説明

炭化水素燃料組成物

本発明は、(i)少なくとも99重量%のベースガスと、(ii)(a)2〜50ppmの有機金属化合物、ならびに(b)100〜5000ppmのアニリンまたは置換アニリンおよび100〜5000ppmのトルイジンを含む添加剤とを含む、炭化水素燃料組成物に関する。本発明は、ベース燃料、好ましくは液化石油ガスへの添加剤または添加剤混合物の添加を開示する。添加剤混合物の添加は、切断および溶接の用途のためのトーチガスとしての使用のためのベース燃料の特性を向上させるだけでなく、切断用途のための燃料と酸素の両消費量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、切断および/または溶接における使用のためのベースガスを含む炭化水素燃料組成物である、添加剤の添加によって改良された高温発熱ガスまたは油に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術および発明の背景
酸素燃料法(Oxyfuel process)は、いくつかの金属を切断するための最も実用的な工業用熱切断法である。それは、0.5mm〜1000mmまたはそれ以上の厚さに切断することができ、必要とされる設備は、低コストであり、かつ手動で用いられることまたは機械化されることができる。酸素燃料は、酸素と、アセチレン、プロパン、プロピレン、または天然ガスのような燃料ガスとの混合物である。酸素燃料法は、高温における卑金属との酸素の化学反応によって金属を切断する。酸素燃料は、金属をその融点をはるかに下回るその「燃焼」温度(鋼については、それが700〜900℃)まで予熱するために用いられる。その後、金属酸化物またはスラグを形成するために、純酸素の噴出が予熱された領域へ向けられ、酸素と金属との間の勢いのある発熱化学反応を開始する。酸素噴出は、スラグを吹き飛ばし、酸素の噴出が金属を突き抜けることを可能にし、かつ金属を貫いて切断し続ける。
【0003】
その高い火炎温度と切断速度のために、酸素アセチレン火炎は、金属製作者によって切断および溶接の目的のために長い間用いられている。さらに、アセチレンは、最も高い主要な英熱量(Btu)放出と、市販されている燃料ガスに比べて最も大きい燃焼速度とを持つ。それは、急速に卑金属を発火点まで加熱する。その他の燃料切断または溶接用の燃料ガスは、プロパン、プロピレン、天然ガスなどである。しかしながら、(酸素中で)これらの燃料によって生じる火炎温度は、アセチレンと比較して実質的に低い。例えば、酸素中のプロパンおよび天然ガスについての最高火炎温度は、アセチレンによる3160℃の最高火炎温度と比較すると、それぞれおよそ2810℃および2770℃である。
【0004】
したがって、用いられる主なトーチは、アセチレンであり、これは高価であり、保管と輸送が難しく、かつ鉄金属を切断するためにほとんど純粋な酸素の使用が必要であり、かつ永続的に粘着性のスラグを形成する。逆火の傾向は、酸素アセチレン火炎を用いている間にしばしば直面するもう一つの問題である。アセチレンは、かなり高い圧力にかけられた場合に爆発するので、酸素アセチレン火炎は水中20フィートより深い所の深層水中では用いることができない。
【0005】
切断および/または溶接のトーチに用いられるトーチガスをそれらに添加剤を添加することによって改良するための多くの試みがなされている。米国特許第5,236,467号(特許文献1)は、トーチガスとしての使用のためのベース炭化水素の0.5重量%〜13重量%、好ましくは5重量%〜8重量%の量におけるメチルエチルケトンおよびメチルterブチルエーテルの使用を開示している。米国特許第3,591,355号(特許文献2)は、メタノールのような液体アルカノールならびにペンタンおよびイソペンタンのようなアルカンの混合物の添加を提案しているが、米国特許第3,989,479号(特許文献3)はメタノールの添加を開示している。
【0006】
中国特許CN1253167(特許文献4)は、KMnO4とH2O2とNaHCO2との混合物からなり、100mlのガソリンあたり1〜3gのフェロセンを含む1つの油性成分を含む燃焼補助溶液とともに、プロパン、ブタンおよびプロピレンをベースガスとして用いる。もう一つの特許であるCN1297024(特許文献5)においては、工業用燃料ガスの調製のための、フェロセン100〜500g、バリウムジアルキルフェノレート(アルキルフェノレート)、イソプロパン1〜7Lおよびベンゼンを溶接用途に用いている。英国特許第813981号明細書(British Patent Specification No. 813981)(特許文献6)は、イソプリピル(isoprypyl)エーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルプロピルエーテルおよびメタノールのような酸素含有化合物の使用を開示している。
【0007】
先行技術における開示には、燃料または酸素の消費量の減少をもたらしうる組成物を開示しているものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,236,467号
【特許文献2】米国特許第3,591,355号
【特許文献3】米国特許第3,989,479号
【特許文献4】CN1253167
【特許文献5】CN1297024
【特許文献6】英国特許第813981号明細書
【発明の概要】
【0009】
前述の試みおよびそれらの限界のゆえに、本発明は、高価な燃料または酸素の消費量を減少させる改良型炭化水素燃料組成物を開示する。
【0010】
発明の目的
本発明の主たる目的は、切断および/または溶接/ろう付けの用途のために、アセチレンの特徴より優れた特徴を持つように改良された炭化水素トーチガスを提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、卑金属を急速に発火させる高火炎温度を有するトーチガスを提供することである。
【0012】
本発明のなおもう一つの目的は、市販の酸素と効率的に混ぜ合わせることができる切断および/または溶接の用途のためのトーチガスを提供することである。
【0013】
本発明のさらにもう一つの目的は、容易に入手でき、経済的であり、安全であるベースガスと、トーチガスとしてのその属性を向上させることが簡単であるガスとを有するトーチガスを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、鉄金属が経済的に、より迅速に、より清潔に、かつ安全に切断されることを可能にするトーチガスを提供することである。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、相当な深さの水中での切断または溶接のためのトーチで用いられうるトーチガスを提供することである。
【0016】
本発明のなおもう一つの目的は、切断および/または溶接の用途のためのトーチガスとして用いられる燃料の消費量を減少させることである。
【0017】
本発明のさらにもう一つの目的は、切断および溶接の用途のための酸素の消費量を減少させることである。
【0018】
発明の概要
本発明は、ベース燃料への添加剤または添加剤混合物の添加を開示する。添加剤混合物の添加は、切断および溶接の用途のためのトーチガスとしての使用のためのベース燃料の特性を相乗作用的に向上させるだけでなく、切断用途のための燃料と酸素の両消費量を減少させる。
【0019】
重要な態様において、本発明は、
(A)少なくとも99重量%のベースガス
と、
(B)以下を含む添加剤
(a)2〜50ppmの有機金属化合物、ならびに
(b)(i) 100〜5000ppmのアニリンまたは置換アニリン、および
(ii) 100〜5000ppmのトルイジン
との相乗作用的な混合物を含む、炭化水素燃料組成物を記載する。
【0020】
好ましい態様において、ベースガスは液体石油ガスである。
【0021】
本発明のさらにもう一つの態様において、有機金属化合物は、灯油、ガソリン、またはナフサを含む群より選択される炭化水素液体溶媒に溶解している。
【0022】
本発明のさらにもう一つの態様において、アニリンもしくは置換アニリンおよびトルイジンは、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、MTBE、または任意の他の適した化合物を含む群より選択される酸素含有有機溶媒、好ましくはメタノールに溶解している。
【0023】
なおもう一つの態様において、灯油は、沸点が140〜280℃の範囲内である。
【0024】
もう一つの態様において、ガソリンまたはナフサは、沸点が40〜140℃の範囲内である。
【0025】
好ましい態様において、有機金属化合物は、フェロセン;ジルコノセン;ハフノセン(hafnocene);またはアセチルフェロセン、プロピオリ(propioly)フェロセン、ブチリルフェロセン、ペンタノイルフェロセン、ヘキサノイルフェロセン、オクタノイルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、エチルフェロセン、プロピルフェロセン、n-ブチルフェロセン、m-ブチルフェロセン、ペンチルフェロセン、ヘキシルフェロセン、シクロペンテニルフェロセンを含むそれらの誘導体;およびそれらの組み合わせを含む群より選択される。
【0026】
さらにもう一つの態様において、アニリンまたは置換アニリンは、メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、n-ブチルアニリン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される。
【0027】
なおもう一つの態様において、トルイジンは、オルト-トルイジン、パラ-トルイジン、メタ-トルイジンまたはそれらの組み合わせを含む群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
仮明細書に添付の図面の簡単な説明
【図1】図1a:酸素-アセチレン(oxy-acetylene)を用いた炭素綱プレートにおける穴の形成。図1b:本発明の改良型燃料を用いた炭素綱プレートにおける穴の形成。
【図2】図2a:酸素-アセチレンを用いた炭素綱プレートにおける切り口の形成。図2b:本発明の改良型燃料を用いた炭素綱プレートにおける切り口の形成。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の説明
液化石油ガス(LPG)は、本発明の改良型トーチガスのための好ましいベースガスである。LPGは、アセチレンのような他の燃料と比較して低コストで容易に入手できる。LPGは、主にC3およびC4炭化水素の混合物である(実質的にはプロパンならびにブタンの異性体、すなわちn-ブタンおよびi-ブタン)。しかしながら、LPGの供給源に依存して、同じものは、C3およびC4オレフィン、すなわち、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、i-ブチレンおよびブタジエンを含む場合がある。
【0030】
または、ベース燃料は、プロパンもしくはブタンのみまたはこれらのガスの混合物またはプロピレン、メチルアセチレン、プロパジエン、またはそれらの混合物、天然ガスまたは他の任意の適した炭化水素燃料であってもよい。
【0031】
ベース燃料への添加剤混合物の添加は、実質的に火炎温度を高くし、かつ切断の速度および質を向上させるだけでなく、切断または溶接の用途において燃料および酸素の消費量を減少させることが目下、見出されている。
【0032】
添加剤は、灯油、ガソリンのような炭化水素液体溶媒、または任意の他の適した炭化水素液体溶媒に0.5%〜12%の有機金属化合物を溶解することによって調製される溶液Aと、メタノールのような酸素含有有機溶媒0.2〜2mlに0.3〜3mlのアニリンもしくは置換アニリン、および0.3〜3mlのトルイジンを混合することによって調製された溶液Bとの混合物である。有機金属化合物は、フェロセンまたはジルコノセンまたはハフノセンまたは1つもしくは複数のそれらの誘導体またはそれらの混合物から選択される。添加剤として有用であるフェロセン誘導体は、アセチルフェロセン、プロピオリフェロセン、ブチリルフェロセン、ペンタノイルフェロセン、ヘキサノイルフェロセン、オクタノイルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、エチルフェロセン、プロピルフェロセン、n-ブチルフェロセン、n-ブチルフェロセン、ペンチルフェロセン、ヘキシルフェロセン、シクロペンテニルフェロセンなどを含むが、これらに限定されない。置換アニリンは、メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、n-ブチルアニリンなどのようなアルキルアニリンを含む。本発明のトルイジンは、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジンまたはそれらの混合物を含む。上記の溶液Bの調製に用いられる酸素含有有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、MTBE、または任意の他の適切な化合物から選択される。
【0033】
添加剤混合物は、30〜70%の溶液Aを含み、残りが溶液Bであってもよい。ベース燃料の1kg毎に、切断および溶接の用途における向上した性能を与えるために、例えば0.2ml〜1mlの添加剤を添加する。
【0034】
添加剤は、室温では液体であり、そのため、添加剤をベース燃料と混合することは簡単である。まず、添加剤を空の容器に添加し、その後燃料を添加する。例えば、LPGの場合については、添加剤を空のシリンダーに添加し、続いてLPGを圧力下で満たす。添加剤は、安全かつ容易に保管および/または輸送することができる。
【0035】
本発明の改良型トーチガスがあれば、切断速度、切り口の形成および表面仕上げは、アセチレンまたはベース燃料ガスよりも良好である。本発明の改良型トーチガスでは、燃料および酸素の消費量もまたより低い。スラグ形成はより少なく、逆火は、本発明の改良型トーチガスで切断している間は観察されない。アセチレンと比較して本発明の改良型燃料の他の有利な点は、本発明の改良型ガスを95%という低い純度の酸素とともに用いることができることである。さらに、アセチレンは最高20フィートの深さまでの水中でのみ用いることができるが、本発明の改良型燃料ガス組成物は、約300フィートの深さまでの水中での切断用途のために用いることができる。
【0036】
金属切断用途のための、本発明の改良型トーチガスの消費量は、プレートの厚さに依存するアセチレンおよびベースLPGと比較して5〜45%低い。酸素の消費量は、本発明の改良型トーチガスでは実質的により低いことも見出されている。より低い純度の酸素もまた、切断の質を実質的に損なうことなく、本発明の改良型燃料ガスとともに用いることができる。
【0037】
本発明は、以下の実施例によって説明され、かつ支持される。これらは、単に典型的な例および最適化の詳細であり、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0038】
実施例1
添加剤Aは、100mlの灯油(沸点範囲:140〜280℃)に2gのフェロセンを溶解することによって調製され、添加剤Bは、40mlのn-メチルアニリン、40mlの混合トルイジンおよび20mlのメタノールを混合することによって調製される。それぞれ1.5mLの添加剤AおよびBを、空のLPGシリンダーに添加し、5kgのLPGをシリンダーに導入する。添加剤をLPGと混合するためにシリンダーを十分に攪拌する。
【0039】
このように得られた改良型燃料ガス組成物の性能を、1mの長さ、38mmの厚さの炭素綱金属プレートを切断することによって評価する。比較のために、金属シートはまた酸素-アセチレンおよび酸素-ベースLPGを用いて切断される。切断にかかった時間、酸素および燃料の消費量に対する3つのガスの性能についてこのように得られた結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例2
添加剤Aは、沸点が40〜140℃であり、かつ756kg/m3の密度を有するガソリンに5%重量/体積のアセチルフェロセンを溶解することによって調製される。添加剤Bは、50mlのメチルアニリン、40mlの混合トルイジンおよび40mlのメタノールを混合することによって調製される。それぞれ1.5mlの添加剤AおよびBを空のLPGシリンダーに添加し、5kgのLPGをシリンダーに導入する。添加剤をLPGと混合するために、シリンダーを十分攪拌する。
【0042】
このように得られた改良型燃料ガス組成物の性能を、1mの長さ、90mmの厚さの炭素綱プレートを切断することによって評価し、酸素-ベースLPG燃料を用いて得られた結果と比較する。切断にかかった時間および燃料消費量に対する性能についてこのように得られた結果を表2に示し、穴の形成の質を図1に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例3
添加剤Aは、2重量/体積%のフェロセン溶液を得るために、沸点が40〜120℃であり、かつ705kg/m3の密度を有するナフサにフェロセンを溶解することによって調製され、添加剤Bは、プロピルアニリン、o-トルイジンおよびMTBEを均等な割合で混合することによって調製される。添加剤A(2.0ml)および添加剤B(4ml)を空のLPGシリンダーに添加し、5kgのLPGをシリンダーに導入する。添加剤をLPGと混合するために、シリンダーを十分攪拌する。
【0045】
このように得られた燃料ガス組成物の性能を、1mの長さ、115mmの炭素綱プレートを切断することによって評価し、ベースLPG燃料を用いて得られた結果と比較する。切断にかかった時間、燃料および酸素の消費量に対する性能についてこのように得られた結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例4
添加剤Aは、5%重量/体積のフェロセン誘導体溶液を得るために、140〜260℃の範囲の沸点および810kg/m3の密度を有する灯油にn-ブチルフェロセンを溶解することによって調製され、添加剤Bは、アニリン、混合トルイジンおよびエチルアルコールを2:2:1の比率で混合することによって調製される。添加剤A(1ml)および添加剤B(1.5ml)を空のLPGシリンダーに添加し、5kgのLPGをシリンダーに導入する。添加剤をLPGと混合するために、シリンダーを十分攪拌する。
【0048】
このように得られた改良型燃料ガス組成物の性能を、1.5mの長さ、38mmの厚さの炭素綱プレートを切断することによって評価し、アセチレンおよびベースLPG燃料を用いて得られた結果と比較する。燃料および酸素の消費量に対する性能についてこのように得られた結果を表4に示し、切り口の形成を図2に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例5
添加剤Aは、3重量/体積%のエチルフェロセン溶液を得るために、40〜140℃の範囲の沸点および756kg/m3の密度を有するガソリンにエチルフェロセンを溶解することによって調製され、添加剤Bは、エチルアニリン、p-トルイジンおよびエチルアルコールを2:2:1の比率で混合することによって調製される。添加剤A(1.5ml)および添加剤B(2.0ml)を空のLPGシリンダーに添加し、5kgのLPGをシリンダーに導入する。添加剤をLPGと混合するために、シリンダーを十分攪拌する。
【0051】
このように得られた改良型燃料ガス組成物の性能を、1mの長さ、115mmの厚さの炭素綱金属プレートを切断することによって評価し、ベースLPG燃料を用いて得られた結果と比較する。燃料および酸素の消費量に対する性能についてこのように得られた結果を表5に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
実施例6
添加剤Aは、3重量/体積%のジルコノセン溶液を得るために、140〜260℃の範囲の沸点および810kg/m3の密度を有する灯油にジルコノセンを溶解することによって調製され、添加剤Bは、メチルエチルケトン、p-トルイジンおよびメチルアルコールを2:2:1の比率で混合することによって調製される。添加剤A(1.5ml)および添加剤B(2.0ml)を空のLPGシリンダーに添加し、5kgのLPGをシリンダーに導入する。添加剤をLPGと混合するために、シリンダーを十分攪拌する。
【0054】
このように得られた改良型燃料ガス組成物の性能を、1.5mの長さ、90mmの厚さの炭素綱金属プレートを切断することによって評価し、ベースLPG燃料を用いて得られた結果と比較する。燃料および酸素の消費量に対する性能についてこのように得られた結果を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
本発明の主たる有利な点:
1.本発明の炭化水素燃料組成物は、アセチレンまたはベース燃料ガスより良好な切断速度、切り口の形成および表面仕上げを有する。
2.燃料および酸素の消費量はまた、本発明の改良型燃料ガスでは、より低い。
3.スラグ形成はより少なく、かつ逆火は本発明の改良型燃料ガスで切断している間は観察されない。
4.本発明の炭化水素燃料ガス組成物はまた、約300フィートの深さまでの水中での切断用途のために用いることができる。
5.金属切断用途のための、本発明の炭化水素燃料ガス組成物の消費量は、プレートの厚さに依存するアセチレンおよびベースLPGと比較して5〜45%低い。
6.酸素の消費量がまた、本発明の炭化水素燃料ガス組成物では実質的により低い。
7.より低い純度の酸素もまた、切断の質を実質的に損なうことなく、本発明の炭化水素燃料ガス組成物とともに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(C)少なくとも99重量%のベースガス
と、
(D)以下を含む添加剤
(a)2〜50ppmの有機金属化合物、ならびに
(b)(i) 100〜5000ppmのアニリンまたは置換アニリン、および
(ii) 100〜5000ppmのトルイジン
との相乗作用的な混合物を含む、炭化水素燃料組成物。
【請求項2】
前記ベースガスが液化石油ガスである、請求項1記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項3】
前記有機金属化合物が、フェロセン;ジルコノセン;ハフノセン(hafnocene);またはアセチルフェロセン、プロピオイル(propioyl)フェロセン、ブチリルフェロセン、ペンタノイルフェロセン、ヘキサノイルフェロセン、オクタノイルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、エチルフェロセン、プロピルフェロセン、n-ブチルフェロセン、m-ブチルフェロセン、ペンチルフェロセン、ヘキシルフェロセン、シクロペンテニルフェロセンを含むそれらの誘導体;およびそれらの組み合わせを含む群より選択される、請求項1または2記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項4】
前記有機金属化合物が、灯油、ガソリン、またはナフサを含む群より選択される炭化水素液体溶媒に溶解している、前記請求項のいずれか一項記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項5】
前記灯油が140〜280℃の沸点範囲を有する、請求項4記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項6】
前記ガソリンまたはナフサが40〜140℃の沸点範囲を有する、請求項4記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項7】
前記アニリンまたは置換アニリンおよびトルイジンが、酸素含有有機溶媒に溶解している、前記請求項のいずれか一項記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項8】
前記酸素含有有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、MTBE、またはそれらの組み合わせを含む群より選択される、請求項7記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項9】
前記酸素含有有機溶媒が、好ましくはメタノールである、請求項8記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項10】
前記アニリンまたは置換アニリンが、メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、n-ブチルアニリン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項11】
前記トルイジンが、オルト-トルイジン、パラ-トルイジン、メタ-トルイジン、またはそれらの組み合わせを含む群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の炭化水素燃料組成物。
【請求項12】
実質的に本明細書に記載され、かつ本明細書の実施例および図面に関する、炭化水素燃料組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−508384(P2010−508384A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534056(P2009−534056)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/IN2007/000517
【国際公開番号】WO2008/072254
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508375402)バーラト ペトローリアム コーポレーション リミテッド (3)