説明

濡れ米菓及びその製造方法

【課題】保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にする濡れ米菓及びその製造方法を提供する。
【解決手段】醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤から少なくとも1つを選択して調味醤油液に添加し、添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半生米菓である濡れせんべい、濡れおかきに分類される濡れ米菓及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常せんべい、おかき等の米菓は、うるち米、もち米を原料とし、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥、ホイロ処理、焼成、味付け、仕上乾燥工程を経て、水分含有量4重量%以下、Aw0.5以下の乾燥したサクット、又は、カリットした食感の干菓子であるが、近年、嗜好の多様化に伴い、焼成した米菓生地を調味醤油液中に浸漬して、しっとりと軟らかい食感の濡れた状態の濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓が上市されている。
【0003】
半生状態の濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓は、通常、よりしっとりと軟らかい、湿り気のある食感が求められ、若者の嗜好にマッチし、新しい米菓のジャンルを築きつつある。
【0004】
従来の濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓の製造方法は、精米もち米、うるち米を原料し、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥、焼成した直後に調味醤油液中に浸漬し、表面のみを乾燥することによって、含浸調味醤油液の味により、おかき、せんべい全体に湿感を呈し、軟らかい食感を特徴とする濡れ米菓を製造するものである。
【0005】
一方で、このような従来の製造方法による濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓、特に調味醤油液の米菓生地中への含浸量の多い濡れ米菓については、保存時間が長くなるに従い、調味醤油液を含浸した米菓生地中の澱粉が老化・硬化し、次第に硬い食感のものに劣化し、嗜好性が劣り、品質が劣化する問題が発生する難点がある。
【0006】
このため、軟らかい食感を維持する方法として、特許文献1の特開2001-8630号公報に開示されるものがあり、該特開2001-8630号公報には調味醤油液中にトレハロースを重量比で10〜30%添加配合することによって、軟らかい食感を持続する方法が開示されている。
【0007】
又、食品添加物糖質としての表示が必要な化工澱粉の配合によって、老化による硬化現象を緩和する方法もある。
【特許文献1】特開2001-8630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、従来の製造方法による、濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓であっても、保存時間の経過により硬化する現象を解消し、品質の劣化等を防止することが求められていた。
【0009】
又、特開2001-8630号公報の如く、調味醤油液中にトレハロースを重量比で10〜30%添加配合することによって、軟らかい食感を持続する方法であっても、調味醤油液を含浸した米菓生地中の澱粉が老化・硬化する現象を完全に解決することはできず、且つ、トレハロースという難消化性の糖質の使用は、一過性下痢の要因にもなり、食品添加物表示も必要となるという問題がある。更に、このような制限因子のある糖質、化工澱粉の使用は、中高年の消費者に好まれる無添加物嗜好の消費傾向に対して好ましくない要件である。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にする濡れ米菓及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、焼成もち生地に浸漬する調味醤油液を調整して用いることにより、従来の製造方法と同様な通常の方法で濡れ米菓を製造する場合であっても、保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤から少なくとも1つを選択して調味醤油液に添加し、添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造したことを特徴とする濡れ米菓、に係るものである。
【0013】
本発明の請求項2は、生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤の添加量が、調味醤油液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓、に係るものである。
【0014】
本発明の請求項3は、生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤のうち少なくとも一つを添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓、に係るものである。
【0015】
本発明の請求項4は、濡れおかき又は濡れせんべいで製造される請求項1〜3のいずれかに記載の濡れ米菓、に係るものである。
【0016】
本発明の請求項5は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤から少なくとも1つを選択して調味醤油液に添加し、添加した調味醤油液を焼成もち生地に含浸し、乾燥熱処理して製造することを特徴とする濡れ米菓の製造方法、に係るものである。
【0017】
本発明の請求項6は、生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤の添加量が、調味醤油液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項5に記載の濡れ米菓の製造方法、に係るものである。
【0018】
本発明の請求項7は、生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤のうち少なくとも一つを添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項5に記載の濡れ米菓の製造方法、に係るものである。
【0019】
本発明の請求項8は、濡れおかき又は濡れせんべいを製造する請求項5〜7のいずれかに記載の濡れ米菓の製造方法、に係るものである。
【0020】
このように、本発明の請求項1又は請求項5によれば、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤から少なくとも1つを選択して調味醤油に添加し、当該調味醤油液を焼成もち生地に浸漬させるので、乾燥熱処理により製造した濡れ米菓は、保存時間の経過により硬化する現象を解消すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にすることができる。
【0021】
又、本発明の請求項2又は請求項6の如く、生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤の添加量が、調味醤油液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であると、保存時間の経過により硬化する現象を適切に解消することができる。
【0022】
更に、本発明の請求項3又は請求項7の如く、生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤のうち少なくとも一つを添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすると、保存時間の経過により硬化する現象を好適に解消することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の濡れ米菓及びその製造方法によれば、濡れおかき、濡れせんべい等の濡れ米菓について保存時間の経過により硬化する現象を適切に防止する効果が顕著に発揮され、軟らかな食感を長期間に渡り有することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態例における濡れ米菓及びその製造方法についてより具体的に説明する。
【0025】
本発明の実施の形態の製造方法では、従来の製造方法によって、精米したもち米、うるち米を原料にし、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を反復釜焼成機、運行釜を使用して焼成し、焼成もち生地を得る。
【0026】
次に、従来の製造方法で得た焼成もち生地を焼成後、速やかに調味醤油液に浸漬させる。
【0027】
ここで、調味醤油液は、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ(きあげ)醤油、又は生揚げ醤油を加熱処理しないでフィルターを使用して濾過除菌した、濾過除菌済みの、なま醤油、又はβアミラーゼ酵素製剤のいずれかを選択し、通常の調味醤油液100重量部に対して、2.5重量部以下、0.05重量部以上になるように添加・配合し、生揚げ(きあげ)醤油又は濾過除菌済みのなま醤油入りの硬化防止用の調味醤油液として調整される。
【0028】
続いて、硬化防止用の調味醤油液を、焼成もち生地1重量部に対して0.5重量部から2重量部で含浸させ、100℃以下、35℃以上に調温した乾燥機により、調味醤油液を浸漬した焼成もち生地の表面を乾燥する。
【0029】
これにより、保存時間の経過により硬化する現象を解消して品質の劣化等を防止すると共に、食品添加物表示の必要な糖質、澱粉等の配合を不要にすることができる。
【0030】
又、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ(きあげ)醤油、又は、非加熱処理でフィルターを使用した濾過除菌済みのなま醤油、又はβアミラーゼ酵素製剤を、2.5重量%以下、0.05重量%以上で調味醤油液に添加・配合した場合には、保存時間の経過により硬化する現象を適切に解消することができる。一方で、調味醤油液に対して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤を2.5重量%を超える量で配合した場合には、硬化防止用の調味醤油液を含浸した焼成もち生地が、2日静置保管後に液体状態となり、濡れおかき、濡れせんべいの形状を残さず、製品とすることができない。一方、浸漬する調味醤油液に対して、生揚げ(きあげ)醤油、除菌済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤を0.05重量%未満の量で添加した場合には、保存時間が長くなるに従い硬化現象を起こし、本発明の効果が発揮されない。
【0031】
更に、調味醤油液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上にした場合には、保存時間の経過により硬化する現象を好適に解消することができる。
【0032】
以下、調味醤油に対する生揚げ醤油の添加率と、保存日数の経過による濡れおかきの硬さの関係を示す。
【0033】
[表1]は、濡れおかき製造条件、ぬれ度合、乾燥温度及び、生揚げ醤油の添加率の異なる試験区の試料について、保存日数と硬さの変化について表したものである。
【0034】
【表1】

【0035】
[表1の簡単な説明]
表1中に記載の調味醤油液は、濃い口醤油48重量部、みりん23重量部、上白糖25重量部、調味エキス3重量部を溶解槽に投入、攪拌・混合・溶解し、80℃に達するまで加温した後、容器に取り出し、室温に冷却後、柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を0.03重量%から3.0重量%添加したものである。濡れ度合は焼成生地1重量部に対して調味醤油液量1.0〜2.0 に調整し、この調味醤油液を含浸させた焼成もち生地を品温60℃で1時間乾燥して、濡れおかきの試験区試料を得たものである。次に、5日後、40日後の硬さを測定する場合には、当該試料を密閉容器に入れ、常温保管し、硬さを測定する検針により行う。具体的には、検針として頂点部が直径1.0mm半球型で底面部が直径7.0mmの円板状で長さ12mmの円錐形で、底面部より後方は底面部と同形の直径7.0mm、長さ130mmの円柱形とした測定治具を使用し、はかり皿上に測定する各試験区試料を載置し、該検針の頂点から12mm(底面部直径7.0mmの円板状の位置まで)までを3秒間で侵入させ、このときの応力をはかりの指示重量値により計測して測定する。
[表1中の食感官能評価は専門パネラー5名による評価値を示すものである。]
【0036】
硬さの専門パネラーによる評価基準としては、300gf(300×9.8mN)±100gf(100×9.8mN)の値の範囲が軟らかい食感と評価され、200gf(200×9.8mN)未満50gf(50×9.8mN)以上では大変軟らかく、50gf(50×9.8mN)未満では製品の原型が保持できず製品化不能となる。又、400gf(400×9.8mN)を超え700gf(700×9.8mN)未満ではやや硬く、700gf(700×9.8mN)以上、1000gf(1000×9.8mN)以下では硬く、1000gf(1000×9.8mN)を超えると大変硬いと評価した。
【0037】
表1の濡れおかきは、従来の製造方法と同様に、精米もち米を原料とし、洗米、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を反復釜焼成機により焼成し、焼成もち生地とした後、20秒放置した後、調味醤油液に浸漬する。この時、浸漬する調味醤油液を、醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理していない生揚げ(きあげ)醤油を0.03重量%から3.0重量%を添加・配合し、硬化防止用の調味醤油液としておく。次に焼成もち生地1重量部に対して硬化防止用の調味醤油液を1.0〜2.0重量部含浸させ、硬化防止用の調味醤油液含浸焼成もち生地を80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、濡れおかきの製品を得るものである。又、濡れおかきを常温で保存し、5日経過後、40日経過後の硬さを上記に示す[表1の簡単な説明]の項で記載した方法で測定した。
【0038】
表1に示す条件で得た試験区試料について、上記に示す食感官能評価の評価基準によって評価したところ、試験区1、2の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を添加していない調味醤油液を使用した場合には、試作後経過5日後に150gf(150×9.8mN)と大変軟らかい製品であったが、40日後には1500gf(1500×9.8mN)、1800gf(1800×9.8mN)と大変硬い製品となった。
【0039】
一方、試験区3,4の濡れおかき試料のように、浸漬する調味醤油液に対して、生揚げ(きあげ)醤油を2.5重量%、2重量%添加・配合した硬化防止調味醤油液を、焼成もち生地1重量部に対して1.0、2.0重量部含浸させた場合には、常温保管で試作経過5日後に100gf(100×9.8mN)、120gf(120×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、40日後も80gf(80×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、硬化現象が完全に防止され、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象を防止する効果が顕著に発揮されていた。
【0040】
又、試験区5,6,7の濡れおかき試料は、常温保管で40日後であっても、400gf(400×9.8mN)を超え700gf(700×9.8mN)未満のやや硬くなる現象は全くなく、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象を防止する効果が顕著に発揮されていた。
【0041】
更に、試験区8の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を0.03重量%添加・配合した硬化防止用の調味醤油液を、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた場合には、常温保管で5日後に150gf(150×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、40日後には800gf(800×9.8mN)と硬い製品となり、硬化防止効果は十分に発揮されなかった。
【0042】
他方、試験区9の濡れおかき試料のように、生揚げ(きあげ)醤油を3重量%添加・配合した硬化防止用の調味醤油液を、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた場合には、常温保管で5日後に50gf(50×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、40日後には5gf(5×9.8mN)と流動する状態となり、過度に軟化し製品形状を保持できず、硬化防止効果が過度であることが明白となった。
【0043】
同様の効果は加熱加工しないでフィルターを使用して、濾過して除菌した、なま醤油にも認められた。かくして、本発明の製造方法において、生揚げ(きあげ)醤油、又は、濾過除菌済みのなま醤油を、2.5重量%以下、0.05重量%以上で調味醤油液に添加・配合して硬化防止用の調味醤油液とし、これを使用した場合には、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象を防止する効果が顕著に発揮される。ここで、フィルターは、セラミックフィルターやプラスチック製中空糸等が使用されており、フィルターの種類は、生揚げ醤油を濾過して除菌し得るならば特に限定されるものではない。
【0044】
以下、調味醤油に対するβアミラーゼ酵素製剤の添加率と、保存日数の経過による濡れおかきの硬さの関係を示す。
【0045】
[表2]は、濡れおかき製造条件、ぬれ度合、乾燥温度及び、生揚げ醤油の添加率の異なる試験区の試料について、保存日数と硬さの変化について表したものである。
【0046】
【表2】

【0047】
[表2の簡単な説明]
表2は、表1同様に、精米もち米を原料として得た成型乾燥米菓生地を、反復釜焼成機を使用して焼成し、焼成もち生地とした後、20秒放置した後、調味醤油液に浸漬したものであり、調味醤油液は、生揚げ(きあげ)醤油の代わりにβアミラーゼ酵素製剤((株)タイショーテクノ社製:ソフタケ゛ン30)を0.25重量%〜3重量%添加・配合したものである。濡れ度合は、焼成もち生地1重量部に対して調味醤油液を2.0重量部に調整し、調味醤油液を含浸させた焼成もち生地を90℃に調温した乾燥器にて45分間乾燥し、濡れおかきの試験区試料を得たものである。次に、該試料を表1同様に応力をはかりの指示重量値により計測して測定した。
[表2中の食感官能評価は専門パネラー5名による評価値を示すものである。]
【0048】
硬さの専門パネラーによる評価基準としては、表1と同様に評価した。
【0049】
表2は従来の製造方法によって、表1と同様に、焼成もち生地を焼成し、調味醤油液に浸漬するものであり、この時、生揚げ(きあげ)醤油の代わりにβアミラーゼ酵素製剤((株)タイショーテクノ社製:ソフタケ゛ン30)を0.25重量%、2重量%添加・配合し、酵素入り硬化防止用の調味醤油液とする。次に焼成もち生地1重量部に対して酵素入り硬化防止用の調味醤油液を2.0重量部含浸させ、硬化防止用の調味醤油液含浸焼成もち生地を所定温度に調温した乾燥器にて乾燥し、濡れおかきを得た。又、濡れおかきを常温で保存し、5日経過後、40日経過後の硬さを上記に示す[表2の簡単な説明]の項で記載した方法で測定した。
【0050】
表2に示す条件で得た試験区試料について、上記に示す食感官能評価の評価基準によって評価したところ、試験区10、11、12の濡れおかき試料のように、浸漬する調味醤油液に対して、βアミラーゼ酵素製剤を0.25重量%、0.5重量%、2.0重量%添加・配合した硬化防止調味醤油液を、夫々、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた場合には、常温保管で5日後に155gf(155×9.8mN)、120gf(120×9.8mN)、125gf(125×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、40日後にも100gf(100×9.8mN)、95gf(95×9.8mN)、75gf(75×9.8mN)と大変軟らかい製品であり、結果的に、保存時間が長くなるに従い硬化現象が完全に防止され、本発明の特徴とする保存時間が長くなるに従い硬化する現象を防止する効果が顕著に発揮されていた。
【0051】
一方、試験区13の濡れおかき試料のように、浸漬する調味醤油液に対して、βアミラーゼ酵素製剤を3重量%添加・配合した酵素入り硬化防止用の調味醤油液を、焼成もち生地1重量部に対して2.0重量部含浸させた場合には、常温保管で40日後に20gf(20×9.8mN)で軟らか過ぎて、原型を保持できない状態となり、過度に軟化し製品形状を保持できず、硬化防止効果が過度であることが明白になった。
【0052】
以下、実施例を例示して、本発明の濡れ米菓及びその製造方法、並びにその製造方法に用いる調味醤油液、を更に詳細に説明する。
【0053】
[実施例1]
調味醤油液の1例は、濃い口醤油48重量部、みりん23重量部、上白糖25重量部、調味エキス3重量部を溶解槽に投入し、攪拌・混合・溶解し、80℃に達するまで加温し、加温処理後に容器に取り出し、室温に冷却して保管した調味醤油液に対し、醤油醸造熟成が完了したモロミを絞って得た、加熱殺菌処理を施していない柴沼醸造(株)製の生揚げ醤油を0.05重量%で添加して硬化防止用の調味醤油液とした。
【0054】
調味醤油液の1例を用いて濡れおかきを製造する場合には、初めに、従来の米菓製造方法により、精米もち米を、洗米し、浸漬、破砕、蒸煮処理して餅生地とし、該餅生地を、箱取り、冷蔵老化、切断成型、乾燥し、これにより得た成型乾燥の米菓生地を、反復釜焼成機を使用して焼成し、3.2g/粒の焼成もち生地とした後、20秒放置して準備する。次に、焼成もち生地1重量部に対して、硬化防止用の調味醤油液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の硬化防止用の含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、濡れおかきを得ることができる。
【0055】
[実施例2]
調味醤油液の2例は、実施例1に開示の製造方法によって調整した調味醤油液に対し醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油をフィルターを使用して、濾過除菌した、柴沼醸造(株)製のなま醤油を2.5重量%配合して硬化防止用の調味醤油液とした。
【0056】
調味醤油液の2例を用いて濡れおかきを製造する場合には、実施例1に開示の方法で得た3.2g/粒の焼成もち生地を焼成後20秒放置し、焼成もち生地1重量部に対して、硬化防止用の調味醤油液を1.0重量部含浸させ、6.4 g/粒の硬化防止用の調味醤油液含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、濡れおかきを得ることができる。
【0057】
[実施例3]
調味醤油液の3例は、実施例1に開示の製造方法により調整した調味醤油液に対し、βアミラーゼ酵素製剤((株)タイショーテクノ社製:ソフタケ゛ン30)を0.5重量%添加・配合し、酵素入り硬化防止用の調味醤油液とした。
【0058】
調味醤油液の3例を用いて濡れおかきを製造する場合には、実施例1に開示の方法で得た3.2g/粒の焼成もち生地を焼成後20秒放置し、焼成もち生地1重量部に対して、酵素入り硬化防止用の調味醤油液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の硬化防止用の調味醤油液含浸焼成もち生地を、90℃に調温した乾燥器にて45分間乾燥し、濡れおかきを得ることができる。
【0059】
一方、濡れせんべいを製造する場合には、同様な製造方法によって得た、うるち米を原料として成形乾燥せんべい生地を焼成して4.0g/枚の焼成せんべい生地とし、焼成後、速やかに、焼成せんべい生地に、実施例1と同様に生揚げ醤油0.3重量%を添加した硬化防止用の調味醤油液を浸漬し、焼成せんべい生地1重量部に対して硬化防止用の調味醤油液2重量部を含浸するように処理し、6.0 g/枚の濡れせんべいを得ることができる。又、実施例2のなま醤油や、実施例3のアミラーゼ酵素製剤を適用して濡れせんべいを得ることができる。
【0060】
以下、比較に用いた濡れ米菓及びその製造方法、並びにその製造方法に用いる調味醤油液、を更に詳細に説明する。
【0061】
[比較実施例1]
比較用の調味醤油液は、濃い口醤油48重量部、みりん23重量部、上白糖25重量部、調味エキス3重量部を溶解槽に投入し、混合し、80℃に達するまで加温し、容器に取り出し、室温に冷却して調整して調味醤油液とした。
【0062】
比較用の濡れおかきを製造する場合には、実施例1に記載の方法で得た3.2g/粒の焼成もち生地を焼成後20秒放置し、焼成もち生地1重量部に対して、調味醤油液を2.0重量部含浸させ、9.6 g/粒の該調味醤油液含浸焼成もち生地を、80℃に調温した乾燥器にて60分間乾燥し、生揚醤油、なま醤油、酵素製剤等の硬化防止効果のある成分を全く添加しない濡れおかきを得ることができる。
【0063】
尚、本発明の濡れ米菓及びその製造方法は、上記の実施例に限定されるものでなく、本発明の作用効果を奏するならば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤から少なくとも1つを選択して調味醤油液に添加し、添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬し、乾燥熱処理して製造したことを特徴とする濡れ米菓。
【請求項2】
生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤の添加量が、調味醤油液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓。
【請求項3】
生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤のうち少なくとも一つを添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項1に記載の濡れ米菓。
【請求項4】
濡れおかき又は濡れせんべいで製造される請求項1〜3のいずれかに記載の濡れ米菓。
【請求項5】
醤油醸造工程で得る殺菌、酵素失活処理してない生揚げ醤油、該生揚げ醤油を非加熱加工でフィルターにより濾過して除菌した濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤から少なくとも1つを選択して調味醤油液に添加し、添加した調味醤油液を焼成もち生地に含浸し、乾燥熱処理して製造することを特徴とする濡れ米菓の製造方法。
【請求項6】
生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤の添加量が、調味醤油液に対して、2.5重量%以下、0.05重量%以上であることを特徴とする請求項5に記載の濡れ米菓の製造方法。
【請求項7】
生揚げ醤油、濾過済みのなま醤油、βアミラーゼ酵素製剤のうち少なくとも一つを添加した調味醤油液を焼成もち生地に浸漬する度合が、焼成もち生地1重量部に対して、2重量部以下、0.5重量部以上とすることを特徴とする請求項5に記載の濡れ米菓の製造方法。
【請求項8】
濡れおかき又は濡れせんべいを製造する請求項5〜7のいずれかに記載の濡れ米菓の製造方法。