説明

濾過装置および濾過方法

【課題】濾材表面における残存物の剥離が更に改良されるとともに,フィルターケーキの形成を可能な限り回避し,フィルターケーキの形成を大幅に低減することが可能な,新規かつ改良された濾過装置および濾過方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば,タンク2と,タンク2内に設けられる少なくとも1つの円盤型の濾材6と,タンク2にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられる懸濁液供給管3,懸濁液排出管4および濾過液排出管5とを備える濾過装置1であって,濾材6は回転可能であり,タンク2内に存在する懸濁液は,濾材6の回転により濾材6上で回転可能であり,懸濁液供給管3は,タンク内で回転している懸濁液の流動方向に対向するように,タンク内に懸濁液を追加供給することで,濾材の回転によって発生する懸濁液の回転運動を阻害することを特徴とする濾過装置および濾過方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,濾過装置および濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
専門文献では,補助装置において,もしくは補助装置を介して,任意の凝集状態で液体もしくは気体に溶解している物質,または,任意の形式をとる浮遊物もしくは懸濁物が溶媒から分離され,除去されるような補助装置が「濾過装置」もしくは「濾過システム」という上位概念で称されている。
【0003】
濾過されるべき液体は「懸濁液」と称され,フィルターを通過して洗浄された液体は「濾過液」と称される。フィルターに残存する固形物は「残存物」と呼ばれ,これは「フィルターケーキ」とも呼ばれる。
【0004】
濾過を行うために必要不可欠である適切な補助装置や半加工品,塗装,もしくは材料は,「濾材」と呼ばれる。樹脂,セラミックまたは貴金属など異なる多孔性と基礎構造を備えた,考えつく限りの材料の組み合わせからなる多様な実現形式が,濾材の実施形態として知られている。
【0005】
円盤型の濾材を備える濾過装置において,濾過効率の改善のためには,ある回転軸上に相前後して配置された濾材を,外付けのモーターによって回転させる方法が知られている。これにより,濾材表面において横流,いわゆるクロスフローが発生する。この横流により,濾材表面の目詰まりを防止することが可能である。
【0006】
しかしながら,実際にはこの対策では十分ではないことが明らかとなっている。上記の対策にもかかわらず,残存物が形成されるのである。更にこの装置は,濾材群の回転速度がより速い場合,濾過機能をほぼ停止させるような流動のない水柱が形成されるまでに不利であることが証明された。流動のない水柱の形成を回避するためには,機械式の流動阻害器を組み込むことが知られている。
【0007】
ここで言う流動阻害器とは機械式の構造,例えばカムのようなもので,濾過装置のタンクに配置されており,通常,タンク壁と濾材群の間だけでなく,各濾材ディスクの間にも達しているものを指す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,濾材群の回転によって引き起こされる回転流動は,この流動阻害器に絶えず阻害されるため,フィルターケーキの削剥を改良する一方で,流動のない懸濁液の水柱の発生を阻む渦流が発生する。機械式の流動阻害器の欠点は,フィルターケーキの削剥が防止されるだけでなく,マテリアルが堆積する影の領域がこの流動阻害器の周囲に形成されることである。
【0009】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,濾材表面における残存物の削剥が更に改良されるとともに,フィルターケーキの形成を可能な限り回避し,フィルターケーキの形成を大幅に低減することが可能な,新規かつ改良された濾過装置および濾過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,タンク(2,202,602)と,タンクに少なくとも1つ設けられる円盤型の濾材(6,206,506,606)と,タンクにそれぞれ少なくとも1つずつ設けられる懸濁液供給管(3,203,530,531,532,533,603),懸濁液排出管(4,504,604)および濾過液排出管(5,205,505,605)と,を備える濾過装置(1,200,500,600)であって,濾材は,回転可能であり,タンク内に存在する懸濁液は,濾材の回転により濾材上で回転可能であり(16,216,616),懸濁液供給管は,タンク内で回転している懸濁液の流動方向に対向するようにタンク内に懸濁液を追加供給する(18,218,618,619)ことで,濾材の回転によって発生する懸濁液の回転運動を阻害することを特徴とする濾過装置(1,200,500,600)が提供される。
【0011】
上記の濾材は,電気的に駆動する駆動手段によって回転してもよい。また,上記の濾材は,タンク内に供給される懸濁液(617)によって回転してもよい。
【0012】
上記の濾材上には,懸濁液によって濾材を回転させる回転構造が形成され,タンク内に供給される懸濁液が回転構造に触れることで,濾材が回転するようにしてもよい。
【0013】
タンクは,濾材と共に回転可能な駆動装置(650)を備え,タンク内に供給される懸濁液が駆動装置(650)を押動することで,濾材が回転するようにしてもよい。
【0014】
懸濁液は,濾材の駆動のために,阻害流動の方向に対向するようにタンク内へ供給されてもよい。
【0015】
懸濁液供給管(203)は,相隣接する複数の濾材間に位置するように,濾過装置(200)のタンク(202)内に突出形成されており,懸濁液が,懸濁液供給管(203)を介して,濾材の平面に対して所定の角度(β)を有するように,タンク(202)内へ供給されてもよい。
【0016】
懸濁液供給管は,懸濁液の流動方向(16,216,616)に対向して少なくとも2つの異なる流入方向で供給されるように複数設置され,この複数の懸濁液供給管は,懸濁液の流動方向に対する懸濁液の流入角度または流入方向の少なくともいずれか一方が異なるように設置されてもよい。
【0017】
濾材1つに対して複数の懸濁液供給管(530,531,532,533)が設けられ,上記複数の懸濁液供給管は,濾材(506)の平面(E)に対して異なる高さを有するように配置されてもよい。
【0018】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,濾過装置に供給される懸濁液を濾過する濾過方法であって,少なくとも1つの円盤型の濾材が回転することにより,懸濁液が回転運動し,懸濁液は,少なくとも1つの懸濁液供給管から,懸濁液の回転運動に対向して供給されることで,懸濁液の回転を局地的に打ち消し,懸濁液の回転運動の加速角度とは異なる加速角度で,かつ,回転している懸濁液の平面に対して所定の角度を有するように懸濁液を供給し,または,懸濁液の回転運動の加速角度とは異なる加速角度で懸濁液を供給し,または,回転している懸濁液の平面に対して所定の角度を有するように懸濁液を供給することを特徴とする濾過方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,濾材表面における残存物の削剥が更に改良されるとともに,フィルターケーキの形成を大幅に低減すること可能な,濾過装置および濾過方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
本発明の各実施形態に係る濾過装置は,少なくとも一つの円盤型の濾材が備えられた1つのタンクを有する。更にこのタンクには,少なくとも1つの懸濁液供給管と,少なくとも1つの懸濁液排出管と,少なくとも1つの濾過液排出管とが備えられている。各実施形態に係る濾過装置において,上記の濾材は回転可能であり,濾材の回転によって濾材上に流動を発生させることが可能である。
【0022】
上記濾材の回転により,タンク内に供給される懸濁液は,回転状態におかれる。懸濁液供給管を経由して,追加の懸濁液をタンクへ流入することが可能であり,その際に流入する懸濁液が,濾材の回転によって発生する懸濁液の回転運動を阻むことができるように,懸濁液供給管が配置されている。規則正しく回転する懸濁液の流動は,懸濁液供給管からの懸濁液の供給により,少なくとも局地的に打ち消され,懸濁液の流動は中断される。
【0023】
従って本発明によると,固定式で機械式の流動阻害器の代わりに,動的な流動阻害器が配置されることが可能であり,懸濁液が確実にタンクへ流入されることにより,流入する懸濁液が濾材の回転によって発生する回転流動を阻害し,その軌道から偏向させられる。この場合に,流入する懸濁液は,例えば回転流動の方向(流動方向)と異なる,ある流動角度を有する。従って,懸濁液は斜めに流入される。
【0024】
「懸濁液の斜めの流入」という概念は,懸濁液供給管の開口部からタンクの縦軸へ伸びる直線と異なる,ある角度で,懸濁液がタンクへ供給されることである。このような流入方法は,接線方向への流入もしくは放射状の流入であってもよい。流入する懸濁液の流動方向と回転している懸濁液の流動方向とは,互いに異なっていることが好ましい。また,この二つの流動方向(すなわち,流入する懸濁液の流動方向と回転している懸濁液の流動方向)は反対方向(すなわち,互いに逆向き)であってもよい。
【0025】
ω=角速度,α=角加速度,f=周波数,φ=回転角[ラジアン]の場合,等速円運動の数式ω=2πf[s−1]および等加速度円運動の数式α=(Δω)/(2φ)[s−1]によると,この関係は,フィルターディスクの回転により加速される懸濁液の等加速度円運動は,加速角度αとは異なる角度での懸濁液の流入により,その規則的な回転運動ωによって中断されると表現することが可能である。この場合,濾過液流入角度βは,好ましくは加速角度αと同一ではない。
【0026】
また,懸濁液の脈動的な流入によって,流動の阻害を発生させることも可能である。この脈動的な懸濁液の流入により,回転する懸濁液は引き続き,局地的に短時間加速される。
【0027】
驚くべきことに,本願発明者らは,回転性の流動とこれに対して斜めに衝突する懸濁液流動との組み合わせが,より改良された固体削剥を結果としてもたらすだけでなく,濾過装置を比較的少ない所要時間で組み立てることも可能にすることを発見した。この「動的な」流動阻害は,機械式の流動阻害に対して粒子の削剥除去の面においても,耐久性の面においても有利であることが証明された。勿論根本的には複数の濾材の回転によりクロスフローが発生させられる濾過装置も,クロスフローが懸濁液の確実な流入を通して引き起こされる濾過装置も知られているものの,本発明は単に当然の組み合わせと見なすことはできない。
【0028】
この周知の方法あるいは濾過装置のそれぞれが,フィルター表面の粒子の削剥除去を引き起こす。懸濁液の回転に加えて懸濁液の局地的な流入も,粒子の削剥除去を改良するということは,事前に予測されていなかったことである。逆に,複数の回転式濾材を備える濾過装置の開発は,これに必要なロータリージョイントが不利であると見なされていたため,行われていなかった。今となっては,本発明の各実施形態に示したような懸濁液の局地的な流入を行う場合,機械式の流動阻害器を必要としない可能性があることがわかり,これは既知の濾過装置の構造を大幅に簡素化するものである。機械式の流動阻害器と比較して,また流動阻害器を有していない従来の複数の回転式濾材と比較しても,更に懸濁液の流入によりクロスフローを発生させる従来の濾過装置と比較しても,この場合に粒子の削剥除去も改良されることは事前に予測されていなかったのである。
【0029】
本発明によると,濾材の回転はある駆動(駆動手段)によって,例えば電気駆動により行われる。また,この駆動手段の代替として,濾材がタンク内に流入する懸濁液により回転するようにすることも可能である。このためには,例えば濾材の縁に翼あるいは動翼のような構造をもつ部材を形成することが可能であり,流入する懸濁液がこの構造に接触し,翼あるいは動翼のような濾材を回転させるための回転構造を押動する。その結果,この濾材が回転状態におかれる。原則的には,上記のような構造が個々の濾材に備えられていることが可能であるため,個々の濾材が個別に回転状態におかれる。この際に,様々な流入速度が選択されるとすれば,粒子の削剥除去を改良する渦流が回転によって発生する。
【0030】
更に,濾材群が例えば回転軸によって回転することが可能なように据付けることにより,濾材群を,唯一の濾材もしくは流動によって駆動される複数の濾材一つ一つ,により回転させることも可能である。上記のような回転構造を濾材に直接据付ける代わりに,例えば羽根車のような個々の駆動装置で,濾材もしくは複数の濾材を回転させることのみを目的とした駆動装置を備えることも可能である。これら全ての仕様では,外付けのモーター駆動が全く欠落していることと,濾材が流入する懸濁液のみによって回転状態におかれることが共通している。駆動に使用される懸濁液供給管だけではなく,濾材の回転により引き起こされる流動を阻害することのみを目的とする懸濁液供給管も設置可能である。
【0031】
従って,本発明の基本原則は,回転する基本流動が通常は少なくとも1個の濾材の回転によって引き起こされること,および,この懸濁液の基本流動が懸濁液の流入により生ずる阻害流動によって阻害されることにより,濾材表面の粒子の削剥除去が改良されることにある。
【0032】
以下,本発明の各実施形態について,図面を参照しながら具体的に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は,本発明の第1の実施形態に係る濾過装置を説明するための説明図である。図1から明らかなように,本実施形態に係る濾過装置1は,タンク壁7に複数の懸濁液供給管3および懸濁液排出管4が配置されているタンク2を有する。図1から明らかなように,懸濁液供給管3の横断面(すなわち,懸濁液供給間3の径)は,タンク内室10に向かって狭まっているのに対し,懸濁液排出管4の横断面は,タンク内室10から外に向かって不変であるか,あるいは大きくなっている。タンク内室10には,円盤型の濾材6が複数配置されている。濾材6はタンク2の縦軸Lに沿って配置されており,この縦軸Lは,図1に示した実施形態では,濾過液排出管5と一致する。本実施形態の例においては,タンク2の縦軸Lと濾材群の縦軸とが一致している。
【0034】
懸濁液の供給は矢印13により,懸濁液の排出は矢印14により,濾過液の排出は矢印15により,それぞれ表示されている。タンク2は更に,タンク2を上方向に向かって限定するタンク蓋9およびタンク2を下方向に向かって限定するタンク底8を有する。図1の実施形態によると,タンク底8は漏斗状に形成されており,粒子排出口11(粒子排出方向は,矢印12の方向である。)が備え付けられている。
【0035】
濾材6は,矢印17によって示唆されるように,回転可能に配置されている。複数の濾材6からなる濾材群は,縦軸Lの周囲を回転する。濾材群は,例えば図示されていないモーターにより,駆動が行われる。濾過装置1の密閉は,例えばタンク蓋9のシール20により行うことが可能である。
【0036】
濾材6の回転により,タンク2内に存在する懸濁液は,流動状態におかれる。懸濁液は,縦軸Lの周囲を,濾材6の回転方向(順方向とする。)に沿って流動する。懸濁液のこの流動は,図1において矢印16により示される。流動により,濾材6のオーバーフローが発生する。また,懸濁液が懸濁液供給管3を経由してタンク内室10に流入することによって,上記の流動とは異なる第2の流動が発生する。この第2の流動は,矢印18により示されている。
【0037】
この第2の流動18は,図1に示した実施形態においては,流動16に対してほぼ逆方向へと向かっている。この例では,濾材6の回転により発生した流動は縦軸Lの周囲を時計回りに流動し,懸濁液の流入による流動は,縦軸Lの周囲を反時計回りに流動する。従って,この二つの流動は懸濁液の流入領域で互いに出会い,これにより流動内で渦流および流動阻害が生じる。流動内におけるこれらの阻害により,回転する流動16の粒子の剥離除去が更に改良され,流動のない懸濁液柱の形成が阻止される。
【0038】
各濾材6に対して,少なくとも1つの懸濁液供給管3を割り当てることが好ましい。単数もしくは複数の噴射口からなる注入装置,懸濁液供給管3の使用は,通常数ミリメートルの著しく低減された横断面に起因する,局地的な流速の増大をもたらす。懸濁液供給管3は,単数または複数の単独噴射口から構成されてもよく,あるいは,複数の噴射口からなるような構成を有することも可能である(例えば,旋回式もしくはほとんど固定式のカム構造)。噴射口は,点形でタンク2の様々な位置に配置されている。この噴射口は,必要であれば異なる圧力,直径および流入速度で構成することが可能である。この噴射口から懸濁液を供給することで,濾材6によって発生する回転流動に衝突する流動を生じさせ,その流動形式と流動速度に意図的に影響を与えることができる。
【0039】
懸濁液の濾過は,濾材6を経由して濾過液排出管5へ向かって行われる。更に濾過液排出管5は,図1に示すようにタンク蓋9を通過するだけでなく,タンク底8を通過することも可能である。図1の実施形態では,図示の便宜を図るために少数の濾材6とこれに付属する懸濁液供給管3と懸濁液排出管4のみ図示されている。しかしながら,希望する濾過性能および与えられている空間に依存して,ほぼ任意の数の濾材6を重ねて配置し,これに対応して懸濁液供給管および懸濁液排出管3,4を割り当てることが可能である。更に,複数の濾材群が,シャーシ内に配置されることも可能である。図1では,濾材6に対して,それぞれ1つの懸濁液供給管3と,この懸濁液供給管3に対応する1つの懸濁液排出管4だけが表示されている。濾材6が回転するため,回転流動の阻害を達成するのは十分である。しかしながら,複数の懸濁液供給管3が,タンク壁7の表面にほぼ均等に水平に配置されることも可能である。
【0040】
懸濁液は,流動を阻害するために,タンク内へ連続的に流入されてもよい。また,懸濁液は一時的に流入されてもよく,あるいは,特定の時間毎に例えば脈動的な流動という形式で流入されてもよい。また空気を混入することも可能である。
【0041】
(第2の実施形態)
図2は,本発明の第2の実施形態に係る濾過装置200を説明するための説明図である。濾過装置200は,タンク壁207と,タンク蓋209と,タンク底208とを有するタンク202を有する。タンク壁207には,懸濁液供給管203が配置されている(懸濁液の流入方向は,矢印213の方向である。)。懸濁液供給管203は,タンク内室210にまで,つまり,隣接する2つの濾材206の間まで達している。タンク内室210では,懸濁液供給管203が濾材206の表面上へ,噴射口223を介して懸濁液を供給する。シール220によってそもそも可能となっているのであるが,濾材206は濾過装置200の縦軸Lの周囲を,例えば図2の実施形態の例においては時計回りに(矢印217)回転し,矢印216(図1参照)によって示唆される通り,この濾材206の回転により,回転する流動が発生する。この際に流動は,濾材206の平面に対して平行に,層状にて回転する。懸濁液は,懸濁液供給管203を経由して,タンク内室210へと供給される。
【0042】
図2に示した本実施形態の例では,懸濁液は回転する流動(矢印216)と逆方向ではなく,濾材の平面に対して所定の角度βを有するように供給される。これによって,懸濁液が回転流動に流入されるようになっている(矢印218)。これにより流動の阻害が発生し,この流動の阻害が濾材表面の粒子の剥離除去を更に改良する。懸濁液供給管203ごとに,1つもしくは複数の噴射口223が設けられることも可能であり,図2の実施例では3個の噴射口が示されている。この場合,懸濁液供給管203は固定式もしくは旋回式あるいは回転式の仕様であることが可能である。懸濁液の排出は通常通り行われ,これは図に示されていない。濾過液の排出は,タンク202の軸を経由して行われることが可能であり,そこには濾過液排出管205(矢印215)が配置されていることが可能である。また,粒子排出口211(排出方向は,矢印212の方向である。)が備え付けられていてもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
図3は,本発明の第3の実施形態に係る濾過装置500を説明するための説明図(縦断面図)である。本実施形態では,少なくとも懸濁液供給管および懸濁液排水管が,それぞれ異なる高さで,すなわち各濾材506,506’の平面Eに対して異なる平面に,タンクの規模全体にわたって配置される。図3では図示の便宜上,懸濁液供給管530,531,532,533のみが図示されており,懸濁液排出管は図示されていない。しかしながら,懸濁液排出管は他の図に示すように周知の方法で配置されていることが可能なだけではなく,懸濁液供給管530〜533のように,高さをずらして配置されることも可能である。
【0044】
図3では,濾材506,506’,タンク壁507,懸濁液供給管523,懸濁液供給管530〜533,濾過液排出管505(矢印515)を有する濾過装置の中間部分に相当する部分のみが表示されている。タンク壁507には,タンクの規模全体にわたって,複数の懸濁液供給管530〜533が分散されて形成されている。懸濁液供給管530〜533は,異なる高さにではあるが,ほぼ互いに対応するように配置される。懸濁液供給管530および533は,ほぼ同じ高さ,つまり,二つの隣接する濾材506,506’のほぼ中間に位置しており,濾材506,506’の中間位置は,一点鎖線Zにより示されている。これに対して懸濁液供給管531は,この平面(Z)に対して上方に配置され,懸濁液供給管532は,この平面(Z)に対して下方に配置されている。
【0045】
懸濁液は,まず懸濁液供給管523へ供給され(矢印513),次いで,懸濁液供給管530〜533を経由して,タンク壁の内部へ供給される。供給された懸濁液は,濾材の回転により引き起こされる回転流動を阻害し,渦流化する。本図が断面表示であることからタンク内壁512への俯瞰となっているため,懸濁液供給管531および532の懸濁液供給管523は破線で表示されており,これらの懸濁液供給管523は,タンク壁507内もしくはタンク壁507の後部に位置する。同じことは懸濁液供給管531および532にも該当し,このうち供給口と比べて縮小された横断面を有する排水口のみが表示されており(懸濁液供給管530と533を参照),残りは同じく破線で表示されている。
【0046】
(第4の実施形態)
図4〜図6は,本発明の第4の実施形態に係る濾過装置600を説明するための説明図である。図4から明らかなように,濾過装置600は,複数の濾材606を有する。矢印615が示すように,濾過液は濾過液排出管605を経由して排水される。更に,個々の濾材606には,懸濁液供給管603および懸濁液排出管604が割り当てられている。タンク壁607に設けられた個々の懸濁液供給管603および懸濁液排出管604は,それぞれ懸濁液供給管623および懸濁液収集排出管624に通じており,懸濁液は,これらの管を経由して濾過装置600に供給される(矢印613)または排出される(矢印614)。濾材606は,濾過液排出管605の上部に固定されている。すなわち,濾過液排出管605が濾材606の略中心を通るように,固定配置されている。場合によっては,堆積する固体と粒子とは,タンク底608に設けられた粒子排出口611を経由して排出されることが可能である(矢印612)。
【0047】
回転する懸濁液の流動をタンク内室610において発生させるために,濾材群と結合している駆動装置である羽根車650(図5を参照。)が,流入する懸濁液(矢印617)により駆動される。これにより,濾材606が回転し,この濾材606の回転が,濾材群の縦軸周囲における懸濁液の回転をタンク602にもたらす。図4〜図6までの実施例では,駆動装置として羽根車650が設けられている。しかしながら,濾過装置において,上記のような駆動手段が複数設けられることも可能である。回転する懸濁液は,矢印616により示唆されている。羽根車650を駆動する懸濁液は,矢印617により示されている。
【0048】
また,回転する流動を阻害するために,懸濁液供給管603が設けられている(図6を参照。)。図6からも明らかなように,懸濁液供給管は,様々な方向を向くように設けられる。この懸濁液供給管により,懸濁液が,流動の阻害のために様々な方向に向かって流入される(矢印618,619)。懸濁液供給管603bおよび603dは,同様に配置されており,つまり左接線上に配置されているため,流入は反時計回り(すなわち,回転する流動とは逆向き)に起こる。これに対して,懸濁液供給管603aおよび603cは右接線上に配置されているため,流入は時計回り(すなわち,回転する流動と同じ向き)に起こる。これにより優れた渦流の発生が得られる。懸濁液排出管604も様々な方向を向くように配置されることが可能である。懸濁液排出管604aおよび604cは,右接線上に配置されているのに対し,懸濁液排出管604bおよび604dは,左接線上に配置されている。
【0049】
以上説明したように,本発明の各実施形態に係る濾過装置および濾過方法は,濾材表面における残存物の剥離が更に改良されるとともに,フィルターケーキの形成を可能な限り回避し,フィルターケーキの形成を大幅に低減することが可能である。その結果,故障およびメンテナンスの少ない濾過装置の稼働が可能となる。
【0050】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る濾過装置を説明するための説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る濾過装置を説明するための説明図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る濾過装置を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る濾過装置を説明するための縦断面図である。
【図5】図4をV−V切断線で切断した断面図である。
【図6】図4をVI−VI切断線で切断した断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1,200,500,600 濾過装置
2,202,602 タンク
3,203,530,531,532,533,603 懸濁液供給管
4,604 懸濁液排出管
5,205,505,605 濾過液排出管
6,206,506,606 濾材
7,207,507,607 タンク壁
8,208,608 タンク底
9,209 タンク蓋
10,210,610 タンク内室
11,211,611 粒子排出口
20,220 シール
223 噴射口
512 タンク内壁
523,623 懸濁液供給管
624 懸濁液収集排出管
650 羽根車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと,
前記タンク内に少なくとも1つ設けられる円盤型の濾材と,
前記タンクにそれぞれ少なくとも1つずつ設けられる懸濁液供給管,懸濁液排出管および濾過液排出管と,
を備える濾過装置であって,
前記濾材は,回転可能であり,
前記タンク内に存在する懸濁液は,前記濾材の回転により前記濾材上で回転可能であり,
前記懸濁液供給管は,前記タンク内で回転している前記懸濁液の流動方向に対向するように前記タンク内に前記懸濁液を追加供給することで,前記濾材の回転によって発生する前記懸濁液の回転運動を阻害することを特徴とする,濾過装置。
【請求項2】
前記濾材は,電気的に駆動する駆動手段によって回転することを特徴とする,請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾材は,前記タンク内に供給される前記懸濁液によって回転することを特徴とする,請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾材上には,前記懸濁液によって前記濾材を回転させる回転構造が形成され,
前記タンク内に供給される前記懸濁液が前記回転構造に触れることで,前記濾材が回転することを特徴とする,請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記タンクは,前記濾材と共に回転可能な駆動装置を備え,
前記タンク内に供給される前記懸濁液が前記駆動装置を押動することで,前記濾材が回転することを特徴とする,請求項3または4に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記懸濁液は,前記濾材の駆動のために,阻害流動の方向に対向して前記タンク内へ供給されることを特徴とする,請求項3〜5のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項7】
前記懸濁液供給管は,相隣接する前記複数の濾材間に位置するように前記タンク内に突出形成されており,
前記懸濁液は,前記懸濁液供給管を介して,前記濾材の平面に対して所定の角度を有するように前記タンク内へ供給されることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項8】
前記懸濁液供給管は,前記懸濁液の流動方向に対して少なくとも2つの異なる流入方向で前記懸濁液を供給するように複数配置され,
前記複数の懸濁液供給管は,前記懸濁液の流動方向に対する前記懸濁液の流入角度または流入方向の少なくともいずれか一方が異なることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項9】
前記濾材1つに対して複数の前記懸濁液供給管が設けられ,
前記複数の懸濁液供給管は,前記濾材の平面に対して異なる高さを有するように配置されることを特徴とする,請求項1〜8のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項10】
濾過装置に供給される懸濁液を濾過する濾過方法であって,
少なくとも1つの円盤型の濾材が回転することにより,前記懸濁液が回転運動し,
前記懸濁液は,少なくとも1つの懸濁液供給管から,前記懸濁液の回転運動に対向して供給されることで,前記懸濁液の回転を局地的に打ち消し,
前記懸濁液の回転運動の加速角度とは異なる加速角度で,かつ,回転している前記懸濁液の平面に対して所定の角度を有するように前記懸濁液を供給し,または,前記懸濁液の回転運動の加速角度とは異なる加速角度で前記懸濁液を供給し,または,回転している前記懸濁液の平面に対して所定の角度を有するように前記懸濁液を供給することを特徴とする,濾過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−305567(P2006−305567A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121225(P2006−121225)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(506141834)
【出願人】(506141823)
【Fターム(参考)】