圧値/第1呈色部T1の電圧値の値とした。基質を入れてから2分たてば紫色の呈色がおこることが確認出来た。また基質を入れてから5分たてばはっきり呈色し、45分までは指数関数的に増加することがわかった。
【0077】
このように抗原抗体反応時間又は酵素基質反応時間の違いにより呈色度は異なる。従って、反応時間による濃度補正を行うことも出来る。
【0078】
【表1】

【0079】
(3−2)温度25℃における検量線の作成
上記で作製したAP標識抗ビタミンC抗体をPBS緩衝液で5万倍に希釈し、希釈液100μlに対して被測定物質である表2に示す各濃度のビタミンC希釈物10μlを混合し、25℃で30分反応させた。反応後の混合液を試料とし75μlをとり上記イムノクロマトデバイスの試料添加部に滴下した。20分後、基質としてBCIP/NBT(ナカライテスク社製)を付属の希釈緩衝液にて1/100に希釈したものを75μlとり試料添加部に滴下した。各操作は25℃の恒温室で行った。また温度測定は温度記録装置(株式会社キーエンス製)で測定した。
【0080】
BCIP/NBTを添加してから20分後、第2呈色部3及び第1呈色部4の呈色度をアイシン精機株式会社製のイムノサーバー(型番:AIS−GP100)にて測定した。
【0081】
第2呈色部3及び第1呈色部4は紫色の発色がライン状に認められた。発色の測定は波長500nm〜600mnmのフィルタを介して照射する緑色LEDを斜め45°方向から2つ配置して光源としてもちい、測定対象物の上方に配置されたフォトダイオードにて検知して行った。
【0082】
測定された値を元に検量線を作成した。検量線はX軸にビタミンCの濃度、Y軸に強度を取って作成した。強度は第2呈色部T2のフォトダイオードの電圧値/第1呈色部T1の電圧値の値とした。
【0083】
【表2】

【0084】
図8に25℃における濃度に対する測定強度の検量線のグラフを示す。
【0085】
(3−3)測定(温度条件変更)
次に上記工程と同様の工程を20℃条件下、22℃条件下、28℃条件下、30℃条件下で行った。温度測定は上記と同様に測定した。また上記同様、第2呈色部3及び第1呈色部4の呈色度をアイシン精機株式会社製のイムノサーバー(型番:AIS−GP100)にて測定した。測定した強度を上記図8に示した検量線に従って濃度に換算した。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3を見てわかるように25℃で求めた検量線によって濃度を換算すると数度の温度の違いでも大幅に換算濃度が実際の濃度とずれてくることがわかる。
【0088】
(3−4)補正(温度)
次に表3の結果から換算濃度を試料濃度に対してプロットし、近似式を求めた。図9に換算濃度と試料濃度との関係を表すグラフを示す。図9より近似式の傾きを計算し、温度とこの傾きから温度補正式:y = -4.4971Ln(x) + 15.608を求めた。この温度補正式から各温度の補正係数を算出し、25℃の検量線から換算した換算濃度を補正係数で割ることで補正濃度を算出した。
【0089】
この温度補正式を元に換算された補正濃度と温度補正式を用いていない換算濃度について比較した。試料濃度は0.25ppmと1ppmの2つの濃度について検討した。
【0090】
温度補正を行わない結果を表4に示す。
【0091】
【表4】

【0092】
次に上記温度補正式に基づいて算出された補正係数によって補正した後の補正濃度の結果を表5に示す。
【0093】
【表5】

【0094】
表4と表5の結果を比較すると補正前にばらつきを示すCVが60%前後あったものが補正後16%以下と大幅に低減した。このように反応時の外的環境を測定出来る計測要素をイムノクロマトデバイスに設けることで、その計測された物理量を元に補正を行うことによって反応時の外的環境によらず、ばらつきの少ない、精度良い濃度測定を行うことが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第二実施形態を示す概略平面図である。
【図3】本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第三実施形態を示す概略平面図である。
【図4】本発明の濃度測定用イムノクロマトデバイスの第四実施形態を示す概略平面図である。
【図5】図1Bの濃度測定用イムノクロマトデバイスの模式断面説明図である。
【図6】競合反応をおこなう際の一実施例の試料の流れを説明する模式説明図である。
【図7】反応時間と測定強度との関係を示すグラフである。
【図8】25℃における濃度に対する測定強度の検量線を示すグラフである。
【図9】換算濃度と試料濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0096】
1・・・試料添加部、2・・・メンブレン、3・・・第2呈色部、4・・・第1呈色部、5・・・ケース、
6・・・計測要素、6a・・・温度感知部、6b・・・温度記録部、6c・・・温度表示部、6d・・・温度送信部、7・・・開口、8・・・開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原抗体反応によって被測定物質の濃度を測定するために用いられる濃度測定用イムノクロマトデバイスにおいて、
前記被測定物質を含む試料を添加する試料添加部と、前記試料添加部から離れて形成され、前記被測定物質の濃度を示す呈色物質が固定化される呈色部と、を有するメンブレン部と、
前記メンブレン部を保持する基部と、
前記基部又は前記メンブレン部に設置され、前記試料が添加されてから前記呈色物質が固定化されるまでにおこる反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測要素と、
からなることを特徴とする濃度測定用イムノクロマトデバイス。
【請求項2】
前記反応に影響を与える因子の物理量は温度及び/又は反応時間である請求項1に記載の濃度測定用イムノクロマトデバイス。
【請求項3】
前記反応に影響を与える因子の物理量は温度であり、前記計測要素は、前記試料が添加されてから前記呈色物質が固定化されるまでにおこる前記反応の反応温度又は前記反応中の環境の温度の少なくとも一方を計測する温度計測要素である請求項2に記載の濃度測定用イムノクロマトデバイス。
【請求項4】
前記温度計測要素は、
温度感知部と、
前記温度感知部で感知した温度を表示する温度表示部、前記温度感知部で感知した温度を記録する温度記録部及び前記温度感知部で感知した温度を送信する温度送信部のうちの少なくとも一つと、
を有する請求項3に記載の濃度測定用イムノクロマトデバイス。
【請求項5】
前記呈色物質は酵素反応によって呈色するものである請求項1〜4のいずれかに記載の濃度測定用イムノクロマトデバイス。
【請求項6】
前記抗原抗体反応は競合反応である請求項1〜5のいずれかに記載の濃度測定用イムノクロマトデバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いて被測定物質の濃度を測定する濃度測定方法であって、
前記被測定物質を含む試料を前記試料添加部に添加する試料添加工程と、
前記試料が前記試料添加部から前記メンブレン部内を移動し、それに伴い免疫反応及び/又は酵素反応によって前記呈色物質が前記呈色部に固定される反応工程と、
前記反応工程中の反応に影響を与える因子の物理量を計測する計測工程と、
前記反応工程後に前記呈色部の呈色度を光学的に測定する呈色度測定工程と、
前記呈色度測定工程で測定された前記呈色度から前記被測定物質の濃度を換算する濃度換算工程と、
前記計測工程で計測された前記物理量によって前記濃度換算工程で換算された濃度を補正する補正工程と、
を有する濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法。
【請求項8】
前記反応工程は前記免疫反応及び前記酵素反応を行う工程であり、前記免疫反応は競合反応であり、前記酵素反応は前記呈色物質を生成させるものであり、前記補正工程は、前記物理量として温度によって濃度を補正するものである請求項7に記載の濃度測定用イムノクロマトデバイスを用いた濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−47590(P2009−47590A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214785(P2007−214785)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】