説明

濾過体

【課題】通気量の大きく、花粉等の微小の固体粒子を効率よく捕捉可能で、且つ安価な吸気マスクおよび室内清浄器用濾過体を提供する。
【解決手段】外層もしくは内層とコア層、或いは外層及び内層とコア層とから構成される複数層からなる濾材であって、該コア層に粘稠なる液体を含浸させることにより、乾燥した孔表面では捕捉できずに通過していた微粒子を、通気性を高く保ったままで効率よく吸着除去可能な濾過体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の固体不純物濾過により除去する濾過体の分野、特に微粒子の固体不純物用濾過体、更に詳しくは花粉除去用吸気マスク及び室内清浄器用濾過体に関する。
[背景技術]
【0002】
産業の発展に伴い、人類が生活する環境も著しく変化している。過去ほとんど問題になっていなかった種々の植物の花粉も諸々の要素との複合効果によるものと推定されてはいるが、現状では花粉症の原因として嫌われ、それらからの防護が声高に要求されている。杉を始めとし、数多くの植物の花粉が原因物質として指摘されてはいるが、それらを根本から根絶するということは全く不可能であり、また無意味な発想といえる。そのため現実に飛来して来る花粉が体内に入ることを防ぐための様々な試みがなされている。従来最もよく知られている方法の1つはマスクを掛け、花粉粒子を濾過により除去する方法である。しかし、通常のマスクでは微小な花粉粒子を捕捉することは非常に困難であった。そのためマスクの材料として極細繊維を使用した密な濾材もあるが通気量が減少するという欠点がある。一方、エレクトレット材料のように、マスク材料の表面処理により花粉粒子を吸着し易くする試みもなされているが、未だに捕捉能力は十分とはいえず、水分による性能低下という問題もあった。
[発明の開示]
[発明が解決しようとする課題]
【0003】
本発明では前記の問題点を考慮し、第1に通気性が十分に確保された、第2には微粒子の捕捉能力の優れた、更に第3には安価な材料からなる濾過体を提供することを目的とした。
[課題を解決するための手段]
【0004】
本発明では上記課題を解決するために,複数層から構成される濾材を使用し、その中の1つに粘稠なる液体を含浸させることにより、比較的大きな通気性を保ちながら、微粒子の捕捉能力に優れた濾過体を得ることができた。含浸させる液体は特に高価なものを必要とせず、全体として高性能な割には安価な濾過体を提供することが可能となった。
[発明の効果]
【0005】
本発明によれば、比較的粗い孔径の濾材を使用することにより十分な通気量を確保することができた。また複数の層からなる濾材の1つに粘稠な液体を含浸させることで、乾燥した孔表面では捕捉できず通過させていた微粒子を、濾材の孔表面に存在する粘稠液体の粘着力を利用してその表面に微粒子を吸着させることで、全体の捕捉量を増大させることが可能となった。粘稠液体を含浸させたコア層の片側、或いは両側にエレクトレット材料を配置することにより更に相乗的に捕捉量を増すことも可能である。枠体によりコア層と前後の濾材を隔離すれば液体の外層或いは内層への移行も抑制することができる。
吸気用マスクの場合、外層及び/或いは内層及び/或いはコア層及び/或いは枠体を立体的に成形し顔面への密着性を高め、また顔に向いた濾材面に空隙部を設けることにより、鼻或いは唇と濾材が接触する面積を減らし、接触する頻度も減少したことにより使用時の快感度が大幅に改善できた。
[発明を実施するための最良の形態]
【0006】
先ず吸気用マスクの場合について説明する。樹脂製の格子状ないし網状の枠体或いは熱融着性繊維を含む不織布からなる枠体は鼻及び唇の周辺の空間を確保するよう立体的に成形される。枠体は工程の簡便さ、コストを考慮すると熱融着性繊維を含む不織布の方が好ましい。この枠体の片側に、或いは2つの枠体の間に挟む形で粘稠液体を含浸させた濾材を配置し、場合により、枠体の内側に更にガーゼ質の層を設ける。更に必要に応じてこの上下に外層及び/或いは内層を配置してもよい。加工方法としては、立体的に成形した外層と内層を用意し、その間に同様に成形したコア層に粘稠液体を含浸させた層を挟む、或いはコア層の前後に網状体を介在させて挟む形態をとることもできる。コア層としてしは成形したものではない柔らかい材料を選ぶことも可能である。これら濾材としては熱融着性繊維を含む不織布を用いることが好ましい。更に詳しくはポリプロピレン、ポリエチレン或いはポリエステルからなる不織布で、目付が20〜200g/m、好ましくは70〜150g/mの濾材が好ましい。
これらの材料の組立ては縫製によってもよく、予め準備した穴を介して紐で結わえてもよく、或いは金属製や樹脂製の止め具を利用して固定することもできる。ホットメルトによる接着,或いは超音波融着機を用いた熱融着も利用できる。工程の簡便さ、短時間の操作が可能といった点で熱融着は好ましい方法である。顔面上へのこの濾過体の固定は通常知られているゴム紐を利用して耳に掛ける方法や、紐により耳或いは頭の後ろに括る方法を利用できる。
この濾過体の用途は吸気用マスクに限定されるものではなく、室内空調用のフィルターにも利用することが可能である。その場合は、必ずしも立体的な構造をとる必要は無く、平板状の枠体の間に粘稠液体を含浸させたコア層を設けるだけでもよい。
[実施例]
本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
【0007】
市販のガーゼを2枚重ねて、これにシリコーンオイルを0.3g/10cm2の割合で含浸させ、このシリコーンオイル含浸ガーゼを挟み、この上下に熱融着性繊維を含む不織布(透気度は1秒/300cc/10mmφ)を配置した。この平板状の濾材の上に市販ベビーパウダーを1g/10cm2となるように置き、手で5分間振動させて濾材の下に落下するベビーパウダーの量を調べた。その結果、濾材の下に落下したベビーパウダーは0.2gであり、捕捉効率は80%であった。尚、捕捉効率の算出は次式に従って算出している。
【0008】
捕捉効率%=濾材に捕捉された粒子の量(g)/濾材の上に置いた粒子の全量(g)×100
[実施例2]
【0009】
熱融着性繊維を含むポリプロピレン製不織布(厚み1mm、透気度0.9秒/300cc/10mmφ)を濾材とし、熱プレスにより加熱加圧し、直径50mmφの半球の成形体3個を得た。その中の1つにシリコーンオイルを0.6g含浸させ、上下にナイロン製ネットを置き、更にその上下を残りの半球2個により挟んだ。この3個の積層半球の凹面にベビーパウダーを1g入れ、手で5分間振動させて、この濾材の下に落下するベビーパウダーの量を調べた。その結果、濾材の下に落下したベビーパウダーの量は0.1gであった。捕捉効率は90%であった。
[比較例1]
【0010】
中間に挟むガーゼにシリコーンオイルを含浸させなかった以外は実施例1と同様の濾材を使用し、ベビーパウダーを用いた同様の試験を実施した。その結果,濾材を通過して下に落下したベビーパウダーの量は0.97gであった。捕捉効率は3%であった。
[比較例2]
【0011】
中間層の半球にシリコーンオイルを含浸させなかった以外は実施例2と同様の濾材を使用し、ベビーパウダーを用いた同様の試験を実施した。その結果,濾材を通過して下に落下したベビーパウダーの量は0.97gであった。捕捉効率は3%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層もしくは内層とコア層、或いは外層及び内層とコア層とから構成される2層或いは3層の濾材からなる濾過体であって、該コア層には液体が含浸されていることを特徴とする濾過体。
【請求項2】
コア層が枠体により外層及び内層と隔離されていることを特徴とする第1項記載の濾過体。
【請求項3】
外層及び内層の濾材がガーゼ、天然繊維及び/或いは合成繊維からなる不織布、或いは天然繊維及び/或いは合成繊維からなる網状体であり、コア層の濾材がガーゼ、パルプを主原料とする濾紙、或いは天然繊維及び/或いは合成繊維からなる不織布であり、枠体は合成樹脂の網状体或いは格子状成形体、或いは天然繊維及び/或いは合成繊維からなる不織布からなることを特徴とする第1項、第2項記載の濾過体。
【請求項4】
コア層の濾材に含浸する液体が潤滑油及び/或いは食用油及び/或いはシリコーンオイル及び/或いは反応性シリコーンゲル及び/或いはロジンであることを特徴とする第1〜3項記載の濾過体。
【請求項5】
外層及び/或いは内層の濾材がエレクトレット材料であることを特徴とする第1〜4項記載の濾過体。
【請求項6】
外層及び/或いは内層及び/或いはコア層及び/或いは枠体が熱融着性繊維を含む不織布であり、加熱下、加圧により立体的な成形が施されることを特徴とする第1〜5項記載の濾過体。
【請求項7】
吸気用マスクがその主たる用途であることを特徴とする第1〜6項記載の濾過体。
【請求項8】
濾過体の内面が凹型の形状を有し、鼻及び唇の濾材との接触部分が微小となるよう空隙部を有する構造であることを特徴とする第1〜7項記載の濾過体。
【請求項9】
室内清浄器がその主たる用途であることを特徴とする第1〜6項記載の濾過体。

【公開番号】特開2006−231306(P2006−231306A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80377(P2005−80377)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(502133099)
【Fターム(参考)】