説明

濾過膜モジュール

【課題】濾過膜の各箇所に加えられる圧力差を最小化できるように構成した濾過膜モジュールを提供する。
【解決手段】表面にスリット状の水路が形成される平板形のフレーム10と、前記フレームの表面に付着される濾過膜21と、を含む濾過膜モジュール1であって、前記フレームには、前記濾過膜を通過して前記水路に流入した処理水を外部に供給するために負圧がかかる吸入集水口3が設けられ、前記水路は前記フレームの表面に凹入形成され、これら水路の間には凸部が形成され、前記濾過膜は、前記フレームの縁部側の固定部、及び前記水路の間に形成される前記凸部のいずれか一つに固定されて、前記負圧のかかる空間を分割するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過膜モジュールに係り、より詳細には、水処理に使われる平膜形の濾過膜をフレームと共にモジュール化した濾過膜モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理に使われる濾過膜は、微細な孔隙が形成されて、汚染物質は濾過し、清潔な水のみを通過させうるように構成される。このような濾過膜の中でも平膜は、平面状またはシート状に形成した膜のことをいう。
【0003】
濾過膜モジュールは、このような平膜形の濾過膜を、平板状のフレームに取り付けてモジュール化したものである。フレームは、濾過膜を支持し、濾過膜を通過した処理水を外部に供給できるように、流路が形成される。
【0004】
このような濾過膜モジュールを支持台に複数個搭載した後、汚染された水の入っている水槽に設置し、濾過膜を通過した処理水を濾過膜モジュールのフレームを通じて吸い込むことによって、汚染物質の除去された処理水を得る水処理装置が一般的に使用されてきた。
【0005】
上記のような従来技術による濾過膜モジュールが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
従来技術による濾過膜モジュールの支持体(フレーム、110)には、平膜130を通過して濾過された処理水が、集水口143を通って排出されうるように、内部に縦長の多数の流管111が形成される。
【0007】
水処理装置1には、浄化された水を集水口143から吸い込むように、吸入ポンプが設置され、この場合、流管111は縦長に形成されるので、集水口143に近づくほど真空が強くかけられることになる。そのため、平膜130の各箇所において圧力差が生じてしまう。
【0008】
そこで、当該従来技術では、ダンピングチャンバー140'aを設けることで上記圧力差を一部解消しようとしたが、一つの集水口143が担当する流管111の面積が大きく、なお、水圧分布によって加えられる圧力が異なることもあり、依然として圧力差が発生するという問題点があった。
【0009】
なお、支持体110に集水口143を2つ設ける方式を用いるのが一般的であり、この場合、各集水口143から最も離れた中央部の流管111に加えられる圧力が、状況によっては非常に低くなるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国登録実用新案第0241540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためのもので、その課題は、濾過膜の各箇所に加えられる圧力差を最小化できるように構成した濾過膜モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る濾過膜モジュールは、表面にスリット状の水路が形成される平板形のフレームと、前記フレームの表面に付着される濾過膜と、を含む濾過膜モジュールであって、前記フレームには、前記濾過膜を通過して前記水路に流入した処理水を外部に供給するために負圧がかかる吸入集水口が設けられ、前記水路は前記フレームの表面に凹入形成され、これら水路の間には凸部が形成され、前記濾過膜は、前記フレームの縁部側の固定部、及び前記水路の間に形成される前記凸部のいずれか一つに固定されて、前記負圧のかかる空間を分割するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記濾過膜が、前記フレームに融着して固定されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記濾過膜が前記フレームに融着固定される前記縁部側の前記固定部はお互いに一定間隔を置く内側固定部と外側固定部とに二重に形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記濾過膜が前記フレームに融着固定される前記凸部側の前記固定部はお互いに一定間隔を置く第1固定部と第2固定部とに二重に形成されることを特徴とする 。
【0015】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記フレームの表面における前記水路の一端に、前記水路に沿って流れてきた処理水を合流させるように、前記水路と垂直に配置されるとともに前記水路と連通する合流流路が形成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記濾過膜が固定される前記凸部の中の一つが前記縁部側まで延長されて前記合流流路が両分されることを特徴にする。
【0017】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記吸入集水口が、前記フレームの両側端に2つ設けられ、前記濾過膜が前記フレームに固定される部位により分割される、前記負圧のかかる空間がそれぞれ、前記吸入集水口に一つずつ対応するように配置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記水路が、前記フレームの両面にそれぞれ形成され、前記フレームに、前記両面における水路のそれぞれに流れる処理水を一箇所に集めてこれを吸入集水口に導く集水流路が形成されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る濾過膜モジュールは、前記水路は前記フレームの表面に沿って上下で延長されて、前記凸部も前記フレームの表面に沿って上下で延長されるように形成されて、前記濾過膜と前記縁部が固定される部位は四角形の帯に形成されて、前記四角形の帯形状の内部に前記水路及び前記凸部が位置しており、前記濾過膜と前記凸部の中の一つが固定される部位は、前記四角形の帯に形成される固定部の内部の空間を横切るように形成されて、前記四角形の帯に形成される固定部の内部の空間を両分することを特徴にする 。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係る濾過膜モジュールによれば、負圧のかかる空間が分割されるので、濾過膜及び水路に負圧がかかる部分における圧力差が最小化して圧力が均一になり、その結果、濾過膜モジュールの効率及び耐久性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による濾過膜モジュールを示す斜視図である。
【図2】本発明による濾過膜モジュールを示す分解斜視図である。
【図3】本発明による濾過膜モジュールのフレームを示す正面図である。
【図4】本発明による濾過膜モジュールのフレームを示す断面図で、図3におけるIV−IV断面である。
【図5】本発明による濾過膜モジュールのフレームを示す断面図で、図3におけるV−V線断面である。
【図6】本発明による濾過膜モジュールのフレームを示す正面図で、フレームと濾過膜とが結合する部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明に係る濾過膜モジュールの好適な実施例について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明による濾過膜モジュール1を示す斜視図である。本発明による濾過膜モジュール1は、図1に示すように、平板形態のフレーム10の表面に、平膜形の濾過膜21及び板状部材22が付着されてなる。
【0024】
紙面上、フレーム10の上部においては中央に取っ手5が設けられる。取っ手5は、設置者がフレーム10を手で持つ時に使用するもので、濾過膜モジュール1の水処理装置における支持台への搭載を容易にする役割を果たす。
【0025】
取っ手5の両側においてはフレーム10の外側部に吸入集水口3が一つずつ設けられている。吸入集水口3は、濾過膜21を通過した処理水を外部に排出させる通路である。
【0026】
図2は、本発明による濾過膜モジュール1におけるフレーム10、濾過膜21及び板状部材22を示す分解斜視図である。同図で、濾過膜21及び板状部材22は、フレーム10の両側外面に取り付けられ、濾過膜21とフレーム10との間に板状部材22が介在される。
【0027】
濾過膜21は、汚染された水中の汚染物質を濾過し、清潔な処理水のみをフレーム10の方に通過させる。この時、清潔な水は板状部材22を経由する。
【0028】
図3は、本発明による濾過膜モジュール1におけるフレーム10を示す正面図であり、図4及び図5は、本発明による濾過膜モジュール1におけるフレーム10を示す断面図である。
【0029】
図3乃至図5に示すように、本発明による濾過膜モジュール1におけるフレーム10の表面には、濾過膜21を通過した処理水が吸入集水口3まで流れるように導く流路17,14a,14b,19,4が形成される。
【0030】
フレーム10の最外周には縁部13が形成される。縁部13は、略内側が開放された四角形状を有する。この縁部13に濾過膜21及び板状部材22が取り付けられるが、その詳細は、図6を参照して後述する。
【0031】
縁部13の内側には複数本のスリット状の水路17が縦方向に配列される。水路17は、図4に示すように、縁部13と段差を有するようにフレーム10に凹設された部分である。これらの水路17は、濾過膜21の全部分に対応するようにフレーム10の内側部をほとんど占めている。
【0032】
一方、水路17が形成されずに相対的に突出した部位は凸部15とされ、水路17の形状と対応して凸部15も同様に、縦長に形成される。このように突出した凸部15のフレーム10裏面にも同様に、水路17が形成され、よって、フレーム10の両面に設置される濾過膜21を通じて同時に水処理を行うことができる。
【0033】
図3において、縦長に形成された複数本の水路17の最上部には、複数の水路17に沿って流れてきた処理水が合流する合流流路14a,14bが形成される。合流流路14a,14bは、横長に形成され、複数本の水路17と連通するように形成される。このような合流流路14a,14bも、水路17と同様に、フレーム10の裏面にも形成される。
【0034】
一方、並列に配置される複數の凸部15の中で中央における凸部15aは、図3において、上方の縁部13まで延長される。それによって凸部15a及び水路17と垂直に配置される合流流路14a,14bを左側の合流流路14aと右側の合流流路14bで両分する。
【0035】
合流流路14a,14bの両端において上方には集水流路19が延在する。水路17と合流流路14a,14bはフレーム10の両面にそれぞれ形成され、このようにフレーム10の両面からそれぞれ流れ込んだ処理水は、集水流路19で会うこととなる。集水流路19は、フレーム10の両面から流れ込んだ処理水が1地点で会えるように、フレーム10の表面に穴として形成される。集水流路19は、フレーム10の両側において吸入集水口3の下側に一つずつ形成される。
【0036】
図3及び図5に示すように、集水流路19でフレーム10の両面からの処理水が合流した後には、吸入集水口3から外部に排出されるように集水穴4に流れる。集水穴4は、吸入集水口3の内部に形成される流路で、集水流路19と連通して外部に処理水を導く。
【0037】
このような流路構造を有する平板形状のフレーム10は、両面に、図2に示すように、濾過膜21及び板状部材22が設置されるもので、この場合、濾過膜21及び板状部材22が固定される部位を、図6に示す。
【0038】
図6で、ドットで表示された部位、すなわち、縁部13及び中央における凸部15aの表面は、段差のない同一平面上に位置し、濾過膜21及び板状部材22がフレーム10に固定される部位である。固定方式としては、ホットメルトなどを用いた熱融着方式を採択することができる。
【0039】
縁部13の固定部13a,13bは二重に形成される。すなわち、濾過膜21がフレーム10に固定される固定部13a,13bは四角形の帯を形成する内側固定部13aとそれより大きくて内側固定部13aの外側に位する外側固定部13bとに分けられて二重に固定される。よって、内側固定部13aと外側固定部13bとの間13cは濾過膜21がフレームに熱融着せずに接触しており、内側固定部13aと外側固定部13bとの部位では濾過膜21とフレーム10とが熱融着によって固定される。
【0040】
このように、熱融着固定が二重になることで融着固定に必要な費用が節減されると共に、より堅固に固定する事ができる。この時、内側固定部13aの幅と、外側固定部13bの幅と、内側固定部13aと外側固定部13bとの間の空間13cの幅とは、3:3:5の割合を持つと良い。さらに具体的には、内側固定部13aの幅は3mm、外側固定部13bの幅は3mm、これらの間の空間13cの幅は5mmとすれば、さらに堅固に濾過膜21とフレーム10とを固定することができる。
【0041】
また、凸部15aの固定部15b,15cも一定間隔を置く二つの固定部15b,15cで成り立つ。すなわち、図6において左側に位する第1固定部15bと右側に位する第2固定部15cとの二つで構成される。第1固定部15bと第2固定部15cの幅も内側固定部13a、外側固定部13bの幅のように3mmで、第1固定部15bと第2固定部15cとの間の空間の幅も5mmである。 第1固定部15b及び第2固定部15cの両端はそれぞれ内側固定部13aの上下端まで延長される。
【0042】
濾過膜21の周縁部を縁部13に、濾過膜21の中央部を凸部15aに固定すると、吸入集水口3により発生する負圧が作用する空間が、図6に示すように、左右に両分される。
【0043】
したがって、図6において、左側の吸入集水口3は、両分された空間のうち、左側の空間を担当し、右側の吸入集水口3は、両分された空間のうち、右側の空間を担当するようになる。
【0044】
このように負圧の作用する空間を両分すると、それぞれ独立して圧力が作用するため、圧力差が生じうる空間そのものが半分とされ、結果として、空間が小さくなり、その分、圧力がばらつく可能性も減少することとなる。それによって、濾過膜21の上部が圧力によって変形されるとか折れることも防止することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る濾過膜モジュールによれば、負圧のかかる空間が分割されるので、濾過膜及び水路に負圧がかかる部分における圧力差が最小化して圧力が均一になり、その結果、濾過膜モジュールの効率及び耐久性を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0046】
10 フレーム
17 水路
15 凸部
13 縁部
21 濾過膜
3 吸入集水口
19 集水流路
4 集水穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にスリット状の水路が形成される平板形のフレームと、前記フレームの表面に付着される濾過膜と、を含む濾過膜モジュールであって、
前記フレームには、前記濾過膜を通過して前記水路に流入した処理水を外部に供給するために負圧がかかる吸入集水口が設けられ、
前記水路は前記フレームの表面に凹入形成され、これら水路の間には凸部が形成され、
前記濾過膜は、前記フレームの縁部側の固定部、及び前記水路の間に形成される前記凸部のいずれか一つに固定されて、前記負圧のかかる空間を分割するようにしたことを特徴とする濾過膜モジュール。
【請求項2】
前記濾過膜は、前記フレームに融着して固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過膜モジュール。
【請求項3】
前記濾過膜が前記フレームに融着固定される前記縁部側の前記固定部はお互いに一定間隔を置く内側固定部と外側固定部とに二重に形成されることを特徴とする請求項2に記載の濾過膜モジュール。
【請求項4】
前記濾過膜が前記フレームに融着固定される前記凸部側の固定部はお互いに一定間隔を置く第1固定部と第2固定部とに二重に形成されることを特徴とする請求項2に記載の濾過膜モジュール。
【請求項5】
前記フレームの表面における前記水路の一端には、前記水路に沿って流れてきた処理水を合流させるように、前記水路と垂直に配置されるとともに前記水路と連通する合流流路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の濾過膜モジュール。
【請求項6】
前記濾過膜が固定される前記凸部の中の一つが前記縁部側まで延長されて前記合流流路が両分されることを特徴にする請求項5に記載の濾過膜モジュール。
【請求項7】
前記吸入集水口は、前記フレームの両側端に2つが設けられ、
前記濾過膜が前記フレームに固定される部位により分割される、前記負圧のかかる空間はそれぞれ、前記吸入集水口に一つずつ対応するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の濾過膜モジュール。
【請求項8】
前記水路は、前記フレームの両面にそれぞれ形成され、
前記フレームには、
前記両面における水路のそれぞれに流れる処理水を一箇所に集めてこれを吸入集水口に導く集水流路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の濾過膜モジュール。
【請求項9】
前記水路は前記フレームの表面に沿って上下で延長されて、前記凸部も前記フレームの表面に沿って上下で延長されるように形成されて、
前記濾過膜と前記縁部が固定される部位は四角形の帯に形成されて、前記四角形の帯形状の内部に前記水路及び前記凸部が位置しており、
前記濾過膜と前記凸部の中の一つが固定される部位は、前記四角形の帯に形成される固定部の内部の空間を横切るように形成されて、前記四角形の帯に形成される固定部の内部の空間を両分することを特徴にする請求項1に記載の濾過膜モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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