説明

炉心上部機構引き抜き用の締結装置

【課題】高速増殖炉において、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構とライナを、一括して吊り上げることができるようにする。
【解決手段】スリーブ部の上端部に位置決め用の雄ネジ部が形成され下方に拡開変形可能で内径が先太形状のテーパリング部を備えたロックボルト10と、軸部の上端に締付け用の雄ネジ部が形成され下端に先太状のテーパ部を備えロックボルト内に挿入されるテーパボルト12と、ロックボルトの位置決め用の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備えている位置決め用カラー14と、テーパボルトの締付け用の雄ネジ部と螺合してテーパボルトを引き上げる締付け用ナット16を具備し、位置決め用カラーによりテーパリング部の位置を調整可能とし、締付け用ナットによりテーパ部を引き上げテーパリング部を拡開変形させることで、炉心上部機構とライナに共通に形成されている貫通孔を利用して締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速増殖炉において、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構とその下方に位置するライナとを一括して吊り上げるための締結装置に関し、更に詳しく述べると、炉心上部機構とライナに共通に形成されている貫通孔を利用して、該貫通孔内に挿入したテーパリング部をテーパ機構により拡開変形させてライナに直接圧接しロックするように構成した炉心上部機構引き抜き用の締結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模なプラントの建設では、工場で組立調整の全てを済ませてからプラント建設現場に搬入するのではなく、予め適当なモジュール単位に分割して別々の工場で製作し、プラント建設現場搬入後に組立調整する場合がある。その際、現場での調整が可能なように、取り合い部分のみを別の部品とすることが行われている。高速増殖炉「常陽」でも、モジュール同士の取り合いを調整するスペーサとしてライナが採用されている。
【0003】
前記の高速増殖炉では、原子炉本体内に装着されている炉心上部機構の下方にライナが位置している。炉心上部機構の引き抜き工事においては、下方に位置しているライナも引き抜く必要がある。炉心上部機構は、上層の制御棒取付板と下層の遮蔽上部胴を備えており、それらは結合されているが、遮蔽上部胴の更に下方に位置するライナとは結合されていない。また構造上、外周側からはライナに直接アクセスすることができない。制御棒取付板と遮蔽上部胴、及びライナには共通の貫通孔が設けられているが、ライナには吊り上げ用のネジは切られていない。
【0004】
周囲に広い空間があれば、ライナを炉心上部機構と同時に大型マニピュレータなどで把持し一括して吊り上げることが可能であるが、高速増殖炉のように狭い空間の中では、大型マニピュレータの把持部を挿入することができない。最下層のライナに、一括吊り上げのためのネジ穴加工を施せば、アイボルトを取り付けて一括吊り上げが可能となるが、既設部材への後加工では切粉等が発生するため、そのような方法も採用できない。そのため従来技術では、炉心上部機構とライナを同時に引き抜くことができず、個別の吊り上げとなり、作業効率が悪い問題があった。
【0005】
ところで、テーパ機構を利用して部材同士を締結させる技術は従来から知られており、それを利用した放射性廃棄物収納容器の把持装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。これは廃棄物収納容器に対して、その内周面の任意の位置で把持する装置であり、単一の大口径の容器の吊り上げ/吊り降ろしには適用できる。しかし、この技術は、互いに重なり合っているが一体化されておらずフリーな状態にある炉心上部機構とライナを、両者がずれないように全体を一括して吊り上げたい場合には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4533961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高速増殖炉において、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構とライナを、後加工を施すことなしに、しかも両者がずれないように、一括して確実に吊り上げることができるようにすることである。本発明が解決しようとする他の課題は、簡単な構造でありながら、重なり合っている炉心上部機構とライナに共通の貫通孔に挿入できるようにコンパクト化でき、且つ保持の信頼性を高めることができる締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高速増殖炉において、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構とその下方に位置するライナとを一括して引き抜くために、前記炉心上部機構とライナに共通に形成されている貫通孔を利用して両者を一体化する締結装置であって、前記貫通孔に挿入するスリーブ部の上端部に位置決め用の雄ネジ部が形成されると共に下方に拡開変形可能で内径が先太形状のテーパリング部を備えたロックボルトと、軸部の上端に締付け用の雄ネジ部が形成されると共に下端に先太状のテーパ部を備え前記ロックボルト内に挿入されるテーパボルトと、前記ロックボルトの位置決め用の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備え前記炉心上部機構の上部に位置する位置決め用カラーと、前記位置決め用カラーの上方に位置し前記テーパボルトの締付け用の雄ネジ部と螺合して前記テーパボルトを引き上げる締付け用ナットとを具備し、前記位置決め用カラーとロックボルトとの螺合位置によってテーパリング部の位置を前記ライナの位置に調整可能とし、前記締付け用ナットの締め付けによりテーパボルトのテーパ部を引き上げ前記テーパリング部を拡開変形させることで前記ライナにロックさせるようにしたことを特徴とする炉心上部機構引き抜き用の締結装置である。
【0009】
ここで前記ロックボルトは、そのスリーブ部とテーパリング部との間を薄肉筒体で連結し、該薄肉筒体の上端近傍からテーパリング部の下端まで、軸方向に延びる多数のスリットを等間隔で形成した構造が好ましい。スリットは、ロックボルトの大きさにもよるが、例えば全周を8〜12程度に等分割するように形成する。これら薄肉筒体とスリットは、テーパリング部を拡開変形し易くする機能を果たす。
【0010】
また、前記テーパボルトの最下端部に落下防止機構部を設けるのが好ましい。該落下防止機構部は、テーパボルトの径方向に出没可能に支持されている複数の係止片と、各係止片に外向きの弾撥力を付与する付勢バネとを具備し、各係止片が前記ライナの下方位置でフリーな状態となったときに外方向に突出するように構成する。各係止片は、鉛直面内で揺動開閉する方式でもよいし、水平面内で径方向に出入りする方式でもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る炉心上部機構引き抜き用の締結装置は、テーパ機構を利用しているため、締付け用ナットによる締め付けによるテーパボルトの引き上げのみの簡単な動作でテーパリング部が拡開変形して、強固に最下層のライナにロックできる。また、小さな締付けトルクで大きな締結力が発生し、ロック箇所が1箇所であるためにコンパクト化でき、それらが相俟って全体として締結の信頼性が向上する。このため、貫通孔にネジ加工などの吊り上げのための後加工を行う必要が全くない。高速増殖炉には狭い空間しかないが、これによって、炉心上部機構とライナを一緒に引き抜くことが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る炉心上部機構引き抜き用の締結装置では、ロックボルトと位置決め用カラーの組み合わせにより、テーパリング部の位置を特定の深さに調節できるので、最下層のライナに確実にロックできる。ロックボルトのスリーブ部を貫通孔に挿入することによって、テーパリング部が貫通孔と略同軸に位置付けられ、ロックが確実になる。その上、ロックボルトのスリーブ部は、フリーな上層の炉心上部機構を、径方向のずれを抑えることができるので、全体を一括して安定に吊り上げることが可能となる。
【0013】
更にテーパボルトの下端部に落下防止機構を設けると、万一、テーパリング部によるロックが緩んでも最下層のライナを保持することができるので、重大な落下事故が生じる恐れは皆無となる。また落下防止機構は、ライナ等の落下防止のみならず、壁面(径方向)に向いて均等に突出することから、締結装置を貫通孔に挿入する際のセンタリング機能を果たし、狭い隙間でも、貫通孔に多少のずれがあっても、締結装置を確実に挿入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る炉心上部機構引き抜き用の締結装置の構造図。
【図2】その使用手順の説明図。
【図3】締結装置の使用状態の一例を示す説明図。
【図4】締結装置の使用状態の他の例を示す説明図。
【図5】テーパリング部の他の例を示す説明図。
【図6】落下防止機構部の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る炉心上部機構引き抜き用の締結装置の構造図である。ここで、Aは各構成部品を分解した状態、Bはそのx−x断面を示しており、またCは組み立てた締結装置を移動対象物の貫通孔に挿入しロックした状態を示している。この締結装置は、高速増殖炉において、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構とライナを一括して吊り上げるために使用するものであり、両者に共通に形成されている貫通孔を利用して最下層の前記ライナにロックする。
【0016】
図1のAに示すように、この締結装置は、主として、ロックボルト10、該ロックボルト10の内部に下方から挿入されるテーパボルト12、位置決め用カラー14、及び締付け用ナット16からなる。前記ロックボルト10は、スリーブ部20と、その上端部に形成されている位置決め用の雄ネジ部22と、下方に位置する拡開変形可能で内径が先太形状のテーパリング部24を備えている。そして、前記スリーブ部20とテーパリング部24は薄肉筒体26で連結され、それによって上方から雄ネジ部22、スリーブ部20、薄肉筒体26、テーパリング部24が一体になっている。テーパボルト12は、軸部28の上端に締付け用の雄ネジ部30が形成されると共に下端に先太状のテーパ部32を備え、ロックボルト10内に挿入したとき、締付け用の雄ネジ部30がロックボルト10よりも上方に突出し、テーパ部32がロックボルト10のテーパリング部24に嵌合する構造である。位置決め用カラー14は、ロックボルト10の位置決め用の雄ネジ部22と螺合する雌ネジ部を備えている。前記締付け用ナット16は、位置決め用カラー14の上方に位置し、テーパボルト12の締付け用の雄ネジ部30と螺合するものであり、テーパボルト12を引き上げる機能を果たす。
【0017】
ここでロックボルト10の薄肉筒体26の上端近傍からテーパリング部24の下端に至るまで、軸方向に延びる多数のスリットが全周に等間隔で形成され分割されている。スリットの形成個数は任意であるが、通常、8〜12個程度設けるのがよい。図1のBでは、スリット34を等間隔で8個形成している。スリット34は、テーパリング部24の拡開変形を円滑に行えるようにする機能を果たし、前記薄肉筒体26は、テーパリング部24の拡開変形を妨げず且つロックボルト全体を一体に保つ機能を果たしている。
【0018】
また、テーパボルト12の最下端部に落下防止機構部36を設ける。該落下防止機構部36は、テーパボルトの径方向に出没可能に支持されている複数の係止片38を具備し、各係止片38がフリーな状態のときに、実線で示すように外方向に自重で突出するように構成する。ピン40を枢軸として揺動自在とした複数の係止片が、ねじりバネの弾撥力で開くような構造とすれば、より確実である。なお、ストッパピン42は、係止片が反転しないように係止片の向きを規制する機能を果たしている。
【0019】
ロックボルト10の雄ネジ部22に、位置決め用カラー14を上方から螺合させ、該位置決め用カラー14とロックボルト10との螺合位置によってテーパリング部24の深さ位置を調整する。そしてテーパボルト12を、ロックボルト10内に下方から挿入し、締付け用ナット16を、ロックボルト10の上端から突出したテーパボルト12の締付け用の雄ネジ部30に螺合させる。このとき、ロックボルト10と締付け用ナット16との間に、ワッシャ44を介在させる。テーパボルト12のテーパ部32は、ロックボルト10のテーパリング部24には十分に嵌入させず、従ってテーパリング部24は未だ拡開していない状態とする。これで準備完了となる。
【0020】
図1のCに示すように、組み立てられた締結装置50を移動対象物の貫通孔52に挿入する。ここで移動対象物54は、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構54aとライナ54bからなる。このとき、落下防止機構部36で拡開する係止片38がセンタリング機能を果たし、締結装置50の中心軸が貫通孔52の中心軸に略一致するような状態を維持しつつ挿入される。すると、ロックボルト10のスリーブ部20が移動対象物の貫通孔52に嵌合する。位置決め用カラー14の下端面が炉心上部機構54aの上面に載ると、位置決めがなされ、テーパリング部24の外周が丁度ライナ54bの貫通孔壁に対向する。スリーブ部20は貫通孔52に嵌合しているため、水平方向のがたつきを最小限に抑えることができる。またロックボルト10のスリーブ部20に対してテーパボルト12の軸部28が軸方向に摺動するため、テーパ部32とテーパリング部24は常に同軸状態が保たれ、位置が安定する。この状態で、前記締付け用ナット16の締め付けによってテーパボルト12を引き上げると、テーパ部32が上昇して、テーパ機構によってテーパリング部24が拡開変形する。それによってテーパリング部24の外周面がライナ54bの貫通孔壁に圧接する。ライナ54bが締結部材50にロックされ、上方の炉心上部機構54aと一緒に吊り上げることが可能な状態となる。
【0021】
図2のA〜Fは、その締結装置50の使用手順を示している。これは、上記と同様、互いに重なり合っているが一体化されていない上方の炉心上部機構54aと下層のライナ54bからなる移動対象物54を、一括して吊り上げる例である。
A:締結装置50を、移動対象物54に共通に形成されている貫通孔52に、上方から挿入する。
B:位置決め用カラー14の下端面が上方の炉心上部機構54aの上面に当たると、締結装置50の位置決めがなされ、テーパリング部24の外周面が丁度下層のライナ54bの貫通孔壁に対向する。
C:この状態で、締付け用ナット16を締め付けてテーパボルト12を引き上げると、そのテーパ部32が上昇し、テーパ機構によってテーパリング部24が拡開変形する。これによってテーパリング部24の外周面がライナ54bの貫通孔壁に圧接し、締結装置50がライナ54bにロックした状態となる。
D:炉心上部機構54aを持ち上げれば、ロックされている下層のライナ54bも持ち上がる。
E:そのまま更に持ち上げて、ライナ54bと下部構造物56との間に隙間ができれば、落下防止機構部の係止片38が開き、ライナ54bの落下を防止できる状態となる。
F:万一、テーパ機構によるロックが外れて、あるいは緩くなってライナ54bがずり落ちたとしても、落下防止機構部の係止片38で受け止められるため、それよりも下方に落下する恐れは全くない。
【実施例】
【0022】
前述のように、高速増殖炉の炉心上部機構を原子炉本体から引き抜く工事においては、炉心上部機構の下部に設けられているライナも引き抜く必要がある。炉心上部機構は、上方に位置する制御板取付板と下方に位置する遮蔽上部胴を具備しており、両者は結合されているが、それらとライナとは結合されていない。また、ライナは原子炉本体内に収まっているので、ライナへ直接アクセスすることができない。
【0023】
図3は、本発明装置を使用した吊り上げ作業の例を模式的に示している。原子炉本体60の上部を炉心上部機構62が塞ぎ、該炉心上部機構62の下にライナ64が位置している。ここでは炉心上部機構62とライナ64とが移動対象物である。炉心上部機構62とライナ64には同じ場所に同じ大きさの貫通孔52が設けられており、該貫通孔52は原子炉本体60まで達している。この貫通孔52は、円周状に多数形成されており、それらの一部(2箇所以上)もしくは全てに本発明の締結装置を取り付ける。この例では、炉心上部機構62に、中心に対して対称となる3箇所にアイボルト66を螺着し、そのアイボルト66に吊り上げ用のワイヤ68を取り付け、クレーン等で吊り上げる。つまり、締結装置50を専ら移動対象物の保持のために使用し、移動対象物の荷重はアイボルト66が担う方式である。
【0024】
Aに示すように、締結装置50を貫通孔52に挿入し、テーパリング部24がライナ64に対向するように位置決めした状態で締付け用リング16を締め付ける。これによってテーパリング部24が拡開変形し、締結装置50がライナ64にロックする。これで持ち上げ準備は完了である。そのまま吊り上げると、Bに示すように、炉心上部機構62と共にライナ64が持ち上げられる。ライナ64と原子炉本体60との間に空隙が生じると、落下防止機構部の係止片38が開き、落下を防止できる状態となる。万一、ロックが緩んでライナ64がずり落ちても(この場合、炉心上部機構62はアイボルト66で吊り上げられているため落下しない)、Cに示すように、ライナ64は係止片38で支えられるため重大な落下事故につながる恐れはない。
【0025】
図4は、本発明装置を使用した吊り上げ作業の他の例を模式的に示している。原子炉本体60の上部を炉心上部機構62が塞ぎ、該炉心上部機構62の下にライナ64が位置している。ここでも炉心上部機構62とライナ64とが移動対象物となる。炉心上部機構62とライナ64には同じ場所に同じ大きさの貫通孔52が設けられており、該貫通孔52は原子炉本体60まで達している。この貫通孔52は、円周状に多数形成されており、それらの一部(2箇所以上)もしくは全てに本発明の締結装置を取り付ける。この例では、中心に対称な3箇所の締結装置に直接吊り上げ用のワイヤ68を接続し、クレーン等で吊り上げる。つまり、締結装置50が、移動対象物の保持の機能と、移動対象物の荷重を担う機能の両方を果たす方式となっている。
【0026】
Aに示すように、締結装置50を貫通孔52に挿入し、テーパリング部24がライナ64に対向するように位置決めされた状態で締付け用リング16を締め付ける。これによって、テーパリング部24が拡開変形し、締結装置50がライナ64にロックする。これで持ち上げ準備は完了である。そのまま吊り上げると、Bに示すように、炉心上部機構62がライナ64と共に持ち上げられる。ライナ64と原子炉本体60との間に空隙が生じると、落下防止機構部の係止片38が開き、落下を防止できる状態となる。万一、ロックが緩んでライナ64と炉心上部機構62がずり落ちても、Cに示すように、それらは係止片38で支えられるため重大な落下事故につながる恐れはない。
【0027】
図5は、テーパリング部70の他の例を示している。この例では、テーパリング部70の外周面(図5のAで、楕円状に点線で囲んだ部分)に滑り止め対策を施しておくのも有効である。滑り止め対策を施した面を符号70aで示す。滑り止め対策としては、例えばローレット加工やダイス(雄ネジ)加工、高強度の突起を取り付ける構造、対向するライナと同一素材にして焼き付き効果を利用する方法などがある。BはAのy−y断面を示しており、ここではテーパリング部70の全周を12等分するようにスリット72を形成している。その他の構造は図1と同様であってよいので、同一符号を付し説明は省略する。
【0028】
図6は、落下防止機構部の他の例を示している。この落下防止機構部も、テーパボルトの径方向に突出可能に支持されている複数の係止片と、各係止片に外向きの弾撥力を付与する付勢バネとを具備し、各係止片が前記ライナの下方位置でフリーな状態となって外向きに突出するように構成する。ここで各係止片74は、水平に出入りする方式とし、コイルバネ76によって付勢される。図6のAは係止片74が押し込まれている状態、Bは係止片74がフリーになって突出している状態(落下防止機能が働いている状態)を表している。係止片74は、テーパボルトの中心軸に対称に2〜4個程度設ける。この場合も、締結装置を貫通孔に挿入する際のセンタリング機能を期待することができる。その他の構造は図1と同様であってよいので、同一符号を付し説明は省略する。
【符号の説明】
【0029】
10 ロックボルト
12 テーパボルト
14 位置決め用カラー
16 締付け用ナット
20 スリーブ部
22 位置決め用の雄ネジ部
24 テーパリング部
26 薄肉筒体
28 軸部
30 締付け用の雄ネジ部
32 テーパ部
34 スリット
44 ワッシャ
50 締結装置
52 貫通孔
54 移動対象物
54a 炉心上部機構
54b ライナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速増殖炉において、互いに重なり合っているが一体化されていない炉心上部機構とその下方に位置するライナとを一括して引き抜くために、前記炉心上部機構とライナに共通に形成されている貫通孔を利用して両者を一体化する締結装置であって、
前記貫通孔に挿入するスリーブ部の上端部に位置決め用の雄ネジ部が形成されると共に下方に拡開変形可能で内径が先太形状のテーパリング部を備えたロックボルトと、軸部の上端に締付け用の雄ネジ部が形成されると共に下端に先太状のテーパ部を備え前記ロックボルト内に挿入されるテーパボルトと、前記ロックボルトの位置決め用の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備え前記炉心上部機構の上部に位置する位置決め用カラーと、前記位置決め用カラーの上方に位置し前記テーパボルトの締付け用の雄ネジ部と螺合して前記テーパボルトを引き上げる締付け用ナットとを具備し、前記位置決め用カラーとロックボルトとの螺合位置によってテーパリング部の位置を前記ライナの位置に調整可能とし、前記締付け用ナットの締め付けによりテーパボルトのテーパ部を引き上げ前記テーパリング部を拡開変形させることで前記ライナにロックさせるようにしたことを特徴とする炉心上部機構引き抜き用の締結装置。
【請求項2】
前記ロックボルトのスリーブ部とテーパリング部との間は薄肉筒体で連結されていて、該薄肉筒体の上端近傍からテーパリング部の下端まで、軸方向に延びる多数のスリットが略等間隔で形成されている請求項1記載の炉心上部機構引き抜き用の締結装置。
【請求項3】
前記テーパボルトの最下端部に落下防止機構部が設けられ、該落下防止機構部は、テーパボルトの径方向に出没可能に支持されている複数の係止片を具備し、各係止片が前記ライナの下方位置でフリーな状態となって外向きに突出するように構成されている請求項1又は2記載の炉心上部機構引き抜き用の締結装置。
【請求項4】
前記落下防止機構部は、前記係止片に外向きの弾撥力を付与する付勢バネを具備している請求項3記載の炉心上部機構引き抜き用の締結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207964(P2012−207964A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72502(P2011−72502)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)