炉心溶融物保持装置および格納容器
【課題】炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制する。
【解決手段】炉心溶融物保持装置に、給水容器10と、給水容器10から放射状に延びる複数の流路サポート21と、流路サポート21の間に流路サポート21の給水容器側の端部よりも給水容器10からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板23と、流路サポート21および変形防止板23で下面を支持されて給水容器10から放射状に広がる傾斜流路天板18と、を備える。
【解決手段】炉心溶融物保持装置に、給水容器10と、給水容器10から放射状に延びる複数の流路サポート21と、流路サポート21の間に流路サポート21の給水容器側の端部よりも給水容器10からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板23と、流路サポート21および変形防止板23で下面を支持されて給水容器10から放射状に広がる傾斜流路天板18と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心溶融物保持装置および格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷却型原子炉では、原子炉圧力容器内への給水の停止や、原子炉圧力容器に接続された配管の破断により冷却水が喪失すると、原子炉水位が低下し炉心が露出して冷却が不十分になる可能性がある。このような場合を想定して、水位低下の信号により自動的に原子炉は非常停止され、非常用炉心冷却装置(ECCS)による冷却材の注入によって炉心を冠水させて冷却し、炉心溶融事故を未然に防ぐようになっている。
【0003】
しかしながら、極めて低い確率ではあるが、この非常用炉心冷却装置が作動せず、かつ、その他の炉心への注水装置も利用できない事態も想定され得る。このような場合、原子炉水位の低下により炉心は露出し、十分な冷却が行われなくなり、原子炉停止後も発生し続ける崩壊熱によって燃料棒温度が上昇し、最終的には炉心溶融に至ることが考えられる。
【0004】
このような事態に至った場合、高温の炉心溶融物が原子炉圧力容器下部に溶け落ち、さらに原子炉圧力容器下鏡を溶融貫通して、格納容器内の床上に落下するに至る。炉心溶融物は格納容器床に張られたコンクリートを加熱し、接触面が高温状態になるとコンクリートと反応し、二酸化炭素、水素等の非凝縮性ガスを大量に発生させるとともにコンクリートを溶融浸食する。
【0005】
発生した非凝縮性ガスは格納容器内の圧力を高め、原子炉格納容器を破損させる可能性がある。また、コンクリートの溶融浸食により格納容器バウンダリを破損させたり、格納容器構造強度を低下させる可能性がある。結果的に、炉心溶融物とコンクリートの反応が継続すると格納容器破損に至り、格納容器内の放射性物質が外部環境へ放出させるおそれがある。
【0006】
このような炉心溶融物とコンクリートの反応を抑制するためには、炉心溶融物を冷却し、炉心溶融物底部のコンクリートとの接触面の温度を浸食温度以下(一般的なコンクリートで1500K以下)に冷却するか、炉心溶融物とコンクリートが直接接触しないようにする必要がある。そこで、炉心溶融物が落下した場合に備えて様々な対策が提案されている。代表的なものがコアキャッチャーと呼ばれるもので、落下した炉心溶融物を耐熱材でうけとめて、注水手段と組み合わせて炉心溶融物の冷却を図る設備である。
【0007】
コアキャッチャーへ注水することにより炉心溶融物上面の水の沸騰により冷却する場合、上面だけからの冷却では、炉心溶融物堆積厚さが厚いと炉心溶融物底部まで十分に冷却できない。そこで、この場合には、床面積を広くとり、炉心溶融物の堆積厚さを冷却可能な厚さ以下にする必要がある。
【0008】
しかし、十分大きな床面積を確保することは格納容器構造設計上困難である。たとえば、典型的な炉心溶融物の崩壊熱は、定格熱出力の約1%程度であり、定格熱出力4000MWの炉の場合には、40MW程度の発熱量になる。上面の沸騰熱伝達量には炉心溶融物上面の状態により幅があるが、少なく見積もっても0.4MW/m2程度の熱流束が想定される。この場合、炉心溶融物の発熱量を上面の熱伝達のみで除熱しようとすると、100m2程度(円直径で11.3m)の床面積が必要になる。これまでの格納容器構造を考慮するとこの面積を確保することは困難である。
【0009】
原子炉格納容器床に落下した炉心溶融物の上面に冷却水を注水しても、炉心溶融物の底部での除熱量が小さいと、崩壊熱によって炉心溶融物底部の温度が高温のまま維持され、格納容器床のコンクリート浸食を停止することができない場合がある。そこで、炉心溶融物を底面から冷却するという方法がある(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−139023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
炉心溶融物を底面から冷却するという方法としては、たとえば炉心溶融物堆積床面の下方に冷却水流路を設け、ここに冷却水を導くことによって炉心溶融物を底面から除熱する方法がある。この方法では、高温の炉心溶融物によって、冷却水流路の構造材の温度が上昇する。その際、冷却流路構造材の温度が上昇することによって生じる熱膨張が拘束されることで熱応力が発生する。熱応力を低減する手段としては、冷却流路の上面を画する天板を流路サポートの上に乗せた構造が考えられている。
【0012】
しかし、この天板が流路サポートと接触する箇所では、冷却水による除熱ができない。その結果、当該接触部の天板の温度が上昇し、クリープ開始温度以上になる可能性がある。逆に流路サポートの板厚を薄くすれば、天板の温度が上昇は避けられるが、炉心溶融物の重さによる静荷重や、地震などによる動荷重に対して強度を保つことが難しくなる。また静荷重や動荷重に対して強度を保とうとすると、流路サポートの数が増えてしまい、製作工程が煩雑化する。
【0013】
そこで、本発明は、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明は、炉心溶融物保持装置において、給水容器と、前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと、前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と、前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、格納容器において、炉心を収めた原子炉容器と、原子炉容器の下方のペデスタル床と、前記ペデスタル床を囲んで立ち上がるペデスタル側壁と、給水容器と前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板とを備えて前記ペデスタル床状に設けられた炉心溶融物保持装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一部を切り欠いた上面をペデスタル側壁の平断面とともに示す図である。
【図2】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態における流路サポート近傍を切り出した斜視図である。
【図3】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態における変形防止板近傍を切り出した斜視図である。
【図4】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態における流路サポートの近傍の断面図である。
【図5】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態を収容した格納容器の立断面図である。
【図6】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態を格納容器とともに示す立断面図である。
【図7】炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【図8】炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーション結果を示す斜視図である。
【図9】炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板の変形のシミュレーション結果の半径方向位置と隣り合う流路サポートの中央での高さ方向変位の関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【図11】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【図12】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【図13】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図14】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図15】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図16】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図17】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例を格納容器とともに示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る炉心溶融物保持装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図5は、本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態を収容した格納容器の立断面図である。
【0020】
炉心43は、原子炉圧力容器1の内部に収められている。原子炉圧力容器1は、格納容器2の内部に設けられている。格納容器2は、ペデスタル床41およびペデスタル床41から上方に延びる円筒状のペデスタル側壁42を有している。
【0021】
原子炉圧力容器1は、ペデスタル側壁42に支持されている。原子炉圧力容器1の下方のペデスタル床41およびペデスタル側壁42で囲まれる空間は下部ドライウェル7と呼ばれる。つまり、原子炉圧力容器1は、下部ドライウェル7の上方に設けられている。また、格納容器2の内部には、ペデスタル側壁42の外周面を取り囲むように、サプレッションプール4が形成されている。
【0022】
原子炉圧力容器1の下方の下部ドライウェル7には、炉心溶融物保持装置9が設けられている。炉心溶融物保持装置9と原子炉圧力容器1との間には、サンプ床8が設けられている。
【0023】
また、格納容器2は、水槽5を有している。水槽5から炉心溶融物保持装置9には、注水配管14が延びている。注水配管14の途中には、注入弁40が設けられている。さらに、格納容器2は、格納容器冷却器6を有している。格納容器冷却器6は、ドライウェルに開口した端部から水中に沈められた熱交換器を通って水槽5に延びる配管を有している。格納容器冷却器6とは、静的格納容器冷却設備やドライウェルクーラーなどである。
【0024】
図6は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置を格納容器とともに示す立断面図である。なお、図6は、炉心溶融物13が炉心溶融物保持装置9の上に落下し、水槽5から炉心溶融物保持装置9に給水された状態を示している。
【0025】
炉心溶融物保持装置9は、給水容器10を有している。給水容器10は、たとえば円筒形に形成され、ペデスタル床41のたとえば中央に配置されている。水槽5から延びる注水配管14は、給水容器10に接続されている。
【0026】
炉心溶融物保持装置9の内部には、炉心溶融物13を冷却する冷却水が流れる冷却流路11が形成されている。冷却流路11は、傾斜流路底板17と傾斜流路天板18との間およびライザ部外側板20とライザ部内側板19との間に形成されている。
【0027】
傾斜流路底板17は、給水容器10から上昇しながら放射状に広がっている。傾斜流路天板18の上面は、全体として中央から外周に向かって上昇する円錐面の頂部を切り取った形状をなしている。また、傾斜流路底板17は、支持台30に支持されている。支持台30は、ペデスタル床41上に置かれている。
【0028】
傾斜流路天板18は、給水容器10から上昇しながら放射状に広がっている。傾斜流路天板18の上面は、全体として中央から外周に向かって上昇する円錐面の頂部を切り取った形状をなしている。
【0029】
ライザ部内側板19は、傾斜流路天板18の外周部から鉛直上方に立ち上がっている。ライザ部外側板20は、傾斜流路底板17の外周部から鉛直上方に立ち上がっている。
【0030】
給水容器10の上面、傾斜流路天板18およびライザ部内側板19は、上に向かって開いた容器を形成している。この容器の内側、すなわち、傾斜流路天板18の上面、ライザ部内側板19の内面および給水容器10の上面には耐熱材12が敷設されている。
【0031】
傾斜流路底板17と傾斜流路天板18との間の冷却流路11は、給水容器10から上昇しながら延びて、ライザ部外側板20とライザ部内側板19との間の冷却流路11に連結されている。ライザ部外側板20とライザ部内側板19との間の冷却流路11は、鉛直に延びていて、上端は下部ドライウェル7に開口している。
【0032】
ライザ部外側板20の外面とペデスタル側壁42の内面との間には、給水流路15が形成されている。また、支持台30の下面には溝が形成されていて、その溝が給水流路15となっている。つまり、給水流路15は、下部ドライウェル7に面する開口部から給水容器10まで延びている。
【0033】
炉心溶融事故が発生し、炉心溶融物13が原子炉圧力容器1の下部ヘッド3を貫通すると炉心溶融物保持装置9上に落下する。炉心溶融物13の落下後すぐに注入弁40が開き、水槽5の冷却水が重力落下により、注水配管14を介して給水容器10へ供給される。
【0034】
注入弁40は、たとえば原子炉圧力容器1の下部ヘッド3の破損を検知する信号により開放される。原子炉圧力容器1の下部ヘッド3の破損を検知する信号とは、たとえば下部ヘッド温度高やペデスタル雰囲気温度高の信号である。このようにして炉心溶融物13の落下後すぐに給水容器10への初期の給水が行われ、冷却流路11に冷却水が供給される。
【0035】
冷却流路11に供給された水は、ライザ部上端の開口部から、炉心溶融物保持装置9の炉心溶融物を保持する容器部分、すなわち給水容器10の上面、傾斜流路天板18の上面およびライザ部内側板19の内面で囲まれる領域へ溢れ出る。さらに、炉心溶融物保持装置9の全体は、冷却水31中に水没する。
【0036】
初期注水終了後は、炉心溶融物保持装置9の炉心溶融物13を保持する容器部分へ溢水した水が、冷却流路11内の沸騰による生じる自然循環によって給水流路15を通って給水容器10に供給される。
【0037】
炉心溶融物13の冷却により生じた蒸気は、格納容器2上部の格納容器冷却器6で凝縮され、凝縮水は水槽5に戻される。このようにして、水が自然循環することにより炉心溶融物13の冷却が継続される。
【0038】
本実施の形態において冷却流路11は、給水容器10から上昇しながら広がっているため、伝熱面すなわち傾斜流路天板18の下面で冷却水が加熱されて沸騰した場合、発生した気泡はその伝熱面から離脱しやすい。このため、伝熱面での除熱性能が高い。
【0039】
図1は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の一部を切り欠いた上面をペデスタル側壁の平断面とともに示す図である。図2は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の流路サポート近傍を切り出した斜視図である。図3は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の変形防止板近傍を切り出した斜視図である。
【0040】
傾斜流路底板18の上面には、鉛直上方に突き出し、径方向に延びる流路サポート21および変形防止板23が設けられている。流路サポート21は、16本が22.5度間隔で配置されている。変形防止板23は、隣り合う流路サポート21の中央に設けられている。流路サポート21および変形防止板23の高さは、同一である。流路サポート21および変形防止板23の上面に傾斜流路天板18は載置されている。つまり、傾斜流路天板18は、流路サポート21および変形防止板23で下面を支持されている。
【0041】
流路サポート21は、給水容器10の外周位置から傾斜流路天板18の外周位置まで延びている。一方、変形防止板23は、給水容器10の外周から離れた位置から外側に向かって延びている。また、変形防止板23は、傾斜流路天板18の外周よりも給水容器10に近い位置まで設けられている。
【0042】
図4は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の流路サポートの近傍の断面図である。
【0043】
傾斜流路天板18の下面には、下方向に突出し、平行に延びる一対の流路サポートガイド22が設けられている。流路サポート21は、上面がこの一対のサポートガイド22の間に挟まれるように配置される。同様に、変形防止板23も、上面が一対のサポートガイド22に挟まれるように配置される。
【0044】
流路サポート21および変形防止板23がサポートガイド22と干渉するため、傾斜流路天板18は、周方向の回転が拘束されている。一方、傾斜流路天板18の径方向への移動は拘束されていないため、たとえば熱膨張による傾斜流路天板18の径方向への変形は許容されている。
【0045】
炉心溶融事故が発生し、炉心溶融物13が下部ヘッド7を貫通すると炉心溶融物保持装置9上に落下する。炉心溶融物13の落下後すぐに給水容器10への給水が行われ、冷却流路11に冷却水31が供給される。高温の炉心溶融物13の熱は耐熱材12に伝わり、さらに冷却流路11を介して冷却水31に伝えられることで、炉心溶融物13が冷却される。
【0046】
このとき、冷却流路11の温度が上昇することによって生じる熱膨張が拘束されることで熱応力が発生する。傾斜流路天板18およびライザ部内側板19が流路サポート21および変形防止板23の上に乗せられている構造とすることにより、傾斜流路天板18の径方向の熱膨張を流路サポートガイド22および変形防止板23の接触部で吸収することができる。
【0047】
炉心溶融物が圧力容器1から落下すると、炉心溶融物13の崩壊熱は耐熱材12を介して傾斜流路天板18に伝わる。傾斜流路天板18と傾斜流路底板17との間には冷却流路11があるため、傾斜流路天板18と傾斜流路底板17との間には、温度差が生じ、熱膨張差を生じる。しかし、傾斜流路天板18は、流路サポート21および変形防止板23には固定されていないため、傾斜流路天板18は傾斜流路底板17より膨張した場合でも径方向にずれることができる。その結果、傾斜流路天板18、傾斜流路底板17、流路サポート21および変形防止板23には、過大な熱応力が発生することはない。
【0048】
また、傾斜流路天板18と流路サポート21あるいは変形防止板23との接触部には冷却水31が存在しないため、この接触部近傍の温度はその周囲に比べて高くなる傾向にある。このため、傾斜流路天板18の温度を低くするためには、流路サポート21および変形防止板23の厚さを小さくして、あるいは、流路サポート21および変形防止板23の数を少なくして、傾斜流路天板18と冷却水31との接触部分を広くした方が好ましい。しかし、流路サポート21および変形防止板23は、傾斜流路天板18および炉心溶融物13による荷重を支えるべく、ある程度の数と厚さを要する。
【0049】
そこで、本実施の形態では、流路サポート21の間隔が広くなる外周部分に変形防止板23を設けて、流路サポート21の間隔が狭くなる内周部分には変形防止板23が存在しないようにしている。流路サポート21の間隔が広くなる外周部分に変形防止板23を設けているため、傾斜流路天板18およびその上に落下した炉心溶融物13による荷重ならびに熱荷重による傾斜流路天板18の変形を効果的に抑制できる。また、流路サポート21の間隔が狭く、傾斜流路天板18の変形が小さい内周部分には変形防止板23が存在しないようにしているため、傾斜流路天板18と冷却水31との接触面積を広くすることができる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制することができる。
【0051】
変形防止板がない場合に炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーションを行った。
【0052】
図7は、炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーションモデルを示す斜視図である。図8は、炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーション結果を示す斜視図である。なお、図8において、天板およびライザ内側板の変位は、拡大して示している。
【0053】
このシミュレーションは、冷却流路11を周方向に32分割した部分セクターモデルで行った。このシミュレーションモデルでは、流路サポート21の上に給水容器10の上板、傾斜流路天板18およびライザ部内側板19が一体化された構造物が乗っているとした。境界条件としては、デブリ重量350tの静荷重および平均熱流束として350kW/m2の熱荷重を与えた。
【0054】
シミュレーションの結果、図8に示すように、傾斜流路天板18の外周付近が冷却水流路11を狭める方向に変形することが確認された。
【0055】
図9は、炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板の変形のシミュレーション結果の半径方向位置と隣り合う流路サポートの中央での高さ方向変位の関係を示すグラフである。
【0056】
図9に示すように、変形防止板23がない場合、流路サポート21の径方向長さ、すなわち、給水容器10の外周から傾斜流路天板18の外周までの長さをLとすると、給水容器10から0.13Lの範囲では、傾斜流路天板18は上昇する方向に変形している。このため、この部分に変形防止板23は不要である。
【0057】
給水容器10から0.13Lないし0.26Lの範囲では、傾斜流路天板18の高さ方向変位はゼロに近いままほとんど変わらない。そこで、この部分まで変形防止板23を設けておいてもよい。
【0058】
また、傾斜流路天板18が下方に変形しているのは、給水容器10から0.35Lの位置から0.97Lの位置までの範囲である。そこで、給水容器10から0.35Lの位置から0.97Lの位置までの範囲に変形防止板23を設けると、傾斜流路天板18が変形防止板23から浮き上がることがない。その結果、傾斜流路天板18の下向きの変形を効果的に抑制できる。そこで、たとえば外周側の半分のL/2の範囲に変形防止板23を設けるとよい。
【0059】
さらに、給水容器10の外周から約0.88Lの位置で、傾斜流路天板18が最も下降する変形が生じていることがわかる。したがって、給水容器10の外周から約0.88Lの位置の近傍に変形防止板23を設けると、効果的に傾斜流路天板18の変形を抑制できることがわかる。
【0060】
このように、傾斜流路天板18を流路サポート21と流路サポート21よりも短い変形防止板23で支持することにより、長さが同じ流路サポート21のみで支持する場合にくらべて伝熱面積が増大し、傾斜流路天板18の温度の上昇を抑制することができる。その結果、傾斜流路天板18あるいは流路サポート21、変形防止板23がクリープ開始温度を超える可能性を抑制できる。
【0061】
また、給水容器10から離れた位置、すなわち、隣り合う流路サポート21の間隔が広くなる位置に変形防止板23を設けることにより、傾斜流路天板18の下向きの変形を抑制することができる。その結果、冷却流路11の断面積の減少を抑制できる。その結果、冷却流路11の圧力損失を低減できる。さらに、傾斜流路天板18の下向きの変形が大きい外周側に配置することにより、より効果的に傾斜流路天板18の下向きの変形を抑制することができる。
【0062】
変形防止板23は流路サポート21よりも短いため、変形防止板23を用いずに全て流路サポート21のみで傾斜流路天板18を支持した場合に比べて、部材の使用量を抑制することができるため、軽くなり、炉心溶融物保持装置9の格納容器2内への設置が容易になる。また、傾斜流路底板17との溶接長さが短くなるため、製造に要する時間およびコストを低減することができる。
【0063】
図10は、本実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【0064】
この変形例は、変形防止板23および流路サポート21(図4参照)の冷却水の主たる流れの方向に垂直な断面の形状が異なっている。この変形例における変形防止板23は鉛直方向に向かって段差が形成されていて、冷却水の主たる流れの方向に垂直な断面に、幅が幅広部51と、その幅が広い部分よりも上方の幅狭部52とを持つ。
【0065】
変形防止板23は、幅広部51で傾斜流路底板17に結合されていて、幅狭部52で傾斜流路天板18と接している。流路サポートも、冷却水の主たる流れの方向に垂直な断面が変形防止板23と同様の形状をしている。
【0066】
図11は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【0067】
この変形例では、変形防止板23は傾斜流路底板17と結合した幅広部51から、傾斜流路天板18と接する幅狭部52に向かって、直線的に幅が小さくなるように形成されている。
【0068】
図12は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【0069】
この変形例では、変形防止板23は傾斜流路底板17と結合した幅広部51から、傾斜流路天板18と接する幅狭部52に向かって、非直線的になめらかに幅が小さくなるように形成されている。
【0070】
傾斜流路天板18と流路サポート21および変形防止板23とが接触する部分では、傾斜流路天板18は冷却水と接触せず、温度が高くなる傾向にある。このため、この接触する部分の幅が広いと、傾斜流路天板18の温度上昇幅が大きくなる。この温度上昇を緩和するためには、流路サポート21および変形防止板23の接触幅を狭める必要がある。
【0071】
しかし、流路サポート21および変形防止板23が、接触幅が小さいまま一様断面で傾斜流路底板17に固定されると、地震などの特に横揺れに対する耐震性が非常に弱い構造となる。たとえば地震などの横荷重が発生した場合、流路サポート21および変形防止板23の上端部がサポートガイド22と接触し、横方向への移動が拘束される。
【0072】
そこで、流路サポート21および変形防止板23の断面を、本実施の形態のように曲げ応力が最も厳しい下部付近で断面幅が広い形状とすることにより、より強固な構造とすることができる。その結果、耐震性に優れた炉心溶融物冷却装置を形成することができる。
【0073】
図13は、本実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0074】
この変形例は、変形防止板23および流路サポート21(図1参照)の冷却水の主たる流れの方向に平行な断面の形状が異なっている。この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの方向すなわち径方向の両端部が流線型に形成されている。つまり、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0075】
図14は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0076】
この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの方向すなわち径方向の両端部が三角型に形成されている。つまり、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0077】
図15、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0078】
この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの上流側すなわち給水容器10に近い方の端部が流線型に形成されていて、冷却水の主たる流れの下流側すなわち給水容器10から遠い方の端部が三角形に形成されている。つまり、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0079】
図16は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0080】
この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの方向すなわち径方向の両端部には段差が形成されている。その結果、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0081】
流路サポート21や冷却水流路11内に設置される変形防止板23は、冷却水や蒸気の流れを乱す存在となる。しかし、図13ないし図16に示す変形例のような断面形状とすることで、端部まで同じ幅で形成されている場合に比べて、局所的な渦の発生を抑制できる。局所的な渦の発生を抑制することによって、渦による振動が抑制され、高サイクル疲労を抑制することができる。また、局所的な渦の発生によるよどみの発生をで抑制することにより、傾斜流路天板18の冷却面への冷却水供給量不足による除熱量低下などを抑制できる。なお、端部は、幅狭部54が形成されていれば、その形状や範囲は冷却水の流れを乱さないように適宜決めればよい。
【0082】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。たとえば、給水容器10の外周あるいは傾斜流路天板18の内周および外周は、円ではなく、たとえば多角形であってもよい。また、図17に示すように、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を受ける面が傾斜しておらず水平に広がっている天板58を用いた場合であっても、変形防止板の導入による伝熱面積の拡大および天板の変形防止の効果は得られる。
【符号の説明】
【0083】
1…原子炉圧力容器、2…格納容器、3…下部ヘッド、4…サプレッションプール、5…水槽、6…格納容器冷却器、7…下部ドライウェル、8…サンプ床、9…炉心溶融物保持装置、10…給水容器、11…冷却流路、12…耐熱材、13…炉心溶融物、14…注水配管、15…給水流路、17…傾斜流路底板、18…傾斜流路天板、19…ライザ部内側板、20…ライザ部外側板、21…流路サポート、22…サポートガイド、23…変形防止板、30…支持台、31…冷却水、40…注入弁、41…ペデスタル床、42…ペデスタル側壁、43…炉心、51…幅広部、52…幅狭部、53…中央部、54…先端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心溶融物保持装置および格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷却型原子炉では、原子炉圧力容器内への給水の停止や、原子炉圧力容器に接続された配管の破断により冷却水が喪失すると、原子炉水位が低下し炉心が露出して冷却が不十分になる可能性がある。このような場合を想定して、水位低下の信号により自動的に原子炉は非常停止され、非常用炉心冷却装置(ECCS)による冷却材の注入によって炉心を冠水させて冷却し、炉心溶融事故を未然に防ぐようになっている。
【0003】
しかしながら、極めて低い確率ではあるが、この非常用炉心冷却装置が作動せず、かつ、その他の炉心への注水装置も利用できない事態も想定され得る。このような場合、原子炉水位の低下により炉心は露出し、十分な冷却が行われなくなり、原子炉停止後も発生し続ける崩壊熱によって燃料棒温度が上昇し、最終的には炉心溶融に至ることが考えられる。
【0004】
このような事態に至った場合、高温の炉心溶融物が原子炉圧力容器下部に溶け落ち、さらに原子炉圧力容器下鏡を溶融貫通して、格納容器内の床上に落下するに至る。炉心溶融物は格納容器床に張られたコンクリートを加熱し、接触面が高温状態になるとコンクリートと反応し、二酸化炭素、水素等の非凝縮性ガスを大量に発生させるとともにコンクリートを溶融浸食する。
【0005】
発生した非凝縮性ガスは格納容器内の圧力を高め、原子炉格納容器を破損させる可能性がある。また、コンクリートの溶融浸食により格納容器バウンダリを破損させたり、格納容器構造強度を低下させる可能性がある。結果的に、炉心溶融物とコンクリートの反応が継続すると格納容器破損に至り、格納容器内の放射性物質が外部環境へ放出させるおそれがある。
【0006】
このような炉心溶融物とコンクリートの反応を抑制するためには、炉心溶融物を冷却し、炉心溶融物底部のコンクリートとの接触面の温度を浸食温度以下(一般的なコンクリートで1500K以下)に冷却するか、炉心溶融物とコンクリートが直接接触しないようにする必要がある。そこで、炉心溶融物が落下した場合に備えて様々な対策が提案されている。代表的なものがコアキャッチャーと呼ばれるもので、落下した炉心溶融物を耐熱材でうけとめて、注水手段と組み合わせて炉心溶融物の冷却を図る設備である。
【0007】
コアキャッチャーへ注水することにより炉心溶融物上面の水の沸騰により冷却する場合、上面だけからの冷却では、炉心溶融物堆積厚さが厚いと炉心溶融物底部まで十分に冷却できない。そこで、この場合には、床面積を広くとり、炉心溶融物の堆積厚さを冷却可能な厚さ以下にする必要がある。
【0008】
しかし、十分大きな床面積を確保することは格納容器構造設計上困難である。たとえば、典型的な炉心溶融物の崩壊熱は、定格熱出力の約1%程度であり、定格熱出力4000MWの炉の場合には、40MW程度の発熱量になる。上面の沸騰熱伝達量には炉心溶融物上面の状態により幅があるが、少なく見積もっても0.4MW/m2程度の熱流束が想定される。この場合、炉心溶融物の発熱量を上面の熱伝達のみで除熱しようとすると、100m2程度(円直径で11.3m)の床面積が必要になる。これまでの格納容器構造を考慮するとこの面積を確保することは困難である。
【0009】
原子炉格納容器床に落下した炉心溶融物の上面に冷却水を注水しても、炉心溶融物の底部での除熱量が小さいと、崩壊熱によって炉心溶融物底部の温度が高温のまま維持され、格納容器床のコンクリート浸食を停止することができない場合がある。そこで、炉心溶融物を底面から冷却するという方法がある(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−139023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
炉心溶融物を底面から冷却するという方法としては、たとえば炉心溶融物堆積床面の下方に冷却水流路を設け、ここに冷却水を導くことによって炉心溶融物を底面から除熱する方法がある。この方法では、高温の炉心溶融物によって、冷却水流路の構造材の温度が上昇する。その際、冷却流路構造材の温度が上昇することによって生じる熱膨張が拘束されることで熱応力が発生する。熱応力を低減する手段としては、冷却流路の上面を画する天板を流路サポートの上に乗せた構造が考えられている。
【0012】
しかし、この天板が流路サポートと接触する箇所では、冷却水による除熱ができない。その結果、当該接触部の天板の温度が上昇し、クリープ開始温度以上になる可能性がある。逆に流路サポートの板厚を薄くすれば、天板の温度が上昇は避けられるが、炉心溶融物の重さによる静荷重や、地震などによる動荷重に対して強度を保つことが難しくなる。また静荷重や動荷重に対して強度を保とうとすると、流路サポートの数が増えてしまい、製作工程が煩雑化する。
【0013】
そこで、本発明は、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明は、炉心溶融物保持装置において、給水容器と、前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと、前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と、前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、格納容器において、炉心を収めた原子炉容器と、原子炉容器の下方のペデスタル床と、前記ペデスタル床を囲んで立ち上がるペデスタル側壁と、給水容器と前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板とを備えて前記ペデスタル床状に設けられた炉心溶融物保持装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一部を切り欠いた上面をペデスタル側壁の平断面とともに示す図である。
【図2】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態における流路サポート近傍を切り出した斜視図である。
【図3】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態における変形防止板近傍を切り出した斜視図である。
【図4】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態における流路サポートの近傍の断面図である。
【図5】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態を収容した格納容器の立断面図である。
【図6】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態を格納容器とともに示す立断面図である。
【図7】炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【図8】炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーション結果を示す斜視図である。
【図9】炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板の変形のシミュレーション結果の半径方向位置と隣り合う流路サポートの中央での高さ方向変位の関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【図11】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【図12】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【図13】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図14】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図15】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図16】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【図17】本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態の一変形例を格納容器とともに示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る炉心溶融物保持装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図5は、本発明に係る炉心溶融物保持装置の一実施の形態を収容した格納容器の立断面図である。
【0020】
炉心43は、原子炉圧力容器1の内部に収められている。原子炉圧力容器1は、格納容器2の内部に設けられている。格納容器2は、ペデスタル床41およびペデスタル床41から上方に延びる円筒状のペデスタル側壁42を有している。
【0021】
原子炉圧力容器1は、ペデスタル側壁42に支持されている。原子炉圧力容器1の下方のペデスタル床41およびペデスタル側壁42で囲まれる空間は下部ドライウェル7と呼ばれる。つまり、原子炉圧力容器1は、下部ドライウェル7の上方に設けられている。また、格納容器2の内部には、ペデスタル側壁42の外周面を取り囲むように、サプレッションプール4が形成されている。
【0022】
原子炉圧力容器1の下方の下部ドライウェル7には、炉心溶融物保持装置9が設けられている。炉心溶融物保持装置9と原子炉圧力容器1との間には、サンプ床8が設けられている。
【0023】
また、格納容器2は、水槽5を有している。水槽5から炉心溶融物保持装置9には、注水配管14が延びている。注水配管14の途中には、注入弁40が設けられている。さらに、格納容器2は、格納容器冷却器6を有している。格納容器冷却器6は、ドライウェルに開口した端部から水中に沈められた熱交換器を通って水槽5に延びる配管を有している。格納容器冷却器6とは、静的格納容器冷却設備やドライウェルクーラーなどである。
【0024】
図6は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置を格納容器とともに示す立断面図である。なお、図6は、炉心溶融物13が炉心溶融物保持装置9の上に落下し、水槽5から炉心溶融物保持装置9に給水された状態を示している。
【0025】
炉心溶融物保持装置9は、給水容器10を有している。給水容器10は、たとえば円筒形に形成され、ペデスタル床41のたとえば中央に配置されている。水槽5から延びる注水配管14は、給水容器10に接続されている。
【0026】
炉心溶融物保持装置9の内部には、炉心溶融物13を冷却する冷却水が流れる冷却流路11が形成されている。冷却流路11は、傾斜流路底板17と傾斜流路天板18との間およびライザ部外側板20とライザ部内側板19との間に形成されている。
【0027】
傾斜流路底板17は、給水容器10から上昇しながら放射状に広がっている。傾斜流路天板18の上面は、全体として中央から外周に向かって上昇する円錐面の頂部を切り取った形状をなしている。また、傾斜流路底板17は、支持台30に支持されている。支持台30は、ペデスタル床41上に置かれている。
【0028】
傾斜流路天板18は、給水容器10から上昇しながら放射状に広がっている。傾斜流路天板18の上面は、全体として中央から外周に向かって上昇する円錐面の頂部を切り取った形状をなしている。
【0029】
ライザ部内側板19は、傾斜流路天板18の外周部から鉛直上方に立ち上がっている。ライザ部外側板20は、傾斜流路底板17の外周部から鉛直上方に立ち上がっている。
【0030】
給水容器10の上面、傾斜流路天板18およびライザ部内側板19は、上に向かって開いた容器を形成している。この容器の内側、すなわち、傾斜流路天板18の上面、ライザ部内側板19の内面および給水容器10の上面には耐熱材12が敷設されている。
【0031】
傾斜流路底板17と傾斜流路天板18との間の冷却流路11は、給水容器10から上昇しながら延びて、ライザ部外側板20とライザ部内側板19との間の冷却流路11に連結されている。ライザ部外側板20とライザ部内側板19との間の冷却流路11は、鉛直に延びていて、上端は下部ドライウェル7に開口している。
【0032】
ライザ部外側板20の外面とペデスタル側壁42の内面との間には、給水流路15が形成されている。また、支持台30の下面には溝が形成されていて、その溝が給水流路15となっている。つまり、給水流路15は、下部ドライウェル7に面する開口部から給水容器10まで延びている。
【0033】
炉心溶融事故が発生し、炉心溶融物13が原子炉圧力容器1の下部ヘッド3を貫通すると炉心溶融物保持装置9上に落下する。炉心溶融物13の落下後すぐに注入弁40が開き、水槽5の冷却水が重力落下により、注水配管14を介して給水容器10へ供給される。
【0034】
注入弁40は、たとえば原子炉圧力容器1の下部ヘッド3の破損を検知する信号により開放される。原子炉圧力容器1の下部ヘッド3の破損を検知する信号とは、たとえば下部ヘッド温度高やペデスタル雰囲気温度高の信号である。このようにして炉心溶融物13の落下後すぐに給水容器10への初期の給水が行われ、冷却流路11に冷却水が供給される。
【0035】
冷却流路11に供給された水は、ライザ部上端の開口部から、炉心溶融物保持装置9の炉心溶融物を保持する容器部分、すなわち給水容器10の上面、傾斜流路天板18の上面およびライザ部内側板19の内面で囲まれる領域へ溢れ出る。さらに、炉心溶融物保持装置9の全体は、冷却水31中に水没する。
【0036】
初期注水終了後は、炉心溶融物保持装置9の炉心溶融物13を保持する容器部分へ溢水した水が、冷却流路11内の沸騰による生じる自然循環によって給水流路15を通って給水容器10に供給される。
【0037】
炉心溶融物13の冷却により生じた蒸気は、格納容器2上部の格納容器冷却器6で凝縮され、凝縮水は水槽5に戻される。このようにして、水が自然循環することにより炉心溶融物13の冷却が継続される。
【0038】
本実施の形態において冷却流路11は、給水容器10から上昇しながら広がっているため、伝熱面すなわち傾斜流路天板18の下面で冷却水が加熱されて沸騰した場合、発生した気泡はその伝熱面から離脱しやすい。このため、伝熱面での除熱性能が高い。
【0039】
図1は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の一部を切り欠いた上面をペデスタル側壁の平断面とともに示す図である。図2は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の流路サポート近傍を切り出した斜視図である。図3は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の変形防止板近傍を切り出した斜視図である。
【0040】
傾斜流路底板18の上面には、鉛直上方に突き出し、径方向に延びる流路サポート21および変形防止板23が設けられている。流路サポート21は、16本が22.5度間隔で配置されている。変形防止板23は、隣り合う流路サポート21の中央に設けられている。流路サポート21および変形防止板23の高さは、同一である。流路サポート21および変形防止板23の上面に傾斜流路天板18は載置されている。つまり、傾斜流路天板18は、流路サポート21および変形防止板23で下面を支持されている。
【0041】
流路サポート21は、給水容器10の外周位置から傾斜流路天板18の外周位置まで延びている。一方、変形防止板23は、給水容器10の外周から離れた位置から外側に向かって延びている。また、変形防止板23は、傾斜流路天板18の外周よりも給水容器10に近い位置まで設けられている。
【0042】
図4は、本実施の形態における炉心溶融物保持装置の流路サポートの近傍の断面図である。
【0043】
傾斜流路天板18の下面には、下方向に突出し、平行に延びる一対の流路サポートガイド22が設けられている。流路サポート21は、上面がこの一対のサポートガイド22の間に挟まれるように配置される。同様に、変形防止板23も、上面が一対のサポートガイド22に挟まれるように配置される。
【0044】
流路サポート21および変形防止板23がサポートガイド22と干渉するため、傾斜流路天板18は、周方向の回転が拘束されている。一方、傾斜流路天板18の径方向への移動は拘束されていないため、たとえば熱膨張による傾斜流路天板18の径方向への変形は許容されている。
【0045】
炉心溶融事故が発生し、炉心溶融物13が下部ヘッド7を貫通すると炉心溶融物保持装置9上に落下する。炉心溶融物13の落下後すぐに給水容器10への給水が行われ、冷却流路11に冷却水31が供給される。高温の炉心溶融物13の熱は耐熱材12に伝わり、さらに冷却流路11を介して冷却水31に伝えられることで、炉心溶融物13が冷却される。
【0046】
このとき、冷却流路11の温度が上昇することによって生じる熱膨張が拘束されることで熱応力が発生する。傾斜流路天板18およびライザ部内側板19が流路サポート21および変形防止板23の上に乗せられている構造とすることにより、傾斜流路天板18の径方向の熱膨張を流路サポートガイド22および変形防止板23の接触部で吸収することができる。
【0047】
炉心溶融物が圧力容器1から落下すると、炉心溶融物13の崩壊熱は耐熱材12を介して傾斜流路天板18に伝わる。傾斜流路天板18と傾斜流路底板17との間には冷却流路11があるため、傾斜流路天板18と傾斜流路底板17との間には、温度差が生じ、熱膨張差を生じる。しかし、傾斜流路天板18は、流路サポート21および変形防止板23には固定されていないため、傾斜流路天板18は傾斜流路底板17より膨張した場合でも径方向にずれることができる。その結果、傾斜流路天板18、傾斜流路底板17、流路サポート21および変形防止板23には、過大な熱応力が発生することはない。
【0048】
また、傾斜流路天板18と流路サポート21あるいは変形防止板23との接触部には冷却水31が存在しないため、この接触部近傍の温度はその周囲に比べて高くなる傾向にある。このため、傾斜流路天板18の温度を低くするためには、流路サポート21および変形防止板23の厚さを小さくして、あるいは、流路サポート21および変形防止板23の数を少なくして、傾斜流路天板18と冷却水31との接触部分を広くした方が好ましい。しかし、流路サポート21および変形防止板23は、傾斜流路天板18および炉心溶融物13による荷重を支えるべく、ある程度の数と厚さを要する。
【0049】
そこで、本実施の形態では、流路サポート21の間隔が広くなる外周部分に変形防止板23を設けて、流路サポート21の間隔が狭くなる内周部分には変形防止板23が存在しないようにしている。流路サポート21の間隔が広くなる外周部分に変形防止板23を設けているため、傾斜流路天板18およびその上に落下した炉心溶融物13による荷重ならびに熱荷重による傾斜流路天板18の変形を効果的に抑制できる。また、流路サポート21の間隔が狭く、傾斜流路天板18の変形が小さい内周部分には変形防止板23が存在しないようにしているため、傾斜流路天板18と冷却水31との接触面積を広くすることができる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を保持する流路天板下面の冷却水への伝熱面積を確保しつつ、流路天板の変形を抑制することができる。
【0051】
変形防止板がない場合に炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーションを行った。
【0052】
図7は、炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーションモデルを示す斜視図である。図8は、炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板およびライザ内側板の変形のシミュレーション結果を示す斜視図である。なお、図8において、天板およびライザ内側板の変位は、拡大して示している。
【0053】
このシミュレーションは、冷却流路11を周方向に32分割した部分セクターモデルで行った。このシミュレーションモデルでは、流路サポート21の上に給水容器10の上板、傾斜流路天板18およびライザ部内側板19が一体化された構造物が乗っているとした。境界条件としては、デブリ重量350tの静荷重および平均熱流束として350kW/m2の熱荷重を与えた。
【0054】
シミュレーションの結果、図8に示すように、傾斜流路天板18の外周付近が冷却水流路11を狭める方向に変形することが確認された。
【0055】
図9は、炉心溶融物保持装置に炉心余裕物が落下したときの天板の変形のシミュレーション結果の半径方向位置と隣り合う流路サポートの中央での高さ方向変位の関係を示すグラフである。
【0056】
図9に示すように、変形防止板23がない場合、流路サポート21の径方向長さ、すなわち、給水容器10の外周から傾斜流路天板18の外周までの長さをLとすると、給水容器10から0.13Lの範囲では、傾斜流路天板18は上昇する方向に変形している。このため、この部分に変形防止板23は不要である。
【0057】
給水容器10から0.13Lないし0.26Lの範囲では、傾斜流路天板18の高さ方向変位はゼロに近いままほとんど変わらない。そこで、この部分まで変形防止板23を設けておいてもよい。
【0058】
また、傾斜流路天板18が下方に変形しているのは、給水容器10から0.35Lの位置から0.97Lの位置までの範囲である。そこで、給水容器10から0.35Lの位置から0.97Lの位置までの範囲に変形防止板23を設けると、傾斜流路天板18が変形防止板23から浮き上がることがない。その結果、傾斜流路天板18の下向きの変形を効果的に抑制できる。そこで、たとえば外周側の半分のL/2の範囲に変形防止板23を設けるとよい。
【0059】
さらに、給水容器10の外周から約0.88Lの位置で、傾斜流路天板18が最も下降する変形が生じていることがわかる。したがって、給水容器10の外周から約0.88Lの位置の近傍に変形防止板23を設けると、効果的に傾斜流路天板18の変形を抑制できることがわかる。
【0060】
このように、傾斜流路天板18を流路サポート21と流路サポート21よりも短い変形防止板23で支持することにより、長さが同じ流路サポート21のみで支持する場合にくらべて伝熱面積が増大し、傾斜流路天板18の温度の上昇を抑制することができる。その結果、傾斜流路天板18あるいは流路サポート21、変形防止板23がクリープ開始温度を超える可能性を抑制できる。
【0061】
また、給水容器10から離れた位置、すなわち、隣り合う流路サポート21の間隔が広くなる位置に変形防止板23を設けることにより、傾斜流路天板18の下向きの変形を抑制することができる。その結果、冷却流路11の断面積の減少を抑制できる。その結果、冷却流路11の圧力損失を低減できる。さらに、傾斜流路天板18の下向きの変形が大きい外周側に配置することにより、より効果的に傾斜流路天板18の下向きの変形を抑制することができる。
【0062】
変形防止板23は流路サポート21よりも短いため、変形防止板23を用いずに全て流路サポート21のみで傾斜流路天板18を支持した場合に比べて、部材の使用量を抑制することができるため、軽くなり、炉心溶融物保持装置9の格納容器2内への設置が容易になる。また、傾斜流路底板17との溶接長さが短くなるため、製造に要する時間およびコストを低減することができる。
【0063】
図10は、本実施の形態の一変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【0064】
この変形例は、変形防止板23および流路サポート21(図4参照)の冷却水の主たる流れの方向に垂直な断面の形状が異なっている。この変形例における変形防止板23は鉛直方向に向かって段差が形成されていて、冷却水の主たる流れの方向に垂直な断面に、幅が幅広部51と、その幅が広い部分よりも上方の幅狭部52とを持つ。
【0065】
変形防止板23は、幅広部51で傾斜流路底板17に結合されていて、幅狭部52で傾斜流路天板18と接している。流路サポートも、冷却水の主たる流れの方向に垂直な断面が変形防止板23と同様の形状をしている。
【0066】
図11は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【0067】
この変形例では、変形防止板23は傾斜流路底板17と結合した幅広部51から、傾斜流路天板18と接する幅狭部52に向かって、直線的に幅が小さくなるように形成されている。
【0068】
図12は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の近傍の冷却水流れ方向に垂直な断面図である。
【0069】
この変形例では、変形防止板23は傾斜流路底板17と結合した幅広部51から、傾斜流路天板18と接する幅狭部52に向かって、非直線的になめらかに幅が小さくなるように形成されている。
【0070】
傾斜流路天板18と流路サポート21および変形防止板23とが接触する部分では、傾斜流路天板18は冷却水と接触せず、温度が高くなる傾向にある。このため、この接触する部分の幅が広いと、傾斜流路天板18の温度上昇幅が大きくなる。この温度上昇を緩和するためには、流路サポート21および変形防止板23の接触幅を狭める必要がある。
【0071】
しかし、流路サポート21および変形防止板23が、接触幅が小さいまま一様断面で傾斜流路底板17に固定されると、地震などの特に横揺れに対する耐震性が非常に弱い構造となる。たとえば地震などの横荷重が発生した場合、流路サポート21および変形防止板23の上端部がサポートガイド22と接触し、横方向への移動が拘束される。
【0072】
そこで、流路サポート21および変形防止板23の断面を、本実施の形態のように曲げ応力が最も厳しい下部付近で断面幅が広い形状とすることにより、より強固な構造とすることができる。その結果、耐震性に優れた炉心溶融物冷却装置を形成することができる。
【0073】
図13は、本実施の形態の一変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0074】
この変形例は、変形防止板23および流路サポート21(図1参照)の冷却水の主たる流れの方向に平行な断面の形状が異なっている。この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの方向すなわち径方向の両端部が流線型に形成されている。つまり、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0075】
図14は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0076】
この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの方向すなわち径方向の両端部が三角型に形成されている。つまり、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0077】
図15、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0078】
この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの上流側すなわち給水容器10に近い方の端部が流線型に形成されていて、冷却水の主たる流れの下流側すなわち給水容器10から遠い方の端部が三角形に形成されている。つまり、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0079】
図16は、本実施の形態の他の変形例における変形防止板の冷却水流れ方向に平行な断面図である。
【0080】
この変形例における変形防止板23は、冷却水の主たる流れの方向すなわち径方向の両端部には段差が形成されている。その結果、この変形防止板23は、中央部53と、冷却水の主たる流れの方向に垂直な方向すなわち周方向の幅が中央部53よりも狭い先端部54とを備えている。先端部54は、中央部53の径方向の両端部に設けられている。
【0081】
流路サポート21や冷却水流路11内に設置される変形防止板23は、冷却水や蒸気の流れを乱す存在となる。しかし、図13ないし図16に示す変形例のような断面形状とすることで、端部まで同じ幅で形成されている場合に比べて、局所的な渦の発生を抑制できる。局所的な渦の発生を抑制することによって、渦による振動が抑制され、高サイクル疲労を抑制することができる。また、局所的な渦の発生によるよどみの発生をで抑制することにより、傾斜流路天板18の冷却面への冷却水供給量不足による除熱量低下などを抑制できる。なお、端部は、幅狭部54が形成されていれば、その形状や範囲は冷却水の流れを乱さないように適宜決めればよい。
【0082】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。たとえば、給水容器10の外周あるいは傾斜流路天板18の内周および外周は、円ではなく、たとえば多角形であってもよい。また、図17に示すように、炉心溶融物保持装置の炉心溶融物を受ける面が傾斜しておらず水平に広がっている天板58を用いた場合であっても、変形防止板の導入による伝熱面積の拡大および天板の変形防止の効果は得られる。
【符号の説明】
【0083】
1…原子炉圧力容器、2…格納容器、3…下部ヘッド、4…サプレッションプール、5…水槽、6…格納容器冷却器、7…下部ドライウェル、8…サンプ床、9…炉心溶融物保持装置、10…給水容器、11…冷却流路、12…耐熱材、13…炉心溶融物、14…注水配管、15…給水流路、17…傾斜流路底板、18…傾斜流路天板、19…ライザ部内側板、20…ライザ部外側板、21…流路サポート、22…サポートガイド、23…変形防止板、30…支持台、31…冷却水、40…注入弁、41…ペデスタル床、42…ペデスタル側壁、43…炉心、51…幅広部、52…幅狭部、53…中央部、54…先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水容器と、
前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと、
前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と、
前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板と、
を有することを特徴とする炉心溶融物保持装置。
【請求項2】
前記変形防止板は前記流路サポートの径方向の長さの半分の位置よりも外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項3】
前記変形防止板は幅狭部とこの幅狭部の下方に位置し、前記幅狭部よりも幅が大きい幅広部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項4】
前記変形防止板は中央部とこの中央部の端部に設けられてこの中央部よりも幅が狭い先端部とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項5】
前記天板の下面には下方に向かって突出し前記流路サポートに接して前記給水容器を中心とする径方向に延びるサポートガイドが周方向の複数の位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項6】
前記天板は前記給水容器から外側に向かって上昇していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項7】
炉心を収めた原子炉容器と、
原子炉容器の下方のペデスタル床と、
前記ペデスタル床を囲んで立ち上がるペデスタル側壁と、
給水容器と、前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板とを備えて前記ペデスタル床状に設けられた炉心溶融物保持装置と、
を有することを特徴とする格納容器。
【請求項1】
給水容器と、
前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと、
前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と、
前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板と、
を有することを特徴とする炉心溶融物保持装置。
【請求項2】
前記変形防止板は前記流路サポートの径方向の長さの半分の位置よりも外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項3】
前記変形防止板は幅狭部とこの幅狭部の下方に位置し、前記幅狭部よりも幅が大きい幅広部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項4】
前記変形防止板は中央部とこの中央部の端部に設けられてこの中央部よりも幅が狭い先端部とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項5】
前記天板の下面には下方に向かって突出し前記流路サポートに接して前記給水容器を中心とする径方向に延びるサポートガイドが周方向の複数の位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項6】
前記天板は前記給水容器から外側に向かって上昇していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の炉心溶融物保持装置。
【請求項7】
炉心を収めた原子炉容器と、
原子炉容器の下方のペデスタル床と、
前記ペデスタル床を囲んで立ち上がるペデスタル側壁と、
給水容器と、前記給水容器から放射状に延びる複数の流路サポートと前記流路サポートの間に前記流路サポートの前記給水容器側の端部よりも前記給水容器からの距離が遠い位置から放射状に延びる変形防止板と前記流路サポートおよび前記変形防止板で下面を支持されて前記給水容器から放射状に広がる天板とを備えて前記ペデスタル床状に設けられた炉心溶融物保持装置と、
を有することを特徴とする格納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−174790(P2011−174790A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38507(P2010−38507)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]