説明

灌流のための中規模バイオリアクタープラットフォーム

培養チャンバー(103)が流体連結した2以上の液体リザーバー(102)を含む中規模バイオリアクター(101)プラットフォームが開示され、ここにおいて、前記チャンバーは、出口(104)に流体連結しており、前記プラットフォームは、1以上の前記液体リザーバーからの液体の流れを前記チャンバーに灌流させることができる手段が提供される。液体のための組み込まれたリザーバーは、液体の灌流を必要とする細胞培養実験の際に、培養チャンバーへの液体の外部からの供給の必要性を除く。そのうえ、2以上のリザーバーにより、異なる種の液体を培養チャンバーに供給することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中規模バイオリアクタープラットフォームおよびバイオリアクタープラットフォームのためのコントロールユニット、並びに中規模バイオリアクタープラットフォームおよびバイオリアクタープラットフォームのためのコントロールユニットを含むシステムに関する。中規模バイオリアクタープラットフォームは生物学的細胞の培養に適しており、特に、胚または幹細胞といった哺乳細胞の培養に適している。さらに、特に、インビトロ受精法における使用に適している。
【背景技術】
【0002】
胚の培養のためのインビトロ受精において現在使用される方法は、静的条件下のペトリ皿における胚の培養に依存する。増殖培地の交換に大規模な手動操作が必要となるため、そのような方法論は労働集約的である。手動操作は常にコンタミネーションのリスクを招き、そのうえ静的条件はインビボの条件とはあまり類似しておらず、胚の変化する要求を満たすのは困難である。現在のインビトロの静的条件とは対照的に、胚は、インビボにおいて絶えず変化する環境にさらされ、発生の1つの段階における胚の要求は、発生の別の段階におけるものとは非常に異なる場合がある。発生の1つの段階のインビボにおける条件は、発生の後の段階における胚に対して有害となる場合さえある。
【0003】
静的なペトリ皿の培養系の幾つかの不都合は、その発生段階に適した増殖培地によって胚を灌流できる培養系にて胚を培養することにより回避できる可能性がある。そのような系は、胚のサイズと一致し且つインビボにおける条件により類似した適切なサイズにすべきである。更に、そのような哺乳細胞に典型的に要求される高価な増殖培地の消費を最小限にするために、スモールスケールにすることが重要である。
【0004】
多くのいわゆるマイクロ流体装置が、多様なタイプの分析に関して、または細胞の培養に関して記述されてきた。これらの装置は、しばしば、一般にマイクロエレクトロニクスのためのシリコンベースの技術により1970年代に得られた進歩に感化された様々な根本方針を使用して作られる。マイクロ流体の応用例は、例えば一塩基変異多型の検出のためのポリメラーゼ連鎖反応といった根本方針に関するDNA分析または例えばキャピラリー電気泳動を使用したタンパク質のアッセイである。
【0005】
しかしながら、「真の」マイクロ流体装置(例えば、100μm以下の直径のオーダーの流体チャネルを有するもの)は多数の欠点を有しており、その幾つかは、特に灌流型操作のために設計された細胞培養装置にて顕著であった。ハーゲン・ポアズイユの式に見られるように、例えば流れを有する100μmチャネルにおける圧力低下は非常に大きく、この規模で操作することが意図されたポンプを強く要求する。これは、そのようなポンプは、相当な背圧に対して非常に小さな体積を正確に分配することができるためである。このため、いわゆる電気浸透流を使用して、この規模にて流れが生み出される。この場合、流れは、大きな電位にそれを暴露することにより食塩水中で作られる。しかしながら、そのような電気浸透流は、生きた(哺乳)細胞を含む系に悪影響である。
【0006】
マイクロ流体において遭遇する別の問題は「外部の世界への接続」に関係する問題である。ポンプおよび分析機器といった生物学の研究室で使用される大部分の機器は、マイクロ流体機器より非常に大きく、2つの規模の統合が問題となる。250μmの直径(容易に利用可能)もの小さなチューブのチップへの接続は、研究員にとって取扱いが困難であり、マイクロ流体システムの体積のサイズの数倍のデッドボリュームにすぐに達する可能性がある。この問題は、灌流型細胞培養装置において特に重要であり、この装置では、運用上の複雑性およびマイクロ流体システムに接続されたチューブにおける液体の長い滞在時間が、上流におけるコンタミネーションのリスクを増加させる。哺乳類胚の培養の場合、培養時間は5日以上になる場合がある。
【0007】
小スケールで操作するバイオリアクターシステムでは、当然、所定の順序の事象に従って、様々な増殖培地および条件を切り替えることが可能である。しかしながら、バイオリアクターにおける細胞の増殖条件をより完全に最適化するために、バイオリアクターは、バイオリアクターのアクチュエーターにコマンドを送信することができるコンピューター等につながった適切なセンサーを装備することが可能である。この場合、フィードバックシステムを、例えば一定の環境条件を維持するために、環境における変化に応答するよう作ってもよい。
【0008】
以下に議論するように、上記の問題に取り組むために幾つかの工程が行われてきた。
【0009】
WO07/044699は、組み込まれた液体注入器が取り付けられたマイクロバイオリアクターを開示している。ここにおいて、液体注入器は液体のためのリザーバーを含んでもよい。これらのバイオリアクターは、代謝工学の研究分野において、商業関連生産物生物の特に微生物株の並列研究を構築するのに役立つ。WO07/044699のバイオリアクターの増殖チャンバーにおける組み込み型センサーは、センサーからのシグナルを用いて、リザーバーからの液体の注入による増殖チャンバー内の環境条件(典型的にはpH)の調節のためのフィードバック調節機構を可能にする。
【0010】
WO07/044699のリアクターの液体注入器のリザーバーは、典型的にエラストマー材料から構築され、さらにバルブを含んでおり、リザーバーからの流れは空気の作動によって制御してもよい。
【0011】
透過性のポリメチルシロキサン(PDMS)膜を通る増殖チャンバーへのガスの供給を最適化するために、WO07/044699のチャンバーは、一般に平坦であり(すなわち、増殖チャンバーの1つの空間的寸法は、増殖チャンバーのその他の2つの空間的寸法の少なくとも約10倍小さい)、PDMS膜は2つのより大きな表面のうちの1つに面する。増殖チャンバーの典型的な体積は5〜500μLとされる。増殖チャンバーにおける液体の混合は、PDMS膜を介して空気の作動によって行われる。
【0012】
WO07/044699のマイクロバイオリアクターの基礎となっている根本方針は、一定の環境条件を維持するために、増殖チャンバーに液体をパルスすることによる細胞の半回分型発酵に適している。しかしながら、液体の律動的な供給および増殖チャンバーのサイズに対して限定されたリザーバーのサイズ(すなわち15−25μL)のために、システムは、長期灌流様操作、例えばケモスタット培養またはチャンバー内の細胞への培地の継続的な供給に不適である(すなわち、25μLのリザーバーサイズおよび100パルス未満の〜270nLのパルスサイズが利用可能)。この根本方針は、さらに、それらの成長周期において要求が変化する細胞を培養することに適していないようである。更に、増殖チャンバーの平坦な設計は細胞への有効な酸素供給を可能にする一方で、このような設計は、さらに、パルスした液体を混合するための激しい撹拌を必要とする。そのような条件は細菌または真菌細胞よりも脆弱な細胞に対してダメージを与える可能性がある。
【0013】
WO07/047826は、マイクロ流体チャンバーからの液体の蒸発を防ぎ、装置における増殖チャンバーへのアクセスを可能としたオイルオーバーレイを使用したマイクロ流体細胞培養装置を開示している。この装置は、漏斗型の増殖チャンバー、およびチャンバーを含むPDMS基体の底のマイクロチャンネルを介して接続したリザーバーを含む。エラストマー材料から作られた膜およびいわゆるピン動作装置の助けにより、チャンバー間の液体の蠕動運動を作ることが可能である。この蠕動運動は、「ウェルにおける液体レベルが周期的に増加および減少する、前後型の液体供給」を作るために使用してもよい。しかしながら、WO07/047826の装置の増殖チャンバーに液体を適用するために、外部供給を使用してもよい。
【0014】
WO07/047826の装置は、マイクロ流体装置の要素の状態または流量特性を決定するための、光学的センサー、電気的センサーまたは電気機械的センサーを含んでもよい。当該文献は、さらに、エラストマー膜とピン動作装置との組み合わせから作られる運動部位を使用した、栄養素、成長因子等の供給のための複数のリザーバーの使用の選択肢について言及している。しかしながら、この装置は、液体の外部供給を使用する必要があるため、長期的な灌流型増殖実験には不適であるようである。
【0015】
Petronisらは、HeLa細胞の長期培養のためのマイクロ流体バイオリアクター装置について記述している(2006, BioTechniques 40:368−376)。この装置は、熱可塑性の高分子材料から構築され、増殖チャンバーを加熱するために組み込み型のスズ添加インジウム酸化物フィルムを含む。チャンバーはさらに、温度センサー、およびセンサーと熱要素とを協同作用させるコンピューターを有する機構を含む。この機構において、チャンバーの温度はフィードバック様式で制御させてもよい。Petronisら(2006)の小規模なバイオリアクターは、チャンバーの温度の迅速な制御を可能にする。しかしながら、装置は、単に、外部ポンプを使用して外部リザーバーから液体を供給する古典的な発酵槽のスケールダウンしたバージョンである。外部液体供給を有する設計は、事実上、培養時間に制限を与えず、実験をセットアップする複雑性は、その装置を学術的な環境での使用に最適なものにする。さらに、フィードバック機構は、主に一定条件の維持に適しており、増殖チャンバーに適用される液体を制御するために、どのように使用するかは示されていない。
【0016】
WO2005/123258は、さらに、センサーを使用して、フィードバック機構でチャンバー中の細胞増殖の環境を制御するマイクロ流体バイオリアクター装置を開示している。WO2005/123258のバイオリアクターは、培養チャンバーに対して外部に位置したプレミキシングチャンバーを利用する。しかしながら、バイオリアクターは、「伝統的な」灌流型細胞培養を行なうことに適していない。それは、プレミキシングチャンバーおよび増殖チャンバーが回路に接続されるためである(外部リザーバーから供給された液体で(プレミキシングチャンバーにおける)液体の組成物を調節する選択肢を有する)。
【0017】
しかしながら、現在まで記述されたほとんどのマイクロ流体装置は、装置のサンプル液体における細胞または生物学的化合物に関する理論的なデータの提供を目的とした分析的な装置である。インビトロ受精法の目的は、対照的に、培養プロセスで得られた胚であるだろう。それ故、受精した卵母細胞のような細胞の灌流のために設計された装置では、細胞をチャンバー内に静置し、特に培養期間後に穏やかに除去することを可能にするために、培養チャンバーに容易にアクセスできるべきである。この特徴は、データ収集のためにのみ設計され、適切なセンサーを装置に組み込み、細胞を物理的に除去することなく、システムからデータを抽出できる流体装置において必要ではない。
【0018】
WO2003/087292は自動組織エンジニアリングシステムについて記述する。このシステムは、とりわけ、ハウジングに支持されたバイオリアクターを含み、このバイオリアクターは、生理的な細胞の機能および/または組織構成物の生成を促進する可能性がある。このシステムは、さらに、液体リザーバーを含む液体収納システムを含む。バイオリアクターは、サンプリングポートを介してバイオリアクターへのアクセスできるフタを有してよく、バイオリアクターは、例えば酸素、温度およびpHのためのセンサーを有してよく、さらに、カメラを装備してもよい。WO2003/087292の装置は、組織生検の消化、細胞選別、細胞洗浄、細胞濃縮、細胞播種、細胞増殖、細胞分化、細胞貯蔵、細胞輸送、組織形成、移植組織形成(組織は骨および軟骨から生じてもよい)といった操作に適している。したがって、このシステムは、幹細胞を含む、胚性幹細胞、成体幹細胞、造骨細胞、前造骨細胞、軟骨細胞、前軟骨細胞、髄核細胞、骨格細胞、骨、骨髄または血液由来の骨格前駆細胞といった細胞に適している。
【0019】
WO2003/087292のバイオリアクターシステムの規模は明示されていないものの、100−500mgのヒト軟骨生検が言及されている。さらに、100mgの生検組織は、システムにおいて約200,000から500,000個の細胞を生じさせる可能性があることを言及している。したがって、バイオリアクターにおける細胞の数は、このシステムが、少数の部分的なサイクル後の単一の受精卵に由来する細胞のクラスターを目的とするインビトロ受精の目的に不適であることを示唆する。
【0020】
そのうえ、「サンプリングポート」の正確な性質について表示されていない。特に、バイオリアクターは灌流操作中におけるアクセスについて記述されていない。
【0021】
WO2005/116186において記述されるように、WO2003/087292のシステムがさらに開発されている。WO2005/116186では、移植組織形成のための特殊化バイオリアクターのために、設計を改善したと主張されている。しかしながら、WO2005/116186では、バイオリアクターが、どのようにフタを介してアクセスしてよいか、バイオリアクターが、どのように灌流操作中にアクセスしてもよいかは記述されていない。
【0022】
上に議論した努力にかかわらず、哺乳類胚に適した規模および時間における灌流型操作のために意図される流体装置に、液体供給を組み込むことの問題を解決できるシステムは記述されていない。本発明の目的は、胚の発生の際の増殖条件とは異なる要求ならびにそのような培養に必要な時間を考慮に入れた、哺乳類の卵母細胞および胚の培養に適した、中規模バイオリアクタープラットフォームを提供することである。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、培養チャンバーが流体連結した2以上の液体リザーバーを含む中規模バイオリアクタープラットフォームに関し、ここにおいて、前記チャンバーは出口に流体連結しており、前記プラットフォームは、1以上の前記液体リザーバーからの液体の流れを前記チャンバーに灌流させることができる手段が提供される。液体のための組み込まれたリザーバーは、液体の灌流を必要とする細胞培養実験の際に、培養チャンバーへの液体の外部からの供給の必要性を除き、さらに、上流におけるコンタミネーションのリスクを最小化する。そのうえ、2以上のリザーバーにより、それぞれのリザーバーの内容物に相当する異なる液体を培養チャンバーに供給することが可能となり、または培養チャンバーに2以上のリザーバーからの混合物を供給してもよい。
【0024】
特定の実施態様において、中規模バイオリアクタープラットフォームは、前記培養チャンバーが閉鎖可能部材または弾性膜を介して物理的にアクセス可能であるように構築される。この構成は、上流におけるコンタミネーションのリスクを最小に維持しながら、培養チャンバーの内容物の操作を可能にする。中規模バイオリアクタープラットフォームの閉鎖可能部材は、ヒンジ式またはスライド式であってよいフタの形体を有してよく、弾性膜はセルフシール能を有してよい。
【0025】
一実施態様において中規模バイオリアクタープラットフォームは、前記培養チャンバーの灌流を可能にする前記手段は前記リザーバーの体積の調節を可能にする可撓性領域を含むように構築される。可撓性領域は、可撓性材料から膜の形で作ってもよい。別の実施態様において、前記培養チャンバーの灌流を可能にする前記手段は、前記リザーバーへの外部接続を可能にする空気入口であって、約0.1μmから約0.5μmの孔サイズを有するフィルターを含む空気入口を含む。これらの実施態様のいずれかにおいて、膜またはフィルターの外側に対する陽性相対圧力、または中規模バイオリアクタープラットフォームの出口に対する陰性相対圧力の適用は、前記リザーバーに含まれる液体の培養チャンバーへの流れを作り出すだろう。
【0026】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォームは、哺乳細胞の培養に好都合に利用してよく、この実施態様において、培養チャンバーは1以上の哺乳細胞を含む。本発明の中規模バイオリアクタープラットフォームは、特にインビトロ受精法における使用に適している。哺乳細胞の培養のために使用される場合、前記リザーバーは、培地、生物学的または生化学的に活性のある分子および/またはバッファーを含む。
【0027】
本発明は、さらに、中規模バイオリアクタープラットフォームのためのコントロールユニットであって、2以上のリザーバーから培養チャンバーへの液体の流速を制御するための手段を含むコントロールユニットに関する。中規模バイオリアクタープラットフォームがコントロールユニットに接続される場合、コントロールユニットは、したがって、中規模バイオリアクタープラットフォームにおける培養チャンバーを灌流するための、前記リザーバーからの流れを作ることができる。
【0028】
流速を制御するための手段は、例えば、前記リザーバーに陽性相対圧力を適用できてよく、および/または前記出口に陰性相対圧力を適用できてよい。圧力は、ピストンのような物理的材料または空気/ガスの圧力によって作ってよい。流れを供給するために、ガスからの圧力を使用することが好ましい。前記リザーバーにおける液体に対する陽性相対圧力の適用は、さらに、適用されるガスによって液体を飽和することを可能にする。
【0029】
別の実施態様において、コントロールユニットはさらに、pH、溶存酸素(O)、二酸化炭素(CO)、グルコース、栄養素、ビタミン、代謝物質、流速、温度、光学濃度、蛍光シグナル、特異的なタンパク質もしくは酵素、またはDNAもしくはRNAを測定できる少なくとも1つのセンサーを含む。センサーは、培養チャンバーにおける、または培養チャンバーの下流における液体のパラメーター値を測定するために配置してよい。
【0030】
更に別の実施態様において、コントロールユニットは、さらに、センサーからシグナルを集め、集めた前記シグナルからの情報を使用して、2以上のリザーバーの各々からの流速を制御することができるデータプロセシングユニットを含む。任意のミキシングセクションの存在は、さらに、2以上のリザーバーからの液体が混合されることを保証してよい。この実施態様において、センサーによって記録されたシグナルは、したがって、フィードバック様式で、前記リザーバーから培養チャンバーまでの流れを制御するために使用してよい。例えば、パラメーター値は、所定の範囲内に存在するよう設定してよく、センサーからのシグナルが、パラメーター値がこの範囲の外部に移動したことを示した場合、前記リザーバーからの流れを調節して、パラメーター値を所定の範囲内に戻してよい。
【0031】
本発明は、さらに、中規模バイオリアクタープラットフォームおよびコントロールユニットを含むシステムに関し、前記中規模バイオリアクタープラットフォームは、コントロールユニットに備えられたカートリッジに含まれる。このシステムは、中規模バイオリアクタープラットフォームがコントロールユニットに迅速に且つ容易に挿入されることを可能にする。その挿入は、前記リザーバーが、コントロールユニットの圧力供給と連結することを保証するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、中規模バイオリアクタープラットフォームの概略的透視図を示す。
【図2】図2は、中規模バイオリアクタープラットフォームの培養チャンバーの概略図を示す。
【図3】図3は、特定の実施態様プラットフォームの要素を示す中規模バイオリアクタープラットフォームの平面図を示す。
【図4】図4は、中規模バイオリアクタープラットフォームのためのコントロールユニットを示す。
【図5a】図5aは、温度のフィードバック調節のためのアルゴリズムの図である。
【図5b】図5bは、温度を変えるためのアルゴリズムを使用した、温度対時間のプロットである。
【発明の詳細な説明】
【0033】
本発明は、中規模バイオリアクタープラットフォーム、バイオリアクタープラットフォームのためのコントロールユニット、並びにプラットフォームおよびコントロールユニットを含むシステムに関する。
【0034】
本発明の「バイオリアクター」という用語は、生物学的細胞の培養に適したシステムおよび装置を包含する。開示されるバイオリアクターは、特に哺乳細胞に適している。好ましい実施態様において、哺乳細胞はインビトロ受精に関する細胞であり、細胞は、精子、卵母細胞および/または胚を含むだろう。しかしながら、当業者にとって自明であるように、バイオリアクタープラットフォームは、さらに、その他の哺乳類細胞種、例えば幹細胞または免疫系の細胞、例えば単球、樹状細胞、T細胞等に有用であってよい。好ましい実施態様において、哺乳細胞はヒト細胞である。更に、本発明に開示される中規模バイオリアクタープラットフォームは、さらに、哺乳細胞以外の細胞種の培養に有用であってよい。例えば、細菌、酵母、菌類、植物または昆虫の細胞もまた、ここに開示されるバイオリアクタープラットフォームにて培養されてよい。
【0035】
本発明の文脈において、「中規模」という用語は、チャネルの最小の寸法が約100μmから約3mmの範囲であるサイズの範囲を含むよう意図されるが、チャネルはさらにくびれを含んでもよい。同様に、培養チャンバーは約500μmから約5mmまたはそれ以上の深さであってよく、および、最大の水平の寸法は、約1mmから約50mmであってよい。リザーバーのサイズは灌流条件下の細胞を培養するのに十分でなければならない。一般的に、中規模流体システムにおける液体は層流条件下で流れると考えられ、上に定義されたものと異なるチャネルまたはチャンバーを有する流体システムもまた、システムに含まれる液体が層流条件下で流れる限り、「中規模」として記載してよい。
【0036】
特定の実施態様において、培養チャンバーの最大の水平の寸法は、約2から約6mmまでの範囲にある。別の実施態様において、培養チャンバーの最大の水平の寸法は、約20から約30mmまでの範囲にある。本発明の中規模バイオリアクターに典型的に使用される流速の範囲内において、液体は本質的に層流で移動するだろう。
【0037】
本発明のバイオリアクタープラットフォームは灌流条件下の操作に適している。この文脈において、「灌流」または「灌流する」という用語は、一般に、継続的な流れが装置の培養チャンバーに適用されることを意味する。この継続的な流れは特定の流速に制限されないが、本発明のバイオリアクタープラットフォームによる実験の際に、いくつかの異なる流速を使用してもよい。適切な流速は、約100nL/分から約200μL/分までまたはそれ以上である。流れは、例えば、培養チャンバーの内容物に関する様々な操作を行なうために、必要ならば停止してもよいことが強調されるべきである。更に、生物学的細胞を静止させる中間的操作も意図される。
【0038】
ある実施態様において、培養チャンバーは、チャンバーへの物理的アクセスが可能であるように構築される。この文脈において、「物理的アクセス」という用語は、ツールを培養チャンバーの液体に挿入し、培養チャンバーの内容物を操作してもよいことを意味する。この操作は、培養チャンバーから1以上の細胞を挿入または除去することであってよく、または、培養チャンバー中に既に存在する細胞の操作を含んでよい。
【0039】
一実施態様において、本発明のコントロールユニットは「データプロセシングユニット」を含む。この用語は、コントロールユニットにおけるセンサーからシグナルを集め、それらをオペレーターに理解し得るデータに変換できるコンピューターまたは同様の装置を意味する。さらに、データプロセシングユニットは、培養チャンバーにて細胞が経験する環境上のパラメーターを制御するためのコマンドを機器へ送ることができる。
【0040】
データプロセシングユニットは、中規模バイオリアクタープラットフォームのために「時間的ログ」を作ることができるように設定してもよい。「時間的ログ」という用語は、コントロールユニットのセンサーによって生じたシグナルまたはその他のデータが、シグナルが収集された時間とともにデータプロセシングユニットによって収集されることを意味する。したがって、各々の中規模バイオリアクタープラットフォームについて、培養期間の所与の時点における培養チャンバーの任意の細胞のために存在した条件を知ることが可能となるだろう。この情報は、培養期間が終わる前に既に同様に利用可能となり、例えば、時間的ログにおけるデータについての知見に基づいて決定してもよい。
【0041】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォーム101は、特にインビトロ受精法での使用に適している。より具体的には、中規模バイオリアクタープラットフォーム101は、胚または卵母細胞201を培養し、精子による卵母細胞201の授精を行うことに適している。この目的のために、受精させた卵母細胞201は、ピペットまたは皮下注射針のようなツール202の助けによって培養チャンバー103に配置される。好ましい実施態様において、中規模バイオリアクタープラットフォーム101の培養チャンバー103は、培養チャンバーへの物理的アクセスが可能なように設計されている。中規模バイオリアクタープラットフォーム101は、さらに、未受精卵母細胞を受精させるために使用してもよい。この目的のために、リザーバー102は、精製されたもしくは未精製の精子、あるいは堆積除去用ヒアルロニダーゼを含んでよい。中規模バイオリアクタープラットフォーム101は図1に概略的に示され、プラットフォームの培養チャンバー103は図2に概略的に示される。バイオリアクタープラットフォーム101の特定の実施態様の付加的な特徴は図3に例証される。
【0042】
一実施態様において、培養チャンバー103は、したがって、セルフシール能を有する材料の弾性膜を含んでよい。したがって、膜に、針、皮下注射針、ランセットまたはカニューレといったツール202を突き刺す場合、ツール202は、膜を含む培養チャンバー103に含まれる液体にアクセスすることができるだろう。ツール202の除去により、セルフシール能は、チャンバーが密閉され、望まれない漏れを予防することを保証するだろう。それ故、例えばシリンジの助けによって卵母細胞201を皮下注射針に入れ、皮下注射針の先端を弾性膜に突き刺し、培養チャンバーの適切な位置における卵母細胞201を注入することにより、受精された卵母細胞201を培養チャンバー103に配置してよい。その後、培養チャンバー103は、1以上のリザーバー102からの適切な増殖培地で灌流してよい。
【0043】
別の実施態様において、培養チャンバー103は、チャンバーへのアクセスを可能にするための閉鎖可能部材105を含む。閉鎖可能部材105は、1つの設定では、培養チャンバー103において液体を包囲し、培養チャンバー103を液体で灌流するときに漏れを予防する役目を果たすよう設計され、別の設定では、閉鎖可能部材105は、ピペット、針、皮下注射針、ランセットまたはカニューレまたはその他のツールといったツール202使用を使用してチャンバーに物理的にアクセスし、培養チャンバーの内容物を操作できるように設計される。閉鎖可能部材105は、中規模バイオリアクタープラットフォーム101の一部であってよく、または、コントロールユニットの一部であってよい。好ましい実施態様において、閉鎖可能部材105は透明である。
【0044】
閉鎖可能部材105は、有利に、ヒンジ式またはスライド式であってよいフタの形態をとってよい。閉鎖可能部材105がフタの形をしている場合、それは、典型的に、1以上の熱可塑性ポリマーといった強固な材料から構築されるが、さらにPDMSまたはゴムのようなエラストマー材料を含んでもよい。この実施態様において、フタの開放は、例えば受精された卵母細胞を含むピペット先端を挿入し、培養チャンバー103に適切に卵母細胞201を配置し、その後、フタを閉じ、1以上のリザーバーからの適切な増殖培地で培養チャンバー103を灌流することを可能にするだろう。
【0045】
別の実施態様において、中規模バイオリアクタープラットフォーム101の培養チャンバー103における液体は、水性液体204、および水性液体204に本質的に不混和性の別の液体203を含む。これの本質的に不混和性の液体203は、パラフィン油のような、水性液体204より低い密度のオイルであってよく、それは水性液体204の上にオーバーレイ層203のように存在してよい。培養チャンバーに含まれる卵母細胞201のような細胞は、典型的には水性液体204によるより低い層に存在するだろう。そのようなオーバーレイオイル層203は、培養チャンバーにおける水性液体204の灌流体積を最小化し、水相における増殖培地からの蒸発を予防し、水性液体204の生物学的コンタミネーションを最小化するよう機能してよい。特に、オイル層の適用は、COの蒸発を予防してpHを維持することを助ける。オイル層は、さらに、培養チャンバーの正確な温度の維持を助けてよい。中規模バイオリアクタープラットフォーム101に弾性のセルフシール膜またはフタが取り付けられる場合、オーバーレイオイル層203の適用が有用である。
【0046】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォーム101の培養チャンバー103は特定の形に制限されない。しかしながら好ましい実施態様において、培養チャンバー103の形は、一般に、本質的に丸い周囲を有して記述されてよい。この周囲の直径は、円柱の高さより大きくまたは小さくてよい。円柱の高さは、通常、垂直軸に従うだろう。一実施態様において、円筒状の培養チャンバー103の直径は、約2から約6mmまでであってよく、別の実施態様において、約20から約30mmまでであってよい。これらの円筒状の培養チャンバーの深さは、約0.5から約2mmまであってよい。
【0047】
その他の実施態様において、培養チャンバー103は一般に箱型であってよい。この箱型は、一般に、長方形の側面を有する平らな箱の形態であってよく、または箱は立方体に近い形であってよい。一実施態様において、培養チャンバー103は、幅が約5から約10mmで、長さが最大約50mmであってよい。そのような箱型の培養チャンバーの深さは、約0.5から約2mmまでであってよい。
【0048】
本発明の培養チャンバー103は、さらに、チャンバーの底の表面において1以上のくぼみ205を備えてよい。これらのくぼみ205は、一般に、同様のサイズの水平および垂直の寸法を有した円筒状であってよい。寸法は典型的に約500μmである。くぼみ205は1以上の哺乳細胞201の保持に適している。それは、受精された卵母細胞201の保持に特に適している。したがって、胚の培養に先立って、例えばピペットまたは皮下注射針によって、受精したまたは未受精の卵母細胞201を培養チャンバー103のくぼみに設置してよい。1つのくぼみだけが存在する場合、それは、一般に、培養チャンバーの底の表面の中央に位置してよい。1を超えるくぼみが存在する場合、これらは、底表面においてラインに沿って位置してよく、またはそれらは適切なパターンでレイアウトされてよく、たとえば、長方形、三角形または六角形のセルのメッシュによって決定され、蜘蛛の巣に類似したメッシュによって決定され、または同心円の周囲に沿って決定されてよい。
【0049】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォーム101は、単一の培養チャンバーに限定されない。実際、ある実施態様において、バイオリアクタープラットフォーム101は、いくつかの培養チャンバー、例えば10−20の培養チャンバーを含む。これらの培養チャンバーは、連続的に接続された培養チャンバーの1以上の群に配置されてよい。各々の群は、前記リザーバーと平行に接続してよい。したがって、プラットフォームは、単一の培養チャンバー、平行に接続する複数の培養チャンバー、または各々の群が平行に接続される、連続的に接続した培養チャンバーの群を含んでよい。
【0050】
好ましい実施態様において、本発明の中規模バイオリアクタープラットフォーム101は、約4mmの直径および約1.5mmの深さを有し、各々底表面に単一のくぼみを有し、および培養チャンバーの各々の体積が約20μL以下である、10の円筒状の培養チャンバーを含む。この実施態様において、培養チャンバーは、リザーバーと連続的に連結する。
【0051】
別の好ましい実施態様において、本発明の中規模バイオリアクタープラットフォーム101は、約20−40mmの直径の1つの円筒状の培養チャンバー103を含む。この実施態様において、培養チャンバー103は8−20のくぼみを有する。
【0052】
培養チャンバーの内部表面は滑らかまたは粗くてよいが、特定の適用のために、培養チャンバーに細胞の増殖を支持する足場206を取り付けてよい。そのような足場206は培養チャンバーを構築する材料の一部であってよく、または挿入可能なインプリントの形態であってよい。足場206は、生物学的に生じる接触面に類似するように形成してよく、物理的に印刷されたパターン、もしくは様々なパターンの親水性および疎水性の部位を有するパターン、またはその2つの組み合わせを含んでよい。更に別の実施態様において、足場206は、タンパク質、帯電した基、細胞、細胞残屑等といった細胞の結合に適切な種によって化学的に官能化されてよい。
【0053】
中規模バイオリアクタープラットフォーム101の流体構造は、一般にリザーバー102と培養チャンバー103との間に位置すると考えられるミキシングセクション301を更に含んでよい。したがって、2以上のリザーバー102からの液体の流れは、それ故、液体が培養チャンバーに達する前に混合される。そのようなミキシングセクション301は、チャネルセクションの内部表面上の内部構造、例えばヘリングボーン骨格または無秩序ミキサーを含んでよく、または拡散による液体の混合を可能にする、長さに寄与する要素、例えば蛇行チャネルまたは螺旋状チャネルを含んでよい。プラットフォームはさらに、リザーバー102からの流れを多数のチャネルに分ける多岐管302または同様の構造を含んでよい。
【0054】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォーム101のリザーバー102は、一般に、培養チャンバーよりも体積が大きい。好ましい実施態様において、リザーバー102の体積はチャンバーの体積よりも少なくとも10倍大きい。別の好ましい実施態様において、リザーバー102の体積はチャンバーの体積よりも少なくとも20倍大きい。本発明の一側面によると、リザーバー102に陽性相対圧力を適用することにより、または培養チャンバーを介してリザーバー102に流体連結する中規模バイオリアクタープラットフォーム101の出口104に陰性相対圧力を適用することにより、リザーバー102からの流れを生じさせてもよい。
【0055】
一実施態様において、リザーバー102を包含する構造の一部は、リザーバーの体積の調節を可能にする可撓性領域106を含む。この実施態様において、可撓性材料の外部表面に陽性相対圧力を適用することは、中規模バイオリアクタープラットフォームの培養チャンバー103に向かうリザーバーに含まれていた液体の流れを作るだろう。可撓性領域106は、好ましくはPDMS、ゴム、ポリエチレン等の高分子材料を含む。材料は、接着剤による付着、超音波圧接、レーザー溶接、熱を使用する溶接、圧締め、スティッチ溶着等といった当該分野で周知の方法を使用して、リザーバー102を含む基体に付けてよい。
【0056】
好ましい実施態様において、リザーバー102は、リザーバーへの外部接続を可能にする空気入口107を含む。この空気入口107は、好ましくは約0.1μmから約0.5μmの孔サイズを有するフィルターを含み、例えば、微粒子の材料がリザーバーに入ることを妨いでよい。空気入口107をガス供給に接続し、陽性相対圧力の適用により、液体をリザーバーから出しおよび培養チャンバーに入れることを可能にしてもよい。空気入口107はさらに、中規模バイオリアクタープラットフォーム101の出口104に適用された陰性相対圧力が、リザーバーの液体を引っ張り、培養チャンバーに入れることを可能にする。リザーバー102または出口104にそれぞれ適用される陽性および陰性相対圧力を、さらに、培養チャンバー103における液体の体積を制御するために使用してよい。
【0057】
これらの実施態様において、リザーバー102への空気入口107を介した空気またはガスのアクセスを制御するためのバルブ303の使用により、異なるリザーバー102a、bからの液体の分布をそれぞれ制御することも可能だろう。例えば、1つのリザーバー102に接続されたバルブ303を閉じることにより、培養チャンバー103への液体の流れがその他のリザーバー102から生じることが保証されるだろう。そのようなバルブ303は、中規模バイオリアクタープラットフォームに対して外部に位置するだろう。バルブ303は、プラットフォーム101の出口104への陰性相対圧力の適用による操作を意図した中規模バイオリアクタープラットフォーム、ならびにリザーバーへの陽性相対圧力の適用による操作を意図したプラットフォームに適用してよい。
【0058】
中規模バイオリアクタープラットフォーム101のリザーバー102は、一般に平らな円柱の形態をとってよく、または長いチャネルの形態をとってよい。そのようなチャネルは蛇行構造に配置されてよい。リザーバー102が円柱形状である場合、空気入口107は、一般に、円柱の近くまたは上に位置すると考えられ、培養チャンバー103に接続されたチャネルは、一般に、円柱の近くまたは底に位置するだろう。円柱の底は平らな表面を有してよく、または、表面は円錐形または漏斗形であってよく、それは傾斜してよく、または上記の特徴を組み合わせたより複雑な形であってよい。
【0059】
一実施態様において、中規模バイオリアクタープラットフォーム101に、さらに、無線周波数識別(RFID)−タグ304が取り付けられる。このRFID−タグは、バイオリアクタープラットフォームの迅速で便利な識別を可能にする可能性がある。RFIDタグに含まれる情報が、所与のバイオリアクタープラットフォームにおいて培養される細胞の提供者のアイデンティティーに関連づけられる場合、バイオリアクタープラットフォーム101の識別は有利である。
【0060】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォームは、好ましくは、親水性の表面を有する本質的に透明な材料から構築されるが、十分に定義された疎水性の表面の領域を使用してもよい。構築材料は好ましくは1以上の熱可塑性ポリマーであるが、ガラス、シリコン、金属、エラストマー系ポリマーといったその他の材料を使用してもよい。
【0061】
本発明の中規模バイオリアクタープラットフォームのチャネルおよびチャンバーは、チャネルおよびチャンバーに対応する構造を含む第1の基体と第2の基体との連結により形成してよい。したがって、チャネルおよびチャンバーは、層状に基体を連結することで2つの基体間で形成される。中規模バイオリアクタープラットフォームは2つの基体層に限定されない。特定の実施態様において、複数の基体を使用してよく、この場合、基体の各々は、適切に、チャネルおよびチャンバーのための構造を含んでよい。その後、これらの複数の基体は層状に連結され、中規模バイオリアクタープラットフォームとして組み立てられる。
【0062】
基体におけるチャネルおよびチャンバーに対応する構造は、任意の適切な方法を使用して作製してよい。好ましい実施態様において、基体材料は熱可塑性ポリマーであり、適切な方法はミリング、マイクロミリング、ドリリング、カッティング、レーザアブレーション、ホットエンボシング、射出成形およびマイクロインジェクション造形法を含む。これらおよびその他の技術が当業者に周知である。チャネルは、さらに、キャスティング、成型、ソフトリソグラフィ等の適切な方法を使用して、その他の基体材料にて作製してよい。
【0063】
基体材料はまた、任意の適切な方法を使用して連結してもよい。好ましい実施態様において、基体材料は熱可塑性ポリマーであり、適切な連結方法は、接着、溶剤結合、圧締め、超音波圧接、レーザー溶接を含む。
【0064】
本発明は、さらに、中規模バイオリアクタープラットフォーム101のためのコントロールユニット401に関する。このコントロールユニット401は、バイオリアクタープラットフォームのリザーバー102に陽性相対圧力を適用することができ、および/またはバイオリアクタープラットフォームの出口104に陰性相対圧力を適用することができる。そのような圧力の適用は、バイオリアクタープラットフォームの培養チャンバー103に向けての1以上のリザーバーからの液体の流れを作るだろう。陽性相対圧力によりリザーバー102に適用されるガス、または出口104に適用される陰性相対圧力によりリザーバー102に吸引されるガスは任意の組成であってよい。したがって、ガスは空気であってよく、または例えば2−10%のCOで予め混合されてよく、および/または2−20%のOを有する三重ガスであってよい。本発明の一実施態様によるコントロールユニット401は、図4に模式的に示される。
【0065】
一実施態様において、コントロールユニット401は、適切な導管を介してバイオリアクタープラットフォームの出口に流体連結する液体ポンプ404を含み、ポンプ404は、出口104を介してバイオリアクタープラットフォームから液体を吸引し、これによって、リザーバーから培養チャンバーへの流れを作り出すために使用してよい。このポンプ404は、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、シリンジポンプ、メンブレンポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、マイクロアニュラーギアポンプまたは任意のその他の適したタイプのポンプであってよい。
【0066】
別の実施態様において、コントロールユニット401は、ガスをポンプでくみ出すことに適した1以上のポンプ404を含む。この実施態様において、1以上のポンプ404はバイオリアクタープラットフォームの空気入口に流体連結されているだろう。コントロールユニット401は、バイオリアクタープラットフォームの各々のリザーバーのためのポンプ404を含んでよく、または、それは単一ポンプ404を含んでよく、または多数のポンプ404がこれらの2つのバルブの間に存在してよい。コントロールユニット401がリザーバーの数より少ないポンプ404を有する場合、コントロールユニット401は、さらに、中規模バイオリアクタープラットフォームの増殖チャンバーに供給される液体の組成を、リザーバーの内容物に関して制御することを可能にするバルブを含むだろう。この実施態様使用されるポンプ404は、ピストンポンプ、シリンジポンプ、メンブレンポンプ、ダイヤフラムポンプまたは任意のその他の適したタイプのポンプであってよい。
【0067】
更に別の実施態様において、コントロールユニット401は、バイオリアクタープラットフォームの空気入口にガスをポンプでくみ出すことに適した1以上のポンプ404およびバイオリアクタープラットフォームの出口に流体連結する液体ポンプ404の両方を含む。
【0068】
本発明のコントロールユニット401は、好ましくは、中規模バイオリアクターの液体の環境パラメーターを測定するために設定される1以上のセンサー402を含む。これらのパラメーターは、典型的に、pH、溶存酸素(O)、二酸化炭素(CO)、グルコース、栄養素、ビタミン、代謝物質、流速、温度、光学濃度、蛍光シグナル、特異的なタンパク質もしくは酵素、またはDNAもしくはRNAであるが、その他のパラメーターが適していてもよい。これらのセンサー402は、培養チャンバー下流の液体測定を行なうために、中規模バイオリアクターの出口に接続された導管に組み込んでよい。別の実施態様において、センサーは培養チャンバーにおける液体の測定を行なうために設定される。
【0069】
これらのセンサー402に加えて、コントロールユニット401は、光学的検出および観察システムを備えてよい。これらの光学システムは、発光ダイオード(LED)、電球、水銀灯等の光源405、適切なフィルター406および光検出器407を含むことができる。LEDは白色光を放射するタイプであってよく、または相対的に小さな波長の光を放射するタイプであってよい。この後者の型のLEDは、LEDの特徴に対応する波長の光学濃度の測定に適してよく、または特徴的な波長の光を放射する蛍光要素を励起し、その後蛍光シグナルを検出することに適してよい。あるいは、水銀灯はまた、適切な光フィルター406および光検出器407と組み合わせた場合、蛍光シグナルの検出に適切な構成要素である。
【0070】
好ましい実施態様において、コントロールユニット401はデジタルまたは光学顕微鏡408を備えている。この実施態様において、コントロールユニット401はまた、1以上の光源405を備えてよい。別の実施態様において、コントロールユニット401はまた、ディスプレイ409を備え、培養チャンバーおよびその内容物を、顕微鏡408を介してモニターすることが可能である。更に別の実施態様において、コントロールユニット401はさらに、培養チャンバーにて成長する任意の細胞をモニターし、細胞の形態に依存して、リザーバーおよび/または中規模バイオリアクタープラットフォームの出口に適用される圧力を制御する機器に、層状空気流を作るガス供給413に、および中規模バイオリアクタープラットフォームの温度を調節する加熱または冷却システム410にコマンドを送ることができる可視化ソフトウェアを含む。細胞の形態は、数、サイズ、形もしくは細胞の配向または組み合わせを含んでよい。形態はまた、光学検出システムからの蛍光シグナルまたは比色定量シグナルを含んでよい。
【0071】
コントロールユニット401は、さらに、中規模バイオリアクタープラットフォームの温度を調節するためのシステム410を備えてよい。好ましい実施態様においてこのシステム410はさらに、データプロセシングユニット403を介して温度の制御が可能な、データプロセシングユニット403と連結された1以上の温度センサー411を含む。温度制御システム410は、例えば、バイオリアクタープラットフォームを収容するよう形作られ、液体の加熱および/または冷却のための電気伝導性ワイヤーのコイル、ペルチェ素子、チューブを含むアルミニウムブロック、あるいはその類似物を含んでよい。好ましい実施態様において、コントロールユニット401は、加熱要素410および温度センサー411を有するアルミニウムブロックを備えてよく;この温度センサー411はデータプロセシングユニット403に接続される。別の好ましい実施態様において、コントロールユニット401は、加熱要素410を含む、ガラスといった透明な材料のブロックを備える。データプロセシングユニット403は、この実施態様において、いわゆるモデル予測制御(MPC)アルゴリズムにおける温度センサー411からのシグナルを使用して、加熱要素に供給された電力の制御により中規模バイオリアクタープラットフォームの温度を正確に調節してよい。
【0072】
中規模バイオリアクタープラットフォームを含むコントロールユニット401は、有利に、中規模バイオリアクタープラットフォームを囲むコンパートメント412であって、ガスが供給されバイオリアクタープラットフォームのまわりで層状空気流(LAF)413を作ってよいコンパートメント412を含んでよい。この「層状空気流」413は、空気が、事実上乱流がないパターンにてコンパートメント412を通って流れている状態を意味し、これらの条件は、特定の材料に起因する空気を培養チャンバーから取り除き、これによって、例えば培養チャンバーが物理的アクセスのために開けられたときに、チャンバーにおける細胞のコンタミネーションを予防することに寄与してよい。一実施態様において、層状空気流413は、コンパートメント412に対して、バイオリアクタープラットフォームの下からバイオリアクタープラットフォーム上の1以上の出口へ供給され、空気は一般に上向き方向に移動する。別の実施態様において、層状空気流はバイオリアクタープラットフォームの表面に沿って、すなわち、実質的に水平の配向で方向付けられる。層状空気流413は大気から作られてよいが、好ましい実施態様において、COの含有量は、例えば約2−10%または好ましくは5%を超えて、空気に対して増大させてよい。その他の実施態様において、Oの含有量もまた増大または減少させてよい。層状空気流の圧力は外気のそれと本質的に同一であってよい。しかしながら、圧力は、好ましくは外気に対して増大される。層状空気流のCOもしくはOまたはその他のガスの含有量が増大される場合、流れは、さらに、バイオリアクタープラットフォームにおける液体のpHが調節されるように制御してよい。層状空気流の線形の流れ速度は、典型的に、50μm/sから0.1m/sの範囲内である。
【0073】
一実施態様において、コントロールユニット401はさらにデータプロセシングユニット403を含む。このデータプロセシングユニット403は、コントロールユニット401のセンサー402および/または411からシグナルを収集し、およびバイオリアクタープラットフォーム101における液体の流速を制御するために、コマンドを送信して、リザーバーに適用された陽性相対圧力を制御しおよび/またはバイオリアクタープラットフォームの出口に適用された陰性相対圧力を制御し、ならびに、コマンドを送信して温度または層状空気流を適切に調節することができる。
【0074】
これらの操作上のパラメーターの制御は、前もって定義した日付順の一続きの事象に基づいてよく、またはコマンドは、例えばフィードバック型ループで、コントロールユニット401におけるセンサー402および/または411から収集されたシグナルに基づいてよい。前もって定義した連続したコマンドが使用された場合、これは、例えば、常に温度を37℃に維持しながら、所与の流速で設定した日数の間、リザーバー102aからの増殖培地で胚を灌流し、その後、培養期間の残りの期間、同じまたは異なる流速でリザーバー102bからの増殖培地による灌流に変更することを含み得る。
【0075】
操作上のパラメーターを決定するセンサー402および/または411からのシグナルを使用する機構の例は、温度が設定した範囲外にあることを温度センサー411が示す場合に、データプロセシングユニット403がコマンドを送信し、中規模バイオリアクタープラットフォームを加熱または冷却し、温度を再び設定した範囲内に戻すことであろう。同様に、pHが設定した範囲から移動していることをセンサー402が示すと、ガス供給413は、例えば、増大する量のCOが中規模バイオリアクタープラットフォームを含むコンパートメント412に適用されるように調節されてよい。O、グルコースおよびその他の代謝物質(ピルビン酸塩および乳酸塩)およびエネルギー(ATP/ADP)の濃度もまた、操作上のパラメーターの制御のために使用してよい。
【0076】
操作上のパラメーターの制御は、さらに、センサー402および/または411からのシグナルを使用する、より複雑な指示のセットを含んでよい。例えば、センサー402または411からのシグナルまたは観察が、培養チャンバーにて事象が生じていることを示す場合、指示セットは、事象に対処し、且つ、pH、温度または培養チャンバーに灌流される栄養素といったパラメーターの安定したパラメーター値を維持するためのデータプロセシングユニット403のための指示を含んでよく、指示セットは、培養チャンバーにおける細胞に対して条件の新規のセットを適用するためのデータプロセシングユニット403のための指示を含んでよい。これは、例えば、特定の形態が培養チャンバーにおける胚のために観察される場合、1つのリザーバーに含まれる増殖培地からその他のリザーバーのそれへと流れを変更することでありうる。したがって、これらの条件は、流速、温度、pH、異なるリザーバーからの流れの分布等のパラメーターを含み得る。
【0077】
データプロセシングユニット403は、操作上のパラメーター(チャネルおよびチャンバーにおける流速、異なるリザーバーからの流れの分布、温度、pH等)をオペレーターが手動で制御することを可能にするユーザーインターフェースをさらに含んでよい。そして、したがって、コントロールユニット401は、完全に自動で前もって定義した一連の事象で、またはコントロールユニット401のセンサー402からのシグナルによって決定された完全に自動の一連の事象で、手動操作される一連の事象で、またはこれらの操作方針の任意の組み合わせで、中規模バイオリアクタープラットフォームのパラメーター値を制御するために設定してよい。
【0078】
動作原理にかかわらず、データプロセシングユニット403は、コントロールユニット401のセンサーから収集されたシグナルの時間的ログを作ってよい。この時間的ログは、さらに、例えば中規模バイオリアクタープラットフォームの培養チャンバーにおける事象に関する情報を含んでよく、またはプラットフォームのための環境上のパラメーターを制御するために使用されるコマンドを含んでよい。時間的ログは、中規模バイオリアクタープラットフォームにおけるRFIDタグからの情報と有利につながれてよく、一実施態様において、コントロールユニット401は、RFIDタグを読むためのセンサーを含む。このように、時間的ログは、細胞の提供者の名前およびアイデンティティーといったバイオリアクタープラットフォームの細胞の由来に関する情報ならびにオペレーターのアイデンティティーを含むデータタグと容易につなげられてよい。
【0079】
本発明のコントロールユニットは、単に、単一の中規模バイオリアクタープラットフォームを保持するように設計されてよい。しかしながら、別の実施態様において、コントロールユニットは、例えば、1つのコントロールユニットに、6までの中規模バイオリアクタープラットフォームを含んでよい。
【0080】
本発明は、さらに中規模バイオリアクタープラットフォーム101およびコントロールユニット401を含むシステムに関する。このシステムにおいて、バイオリアクタープラットフォーム101は、好ましくは本発明のコントロールユニット401に設けられるカートリッジ414の形態で設計されている。コントロールユニット401における、適切に設計されたシートまたは類似物へのカートリッジ414の挿入は、バイオリアクタープラットフォームの出口がコントロールユニットの対応する導管に接続され、プラットフォームのリザーバーの空気入口が陽性相対圧力の供給に適切に接続されることを保証するだろう。
【0081】
コントロールユニットにおける、そのシートへのバイオリアクタープラットフォームを含むカートリッジ414の挿入は、さらに、コントロールユニットのセンサーによって、バイオリアクタープラットフォームからの液体をモニターすることを可能にし、さらに、コントロールユニットの温度調節システムとバイオリアクタープラットフォームとの間の有効な熱伝導を保証するだろう。カートリッジ414がコントロールユニットに挿入される場合、コントロールユニットの一部である任意の光学的探知またはモニタリングシステムが、中規模バイオリアクタープラットフォームにおける培養チャンバーまたはチャネルと適切に配列されるだろう。
【0082】
したがって、適切に設計されたコントロールユニットに装着されるカートリッジ414に含まれる中規模バイオリアクタープラットフォームの適用は、中規模バイオリアクタープラットフォームとコントロールユニットとの間の迅速な連結を可能にし、統合システムの操作を単純化するだろう。バイオリアクタープラットフォームおよびコントロールユニットを含むシステムの例では、コントロールユニットは、ペルチェ素子または加熱コイルといった適切な温度調節システムを有したアルミニウムまたはガラスブロック、およびカートリッジ414の挿入において有効な密閉を保証する組み込まれた導管およびOリング415を含み得る。アルミニウムまたはガラスブロックの物理的形態は、カートリッジ414を唯一の方法で挿入すると、出口がコントロールユニットの導管に接続され、リザーバーの空気入口が適切に接続されるような形態であろう。中規模バイオリアクタープラットフォーム101および一致するコントロールユニット401は、出口104が、中規模バイオリアクタープラットフォームの上部または底部表面にそれを置くことで、上向きまたは下向きに面するように設計してよい。カートリッジ414の正確な挿入は、好ましくはオペレーターにとって明白であろう。
【実施例】
【0083】
[例1:中規模バイオリアクタープラットフォームの構成]
基体材料の4つの層から成るプロトタイプ中規模バイオリアクタープラットフォームは、2DドローソフトAutoCAD LT (Autodesk, San Rafael, CA, USA)を使用して設計した。バイオリアクタープラットフォームの設計は、16mmの直径および5mmの深さ(体積1mL)の2つの円筒状のリザーバーを含み、それは2つのチャネルによって接続点に接続されていた。各々のリザーバーは、リザーバーの周囲の環境への接続を可能にするチャネルを有していた。接続点からのチャネルは、4mmの直径および1.5mmの深さ(体積20μLに相当)の3つの連続的に接続された培養チャンバーに通じていた。各々の培養チャンバーは、底部表面に約500μmの直径および200μmの幅のくぼみを有していた。廃棄チャネルが第3の培養チャンバーから周囲の環境に通じた。
【0084】
バイオリアクタープラットフォームの設計の底部層は、500μmの直径の貫通孔および培養チャンバーの3つのくぼみを有した長方形のプレート(5cm×8cmのサイズ)であった。このプレートは、培養チャンバー(4mmの直径)に対応する3つの貫通孔および付加的な2つの貫通孔(500μmの直径)(その位置は、上記の層におけるリザーバーの位置と一致する)を含む第2の基体プレート(4.5cm×7.5cmのサイズ)と接続されるよう設計されていた。2つの直径500μmの孔が、接続点に連絡するチャネル(幅500μm)とそれぞれ接続され、接続点から培養チャンバーに対応する第1の孔に通じるチャネル(幅500μm)を形成していた;さらなるチャネルはその他の培養チャンバーの孔に接続し、最終チャネルは、底部層における貫通孔と一致するよう設計されていた(これにより、廃棄物チャネルを構成した)。すべてのチャネルは、第2の層の底部表面に作られるように設計されていた。第3の層(4.5cm×2.5cmのサイズ)は、単にリザーバーに対応する2つの直径16mmの貫通孔を含んでいた。第4の層(4.5cm×2.5cmのサイズ)は、2つのリザーバーの中央に対応する位置からプレートの一端まで通じるチャネル(幅500μm)を含んでいた。第4の層のチャネルは、このプレートの底部表面に作られるように設計されていた。
【0085】
AutoCAD LTの設計を、Synrad Fenix Marker CO−レーザー(Synrad Inc., Mukilteo, WA, USA)を使用して、構造を切断してポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)の基体にするために使用した。透明なPMMA基板は、Rohm GmbH & Co.(Plexiglas XT20070, Rohm GmbH & Co., Darmstadt, Germany)から供給された;リザーバーを含む層は厚さ5mmであり、その他のすべてのものは厚さ1.5mmであった。切除に先立って、AutoCAD LTの設計は、カプセル化されたポストスクリプトファイルに変換され、Synrad Fenix Marker CO−レーザーを制御するWinMark Proソフトウェアに取り込まれた。切除は、当業者に周知のレーザー値を使用して行なわれた。
【0086】
PMMA基体の応力亀裂を予防するための80℃での適切なアニーリングに続き、3つの最上部の基体の底部表面を、IR吸収色素(ClearWeld LD130, Gentex Corp., Carbondale, PA, USA)で染色した。その後、異なる層は、強力な〜800nmのレーザー光線を作ることができるFisba FLS Ironレーザースキャナー(Fisba Optik AG, St. Gallen, Switzerland)を使用して相互に溶接した。最初に、第2の基体層を底部基質層に溶接し、次に、第3および第4の層を、層のスタックに順次溶接した。溶接の間、基体は、レーザー光線を透過するガラスで作られたバイスを適切に使用して気圧調節した。有効な溶接のための最適なレーザー値は当該分野で周知である。
【0087】
このプロトタイプ中規模バイオリアクタープラットフォームの3つの培養チャンバーは開放し、アクセスすることができる。灌流操作の間、培養チャンバーを、例えばPDMSの厚板で閉じてよい。
【0088】
[例2:中規模バイオリアクタープラットフォームの構成]
(第2の基体層における)3つの連続的に接続した培養チャンバーを、20mmの直径の単一培養チャンバー(体積0.5、mL)と取り替えたこと以外は、例1に記述されるように中規模バイオリアクタープラットフォームを設計および構築した。この単一の培養チャンバーの底は、チャンバーの中央に位置する直径10mmの円の周囲に配置される6つのくぼみ(約500μmの直径および200μmの幅)を含んだ。
【0089】
[例3:コントロールユニットの構成]
高分子材料の適切なボックスを、中規模バイオリアクタープラットフォームの収容のためにプロトタイプのコントロールユニットを構築するために選択された。ボックスのサイズは約16×24×12cmであった。ボックスは、加熱調節要素として機能するアルミニウムブロック(約10×7×2cm)を含むためのより小さなボックス、および例1または例2記述される中規模バイオリアクタープラットフォームの何れかから成るコンパートメントが装着された。アルミニウムブロックは正確にバイオリアクタープラットフォームを収容するよう機械加工され、中規模バイオリアクタープラットフォームの出口の位置に対応する位置に、孔(1mmの直径)をあけた。孔の開口部をゴム製Oリング(1mmID)を収容するために拡張し、出口孔にミクロスケールのpH電極に接続された1個の0.5mmIDテフロン(登録商標)チューブを取り付け、さらに2mLシリンジポンプに接続した。pH電極はセンサーボードに接続され、さらに、PCで実行されるLabView (ver. 8, National Instruments, Austin, Texas, USA)に接続された。
【0090】
アルミニウムブロックはさらに、DCの電源に接続された、ペルチェ素子または加熱コイルの何れかである温度調節要素を収容するよう機械加工された。電子温度センサーをアルミニウムブロックへ組み込んだ。加熱要素および温度センサーのための電子制御をともにセンサーボードに接続した。カスタムメイドのLabViewアプリケーションを、温度センサーからの入力に基づいて温度を制御するためのモデル予測制御(MPC)アルゴリズムを実行するように作った。アルゴリズムの根本方針は図5aに示され、図5bにおけるアルゴリズムの試験は、時間の関数としてのアルミニウムブロックの測定された温度およびプログラムされた温度変化を示す。
【0091】
アルミニウムブロックを含むコンパートメントは、密閉できるフタを有した透明なプラスティックボックスから成る。このボックスの底部側は約1cmの直径円形孔を有し、この孔は、アルミニウムブロックを囲む層状空気流を供給できる空気供給システムに接続された。
【0092】
プロトタイプのコントロールユニットボックスは、さらに、各々1個の(0.5mmID)チューブが取り付けられた2つのシリンジポンプを備え、バイオリアクタープラットフォームの空気入口への接続が可能であった。
【0093】
全てのポンプの制御は、センサーボードを介してLabViewアプリケーションから行なわれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養チャンバーが流体連結した2以上の液体リザーバーを含む中規模バイオリアクタープラットフォーム、
ここにおいて、前記チャンバーは、出口に流体連結しており、前記プラットフォームは、1以上の前記液体リザーバーからの液体の流れを前記チャンバーに灌流させることができる手段が提供される。
【請求項2】
前記培養チャンバーが閉鎖可能部材または弾性膜を介して物理的にアクセス可能である、請求項1に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項3】
前記閉鎖可能部材がヒンジ式フタまたはスライド式フタを含む、請求項2に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項4】
前記弾性膜が、セルフシール能を有する材料から作られる、請求項2に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項5】
前記培養チャンバーの灌流を可能にする前記手段が、前記リザーバーの体積の調節を可能にする可撓性領域を含む、請求項1から4の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項6】
前記培養チャンバーの灌流を可能にする前記手段が、前記リザーバーへの外部接続を可能にする空気入口であって、約0.1μmから約0.5μmの孔サイズを有するフィルターを含む空気入口を含む、請求項1から5の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項7】
前記2以上のリザーバーと前記培養チャンバーとの間の前記流体連結がチャネルによって提供される、請求項1から6の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項8】
前記バイオリアクタープラットフォームが、連続的に接続された培養チャンバーの1以上の群に配置された複数の培養チャンバーを含む、請求項1から7の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項9】
前記バイオリアクタープラットフォームの前記培養チャンバーが、細胞増殖を支持する足場を含む、請求項1から8の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォーム。
【請求項10】
2以上のリザーバーから培養チャンバーへの液体の流速を誘導するための手段を含む、請求項1から9の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォームのためのコントロールユニット。
【請求項11】
前記手段が、前記リザーバーに陽性相対圧力を適用できおよび/または前記出口に陰性相対圧力を適用できる、請求項10に記載のコントロールユニット。
【請求項12】
前記手段が、前記バイオリアクタープラットフォームの前記空気入口にガスを送り込むことに適したポンプおよび/または前記バイオリアクタープラットフォームの前記出口に流体連結した液体ポンプを含む、請求項11に記載のコントロールユニット。
【請求項13】
前記リザーバーに陽性相対圧力を適用することができる前記手段が、ガスを送り込むことに適した、ピストンポンプ、シリンジポンプ、メンブレンポンプまたはダイヤフラムポンプといったポンプを含む、請求項11に記載のコントロールユニット。
【請求項14】
2−10%のCOおよび/または2−20%のOを含むガス組成物のガス供給を更に含む、請求項13に記載のコントロールユニット。
【請求項15】
前記出口に陰性相対圧力を適用するための前記手段が、液体を吸引するためのポンプ、例えば、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、シリンジポンプ、メンブレンポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、マイクロアニュラーギアポンプを含む、請求項11に記載のコントロールユニット。
【請求項16】
pH、溶存酸素(O)、二酸化炭素(CO)、グルコース、栄養素、ビタミン、代謝物質、流速、温度、光学濃度、蛍光シグナル、特異的なタンパク質もしくは酵素、またはDNAもしくはRNAを測定できる少なくとも1つのセンサーをさらに含む、請求項10から15の何れか1項に記載のコントロール。
【請求項17】
発光ダイオード(LED)、電球、水銀灯等といった光源、適切なフィルターおよび光検出器を更に含む、請求項10から16の何れか1項に記載のコントロールユニット。
【請求項18】
デジタルまたは光学顕微鏡を更に含む、請求項10から17の何れか1項に記載のコントロールユニット。
【請求項19】
バイオリアクタープラットフォームを収容するよう形作られ、液体の加熱および/または冷却のための電気伝導性ワイヤーのコイル、ペルチェ素子またはチューブを含む金属ブロックを含む温度制御システムを更に含む、請求項10から18の何れか1項に記載のコントロールユニット。
【請求項20】
中規模バイオリアクタープラットフォームを囲むコンパートメントであって、ガスが供給されバイオリアクタープラットフォームのまわりで層状空気流を作ってよいコンパートメントを含む、請求項10から19の何れか1項に記載のコントロールユニット。
【請求項21】
前記センサーからシグナルを集め、集めた前記シグナルからの情報を使用して、2以上のリザーバーの各々からの流速、温度、前記ガスの組成および/または前記層状空気流を制御することができるデータプロセシングユニットをさらに含む、請求項10から20の何れか1項に記載のコントロールユニット。
【請求項22】
請求項1から9の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォームおよび請求項10から21の何れか1項に記載のコントロールユニットを含む生物学的細胞を培養するためのシステムであって、前記中規模バイオリアクタープラットフォームは、コントロールユニットに備えられたカートリッジに含まれるシステム。
【請求項23】
前記中規模バイオリアクターが無線周波数識別(RFID)−タグをさらに含み、前記コントロールユニットが前記RFID−タグを読み取るためのセンサーを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
以下の工程を含む、生物学的細胞を培養する方法:
請求項1から9の何れか1項に記載の中規模バイオリアクタープラットフォームを提供すること;
請求項10から21の何れか1項に記載のコントロールユニットを提供すること;
異なる増殖培地を前記リザーバーのそれぞれに提供すること;
生物学的細胞を前記培養チャンバーに提供すること;
前記リザーバーの1つからのまたは前記リザーバーの組み合わせからの培地によって前記培養チャンバーを灌流すること;
前記生物学的細胞の要求に合わせて、前記培地を1つのリザーバーから別のリザーバーに変えること、またはさらなるリザーバーからの培地の組み合わせに変えること。
【請求項25】
前記培地または培地の組み合わせが、予め決められた経時的な一連の事象に基づいて変えられる、請求項24に記載の生物学的細胞を培養する方法。
【請求項26】
前記培地または培地の組み合わせが、前記コントロールユニットにおけるセンサーから回収されたシグナルに基づいて変えられる、請求項24に記載の生物学的細胞を培養する方法。
【請求項27】
前記生物学的細胞が哺乳細胞である、請求項24から26の何れか1項に記載の生物学的細胞を培養する方法。
【請求項28】
前記生物学的細胞が微生物細胞である、請求項24から26の何れか1項に記載の生物学的細胞を培養する方法。
【請求項29】
前記哺乳細胞が、幹細胞または免疫系の細胞、例えば単球、樹状細胞もしくはT細胞である、請求項27に記載の生物学的細胞を培養する方法。
【請求項30】
前記哺乳細胞が未受精のまたは受精した卵母細胞である、請求項27に記載の生物学的細胞を培養する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2010−536348(P2010−536348A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521305(P2010−521305)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050192
【国際公開番号】WO2009/026931
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510050258)スマート・バイオシステムズ・エーピーエス (1)
【氏名又は名称原語表記】Smart Biosystems ApS
【住所又は居所原語表記】Hvidkildevej 48, 2nd floor, DK−2400 COPENHAGEN NV, Denmark
【Fターム(参考)】