説明

濾材

【課題】本発明は、濾過に伴い頂点が連続してなる線の位置の移動を防ぐことができると共に、濾材自体が排気方向に伸びることを防ぐことができることで、効率よく変形を防ぐことのできる濾材の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の濾材は、頂点が連続してなる線を有するように加工された濾過部材を、保持部材が貫通してなる濾材であることで、濾過に伴い頂点が連続してなる線の位置の移動を防ぐことができると共に、濾材自体が排気方向に伸びることを防ぐことができるため、効率よく変形を防ぐことのできる濾材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
気体や液体などの濾過対象中のじん埃などを濾過して、気体や液体を清浄化する際に使用される濾材として、濾過部材をプリーツ加工などすることで、頂点が連続してなる線を有するように加工された濾過部材からなる濾材が使用されている。
【0003】
このように頂点が連続してなる線を有するように加工された濾過部材からなる濾材で濾過を行うと、濾過部材における頂点が連続してなる線の位置が移動したり、濾過部材自体が濾過対象の進行方向に伸びてしまい、該濾過部材からなる濾材に変形が生じてしまうことが問題となっている。
【0004】
濾材に変形が生じると、じん埃の捕集効率の低下、じん埃の保持容量の低下などが生じて、濾材が所望の濾過性能を示すことができなくなることが問題となる。
【0005】
濾材の変形を防ぐ方法として、外枠の流出側に設けられた開口面サポート、積層濾材の頂部を帯状にサポートする帯状サポート部、積層濾材の折り畳まれた間隔を保持するスタビライザを有する外枠に、積層濾材を納めてプレフィルタとする方法が知られている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1によれば、外枠に納められた積層濾材は、帯状サポート部とスタビライザにより、積層濾材のプリーツの位置(頂点が連続してなる線の位置)が移動することが防がれており、開口面サポートにより積層濾材自体が排気方向に伸びることが防がれ、積層濾材の変形が防がれることで濾過性能が保持されている。
【0007】
しかし、特許文献1のプレフィルタでは積層濾材の変形を防ぐため、開口面サポート、帯状サポート部、スタビライザなどを積層濾材の全面に設ける必要があり、積層濾材の変形を防ぐためには手間とコストがかかる。
そのため、効率よく変形を防ぐことのできる濾材が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-117034号公報(特許請求の範囲、0008-0009、図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術が有する問題に鑑みてなされたもので、効率よく変形を防ぐことのできる濾材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、
「頂点が連続してなる線を有するように加工された濾過部材、および、該頂点が連続してなる線と平行をなす該濾過部材の両端部の間に設けられた保持部材を備えており、該保持部材が該濾過部材を貫通している、ことを特徴とする濾材。」
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の濾材は、保持部材が濾過部材を貫通していることで、濾過に伴い頂点が連続してなる線の位置の移動を防ぐことができると共に、濾材自体が排気方向に伸びることを防ぐことができるため、効率よく変形を防ぐことのできる濾材である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る濾材を、濾材の厚さ方向からみた模式的正面図である。
【図2】本発明に係る濾材を、濾材の縦方向からみた模式的側面図である。
【図3】本発明に係る濾材を外枠に納めてなるフィルタユニットを、濾材の厚さ方向からみた模式的正面図である。
【図4】本発明に係る濾材を外枠に納めてなるフィルタユニットを、濾材の縦方向からみた模式的側面図である。
【図5】比較例1に係るフィルタユニットを、濾材の厚さ方向からみた模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る濾材(10)を、濾材の厚さ方向(c、以降、厚さ方向と称する)からみた模式的正面図である図1、および、濾材の縦方向(b、以降、縦方向と称する)からみた模式的側面図である図2を用いて説明する。
【0014】
なお、本発明において、濾材の横方向(a、以降、横方向と称する)とは、図1の紙面上、頂点が連続してなる線(14)と直角を成す方向を指し、縦方向(b)とは、図1の紙面上、頂点が連続してなる線(14)と平行を成す方向を指す。また、厚さ方向(c)とは横方向(a)と縦方向(b)のいずれとも直角をなす方向を指す。
【0015】
図1-図2に係る濾材(10)は、主面側(紙面上方向)のプリーツ山を3つ、裏面側(紙面下方向)のプリーツの山を2つ有する(頂点が連続してなる線(14)を5つ有する)ようにプリーツ加工された濾過部材(12)、ならびに、保持部材(13)から構成されている。なお、図1では濾過部材(12)の裏面側(紙面下方向)における頂点が連続してなる線(14)を破線で示している。
【0016】
保持部材(13)は、頂点が連続してなる線(14)と平行をなす濾過部材の両端部(11、11’)の間に存在していると共に、保持部材(13)は濾過部材(12)を貫通している。
【0017】
ここでいう貫通とは、保持部材(13)が濾過部材(12)の一方の主面(表面)からもう一方の主面(裏面)に通じる穴を形成すると共に、その形成された穴を保持部材(13)が通過している態様を指す。
【0018】
なお、厚さ方向(c)からみた図1の濾材(10)において、保持部材(13)の見えない部位は点線で示している。
【0019】
濾過部材(12)は、厚さ方向(c)から供給される気体や液体などの濾過対象中からじん埃などを濾別でき、頂点が連続してなる線(14)を有する態様に加工できるものであれば、その態様を限定するものではなく、例えば、不織布、織布、編物、多孔性フィルム、紙、或いはこれら2以上の素材を積層した積層体など、公知のものを用いることができる。
【0020】
不織布からなる濾過部材(12)であると、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通することで保持部材(13)と濾過部材(12)との間に生じた隙間をランダムに存在する繊維の弾性によって閉塞しやすいため、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通しても隙間が存在しにくく、濾材(10)の捕集効率の低下を防ぐことができるため、好ましい。
【0021】
不織布としては、例えば、バインダー接着型不織布、水流絡合不織布、ニードルパンチ不織布、繊維接着型不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、静電紡糸法を用いて得られる不織布、紡糸原液に対して気体を作用させて繊維化し、直接集積して得られる不織布(特開2009−287138号公報に記載の不織布の製造方法など)、或いはこれらを適宜組み合わせた不織布を用いることができる。
【0022】
また濾過部材(12)を構成する素材としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂などの公知の有機ポリマーからなる繊維、あるいは、金属繊維、ガラス繊維、金属アルコキシド(ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、スズ、亜鉛などのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなど)が重合した無機ポリマーなどの公知の無機系化合物が重合してなるポリマーなどからなる素材を用いることができる。
【0023】
これらの素材を構成するポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体、多成分のポリマーが混和したものでも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。
【0024】
また、これら例示以外のポリマーも使用可能であり、例示以外の樹脂も含め、2種以上のポリマーからなる素材を用いることもできる。
【0025】
特に、濾過部材(12)を構成する素材として、自己消火性を有するモダアクリル(アクリロニトリルなどアクリル成分の含有量が低い(35%〜85%)繊維)などの耐燃性及び難燃性を有する素材が用いられていると、難燃性に優れる濾過部材(12)が得られるため好ましい。
【0026】
濾過部材(12)が、上述の素材からなる繊維により構成されている場合、濾過部材(12)を構成する繊維の平均繊維径は、濾過対象の種類などにより適宜調整することができる。
【0027】
本発明に係る濾材(10)を、メインフィルタの流路側上流に設けて使用する、粗塵捕集のためのプレフィルタとして使用する場合には、平均繊維径が25μm以上の繊維を50%以上含む状態で、濾過部材(12)が構成されているのが好ましい。このような平均繊維径からなる濾過部材(12)であると、圧力損失が低いプレフィルタとして使用できる濾材(10)を得ることができる。
【0028】
なお、本発明でいう「繊維径」は、繊維の断面を走査型電子顕微鏡により2000倍の倍率で撮影した電子顕微鏡写真をもとに、繊維断面を計測し、1/2000倍して算出した直径をいい、繊維断面が非円形の場合には、非円形の繊維断面積を計測し、繊維断面積と同じ面積をもつ円として換算した、該円の直径を繊維径とみなす。
【0029】
また濾過部材(12)には、難燃剤、活性炭、触媒粒子、または脱臭剤などの機能性材料を含ませて、多機能化することもできる。機能性材料の含有形態としては、濾過部材(12)を構成する繊維に練り込んだり、付着させたり、或いは繊維表面または繊維間にバインダーを介して接着したりするなど、従来公知の方法で含有させた形態を採り得る。
【0030】
本発明において頂点が連続してなる線(14)とは、例えば、図1-図2のようにプリーツ加工されてなる濾過部材(12)である場合、該濾過部材(12)におけるプリーツの折り返し線を指す。
【0031】
頂点が連続してなる線(14)を有するように濾過部材(12)を加工する方法として、好適に頂点が連続してなる線(14)が形成できるのであれば、その方法や使用する装置を限定するものではないが、例えば、レシプロ式やロータリー式、セミロータリー式などのプリーツ加工機による方法、ジグザグ形状に成形された一対の押し型でプレスする方法、ヒートシーラーで溶融加工した後に手折りする方法、対をなすギアーあるいはパターンロールで挟み込んで折る方法などを挙げることができる。
【0032】
濾過部材(12)における頂点が連続してなる線(14)の数、頂点が連続してなる線(14)同士がなす距離などの態様は、本発明に係る濾材(10)を使用する用途や求められる形状などによって、適宜、調整するのが好ましい。
【0033】
保持部材(13)は濾過部材(12)を貫通することができ、濾過に伴い濾材(10)に変形が生じることを防ぐことができるのであれば、その態様や素材を限定するものではないが、保持部材(13)として、例えば、ワイヤーなどの糸状、円柱、角柱、平板などの棒状を挙げることができる。この時の保持部材(13)の横断面における、直径あるいは長辺および短辺の長さは、適宜、調整するのが好ましい。
【0034】
横断面における面積の大きな保持部材(13)を用いることで、濾過部材(12)を貫通している保持部材(13)が濾過部材(12)から受ける摺動抵抗が大きくなるため、濾材(10)の頂点が連続してなる線(14)は移動しにくくなると共に、保持部材(13)がたわみにくく、濾材(10)が排気方向に伸びにくくなり、濾材(10)の変形を防ぐことができる。しかし、その一方、保持部材(13)を濾過部材(12)に貫通させることが困難となり濾材(10)を製造しにくくなる傾向がある。
【0035】
そのため、保持部材(13)の横断面形状が円形の場合、その横断面の直径は、10mm以下であるのが好ましく、6mm以下であるのがより好ましく、4mm以下であるのがより好ましく、3.5mm以下であるのが最も好ましい。また、保持部材(13)が角柱、平板などの横断面形状が非円形の場合、その横断面において濾過対象の進行方向と直角をなす方向の最も長い長さは、10mm以下であるのが好ましく、6mm以下であるのがより好ましく、4mm以下であるのがより好ましく、3.5mm以下であるのが最も好ましい。
【0036】
横断面における面積の小さな保持部材(13)を用いることで、濾過部材(12)を貫通している保持部材(13)が濾過部材(12)から受ける摺動抵抗が小さくなるため、濾材(10)の頂点が連続してなる線(14)は移動し易くなると共に、保持部材(13)がたわみ易く濾材(10)が排気方向に伸び易くなるため、濾材(10)の変形を防ぐことが困難となる傾向がある。
【0037】
そのため、保持部材(13)の横断面形状が円形の場合、その横断面の直径は、0.3mm以上であるのが好ましく、0.8mm以上であるのがより好ましく、1mm以上であるのが最も好ましい。また、保持部材(13)が角柱、平板などの横断面形状が非円形の場合、その横断面において濾過対象の進行方向と直角をなす方向の最も長い長さは、0.3mm以上であるのが好ましく、0.8mm以上であるのがより好ましく、1mm以上であるのが最も好ましい。
【0038】
保持部材(13)を上述の態様として使用する際に、保持部材(13)が濾過部材(12)を保持できるように、保持部材(13)を構成する素材は、ステンレスやアルミやメッキした鉄などの金属製、木製、樹脂製などであるのが好ましい。
【0039】
保持部材(13)により濾過部材(12)の全体が固定されるように、保持部材(13)を貫通させる場所は、適宜調整するのが好ましい。
【0040】
濾過部材(12)の横方向(a)において、保持部材(13)が濾過部材(12)を等間隔で貫通していると、保持部材(13)により濾過部材(12)が横方向(a)において均等に固定されるため、好ましい。
【0041】
更に、厚さ方向(c)から見た濾過部材(12)の中心を保持部材(13)が通過している、あるいは、濾過部材(12)の重心を保持部材(13)が通過している態様で、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通していると、保持部材(13)により濾過部材(12)が効率よく固定されるため、好ましい。
【0042】
また、縦方向(b)から見た濾過部材(12)の厚さ方向(c)における、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通する位置は、適宜、調整することができる。例えば、頂点が連続してなる線(14)を有するように加工された濾過部材(12)において、厚さ方向(c)における濾過部材(12)の中心よりも、図2の紙面上、上方向で濾過部材(12)を貫通する態様の保持部材(13)を設ける、および/又は、図2の紙面上、下方向で濾過部材(12)を貫通する態様の保持部材(13)を設けても良い。
【0043】
濾過部材(12)の横方向(a)と平行を成す方向の全体に、保持部材(13)が濾過部材(12)を固定することができるように、横方向(a)における保持部材(13)の長さは、適宜、調整するのが好ましい。
【0044】
図1-図2では、濾過部材(12)に保持部材(13)が1つ設けられてなる態様の濾材(10)を示しているが、濾材(10)に設けられている保持部材(13)の数は1つ以上であれば良く、その数を限定するものではない。保持部材(13)により濾過部材(12)が効率よく固定されるように、濾材(10)に設ける保持部材(13)の数とその位置は、適宜、調整するのが好ましい。例えば、複数の保持部材(13)同士が平行をなすと共に、厚さ方向(c)から見た場合に、その内2以上の保持部材(13)同士が重なり合うように配置されている態様としてもよい。又は、複数の保持部材(13)同士が平行をなすと共に、縦方向(b)から見た場合に、その内2以上の保持部材(13)同士が重なり合うように配置されている態様としてもよい。
【0045】
なお、図1-図2の態様のように、保持部材(13)が横方向(a)と平行をなした状態で濾過部材(12)を貫通させたものに限定されるものではなく、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通するその態様は、適宜、調整することができる。複数の保持部材(13)が横方向(a)と平行をなした状態で、濾過部材(12)を貫通していると、複数の保持部材(13)により濾過部材(12)の全体を効率よく固定できるため、好ましい。
【0046】
保持部材(13)を濾過部材(12)に貫通させた後、濾過部材(12)が横方向(a)に移動して、濾材(10)に変形が生じることを効果的に防ぐため、保持部材(13)の端部を折り曲げる、保持部材(13)にテープを巻き付けるなどストッパーを設ける、表面に凹凸や突起を有する保持部材(13)を使用する、ジグザグ形状や螺旋形状やサインカーブ形状など非直線形状の保持部材(13)を使用する、保持部材(13)が貫通している部位で保持部材(13)と濾過部材(12)を接着する、などしても良い。
【0047】
なお、保持部材(13)の非直線形状や、保持部材(13)にストッパーや凹凸や突起を設ける位置は、適宜、調整するのが好ましい。保持部材(13)の両端部や、保持部材(13)における頂点が連続してなる線(14)同士の間に、ストッパーや凹凸や突起を設けることができる。
【0048】
本発明に係る図1-図2の濾材(10)を外枠(21)に納めてなるフィルタユニット(20)について、その厚さ方向(c)からみた模式的正面図である図3、および、縦方向(c)からみた模式的側面図である図4を用いて説明する。
【0049】
フィルタユニット(20)は、濾材(10)と外枠(21)から構成されており、外枠(21)の内部に濾材(10)が納められている。図3-図4の外枠(21)の形状は、図4に示すように、断面が「コの字型」の部材がその凹部で濾材(10)の外周を囲んでなる枠型形状をしている。
【0050】
なお、図3-図4のフィルタユニット(20)においては、濾過部材(12)の端部(11、11’)を図示せず省略して示している。
【0051】
外枠(21)はその内部に濾材(10)を納めることができ、濾材(10)によるじん埃の濾別を妨げないのであれば、その態様や素材を限定するものではない。
【0052】
外枠(21)の形状や大きさなどの態様は、外枠(21)と濾材(10)との間に隙間がないように、濾材(10)の態様に合わせて、適宜、調整するのが好ましい。一般的には、外枠(21)として、断面が「コの字型」、「Lの字型」、「lの字型」などの部材が濾材(10)の外周を囲んでなる、枠型形状をしているものを使用することができる。
【0053】
外枠(21)は濾材(10)を保持することができる程度の強度を有する必要があるため、外枠(21)を構成する素材は、ステンレスやアルミやメッキした鉄などの金属製、厚紙製、木製、樹脂製などであるのが好ましい。
【0054】
外枠(21)の内部に納められた濾材(10)が、外枠(21)内で移動することで濾材(10)に変形が生じないように、外枠(21)内に濾材(10)を固定しても良い。
【0055】
外枠(21)内に濾材(10)を固定する方法として、濾過部材(12)及び/又は保持部材(13)を外枠(21)と接触させて固定することができる。例えば、外枠(21)の内壁面に凹凸を設けてその部位に、濾過部材(12)及び/又は保持部材(13)を接触あるいは挟み込んで固定する、あるいは、接着剤や粘着テープなどを用いて、外枠(21)の内壁面と、濾過部材(12)及び/又は保持部材(13)を接着又は粘着して固定することができる。
【0056】
更に、従来から使用されている開口面サポート、帯状サポート部、スタビライザなどの他部材を併用して濾材(10)を保持しても良い。本発明に係る濾材(10)は、効率よく変形を防ぐことのできる濾材(10)であるため、開口面サポート、帯状サポート部、スタビライザなどの他部材を濾材(10)の全面に設けなくとも、濾材(10)の変形を効率よく防ぐことができる。
【0057】
また、外枠(21)に設ける凹凸や穴の形状や位置、使用する開口面サポート、帯状サポート部、スタビライザなどの他部材の種類や態様、接着剤や粘着テープなどの種類は、濾材(10)の態様や大きさ、濾材(10)の素材と外枠(21)の素材との組み合わせなどにより、適宜、調整するのが好ましい。
【0058】
なお、図3および図4のフィルタユニット(20)では、断面が「コの字型」の枠型形状の外枠(21)内部に濾材(10)が納められていることで、濾材(10)は外枠(21)内に保持されている。
【0059】
本発明に係る、濾材(10)とフィルタユニット(20)において、厚さ方向(c)から(例えば、図2および図4の紙面上、紙面下方向から上方向に向かう方向から)流れてきた濾過対象は、頂点が連続してなる線(14)を有するように加工された濾過部材(12)を透過する際に、濾過対象中のじん埃などは濾過部材(12)によって捕集される。
【0060】
この時、本発明の濾材(10)を構成する濾過部材(12)は、濾過対象の流れる方向に力を受けるものの、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通して濾過部材(12)を保持していることで、濾過部材(12)の変形を防ぐことができる。
【0061】
また、外枠(21)の内部に濾材(10)を設けたフィルタユニット(20)とした場合にも、本発明の濾材(10)は変形しにくいため、開口面サポート、帯状サポート部、スタビライザなどを使用することなく、あるいは、これらの使用量や濾材(10)に適用する面積を少なくした態様で使用することができるため、濾材(10)の変形を防ぐための手間とコストを軽減して、フィルタユニット(20)を調製することができる。
【0062】
更に、保持部材(13)が濾過部材(12)を貫通していることで、濾材(10)の変形を防ぐことができるため、外枠(21)に濾材(10)を着脱する際にも、濾材(10)形状を崩すことなく、濾材(10)の交換が容易に行えるフィルタユニット(20)を調製できる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明に係る濾材(10)およびフィルタユニット(20)の製造方法と、その評価結果を説明する。なお、本実施例において、特定の寸法、形状、配置関係、数値的条件など、本発明の理解を容易とする程度に特定条件を例示して説明するが、本発明はこれら例示形態にのみ限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で変形又は変更を行うことができる。
【0064】
(実施例1)
(1)濾過部材の製造方法
モダアクリル繊維(繊度27デシテックス、繊維長51mm)70重量%と、ポリエステル繊維(繊度22デシテックス、繊維長76mm)の30重量%とを混綿し、カーディングした後、クロスレイヤーにより繊維の配向方向を交差させ、次いで、針密度15本/cm、針深度8mmでニードルパンチ処理を行なうことで、目付が210g/m2の繊維ウエブを得た。
次に、塩化ビニル系エマルジョンにリン・チッソ系化合物の難燃剤を混ぜ合わせてなる接着剤を、繊維ウエブの両面からスプレーし、乾燥機にて乾燥することにより、固形分で140g/mの接着剤によって繊維同士を接着させた、目付が350g/m2、厚さが14mmの濾過部材(12)を得た。
【0065】
(2)濾過部材における頂点が連続してなる線の形成方法
このようにして得られた濾過部材(12)を、ヒートシーラーを用いて濾過部材(12)の表面を直線状に溶融加工して、更に直線状に溶融加工した部分が、頂点が連続してなる線(14)となるように、手折りしてプリーツ加工した。プリーツ加工された濾過部材(12)の態様は、主面側のプリーツ山の数が17で裏面側のプリーツの山の数が16(頂点が連続してなる線(14)の数が33)、プリーツ高さが29.7mm、主面側および裏面側において頂点が連続してなる線(14)同士の横方向(a)の間隔が平均29.3mmとなるように調整した。
このとき、プリーツ形状に加工された濾過部材(12)の外寸は、横方向(a)の長さが498mm、縦方向(b)の長さが498mm、厚さ方向(c)の長さが29.7mmであった。
【0066】
(3)濾材の調製方法
保持部材(13)として、直径3.2mm、長さ528mmの亜鉛メッキした鉄線を3本用意した。次いで、プリーツ加工された濾過部材(12)の横方向(a)と平行を成すように、3本の亜鉛メッキした鉄線(13)を濾過部材(12)に貫通させて濾材(10)を調製した。
濾過部材(12)に設けられた亜鉛メッキした鉄線(13)の態様は、亜鉛メッキした鉄線(13)の各々が横方向(a)と平行をなし、1本の亜鉛メッキした鉄線(13)が、厚さ方向(c)から見た濾過部材(12)の中心を通過していると共に、残り2本の亜鉛メッキした鉄線(13)を厚さ方向(c)から見た濾過部材(12)の縦方向(b)における両端部から、各々15mm離れた位置に設けた。
また、各亜鉛メッキした鉄線(13)は、縦方向(b)から見た濾過部材(12)の濾過部材(12)の厚さ方向(c)における中心を通過するように設けた。そのため、亜鉛メッキした鉄線(13)は各々、濾過部材(12)を34回貫通していた。また、各亜鉛メッキした鉄線(13)のそれぞれの両端部を15mm折り曲げることで、濾過部材(12)が各亜鉛メッキした鉄線(13)から抜けない様に処理した。
【0067】
(4)フィルタユニットの調製方法
このように調製した濾材(10)を、図4のような断面が「コの字型」の枠型形状のアルミ枠(21、厚さ1mm、縦横の外寸が一辺500mm、高さ35mm)内に収めることでフィルタユニット(20)を調製した。
なお、該フィルタユニット(20)では、断面が「コの字型」の枠型形状のアルミ枠(21)内部に濾材(10)が納められていることで、濾材(10)はアルミ枠(21)内に保持されていた。
【0068】
(比較例1)
実施例1と同様にして調製したプリーツ加工した濾過部材(12)を、亜鉛メッキした鉄線(13)を貫通させることなく、濾材として実施例1と同様のアルミ枠(21)内に収めた。
更に、アルミ枠(21)内に収められた濾材を保持できるように、濾材の裏面側に、上流側の開口面サポート(22)として、直径3.2mmの亜鉛メッキした鉄線を、厚さ方向(c)からみた模式的正面図である図5の態様のように、Λ型およびV型に設けた。なお、鉄線を折り返した部分はアルミ枠(21)の対向する辺の中点とした。
更に、濾材の主面側に、下流側の開口面サポートとして、直径3.2mmの亜鉛メッキした鉄線からなる開孔部が80mm角の金網を設けた。
このようにして、濾材の両側に開口面サポートを設けてなる、フィルタユニットを調製した。

なお、図5は、比較例1に係るフィルタユニットにおける、アルミ枠(21)と上流側の開口面サポート(22)のみを示したものであり、濾材は省略している。
【0069】
以上のようにして得られた、実施例1と比較例1のフィルタユニットを、ASHRAE standard52.1規格のエアフィルタ試験装置に供することで、フィルタユニットの初期の圧力損失(Pa)を測定した。なお、該エアフィルタ試験装置のフィルタユニットを設ける部位の下流側には、フィルタユニットを通過した粉塵を捕集する役割を担う、「通過粉塵捕集フィルタ」が設けられている。
【0070】
また、質量法により、測定中の5ポイントにおけるフィルタユニットの粒子捕集率(%)を以下の式から算出し、各値の平均値を算出することで、フィルタユニットの粒子捕集率の平均値(%)を求めた。

粒子捕集率(%)={1―(A/B)}×100
A:「通過粉塵捕集フィルタ」に捕集された粉じんの質量(g)
B:フィルタユニットへ、供給した全粉じんの質量(g)

なお測定には、JIS Z 8901に規定する試験用粉体1の15種を用いると共に、濾材の主面側が下流側を向くようにフィルタユニットの向きを揃えて、試験に供した。
【0071】
更に、上述の試験を終えた実施例1および比較例1のフィルタユニットの、濾材に変形が生じたものかどうか、目視により観察して評価した。
○:濾材に変形は生じていなかった。
×:濾材は濾過対象の進行方向に伸びてはいないものの、濾材の中央部において、頂点が連続してなる線の間隔が乱れて、濾材に変形が生じていた。
【0072】
試験条件と試験結果を(表1)にまとめた。
【0073】
【表1】


評価の結果から、本発明に係る実施例1の濾材(10)は、比較例1に比べ変形しにくい濾材(10)であることが判明した。
【0074】
更に、実施例1のフィルタユニット(20)は、比較例1のフィルタユニットよりも、初期の圧力損失が低く、質量法による粒子捕集率の平均値が高いことが判明した。この理由として、実施例1のフィルタユニット(20)は、保持部材(13)によって濾材(10)の変形が防がれているためである、と考えられた。
【0075】
以上から、本発明に係る濾材(10)は変形しにくいため、圧力損失が低く、粒子捕集率が高く、濾過性能に優れるフィルタユニット(20)を得られることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、効率よく変形を防ぐことのできる濾材を提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
10・・・濾材
11、11’・・・頂点が連続してなる線と平行をなす濾過部材の端部
12・・・濾過部材
13・・・保持部材
14・・・頂点が連続してなる線
20・・・フィルタユニット
21・・・外枠
22・・・上流側の開口面サポート
a・・・濾材の横方向
b・・・濾材の縦方向
c・・・濾材の厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂点が連続してなる線を有するように加工された濾過部材、および、該頂点が連続してなる線と平行をなす該濾過部材の両端部の間に設けられた保持部材を備えており、該保持部材が該濾過部材を貫通している、ことを特徴とする濾材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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