説明

火災報知設備及びそれに利用する火災感知器

【課題】既設の火災受信機で不具合を報知することを可能とする火災報知設備を提供することを目的としている。
【解決手段】火災受信機1に接続された感知器回線3と、該感知器回線3に接続されスイッチング動作によって火災信号を感知器回線3に出力する1個又は複数の火災感知器2と、を備えた火災報知設備100、200、300において、火災感知器2は、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段12〜14と、該点検手段12〜14の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を感知器回線3に出力する出力手段12〜14と、を備え、感知器回線3は、異常信号を受信したときに感知器回線3を断線させる断線発生手段Rが接続され、火災受信機1は、感知器回線3が断線したときに断線警報を発する断線警報発報手段1を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器、及び火災報知設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の火災報知設備には、火災受信機が中央監視室内に配設されて、火災受信機からライン線と、コモン線が配設され、ライン線とコモン線は終端抵抗を介して接続されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−176289号公報(例えば、段落[0016]〜[0019]、及び図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、例えば、火災感知器に不具合が発生した場合に、火災受信機、例えばP型受信機はその旨を受信して、警報や表示等の制御をすることができない。
また、火災感知器に不具合が発生したことを火災受信機に出力する自己点検機能を備えることで、火災感知器に不具合が発生したかを表示させる場合には、火災受信機を専用の火災受信機(例えば、R型)に取り替えなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、既設の火災受信機を取り替えることなく、火災感知器で発生した不具合を専用の火災受信機でない火災受信機でも報知することを可能とする火災報知設備及びそれに利用する火災感知器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災報知設備は、火災受信機に接続された感知器回線と、該感知器回線に接続されスイッチング動作によって火災信号を感知器回線に出力する1個又は複数の火災感知器と、を備えた火災報知設備において、火災感知器は、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、該点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を感知器回線に出力する出力手段と、を備え、感知器回線は、異常信号を受信したときに感知器回線を断線させる断線発生手段が接続され、火災受信機は、感知器回線が断線したときに断線警報を発する断線警報発報手段を備えたものである。
【0007】
本発明に係る火災感知器は、感知器回線を介して火災受信機と接続され、スイッチング動作によって火災信号を感知器回線に出力する火災感知器において、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を感知器回線に出力する出力手段と、感知器回線からの異常信号を受信する受信手段と、感知器回線に接続される終端素子が装着されている場合に、受信手段が異常信号を受信したときに終端素子を切り離して感知器回線を断線させる切り離し手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る火災報知設備によれば、断線発生手段が、感知器回線に出力された異常信号を受信したときに感知器回線を断線させ、そして、断線警報発報手段が感知器回線が断線したときに断線警報を発する。これにより、本発明に係る火災報知設備は、専用の火災受信機でない場合でも、リニューアルすることなく、既設の火災受信機で火災感知器の不具合を報知することができる。
【0009】
本発明に係る火災感知器によれば、受信手段が異常信号を受信したときに終端素子を切り離して感知器回線を断線させる切り離し手段を備えたので、専用の火災受信機でない場合でも、リニューアルすることなく、既設の火災受信機で火災感知器の不具合を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る火災報知設備の概要構成例図である。
【図2】図1に示す終端抵抗が設けられた火災感知器の制御回路の構成の一例である。
【図3】(a)が通常時と火災時における感知器回線の電圧を示し、(b)が通常時と不具合発生時の感知器回線の電圧を示すものである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る火災報知設備の概要構成例図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る火災報知設備の概要構成例図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る火災報知設備100の概要構成例図である。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1においては、終端抵抗が接続されていない3つの火災感知器2Aが設けられ、終端素子としての終端抵抗Rが装着された1つの火災感知器2Bが設けられた場合を一例として図示している。ここで、火災感知器2Aの数はそれに限定されるものではない。
【0012】
火災報知設備100は、火災感知器2のそれぞれで発生した不具合を報知することができるとともに、その不具合を火災受信機1で警報させることで把握することを可能にしたものである。
火災報知設備100は、建物(例えば、ホテル、マンションなどの集合住宅、オフィスビル、商業施設など)の各部屋等に設置される火災感知器2と、火災感知器2の検出結果に基づいた警報をするP型の火災受信機1とが、感知器回線3であるコモン線3A及びライン線3Bにより接続されて構成されている。P型火災受信機とは、コモン線3A、ライン線3Bからなる感知器回線に接続されている火災感知器の電気的な接点が閉じることにより、感知器回線の電気的な変化に基づいて火災を判断するものである。以下、コモン線3A及びライン線3Bをまとめて感知器回線3と称する場合がある。
【0013】
[火災報知設備100の構成]
火災受信機1は、感知器回線3の電圧等の変化に基づいて、火災の発生を報知するものである。火災受信機1は、例えば、火災を音声で報知するためのスピーカや、表示で報知するためのランプなどが設けられている。なお、火災受信機1は、感知器回線3の断線時には音声やランプによる断線警報により断線したことを報知するが、火災感知器2に不具合があった場合にも、火災感知器2の不具合を、感知器回線3の断線時と同様に断線警報で報知することができる。この火災受信機1は、コモン線3A及びライン線3Bを介して1個又は複数の火災感知器2に接続されている。なお、この火災受信機1は、例えば、建物の防災センタなどといった中央管理室に接続されている。そして、火災受信機1が検出した火災や不具合は、防災センタで報知される。
【0014】
火災感知器2は、火炎によって生じる熱、煙、炎などを検出し、感知器回線3を介して火災受信機1に火災信号を出力するものである。なお、本実施の形態1に係る火災感知器2の火災信号とは、火災感知器2のスイッチング動作によって感知器回線3のインピーダンスを小さくするものとして説明する。また、火災感知器2は、出力値異常等の自身の不具合を検出すると、その旨を不具合信号である異常信号として出力する。また、以下の説明においては、火災感知器2が「熱、煙、炎など」を検知したことを、火災感知器2が「火災」を検知したと述べるものとする。この火災感知器2は、いわゆる送り配線の方式で、それぞれが並列の接続関係となるように感知器回線3を介して火災受信機1に接続されている。
【0015】
火災感知器2には、後述の終端抵抗Rが設けられた火災感知器2Bと、この終端抵抗Rが設けられていない火災感知器2Aとがある。すなわち、本実施の形態1においては、火災感知器2Bが火災受信機1に対して感知器回線3の終端に接続され、火災受信機1と終端の火災感知器2Bとの間に他の火災感知器2Aが接続されている。つまり、この火災感知器2Bは、火災受信機1に対して感知器回線3の終端に接続される終端器となっている。
終端の火災感知器2Bは、他の火災感知器2Aから出力された異常信号、及び自身の異常信号に基づいて、終端抵抗Rと感知器回線3の接続を切り離し、断線させるように制御するものである。
終端抵抗Rは、いわゆる送り配線の方式で接続されている感知器回線3の終端(末端)に接続されている抵抗である。これにより、感知器回線3に微弱な電流を流し、火災受信機1が断線を監視している。本実施の形態1に係る終端抵抗Rは、火災感知器2Bの内部回路を通じて感知器回線3と接続されている。
【0016】
感知器回線3は、コモン線3A及びライン線3Bより構成され、火災受信機1と火災感知器2とを接続するものである。コモン線3A及びライン線3Bには、いわゆる送り配線の方式で、それぞれの火災感知器2が並列の接続関係となるように接続されている。なお、このコモン線3A及びライン線3Bは、これらが1組で1回線を構成する。すなわち、例えば火災受信機1からコモン線3Aを共通として、ライン線3Bを複数本引き出して複数回線とすると、回線ごとに火災信号を受信することができる。
【0017】
[火災感知器2Bの構成]
図2は、図1に示す終端抵抗Rが設けられた火災感知器2Bの制御回路50の構成の一例である。図2を参照して、火災感知器2Bの制御回路50の構成について説明する。
火災感知器2Bは、火災感知器2Aからの異常信号を受信する受信回路10、受信回路10などに動作用の所定の定電圧を供給する定電圧回路11、火災に関する煙や熱等を検出する検出回路14と、検出回路14の出力及び受信回路10の出力に基づいて火災の発生や自身の不具合の発生を判別する判別回路13と、判別回路13に制御されるスイッチング回路12及び切離回路15と、終端抵抗Rが感知器回線3に接続されているか否かを検出する入力回路16と、切離回路15及び入力回路16に接続される終端抵抗Rと、火災時などに点滅する動作表示灯17とを有している。
【0018】
受信回路10は、火災感知器2Aから出力される異常信号(第1の異常信号)を受信し、その受信結果を判別回路13に出力するものである。この受信回路10は、コモン線3A、定電圧回路11、及び判別回路13に接続されている。受信回路10は、火災感知器2Bのように終端抵抗Rが設けられた火災感知器2Bで動作させるものであり、火災感知器2Aでは動作させる必要がない。ここで、第1の異常信号は、火災感知器2Aから火災感知器2Bに出力される信号を指す。
【0019】
定電圧回路11は、火災受信機1から感知器回線3を介して供給される電源電圧を、所定の電圧値、例えば5(V)などに変換し、供給するものである。図2に示すように、定電圧回路11は、判別回路13及び検出回路14に接続されており、これらに動作電圧を供給している。なお、定電圧回路11は、例えば定電圧ICなどから構成される。
【0020】
検出回路14は、火災によって生じる熱、煙、炎などを検出し、検出結果を出力するものである。この検出回路14は、判別回路13に接続されている。
【0021】
判別回路13は、検出回路14の出力のレベル判定などを実施して、火災であるか否かを判別し、その判別結果に基づいてスイッチング回路12を制御し、火災受信機1に火災信号を出力するものである。なお、判別回路13は、火災であると判別した場合に、動作表示灯17を点灯させる。また、判別回路13は、検出回路14が設けられた火災感知器2の不具合を出力値監視方式によって検出し、その検出の結果、不具合があれば異常信号として火災感知器2自らの不具合を認識するものである。ここで、第2の異常信号は、火災感知器2Bの検出回路14から判別回路13に出力される信号を指す。
なお、出力値監視方式とは、火災感知器2が火災を検出していないときの出力値が、火災感知器2が初期設置された状態における出力値に対して、どれだけ変化しているかを検出し、火災感知器2の不具合を検出する方式である。検出回路14が火災感知器2の不具合を検出する方式は、それに限定されるものではなく、例えば、擬似出力方式として、自ら熱や光の擬似入力を行う方式もあるが、本実施の形態1に係る検出回路14は出力値監視方式を採用しているものとして説明する。また、判別回路13は、出力値異常と判別した場合に、火災感知器2に不具合があることを外部に表示して識別させる表示手段として、動作表示灯17を点滅させる。
【0022】
また、判別回路13は、検出回路14から出力された第2の異常信号と、他の火災感知器2から出力され、感知器回線3及び受信回路10を介して出力された第1の異常信号と、に基づいて切離回路15を制御するものである。
具体的には、火災感知器2Bに設けられた判別回路13は、検出回路14から出力される第2の異常信号のレベル判定、又は受信回路10から出力される第1の異常信号のレベル判定を実施して、感知器回線3上にある火災感知器2が異常であるか否かを判別し、その判別結果に基づいて切離回路15を制御するものである。
【0023】
さらに、判別回路13は、入力回路16の出力に基づいて、切離回路15が終端抵抗Rと感知器回線3とを接続しているか否か、つまり火災感知器2に終端抵抗Rが接続されているか否かを判別するものである。この判別回路13は、受信回路10、検出回路14、スイッチング回路12、切離回路15、入力回路16、及び動作表示灯17に接続されている。なお、判別回路13は、例えばマイクロプロセッサなどで構成するとよい。
【0024】
スイッチング回路12は、判別回路13が火災であると判別すると閉じた状態となって、火災受信機1に火災信号を出力するものである。すなわち、判別回路13は火災であると判別するとその判別結果に対応する出力をし、その出力を受信したスイッチング回路12は感知器回線3を低インピーダンス状態に維持する。スイッチング回路12が感知器回線3を低インピーダンス状態に維持することを、火災感知器2Bから火災受信機1への火災信号としている。また、低インピーダンスとは、火災が発生していない状態における感知器回線3のインピーダンスに対してインピーダンスが低いということである。このスイッチング回路12は、判別回路13、及び感知器回線3に接続されている。なお、スイッチング回路12は、例えばトランジスタなどにより構成するとよい。
【0025】
切離回路15は、判別回路13の出力に基づいて、終端抵抗Rと感知器回線3との接続を制御するものである。すなわち、判別回路13は火災感知器2のいずれかが不具合であると判別するとその判別結果に対応する出力をし、その出力を受信した切離回路15は感知器回線3と終端抵抗Rとの接続を切離す。このように、切離回路15によって感知器回線3と終端抵抗Rとの接続が切離されると、感知器回線3は断線状態となり、火災受信機1の詳細に説明しない断線検出回路によって検出され、火災受信機1が断線警報を報知する。この切離回路15は、コモン線3Aと接続され、終端抵抗Rの接続部を有する。
【0026】
終端抵抗Rは、切離回路15を介してコモン線3Aに接続され、入力回路16を介してライン線3Bに接続されるものである。終端抵抗Rは、終端素子として、特に限定されるものではなく、例えばリード線を有する抵抗などを採用してもよい。
【0027】
入力回路16は、判別回路13に、火災感知器2自身に終端抵抗Rが接続されているか否かを判別させるものである。具体的には、入力回路16は終端抵抗Rが常時閉の切離回路15を介して感知器回線3に接続されているか否かを検出するように判別回路13に対して出力し、その出力に基づいて判別回路13は終端抵抗Rが装着されているか否かを判別する。この入力回路16は、判別回路13、及びライン線3Bに接続され、終端抵抗Rの接続部を有する。
【0028】
動作表示灯17は、判別回路13の出力に基づいて、火災時、不具合時において点灯又は点滅制御されるものである。この動作表示灯17は、判別回路13、及びライン線3Bに接続されている。なお、動作表示灯17は、例えばLEDなどの発光素子を採用するとよい。
【0029】
[火災感知器2Aの構成]
火災感知器2Aは、終端抵抗Rが設けられていない点以外では火災感知器2Bと同様の構成である。すなわち、火災感知器2Aは、受信回路10と、定電圧回路11と、検出回路14と、判別回路13と、スイッチング回路12と、切離回路15と、入力回路16と、動作表示灯17とを有している。なお、火災感知器2Aは、終端抵抗Rと共に、受信回路10、切離回路15及び入力回路16が設けられていなくてもよい。
【0030】
また、火災感知器2Aに設けられた判別回路13については、検出回路14の出力のレベル判定などを実施して、火災感知器2Aが不具合であるか否かを判別する。そして、火災感知器2Aに設けられた判別回路13は、その判別結果に基づいてスイッチング回路12を制御し、スイッチング回路12に異常信号を出力させる。
さらに、火災感知器2Aに設けられたスイッチング回路12については、判別回路13が火災感知器2の不具合を判別すると、終端の火災感知器2Bに感知器回線3を介して異常信号を出力する。すなわち、火災感知器2Aに設けられた判別回路13は火災感知器2Aが不具合であると判別するとその判別結果に対応する出力をし、その出力を受信したスイッチング回路12は感知器回線3を介して、終端抵抗Rが接続された火災感知器2Bに異常信号を出力する。
【0031】
なお、火災感知器2Aの検出回路14、判別回路13、及びスイッチング回路12によって、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段、及びその点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を感知器回線3に出力する出力手段を構成している。
また、火災感知器2Bの切離回路15は切り離し手段を構成する。切り離し手段は、受信回路10が異常信号を受信したときに終端抵抗Rを切り離して感知器回線3を断線させる。その切り離し手段と火災感知器2Bの終端抵抗Rとで、出力手段からの異常信号を受信したときに感知器回線3を断線させる断線発生手段を構成する。本実施形態1における断線発生手段は、感知器回線3の終端部に接続され、出力手段によって送信された異常信号を受信する受信手段と、終端素子に接続され、受信手段が異常信号を受信したときに終端素子を切り離して感知器回線3を断線させる切り離し手段と、を備えている。断線発生手段は、火災感知器2の不具合の場合には終端抵抗Rを断続的に切り離して、断線の場合と区別できるようにしても良い。
【0032】
また、火災感知器2Bの受信回路10は感知器回線3からの異常信号を受信する受信手段を構成している。さらに、火災感知器2A、2Bの動作表示灯17は表示手段を構成し、火災感知器2A、2Bの入力回路16は終端抵抗Rが接続されていることを検出する入力手段を構成している。その入力手段が終端抵抗Rの接続を検出したときに、受信回路10による異常信号の受信に基づいて、切り離し手段が終端抵抗Rを切り離す。さらに、火災受信機1は、火災感知器2に不具合があった場合に、感知器回線3を断線させることで、断線警報として報知するためのランプやスピーカといった断線警報発報手段を有している。
【0033】
[動作説明]
図1及び図2を参照して、火災時における火災報知設備100の動作例を説明する。
【0034】
(1)各火災感知器2は、起動時に入力回路16を動作させ、判別回路13に終端抵抗Rの有無を判別させる。
【0035】
(2)判別回路13は終端抵抗Rがないと判別した場合に終端抵抗Rが設けられていない火災感知器2Aとして動作し、終端抵抗Rがあると判別した場合に火災感知器2Bとして動作する。また、各火災感知器2は、動作中において、所定間隔で火災判別を行う。なお、この動作中において、各火災感知器2は、出力値監視方式により、自身に不具合があるか否かも判別している。
【0036】
(3)火災感知器2Aに設けられた判別回路13においては、検出回路14の出力値から自身が不具合であると判別すると、スイッチング回路12を制御して感知器回線3のインピーダンスを変化させる。すなわち、火災感知器2Aに設けられた判別回路13から異常信号が出力される。ここで、このインピーダンスの変化は、例えば、感知器回線3の電圧をパルス的に変化させて行うとよい。なお、このパルス的な変化の一例については、後述する図3にて説明する。
一方、火災感知器2Bに設けられた判別回路13においては、検出回路14の出力値から自身が不具合であると判別しても、スイッチング回路12を制御して感知器回線3のインピーダンスを変化させる動作を実施しない。すなわち、火災感知器2Bに設けられた判別回路16は、後述するように切離回路15を直接制御する。
なお、不具合であると判別された火災感知器2A、2Bの判別回路13は、動作表示灯17を点滅動作させて、外観的にユーザーに不具合であることを報知する。
【0037】
(4)火災感知器2Bの受信回路10は、感知器回線3の電圧を監視している。すなわち、火災感知器2Bの受信回路10は、火災感知器2Aからの異常信号を感知器回線3を介して受信する。
【0038】
(5)火災感知器2Bの受信回路10が、火災感知器2Aからの異常信号を受信すると、その受信結果が判別回路13に出力される。そして、この出力を受けた判別回路13は、切離回路15を、感知器回線3と終端抵抗Rとの接続を切離すように制御する。
また、火災感知器2Bの判別回路13が検出回路14の出力により火災感知器2B自らの不具合を検出した場合においては、火災感知器2Bの判別回路13から自らに異常信号が設定される。そして、この設定を受けた判別回路13は、切離回路15を、感知器回線3と終端抵抗Rとの接続を切離すように制御する。
【0039】
(6)火災受信機1は、終端抵抗Rが感知器回線3から切り離されたこと、すなわち感知器回線3が断線したことを、詳細に説明しない断線検出回路によって検出すると、防災センタ内で自己の盤面に断線した旨が表示されるとともに、火災受信機1がその旨を音声や表示で出力する。
【0040】
(7)なお、(3)〜(6)における不具合を検出する動作時においても、火災報知設備100は、火災を検出可能である。すなわち、火災感知器2が火災を検出した場合には、火災感知器2は感知器回線3を介して火災受信機1に火災信号を出力する。そして、火災受信機1は、出力された火災信号に基づいて、スピーカからの音声やランプの点滅により火災を報知することができる。
【0041】
[火災信号及び異常信号について]
図3は、(a)が通常時と火災時における感知器回線3の電圧を示し、(b)が通常時と不具合発生時の感知器回線3の電圧を示すものである。図3に基づいて、火災信号及び異常信号の一例について説明する。
火災感知器2A、2Bが出力する火災信号は、火災がない通常時の感知器回線3の電圧値を例えば約24(V)と設定しているとき、この電圧値を例えば約8(V)に変化させて構成する。
火災感知器2Aが出力する異常信号としては、火災がないときの(通常時)感知器回線3の約24(V)から、短い間隔で、所定回数だけパルス的に電圧を変化させて構成される信号を採用するとよい。なお、図3では、所定回数を2回としたものを一例として図示している。これにより、1回目の電圧変化を火災感知器2Bの判別回路13が捕らえきれなくても、2回目の電圧変化で判別回路13が確実にこの電圧変化が異常信号であるかを確認することができる。したがって、所定回数は、2回以上に設定するとよい。
【0042】
[火災報知設備100の有する効果]
本実施の形態1に係る火災報知設備100は、火災感知器2Bの判別回路13が、感知器回線3を介して火災感知器2Aから異常信号を受信した際、又は火災感知器2B自身の不具合を検出した際に、切離回路15を制御して、終端抵抗Rと感知器回線3との接続を切り離す。すなわち、火災感知器2Bの判別回路13は、感知器回線3と終端抵抗Rとの接続を切り離し、感知器回線3を断線させる。これにより、P型の火災受信機1であっても、感知器回線3の断線を異常信号として検出することができ、火災感知器2の不具合を知ることができる。すなわち、本実施の形態1に係る火災報知設備100は、火災感知器2の自己点検による結果を受信して制御できる専用の火災受信機ではない火災受信機1でも火災感知器2の不具合を報知することができる。
【0043】
また、本実施の形態1に係る火災報知設備100は、例えば、既に建物に設けられたP型の火災報知設備に対して適用する場合において有効である。すなわち、既に建物に設けられたP型の火災報知設備の火災感知器のうち終端の火災感知器を火災感知器2Bとし、それ以外の火災感知器を火災感知器2Aとすることで、火災報知設備100を得ることができるということである。これは、既に建物に設けられたP型の火災報知設備の火災受信機を、専用の火災受信機(例えばR型)とするよりも低コストで実施することができる。
【0044】
また、火災感知器2Aは、火災感知器2Bに比べ、終端抵抗Rと共に、受信回路10、切離回路15及び入力回路16が不要なので、安価に製造が可能となる。その一方で、火災感知器2Aの構成は、火災感知器2Bと同一にすることもできる。この場合は、火災報知設備100に同じ火災感知器2Bを設置するだけで良いので、効率の良い施工が可能となる。
【0045】
実施の形態2.
以上の実施の形態1では、終端抵抗Rが設けられる火災感知器2Bが火災感知器としての機能を有している場合について説明した。図4は、本発明の実施の形態2に係る火災報知設備の概要構成例図である。本実施の形態2では、火災報知設備200を、感知器回線3の終端に、火災感知器としての機能を有していない終端器である終端装置25を接続して構成したものである。この終端装置25は、火災受信機1に対して終端の感知器回線3に接続される終端器である。なお、本実施の形態2では、主に実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0046】
火災報知設備200は、火災感知器としての機能を有していない終端装置25、及び火災感知器20が、感知器回線3を介して火災受信機1に接続されて構成されている。
終端装置25は、受信回路10、切離回路15、及び判別回路13の3つが設けられていればよい。また、火災感知器20は、図2に図示された構成のうち、終端抵抗R、受信回路10、切離回路15、及び入力回路16を除いた構成が設けられていればよい。
このように、本実施の形態2に係る火災報知設備200は、終端器専用の終端装置25を用いることにより、火災感知器20、及び終端装置25の制御回路の構成が複雑になることを抑制することができる。
なお、本実施の形態2の動作は、実施の形態1と同様に行える。
【0047】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る火災報知設備の概要構成例図である。本実施の形態3に係る火災報知設備300は、感知器回線3とは別体の異常信号用配線31によって火災感知器30を接続して構成したものである。なお、本実施の形態3では、主に実施の形態1、2との相違点を中心に説明するものとする。
【0048】
本実施の形態3に係る火災報知設備300は、火災信号を感知器回線3に出力し、異常信号を異常信号用配線31に出力するように構成したものである。本実施の形態3に係る火災感知器30Aの制御回路の構成は、図2に図示される構成に加えて、異常信号用配線31に異常信号を出力する送信回路が別途設けられる。また、本実施の形態3に係る火災感知器30Bの受信回路10については、異常信号用配線31に接続する構成とすればよい。
なお、本実施の形態3の動作は、実施の形態1と同様に行える。
このように、本実施の形態3に係る火災報知設備300は、火災信号を感知器回線3に出力し、異常信号を異常信号用配線31に出力するように構成したので、火災信号と異常信号とが干渉することを抑制することができ、火災報知設備300の動作の確実性を向上させることができる。
なお、実施の形態3に係る火災感知器30は、実施の形態2の火災感知器20及び終端装置25のように構成してもよい。
【0049】
実施の形態1〜3の記載内容は、適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 火災受信機、2 火災感知器、2A 火災感知器、2B 火災感知器、3 感知器回線、3A コモン線、3B ライン線、10 受信回路、11 定電圧回路、12 スイッチング回路、13 判別回路、14 検出回路、15 切離回路、16 入力回路、17 動作表示灯、20 火災感知器、25 終端装置、30 火災感知器、30A 火災感知器、30B 火災感知器、31 異常信号用配線、50 制御回路、100、200、300 火災報知設備、R 終端抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災受信機に接続された感知器回線と、該感知器回線に接続されスイッチング動作によって火災信号を前記感知器回線に出力する1個又は複数の火災感知器と、を備えた火災報知設備において、
前記火災感知器は、自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、該点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を前記感知器回線に出力する出力手段と、を備え、
前記感知器回線は、前記異常信号を受信したときに前記感知器回線を断線させる断線発生手段が接続され、
前記火災受信機は、前記感知器回線が断線したときに断線警報を発する断線警報発報手段を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
前記断線発生手段は、前記感知器回線の終端部に接続される終端素子と、
前記出力手段によって送信された前記異常信号を受信する受信手段と、
前記終端素子に接続され、前記受信手段が前記異常信号を受信したときに前記終端素子を切り離して前記感知器回線を断線させる切り離し手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の火災報知設備。
【請求項3】
前記火災感知器は、前記点検手段の結果に基づき、不具合があることを外部に表示して識別させる表示手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の火災報知設備。
【請求項4】
前記断線発生手段は、前記終端素子を断続的に切り離すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の火災報知設備。
【請求項5】
感知器回線を介して火災受信機と接続され、スイッチング動作によって火災信号を前記感知器回線に出力する火災感知器において、
自己点検により自己の不具合を検出する点検手段と、該点検手段の結果に基づき、不具合があるときには異常信号を前記感知器回線に出力する出力手段と、
前記感知器回線からの前記異常信号を受信する受信手段と、
前記感知器回線に接続される終端素子が装着されている場合に、前記受信手段が前記異常信号を受信したときに前記終端素子を切り離して前記感知器回線を断線させる切り離し手段と、を備えたことを特徴とする火災感知器。
【請求項6】
前記火災感知器は、前記終端素子が接続されていることを検出する入力手段を備え、該入力手段が前記終端素子の接続を検出したときに、前記受信手段による前記異常信号の受信に基づいて、前記切り離し手段が前記終端素子を切り離すことを特徴とする請求項5記載の火災感知器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−54677(P2013−54677A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194102(P2011−194102)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】