説明

濾過板の支持構造

【課題】隣接する濾布どうしの接触を防止することができると共に、濾布の濾過面積を最大限確保することができる、濾過板の支持構造を提供する。
【解決手段】この濾過板の支持構造は、支持体32の外周を袋状に形成された濾布34で覆い、濾布34の内部を濾過室Rとした濾過板30を、濾過槽10内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持されており、そして、濾布34の上縁部及び下縁部に支持棒40,41を取付け、下縁部に取付けられた支持棒41の重さによって前記濾布34を張設支持すると共に、濾布34の両側には上下に配設されたガイド棒50,50を挿通させ、このガイド棒50の上下端部を前記支持棒40,41に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させた構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場等における汚泥の濃縮に用いる濾過板の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浄水場や下水処理場から排出される汚泥は、通常90%以上の水分を含有している。そこで、これらの汚泥を処理するにあたって、まず、脱水処理を行って、汚泥を濃縮して減量化を図り、そして焼却や埋め立て等を行っている。
【0003】
これら汚泥の脱水処理には、加圧や真空等による機械脱水が一般的である。しかしながら、これら機械脱水では、処理に要するエネルギーが大きい。そのため、サイフォンの原理を利用して、濾布等の濾過手段の表面に汚泥を吸引付着させ、汚泥中の水分(濾液)を吸引して濃縮し、機械脱水でのエネルギー負荷を軽減している。
【0004】
下記特許文献1には、サイフォンの原理を利用した濾濃縮装置として、濾過室のまわりに濾布網で囲んでなる濾過板(濾過盤)を濾過槽の汚泥室内に懸架し、汚染中の水分を濾過室内へ濾過させ、濾過室と連通して設けられた濾液排出管を通して濾液を排出するようにしたものにおいて、上記濾液排出管の排出口端或いは途中に空気侵入防止装置を設けたものが開示されている。また、より効率的に濾過処理をするためには、濾過板の濾過面積を大きく確保することが好ましい。そのため、濾過室内には、複数の濾過板を配置させることが多い。
【0005】
しかしながら、濾過槽内に複数の濾過板を配置させた場合、濾過板が汚泥に浸漬され、ナイロン等により形成された濾布に汚泥が付着したままの状態が長く続くと、濾布が膨潤し次第に弛んでしまって、隣接する濾布どうしが互いに接触して、濾過面積が減少してしまうことがあった。
【0006】
そのため、下記特許文献2には、隣接する濾布どうしの接触を防止するため、図8に示す濾過板の固定方法が開示されている。すなわち、濾布34を有する濾過板30と、その外周に配置され濾過槽内に形成された案内溝に嵌入される固定枠1とを有し、前記濾過板30と前記固定枠1との間に複数の弾性部材3を介在させ、該弾性部材3の両端部が濾過板30と固定枠1とにそれぞれ取り付けられている。また、弾性部材3は、濾過板30の上下左右の全周に亘って複数配置されている。そのため、汚泥が濾布34に長時間付着しても、弾性部材3によって濾布34が引っ張られることにより、濾布34の弛みが抑制され、濾布34どうしの接触が防止されるようになっている。
【特許文献1】特公昭62−58762号公報
【特許文献2】特公平3−23203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2の場合、濾過板30は、その周囲に配置された弾性部材3を介して、固定枠1に取り付けられているので、弾性部材3を配置するためのスペースが必要となり、この弾性部材3の分だけ、濾過板30の濾過面積が小さくなってしまうという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、隣接する濾布どうしの接触を防止することができると共に、濾布の濾過面積を最大限確保することができる、濾過板の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の濾過板の支持構造の第1は、支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設されたガイド棒を挿通させ、このガイド棒の上下端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させたことを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、濾過板の濾過室を通して吸引することにより、濾過槽に導入された汚泥中の水が濾布を通して濾過室側に濾過され、汚泥中から水分を濾過除去することができる。また、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって濾布が引張られると共に、濾布の両側に挿通されたガイド棒によって濾布の移動が阻止されることにより、濾過室内に圧縮空気等を吹き込んで濾布表面に付着堆積した汚泥を払い落とす際の濾布のばたつきや、濾布自体の伸びによる変形が発生してきた際の濾布の弛みが防止され、濾布が弛んで隣接する濾布どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。
【0011】
また、濾過板の周囲に支持のための空間を広く必要としないので、濾過面積を増大させることができる。更に、ガイド棒は上下の支持棒に対して所定距離だけ移動できるように配置されているので、空気による汚泥の払い落し工程において、濾布がある程度膨らむことを許容されるので、濾布に無理な引張り力がかかることを防止できると共に、濾布表面に付着堆積した汚泥が剥離されやすくすることができる。
【0012】
本発明の濾過板の支持構造の第2は、支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設された吸引管を挿通させ、該吸引管の吸引口を濾布の内側に配置させ、この吸引管の上端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させたことを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって濾布が引張られると共に、濾布の両側に挿通された吸引管によって濾布の移動が阻止されることにより、逆洗時における濾布のばたつきや、濾布自体の伸びによる変形が発生してきた際の濾布の弛みが防止され、濾布が弛んで隣接する濾布どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。また、濾過板の周囲に支持のための空間を広く必要としないので、濾過面積を増大させることができる。更に、吸引管を濾布の両側を支持するガイド棒として利用できると共に、吸引管の吸引口を複数箇所に設けることが可能となる。
【0014】
本発明の濾過板の支持構造の第3は、支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、下縁部に取付けられた支持棒の両端部に、隣接する濾過板の支持棒と当接した際に所定距離の間隔を形成する突出部を設けたことを特徴とする。
【0015】
上記発明によれば、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって濾布が引張られると共に、下縁部に取付けられた支持棒の突出部が当接し合って互いの移動が制止されるので、逆洗時における濾布のばたつきや、濾布自体の伸びによる変形が発生してきた際の濾布の弛みが防止される。また、下縁部に取付けられた支持棒の突出部により、濾過板どうしの間隔が所定距離以上に保持されるので、濾布が弛んでも、隣接する濾布どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。
【0016】
本発明の濾過板の支持構造の第4は、支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設されたガイド棒を挿通させ、このガイド棒の上下端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させ、更に、下縁部に取付けられた支持棒の両端部に、隣接する濾過板の支持棒と当接した際に所定距離の間隔を形成する突出部を設けたことを特徴とする。
【0017】
上記発明によれば、前記第1の発明の効果に加えて、前記第3の発明の効果ももたらされる。
【0018】
本発明の濾過板の支持構造の第5は、支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設された吸引管を挿通させ、該吸引管の吸引口を濾布の内側に配置させ、この吸引管の上端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させ、更に、下縁部に取付けられた支持棒の両端部に、隣接する濾過板の支持棒と当接した際に所定距離の間隔を形成する突出部を設けたことを特徴とする。
【0019】
上記発明によれば、前記第2の発明の効果に加えて、前記第3の発明の効果ももたらされる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって濾布が引張られると共に、濾布の両側に挿通されたガイド棒又は吸引管によって濾布の移動が阻止されることにより、逆洗時における濾布のばたつきや、濾布自体の伸びによる変形が発生してきた際の濾布の弛みが防止され、濾布が弛んで隣接する濾布どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。また、濾過板の周囲に支持のための空間を広く必要としないので、濾過面積を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の濾過板の支持構造の実施形態を説明する。図1,2には、本発明による濾過板の支持構造の第1実施形態が示されている。図1(a)は、同濾過板の支持構造を用いた汚泥濃縮処理装置の概略構成図で、図1(b)は、同処理装置の内部に、濾過板を取付ける際の取付け状態を示す説明図である。図2は、濾過板の支持構造が示されており、(a)はその概略構成を示す説明図、(b)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【0022】
図1を参照して、本発明の濾過板の支持構造が採用された汚泥濃縮処理装置(以下、「処理装置」という)の構造について説明する。この処理装置は、汚泥を脱水処理して濃縮するための濾過槽10と、該濾過槽10内に複数配置され、汚泥を濾過すると共にその脱水処理を行う濾過板30と、前記濾過槽10の外部に配置され、汚泥を脱水処理して得られる濾過水を貯留するための濾液貯留槽16とで主に構成されている。
【0023】
濾過槽10は、後述する濾過板30を複数並列して配置できるように、所定方向に延設された有底の箱状をなし、その下方は底壁に向かって先細りとなるように構成されている。この濾過槽10の下部側壁には、汚泥給配管12の一端が連通して接続され、その管路途中には汚泥給排弁V1を介して汚泥給排ポンプPが接続されている。それにより、汚泥給排ポンプPを稼動し汚泥給排弁V1を開弁させることで、濾過槽10内に汚泥(未濃縮汚泥)を送入し或いは引き抜き可能となっている。また、濾過槽10の底壁には、濃縮汚泥引き抜き管14の一端が連通して接続されている。この濃縮汚泥引き抜き管8の途中には汚泥排出弁V2が設けられ、この汚泥排出弁V2を開弁することで、濾過槽10の下部から濃縮汚泥を外部へ排出可能となっている。
【0024】
一方、処理装置の外部に配置される濾液貯留槽16には、その底壁に給水弁V3を備えた給水管18が連通して接続され、水道水が給水されるようになっている。同じく濾液貯留槽16の底壁には、管路途中に引き抜き弁V4が配置された濾液排出管20が連通して接続されており、濾液貯留槽16内に貯留された濾液を外部へ排出可能となっている。また、濾液貯留槽16の上部側壁には、濾過板30に連結される分配管25の一端が連通して接続されている。同濾液貯留槽16の上壁には、その管路途中に空気流入弁V5が配置された空気流入管22が連通して接続されており、他端に接続されたコンプレッサーCからの圧縮空気を分配管25に送風可能となっている。
【0025】
次に、上記濾過槽10内に複数配置される濾過板30について、図2を参照して説明する。この濾過板30は、支持体32と、その外周を覆う袋状の濾布34とを有している。前記支持体32は、ネットやメッシュ網等により長方形、または正方形状に形成され、所定の剛性を有する中空枠状をなしている。この支持体32の外周を覆う袋状の濾布34は、例えば、一対の矩形状の布体を重ね合わせて周縁部どうしを固着したり、一枚の布体を所定位置で折り曲げて、折り曲げ部両側を重ね合わせて周縁部どうしを固着したりして、袋状に形成される。
【0026】
そして、支持体32外周を濾布34で覆った状態で、その幅方向(上下方向に直交する方向)に所定間隔を設け、かつ、上下方向に沿って設けられた縫い目36を介して、支持体32に濾布34が縫い付けられている。それにより、上下に伸びると共に幅方向に複数配列された濾過室Rを、内部に画成された濾過板30が構成される。
【0027】
図2(a)の部分拡大図に示すように、この実施形態では、袋状の濾布34の幅方向両側部は、その上下周縁が縫着されておらず、上下に伸びる一対の縫い目36a,36aで布体が縫着されている。それにより、濾布34の両側に、上下が開口した筒状のガイド支持部37,37が形成されている。この筒状のガイド支持部37,37に、円柱状のガイド棒50,50がそれぞれ挿通されて支持されている。このガイド棒50は、その上下両端が後述する支持棒40,41の開口部43に挿入される長さとされている。なお、ガイド棒50は円柱状に限らず、角柱状等であってもよい。
【0028】
また、濾過板30の上方内部には、所定長さで伸びる配管27が、幅方向に沿って配置され、該配管27に複数設けられた図示しない通孔が、各濾過室Rにそれぞれ位置するようになっている。この配管27の所定位置からは、濾液貯留槽16の上部側壁に接続された分配管25が連結され、この分配管25は濾過板30の上縁部から突き出るようになっている。濾過板30の上縁部及び下縁部には、所定間隔を設けて環状リングよりなるハトメ38が装着されている。
【0029】
以上の構造をなす濾過板30は、その上方に配置された支持棒40に取付けられ、この支持棒40を介して濾過槽10内で支持される。また、濾過板30の下方には、前記支持棒40とほぼ同形状の支持棒41が配置されている。各支持棒40,41は、基本的に同じ形状となっており、前記濾過板30の幅とほぼ同じ長さで伸びる角柱状をなしている。
【0030】
上側の支持棒40は、図1に示すように、所定の固定手段42によって、濾過槽10の内壁に支持固定されるようになっている。この実施形態における固定手段42としては、図1(b)に示すように、濾過槽10の内面に所定間隔を設けて突出した一対のガイド板42a,42aと、前記上側の支持棒40の両側から伸びる延出部材42bの上面に取付けられ、前記ガイド板42a,42aの間隔よりも幅広とされた係合板42cとで構成されている。そして、上側の支持棒40をガイド板42a,42aの間に挿入することにより、ガイド板42a,42aに前記係合板42cが係合して、上側の支持棒40が支持されるようになっている。
【0031】
また、上側の支持棒40の下面には、半円状のフック47が複数固設されている。そしてシャックル等の接続部材49を、支持棒40のフック47及び濾過板30の上縁部のハトメ38にそれぞれ接続することにより、上側の支持棒40に濾過板30が吊り下げられて支持される。また、支持棒40の所定位置には、濾過板30の上縁部から突き出た分配管25が挿通される挿通孔45が設けられている。なお、接続部材49としては特に指定はなく、濾過板30を吊り下げた際の荷重に耐えられるものであれば良い。また、接続部材49は、濾布34の上下縁部と、各支持棒40,41との隙間を出来るだけ小さくすることが可能なものであることが好ましい。
【0032】
一方、下側の支持棒41は、その上面側に複数のフック47が固設され、これに濾過板30の下縁部のハトメ38に接続された接続部材49を接続することにより、濾過板30の下縁部に支持棒41が吊り下げ支持される。また、下側の支持棒41は、濾布34の平面部に大きなシワが出来ない程度に引っ張ることができる重さで形成されている。すなわち、濾過板30を濾過槽10内で吊り下げ支持すると、濾布34には浮力がかかるところ、この浮力に抗して濾布34を下方に引っ張ることができる重さとなっている。その結果、濾布34が下側の支持棒41の重さによって、シワや弛みが防止された状態で張設支持されるようになっている。
【0033】
そして、上下の支持棒40,41の左右両側部には、前記ガイド棒50の上下端部が挿入される開口部43がそれぞれ設けられている。この開口部43は、支持棒40,41の長さ方向に沿って所定幅で形成されている。それにより図3に示すように、各ガイド棒50が、支持棒40の長さ方向に沿って、所定距離だけ摺動可能な状態で保持されるようになっている。すなわち、濾過板30による汚泥中の水分を濾過除去した後、濾布34に付着した汚泥を払い落すために、濾過板30内に空気を送るようになっており、その結果、図3(b)に示すように、各濾過室Rが膨らみ、濾布34全体が大きく膨らむ。このとき、濾布34の両側部を支持するガイド棒50が固定されたままだと、濾布34の両側部に無理な引っ張り力が作用して好ましくない。そのため、濾布34が膨張したときに、両側部の内側への移動(ガイド棒50が互いに近接する方向への移動)を許容できるように構成されている。
【0034】
以上のようにして、濾過板30は、その下縁部に取り付けられた下側の支持棒41により張設支持された状態とされ、上側の支持棒40が固定手段42で濾過槽10内壁に固定されて、濾過槽10の内部に、その平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列されて支持されるようになっている。
【0035】
次に、この濾過板の支持構造を用いた、汚泥濃縮装置による汚泥の濃縮方法について説明する。
【0036】
まず、汚泥給排弁V1を開放し、汚泥給排ポンプPを稼動させて、脱水処理の対象物となる汚泥(未濃縮汚泥)を、濾過槽10内に配置された濾過板30の上方に至るまで供給する。そして、給水弁V3を開き、分配管25、濾液貯留槽16、濾液排出管20内に水を充満させる。濾液貯留槽16内の水位が所定の値に上昇した時点で給水弁V3を閉じて、濾液貯留槽16への給水を停止し、引き抜き弁V4を開く。
【0037】
このようにすると、サイフォン効果により、濾液排出管20の長さに応じた負圧が濾過板30内部の各濾過室Rに作用する。それにより、濾布34に接する未濃縮汚泥の含有水が、濾布34により濾過されつつ濾過室R内に吸引され、濾過板30上部に配置された配管27及びそれに接続された分配管25を通って濾液貯留槽16に供給される。こうして、未濃縮汚泥中から水分を濾過除去することができる。また、濾布34表面には、水分が除去された汚泥(濃縮汚泥)が堆積されていく。
【0038】
このとき、濾布34は、その下縁部に取付けられた支持棒41の重さによって引張られると共に、両側に挿通支持されたガイド棒50によって幅方向への移動が阻止されている。そのため、濾布34に汚泥が付着すること等によって、濾布34自体が伸びて変形が発生してきた際に、濾布34の弛みを防止することができる。また、濾布34の弛みが防止されることにより、隣接する濾布34どうしがくっつき合ってしまって、濾布34の濾過面積が減少することを確実に防止することができる。
【0039】
また、濾布34は下側の支持棒41の重みにより、張設支持されていると共に、その両側がガイド棒50により支持されているので、図8に示す従来の濾過板の固定方法のように、固定枠1及び弾性部材3でその周囲を支持する必要がない。そのため、濾過板30の周囲に支持のための空間を広く必要としないので、濾布34の濾過面積を増大させることができる。
【0040】
これについて詳述すると、図8に示す従来の固定方法においては、弾性部材3の長さが約50mm程度あった。これに対して、この濾過板の支持構造においては、この部分を濾布34の濾過面積として最大限活用できるようになっている。例えば、従来、濾布34が1000mm角であれば、上下左右に50mmずつ濾布34を拡張できるため、濾布を1100mm角とすることができる。また、濾布34による濾過面積は支持体32の表裏両面あるため、結局のところ、この支持構造における濾過面積F1は、1100×1100×2(mm)となる。一方、従来の場合の濾過面積F2は、1000×1000×2(mm)であるので、この支持構造では従来の1.21倍(F1/F2)の濾過面積が得られる。このように一つの濾過板30で大きな濾過面積を確保することができるので、全体としての濾過面積を増大させて、濾過処理の効率化が図れる。
【0041】
以上のような濾過処理を所定時間実施した後、汚泥給排弁V1を開き、汚泥(未濃縮汚泥)を濾過槽10の系外に引き抜き、引き抜き弁V4を閉じる。その後、空気流入弁V5を開いて、コンプレッサーCから圧縮空気を分配管25及び配管27を通して、濾過板30の各濾過室R内に送風し、それにより濾布34を膨らませて、濾布34表面に付着堆積した濃縮汚泥を剥離させることができる。
【0042】
このとき、上記のように、濾布34は支持棒41より張設されると共に、両側がガイド棒50により支持されて、その移動が阻止されているので、圧縮空気によって濾布34が内部から膨らまされても、濾布34がばたついてしまうことを防止することができる。
【0043】
更に、この空気による濾布34からの汚泥の剥離工程においては、図3(b)に示すように、空気によって各濾過室Rが膨らまされて、濾布34全体が大きく膨らむようになっているが、このとき、濾布34の両側を支持するガイド棒50は、上下の支持棒40,41の開口部に摺動可能に配置されていて、各支持棒40,41に対して所定距離だけ移動できるように配置されている。そのため、濾布34がある程度膨らむことを許容されるので(図3(b)参照)、濾布34に無理な引張り力がかかることを防止できると共に、濾布34表面に付着堆積した汚泥が剥離されやすくなる。
【0044】
そして、濾布34から剥離された濃縮汚泥は、汚泥排出弁V2を開放して、濾過槽10の系外に排出される。
【0045】
図4には、本発明による濾過板の支持構造の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0046】
この支持構造においては、濾布34の両側の支持形態が前記実施形態と異なっている。すなわち、濾布34の両側は、前記濾液貯留槽16に接続された吸引管52によって支持されるようになっている。この吸引管52は、上下方向に伸びて濾布34の両側に配置された垂直管52aと、該垂直管52aの下端部から直交して伸びる水平管52bとを有しており、水平管52b,52bの先端部どうしが互いに向きあうように配置されている。水平管52bには、図示しない吸引口が形成されており、該吸引口は濾過板30内に画成された各濾過室R内に位置するようになっている。
【0047】
そして、この実施形態によれば、前記実施形態と同様に、下側の支持棒41の重さによって濾布34が引張られると共に、濾布34の両側に挿通された吸引管52によって濾布34の移動が阻止され、汚泥の剥離工程時の濾布34のばたつきや、濾布34の弛みが防止されて、濾過面積の減少が防止される。また、濾過板30の周囲に支持のための空間を広く必要としないので、濾過面積を増大させることができる。更に、吸引管52を濾布34の両側を支持するガイド棒として利用できると共に、吸引管52の吸引口を複数箇所に設けることが可能となる。
【0048】
図5には、本発明による濾過板の支持構造の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0049】
この支持構造では、前記第1,第2実施形態のように、濾布34両側が支持されておらず、濾布34の下縁部に取り付けられる支持棒41の、長さ方向両端部の両側面から所定高さの突出部54が突設されている。この突出部54によって、図5(b)に示すように、隣接する濾過板30の支持棒41と当接した際に、所定距離の間隔Sが形成されるようになっている。
【0050】
そして、この実施形態によれば、支持棒41の重さによって濾布34が引張られると共に、図5(b)に示すように、隣接する支持棒41の突出部54,54どうしが当接し合って互いの移動が制止されるので、汚泥の剥離工程時の濾布34のばたつきや、濾布34弛みが防止される。また、支持棒41の突出部54により、濾過板30どうしの間隔が所定距離以上に保持されるので、濾布34が弛んでも、隣接する濾布34どうしがくっつき合って濾過面積が減少することを防止できる。
【0051】
なお、この実施形態では、支持棒41の長さ方向両端部の両側面から、突出部54,54がそれぞれ突出しているが、片面からのみ突出部54を突出させてもよく、隣り合う支持棒41,41との間に、所定距離の間隔Sが形成されればよい。
【0052】
図6には、本発明による濾過板の支持構造の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0053】
この実施形態は、前記第1実施形態の構成に加えて、前記第3実施形態の構成を付加させた形態となっている。すなわち、濾布34の両側がガイド棒50により挿通支持されている共に、その下縁部に取り付けられた支持棒41の両端部の両側面から、突出部54がそれぞれ突設されている。そして、この実施形態においては、前記第1実施形態及び第3実施形態の両者の効果を共に得ることができる。
【0054】
図7には、本発明による濾過板の支持構造の第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0055】
この実施形態は、前記第2実施形態の構成に加えて、前記第3実施形態の構成を付加させた形態となっている。すなわち、濾布34の両側が吸引管52により支持されている共に、その下縁部に取り付けられた支持棒41の両端部の両側面から、突出部54がそれぞれ突設されている。そして、この実施形態においては、前記第2実施形態及び第3実施形態の両者の効果を共に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は本発明の濾過板の支持構造を用いた、汚泥濃縮処理装置の概略構成図で、(b)は同処理装置の内部に、濾過板を取付ける際の取付け状態を示す説明図である。
【図2】同濾過板の支持構造の第1実施形態を示し、(a)は概略構成図、(b)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【図3】同濾過板の支持構造の、濾布に付着した汚泥を払い落す際の動作を示しており、(a)は第1動作図、(b)は第2動作図である。
【図4】本発明の濾過板の支持構造の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の濾過板の支持構造の第3実施形態を示し、(a)は概略構成図、(b)はその作用説明図である。
【図6】本発明の濾過板の支持構造の第4実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明の濾過板の支持構造の第5実施形態を示す概略構成図である。
【図8】従来の濾過板の支持構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 固定枠
3 弾性部材
10 濾過槽
12 汚泥給配管
14 濃縮汚泥引き抜き 管
16 濾液貯留槽
18 給水管
20 濾液排出管
22 空気流入管
25 分配管
26 配管
27 配管
30 濾過板
32 支持体
34 濾布
36,36a 縫い目
37 ガイド支持部
38 ハトメ
40,41 支持棒
42 固定手段
42a ガイド板
42b 延出部材
42c 係合板
43 開口部
45 挿通孔
47 フック
49 接続部材
50 ガイド棒
52 吸引管
52a 垂直管
52b 水平管
C コンプレッサー
P 汚泥給排ポンプ
R 濾過室
S 間隔
V1 汚泥給排弁
V2 汚泥排出弁
V3 給水弁
V4 引き抜き弁
V5 空気流入弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設されたガイド棒を挿通させ、このガイド棒の上下端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させたことを特徴とする濾過板の支持構造。
【請求項2】
支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設された吸引管を挿通させ、該吸引管の吸引口を濾布の内側に配置させ、この吸引管の上端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させたことを特徴とする濾過板の支持構造。
【請求項3】
支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、下縁部に取付けられた支持棒の両端部に、隣接する濾過板の支持棒と当接した際に所定距離の間隔を形成する突出部を設けたことを特徴とする濾過板の支持構造。
【請求項4】
支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設されたガイド棒を挿通させ、このガイド棒の上下端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させ、更に、下縁部に取付けられた支持棒の両端部に、隣接する濾過板の支持棒と当接した際に所定距離の間隔を形成する突出部を設けたことを特徴とする濾過板の支持構造。
【請求項5】
支持体の外周を袋状に形成された濾布で覆い、濾布の内部を濾過室とした濾過板を、濾過槽内に平面部を垂直方向に向けて所定間隔で複数並列させて支持する濾過板の支持構造において、
前記濾布の上縁部及び下縁部に支持棒を取付け、下縁部に取付けられた支持棒の重さによって前記濾布を張設支持すると共に、濾布の両側には上下に配設された吸引管を挿通させ、該吸引管の吸引口を濾布の内側に配置させ、この吸引管の上端部を前記支持棒に沿って所定距離だけ摺動可能に保持させ、更に、下縁部に取付けられた支持棒の両端部に、隣接する濾過板の支持棒と当接した際に所定距離の間隔を形成する突出部を設けたことを特徴とする濾過板の支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate