説明

濾過装置

【課題】濾過材の取扱性に優れ、コンパクトな機器構成で濾過材の汚れ面の洗浄を可能とした濾過装置とこれに用いられる濾過用金属積層板を提供すること、及び、濾過材の組立・分解作業性の向上、濾過材の製造工程の簡略化、濾過材の再利用を図れるようにした濾過装置とこれに用いられる濾過用金属積層板を提供する。
【解決手段】外筒4内に筒状の濾過材5が収容され、濾過材5の内側に原水供給口部2Aが連通し、その濾過材5の外側に濾過液排出口部3Aが連通し、原水供給口部2Aから濾過材5の内側へ原水が圧送され、濾過材5の内側から外側へ原水を通過させることにより、濾過材5の内周面で原水中の固形物が捕獲保持されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学、食品、機械加工、電気機器製造などの工場廃水処理や排水リサイクル時の固形物除去工程、銭湯、プールなどの清澄濾過、プレコート濾過等、各種用途に使用される濾過装置とこれに用いられる濾過用金属積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
汚濁水等の原水を濾過する装置としては、例えば、特許文献1、2に記載された濾過装置が知られている。
【0003】
特許文献1の濾過装置は、原水を濾過する濾過材として、レーヨンまたはコットン等の素材を糸巻状にした筒状のフィルター(8a)を備え、フィルター(8a)の外周面側から内周面側へ向って原水を浸透させることによって濾過する構成になっている(同文献1の段落0004参照)。カッコ内の符号は特許文献1で用いられている符号である。
【0004】
特許文献2の濾過装置は、原水を濾過する濾過材として、印刷によって形成したスペーサ(4)付きの濾体用円板(1)を複数積層した構造の濾体(7)を備え(図1ないし図3参照)、その濾体(7)の外周面側から内周面側へ向って原水を浸透させることによって濾過する構成になっている(同文献の段落0051参照)。カッコ内の符号は特許文献2で用いられている符号である。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2の濾過装置によると、いずれも濾過材の外周面側から内周面側へ原水を浸透させて濾過する構成であるので、濾過材の外周面が原水中の固形物の付着によって汚れることは避けられず、濾過材を取り出すときに作業者が汚れ面に接触しやすく、濾過材の取扱性が悪いという問題点がある。また、この特許文献1、2の濾過装置によると、濾過材の外周面が汚れるから、これをシャワー洗浄する場合は、濾過材の外周面を囲む大きなリング状のシャワーノズルを用いるか、あるいは、濾過材の外周面に沿ってシャワーノズルを旋回させるための大掛かりな移動機構が必要となり、装置全体が大型になるという問題点もある。
【0006】
さらに、特許文献2の濾体(7)は、積層される濾体用円板(1)の枚数が多く、その多数の濾体用円板(1)のボルト挿通孔(6)にボルト(11)を挿通させて固定する構造であるため、組立・分解の作業性が悪い。しかも、その濾体用円板(1)は、上記のようなボルト挿通孔(6)を備えた円板(2)をプレス成形した後、その円板(2)の表面に印刷でスペーサ(4)を形成しなければならず、プレス成形工程と印刷工程という2つの工程が必要となり、工程数が多く、簡単に製造することはできない。
【0007】
また、特許文献1のフィルタのような糸巻状の濾過材は、糸を一本一本解きほぐして完全に分解洗浄することが殆ど不可能であり、糸と糸の間に捕獲保持された固形物を完全に取り除くことができないため、再利用ができず、産業廃棄物として処理されているのが実情である。
【0008】
その他、濾過材として微細な砂を用いる砂濾過装置や濾過材を焼結金属で形成した濾過装置なども知られている。しかしながら、焼結金属からなる濾過材は金属粒どうしが互いに焼結しているから、その分解洗浄は不可能であり、また微細な砂からなる濾過材もその微細な砂の洗浄が困難であり、これらの濾過材の内部には捕獲保持された固形物が残存するため、これらの濾過材も再利用ができず、産業廃棄物として埋立て処理されるのが実情である。
【0009】
【特許文献1】特開平9−75614号公報
【0010】
【特許文献2】特開2003−210916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、濾過材の取扱性に優れ、コンパクトな機器構成で濾過材の汚れ面の洗浄を可能とした濾過装置とこれに用いられる濾過用金属積層板を提供すること、及び、濾過材の組立・分解作業性の向上、濾過材の製造工程の簡略化、濾過材の再利用を図れるようにした濾過装置とこれに用いられる濾過用金属積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の濾過装置は、筒状の濾過材と、前記濾過材を収容する外筒と、前記濾過材の内側に連通する原水供給口部と、前記濾過材の外側に連通する濾過液排出口部とを備え、前記原水供給口部から前記濾過材の内側へ原水を圧送し、濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持することを特徴とする。
【0013】
また本発明の濾過装置は、環状の金属積層板を複数積み重ねた構造からなる筒状の濾過材と、前記金属積層板の片面に設けた複数の濾過溝と、前記濾過材を収容する外筒と、前記濾過材の内側に連通する原水供給口部と、前記濾過材の外側に連通する濾過液排出口部とを備え、前記原水供給口部から前記濾過材の内側へ原水を圧送し、前記複数の濾過溝を介して濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持することを特徴とする。
【0014】
前記本発明の濾過装置においては、前記各金属積層板の外周縁に切欠きが設けられ、前記各金属積層板をその積層方向に固定するための締結ボルトに、前記切欠きを当接させる構成を採用することもできる。
【0015】
前記本発明の濾過装置において、前記濾過溝は、前記金属積層板の内側から外側に向って下り勾配の傾斜を有する構成を採用してもよい。
【0016】
前記本発明の濾過装置は、例えば、前記濾過材を洗浄する洗浄手段を備え、前記洗浄手段は、洗浄液を噴出するシャワーノズルと、前記濾過材の内側で前記シャワーノズルを移動させる移動手段と、前記シャワーノズルに洗浄液を供給する供給パイプとからなり、前記シャワーノズルからの噴射洗浄液によって前記濾過材の内周面をシャワー洗浄するように構成してもよい。
【0017】
前記本発明の濾過装置は、例えば、前記濾過材を洗浄する洗浄手段を備え、前記洗浄手段は、前記濾過材の一端部から内側に向って超音波を出力し、濾過材の内周面を超音波洗浄するように構成することもできる。
【0018】
本発明の濾過用金属積層板は、筒状の濾過材を構成する環状の金属積層板であって、前記金属積層板は、複数枚積み重ねて前記濾過材を構成するとともに、その片面のみに濾過溝が設けられ、該濾過溝を介して濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、その濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持させるようにすることを特徴とする。
【0019】
前記本発明の濾過用金属積層板は、前記各金属積層板の外周縁に切欠きが設けられ、前記各金属積層板をその積層方向に固定するための締結ボルトに、前記切欠きを当接させる構成を採用することもできる。
【0020】
前記本発明の濾過用金属積層板において、前記濾過溝は、前記金属積層板の内側から外側に向って下り勾配の傾斜を有するように構成してもよい。
【0021】
前記本発明の濾過用金属積層板において、前記濾過溝は、鍛造により形成された深さ10μmの溝からなるものとしてもよい。この点については前記本発明の濾過装置も同様である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、前記の通り、濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持する構成を採用したため、濾過材の内周面が汚れ面となるから、作業者が汚れ面に接触し難く、濾過材の取扱性に優れる。また、洗浄すべき汚れ面は濾過材の内周面であるから、例えば濾過材の内側で移動できる小型のシャワーノズルを用いるだけで汚れ面の洗浄が可能であり、コンパクトな機器構成で濾過材の汚れ面を洗浄できるという作用効果が得られる。
【0023】
特に、本発明のうち、濾過材の具体的構成として、片面に濾過溝を形成した環状の金属積層板を用いる構成のものにあっては、鍛造・プレスだけで濾過溝付きの金属積層板を製造できるから、濾過材の製造工程の簡略化を図れる。
【0024】
また、かかる濾過材の具体的構成として、金属積層板の外周縁に切欠きを設けたものにあっては、切欠きを締結ボルトに当接させるだけで各積層板が径方向に位置決めされ、その締結ボルトによって各積層板を積層方向に固定できるから、濾過材の組立作業性に優れる。また、その締結ボルトを緩めれば、各金属積層板の切欠きと締結ボルトとの当接も緩くなり、各金属積層板が一枚ずつの単体に分離可能となるから、濾過材の分解作業性にも優れる。さらに、この濾過材はその最小単位である一枚の金属積層板まで完全に分解できるから、濾過材中に含まれている固形物のすべてを完全分解洗浄で除去することが可能であり、濾過材の再利用を図るのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態である濾過装置の正面部分断面図、図2は図1の濾過装置の拡大図、図3は図1の濾過装置の濾過材の分解図、図4は図1の濾過装置における洗浄動作の説明図、図5は図1の濾過装置の濾過材を構成する金属積層板の説明図である。
【0027】
本実施形態の濾過装置1は、図1、図2のように原水供給口部2A、2Bと濾過液排出口部3A、3Bを有する円筒状の外筒4内に円筒状の濾過材5を縦置きに収容した構造になっている。尚、図1、図2では濾過材5を1台しか示していないが、外筒4内にはその中心軸線周りに等間隔で3台の濾過材5が収容されている。濾過材の収容台数は必要に応じて適宜変更することができ、1台でもよく、3台以上であってもよい。
【0028】
原水供給口部2A、2Bは、外筒4の上下方向2箇所に設けられ、濾過材5の内側に連通し、図示しないポンプから圧送された原水(被濾過液)を濾過材5の内側へ圧送供給する。また、濾過液排出口部3A、3Bも、外筒4の上下方向2箇所に設けられ、濾過材5の外側に連通し、濾過材5の内側から外側へ浸透流出した濾過液、すなわち濾過された原水を外部へ排出する。
【0029】
図2に示したように、前記円筒状の濾過材5は、図5(a)に示す環状の金属積層板6を図3(a)(b)のように下部固定パーツ7上に複数積み重ねた構造である。下部固定パーツ7のネジ孔7Aに締結ボルト8の下端ネジ部8Aが取り付けられ、同締結ボルト8の上端ネジ部8Bが最上段の金属積層板6上に置かれた上部固定パーツ9を貫通するように設けられている。さらに、この貫通した上端ネジ部8Bにナット10を取り付け所定の力で締め付けることによって、前記のように積層された複数の金属積層板6はその積層方向に締め付け固定されるようになっている。
【0030】
また、図5(a)のように金属積層板6の外周縁には切欠き6Bが設けられており、この切欠き6Bが図5(c)のように金属積層板6の積層方向に連なって一の係合溝11を形成し、この係合溝11に前記締結ボルト8の外周面が当接することによって、いずれの金属積層板6も同じように径方向に位置決めされるようになっている。
【0031】
図3(a)(b)に示したように、前記下部固定パーツ7は、濾過材5の内径と略同じ内径の短パイプ7Bの一端外周面にフランジ7Cを形成し、そのフランジ面に前記締結ボルト8の下端ネジ部8Aを取り付けるネジ孔7Aを形成した構造であって、かつ、外筒5の内側下部に設けられている仕切り板12の装着孔にシール部材13を介して着脱自在に取り付けられる(図2参照)。
【0032】
また、この下部固定パーツ7は、その短パイプ7Bの内側が濾過材5の内側と外筒4下部の原水供給口部2Aとに連通し、原水供給口部2Aから圧送されてきた原水を濾過材5の内側へ導く手段としての機能も有する。
【0033】
前記上部固定パーツ9は、濾過材5の内径より少し小径の短パイプ9Bの一端外周面にフランジ9Cを形成し、そのフランジ面に前記締結ボルト8の上端ネジ部8Bを挿通させるための貫通孔9Aを形成した構造であって、外筒4の上端部に取り付けられたフランジ部品14の装着孔にシール部材15を介して着脱自在に取り付けられる。
【0034】
また、この上部固定パーツ9は、その短パイプ9Bの内側が濾過材5の内側と外筒4上部の原水供給口部2Bとに連通し、原水供給口部2Bから圧送されてきた原水を濾過材5の内側へ導く手段としての機能も有する。
【0035】
図1に示したように、前記外筒4下部の原水供給口部2Aは外筒4に一体形成されているが、外筒4上部の原水供給口部2Bは外筒4の上端部側に着脱自在に別途追加できるモジュールとして構成されている。
【0036】
このモジュール(以下「原水供給口追加モジュール16」という)は、両端外周面にフランジ16A、16Bを形成した短パイプ16Cに原水供給口部2Aを横向きに突出形成し、その下端側フランジ16Bが外筒4上端部の前記フランジ部品14に着脱自在に取り付けられる構造になっている。
【0037】
図5(a)のように前記各金属積層板6はその片面のみに複数の濾過溝6Bが放射状に設けられ、その反対面はフラット面になっており、いずれの濾過溝6Bも図5(b)のように金属積層板6の内側から外側に向って下り勾配の傾斜を有している。
【0038】
本実施形態では、固形物の付着による濾過溝6Bの閉塞を防止し、濾過溝6Bの吐けをよくする観点等から、前記のように傾斜した濾過溝6Aを採用したが、濾過溝6Aは傾斜のないフラットな溝でもよい。
【0039】
本実施形態の濾過装置1では、一つの目安として10μ以上の固形物を濾過材の内側面に捕獲保持するために、濾過溝6Aの深さは金属積層板6の内側位置で約10μm、外側位置で約20μmとなるように構成したが、その深さも必要に応じて適宜変更することができる。以上のような深さの濾過溝6Aは鍛造により金属積層板6の片面のみに形成できることが本出願人によって実証されている。
【0040】
また、本実施形態の濾過装置1は濾過材5を洗浄する手段を備えており、この洗浄手段は外筒4の上端部側に着脱自在に別途追加できる洗浄モジュール17として構成されている。
【0041】
洗浄モジュール17は、洗浄液を噴出するシャワーノズル17Aと、シャワーノズル17Aを濾過の内側で往復移動させる移動手段としてのシリンダ装置17Bと、シャワーノズル17Aに洗浄液を供給する供給パイプ17Cとにより構成されている。
【0042】
前記シリンダ装置17Bによって昇降する昇降ロッド17Dの先端部に、フレーム17Eを介して供給パイプ17Cが取り付けられ、この供給パイプ17Cの先端部に、シャワーノズル17Aが装着されている。そして、昇降ロッド17Dの昇降動作によって当該シャワーノズル17Aは、図1のように濾過材5の上端から下端までの間を往復移動し、シャワーノズル17Aから噴射される洗浄液によって濾過材5の内周面がシャワー洗浄される。
【0043】
次に、上記の如く構成された本実施形態の濾過装置の動作について、図1、2、4を基に説明する。
【0044】
尚、以下の動作説明においては、図1のように、外筒4上部の原水供給口部2Bと濾過液排出口部3Bはそれぞれの蓋部材(図示省略)で閉鎖する。また、外筒4下部の原水供給口部2Aと濾過液排出口部3Aとにそれぞれバルブ19A、19Bを取り付ける。
【0045】
そして、バルブ19Aの開放によって外筒4下部の原水供給口部2Aから外筒4内へ原水を圧送供給し、バルブ19Bの開放によって外筒4下部の濾過液排出口3Aから外部へ濾過液が排出されるものとする。また、原水の濾過が行われるとき、シャワーノズル17Aは図1の2点破線で示すように濾過材5の内側から上方へ逃げて待機しているようにする。
【0046】
本濾過装置1の場合、図2のように原水供給口部2Aから外筒4内に圧送供給された原水は、その供給圧力によって下部固定パーツ7の短パイプ7B内を通って濾過材5の内側へ流入し、各金属積層板6の濾過溝6Bを通って濾過材5の外側へ浸透流出する。
【0047】
このとき、原水中の固形物で10μm以上のものは、濾過溝6Aを通過できず、原水の供給圧力によって濾過材5の内側に捕獲保持され、固形物のケーキ50(図4参照)を形成する。ケーキ形成後は、原水が当該ケーキ50中を通過することにより濾過される、いわゆるケーキ濾過作用により、10μmより微細なサブμmの固形物も濾過できる効果が生じる。
【0048】
濾過材5の内側に蓄積された固形物のケーキ厚が所定値以上になると、装置の濾過能力が低下するため、濾過材5の内側をシャワー洗浄する。
【0049】
シャワー洗浄時は、原水供給口部2Aと濾過液排出口部3Bのバルブ19A、19Bを双方とも閉じ、シリンダ装置17Bによってシャワーノズル17Aを図4のように濾過材5の上端部から下端部に向って下降させながらシャワーノズル17Aから洗浄液を噴出させ、濾過材5の内側に固着した固形物を洗浄液のシャワーで洗い流す。
【0050】
このとき、原水の供給圧力がなくなるので、濾過材5の内側から自然に脱落する固形物もあり、自然脱落した固形物や洗浄液で洗い流された固形物は、濾過材5の下端部から下部固定パーツ7の短パイプ7B内を通って外筒4底部の洗浄液排出口部20へ至り、バルブ20の開放によって洗浄液排出口部21から外部へ排出される。
【0051】
尚、前記のように蓋部材で閉鎖した外筒4上部の原水供給口部2Bと濾過液排出口部3Bを使用する場合も前記と同様の動作によって原水の濾過が行われるため、その詳細説明は省略する。どの原水供給口部と濾過液排出口部を使用するかの選択は必要に応じてユーザが決定すればよい。
【0052】
本実施形態の濾過装置1を構成する濾過材5を分解する場合は、はじめに、図1に示す原水供給口追加モジュール16と洗浄モジュール17を取り外し(図2参照)、外筒4の上端部に取り付けられているフランジ部品14を取り外し、外筒4の上端部側から濾過材5を引き抜き、図3(a)のように外部に取り出す。
【0053】
そして、ナット10を外して締結ボルト8を緩めれば、金属積層板6の締め付け固定力がなくなり、締結ボルト8と各金属積層板6の切欠き6Bとの当接も緩くなるため、下部固定パーツ7上に積み上げられている複数の金属積層板6はそれぞれが一枚ずつの単体に分離可能となる。
【0054】
濾過材5を組立てる場合は、初めに、図3(b)のように分解されている締結ボルト8を下部固定パーツ7のネジ孔7Aに差し込み、次に図5(c)のように金属積層板6の切欠き6Bを締結ボルト8の外周面に当接させながら金属積層板6を下部固定パーツ7上に積み上げて行く。
【0055】
そして最後に、図3(a)のように、最上段の金属積層板6上に上部固定パーツ9を載せ、その貫通孔9Aに締結ボルト8の上端ネジ部8Bを挿通させた後、この上端ネジ部8Bにナット10を締め付ければ、各金属積層板6が積層方向に締め付け固定され、濾過材5の組立が完了する。
【0056】
前記実施形態の濾過装置1では、金属積層板6の外周縁の2箇所に切欠き6Bを形成したが(図3(a)参照)、切欠き6Bの個数は必要に応じて適宜変更することができる。また図3のように、2箇所に切欠き6Bを形成した場合には積層時に2つの係合溝11が形成され、それぞれの係合溝11に締結ボルト8が1本ずつ当接し、2本の締結ボルト8で金属積層板6の径方向が位置決めされるようになる。
【0057】
前記実施形態の濾過装置1では、濾過材5の内周面をシャワー洗浄する構成を採用したが、これに代わる他の洗浄手段として、図1の洗浄モジュール17を超音波装置とし、濾過材5の一端部から内側に向って超音波を出力することにより、濾過材5の内周面を超音波洗浄するように構成することもできる。
【0058】
以上説明した実施形態の濾過装置1によると、濾過材5の内側から外側へ原水を通過させ、濾過材5の内周面で原水中の固形物を捕獲保持する構成を採用したため、濾過材5の内周面が汚れ面となるから、作業者が汚れ面に接触し難く、濾過材の取扱性に優れる。また、洗浄すべき汚れ面は濾過材5の内周面であるから、濾過材5の内側で移動できる小型のシャワーノズル17Aを用いるだけで汚れ面の洗浄が可能であり、コンパクトな機器構成で濾過材5の汚れ面の洗浄できる。
【0059】
さらに、本実施形態の濾過材5は、片面に濾過溝6Aを形成した環状の金属積層板6を用いる構成を採用しており、この種の濾過溝6A付きの金属積層板6は鍛造・プレスだけで製造できるから、濾過材の製造工程の簡略化を図れる。
【0060】
本実施形態の濾過材5にあっては、金属積層板6の外周縁に切欠き6Bを設けた構成を採用したため、その切欠き6Bを締結ボルト8に当接させるだけで各金属積層板6が径方向に位置決めされ、締結ボルト8によって各金属積層板6を積層方向に固定できるから、濾過材の組立作業性にも優れる。
【0061】
また、その締結ボルト8を緩めれば、各金属積層板6の切欠き6Bと締結ボルト8との当接も緩くなり、各金属積層板6が一枚ずつの単体に分離可能となるから、濾過材の分解作業性にも優れる。
【0062】
さらに、この濾過材5はその最小単位である一枚の金属積層板6まで完全に分解できるから、濾過材5中に含まれている固形物のすべてを完全分解洗浄によって除去することが可能であり、濾過材の再利用を図るのに好適であって、濾過材を産業廃棄物として処理する必要がないという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態である濾過装置の正面部分断面図。
【図2】図1の濾過装置の拡大図。
【図3】図3は図1の濾過装置の濾過材の説明図であり、(a)は濾過装置から濾過材を外部に取り出した状態の正面断面図、(b)は濾過材を分解した状態の正面図である。
【図4】図1の濾過装置における洗浄動作の説明図であり、図中、中心線の右側は洗浄開始時、左側は洗浄途中の状態を示したものである。
【図5】図5は図1の濾過装置の濾過材を構成する金属積層板の説明図であり、(a)は金属金属積層板の平面図、(b)金属積層板を積み重ねた状態でのb−b線断面図、(c)は金属金属積層板を積み重ねた状態でのc−c線断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 濾過装置
2A、2B 原水供給口部
3A、3B 濾過液排出口部
4 外筒
5 濾過材
6 金属積層板
6A 濾過溝
6B 切欠き
7 下部固定パーツ
7A ネジ孔
7B 短パイプ
7C フランジ
8 締結ボルト
8A 締結ボルトの下端ネジ部
8B 締結ボルトの上端ネジ部
9 上部固定パーツ
9A 貫通孔
9B 短パイプ
9C フランジ
10 ナット
11 係合溝
12 仕切り板
13 シール部材
14 フランジ部品
15 シール部材
16 原水供給口追加モジュール
16A、16B フランジ
16C 短パイプ
17 洗浄モジュール
17A シャワーノズル
17B シリンダ装置
17C 供給パイプ
17D 昇降ロッド
17E フレーム
19A、19B バルブ
20 バルブ
21 洗浄液排出口部
50 ケーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の濾過材と、
前記濾過材を収容する外筒と、
前記濾過材の内側に連通する原水供給口部と、
前記濾過材の外側に連通する濾過液排出口部とを備え、
前記原水供給口部から前記濾過材の内側へ原水を圧送し、濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持すること
を特徴とする濾過装置。
【請求項2】
環状の金属積層板を複数積み重ねた構造からなる筒状の濾過材と、
前記金属積層板の片面に設けた複数の濾過溝と、
前記濾過材を収容する外筒と、
前記濾過材の内側に連通する原水供給口部と、
前記濾過材の外側に連通する濾過液排出口部とを備え、
前記原水供給口部から前記濾過材の内側へ原水を圧送し、前記複数の濾過溝を介して濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持すること
を特徴とする濾過装置。
【請求項3】
前記各金属積層板の外周縁に切欠きが設けられ、
前記各金属積層板をその積層方向に固定するための締結ボルトに、前記切欠きを当接させること
を特徴とする請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾過溝は、前記金属積層板の内側から外側に向って下り勾配の傾斜を有することを特徴とする請求項2に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記濾過装置は、前記濾過材を洗浄する洗浄手段を備え、
前記洗浄手段は、
洗浄液を噴出するシャワーノズルと、
前記濾過材の内側で前記シャワーノズルを移動させる移動手段と、
前記シャワーノズルに洗浄液を供給する供給パイプとからなり、
前記シャワーノズルからの噴射洗浄液によって前記濾過材の内周面をシャワー洗浄すること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項6】
前記濾過装置は、前記濾過材を洗浄する洗浄手段を備え、
前記洗浄手段は、前記濾過材の一端部から内側に向って超音波を出力し、濾過材の内周面を超音波洗浄すること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項7】
筒状の濾過材を構成する環状の金属積層板であって、
前記金属積層板は、複数枚積み重ねて前記濾過材を構成するとともに、その片面のみに濾過溝が設けられ、該濾過溝を介して濾過材の内側から外側へ原水を通過させ、その濾過材の内周面で原水中の固形物を捕獲保持させるようにすること
を特徴とする濾過用金属積層板。
【請求項8】
前記各金属積層板の外周縁に切欠きが設けられ、
前記各金属積層板をその積層方向に固定するための締結ボルトに、前記切欠きを当接させること
を特徴とする請求項7に記載の濾過用金属積層板。
【請求項9】
前記濾過溝は、前記金属積層板の内側から外側に向って下り勾配の傾斜を有することを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の濾過用金属積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−155096(P2008−155096A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344912(P2006−344912)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【特許番号】特許第3989944号(P3989944)
【特許公報発行日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(390039837)東フロコーポレーション株式会社 (17)
【出願人】(398052472)アクアスフォース株式会社 (1)
【Fターム(参考)】