説明

火災検出装置

【課題】 監視カメラが撮影した監視領域の画像から、人工光源を省いて炎の領域だけを抽出できるようにする。
【構成】 監視領域を撮影する撮影手段と、撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、画像から火災らしい領域を抽出する火災候補領域抽出手段と、火災らしい領域の周辺の火災周辺領域に、黒煙が発生しているか否かを検出する黒煙検出手段と、黒煙検出手段が黒煙を検出した時に、火災らしい領域が本当の火災領域であると判別する火災判別手段とを備えた。この黒煙検出手段は、火災周辺領域における輝度値の低い領域の面積を演算する特徴量演算手段から構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は画像処理を用いた火災検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】画像処理装置を利用した火災を検出する従来装置として、例えば特開平5−20559号公報に記載されたものがある。この従来装置の主な原理は、撮影される画像から所定の明度を有する領域を抽出することで火災時の炎を検出するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来装置の場合、監視画像の輝度信号から輝度値の高い領域を抽出して火災と認識するようにしているので、監視領域、例えばトンネル内にこのような火災検出装置を設ける場合、所定の明度を有する光源として炎以外に例えば照明用光源(ナトリウム灯)、車両用後部光源(テールランプ、ポジションランプ)、車両用前部光源(ヘッドライト、ハロゲンランプ、フォグランプ)、或いは緊急車両光源(回転灯)などが存在するので、これらの人工光源を炎と認識し、誤報を発生する恐れがあるという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる火災検出装置は、監視領域を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、該画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、前記画像から一次的に火災らしい領域を抽出する火災候補領域抽出手段と、前記火災らしい領域の周辺の火災周辺領域に、黒煙が発生しているか否かを検出する黒煙検出手段と、該黒煙検出手段が黒煙を検出した時に、前記火災らしい領域が本当の火災領域であると判別する火災判別手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0005】また監視領域を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、該画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、監視領域に設置される照明器具が撮影視野に入るように、前記撮影手段を前記監視領域に取り付け、前記照明器具の面積値または輝度値を演算する演算手段と、前記演算手段により演算された値が所定値よりも小さい時に、火災と判別する火災判別手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施の形態を図を参照して説明する。先ず、各実施の形態を説明する前に、火災領域の検出原理について図7を参照して説明する。図7は火災時の炎を撮影したもので、時間経過に伴う火災性状の変化を示すものである。図7(a)は火災初期時、図7(b)は火災進展時、図7(c)は火災拡大時である。トンネル内で発生する火災は車両のガソリン、油が原因となることが多く、その火災の特徴は図に示すように黒煙がたくさん発生する点である。つまり、所定の明度を有する領域(炎)が、非常に暗い領域(黒煙)によって囲われていれば、その所定の明度を有する領域は炎であると判別することが可能である。
【0007】実施の形態1図1はこの発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図において、1は撮影手段としての監視カメラであって、例えばCCDカメラなどが使用され、所定のサンプリング周期で監視領域を撮影するものである。この監視カメラ1は例えば監視領域としてのトンネル内の監視区域全体を見渡せる位置に設置され、トンネル内で発生する火災を監視し、撮影した画像内に火災領域があるか否かは後述する画像処理部で検出される。
【0008】図2は、監視カメラ1により撮影された画像を示す図面で、この図からもわかるように監視カメラ1は車両Cが走り去っていく方向を映すように、例えばトンネル内の側壁上部に設置されている。これは、車両Cのヘッドライトが監視カメラ1に入射するのを防止するためで、このように設置することで画像処理する際に、ヘッドライトが火災領域として捕らえられることがなくなる。なお、図2において、CTは車両Cのテールランプを示している。
【0009】2は監視カメラ1に接続されたアナログデジタル変換器で、監視カメラ1から得られた画像のそれぞれを画素単位で多階調、例えば255階調のデジタル信号に変換するものである。3はアナログデジタル変換器2に接続され、デジタル化された画像を記憶する画像メモリで、監視カメラ1で撮影された画像の1画面分を格納する。この画像メモリ3は複数の画像を格納できるように、図に示すように複数個で構成され、一番古い画像を削除しながら、順次新しい画像を更新格納していく。
【0010】41は画像メモリ3に接続され、画像処理部4の構成要素の1つである火災候補領域抽出手段である。この火災候補領域抽出手段41は画像メモリ3から読み出された画像信号を所定値で二値化処理し、所定値を越える領域、つまり明るい領域を火災らしい領域(火災の可能性のある領域)として抽出する。即ち、火災らしい領域を「1」、画像のそれ以外の部分(所定値未満の部分)を「0」で表す。なお、以下の説明において、火災らしい領域を抽出領域と呼ぶ場合がある。
【0011】この二値化処理で使用される所定値は、画像から所定の明るさ(明度)を有する領域だけを抽出できるように設定された値であり、トンネルのように暗い環境下では例えば200位(255階調の場合)に設定される。なお図3は図2の画像を二値化処理した二値化画像で、後述の二値化メモリに格納されている。このように二値化処理により所定の明るさをもつ領域だけが元の画像から抽出される。
【0012】5は火災候補領域抽出手段41に接続され、この火災候補領域抽出手段41によって二値化された画像を格納するための二値化メモリで、画像メモリ3と同様に複数個で構成され、画像メモリ3からの最新の画像を火災候補領域抽出手段41を介して順次複数個分格納する。
【0013】6および7は、上述の火災候補領域抽出手段41等を含む画像処理部4にそれぞれ接続されたROMおよびRAMで、画像処理部4における各種演算処理等は、ROM6に格納された後述のプログラム(図4参照)に基づいて行われ、その際、演算された値はRAM7に格納される。またROM6は二値化処理をする際の所定値や火災判別をする際に使う所定値などが記憶されている。
【0014】42は二値化メモリ5に接続された外接矩形作成手段で、抽出された火災らしい領域を外接する最小の矩形で囲み、矩形の対角(例えば右上、左下)の隅の画素の座標(フィレ値)から矩形の高さdyと矩形の幅dx(フィレ径)を演算して、その座標値とともにRAM7に格納する。
【0015】43は二値化メモリ5に接続された対応判別手段で、監視カメラ1によって周期的に撮影された画像に火災らしい領域が連続してある場合、つまり二値化メモリ5に火災らしい領域が連続して格納される場合に、ある時間の前後にわたる火災らしい領域同士の対応関係、即ち同じ炎により抽出された領域なのかどうかを判別する。ここでは、一例として二値化メモリ5に格納された抽出領域の重なり具合を見ることで抽出領域同士の対応関係を判別する。つまり、ある時間における画像の抽出領域とその直前の画像の抽出領域を重ね合わせ、抽出領域同士がわずかでも重なり合えば対応関係が有ると判断する。
【0016】8は画像メモリ3、二値化メモリ5及び外接矩形作成手段42に接続された火災周辺領域メモリで、前述の火災らしい領域及びその周辺の領域を格納するメモリである。領域内の画素は画像メモリ3からの輝度値により255階調で表せられる。この周辺の領域はRAM7に格納された前述の外接矩形の大きさ及び位置に基づいて作成される。なお火災周辺領域メモリ8を特に設けずに、画像メモリ3に格納される原画像のデータをそのまま利用して、火災周辺領域の平均輝度などを演算するようにしてもよい。
【0017】ここで火災周辺領域について図5を用いて説明する。図5において、領域Aは、火災候補領域抽出手段41により抽出され、かつ外接矩形作成手段42によって囲われた領域である。この領域Aの周り、上、右、左、右上、左上の5か所に領域Aと同じ大きさの矩形を領域Aと接するように配置する。このようにして5つの矩形から出来た逆凹字状の領域Bを火災周辺領域と呼ぶ。
【0018】火災周辺領域Bはこの5つの矩形内にある領域、つまり火災らしい領域Aと密接な周辺にある領域なら、その形状、大きさは何でもよく、例えば火災らしい領域Aの直上にだけ、火災らしい領域Aと同じ大きさの矩形を設け、その矩形を火災周辺領域Bとしてもよい。なおこの火災周辺領域Bが、火災らしい領域Aの最下端のY座標よりも上側に設けられるのは、煙が上方向及び横方向に広がる点を考慮したためである。
【0019】46は火災周辺領域メモリ8及び対応判別手段43に接続された特徴量演算手段で、火災らしい領域の周辺の火災周辺領域に、黒煙が発生しているか否かを検出する黒煙検出手段の一例である。具体的には以下に記すように、火災周辺領域の明度が所定値以下であるか否かを検出するものである。
【0020】つまり特徴量演算手段46は、対応判別手段43が所定時間(回)にわたって火災らしい領域同士の対応関係を判別した時、その対応関係がとれた火災らしい領域の火災周辺領域における特徴量、例えば輝度値の低い画素の数や領域の平均輝度を演算する。そして演算された輝度値の低い画素数が所定値以上の時、又は火災周辺領域の平均輝度が所定値以下の時に、火災判別手段に黒煙発生信号を出力する。なお輝度値及び平均輝度に対する所定値は例えば30位(255階調の場合)に設定され、火災周辺領域全体が非常に暗い場合にのみ、黒煙発生信号が出力されるようになっている。
【0021】47は特徴量演算手段46に接続された火災判別手段で、黒煙検出手段が黒煙を検出した時、つまり黒煙発生信号が入力された時、火災らしい領域が本当の火災領域であると判別するものである。そして火災判別時には、図示しない表示部や音響部から火災の発生を警報する。なお上述の構成要素41〜47により画像処理部4を構成し、この画像処理部4としては例えばMPU(マイクロプロッセサ)が用いられる。
【0022】次に動作について、図4及び図6を参照しながら説明する。今、監視カメラ1が撮影した画像には、所定の明るさを有する光源として3つの明度を有するもの、例えば車両CのテールランプCT、照明用のナトリウム灯N、火災時の炎Fが映し出されている(図2参照)。
【0023】監視カメラ1によって撮影された監視領域の画像は、画像信号がアナログデジタル変換器2によってデジタル化された後、画像メモリ3に取り込まれる(ステップ1)。次いで画像メモリ3に取り込まれた画像は火災候補領域抽出手段41に供給され、その出力された値を基に、二値化処理が行われ、所定値以上の輝度値を有する領域を火災らしい領域として抽出する(ステップ2)。この抽出された火災らしい領域は、何らかの光を放つ光源がある領域である。
【0024】二値化処理後の画像を二値化メモリ5に格納する(ステップ3)。火災候補領域抽出手段41によって抽出され、二値化メモリ5に格納された抽出領域にはラベリング処理が行われ、この後、行われる領域の平均輝度や画素数の演算結果などは、この番号と共にRAM7に格納される。
【0025】外接矩形作成手段42が、抽出された火災らしい領域を外接する最小の矩形で囲み、矩形の対角の隅の画素の座標から矩形の高さdyと矩形の幅dxを演算して、座標値とともにRAM7に格納する(ステップ4)。ステップ5〜ステップ10の対応判別手段43による処理を説明する前に、図6を参照して時間経過に伴う抽出領域の変化の仕方を説明する。
【0026】図6は監視カメラ1の画像を撮影するタイミング(図6a)と、そのタイミング(撮影時間)によって撮影され、火災候補領域抽出手段41によって抽出された抽出領域(図6b、図6c)を示すものである。図6(b)及び図6(c)に示す抽出領域は、それぞれ車両の移動光源と炎に関するもので、所定の撮影間隔をおきながら撮影したものである。
【0027】図6(b)から明らかなように、移動光源による抽出領域は時間経過に伴い、位置が変化していくのがわかる。またこれに対して図6(c)の炎の抽出領域は、時間が経過してもその位置はほとんど変化しない。なお図6(c)においては時間T11と時間T21の抽出領域のみしか図示していないが、時間T12〜T16の抽出領域もほとんど同じ箇所にほとんど同じ大きさで現れる。よって、ある位置に連続して抽出領域が存在するならば、その領域は少なくとも移動中の車両の光源でないと判別できる。
【0028】対応判別手段43は、二値化メモリ5に所定数、例えば6枚の画像が格納されたら(ステップ5)、それらの画像に同じ光源により抽出された領域が存在するかどうかを判別する(ステップ6)。ここでは6枚の画像を格納しているので、1枚目と2枚目、2枚目と3枚目、3枚目と4枚目、4枚目と5枚目及び5枚目と6枚目の合計5回、それぞれの画像を重ね合わせて、抽出領域同士が重なるか否かをみて、対応関係を判別する。なおこの6枚の画像を使用した5回の対応関係の判別処理を、以下、1処理という。1処理中の対応判別が終わると、ステップ7において1処理中の全ての画像の対応関係がとれたか否かを判別する。
【0029】図6(b)を参照すると、時間T11とT12、時間T12とT13、時間T13とT14、時間T14とT15、及び時間T15とT16の抽出領域はそれぞれ領域が重なり合っているので、1処理中の全ての画像の対応関係があると判別される。なお図中の撮影時間Tの後に続く2桁の数字のうち、前の数字は何回目の処理かを示す数字で、後の数字は1処理中における何枚目の画像かを示す数字である。
【0030】ステップ7にて5回全て対応関係がとれているならば、今回処理した画像が前回処理の画像と対応するかを、1処理中の最初の画像同士を使用して上記と同じ方法で判別する(ステップ8)。ここでは便宜上、すでにステップ7にて時間T11〜T16における対応関係、及び時間T21〜T26における対応関係が両方とも対応ありと判断されてるものとする。つまり時間T11と時間21の抽出領域同士の重なり具合をしらべ、1処理目と2処理目が対応するものかを判別する。
【0031】ここで対応関係がとれれば、前回処理(第1回目)と今回処理(第2回目)の抽出領域は対応するものと判別する。即ち、この領域は時間T11〜時間T26の間にわたって監視領域に存在するものであり、移動量の少ない光源と判断できる。また対応関係がとられなかった場合には、今回処理の抽出領域は、監視領域内に新しく発生した領域として扱われ、RAM7にそのラベリング番号と、発生時期、つまり何回目の処理から出現した領域であるかが格納される(ステップ9)。
【0032】もう一度図6(b)(c)を参照すると、時間T11と時間T21では車両の移動光源の抽出領域は全く重ならないが、炎は領域同士がほとんど重なっている。このように対応判別手段43は、直前の画像同士だけでなく、時間T11と時間T21のように時間間隔のあいた画像同士も比較することで、移動量の大きい光源の対応関係をとることがないようにしてある。つまり火災候補領域抽出手段41により移動光源が火災らしい領域として抽出されたとしても、この対応判別手段43を設けることで、以下の処理対象から除外される。
【0033】こうしてステップ10で、火災らしい領域同士の対応する処理回数が連続して所定回、例えば7回(画像の枚数にして42枚)を越えたことを判別したら、ステップ11に進む。このように対応判別手段43を設けることで、監視領域に所定時間にわたって火災らしい領域が存在するかどうかを判別することが可能となる。
【0034】なおステップ10でまだ6回以下しか対応関係がとられていない場合はステップ1に戻り新しい画像を取り込む。またステップ5で二値化メモリ5に画像が所定数格納されていない場合や、ステップ7で1処理中の対応関係が4回以下しかとられない場合もステップ1に戻る。
【0035】対応判別手段43を設けても、照明用光源や停止中の車両の光源などの移動しない光源(固定光源)と炎を判別することは出来ない。そこでこの固定光源と炎の判別は以下のステップ11以降の処理で行う。
【0036】ステップ11において、特徴量演算手段46は、連続して所定回、対応関係がとれた火災らしい領域の火災周辺領域における特徴量を演算する。つまり火災周辺領域における、輝度値の低い画素の数又は火災周辺領域の平均輝度を演算する。そして演算された値と所定値とを比較して黒煙が発生しているかをしらべる(ステップ12)。演算された輝度値の低い画素数が所定値以上の時、又は火災周辺領域の平均輝度が所定値以下の時に、特徴量演算手段46は火災判別手段47に黒煙発生信号を出力する(ステップ13)。なお輝度値の低い画素数に対する所定値としては、その時の火災周辺領域の面積に例えば0.7をかけた値が使用される。
【0037】特徴量演算手段46は対応関係のとれた42枚の画像全ての特徴量を演算し、演算された各値の平均値と所定値を比較して黒煙が発生しているかを検出してもよいが、42枚の画像のうち所定数だけを使用して、特徴量の演算を行ってもよい。
【0038】火災判別手段47に黒煙発生信号が入力されると、火災判別手段47は火災らしい領域が本当の火災領域であると判別し、図示しない表示部や音響部から火災の発生を警報する。
【0039】ここで火災らしい領域として照明用光源や停止中の光源などが抽出される場合について説明する。これらの光源における火災周辺領域の明度(輝度)は、光源に近い領域なので比較的明るい。よって輝度値や平均輝度が閾値としての30を下回ることはなく、火災(炎)であると判別されることはない。
【0040】実施の形態2実施の形態1では火災周辺領域の明度が所定値以下の時、つまり暗くなった時に火災と判別したが、この実施の形態2では、火災周辺領域が黒煙で覆われて真っ暗になる前に、火災の発生を検出するものである。
【0041】再び図7を参照すると、火災が発生すると、黒煙は時間の経過に伴い増加していくことがわかる。つまり火災周辺領域は時間の経過に伴い暗くなっていく。そこで本実施の形態では火災周辺領域の明度の変化を検出し、領域内の明度が低下していく傾向があれば火災周辺領域に黒煙が発生していると判別するものである。
【0042】図8は本実施の形態にかかわる黒煙検出手段の別の例を示す図である。黒煙検出手段46Aは実施の形態1の黒煙検出手段(特徴演算手段)46に対応するもので、対応判別手段43と火災周辺領域メモリ8に接続され、火災周辺領域に黒煙が発生していることを検出すると、火災判別手段47に黒煙検出信号を出力するものである。
【0043】黒煙検出手段46Aは、火災周辺領域の画像同士を差分して差分画像を生成する差分手段51と、その差分画像において、輝度値が低下した領域の面積を演算する面積演算手段52とから構成される。
【0044】所定数、例えば42枚の画像にわたって対応関係のとれた抽出領域が存在すると、差分手段51は、時間的に連続する火災周辺領域の画像同士を差分して差分画像を生成する。面積演算手段52が、差分画像を例えばラスター走査により画素毎にスキャンして、輝度値の低下した画素の数をカウントする。そしてこのカウントした値が、火災周辺領域全体の面積のほぼ7割を占めるならば、火災周辺領域に黒煙が発生していると判別し、黒煙検出信号を火災判別手段47に出力する。
【0045】なお火災周辺領域の明度の変化を、次のようにして検出してもよい。つまり火災周辺領域の平均輝度を演算する手段を設け、平均輝度を逐次演算する。そして演算された平均輝度同士を減算する手段を設けて、時間的に連続する画像同士のそれぞれの平均輝度を減算する。演算及び減算を所定回繰り返して、平均輝度が低下していることを検出したら、火災周辺領域に黒煙が発生していると判別する。
【0046】実施の形態2では、火災周辺領域の明度が低下する傾向がある時に黒煙が発生していると判別するものなので、火災周辺領域の明度が所定値以下になっていなくても、黒煙の発生を検出でき、いち早く火災の発生を検出することが可能となる。
【0047】実施形態3なお以下の方法を使用すれば、火災らしい領域に火災周辺領域を設定しなくても、黒煙を検出することが可能となる。まず図2に示すように、監視領域に設置される照明器具(ナトリウム灯)が撮影視野に入るように、監視カメラを監視領域に取り付け、火災候補領域抽出手段に照明器具を火災らしい領域として抽出させる。照明器具は固定光源であるから、撮影画像において常に同じ位置に現れるので、その出現位置をROMに記憶させておく。二値化メモリに格納された火災らしい領域のうち、ナトリウム灯に関する領域だけ、毎回、面積を演算、つまり「1」になっている画素数をカウントする。
【0048】もし何も異常が発生していなければ、このナトリウム灯の画素の数は一定の値を示す。そこでROMに所定値としてこの一定の値を記憶させておいて、画素数をカウントするたびに、この所定値と比較する。もしカウントした画素数がこの所定値より非常に小さければ、監視領域に黒煙が発生していると判別できる。
【0049】各実施の形態では監視領域としてトンネルを例にして説明したが、監視領域は機械式の駐車場や石油プラントなどでも構わない。また監視カメラはTVカメラやデジタルカメラを使用してもよく、またカラー、白黒どちらの画像でも構わない。
【0050】
【発明の効果】本発明は、所定値以上の明度を有する領域を火災らしい領域として抽出し、その火災らしい領域の周辺の火災周辺領域の明度が所定値以下の時に、この火災周辺領域に黒煙が発生していると検出し、よってその火災らしい領域が本当の火災領域であると判別するようにしたものである。このため監視領域に照明用の光源や車両の光源が混在していても、それらの光源と炎を確実に識別することが可能である。
【0051】また火災周辺領域の明度が低下する傾向がある時に、火災周辺領域に黒煙が発生していると判断することにより、より早く火災の発生を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】監視カメラにより撮影される画像(原画像)の一例を示す図である。
【図3】二値化メモリに格納される画像の一例で、図2を二値化処理したものである。
【図4】この発明の実施の形態1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】火災らしい領域と火災周辺領域を示した図である。
【図6】抽出領域の二値化画像の対応関係を説明するための図である。
【図7】火災時の黒煙の発生を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態2を示す構成図である。
【符号の説明】
1 監視カメラ、2 アナログデジタル変換器、3 画像メモリ、4 画像処理部、5 二値化メモリ、6 ROM、7 RAM、8 火災周辺メモリ、41 火災候補領域抽出手段、42 外接矩形作成手段、43 対応判別手段、46 特徴量演算手段(黒煙検出手段)、46A 黒煙検出手段、47 火災判別手段、51 差分手段、52 面積演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 監視領域を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、該画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、前記画像から所定の明度を有する領域を火災らしい領域として抽出する火災候補領域抽出手段と、前記火災らしい領域の周辺の火災周辺領域に、黒煙が発生しているか否かを検出する黒煙検出手段と、該黒煙検出手段が黒煙を検出した時に、前記火災らしい領域が本当の火災領域であると判別する火災判別手段とを備えたことを特徴とする火災検出装置。
【請求項2】 請求項1において、前記黒煙検出手段は、前記火災周辺領域における輝度値の低い領域の面積または前記火災周辺領域における平均輝度を演算する特徴量演算手段から構成されることを特徴とする火災検出装置。
【請求項3】 請求項1において、前記黒煙検出手段は、前記火災周辺領域の画像同士を差分して差分画像を生成する差分手段と、該差分画像において、輝度値が低下した領域の面積を演算する面積演算手段とから構成されることを特徴とする火災検出装置。
【請求項4】 監視領域を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、該画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、前記監視領域に設置される照明器具が撮影視野に入るように、前記撮影手段を前記監視領域に取り付け、前記照明器具の面積値または輝度値を演算する演算手段と、前記演算手段により演算された値が所定値よりも小さい時に、火災と判別する火災判別手段とを備えたことを特徴とする火災検出装置。
【請求項5】 請求項4において、前記所定値は、通常時における前記照明器具の輝度値または前記照明器具の輝度値の高い領域の面積値であることを特徴とする火災検出装置。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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