説明

火災報知設備

【課題】通信中は感知器回線の電流を多く流すことで制御信号の劣化を抑制できる火災報知設備を提供する。
【解決手段】火災を感知した際にスイッチングして感知器回線1に発報電流を流すオンオフ型の火災感知器30と、火災感知器30に感知器回線1を介して接続され、感知器回線1に制御信号を出力して火災感知器30に所定の動作を行わせる火災受信機10または感知器用中継器と、を備える火災報知設備において、通信中には、通信中ではないときよりも電流制限量を低減させて感知器回線1に流す電流を多くする受信抵抗20を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火災報知設備として、例えば、火災を感知した際にスイッチングして感知器回線に発報電流を流すオンオフ型火災感知器と感知器回線を介して接続され、感知器回線に制御信号を出力して火災感知器に所定の動作を行わせる火災受信機または中継器を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−65708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような火災報知設備の火災受信機または中継器は、感知器回線に流せる電流を必要最小限に制限して、オンオフ型火災感知器が火災を感知したときの発報電流を制限することにより消費電流を抑えている。
しかしながら、感知器回線に流せる電流を制限すると、その制限量が大きい場合、感知器回線の線間容量により制御信号が劣化するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、通信中は感知器回線の電流を多く流すことで制御信号の劣化を抑制できる火災報知設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の火災報知設備は、火災を感知した際にスイッチングして感知器回線に発報電流を流すオンオフ型の火災感知器と、前記火災感知器に感知器回線を介して接続され、感知器回線に制御信号を出力して前記火災感知器に所定の動作を行わせる火災受信機または中継器と、を備える火災報知設備において、前記火災受信機または中継器が、通信中には、通信中ではないときよりも電流制限量を低減させて前記感知器回線に流す電流を多くする電流制限手段を備えたものである。
【0007】
また、本発明の火災報知設備は、前記電流制限手段が、前記感知器回線に流れる電流を電圧に変換する受信抵抗を含むものである。
【0008】
また、本発明の火災報知設備は、前記受信抵抗が、複数直列に接続され、少なくとも一つの前記受信抵抗には、当該受信抵抗と並列にスイッチング素子が接続され、前記火災受信機または中継器が、通信中には、通信中ではないときよりもオン状態の前記スイッチング素子を多くし、前記受信抵抗の抵抗値を低下させて前記電流制限量を低減させるものである。
【0009】
また、本発明の火災報知設備は、前記受信抵抗が、複数並列に接続され、少なくとも一つの前記受信抵抗には、当該受信抵抗と直列にスイッチング素子が接続され、前記火災受信機または中継器が、通信中には、通信中ではないときよりもオン状態の前記スイッチング素子を多くし、前記受信抵抗の抵抗値を低下させて前記電流制限量を低減させるものである。
【0010】
また、本発明の火災報知設備は、前記電流制限手段が、前記火災受信機または中継器と前記火災感知器との間の前記感知器回線に設けられた定電流回路であるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の火災報知設備は、通信中には、通信中ではないときよりも電流制限手段の電流制限量を低減させ電流を多く流せるようにする。そのため、感知器回線の線間容量に蓄積された電荷を早急に減らす、または早急に蓄積され、制御信号の劣化を抑制できるという効果を奏することができる。
【0012】
また、本発明の火災報知設備においては、電流制限手段は、感知器回路に流れる電流を電圧に変換する受信抵抗を利用しているため、上記効果を奏するためのコストの増加が少ないという特徴を有する。
【0013】
また、本発明の火災報知設備は、前記受信抵抗が、直列に複数接続され、前記受信抵抗の少なくとも一つには、当該受信抵抗と並列にスイッチング素子が接続される。そのため、複数の受信抵抗に違う抵抗値のものを使用した場合、スイッチング素子の切り替えにより受信抵抗の抵抗値の自由度が高くなるという効果を奏することができる。
【0014】
また、本発明の火災報知設備は、前記受信抵抗が、並列に複数接続され、少なくとも一つの前記受信抵抗には、当該受信抵抗と直列にスイッチング素子が接続される。そのため、複数の受信抵抗に違う抵抗値のものを使用した場合、スイッチング素子の切り替えにより受信抵抗の抵抗値の自由度が高くなるという効果を奏することができる。
【0015】
また、本発明の火災報知設備は、定電流回路である電流制限手段を備えた。これにより、中継器から火災感知器に送られる電流を制限できるようにしたので、電圧の変動に依存せずに電流を制御できるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における火災報知設備(P型)を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における火災報知設備(R型)を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1における火災報知設備の回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1における火災報知設備の感知器用中継器と火災感知器との信号伝送の一例を示す波形図である。
【図5】本発明の実施の形態1における火災報知設備の感知器用中継器と火災感知器との信号伝送のアドレスとスロットの関係、及び火災感知器の正常と異常を表すパルスを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における火災報知設備の通信中の感知器回線の電圧波形の概略図である。
【図7】本発明の実施の形態2における火災報知設備の回路図である。
【図8】本発明の実施の形態3における火災報知設備の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の火災報知設備について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における火災報知設備(P型)を示す概略構成図である。
図1に示すように、火災受信機10に感知器回線1を介して複数の火災感知器30が接続しており、その感知器回線1の終端には終端抵抗25が設けられている。なお、火災感知器30は複数でなくても、少なくとも一つあればよく、設置環境等により異なる。また、1つの感知器回線1しか図示していないが、火災受信機10は、複数の感知器回線1を備えている。
【0019】
火災感知器30は、火災を感知するとオンするオンオフ型感知器である。また、自己の内部故障を監視しており、火災受信機10からの制御信号(状態情報返送命令)を受信すると、自己の状態(平常、故障)を返送する。
【0020】
火災受信機10は、火災感知器30からの火災信号(オン)を検出して火災警報を行うものである。また、平常状態においては、終端抵抗25が接続されているかを判別して感知器回線1が断線していないかを監視している。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1における火災報知設備(R型)を示す概略構成図である。
火災受信機15は、信号線2を介して、各種の端末機器が接続されている。端末機器としては、光電式アナログ感知器31、熱アナログ感知器32、アドレッサブル発信機33、感知器用中継器11(本発明における中継器),ベル用中継器12、および防排煙制御用中継器13などが接続されていて、火災受信機15は、端末機器と通信をしている。
【0022】
感知器用中継器11には、感知器回線1を介して、火災感知器30が少なくとも一つと終端に終端抵抗25が接続されている。感知器用中継器11は、火災感知器30に対して、上述した図1の火災報知設備(P型)の火災受信機10と同様の処理を行う。
ベル用中継器12には火災時に動作するベル40が接続されている。また、防排煙制御用中継器13には、火災時に動作する防火戸50、排煙機51、シャッタ52、およびたれ壁53が接続されている。
【0023】
このような構成により、火災受信機15は、あらかじめ決められた様々な場所に設置されている種々の感知器等から情報を収集し、その情報に応じて、ベル40及び防火戸50を動作させるなどの対応を行う。
【0024】
本実施の形態1の火災報知設備は、上記の図1のP型と図2のR型のどちらを用いてもよいが、以下の説明においては図1の火災報知設備(P型)を用いた例を説明する。図2の火災報知設備(R型)を用いる場合は、図1の火災受信機10の役割を感知器用中継器11が行うので、以下の説明における火災受信機10を感知器用中継器11に置き換えればよい。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の回路図である。図3(a)は火災報知設備の全体回路図、図3(b)は、火災感知器30内の一部の回路を示す図である。
図3(a)に示すように火災受信機10は、制御部100を備えており、送受信部71を介して火災感知器30に接続している。火災感知器30は、図3のように並列に接続されており、終端抵抗25も火災感知器30と並列に接続している。
【0026】
また、火災受信機10内にコンパレータ70が設けられており、火災感知器30とコンパレータ70の一方の入力部の間から、受信抵抗20が接続されており、その先は接地している。また、受信抵抗20は、直列に接続された第一の受信抵抗21(本発明における受信抵抗)及び第二の受信抵抗22(本発明における受信抵抗)を有している。また、トランジスタ60(本発明におけるスイッチング素子)は、前記第二の受信抵抗22の両端にコレクタ、エミッタが接続するように設けられている。
【0027】
また、受信抵抗20で電流から変換された電圧は、コンパレータ70において、他方の入力部に入力される所定の閾値電圧と比較される。そして、コンパレータ70の比較結果は制御部100に送られ、火災受信機10が火災かどうかおよび断線かどうかを検知することができる。
【0028】
また、図3(b)に示すように、火災感知器30は、火災感知器30全体を制御する制御部30b、火災受信機10等との送受信を行う受信部30a、トランジスタ30c及びツェナーダイオード30dを有している。トランジスタ30cは、火災時に制御部30bによりオンにされ、ツェナーダイオード30dに電流を流せるようにするものである。
【0029】
次に、上記の火災報知設備の動作について説明する。
平常状態において火災受信機10は、上述のようにコンパレータ70で閾値電圧と入力電圧とを比較することで感知器回線1が断線していないか、火災が発生したかどうかを監視している。
火災と断線の監視は、閾値電圧を断線閾値電圧と火災閾値電圧とで切り換えて交互に行っている。断線閾値電圧は、終端抵抗25のみに電流が流れたときに受信抵抗20で変換される電圧よりも低く設定されていて、火災閾値電圧は、終端抵抗25および火災感知器30(感知器回線1に接続できる最大の個数)の電流が流れたときに受信抵抗20で変換される電圧よりも高く設定されている。
断線閾値電圧に切り換えて断線を監視する際には、感知器回線1が正常であれば、終端抵抗25に電流が流れるため受信抵抗20で変換される電圧は、断線閾値電圧を超える。そのため、コンパレータ70の出力はオンしている。
断線した場合、終端抵抗25に電流が流れなくなるので、受信抵抗20で変換される電圧は低下して、コンパレータ70への入力電圧は低下する。その電圧が、断線閾値電圧以下となった場合、コンパレータ70の出力が反転(オフ)して制御部100に入力され、制御部100は断線が発生したことを検知する。
【0030】
火災閾値電圧に切り換えて火災を監視する際には、感知器回線1が正常であれば、終端抵抗25および火災感知器30の電流が受信抵抗20で変換された電圧は、火災閾値電圧を超えない。そのため、コンパレータ70の出力はオフしている。
火災が発生した場合、火災感知器30の制御部30bは、トランジスタ30cをオンしてツェナーダイオード30dに電流を流し低インピーダンス状態となり、発報電流(監視中よりも多くの電流)を感知器回線1に流す。
発報電流が流れると、受信抵抗20で変換される電圧が大きくなり、コンパレータ70に入力される電圧が監視中より大きくなる。その電圧が、火災閾値電圧を超えた場合、コンパレータ70の出力が反転(オン)して制御部100に入力され、制御部100は火災が発生したことを検知する。
【0031】
図2に示したR型の火災報知設備を用いた場合、火災受信機15は、アドレッサブル発信機33の押し釦が押されている際にも火災が発生したことを検知する。また、感知器用中継器11から、火災発報している火災感知器30が有るという状態情報を受信した場合にも火災が発生したことを検知する。
そして、火災受信機15は、火災を検知した場合、火災警報を行うとともに、例えばベル用中継器12に制御信号を送信してベル40を鳴動させる。また、防排煙制御用中継器13に制御信号を送信して、防火戸50等を作動させて延焼を防ぐ等の動作を行う。
【0032】
次に、本実施の形態1の火災報知設備の通信中の動作について説明する。
火災受信機10の送受信部71は、複数接続されている火災感知器30の状態を収集するために、何台かを1つのグループとして火災感知器30に制御信号を出力する。火災感知器30は、その制御信号に従い動作を行うとともに、トランジスタ30cのオンオフ動作により自己の状態を返送する。この動作は、火災状態と監視状態の信号を繰り返すことと同様であるが、例えば予め火災受信機10の信号の出力時(後述する起動パルス出力時)通信中のモードに切り替えておくことで火災と混同しないように制御して、火災受信機10の制御部10は、コンパレータ70の出力により火災感知器30の返送を受信する。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の火災受信機10と火災感知器30との信号伝送の一例を示す波形図である。また、図5は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の火災受信機10と火災感知器30との信号伝送のアドレスとスロットの関係、及び火災感知器30の正常と異常を表すパルスを示す図である。なお、図4及び図5のパルス信号は感知器回線1の電圧信号(C−L端子間の電圧波形)である。また、以下の例では火災感知器30が、火災受信機10に感知器回線1を介して30個接続している例を示す。
【0034】
図4において、「親」は、火災受信機10であり、「子」は火災感知器30である。なお、説明の便宜上、親→子の波形と子→親の波形を分離して図示している。
火災感知器30には、個別のアドレスが付与されており、火災受信機10は、そのアドレスに基づいて火災感知器30をグループ化して、15アドレス単位で、火災感知器30のデータを収集する。データ収集時は、起動パルス、基準パルス及びコマンドCM1を送出する。
データ収集を開始する際、まず起動パルスを送出し、次に基準パルスを送出する。火災報知設備は、この基準パルスが送られた時点で、通信中の状態に切り替わる。基準パルスは、伝送上のパルス間隔の基本長(例えば4ms)となるパルスであり、その間隔は立下りエッヂ間隔(ハイ(Hi)からロー(Lo)への変化タイミングと、次のハイからローへの変化タイミングの間)である。
【0035】
コマンドCM1は、詳細には示さないが、火災感知器30への制御コマンドであり、1つの立下りエッヂ間隔で2ビットのコードを示している。このエッヂ間隔とコードの組み合わせは、例えば4msが00b、6msが01b、8msが10b、10msが11bである。このように、8ビット(b7〜b0)のコードを4つのパルス間隔で示している。
【0036】
これらの組み合わせによって、アドレス1〜15のデータを収集するポーリング1、アドレス16〜30のデータを収集するポーリング2のコマンドCM1を形成する。また、詳細に示さないが、火災感知器30を指定する制御コマンドとしてのセレクティング、火災感知器30をスリープモードとするスリープ開始コマンド等を利用することができる。そして、火災感知器30はコマンドCM1を解析して伝送内容を認識する。
【0037】
図4のスロット0〜14は、火災感知器30から火災受信機10へ送信するタイミングを定めるものである。ポーリング1または2および自己のアドレスに基づきスロット位置(図5(a)参照)が設定され、火災感知器30は、設定されたスロットに、正常または異常を表すコードを示すパルス(図5(b)参照)を送信する。例えば、各火災感知器30は、試験機能の結果として機能が正常であればパルス幅2msのパルスを返送し、異常であればパルス幅4msのパルスを返送する。そして、火災受信機10は、各火災感知器30からの返送が終了した時点で、通信中の状態が終わる。
【0038】
このような信号伝送を用い、火災受信機10は、制御コマンドCM1内にポーリング1または2の制御内容を含め、送信することで、感知器回線1に接続された火災感知器30の正常または異常の情報を個別に収集することができる。同時に、各スロット内のパルスの有無に基づいて、火災感知器30の応答有無を判別し、火災感知器30の異常を判断する。
【0039】
なお、この例では1つの感知器回線1に30個の火災感知器30がアドレス指定された例を示したが、この個数に限定する必要はなく、スロットの数やポーリング1および2の個数によって任意に設定することができる。
また、本実施の形態1の火災報知設備の通信方式は、上記のものに限られず、火災受信機10と火災感知器30との間の信号(火災検出を含む)伝送をオンオフ信号により行うものであればよい。例えば、パルス幅ではなくパルス間隔で信号の種類を区別するものであってもよい。
【0040】
次に、本実施の形態1の受信抵抗20について説明する。
受信抵抗20の抵抗値が大きすぎると 火災感知器30と終端抵抗25の電流が流れたときに受信抵抗20で変換された電圧が大きくなり、感知器回線1の電圧(C−L端子間電圧)が低くなってしまうため、火災感知器30の動作が不安定になる。しかしながら、受信抵抗20の抵抗値を小さくしすぎると発報電流が大きくなりすぎるので、複数の感知器回線1で発報電流が流れた場合であっても火災受信機10が正常に動作できるように、例えば電源が電池であった場合に大容量の電池が必要になる。そのため、受信抵抗20は、火災感知器30の動作が不安定にならない範囲でできるだけ大きな抵抗値のものを選ぶ必要がある。
【0041】
また、断線の検出についても、受信抵抗20は大きい方がよい。その理由は、受信抵抗20で変換される電圧である監視中の最小受信抵抗電圧(例えば、火災感知器30が一つと終端抵抗25が接続した状態の電圧)と、断線時の最大受信抵抗電圧(例えば、火災感知器30個が接続した状態の電圧)とを判別できるように、その差を大きくしたいためである。これにより、断線を容易に判別できるようにする。そのため、監視中においては、制御部100がトランジスタ60をオフにして第一の受信抵抗21および第二の受信抵抗22に電流が流れるようにして、受信抵抗20の抵抗値を大きくする。
上記のように監視中は、受信抵抗20の抵抗値を大きくするが、通信時において抵抗値が大きな場合には、感知器回線1の電圧を変化させようとしたとき、感知器回線1の線間容量に蓄積された電荷の放電および蓄積が受信抵抗20により阻害されるため、制御部100はトランジスタ60のベースに与える電圧をオンにして第二の受信抵抗22に電流が通過しないようにして、第一の受信抵抗21にのみ電流が流れるようにして受信抵抗20の抵抗値を小さくする。
なお、本実施の形態1ではスイッチング素子としてトランジスタ60を用いているが、FET又はIGBTなど、第二の受信抵抗22の短絡ができ、オンオフ制御が可能なものであればよい。
【0042】
また、受信抵抗が二つでスイッチング素子を一つ備えた例を説明したが、受信抵抗は二つ以上、スイッチング素子は一つ以上あればよい。なお、受信抵抗及びスイッチング素子の数を上記の例と変更した場合であっても、通信中には通信中でないときよりもオン状態の前記スイッチング素子を多くすることで同様の効果を有する。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の通信中の火災感知器30の端子間電圧波形の概略図である。
図6(a)は、受信抵抗20の抵抗値が小さく電流の制限量が少ない状態であり、(b)は、受信抵抗20の抵抗値が大きく電流制限量が大きい状態である。
【0044】
本実施の形態1においては、通信中は、制御部100がトランジスタ60をオンにすることで受信抵抗20の抵抗値を小さくして、電流制限量を低減させて感知器回線1に流せる電流を増加させる。つまり、感知器回線1からコンパレータ70に至る回路の時定数を小さくすることができる。これにより、感知器回線1の線間容量に蓄積された電荷を早急に減らし、または早急に蓄積することができるので図6(a)のようなパルス幅Aの矩形の電圧信号になる。
一方、制御部100がトランジスタ60をオフにすることで受信抵抗20の抵抗値を大きくして、電流制限量を増加させて感知器回線1に流せる電流を減少させた状態で通信を行うと、図6(b)のような矩形ではない劣化した電圧信号になる。図6(b)のパルス幅は、図6(a)と比べてばらつきが多く、例えばB1とB2とは異なるパルス幅である。そのため図5で示したようにパルス幅で信号の種類を判定する際に正常な判定ができないことがある。また、このことは、パルス間隔で信号の種類を判定する通信を行う場合も同様である。
【0045】
そのため、上述したように、通信中のみ、受信抵抗20の電流制限量を低減させることで、火災受信機10から火災感知器30の制御信号および火災感知器30から火災受信機10への応答信号の劣化を抑制できる。
また、仮に、図6(b)のような電圧信号を用いて、正常な通信をしようとした場合、パルス幅のばらつきの影響を少なくするため、パルス幅を広げて劣化の影響を少なくする必要がある。そのため、通信速度を落とさなければならない。火災感知器30の数が多い場合は、高速の通信が必要となるので、特に上記のような制御信号の劣化を少なくすることが望ましい。
【0046】
以上のように、本実施の形態1の火災報知設備は、電流制限手段として受信抵抗20を備え、制御部100が制御信号を出力する際に受信抵抗20の抵抗値を下げることで電流制限量を低減させる。
また、感知器回線1の線間容量に蓄積された電荷を早急に減らし、または早急に蓄積することができるので、制御信号が劣化しないという効果を奏することができる。また、火災感知器30の通信動作が不安定になることを抑制できる。
また、本実施の形態1の火災報知設備は、従来と比べ受信抵抗22及びトランジスタ60を増加しただけの構成であるため、上記効果を奏するためのコストの増加が少ないという特徴を有する。
【0047】
実施の形態2.
次に、電流制限手段として用いられる受信抵抗20に異なる構成を用いた例について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2における火災報知設備の回路図である。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0048】
図7に示すように、第一の受信抵抗21(本発明における受信抵抗)及び第二の受信抵抗22(本発明における受信抵抗)は、コンパレータ70の入力側に設けられている点で実施の形態1と同じであるが、並列に設けられている点で実施の形態1と異なる。また、第一のトランジスタ61(本発明におけるスイッチング素子)は、第一の受信抵抗21と直列に設けられ、第二のトランジスタ62(本発明におけるスイッチング素子)は、第二の受信抵抗22と直列に設けられている。そして、制御部100が第一のトランジスタ61及び第二のトランジスタ62のベースに与える電圧のオンオフを制御することで、受信抵抗20の抵抗値を自由に切り替えられる。
【0049】
例えば、通信中でないときは、第一のトランジスタ61及び第二のトランジスタ62のいずれか一方をオンにすることで受信抵抗の抵抗値を上げ、電流制限量を増加させて、感知器回線1に流せる電流を減少させる。また、通信中は、第一のトランジスタ61及び第二のトランジスタ62の両方をオンにしておくことで抵抗値を下げ、電流制限量を低減させて、感知器回線1に流せる電流を増加させる。また、第一のトランジスタ61及び第二のトランジスタ62のいずれか一方を使用する場合は、第一の受信抵抗21と第二の受信抵抗22に抵抗値が違う抵抗値のものを使用していれば、二通りの抵抗値を選択できることになる。なお、本実施の形態2では第一のスイッチング素子及び第二のスイッチング素子として各トランジスタを用いているが、FET又はIGBTなど、第一の受信抵抗21と第二の受信抵抗22を通電させることができ、オンオフ制御が可能なものであればよい。
【0050】
また、受信抵抗が二つでスイッチング素子を二つ備えた例を説明したが、受信抵抗は二つ以上で、スイッチング素子は一つ以上であればよい。なお、受信抵抗及びスイッチング素子の数を上記の例と変更した場合であっても、通信中には通信中でないときよりもオン状態の前記スイッチング素子を多くすることで同様の効果を有する。
【0051】
以上のように、本実施の形態2においては、電流制限手段として第一の受信抵抗21及び第二の受信抵抗22を備え、それぞれに直列に設けられたトランジスタのオンオフが可能な構成とした。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏するだけでなく、第一の受信抵抗21及び第二の受信抵抗22に違う抵抗値のものを使用した場合、受信抵抗の抵抗値の自由度が高くなるという効果を奏することができる。
【0052】
実施の形態3.
電流制限手段として実施の形態1、2と別の構成を用いた例について説明する。
図8は、本発明の実施の形態3における火災報知設備の回路図である。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0053】
図8に示すように、本実施の形態3の受信抵抗は、第一の受信抵抗21のみである。そして、火災受信機10の電流出力側に、電流制限手段23を設けている。電流制限手段23は、例えば抵抗及びトランジスタ等を用いた定電流回路であり、電流を制限できるものであればよい。電流制限手段23を設けたことにより、通信中でないときは、感知器用中継器11から火災感知器30に送られる電流を制限できるようにした。また、この電流制限手段23は、電圧の変動に依存せずに電流を制御できる。
【0054】
以上のように、本実施の形態3においては、例えば定電流回路である電流制限手段23を備え、感知器用中継器11から火災感知器30に送られる電流を制限できるようにした。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏するだけでなく、電圧の変動に依存せずに電流を制御できるという効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 感知器回線、2 信号線、10 火災受信機、11 感知器用中継器、12 ベル用中継器、13 防排煙制御用中継器、15 火災受信機、20 受信抵抗、21 第一の受信抵抗、22 第二の受信抵抗、23 電流制限手段、25 終端抵抗、30 火災感知器、30a 受信部、30b 制御部、30c トランジスタ、30d ツェナーダイオード、31 光電式アナログ感知器、32 熱アナログ感知器、33 アドレッサブル発信機、40 ベル、50 防火戸、51 排煙機、52 シャッタ、53 たれ壁、60 トランジスタ、61 第一のトランジスタ、62 第二のトランジスタ、70 コンパレータ、71 送受信部、72 電源、100 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を感知した際にスイッチングして感知器回線に発報電流を流すオンオフ型の火災感知器と、
前記火災感知器に感知器回線を介して接続され、感知器回線に制御信号を出力して前記火災感知器に所定の動作を行わせる火災受信機または中継器と、
を備える火災報知設備において、
前記火災受信機または中継器は、通信中には、通信中ではないときよりも電流制限量を低減させて前記感知器回線に流す電流を多くする電流制限手段を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
前記電流制限手段は、前記感知器回線に流れる電流を電圧に変換する受信抵抗を含むことを特徴とする請求項1に記載の火災報知設備。
【請求項3】
前記受信抵抗は、複数直列に接続され、
少なくとも一つの前記受信抵抗には、当該受信抵抗と並列にスイッチング素子が接続され、
前記火災受信機または中継器は、
通信中には、通信中ではないときよりもオン状態の前記スイッチング素子を多くし、前記受信抵抗の抵抗値を低下させて前記電流制限量を低減させることを特徴とする請求項2に記載の火災報知設備。
【請求項4】
前記受信抵抗は、複数並列に接続され、
少なくとも一つの前記受信抵抗には、当該受信抵抗と直列にスイッチング素子が接続され、
前記火災受信機または中継器は、
通信中には、通信中ではないときよりもオン状態の前記スイッチング素子を多くし、前記受信抵抗の抵抗値を低下させて前記電流制限量を低減させることを特徴とする請求項2に記載の火災報知設備。
【請求項5】
前記電流制限手段は、前記火災受信機または中継器と前記火災感知器との間の前記感知器回線に設けられた定電流回路であることを特徴とする請求項1に記載の火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−215975(P2012−215975A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79495(P2011−79495)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】