説明

灌水用チューブおよびその製造方法

【課題】送水した際に反転しにくい灌水用チューブおよびその製造方法の提供。
【解決手段】本発明の灌水用チューブ10は、チューブ11の長手方向に沿って複数の灌水孔12が形成された灌水用チューブ10において、チューブ11の対向する内面11a,11a同士が、複数の流路F,Fを確保しつつ溶着して扁平状とされていることを特徴とする。本発明の灌水用チューブの製造方法は、テープ状にされたチューブを搬送しながら、該チューブの少なくとも片面をチューブ内部が拡がるように吸引し、チューブの長手方向に沿って所定の間隔でチューブ表面にレーザ光を照射して穿孔した後、穿孔したチューブの対向する内面同士を複数の流路を確保するように溶着して扁平状とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灌水の際に使用する灌水用チューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、花等の植物を栽培する際には、作業の省力化を図るために、チューブに一定間隔で孔(灌水孔)が形成された灌水用チューブを用いて灌水することがある。
しかし、灌水用チューブに送水した際、特に勢いよく灌水孔から水を噴出させるために水圧を上げると、灌水用チューブが上下・左右に激しく動いて傾きが生じ、反転しやすくなる。その結果、灌水ムラが生じ、灌水が不均一になりやすかった。
【0003】
そこで、灌水用チューブは、例えば製造する際に長尺のフィルムを重ね、その幅方向の両端部にて対向する内面同士を長手方向に沿って溶着して耳部を形成する場合が多い(例えば特許文献1、2)。この耳部は地面に当接して灌水用チューブを支持するため、チューブの反転が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−296310号公報
【特許文献2】特開2008−295309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載のような、耳部が形成された灌水用チューブでは、チューブの反転を抑制することは必ずしも十分ではなかった。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、送水した際に反転しにくい灌水用チューブおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の灌水用チューブは、チューブの長手方向に沿って複数の灌水孔が形成された灌水用チューブにおいて、チューブの対向する内面同士が、複数の流路を確保しつつ溶着して扁平状とされていることを特徴とする。
ここで、前記溶着は、チューブの長手方向に沿って線状になされていることが好ましい。
また、前記溶着は、チューブの幅方向の略中央部にて長手方向に沿ってなされていることが好ましい。
さらに、前記溶着は、断続的になされていることが好ましい。
また、前記チューブの対向する内面同士が溶着された溶着部に、貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の灌水用チューブの製造方法は、テープ状にされたチューブを搬送しながら、該チューブの少なくとも片面をチューブ内部が拡がるように吸引し、チューブの長手方向に沿って所定の間隔でチューブ表面にレーザ光を照射して穿孔した後、穿孔したチューブの対向する内面同士を複数の流路を確保するように溶着して扁平状とすることを特徴とする。
ここで、前記溶着は、チューブの長手方向に沿って線状になされることが好ましい。
また、前記溶着は、チューブの幅方向の略中央部にて長手方向に沿ってなされることが好ましい。
さらに、前記溶着は、断続的になされることが好ましい。
また、前記チューブの対向する内面同士が溶着された溶着部に、貫通孔を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の灌水用チューブは、送水した際に反転しにくい。
また、本発明の灌水用チューブの製造方法によれば、送水した際に反転しにくい灌水用チューブを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の灌水用チューブの一実施形態例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す灌水用チューブを溶着部と溶着部との間で切断したときの状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の灌水用チューブの製造方法に用いられる装置の一実施形態例を示す模式図である。
【図4】(a)は本発明の灌水用チューブの他の実施形態例を示す斜視図であり、(b)は(a)の灌水用チューブを直線I−I’で切断したときの断面図である。
【図5】本発明の灌水用チューブの他の実施形態例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の灌水用チューブの第1実施形態について、図1を参照しながら説明する。
第1実施形態例の灌水用チューブ10は、チューブ11の長手方向に沿って複数の灌水孔12が形成され、チューブ11の対向する内面11a,11a同士が、複数の流路F,Fを確保しつつ溶着して扁平状とされている。
なお、図1においては、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。
【0012】
チューブ11は、熱可塑性樹脂材料により構成されている。
熱可塑性樹脂材料としては、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどを用いることができる。
また、熱可塑性樹脂材料には、必要に応じて、顔料、染料、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、フィラー等が含まれてもよい。
【0013】
チューブ11の幅W11は40〜70mmであることが好ましい。チューブ11の幅W11が40mm以上であれば、十分な量の水を供給できる。一方、幅W11が70mm以下であれば、灌水用チューブ10の配設が容易になる。
チューブ11の厚さは100〜300μmであることが好ましい。チューブ11の厚さが100μmであれば、灌水用チューブ10に供給する水の圧力を高くしても十分に耐えることができる。一方、厚さが300μm以下であれば、十分な屈曲性を確保できる。
【0014】
灌水孔12は、チューブ11の長手方向に沿って、所定の間隔で並列に形成されている。
灌水孔12の、チューブ11の長手方向における間隔S12は50〜300mmであることが好ましい。間隔S12が50mm以上であれば、適度な間隔で灌水させることができる。一方、間隔S12が300mm以下であれば、均一に灌水させることができる。
灌水孔12の孔径は、0.2〜1.0mmであることが好ましい。灌水孔12の孔径が0.2mm以上であれば、十分に灌水させることができる。一方、孔径が1.0mm以下であれば、均一に灌水させることができる。
【0015】
灌水孔12の形成位置は特に制限されないが、チューブ11の幅方向の端部から灌水孔12の中心までの距離D12が5〜25mmとなる位置に形成されるのが好ましい。距離D12が上記範囲内であれば、十分な散水効果が得られやすくなる。
【0016】
灌水用チューブ10は、チューブ11の対向する内面11a,11a同士が、複数の流路F,Fを確保しつつ溶着することで扁平状とされる。従って、灌水用チューブ10に水が供給されても、チューブ11の幅方向にて切断したときの断面形状が円形状にならず、扁平状を維持できるので、灌水用チューブ10は転がりにくい。よって、灌水用チューブ10は送水した際に反転しにくく、灌水ムラが抑制され、均一に灌水できる。
【0017】
第1実施形態例の灌水用チューブ10は、チューブ11の幅方向の略中央部にて、長手方向に沿って所定の間隔で内面11a,11a同士が溶着され、溶着部13を形成している。このように溶着部13が断続的な線状に一列形成され、図1に示すように、灌水用チューブ10には2つの流路F,Fが確保されている。
なお、本発明において「流路」とは、灌水用チューブの内部にチューブの長手方向に沿って連続して形成され、供給された水が灌水用チューブ内を通過する通路のことである。
【0018】
溶着部13の幅W13は5〜10mmであることが好ましい。溶着部13の幅W13が5mm以上であれば、内面11a,11a同士の溶着をより強固なものにできるため、長期にわたって使用したり、送水時の水圧を高くしたりしても扁平状を良好に維持できる。しかし、幅W13が10mmを超えると、流路F,Fが狭まるため十分な量の水を供給しにくくなる。
【0019】
溶着部13の長さL13は10〜20mmであることが好ましい。溶着部13の長さL13が10mm以上であれば、内面11a,11a同士の溶着をより強固なものにできるため、長期にわたって使用したり、送水時の水圧を高くしたりしても扁平状を良好に維持できる。
【0020】
ところで、灌水用チューブ10を使用する際は、任意の長さで切断し、チューブ11の長手方向の一方の端部に送水管を接続させて送水を行う。
図1に示すように、溶着部13が断続的な線状となるように形成されていれば、溶着部13と溶着部13との間(非溶着部)で切断したときの切断面の形状が円形状となり(図2参照)、灌水用チューブ10を送水管に接続しやすい。
なお、図2において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0021】
溶着部13の、チューブ11の長手方向における間隔S13は75〜150mmであることが好ましい。間隔S13が75mm以上であれば、非溶着部の領域を十分に確保できるので、灌水用チューブ10の使用するに際して非溶着部で切断すれば、容易に送水管に接続しやすくなる。一方、間隔S13が150mm以下であれば、非溶着部の中央で切断したときに、切断した両端を送水管に容易に接続できる。
【0022】
灌水用チューブ10は、例えば以下に示す製造装置を用いて製造できる。
ここで、図3に灌水用チューブの製造装置の一実施形態例を示す。
本実施形態例の製造装置1は、チューブ111を作製する押出機20と、チューブ111を引き取ると共にテープ状のチューブ112(以下、「テープ状チューブ112」という。)にするピンチロール30,30と、テープ状チューブ112の両面側に配置された第1吸引機40および第2吸引機50と、第1吸引機40および第2吸引機50の間のテープ状チューブ112の片面にレーザ光を所定の間隔で照射して穿孔するレーザ光発生器60と、穿孔したテープ状チューブ112の対向する内面同士を複数の流路を確保するように溶着する溶着手段70と、該溶着により扁平状とされた灌水用チューブ10を巻き取る巻取りロール80とを具備する。
【0023】
製造装置1を構成する押出機20には、環状のダイ21が取り付けられている。そのため、環状のダイ21から溶融させた熱可塑性樹脂材料を吐出させることにより、チューブ111を得ることができる。
【0024】
第1吸引機40は、真空ポンプ(図示せず)に接続され、テープ状チューブ112を挟んで互いに対向するように配置された一対の吸引ノズル41,41を備えたものである。また、第2吸引機50は、真空ポンプ(図示せず)に接続され、テープ状チューブ112を挟んで互いに対向するように配置された一対の吸引ノズル51,51を備えたものである。このような第1吸引機40および第2吸引機50を用いることにより、テープ状チューブ112の内部を十分に拡げることができる。
第1吸引機40と第2吸引機50とは間隔を有して配置され、また、第1吸引機40は、レーザ光発生器60に対して搬送方向の上流側に配置され、第2吸引機50はレーザ光発生器60に対して下流側に配置されている。
【0025】
レーザ光発生器60によるレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、半導体レーザなどが挙げられるが、汎用的である上に、容易に穿孔できることから、炭酸ガスレーザが好ましい。
本実施形態例では、レーザ光発生器60はテープ状チューブ112の幅方向に沿って往復動できるようになっている。これにより、テープ状チューブ112の幅方向の任意の位置にレーザ光を照射できるようになっている。
【0026】
溶着手段70としては、振動子71およびロール72を備えた超音波シール機などが挙げられる。
本実施形態例では、振動子71とロール72とでテープ状チューブ112の幅方向の略中央部を長手方向に沿って所定の間隔で挟み加圧すると共に、振動子71から超音波振動を伝達できるようになっている。これにより、挟まれた部分が軟化・溶融して、テープ状チューブ112の対向する内面同士が溶着され、テープ状チューブ112の幅方向の略中央部に、長手方向に沿って所定の間隔で溶着部を形成できるようになっている。
【0027】
巻取りロール80は、回転駆動して、得られた灌水用チューブ10を巻き取るようになっている。巻取りロール80により灌水用チューブ10を巻き取ることにより、テープ状チューブ112を搬送できるようになる。従って、本実施形態例では、巻取りロール80は搬送手段となる。
【0028】
上記製造装置1を用いた灌水用チューブの製造方法の一実施形態例について説明する。
本実施形態例の製造方法では、テープ状チューブ112を連続的に作製するチューブ作製工程と、テープ状チューブ112の片面側を所定の間隔で穿孔する穿孔工程と、テープ状チューブ112の対向する内面同士を複数の流路を確保するように溶着する溶着工程と、該溶着工程により扁平状とされた灌水用チューブ10を巻き取る巻取り工程とを有する。
【0029】
チューブ作製工程:
チューブ作製工程では、熱可塑性樹脂材料を押出機20により押出形成することによって、チューブ111を作製し、そのチューブ111をテープ状にする。具体的には、熱可塑性樹脂材料を溶融し、環状のダイ21から吐出させることにより、チューブ111を作製し、そのチューブ111をピンチロール30,30で挟んでテープ状チューブ112を得る。
【0030】
押出成形温度は150〜200℃であることが好ましい。押出成形温度が150℃以上であれば、容易にチューブ111を成形でき、200℃以下であれば、熱可塑性樹脂材料の劣化を防止できる。
環状のダイ21の直径は30〜50mmであることが好ましい。環状のダイ21の直径が30mm以上であれば、十分に送水できる灌水用チューブ10を得ることができ、50mm以下であれば、使用に適した灌水用チューブ10を得ることができる。
ダイ21から吐出させて得たチューブ111は、必要に応じて、水冷または空冷により冷却してもよい。
【0031】
穿孔工程:
穿孔工程では、テープ状チューブ112の片面側の表面にレーザ光をレーザ光発生器60より照射して穿孔し、灌水孔を形成する。その際、レーザ光発生器60は、テープ状チューブ112の幅方向に往復動させて、灌水孔がテープ状チューブ112の長手方向に沿って、所定の間隔で並列に形成されるように穿孔する。
【0032】
レーザ光の強度は12〜20W/cmであることが好ましい。レーザ光の強度が12W/cm以上であれば、容易に穿孔でき、20W/cm以下であれば、容易に所定の孔径にすることができる。
【0033】
本実施形態例では、第1吸引機40および第2吸引機50によりテープ状チューブ112を吸引してチューブ内部を拡げ、その状態でテープ状チューブ112にレーザを照射して穿孔する。
テープ状チューブ112の吸引においては、チューブ内部の間隔が3〜5mmになるようにすることが好ましい。チューブ内部の間隔が3mm以上であれば、テープ状チューブ112の一方の面から他方の面への貫通を十分に防止できる。しかし、チューブ内部の間隔が5mmを超えるように吸引するのは困難になることがある。
【0034】
溶着工程:
溶着工程では、穿孔工程で得たテープ状チューブ112の幅方向の対向する内面同士を複数の流路を確保するように溶着し、溶着部を形成する。このようにして灌水用チューブ10を得る。
溶着方法としては、例えばテープ状チューブ112の幅方向の略中央部を長手方向に沿って所定の間隔で振動子71とロール72とで挟み加圧すると共に、振動子71から超音波振動を伝達して溶着させる方法が適用される。
溶着温度は、使用する熱可塑性樹脂材料に応じて適宜選択されるが、例えば、250〜300℃にされる。
溶着後、必要に応じて、テープ状チューブ112を冷却する。
【0035】
巻取り工程:
巻取り工程では、得られた灌水用チューブ10を巻取りロール80によって巻き取って、ロール状にする。
【0036】
本実施形態の製造方法によれば、第1吸引機40および第2吸引機50により、テープ状チューブ112の内部を拡げた状態でレーザ光を照射して穿孔するため、テープ状チューブ112の一方の面から他方の面への貫通を防止できる。しかも吸引を適用しているため、テープ状チューブ112の内部を簡便に拡げることができる。
さらに、レーザ光照射の前後で第1吸引機40および第2吸引機50によりテープ状チューブ112を吸引しているため、十分にテープ状チューブ112の内部を拡げることができ、テープ状チューブ112の一方の面から他方の面への貫通や、レーザ光照射で溶融した樹脂による一方の面と他方の面の接合を簡単に防止できる。
【0037】
このようにして得られた灌水用チューブ10は、例えば以下のように使用される。
すなわち、まず、灌水用チューブ10を任意の長さとなるように、溶着部13と溶着部13との間(非溶着部)で切断する。ついで、畑の所定の位置に灌水用チューブ10を配置し、灌水用チューブ10の長手方向の一方の端部に送水管を接続し、灌水用チューブ10に送水を開始する。これにより、灌水孔12から水を噴出させて、畑に灌水させる。
【0038】
以上説明した本発明の灌水用チューブは、チューブの対向する内面同士が複数の流路を確保しつつ溶着して扁平状とされているので、水が供給されても扁平状を維持でき、転がりにくい。そのため、本発明の灌水用チューブは、従来の灌水用チューブのように耳部によって反転を防止する場合よりも反転しにくく、灌水ムラが抑制され、均一に灌水できる。
【0039】
また、本発明の灌水用チューブによれば、送水したときのチューブの幅方向における断面形状が溶着部と非溶着部とで異なる。よって、溶着部近傍に形成された灌水孔と、非溶着部近傍に形成された灌水孔から噴出する水の向きが異なりやすく、より分散して灌水できる。
【0040】
[第2実施形態]
以下、本発明の灌水用チューブの第2実施形態について、図4を参照しながら説明する。
第2実施形態例の灌水用チューブ10において、図1に示す第1実施形態例の灌水用チューブ10と異なる点は、溶着部13が連続的な線状である点と、溶着部13に、該溶着部13を貫いた複数の貫通孔14が形成されている点である。それ以外の構成要素は第1実施形態例の灌水用チューブ10と同じであるため、図4において図1と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図4(a)に示すように、第2実施形態例の灌水用チューブ10は、チューブ11の幅方向の略中央部にて、長手方向に沿って連続的に内面11a,11a同士が溶着され、溶着部13を形成している。このように溶着部13が連続的な線状に一列形成され、図4(a)に示すように、灌水用チューブ10には2つの流路F,Fが確保されている。
溶着部13が連続的な線状となるように形成されていれば、より強固に内面11a,11a同士が溶着されるので、送水時の水圧を高くしても溶着部13が剥がれることなく、流路F,Fを確保できる。よって、扁平状がより維持されやすくなり、送水時の反転をより抑制できる。
【0042】
なお、図4(a)に示す灌水用チューブ10を使用する際には、長手方向の一方の端部およびその近傍の溶着部13において内面11a,11aを剥離し、この部分の扁平を解除してから送水管に接続してもよいし、ジョイントを介して送水管に接続してもよい。灌水用チューブ10を任意の長さで切断して使用する場合も同様である。
【0043】
ところで、灌水用チューブ10に送水すると、図4(b)に示すように2つの流路F,Fが膨らみ、この流路F,Fと溶着部13とで窪みHが形成される。灌水孔12の形成位置によっては、灌水孔12から噴出した水が窪みHに流れ込んで溜まることがあり、窪みHに溜まった水Wによって灌水孔12が閉塞し、灌水孔12から水が噴出しにくくなる場合がある。
しかし、図4(a)、(b)に示す灌水用チューブ10であれば、溶着部13に、該溶着部13をその表面から裏面へ貫いた貫通孔14が形成されているので、窪みHに水が流れ込んでも貫通孔14から排出される。そのため、灌水孔12の形成位置にかかわらず窪みHに水が溜まりにくく、水による灌水孔12の閉塞を抑制でき、常に一定の割合で灌水孔12から水を噴出できる。
【0044】
貫通孔14の孔径や形成位置については、窪みHに流れ込んだ水を排出できる大きさや位置であれば特に限定されない。
【0045】
図4(a)、(b)に示す灌水用チューブ10は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、図1に示す第1実施形態例の灌水用チューブ10と同様の方法でチューブ作製工程、穿孔工程、溶着工程を行う。ついで、溶着工程で形成した溶着部に貫通孔を形成する貫通工程)。その後、巻取り工程にて得られた灌水用チューブ10を巻き取る。
貫通工程において溶着部に貫通孔を形成する方法としては、溶着部13をその表面から裏面へ貫くことができれば特に制限されず、パンチ等を用いた機械加工や、レーザ加工などが挙げられる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は上記第1、第2実施形態に限定されない。例えば上記第1、第2実施形態では、チューブの対向する内面同士の溶着は、チューブの幅方向の略中央部にて、長手方向に沿って一列なされているが、略中央部からずれていてもよいし、二列以上でもよい。また、複数の流路を確保できれば、前記溶着はチューブの幅方向に沿ってなされていてもよい。
また、第1実施形態では溶着部が断続的に形成されているが、連続的に形成されていてもよい。また、溶着の形態は線状に限定されず、例えばドット状でもよい。
一方、第2実施形態では溶着部が連続的に形成されているが、断続的に形成されていてもよい。
【0047】
また、上記第1、第2実施形態では、灌水孔はチューブの長手方向に沿って並列に形成されているが、例えば図5に示すように灌水孔は千鳥状に形成されてもよい。
なお、図5において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
また、上記第1、第2実施形態では、図3に示すような製造装置1を用い、レーザ光照射の前後にて第1吸引機40および第2吸引機50を配置して、テープ状チューブ112を吸引したが、レーザ光照射の前のみに吸引機(第1吸引機40)を配置してもよいし、レーザ光照射の後のみに吸引機(第2吸引機50)を配置してもよい。ただし、その場合でも、テープ状チューブ112内部を拡げるために、吸引機は、テープ状チューブ112を挟んで互いに対向するように配置された一対の吸引ノズル51,51を備えることが好ましい。
また、製造装置1において、溶着手段70として超音波シール機の代わりに、ヒートシール機等を用いてもよい。
【0049】
また、本発明の灌水用チューブの製造方法において、テープ状チューブは、長尺の2枚のフィルムを重ね、幅方向の両端部を長手方向に沿ってヒートシールすることにより作製してもよい。この場合、灌水用チューブの幅方向の両端部には耳部が形成されることになる。
さらに、灌水孔はテープ状チューブの両面に形成してもよい。例えば針等を用い、テープ状チューブ112の一方の面から他方の面へ貫通させることで、灌水孔を形成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:灌水用チューブ、11:チューブ、11a:内面、12:灌水孔、13:溶着部、14:貫通孔、F:流路、H:窪み、W:水。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの長手方向に沿って複数の灌水孔が形成された灌水用チューブにおいて、
チューブの対向する内面同士が、複数の流路を確保しつつ溶着して扁平状とされていることを特徴とする灌水用チューブ。
【請求項2】
前記溶着は、チューブの長手方向に沿って線状になされていることを特徴とする請求項1に記載の灌水用チューブ。
【請求項3】
前記溶着は、チューブの幅方向の略中央部にて長手方向に沿ってなされていることを特徴とする請求項2に記載の灌水用チューブ。
【請求項4】
前記溶着は、断続的になされていることを特徴とする請求項2または3に記載の灌水用チューブ。
【請求項5】
前記チューブの対向する内面同士が溶着された溶着部に、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の灌水用チューブ。
【請求項6】
テープ状にされたチューブを搬送しながら、該チューブの少なくとも片面をチューブ内部が拡がるように吸引し、チューブの長手方向に沿って所定の間隔でチューブ表面にレーザ光を照射して穿孔した後、穿孔したチューブの対向する内面同士を複数の流路を確保するように溶着して扁平状とすることを特徴とする灌水用チューブの製造方法。
【請求項7】
前記溶着は、チューブの長手方向に沿って線状になされることを特徴とする請求項6に記載の灌水用チューブの製造方法。
【請求項8】
前記溶着は、チューブの幅方向の略中央部にて長手方向に沿ってなされることを特徴とする請求項7に記載の灌水用チューブの製造方法。
【請求項9】
前記溶着は、断続的になされることを特徴とする請求項7または8に記載の灌水用チューブの製造方法。
【請求項10】
前記チューブの対向する内面同士が溶着された溶着部に、貫通孔を形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の灌水用チューブの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−223184(P2012−223184A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51499(P2012−51499)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)