説明

炭化珪素ベース多孔体およびその製造方法

炭化珪素ベース多孔体およびその製造方法を提供する。炭化珪素ベース多孔体は、炭化珪素ベース粒子を焼成することにより製造され、その孔がある表面に、針状に成長されたSi−N−またはSi−N−O−ベースの針状粒子を有している。さらに、炭化珪素ベース多孔体の製造方法は、純度が95〜99%の炭化珪素ベース粒子を用いてプレ成型体を形成し、次いで、このプレ成型体を、0.5〜2気圧の分圧を有する窒素雰囲気にした焼成炉内で熱処理して、孔がある表面に針状のSi−N−またはSi−N−O−ベース針状体を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック多孔体およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、多孔中における孔がある表面に針状の針状粒子を有する炭化珪素ベース多孔体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、発電機、焼却炉から発生する排気ガスには、多量の微細炭素煤煙粒子が含まれている。特に、ディーゼルエンジンの場合、コモンレール(common rail)システムを採用していると、ナノサイズの超微細粒子の排出が大きく増える。そこで、このような粒子を効果的に除くために、排気管中に多孔性フィルターを設置して微細炭素煤煙粒子を除く後処理装置が提案されている。後処理装置に用いられる多孔性フィルターとして、コーディオライト(cordierite)、ムライト(mulliet)、アルミナ(alumina)、炭化珪素(SiC)または窒化アルミニウム(AlN)などの種々の材料が研究されてきた。これらのうち、高い耐熱性、高い機械的強度および高い熱伝導率を持つ炭化珪素が特に有用である。
【0003】
特許文献1は、炭化珪素(SiC)粒子に、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)およびアルカリ土類金属の酸化物を結合して炭化珪素(SiC)多孔体を製造する方法を開示している。しかしながら、特許文献1に開示された方法は、孔が数十μmと大きいため、ナノサイズの超微細炭素煤煙粒子を効率よく吸着されず、濾過性能が下ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−359128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術にある上述した問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、良好な耐熱衝撃性および優れた濾過特性を有する炭化珪素ベース多孔体、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様により炭化珪素ベース多孔体が提供される。炭化珪素ベース多孔体は、純度が95%〜99%の炭化珪素および/またはシリコン粒子を焼成させて製造され、多孔体における孔がある表面に針状に成長されたSi−N−またはSi−N−O−ベースの針状体を有している。
【0007】
本発明の他の態様によれば、炭化珪素ベース多孔体を製造する方法が提供される。この方法は、純度が95〜99%の炭化珪素粒子を用いてプレ成形体を形成し、このプレ成形体を0.5〜2気圧の分圧をもつ窒素雰囲気にある焼成炉内で熱処理して、多孔体における孔がある表面に針状をしたSi−N−またはSi−N−O−ベースの針状体を成長させることにある。このとき、熱処理は、1400〜1600℃の温度で20〜60分間行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原料粒子の純度を調節し、多孔体の孔がある表面に針状体を形成させることによって、良好な耐熱衝撃性および優れた濾過特性を有する炭化珪素ベース多孔体が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】主材粒子が互いに結合してなり、微細炭素煤煙粒子を濾過できる本発明に係る炭化珪素ベース多孔体を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明はここに示した実施形態に限定されることなく、種々の実施形態でも実施できる。さらに、本発明の例は、開示された内容が当業者に完全に理解され、本発明の思想が充分よく伝えられるようにしている。
【0011】
本発明においては、主原料粒子として使用されるSiCおよび/またはSiは、主原料粒子の純度を調整して、追加の酸化物を用いずに、主原料粒子中にある高温融解の不純物により、互いに結合している。さらに、ナノサイズの微細炭素煤煙粒子を効率よく吸着して濾過するために、主原料粒子の表面に多数の微細針状粒子を形成させており、これにより微細炭素煤煙粒子を吸着させ、濾過効率を高めている。
【0012】
図1は、主原料粒子が互いに結合し、微細炭素煤煙粒子を濾過することができる本発明による炭化珪素ベース多孔体を示している。
【0013】
図1に示すように、主原料粒子がSiCおよび/またはSiである場合には、工業用の製品は、SiO、Fe、Al、KOおよびNaOなどの酸化物を不純物として含んでいる。主原料粒子1の純度は、不純物の量によって決められる。主原料粒子1の純度が95%より小さいと、不純物の量が多くなり過ぎ、高温焼成プロセスで不純物が溶融して形成される境界不純物相2が多くなって、これにより耐熱衝撃性が低下することになる。他方、純度が99%より大きいと、不純物の含量が少なくなり過ぎ、境界不純物相2が粒子間を結合するに充分な量で形成されず、これにより耐熱衝撃性が低下することになり好ましくない。
【0014】
SiCやSiなどの粒子は、窒素ガス(N)と反応してSi−N−またはSi−N−O−ベースの針状体3を生成する。この針状体3は、ナノサイズの微細針状をして、主構成原料の表面、すなわち熱処理によって製造された多孔体の孔がある表面に形成される。
【0015】
主原料粒子1の全てが針状体3になると、気孔サイズがかなり小さくなり、排気ガス5の流れが遮断される。それ故、その変換率をコントロールすることが重要である。さらに、針状体3の近傍では排気ガスの流れに乱れが生じる。このようにして、浮遊する微細炭素煤煙粒子4は、針状体3の表面に向かうように流れるようになり、微細炭素煤煙粒子4が針状体と衝突しながら針状体3に吸着される。
【0016】
本発明による炭化珪素ベース多孔体の製造方法では、純度が95〜99%の炭化珪素ベース粒子を主原料粒子として用い、プレ成型品を形成し、次いで、焼成炉内で熱処理する。熱処理中に、主原料粒子の針状体3への変換は、熱処理時の雰囲気ガスとして供給される窒素ガスの分圧、および熱処理条件によって決められる。すなわち、窒素ガスの分圧が0.5気圧より低いと、主原料粒子1のSi−N−またはSi−N−O−ベース針状体3への変換は、分解を伴って進み、窒化反応が遅くなる。他方、分圧が2気圧より高いと、窒化反応が急速に進んで、得られた針状体3の孔が詰まり好ましくない。よって、熱処理時の窒素ガス分圧は、好ましくは0.5〜2気圧の範囲にする。さらに、熱処理時の温度が1400℃より低い、あるいは反応時間が20分より少ないと、針状体3を満足いくように形成するのが難しく、濾過効率が低く、主原料粒子の結合が弱く、熱衝撃性を低下させることになる。他方、熱処理時の温度が1600℃より高い、あるいは反応時間が60分を超えると、針状体3が急速に形成され、孔が詰まって、濾過効率が低くなり好ましくない。従って、熱処理時の温度は1400〜1600℃であり、熱処理時間は20〜60分とするのが好ましい。
【実施例】
【0017】
本発明によって、炭化珪素ベース多孔体を、以下の実施例と比較例により製造し、それらの耐熱衝撃性および濾過性を評価した。
それぞれ所定純度のSiCおよびSi粒子を、バインダーと水と混合し、次いでこの混合物を押出成形してハニカム形状のプレ成型体を形成させた。このプレ成型体を100℃で乾燥し、焼成炉内に装入して熱処理した。
【0018】
このプロセスで製造された多孔体の耐熱衝撃性を次のようにして評価した。すなわち、多孔体を1200℃の電気炉に装入し、30分間保持し、これを水冷するという手順を4回繰り返した。この際、熱衝撃試験の前と後の試験片の曲げ強度を測定し、その比率を用いて試験片の耐熱衝撃性を計算した。
【0019】
さらに、微細炭素煤煙粒子の濾過特性は次のように評価した。すなわち、製造された多孔体の全表面を、平均粒径0.1μmの炭素粒子1容量%含有するアルゴンガスを流量200mLで30分間流し、その後、多孔体の重量を測定し、炭素粒子の吸着による重量増加を測定することにより、濾過効率を計算した。
【0020】
下の表1は、実施例および比較例による炭化珪素ベース多孔体の製造条件、並びに製造された多孔体の耐熱衝撃性指数および濾過指数を示している。耐熱衝撃性指数および濾過指数は、表1に示すように比較例1および比較例6の試験片の結果をそれぞれ100として、百分率に換算している。
【0021】
【表1】

【0022】
表1から明らかなように、本発明の実施例によって製造された炭化珪素ベース多孔体は、高い濾過効率および濾過衝撃性を示した。これに対し、比較例によって製造された炭化珪素ベース多孔体は、濾過効率も耐熱衝撃性も満足なものでない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、良好な耐熱衝撃性および優れた濾過特性を有する炭化珪素ベース多孔体が与えられることが可能とり、これにより多孔性フィルターの性能を大きく増進させる産業上の利用効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度が95〜99%の炭化珪素ベース粒子を焼成することにより製造され、孔がある表面に針状に成長されたSi−N−またはSi−N−O−ベースの針状粒子を有する炭化珪素ベース多孔体。
【請求項2】
前記炭化珪素ベース粒子が、SiCおよび/またはSi粒子であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素ベース多孔体。
【請求項3】
純度が95〜99%の炭化珪素ベース粒子を用いてプレ成型体を形成し、次いで、前記プレ成型体を、0.5〜2気圧の分圧を有する窒素雰囲気にある焼成炉内で熱処理して、孔がある表面に針状のSi−N−またはSi−N−O−ベースの針状粒子を成長させることを特徴とする炭化珪素ベース多孔体の製造方法。
【請求項4】
前記炭化珪素ベース粒子が、SiCおよび/またはSi粒子であることを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素ベース多孔体の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理が、1400〜1600℃の温度で、20〜60分間行うことを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素ベース多孔体の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−521404(P2010−521404A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554428(P2009−554428)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/KR2007/001396
【国際公開番号】WO2008/114895
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(502258417)ポスコ (73)
【出願人】(501265593)リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー (7)
【Fターム(参考)】