説明

炭化水素産出井戸の生産性を改良するための組成物及び方法

組成物は、フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤と、溶媒とを含む。溶媒は、炭素原子2〜25個を有する少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルと、炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、若しくはケトン、又はその混合物とを含み、炭化水素含有砕屑地層中のブライン若しくはコンデンセートの可溶化、又はブライン若しくはコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。組成物の実施形態は、ブライン及び/又はコンデンセートを含む炭化水素含有砕屑地層から炭化水素を回収する際に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地下井戸を掘削する技術分野では、一部の井戸(例えば、一部の油及び/又はガス井)の場合、坑井の近傍(当技術分野では、「坑井近傍領域」としても知られている)の炭化水素含有地層中にブラインが存在することが知られている。ブラインは、自然に発生(例えば、遺留水)する場合も、及び/又は井戸で行われた操業の結果である場合もある。
【0002】
一部の井戸(例えば、一部のガス井)の場合には、液状炭化水素(当技術分野では「コンデンセート」としても知られている)が形成され、坑井近傍領域に蓄積する場合がある。コンデンセートが存在すると、ガスとコンデンセート両方の相対的な浸透性が大きく低下し、したがって、井戸の生産性が低下する恐れがある。
【0003】
炭化水素含有地層の坑井近傍領域にブライン及び/又はガスコンデンセートが存在すると、井戸からの炭化水素の産出が阻害される、又は停止する場合があり、したがって、通常は望ましくない。
【0004】
こうした井戸の炭化水素の産出を増加させるために、多様な手法が試みられている。例えば、1つの手法では、坑井に隣接する炭化水素含有地層の浸透性を増加させるために、破砕及びプロッピング操作(例えば、砂利充填操作の前、又はそれと同時に)を必要とする。また、化学処理剤(例えば、メタノールの注入)を使用することによってもこうした油及び/又はガス井の生産性を改良してきた。後者の処理剤は、通常、炭化水素含有地層の坑井近傍領域内に注入され、その領域で、処理剤がブライン及び/又はコンデンセートと相互作用をすることによってそれを置換及び/又は溶解させ、それによって、井戸からの炭化水素の産出を増加させる。
【0005】
しかし、炭化水素含有地層の坑井近傍領域内にブライン及び/又はコンデンセートを含む井戸からの炭化水素の産出を増加させるための従来の処理剤は、比較的寿命が短い場合が多く、高価で且つ時間のかかる再処理を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、炭化水素含有地層の坑井近傍領域内に存在するブライン及び/又はコンデンセートを含む油及び/又はガス井の生産性を増加させるための代替の及び/又は改良された技法に対する必要性が常に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、
(a)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と、
【0008】
【化1】

【0009】
(b)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と
【0010】
【化2】

【0011】

【0012】
【化3】

【0013】
又は
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、
は、炭素原子1〜8個を有するペルフルオロアルキル基を表し、
R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素、又は炭素原子1〜4個を有するアルキルであり、
nは、2〜10の整数であり、
EOは、−CHCHO−を表し、
POは、それぞれ独立に、−CH(CH)CHO−又は−CHCH(CH)O−を表し、
pは、それぞれ独立に、1〜約128の整数であり、
qは、それぞれ独立に、0〜約55の整数である]
を含むフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤と;
それぞれ独立に、炭素原子2〜25個を有する少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルと、
それぞれ独立に、炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、若しくはケトン、又はその混合物と
を含む溶媒と;
を含む組成物を提供する。
【0016】
通常、溶媒は、炭化水素含有砕屑地層中のブライン若しくはコンデンセートの可溶化、又はブライン若しくはコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。理論に拘泥するつもりはないが、本発明による組成物及び方法は、炭化水素含有砕屑地層中のブライン及び/若しくはコンデンセートを可溶化又は置換するのに伴って、坑井近傍領域の地層の岩石の上又は周囲に界面活性剤層を形成させることによって井戸の生産性を向上させることができる。
【0017】
一部の実施形態では、溶媒は、炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコールを含む。一部の実施形態では、組成物は水を本質的に含まない。一部の実施形態では、組成物は少なくとも100°F(37.8℃)の温度で均一である。一部の実施形態では、ポリオール及びポリオールエーテルは、それぞれ独立に、炭素原子2〜10個を有する。一部の実施形態では、ポリオール及びポリオールエーテルは、450°F(232℃)未満の標準沸点を有する。一部の実施形態では、Rはペルフルオロブチルである。一部の実施形態では、フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は、1,000〜30,000グラム/モルの範囲の数平均分子量を有する。
【0018】
別の態様では、本発明は、炭化水素含有砕屑地層内に組成物を注入するステップを含み、組成物が、
(a)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と、
【0019】
【化5】

【0020】
(b)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と
【0021】
【化6】

【0022】

【0023】
【化7】

【0024】
又は
【0025】
【化8】

【0026】
[式中、
は、炭素原子1〜8個を有するペルフルオロアルキル基を表し、
R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素、又は炭素原子1〜4個を有するアルキルであり、
nは、2〜10の整数であり、
EOは、−CHCHO−を表し、
POは、それぞれ独立に、−CH(CH)CHO−又は−CHCH(CH)O−を表し、
pは、それぞれ独立に、1〜約128の整数であり、
qは、それぞれ独立に、0〜約55の整数である]
を含むフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤と;
それぞれ独立に、炭素原子2〜25個を有する少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルと、
それぞれ独立に、炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、若しくはケトン、又はその混合物とを含む溶媒であって、
炭化水素含有砕屑地層中のブライン若しくはコンデンセートの可溶化、又はブライン若しくはコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる溶媒と;
を含む、炭化水素含有砕屑地層を処理する方法を提供する。
【0027】
一部の実施形態では、溶媒は、炭化水素含有砕屑地層中のブラインの可溶化又は置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。一部の実施形態では、溶媒は、炭化水素含有砕屑地層中のコンデンセートの可溶化又はコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。一部の実施形態では、ポリオール及びポリオールエーテルは、それぞれ独立に、炭素原子2〜10個を有する。一部の実施形態では、ブラインは遺留水を含む。一部の実施形態では、炭化水素含有砕屑地層はダウンホールである。一部の実施形態では、ダウンホールの条件として、約1バール〜1000バールの範囲の圧力、及び約100°F(37.8℃)〜400°F(204℃)の範囲の温度が含まれる。一部の実施形態では、組成物が、炭化水素含有砕屑地層を破砕する間及び/又は破砕した後に、炭化水素含有砕屑地層内に注入される。一部の実施形態では、炭化水素含有砕屑地層が、その層内に坑井を備え、該方法は、炭化水素含有砕屑地層内に組成物を注入した後に坑井から炭化水素を得るステップをさらに含む。
【0028】
本発明による組成物及び方法は、典型的には、例えば、炭化水素含有砕屑地層の坑井近傍領域内に存在するブライン及び/若しくはコンデンセートを含む油、並びに/又はガス井の生産性を増加させるために有用である。坑井近傍領域に蓄積したブライン(及び/若しくはコンデンセート)を含む特定の油、並びに/又はガス井の炭化水素生産性を改良するための本発明による組成物の有効性は、通常、井戸の坑井近傍領域に存在する多量のブライン(及び/又はコンデンセート)を溶解させる組成物の能力によって決まることになる。したがって、所与の温度で、ブライン(及び/又はコンデンセート)の溶解度がより低い組成物(即ち、ブライン又はコンデンセートを比較的少量しか溶解できない組成物)は、ブライン(及び/又はコンデンセート)の溶解度がより高く、且つ同じ濃度で同じ界面活性剤を含む組成物の場合に比べて、通常、より大量に必要になることにある。
【0029】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に該当する領域の当業者によって通常理解されている意味を有する。「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数の構成要素のみを指すものではなく、例示のために使用し得るその具体的な例の全体的なクラスを含むものとする。本明細書では、本発明の特定の実施形態を説明するために専門用語を使用するが、特許請求の範囲で要約されている場合を除いて、その使用によって本発明の範囲が定められるものではない。
【0030】
用語の以下の定義は、本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって適用される。
【0031】
「ブライン」という用語は、その中に少なくとも1つの電解質が溶解している(例えば、任意の非ゼロ濃度を有し、その濃度は、1000/1,000,000重量部(ppm)未満、又は1000ppm超、10,000ppm超、20,000ppm超、30,000ppm超、40,000ppm超、50,000ppm超、100,000ppm超、150,000ppm超、或いは200,000ppm超であってよい)水を指す。
【0032】
「ダウンホール条件」という用語は、地下砕屑地層で通常見られる温度、圧力、湿度、及びその他の条件を指す。
【0033】
「均一な」という用語は、全体が巨視的に均一であり、且つ巨視的な相分離の傾向がないことを意味する。
【0034】
炭化水素含有砕屑地層という用語として、屋外の炭化水素含有砕屑地層(即ち、地下の炭化水素含有砕屑地層)とこうした炭化水素含有砕屑地層の部分(例えば、コア試料)との両方が挙げられる。
【0035】
「加水分解性シラン基」という用語は、約2と約12の間のpHで水によって加水分解を受ける少なくとも1つのSi−O−Z部分を有し、Zが、H、又は置換若しくは非置換のアルキル若しくはアリール基である基を指す。
【0036】
「非イオン性」という用語は、水中で容易に且つ大幅にイオン化されるイオン性基(例えば、塩)又は基(例えば、−CO2H、−SO3H、−OSO3H、−P(=O)(OH)2)を含まないことを指す。
【0037】
「標準沸点」という用語は、圧力が1気圧(100kPa)での沸点を指す。
【0038】
「ポリマー」という用語は、その構造が、比較的低分子量の分子から実際に又は概念的に誘導された単位の多数の反復を本質的に含む、分子量が少なくとも1000グラム/モルの分子を指す。
【0039】
「ポリマー性」という用語は、ポリマーを含むことを指す。
【0040】
「溶媒」という用語は、25℃で合わせられた非イオン性フッ素化ポリマー界面活性剤(複数可)を少なくとも部分的に溶解することができる均一な液状材料(その液状材料と合わせ得る水を含めて)を指す。
【0041】
「界面活性剤」という用語は、表面活性な材料を指す。
【0042】
「水混和性」という用語は、どんな割合においても水に可溶性であることを意味する。
【0043】
井戸に適用される「生産性」という用語は、井戸が炭化水素を産出する容量を指し;即ち、炭化水素の流速と圧力降下の比を指し、その場合、圧力降下は、貯留槽の平均圧と井戸の流動底部ホール圧の間の差である(即ち、単位駆動力当りの流量)。
【0044】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、これから、添付の図面と一緒に、詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に従って坑井近傍領域を順次処理するための装置を運転する油及びガス用沖合プラットホームの例示的実施形態の略図である。
【図2】実施例用として使用されるコア漏水設備の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
有用な組成物は、フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤と溶媒とを含む。
有用なフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は
(a)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と、
【0047】
【化9】

【0048】
(b)次式によって表される少なくとも1つの2価単位とを含む。
【0049】
【化10】

【0050】

【0051】
【化11】

【0052】
又は
【0053】
【化12】

【0054】
は、炭素原子1〜8個を有するペルフルオロアルキル基を表す。例示的な基Rとして、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル(例えば、ペルフルオロ−n−ブチル又はペルフルオロ−sec−ブチル)、ペルフルオロペンチル、ペルフルオロヘキシル、ペルフルオロヘプチル、及びペルフルオロオクチルが挙げられる。
R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は炭素原子1〜4個のアルキルである(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、又はt−ブチル)。
nは、2〜10の整数である。
EOは、−CHCHO−を表す。
POは、それぞれ独立に、−CH(CH)CHO−又は−CHCH(CH)O−を表す。
pは、それぞれ独立に、1〜約128の整数である。
qは、それぞれ独立に、0〜約55の整数である。ある種の実施形態では、qは、1〜55の範囲でよく、比p/qは、少なくとも0.5、0.75、1、又は1.5から2.5、2.7、3、4、5、又は5超までの値を有する。
【0055】
本明細書で上記したフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は、通常、
(a)次式によって表される少なくとも1つの化合物と、
【0056】
【化13】

【0057】
(b)次式によって表される少なくとも1つの化合物と
【0058】
【化14】

【0059】

【0060】
【化15】

【0061】
又は
【0062】
【化16】

【0063】
の共重合によって調製することができる。
【0064】
上記のフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は、例えば、当技術分野で知られた技法(例えば、ノナフルオロブタンスルホンアミド基含有アクリレートとポリ(アルキレンオキシ)アクリレート(例えば、モノアクリレート又はジアクリレート又はその混合物)を遊離ラジカルを開始剤として共重合させること)によって調製することができる。開始剤の濃度及び活性、モノマーの濃度、温度、並びに連鎖移動剤を調整すると、ポリアクリレートコポリマーの分子量を制御することができる。こうしたポリアクリレートの調製についての説明は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第3787351号(Olson)に記載されている。ノナフルオロブタンスルホンアミドアクリレートモノマーの調製は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第2803615号(Ahlbrecht et al.)に記載されている。フッ素脂肪族ポリマーエステル及びその調製の実施例は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6664354号(Savu et al.)に記載されている。
【0065】
ノナフルオロブチルスルホンアミド基含有構造体を作製するための上記の方法を使用することによって、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第2732398号(Brice et al.)の実施例2及び3に記載されている方法によって作製できるフッ化ヘプタフルオロプロピルスルホニルから出発してヘプタフルオロプロピルスルホンアミド基を作製することができる。
【0066】
有用なフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は、より大きい及びより小さい分子量も有用である場合があるが、通常、1,000〜10,000グラム/モル、20,000グラム/モル、又は30,000グラム/モルの範囲の数平均分子量を有する。フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤の混合物を使用することも本発明の範囲内である。
【0067】
一部の実施形態では、フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は、加水分解性シラン基を含まない。これは、例えば、この組成物の貯蔵寿命を長くすることによって有利になる場合がある。
【0068】
通常、本発明による組成物は、組成物の全重量に対して、少なくとも0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.15、0.2、0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、又は5重量%から5、6、7、8、9、又は10重量%までのフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤を含む。例えば、組成物中のフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤の量は、組成物の全重量に対して、0.01〜10、0.1〜10、0.1〜5、1〜10の範囲、又は1〜5重量%の範囲のフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤であってよい。組成物においてより少ない及びより多い量のフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤も、使用することができ、一部の用途では望ましい場合がある。
【0069】
フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤、溶媒、及び任意選択で水を含む本明細書記載の組成物の成分は、従来の磁気撹拌棒又は機械的ミキサー(例えば、インラインスタティックミキサー及び再循環式ポンプ)の使用を含めてのこうした種類の材料を合わせるための当技術分野で知られた技法を使用して合わせることができる。
【0070】
溶媒は、少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテル、及び炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、若しくはケトン、又はその混合物を含む。溶媒の成分が2つの官能基クラスの構成員である場合には、その溶媒は、いずれか一方のクラスとして使用することはできるが、双方のクラスとして使用することはできない。例えば、エチレングリコールメチルエーテルは、ポリオールエーテル又はモノヒドロキシアルコールになることはできるが、同時に両方になることはできない。
【0071】
一部の実施形態では、溶媒は、炭素原子2〜25個(一部の実施形態では、2〜20個)を有するポリオール又は炭素原子2〜25個(一部の実施形態では、2〜20個)を有するポリオールエーテルのうちの少なくとも1つ、及び炭素原子1〜4個を有するモノヒドロキシアルコール、炭素原子2〜4個を有するエーテル、又は炭素原子3〜4個を有するケトンのうちの少なくとも1つ、或いはその混合物から本質的になる(即ち、ダウンホール条件下で組成物の水可溶化又は置換特性に実際に影響するいかなる成分をも含まない)。
【0072】
溶媒は、炭素原子2〜25個(一部の実施形態では、2〜10個)を有する少なくとも1つのポリオール及び/又はポリオールエーテルを含む。
【0073】
本明細書では、溶媒について言及する場合、「ポリオール」という用語は、互いにC−H、C−C、C−O、O−H単結合によって結合したC、H、及びO原子からなり、少なくとも2つのC−O−H基を有する有機分子を指す。例えば、一部の実施形態では、有用なポリオールは、炭素原子2〜8個、又は炭素原子2〜6個を有することができ、有用なポリオールエーテルは、炭素原子3〜10個、例えば、炭素原子3〜8個、又は炭素原子5〜8個を有することができる。有用な例示的ポリオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、及び1,8−オクタンジオールが挙げられる。一部の実施形態では、有用なポリオールとして、式H[OCH(CH)CHOHを有するポリ(プロピレングリコール)が挙げられ、式中、nは、少なくとも2から最大8(一部の実施形態では、最大7、6、5、4、又は3まで)の整数である。
【0074】
本明細書では、溶媒について言及する場合、「ポリオールエーテル」という用語は、互いにC−H、C−C、C−O、O−H単結合によって結合したC、H、及びO原子からなり、少なくとも理論的には、ポリオールを少なくとも部分的にエーテル化することによって誘導可能である有機分子を指す。有用な例示的ポリオールエーテルとして、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。ポリオール及び/又はポリオールエーテルは、450°F(232℃)未満の標準沸点を有することができ;例えば、処理後に井戸からのポリオール及び/又はポリオールエーテルの除去を促進するためである。
【0075】
溶媒は、最大4個までの(及び4個を有する)炭素原子を有することができる少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、及び/又はケトンをさらに含む。定義により、エーテルは少なくとも2つの炭素原子を有しなければならないし、ケトンは、少なくとも3つの炭素原子を有しなければならないことが理解されよう。本明細書では、溶媒について言及する場合、「モノヒドロキシアルコール」という用語は、全体が、互いにC−H、C−C、C−O、O−H単結合によって結合したC、H、及びO原子から形成され、正確に1つのC−O−H基を有する有機分子を指す。炭素原子1〜4個を有する例示的なモノヒドロキシアルコールとして、メタノール、エタノール,n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、及びt−ブタノールが挙げられる。
【0076】
本明細書では、溶媒について言及する場合、「エーテル」という用語は、全体が、互いにC−H、C−C、C−O、O−H単結合によって結合したC、H、及びO原子から形成され、少なくとも1つのC−O−C基を有する有機分子を指す。炭素原子2〜4個を有する例示的なエーテルとして、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフラン、p−ジオキサン、及びエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0077】
本明細書では、溶媒について言及する場合、「ケトン」という用語は、全体が、互いにC−H、C−C、C−O単結合、及びC=O二重結合によって結合したC、H、及びO原子から形成され、少なくとも1つのC−C(=O)−C基を有する有機分子を指す。炭素原子3〜4個を有する例示的なケトンとして、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノン、及び2−ブタノンが挙げられる。
【0078】
溶媒は、炭化水素含有砕屑地層中のブライン及び/若しくはコンデンセートの可溶化並びに/又は置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。例えば、溶媒は、炭化水素含有砕屑地層中のブラインの可溶化又はブラインとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。同様に、溶媒は、例えば、炭化水素含有砕屑地層中のコンデンセートの可溶化又はコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる。
【0079】
各溶媒成分は、単一成分又は成分の混合物として存在することができる。溶媒の量は、通常、本発明による組成物中の成分量と逆比例で変わる。例えば、組成物の全重量に対して、溶媒は、組成物中に、少なくとも10、20、30、40、又は50重量%、又は50重量%超から60、70、80、90、95、98、又は99重量%、又は99重量%超までの量で存在することができる。
【0080】
一般に、フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤及び溶媒の量(及び溶媒の種類)は、通常、特定の用途によって変わる。というのは、条件は、通常、井戸間、個々の井戸の多様な深さ、及び個々の井戸の所与の位置における時間でも変わるからである。有利には、本発明の組成物及び方法は、個々の井戸及び条件に対してカスタマイズすることができる。
【0081】
理論に拘泥するつもりはないが、井戸の特定の坑井近傍領域で使用される組成物が、坑井近傍領域で遭遇する温度(複数可)で均一である場合、より望ましい井戸処理が得られると考えられる。したがって、炭化水素含有砕屑地層の坑井近傍領域を処理するために典型的に選択された組成物は、通常、坑井近傍領域で見られる少なくとも1つの温度において均一である。
【0082】
一部の実施形態では、本発明による組成物は、水(例えば、溶媒中で)をさらに含むことができる。一部の実施形態では、本発明による組成物は、水を本質的に含まない(即ち、組成物の全重量に対して、0.1重量%未満の水を含む)。
【0083】
本発明による組成物の実施形態は、例えば、炭化水素含有地下砕屑地層(一部の実施形態では、主として砂岩)から炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、又はオクタンのうちの少なくとも1つ)を回収するのに有利であり得る。
【0084】
図1を参照すると、例示的な油及びガス用沖合プラットホームが、略図として示され、全体が10として示されている。半水中プラットホーム12は、海底16より下方に位置する水中の炭化水素含有砕屑地層14の中心に位置する。海面下導管18は、プラットホーム12のデッキ20から、噴出防止装置24を備える井戸頂部装置22まで延在する。作業用ストリング30などのパイプストリングを上昇及び下降させるためのホイスト装置26及びデリック28を備えたプラットホーム12が示されている。
【0085】
坑井32は、炭化水素含有砕屑地層14を含む多様な地球の地層内に延在する。ケーシング34は、セメント36によって坑井32の内側に接着される。作業用ストリング30は、例えば、炭化水素含有砕屑地層14に隣接した坑井32の内側に位置する砂制御用篩アセンブリ38を含めての多様なツールを備えることができる。また、プラットホーム12から坑井32内を延在して流体送達管40が存在しており、この管40は、炭化水素含有砕屑地層14に隣接して位置する流体又はガス排出部42を備えており、パッカー44と46の間の産出ゾーン48を備えていることも示されている。産出ゾーン48に隣接した炭化水素含有砕屑地層14の坑井近傍領域を処理することを望む場合は、作業用ストリング30及び流体送達管40がケーシング34内を下降し、パーフォレーション50を備える砂制御用篩アセンブリ38及び流体排出部42が、炭化水素含有砕屑地層14の坑井近傍領域に隣接する位置にくる。そうした後に、本明細書記載の組成物が、送達管40内を下方にポンプ輸送されることによって炭化水素含有砕屑地層14の坑井近傍領域55が順次処理される。
【0086】
この図面は、沖合操業を示すが、当業者には、坑井の産出ゾーンを処理するための組成物及び方法は、陸上操業での使用にも同等に十分適していることが理解されよう。また、この図面は、垂直井戸を示すが、やはり当業者には、本発明の坑井処理用の組成物及び方法は、変則的な井戸、傾斜井戸、又は水平井戸にも同等に十分適していることが理解されよう。
【0087】
本明細書に記載の組成物を使用する方法は、例えば、現存及び新規両方の井戸で有用である。通常は、本明細書に記載の組成物が、炭化水素含有砕屑地層と接触した後の密閉時間に余裕を持たせることが望ましいと考えられる。例示的な時間設定として、数時間(例えば、1〜12時間)、約24時間、又は数(例えば、2〜10)日が挙げられる。
【0088】
本開示を閲覧した後であれば、当業者には、本発明の実施において、例えば、組成物のイオン強度、pH(例えば、pH約4〜約10の範囲)、及び坑井における半径応力(例えば、約1バール(100kPa)〜約1000バール(100MPa))を含めての多様な因子を考慮に入れることができることは理解されよう。
【0089】
本発明は、炭化水素含有地層の坑井近傍領域の岩石の濡れ特性を改変することによって、ブライン及び/又はコンデンセートを除去するフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤を注入するための組成物及び方法を含む。理論に拘泥するつもりはないが、フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤は、一般に、ダウンホール条件下で砕屑地層に吸着し、通常、抽出が継続する間(例えば、1週間、2週間、1カ月、又はそれ以上)、標的サイトに滞留すると考えられる。
【0090】
本発明による組成物は、通常、炭化水素含有地下砕屑地層(例えば、主として砂岩である炭化水素含有砕屑地層)、特にブライン及び/又はコンデンセートを含むものを処理するのに有用である。本方法は、本発明による組成物を炭化水素含有砕屑地層に注入するステップを含む。通常は、本発明による処理をした後には、炭化水素は坑井から、処理前の速度に比べて増加した速度で得られる。
【0091】
本方法は、例えば、実験室環境で(例えば、炭化水素含有砕屑地層のコア試料(即ち、一部分で))、又は屋外で(例えば、井戸のダウンホールに位置する地下炭化水素含有砕屑地層で)実施することができる。通常は、本発明による方法は、約1バール(100kPa)から約1000バール(100MPa)の範囲の圧力、及び約100°F(37.8℃)から400°F(204℃)の範囲の温度を有するダウンホール条件に適用可能である。但し、本方法は、その他の条件下で炭化水素含有砕屑地層を処理するのにも使用することができる。
【0092】
ブライン及び/又はコンデンセートに加えて、炭化水素含有砕屑地層には、その他の材料(例えば、アスファルテン又は水)も存在する場合がある。本発明による組成物及び方法は、そうした場合でも使用することができる。
【0093】
本発明による組成物は、油及びガス分野の技術者によく知られた方法(例えば、加圧ポンプ輸送によって)を使用して井戸の炭化水素含有砕屑地層中に注入することができる。
【0094】
水圧破砕は、通常、ブライン及び/又はコンデンセート遮蔽井戸、即ち、炭化水素含有地層の坑井近傍領域にブライン及び/又はコンデンセートを含む井戸の生産性を増加させるのに使用される。水圧破砕法は、比較的コストが高く、例えば、追加のブライン又はコンデンセート含有地層領域内の破砕が起こる恐れがあるので、ブライン又はコンデンセートが存在する場合には適用不可能である場合がある。しかし、一部の場合には、本発明と連携して、当技術分野で知られている破砕技法及び/又は支持材を利用することによって地下砕屑地層からの炭化水素抽出の産出を増加させることが望ましい場合がある。井戸に注入する前に本明細書記載の組成物を用いて支持材を処理することも望ましい場合がある。砂状支持材は、例えば、Badger Mining Corp. Berlin, WI;Borden Chemical Columbus, OH;Fairmont Minerals Chardon, OHから入手可能である。熱可塑性支持材は、例えば、Dow Chemical Company, Midland, MI;及びBJ Services, Houston, TXから入手可能である。粘土系支持材は、例えば、Carbo Ceramics, Irving, TX;及びSaint-Gobain, Courbevoie, Franceから入手可能である。焼結ボーキサイトセラミック支持材は、例えば、Borovichi Refractories, Borovichi, Russia;3M Company, St. Paul, MN;CarboCeramics;及びSaint Gobainから入手可能である。ガラス発泡ビーズ支持材は、例えば、Diversified Industries, Sidney, British Columbia, Canada;及び3M Companyから入手可能である。
【0095】
一部の実施形態では、本発明による組成物は、炭化水素含有砕屑地層を破砕する間に、破砕した後に、又は破砕する間及び破砕した後に炭化水素含有砕屑地層内に注入される。
【0096】
本発明の利点及び実施形態を、以下の実施例によってさらに例示するが、そうした実施例で記載された特定の材料及びその量、並びにその他の条件及び詳細は、不当に本発明を制限すると見なすべきではない。別段の指示がない限り、実施例及び明細書の残りの部分のすべての部数、百分率、比などは重量によるものとする。表では、「nd」とは測定していないことを意味する。
[実施例]
【0097】
フッ素界面活性剤Aの調製
フッ素界面活性剤Aは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの代わりに50/50の軽油/TRIGONOX-21-C50有機過酸化物開始剤(Akzo Nobel, Arnhem, the Netherlandsから入手可能なtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)15.6グラム(g)を使用し、さらに1−メチル−2−ピロリジノン9.9gを仕込みに加えたことを除いては、米国特許第6664354号(Savu)の実施例4と本質的に同様に調製した。
【0098】
フッ素界面活性剤Bの調製
フッ素界面活性剤Bは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの代わりに、重量比38:62のN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエチルアクリレート(MeFBSEA)とPLURONICアクリレート、及び50/50の軽油/TRIGONOX-21-C50有機過酸化物開始剤を使用し、1−メチル−2−ピロリジノン9.9gを仕込みに加えたことを除いては、米国特許第6664354号(Savu)の実施例4と本質的に同様に調製した。
[実施例1〜24]
【0099】
全体手順
フッ素界面活性剤A(0.06グラム(g))及び2つの溶媒(溶媒1及び溶媒2、合計3g)をバイアルに添加することによって試料を調製した。ブライン(組成:Ca=2096ppm、Sr=444ppm、Ba=212ppm、Mg=396ppm、K=277ppm、Na=21015ppm、Fe(溶解済)=9ppm、Fe(合計)=10ppm、対イオンは、塩化物であり、残余は水であった)(0.25g)をバイアルに加え、そのバイアルを手で振動させ、そのバイアルを90℃の加熱浴に1時間入れた。バイアルを浴から取り出し、次いで、視感で検査することによって試料が一相であるか否かを決定した。一相である場合には、試料がもはや一相でなくなるまで、ブラインの添加、振動及び加熱ステップを反復した。
【0100】
各実施例で使用した溶媒、及び溶媒の最初の量を表1(下記)に示すが、ブラインについて示された重量%は、溶媒、ブライン、及び界面活性剤を合わせた合計重量を基準とする。
【0101】
【表1】



[実施例25〜30]
【0102】
実施例1〜24に記載の全体手順に従ったが、フッ素界面活性剤Aの代わりにフッ素界面活性剤Bを使用した点が改変されている。各実施例に使用した溶媒、及び溶媒の最初の量を表2(下記)に示すが、ブラインについて示された重量%は、溶媒、ブライン、及び界面活性剤を合わせた合計重量を基準とする。
【0103】
【表2】

[実施例30〜31]
【0104】
実施例1〜24に記載の手順に従ったが、以下の改変を行った。用いた界面活性剤の量は、0.12gであり、ブラインの代わりに水を用いた。各実施例に使用した溶媒、及び溶媒の最初の量を表3(下記)に示すが、水について示された重量%は、溶媒、水、及び界面活性剤を合わせた合計重量を基準とする。
【0105】
【表3】

[実施例32〜33、例示的実施例1、及び比較例A]
【0106】
全体手順
フッ素界面活性剤A(2重量%)及び2つの溶媒を合わせた。磁性撹拌機及び磁性撹拌棒を使用して、成分を一緒に混合した。実施例32及び33、例示的実施例1、及び比較例Aに用いられた溶媒及びその量(組成物の全重量を基準とする重量%で)を以下の表4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
コア漏水評価
コア漏水用装置
基材試料(即ち、コア)の相対透過性を求めるために使用したコア漏水装置100の略図を図2に示す。コア漏水装置100は、流体積算計116内に一定速度で流体103を注入するための容積移送式ポンプ(モデル1458番;General Electric Sensing, Billerica, MAから入手)102を備えていた。高圧コアホルダー108(Phoenix, Houston TXから入手したHassler型のモデルUTPT-1x8-3K-13)上の複数の圧力ポート112を使用することによってコア109の4つのセクション(それぞれ長さが2インチ)における圧力降下を測定した。コアホルダー108上の追加の圧力ポート111を使用することによってコア109の全長(8インチ)における圧力降下を測定した。一部の実施形態では、圧力ポート112を使用することなく圧力測定を実施した。2つの背圧調整器(モデルBPR−50番;Temco, Tulsa, OKから入手した)104、106を使用することによって、コア109の上流部106及び下流部104の流動圧力を制御した。毛細管粘度計114をインラインに設置することによってコア109内を通過する流体を評価した。この毛細管粘度計は、Swagelok社から購入した外径1/16インチ(0.15875センチメートル(cm))のステンレス鋼(SS−316)製毛細管からなっていた。毛細管粘度計を使用することによって選択された流体の粘度を測定したが、それぞれのコア漏水実験については測定しなかった。
【0109】
容積移送式ポンプ102を除く全体の装置を、275°F(135℃)で圧力−温度制御オーブン110(モデルDC 1406F;最高温度の定格650°F(343℃);SPX Corporation, Williamsport, PAから入手)内に格納した。流体の最大流量は、7,000mL/時間であった。ガスの重力分離を避けるために、流体の流れは、垂直コアを通した。
【0110】
基材
コア漏水評価試験用の基材は、実施例32〜33、例示的実施例1、及び比較例Aで用いられた(即ち、各実施例又は比較例に対して1つのコア)Berea砂岩コアプラグであった。こうしたコアプラグの代表的な特性を以下の表5に示す。
【0111】
【表5】

【0112】
空隙率は、ガス膨張法又は乾燥コア試料と完全飽和コア試料間の重量差のいずれかを使用して測定した。細孔容積は、バルク容積と空隙率の積である。
【0113】
合成コンデンセート組成物
93モル%のメタンと、4モル%のn−ブタンと、2モル%のn−デカンと、1モル%のn−ペンタデカンとを含む合成ガスコンデンセート流体を、コア漏水評価試験のために使用した。流体の多様な特性の概略の値を以下の表6に示す。
【0114】
【表6】

【0115】
コアの調製
表5に記載のコアを標準型実験室オーブンで95℃で72時間乾燥させて、次いでアルミニウムホイル及び熱収縮性チューブで包んだ(商標「TEFLON HEAT SHRINK TUBING」でZeus, Inc., Orangeburg, SCから入手)。再度、図2を参照すると、包まれたコア109を75°F(24℃)のオーブン内のコアホルダー108内に入れた。3400psig(2.3×107Pa)の載荷圧力を加えた。流動圧力1200psig(8.3×106Pa)で窒素又はメタンのいずれかを使用して、最初の単一相透過率を測定した。
【0116】
92.25%の水と、5.9%の塩化ナトリウムと、1.6%の塩化カルシウムと、0.23%の塩化マグネシウム六水塩と、0.05%の塩化カリウムとを含むブラインを、以下の手順によってコア109内に導入した。コアホルダーの出口端を真空ポンプに連結し、入口を閉じて、最大真空を30分間かけた。入口をブラインの入ったビュレットに連結した。出口を閉じて、入口を開放することによってブラインの既知の体積をコアに流入させた。例えば、入口バルブを閉じる前にブライン5.3mlをコアに流入させることによって、遺留水の飽和度26%(即ち、コアの細孔容積の26%が水で飽和された)が達成された。1200psig及び75°F(24℃)で窒素又はメタンガスを流すことによって、遺留水飽和で透過率を測定した。
【0117】
コア漏水手順
再度、図2を参照すると、コアホルダー108内の包まれたコア109を275°F(135℃)で数時間オーブン110内部に置くことによって、それを貯留槽の温度に到達させた。次いで、上記の合成ガスコンデンセート流体を、定常状態が確立されるまで、約690mL/時間の流速で導入した。上流の背圧調整器106を、流体の露点圧力より上で、約4900psig(3.38×107Pa)に設定し、下流の背圧調整器104を、底部ホールの流動井戸圧に対応する約1500psig(3.38×107Pa)に設定した。次いで、処理前のガス相対透過率を、定常状態の圧力降下から計算した。次いで、界面活性剤組成物をコア内に注入した。少なくとも20の細孔容積が注入された後、界面活性剤組成物を275°F(135℃)で約15時間コア内に保持した。次いで、上記の合成ガスコンデンセート流体を、定常状態が確立されるまで容積移送式ポンプ102を使用して再度、約690mL/時間の流速で導入した。次いで、処理後のガス相対透過率を、定常状態の圧力降下から計算した。相対透過率の測定に続いて、容積移送式ポンプ102を使用してメタンガスを注入することによってコンデンセートを置換し、最終の単一相ガス透過率を測定して、コアには何の損傷も起こらなかったことを実際に示した。
【0118】
実施例32及び33、例示的実施例1、及び比較例Aについて、ブライン飽和の前に測定された最初の単一相ガス透過率、最初の毛細管数、界面活性剤組成物による処理前のガス相対透過率、処理後のガス相対透過率、及び処理前後のガス相対透過率の比(即ち、改良係数)を以下の表7に示す。
【0119】
【表7】

【0120】
コア中に存在するブラインの量は、実施例22に示されるように、組成物によって可溶化できるブラインの量より多いので、例示的実施例1では、コア漏水実験において改良が見られなかったと考えられる。
[実施例34]
【0121】
コア漏水を、以下の表8に示す特性を有する貯留槽コアA砂岩について実施したことを除いては、実施例32で記載のコア漏水評価手順及び条件に従った。
【0122】
【表8】

【0123】
Berea砂岩コアプラグについて、表8に示す細孔容積及び空隙率を、実施例32で上記したのと同様に測定した。コア漏水実験からの結果を以下の表9に示す。
【0124】
【表9】

[実施例35]
【0125】
フッ素界面活性剤A(0.06g)、ポリ(プロピレングリコール)1g(Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから入手した分子量425級)、及びメタノール1gをバイアルに加えた。均一な溶液が観察されるまで、このバイアルを手で振動させた。ブライン0.9g(組成:水中、塩化ナトリウム12重量%、及び塩化カルシウム6重量%)をバイアルに加えた。バイアルを手で振動させ、160℃の加熱浴中に15分間置いた。バイアルを浴から取り出し、視感で検査し、内容物は、一相で沈殿がないことが結論された。
【0126】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者なら本発明の多様な改変形態及び変更形態を作成することができる。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に不当に限定されないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と、
【化1】


(b)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と
【化2】



【化3】


又は
【化4】





[式中、
は、炭素原子1〜8個を有するペルフルオロアルキル基を表し、
R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は炭素原子1〜4個を有するアルキルであり、
nは、2〜10の整数であり、
EOは、−CHCHO−を表し、
POは、それぞれ独立に、−CH(CH)CHO−又は−CHCH(CH)O−を表し、
pは、それぞれ独立に、1〜約128の整数であり、
qは、それぞれ独立に、0〜約55の整数である]
を含むフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤と;
それぞれ独立に、炭素原子2〜25個を有する少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルと、
炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、若しくはケトン、又はその混合物と
を含む溶媒と;
を含む組成物。
【請求項2】
溶媒が、炭化水素含有砕屑地層中のブライン若しくはコンデンセートの可溶化、又はブライン若しくはコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、又はジプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
溶媒が、炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、又はケトンが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、又はアセトンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
水を本質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも100°Fの温度で均一である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリオール及びポリオールエーテルの標準沸点が、450°F未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
がペルフルオロブチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤の数平均分子量が、1,000〜30,000グラム/モルの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ポリオール及びポリオールエーテルが、それぞれ独立に、炭素原子2〜10個を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
炭化水素含有砕屑地層内に組成物を注入するステップを含み、前記組成物が、
(a)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と、
【化5】


(b)次式によって表される少なくとも1つの2価単位と
【化6】



【化7】


又は
【化8】

[式中、
は、炭素原子1〜8個を有するペルフルオロアルキル基を表し、
R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は炭素原子1〜4個を有するアルキルであり、
nは、2〜10の整数であり、
EOは、−CHCHO−を表し、
POは、それぞれ独立に、−CH(CH)CHO−又は−CHCH(CH)O−を表し、
pは、それぞれ独立に、1〜約128の整数であり、
qは、それぞれ独立に、0〜約55の整数である]
を含むフッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤と;
それぞれ独立に、炭素原子2〜25個を有する少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルと、
炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、若しくはケトン、又はその混合物と
を含む溶媒と;
を含み、前記溶媒が、炭化水素含有砕屑地層中のブライン若しくはコンデンセートの可溶化、又はブライン若しくはコンデンセートとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる、炭化水素含有砕屑地層を処理する方法。
【請求項13】
溶媒が、炭化水素含有砕屑地層中のブラインの可溶化又はブラインとの置換のうちの少なくとも一方を行うことができる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ブラインが遺留水を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのポリオール又はポリオールエーテルが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、又はジプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が、炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
炭素原子1〜4個を有する少なくとも1つのモノヒドロキシアルコール、エーテル、又はケトンが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、又はアセトンのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
組成物が水を本質的に含まない、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
炭化水素含有砕屑地層が少なくとも1つの温度を有し、組成物がその温度で均一である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
ポリオール及びポリオールエーテルの標準沸点が、450°F未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
がペルフルオロブチルである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
フッ素化ポリマー非イオン性界面活性剤の数平均分子量が、1,000〜30,000グラム/モルの範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
炭化水素含有砕屑地層がダウンホールである、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
ダウンホールの条件が、約1バール〜1000バールの範囲の圧力、及び約100°F〜400°Fの範囲の温度を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、炭化水素含有砕屑地層を破砕する間に、破砕した後に、又は破砕する間及び破砕した後に炭化水素含有砕屑地層内に注入される、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
炭化水素含有砕屑地層が、その層内に坑井を備え、方法が、炭化水素含有砕屑地層内に組成物を注入した後に坑井から炭化水素を得るステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
ポリオール及びポリオールエーテルが、それぞれ独立に、炭素原子2〜10個を有する、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501678(P2010−501678A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525763(P2009−525763)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/076558
【国際公開番号】WO2008/024865
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【出願人】(507290283)スリー、エム、イノベイティブ、プロパティーズ、カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY