説明

炭水化物−界面活性剤複合体を含む誘導粘度栄養エマルション

脂肪と蛋白質と炭水化物とを含む栄養エマルションであって、(A)誘導粘度繊維系および(B)エマルションの水相内に所在し、少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロースと共に複合化された食品グレード界面活性剤を含むV−複合体を含み、栄養エマルションが、約100cps未満の20℃での第1の粘度、前記第1の粘度より少なくとも約50cps高い0℃から8℃の温度での第2の粘度および少なくとも約300cpsの誘導粘度を有する栄養エマルションが開示されている。エマルションは、特に低カロリーエマルションに関する食後空腹に対する改善された抑制を提供する。エマルションは、深冷されたとき、濃厚でクリーム様の触感も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増加される飽満利益のための炭水化物−界面活性剤複合体(V−複合体)を含む誘導粘度栄養エマルションに関する。
【0002】
多くの異なるタイプの栄養エマルションが市販されているか、または文献において別段に開示されている。これらは、典型的には、脂肪、蛋白質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルのバランスを含む水中油エマルションである。幾つかの例には、Abbott Laboratories(Columbus,Ohio)から入手できる包装された栄養液のGlucerna(登録商標)およびEnsure(登録商標)が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
最近、誘導粘度繊維系を炭水化物成分の一部として含有する栄養液の新しいタイプが開発された。これらの液は、栄養エマルションに特有の包装粘度を有するが、繊維系であるために摂取後により高い誘導粘度をもたらす。胃内の増加した粘度は、胃が空になることおよびその後の血糖応答を減らすのを助ける。胃内の粘度増加は、満腹および増大する飽満の感覚も提供する。これらの誘導粘度飲料は、糖尿病患者および体重維持または減量に関心のある人々に特に有用である。
【0004】
例えば、U.S.Patent Publication 2002/0193344(Wolfら)は、飲料が水不溶性酸可溶性カチオンと併せて可溶性アニオン繊維を有する誘導粘度繊維系を含有する誘導粘度飲料を開示している。胃の低いpHにさらされたとき、飲料の粘度は摂取後に増加する。
【0005】
なお別の例において、U.S.Patent 7,067,498(Wolfら)は、飲料が中性可溶性繊維と併せて部分加水分解澱粉を含む誘導粘度飲料を開示している。胃の中で酸およびアミラーゼにさらされたとき、飲料の粘度は摂取後に増加する。
【0006】
誘導粘度エマルションを食後の食欲を抑制するために用いてもよいことは知られている。摂取された食物の少なくとも約60%が胃から出たときに食後の空腹が増加するので、誘導粘度エマルションを用いて胃の粘度を高めることによって空腹を減らしてもよく、これは、その後、胃が空になる速度を下げ、これは、その後、空腹を減らす。高まった胃の粘度は、非粘性内容物よりゆっくり胃が空になるのを可能にする胃のより大きな慣性のゆえに胃の推進収縮に抵抗する。
【0007】
低カロリー食品が食後の空腹を抑制するのに殆ど効果を及ぼさないことも知られている。上述した誘導粘度エマルションとして配合されたときでさえ、これらの低カロリー食品が食後の空腹を抑制するのに殆ど効果を及ぼさないことが見出された。さらに誘導粘度エマルションが、減量または体重維持において用いるためにしばしば記載されているので、食欲を抑制するためにも低カロリー食品を配合することができるなら、低カロリー食品としてこのようなエマルションを配合することが望ましいであろう。
【0008】
従って、特に低カロリー配合物または低脂肪配合物として配合されたとき、食欲を抑制する際に遙かにより効果的である誘導粘度エマルションを配合することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0193344号明細書
【特許文献2】米国特許第7,067,498号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、脂肪と蛋白質と炭水化物とを含む栄養エマルションであって、(A)誘導粘度繊維系および(B)エマルションの水相内に所在し、少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロースと共に複合化された食品グレード界面活性剤を含むV−複合体を含み、栄養エマルションが、約100cps未満の20℃での第1の粘度、前記第1の粘度より少なくとも約50cps高い0℃から8℃の温度での第2の粘度、および少なくとも約300cpsの誘導粘度を有する栄養エマルションを含む。
【0011】
誘導粘度飲料のV−複合体成分は、飲料が低脂肪エマルションまたは低カロリーエマルションとして配合されるときでさえ、高まった飽満を消費者に与えるのを助ける。V−複合体のアシルグリセロール成分がCCK/GLP−1刺激剤として機能し、(飽満に)及ぼすこの効果が、同じアシルグリセロールを含有するが、V−複合体内に収容されておらず、V−複合体に複合されていない比較配合物より遙かに大きいことが考えられる。
【0012】
本発明の実施形態は、処理および貯蔵中により低い粘度を有するが、深冷されたときに驚くべきほどにより高い粘度を有する栄養エマルションも提供することができる。より低い処理粘度は、より過酷でない処理温度および/または剪断の使用を見込んでいる。深冷された高い粘度では、高脂肪含有率を有する配合物に似た驚くほど濃厚でクリーム様の口あたりを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の種々の実施形態は、栄養エマルションおよびこのようなエマルションを製造する方法を含んでもよく、これらのすべては、誘導粘度繊維系および本明細書において定義された選択されたV−複合体および/またはV−複合体すなわちポリデキストロースと食品グレード界面活性剤の選択された組合せを含む水相を含んでもよい。種々の実施形態のこれらおよび他の必須要素または任意の要素を以後に詳細に記載する。
【0014】
本明細書において用いられる「栄養エマルション」という用語は、別段に指定がない限り、ヒトの経口栄養の単独源、主要源または補助源として用いるために適する、脂肪と蛋白質と炭水化物とを含む室温エマルションを意味する。このような栄養エマルションは、古典的なエマルション(例えば、複合体、油中水、水中油など)、サスペンション(例えば懸濁された固体)およびこれらの組合せを含む。栄養エマルションは、最も典型的には、連続水相および不連続油相を有する水中油エマルションである。
【0015】
本明細書において用いられる粘度値は、別段に指定がない限り、室温(20℃)またはこのように指定された温度で、62スピンドルを有するブルックフィールド粘度計(モデルDV−II+)を用いて得られる。粘度は、目盛上で読みとるために可能な最高速度であるスピンドル速度で粘度計を操作することにより測定される。測定された粘度値は、ダイン−秒/cm、またはポイズもしくはより典型的にはセンチポイズ(cps)すなわちポイズの百分の1として表現される剪断応力対剪断速度の比を表す。
【0016】
本明細書において用いられるすべての百分率、部および比は、別段に指定がない限り、全組成物の重量による。記載された原料に関連するこのようなすべての重量は、別段に指定がない限り、活性レベルに基づき、従って、市販材料中に含まれ得る溶媒も副生物も含まない。
【0017】
別段に指定がない限り、単数の特性または本発明の制限に対する一切の言及は、対応する複数の特性または制限を含み、逆の場合も同じものとする。
【0018】
本明細書において用いられる方法またはプロセス工程の一切の組合せは、別段に指定がない限り、いかなる順序においても行うことが可能である。
【0019】
本発明の組成物および方法の実施形態は、残りの組成物が本明細書において定義された本質的な制限のすべてを構成するならば、本明細書において記載された特定のあらゆる原料を実質的に含まなくてもよい。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、本明細書において開示された特定原料の僅少量未満、典型的には、特定原料の約0.5重量%未満を含む、約0.1重量%未満も含む、および零重量%も含む約1重量%未満を組成物が含んでもよいことを意味する。
【0020】
本発明の組成物および方法の実施形態は、本明細書において記載された本発明の必須の要素、および本明細書において記載されたか、または栄養用途において別段に有用な追加または任意の一切の原料または成分を含んでもよいか、これらからなってもよいか、またはこれらから本質的になってもよい。
【0021】
本明細書において用いられる「誘導粘度栄養エマルション」という用語は、別段に指定がない限り、本明細書において定義された誘導粘度繊維系を含む栄養エマルションを意味する。
【0022】
本明細書において用いられる「誘導粘度繊維系」という用語は、別段に指定がない限り、栄養エマルションに添加されたとき、約300cps未満の20℃での飲用に適するエマルション粘度、および摂取後に増加した(誘導された)エマルション粘度を見込んでいる一切の繊維含有材料または繊維含有組成物を意味する。
【0023】
本明細書において用いられる「食品グレード界面活性剤」という用語は、別段に指定がない限り、本明細書において記載された炭水化物−界面活性剤複合体(V−複合体)の界面活性剤成分を意味する。
【0024】
粘度分布
本発明の栄養エマルションの実施形態は、本明細書において定義された粘度分布を有し、ここで、各々は、20℃での定義された粘度(室温粘度または包装粘度)、製品温度が20℃から約0℃から約8℃の範囲内に上昇した時の定義された粘度増加(深冷粘度)および製品が摂取され胃に入る時の定義された粘度増加(誘導粘度)を有する。各粘度の特徴を以後に詳細に定義する。
【0025】
A)室温粘度
本発明の栄養エマルション実施形態は、典型的には約300cps未満、より典型的には、約20cpsから約70cpsを含む約10cpsから約160cpsである室温粘度または包装粘度(20℃での)を有する。室温粘度または包装粘度は、レトルト処理されたか、または無菌充填された缶、ビンまたは他の容器などの密封包装からエマルションを除去した後に測定してもよい。
【0026】
B)深冷粘度
栄養エマルションの実施形態は使用の前に深冷して、濃厚でクリーム様の口あたりを有するエマルションも提供する本明細書において定義された深冷粘度を生じさせてもよい。
【0027】
深冷粘度を達成するために、摂取の前に栄養エマルションを約1℃から約6℃を含み、および約2℃から約4℃も含む約0℃から約8℃の温度に冷却または深冷してもよい。この温度点でエマルションの粘度は、対応する室温粘度より上に約100から約700cpsの増加を含み、および約150cpsから約350cpsの増加も含む少なくとも約50cps増加する。
【0028】
従って、同じ配合に関して室温粘度より高い深冷粘度を有する深冷栄養エマルションは、従って、約120cpsから約600cpsを含み、約150cpsから約450cpsも含み、および約200cpsから約400cpsも含む少なくとも約120cpsの深冷粘度を有してもよい。
【0029】
深冷粘度増加は、主として、栄養エマルションの水相にV−複合体を含めることに起因する。
【0030】
A)誘導粘度
これらの栄養エマルションによって提供された誘導粘度は、胃が空になることを減らすのを助け、その後、血糖応答を弱めるのを助ける。誘導粘度は満腹および増大する飽満の感覚も提供する。これらの誘導粘度栄養エマルションは、糖尿病患者および体重維持または減量に関心のある人々に特に有用である。
【0031】
誘導粘度飲料として、本発明の栄養エマルションは、摂取の前に飲用に適する粘度(すなわち包装粘度)を有し、これは、その後、摂取後および胃に入った後の粘度(すなわち誘導粘度)に増加する。粘度増加(誘導粘度)は栄養エマルション中の誘導粘度繊維系(以後に記載する。)から主として生じる。
【0032】
栄養エマルションは、室温粘度より高い誘導粘度によって更に定義される。誘導粘度は、少なくとも約350cpsを含み、400から20,000cpsを含み、および約800から約15,000cpsも含む最も典型的には約300cpsより高い。
【0033】
誘導粘度の測定は用いられる誘導粘度系のタイプに応じて異なる。ポリマー制御誘導粘度繊維系を含むエマルションに関して、誘導粘度は、エマルション250グラム(g)に細菌アルファ−アミラーゼ(Sigma)20(3)Lを添加し、Glass−Colミキサを用いて30分にわたり酵素処理エマルションを剪断し、その後、62スピンドルを有するブルックフィールド粘度計(モデルDV−II+)を用いて室温で粘度を測定することにより測定される。この誘導粘度測定は、摂取後および胃に入った後の生産物に関する予想誘導粘度を模擬するために設計されている。
【0034】
酸制御誘導粘度繊維系を含むエマルションに関して、誘導粘度は、エマルション250グラムに0.1N HCl溶液60mlを添加し、Glass−Colミキサを用いて30分にわたり酸性化エマルションを剪断し、その後、62スピンドルを有するブルックフィールド粘度計(モデルDVII+)を用いて、得られた粘度を室温で測定することにより測定される。
【0035】
他の誘導粘度繊維系に関しては、誘導粘度は、胃の状態を模擬するために適する他のいずれかの生体外方法によって測定してもよい。
【0036】
誘導粘度繊維系
本発明の栄養エマルションの実施形態は、摂取後のエマルションの粘度を増加させるいずれかの系を含む誘導粘度繊維系を含み、ここで、摂取後のエマルションの室温粘度または包装粘度および誘導粘度は本明細書において定義された範囲内である。
【0037】
安全および効果的な経口投与のために知られているか、または別段に適するいかなる誘導粘度繊維系も本明細書において用いるために適する。これらの幾つかの例は、U.S.Patent 7,183,266およびU.S.Patent 7,067,498ならびにU.S.Patent Publication 20020193344において記載されており、これらの特許文献の記載は参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書において用いるために適する他の組成物には、U.S.Patent 6,733,769(Ryanら)、U.S.Patent Publication 2005/0233045、U.S.Patent Publication 2005/0170059、U.S.Patent Publication 2005/0084592(Aldredら)において記載された組成物が挙げられる。
【0039】
A)ポリマー制御誘導粘度繊維系
誘導粘度繊維系は、U.S.Patent 7,067,498において記載されたポリマー制御誘導粘度繊維系などのポリマー制御誘導粘度繊維系であってもよく、この特許文献の記載は参照により本明細書に組み込まれる。このような系は、中性可溶性繊維と少なくとも10の重合度(DP)を有する部分加水分解澱粉とを含む。
【0040】
本明細書において用いられる「中性水溶性繊維」という用語は、室温で水に溶解され得るとともに中性pHで電荷を帯びていない繊維を意味する。
【0041】
本明細書における栄養エマルションは、ポリマー制御誘導粘度繊維系中の中性可溶性繊維対部分加水分解澱粉の重量比が0.7:5.0から1:5.0を含み、および1:5.0も含む0.35:5.0から1:5.0の範囲である。
【0042】
ポリマー制御誘導粘度繊維系を含有する栄養エマルション内で、中性可溶性繊維は、部分加水分解澱粉の存在によって分散した不溶性状態で維持される。これらなどの2種以上のポリマーが同じ溶液中に存在するとき、より可溶性でないポリマー(すなわち中性可溶性繊維)の溶解度は、より可溶性のポリマー(すなわち部分加水分解澱粉)の濃度が増加するにつれて減少する。しかし、部分加水分解澱粉が胃の中のアルファアミラーゼによって消化されるとき、胃内での部分加水分解澱粉のいっそうの存在しない状態は、摂取された組成物内の中性可溶性繊維が可溶化し、従って、胃内でゲルおよびより高い粘度の組成物を形成することを可能にする。胃の中で生じた粘性の塊は、胃が空であることを遅延させ、グルコース吸収を遅くするか、または遅延させる。
【0043】
本明細書におけるポリマー制御誘導粘度繊維系の中で用いるための中性可溶性繊維の非限定的な例には、グアールガム、ペクチン、ローカストビーンガム、メチルセルロース、ベータグルカン、グルコマンナン、コンニャク粉末およびこれらの組合せが挙げられる。グルコマンナン繊維、グアールガムおよびこれらの組合せが好ましい。これらの中性可溶性繊維の濃度は、典型的には、栄養エマルションの0.55から3.0重量%を含み、および0.65から1.5重量%も含む少なくとも0.4重量%である。
【0044】
この特定の誘導粘度繊維系の中で用いるために適する部分加水分解澱粉には、少なくとも約20を含み、約40から約250も含み、および約60から120も含む少なくとも10の平均重合度を有するとともに経口栄養製品の中で用いるために適する部分加水分解澱粉が挙げられる。この文脈において、重合度(DP)は、分子中で接合されたグルコース単位または単糖単位の数である。部分加水分解澱粉の濃度は、典型的には、栄養エマルションの3から20重量%を含み、および3.5から6重量%も含む少なくとも2重量%である。
【0045】
本明細書において用いるために適する幾つかの部分加水分解澱粉の非限定的な例には、酸加水分解、酵素加水分解またはこの両方によって得られる部分加水分解澱粉が挙げられる。DP100のマルトデキストリンを含む40から250のDPを有する部分加水分解澱粉ならびにイヌリン、加水分解グアールガム、アラビアゴムおよびこれらの組合せなどの適する他の多糖は、本明細書において用いるために最も典型的である。
【0046】
部分加水分解澱粉は、DP値でなくデキストロース当量(DE)の観点からも特徴付けてもよく、ここで、部分加水分解澱粉は、1から8を含む10未満のDEを有する。デキストロース当量(DE)は、デキストロース標準と比較してマルトデキストリンまたは他の多糖の平均還元力を表す従来の指標である。DE値は、式[DE=100+DP](式中、DPはマルトデキストリンまたは他の材料の重合度、すなわち、多糖中の単糖単位の数である。)から誘導される。参考のため、グルコース(デキストロース)は100のDEを有し、澱粉は、ほぼ零のDEを有する。
【0047】
本明細書における誘導粘度繊維系は、中性可溶性繊維がグルコマンナンまたはコンニャク粉末であり、部分加水分解澱粉が1,000から50,000ダルトンの分子量を有するものである実施形態を含む。
【0048】
B)酸制御誘導粘度繊維系
本明細書において用いるための誘導粘度繊維系には、U.S.Patent Publication 20020193344において記載されたものなどの酸制御誘導粘度繊維系が挙げられ、この特許文献の記載は参照により本明細書に組み込まれる。このような系は、水不溶性酸可溶性多価カチオン源と併せて可溶性アニオン繊維を含んでもよい。
【0049】
本明細書において用いられる「アニオン可溶性繊維」という用語は、室温で水に溶解させた後に負電荷を帯びる水溶性繊維を意味する。
【0050】
「水不溶性酸可溶性多価カチオン」という用語は、中性pHで水溶性でなく、酸と反応してカチオンを放出する塩を意味する。水に不溶性または実質的に不溶性および酸に可溶性としてMerck Index、第10版に記載された多価カチオンは、適する塩の例である。
【0051】
酸制御誘導粘度繊維系の一部として、多価カチオンは栄養エマルションに不溶性である。摂取後および胃に入った後、酸可溶性多価カチオンは、胃の酸性環境の中で可溶化し、解離する。その後、解離したカチオンは、アニオン可溶性繊維と反応し、アニオン可溶性繊維を架橋させる。その後、アニオン可溶性繊維は、胃の中で粘性ゲルまたは粘性塊を形成する。得られた粘性塊は、胃が空になることを遅延させ、グルコース吸収を遅くするか、または遅延させる。
【0052】
これらの酸制御誘導粘度繊維系は、水不溶性酸可溶性多価カチオン源が、栄養エマルションの(カチオンの)300から4000重量ppmを含み、および400から1000重量ppmも含む200から9000重量ppmに相当する実施形態を含む。
【0053】
誘導粘度繊維系の中で用いるために適する水不溶性酸可溶性多価カチオン源の非限定的な例には、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、モリブデン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、糖酸カルシウム、フッ化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、三塩基性リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、亜セレン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、硫化マグネシウムおよびこれらの組合せが幾つかの例であるマグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、マンガン、モリブデン、銅または亜鉛の一切の水溶性酸可溶性塩が挙げられる。炭酸カルシウムおよび/または三リン酸カルシウムが好ましい。
【0054】
従って、栄養エマルションは、一切の水溶性多価カチオンも最終栄養製品中に別段に可溶性にされる一切のカチオンも実質的に含まなくてもよい。この文脈において、実質的に含まないという用語は、栄養エマルションが、水溶性または製品可溶性の多価カチオン零重量%を含む0.2重量%未満を含有してもよいことを意味する。
【0055】
これらの酸制御誘導粘度繊維系は、可溶性アニオン繊維が、栄養エマルションの約0.4から約3重量%を含み、および約0.8から約1.5重量%も含む約0.2から約5重量%に相当する実施形態を含む。誘導粘度繊維系の中で用いるために適する可溶性アニオン繊維の非限定的な例には、アルギン酸塩、低メトキシペクチン、カラゲナン、キサンタン、ゲランガムおよびこれらの組合せが挙げられる。アルギン酸塩が特に有用である。
【0056】
V−複合体
本発明の栄養エマルションの実施形態は、少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロースと併せて食品グレード界面活性剤を含むV−複合体の存在によって特徴付けてもよい。本明細書において記載された処理方法に従うような製造プロセスの前または製造プロセス中にV−複合体を形成してもよい。
【0057】
本明細書において用いられる「V−複合体」という用語は、別段に指定がない限り、脂肪を実質的に含まない組合せによって形成された炭水化物−界面活性剤複合体を意味し、食品グレード界面活性剤と、少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロース(すなわち、α(1,4)連結グルコースポリマー)とを含む。水性液中で、選択されたグルコースポリマーは疎水性コアを有する左手6−残留ラセンを形成する。適切な処理条件下で、この疎水性コアは食品グレード界面活性剤の疎水性部分を閉じ込めて、特異なV−複合体X線回折パターンを有する炭水化物−界面活性剤複合体を形成する。複合体のこのタイプを本明細書においてV−複合体と呼ぶ。
【0058】
栄養エマルションのV−複合体の存在を評価してもよい。これは、生産物が本明細書において記載された通り冷蔵または冷却されるときに粘度変化を測定することにより間接的に、および/またはV−複合体の存在について従来のX線回折法によって生産物を評価することにより行ってもよい。このようなX線回折法は、例えば、J−L JaneおよびRobyt,J(1984年)Carbohydrate Research132:105、Journal of Rheology−−1988年5月−−42巻,3版,pp.507−525 Mercier,C.,R.Charbonniere,J.GrebautおよびJ.F.de La Gueriviereによって記載されている。
【0059】
栄養エマルションの中にV−複合体を含めるか、または形成するかは、エマルションの得られた流動学的分布に影響を及ぼす。エマルションの水相中にV−複合体を入れた栄養エマルションは、室温(20℃)で比較的低い粘度を有するが、深冷したとき、温度低下が水相内でのV−複合体の形成を促進するにつれて大幅により高い粘度を有し、その後、これは、粘度とクリーム様の口あたりの両方をエマルションに付与する。製造中のより低い粘度は、処理または滅菌の低下温度を見込んでいる。これは、製造コストを低減し得るとともに最終製品の中の望ましくないMalliard反応生成物の形成の速度または程度を減少させる。
【0060】
栄養エマルション中のV−複合体は、摂取されたときにクリーム様の口あたりを提供する。この文脈において、「クリーム様」という用語は、より高い脂肪含有率を有する類似の栄養エマルションの口あたりに似た口あたりを生産物が有することを意味する。従って、栄養エマルションは、低脂肪配合物として配合されたときに特に有用である。この理由は、V−複合体が、エマルション中の低い脂肪含有率に一般に関連した水様の口あたりを補償するからである。
【0061】
V−複合体は、本明細書において記載された方法によって栄養エマルション内に形成してもよい。この方法は、典型的には、エマルションの水相の一部または全部を形成するために後で用いられる、脂肪を実質的に含まない別個の水性スラリー中でポリデキストロースと食品グレード界面活性剤を組み合わせることを含む。従って、選択された食品グレード界面活性剤およびポリデキストロースは、水性スラリー全体を通して食品グレード界面活性剤を溶融し分散させる条件下で、処理中に水性スラリー中に分散させてもよく、その後、他の脂肪原料および蛋白質原料と組合せ、均質化して、栄養エマルションを形成する。
【0062】
しかし、特にエマルション中の油成分を乳化するのを助けるために、栄養エマルションが水相中に食品グレード界面活性剤に加えて他の界面活性剤を含有してもよいが、これらの油相界面活性剤が本明細書において記載された通りポリデキストロースと共に所望のV−複合体を形成しないことは留意されるべきである。栄養エマルションに添加された油ブレンドは、典型的には、油の1から6重量%の界面活性剤を含有する。
【0063】
本明細書において用いられる「脂肪を実質的に含まない」という用語は、言及された材料である栄養エマルションの水相または栄養エマルションの調製において用いられる水性スラリーのいずれかが、脂肪0.05重量%未満を含み、および零重量%も含む約0.1重量%未満を含有することを意味する。しかし、このような除外が、アシルグリセロールの場合に脂肪とみなされ得ない食品グレード界面活性剤に適用されないことは理解される。
【0064】
食品グレード界面活性剤と選択された炭水化物とを含む水性スラリーは典型的には加熱して界面活性剤を溶融させ、界面活性剤と選択された炭水化物を分散または溶解させるために十分に混合して、よってこのような原料の相互作用を促進して、界面活性剤と選択された炭水化物から所望のV−複合体を形成する。その後、所望の栄養エマルションを製造するために従来の処理工程または別段に既知の処理工程に従い、得られたV−複合体スラリーを他の原料と共に添加してもよい。水性スラリーは、最も典型的には、界面活性剤の融点より高い温度に加熱し、この熱は、添加された加熱炭水化物混合物の形態を取って界面活性剤に添加してもよい。その後、新たに形成された水性スラリー中で界面活性剤を溶融させる。
【0065】
栄養エマルションを後で冷却または深冷した後に摂取するとき、条件はV−複合体の更なる形成に好都合であり、これは、製品粘度の驚くべき増加およびクリーム様の口あたりをもたらす。得られたV−複合体が、唾液酵素によって消化され得る本質的に小さい粒子であるので、V−複合体は、(別段に薄い水様の口あたりをもたらすはずの)栄養エマルションが比較的低い脂肪レベルを含有するときでさえも、豊富な水中油形エマルション、例えば、牛乳系エマルションまたは他の脂肪系エマルションのこれに似た濃厚でクリーム様の口あたりを付与する。
【0066】
しかし、本発明の栄養エマルションの実施形態は、食品グレード界面活性剤とポリデキストロースとを単に含み、エマルションの水相中で後者の2成分を組み合わせていないか、または当該水相中にV−複合体を別段に形成していない先行技術の多くの組成物とは異なっている。換言すると、組成物の中にこれらの2種の原料を単に含めるのは、2種の原料を栄養エマルションの水相内で組み合わせないか、または栄養エマルションの水相内で別段に複合しない限り、所望の粘度利益を達成するのに十分ではない。
【0067】
水相またはV−複合体のポリデキストロース成分は、約20から約400を含み、約40から約200も含み、および約60から約100も含む少なくとも約10の平均重合度を有する。本明細書の本発明を定義する目的のために、「重合度」および「平均重合度」という用語は、平均重合度値を意味するために互換可能に用いられる。重合度(DP)は、ポリマー中のグルコース単位すなわちモノマー単位の数を意味する技術公認用語である。
【0068】
本明細書において用いるために適するポリデキストロースは、経口栄養製品の中で用いるために安全でもある、必須の重合度を有するいかなるグルコースポリマーも含んでもよい。マルトデキストリンおよび澱粉が特に有用である。
【0069】
本明細書において用いるために適するマルトデキストリンは、経口栄養製品の中で用いるために安全であるとともに必須のDP値も有するマルトデキストリンである。マルトデキストリンの非限定的な例には、すべてGrain Processing Corporation(Muscatine,Iowa,USA)から入手できるMaltrin(登録商標)M040(DE範囲4から7)、Maltrin(登録商標)M050(DE範囲4から7)、Maltrin(登録商標)M070(DE範囲6から9)、Maltrin(登録商標)M440(DE範囲4から7)が挙げられる。この文脈において、DEはマルトデキストリンのデキストロース当量を意味する。DE値は、式DP=100/DEに従うDP値と相関関係にある。
【0070】
V−複合体を形成する際に用いるために適する澱粉は、常用の澱粉;、冷水可溶性澱粉、プレゼラチン化澱粉または酸希薄化澱粉などの改質澱粉を含んでもよい。
【0071】
本明細書において用いるための食品グレード界面活性剤には、経口栄養剤の中で用いるために適するとともに少なくとも1つの疎水性部分、典型的には炭化水素の炭素を含む界面活性剤が挙げられる。このような界面活性剤の非限定的な例には、12から24個の炭素原子を含み、および18から22個の炭素原子も含む12個以上の炭素原子を有する1種以上の脂肪酸のモノアシルグリセロールエステルおよびジアシルグリセロールエステルが挙げられる。これらの非限定的な特定の例には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、ドコサヘキサン酸およびベヘン酸が挙げられる。これらのアシルグリセロールおよびアシルグリセロールを調製する方法は配合技術において周知である。これらのすべては、本発明の栄養エマルションの実施形態および方法において用いるための食品グレード界面活性剤の調製に際して本明細書において用いてもよい。
【0072】
適するアシルグリセロールの非限定的な特定の例には、Myverol(登録商標)18−06モノアシルグリセロール(水素添加大豆油からの蒸溜モノグリセリド−Foodpro Co.,(Dubai,United Arab Emirates))、Dimodan SK−AおよびDimodan R/D K−A(Danisco)ならびにBFP65PLM(American Ingredients)が挙げられる。本明細書において用いるために適する他の食品グレード界面活性剤の非限定的な特定の例には、ナトリウムステアロイル−2ラクチレート(SSL)、スクロースエステル、ジアセチル酒石酸エステルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0073】
適する食品グレード界面活性剤の非限定的な他の例は、U.S.Patent 5,645,856に記載されており、この特許文献の記載は参照により本明細書に組み込まれる。このような界面活性剤の非限定的な例には、グリセリルモノカプリラート/グリセリルジカプリラート、グリセリルモノ−ジ−カプリラート/カプラート、グリセリルモノカプリラート、グリセリルモノステアラート、グリセリルモノリシノレアート/グリセリルジリシノレアート、グリセリルカプリラート/カプラート、グリセリルモノオレアート、グリセリルジラウラート、グリセリルモノオレアート、ヒマワリ油からの蒸溜モノグリセリドおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0074】
適する他の食品グレード界面活性剤には、脂肪酸のモノグリセリドおよび/またはジグリセリドの酢酸エステル、コハク酸エステル、乳酸エステル、クエン酸エステル、および/または酒石酸エステル、例えば、蒸溜アセチル化モノグリセリド、カプリル/カプリンジグリセリルスクシナート、モノスクシニル化/ジスクシニル化モノグリセリド、グリセリルステアラートシトラート、グリセリルモノステアラート/シトラート/ラクテート、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0075】
栄養エマルション中で用いるためのアシルグリセロールまたは他の食品グレード界面活性剤の量は、エマルションの水相内にV−複合体を形成するのに十分であるべきである。このような量は、栄養エマルションの約0.1から約5重量%を含み、約0.2から約1重量%も含む少なくとも約0.003重量%を含んでもよい。しかし、栄養エマルションが、栄養エマルションまたはこの成分のための乳化剤としてV−複合体を形成する以外の目的のために追加の食品グレード界面活性剤を更に含んでもよいことは留意されるべきである。
【0076】
栄養エマルション中で用いるために選択されたポリデキストロースの量は、エマルションの水相内にV−複合体を形成するのに十分であるべきである。このような量は、栄養エマルションの約0.75から約20重量%を含み、約1から約5重量%も含み、および約1.5から約3.5重量%も含む少なくとも約0.5重量%を含んでもよい。しかし、栄養エマルションが、約10未満の平均DP値を有するものおよび約10から約400のDP値を有するものを含む約10を上回るDP値を有するものを含む、追加の澱粉、マルトデキストリンまたは他の炭水化物を更に含んでもよいことは留意されるべきである。
【0077】
形成された複合体の選択されたポリデキストロース対食品グレード界面活性剤成分の得られた重量比は、V−複合体の中の選択された炭水化物および界面活性剤を含む、選択された配合物に応じて異なってもよい。このような比は、最も典型的には、約20:1から約5:1を含み、および約10:1から約6.1も含む約50:1までの範囲である。
【0078】
多量養素
本発明の栄養エマルションの実施形態は、脂肪多量養素と蛋白質多量養素と炭水化物多量養素とを含み、すべてが、水相のポリデキストロースおよび食品グレード界面活性剤成分、すなわちV−複合体ならびに誘導粘度繊維系に加えてであるか、または水相のポリデキストロースおよび食品グレード界面活性剤成分、すなわちV−複合体ならびに誘導粘度繊維系を含み、すべてが本明細書において記載された通りである。経口栄養製品の中で用いるために知られているか、または経口栄養製品の中で用いるために別段に適するこのような栄養素のいかなる供給源も、本明細書において用いるために適する。但し、このような栄養素も配合物の中の選択された他の原料に適合することを条件とする。
【0079】
各多量養素の濃度または量は然るべきユーザーの栄養ニーズに応じて異なり得るが、このような濃度および量は、最も典型的には、以下の例示範囲の1つ内に収まる(ポリデキストロースおよび食品グレード界面活性剤の成分すなわちV−複合体を含めて)。
【0080】
【表1】

本明細書において用いるために適する脂肪源の非限定的な例には、ヤシ油、精留ヤシ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ベニバナ油、高オレインベニバナ油、MCT油(中鎖トリグリセリド)、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、パーム油およびパーム核油、パームオレイン油、キャノーラ油、魚油、綿実油およびこれらの組合せを挙げてもよい。
【0081】
本明細書において用いるために適する炭水化物源の非限定的な例には、加水分解澱粉、加工澱粉、加水分解トウモロコシ澱粉または加工トウモロコシ澱粉、グルコースポリマー、トウモロコシシロップ、トウモロコシシロップ固体、米由来炭水化物、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトーストウモロコシシロップ、非消化オリゴ糖(例えば、フルクトオリゴ糖)、蜂蜜、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリトリトール、ソルビトール)およびこれらの組合せを挙げてもよい。
【0082】
本明細書において用いるために適する蛋白質源には、加水分解蛋白質、部分加水分解蛋白質、非加水分解蛋白質、または牛乳(例えば、カゼイン、ホエー)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、米、トウモロコシ)、植物(例えば、大豆)などの知られている一切の源、または別段に適する源から誘導され得る蛋白質源、もしくはこれらの組合せが挙げられる。このような蛋白質の非限定的な例には、乳蛋白質分離株、カゼイン蛋白質分離株、乳蛋白質濃縮物、全牛乳、部分脱脂乳または完全脱脂乳、大豆蛋白質分離株などが挙げられる。
【0083】
栄養エマルションは、エマルション100ml当たり脂肪約0.5から約1.5グラムを含み、および約0.75から約1.1グラムも含む約0.1から約2.0グラムおよび/または全カロリーの百分率として脂肪約3%から約10%を含み、および約4%から約8%も含む約1%から約20%を含む低脂肪エマルションとしても配合してもよい。
【0084】
栄養エマルションは、エマルション240ml当たり約75から約170kcalを含み、および約99から約140kcalも含む約50から約200kcalを含む低カロリー製品としても配合してもよい。
【0085】
任意の原料
本発明の栄養エマルションの実施形態は、生産物の物理的特性、化学的特性、美的特性または加工特性を改良できるか、または目標集団において用いられたとき、医薬的栄養成分または追加の栄養成分として機能できる任意の他の成分を更に含んでもよい。多くのこのような任意の原料は、他の栄養製品の中で用いるために知られているか、または他の栄養製品の中で用いるために別段に適し、本明細書における組成物の中でも用いてもよい。但し、このような任意の原料が安全であり、経口投与のために効果的であり、選択された製品形態の中で必須原料および他の原料に適合することを条件とする。
【0086】
このような任意の原料の非限定的な例には、保存剤、酸化防止剤、追加の他の乳化剤、緩衝剤、医薬品活性剤、本明細書において記載された追加の栄養素、人工甘味料を含む甘味料(例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース)、着色剤、芳香薬、増粘剤および安定剤などが挙げられる。
【0087】
本発明の栄養エマルションの実施形態は、多様な他のビタミンまたは関連栄養素のいずれかを更に含んでもよい。これらの非限定的な例には、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リオフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、カロテノイド、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、塩類およびこれらの誘導体ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0088】
栄養エマルションの実施形態は、多様な追加の他のミネラルのいずれかを更に含んでもよい。これらの非限定的な例には、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、セレン、塩化物およびこれらの組合せが挙げられる。
【0089】
製造
栄養エマルションは、製剤が規定水相またはV−複合体の形成のために本明細書において記載されたプロセス工程を含むべきであるか、または考慮するべきであることを除き、栄養エマルションを製造するための、最も典型的には、栄養エマルションまたは牛乳系エマルションを製造するためのいずれかの従来法または別段に知られた方法によって製造してもよい。
【0090】
最も典型的には、別々のスラリー2種以上を調製し、これらのうちの1種は、脂肪を実質的に含まないとともに、選択されたマルトデキストリンまたは澱粉と併せて食品グレード界面活性剤を含む水性炭水化物スラリー(水性スラリー)でなければならない。他のスラリーは、油中蛋白質スラリー(例えば、水性スラリー中の食品グレード界面活性剤に加えて蛋白質、油、乳化剤または界面活性剤)、水中蛋白質スラリー(例えば、蛋白質、水)および追加の炭水化物スラリーを含んでもよい。複数種のスラリーは、ブレンド槽の中で最後には共に組み合わされ、超高温処理に供され、均質化され、添加されたビタミンまたは任意の他の原料を注入され、適宜水で希釈される。その後、得られた栄養エマルションは無菌で包装してもよいか、またはレトルト安定包装に別段に充填してもよく、その後、レトルト滅菌に供してもよい。
【0091】
本発明の栄養エマルションの実施形態は、食品グレード界面活性剤およびポリグルコース、すなわちV−複合体をエマルションの水相に配合するように調製してもよい。これは、選択された製造方法の中に以下の工程を含めることによって本質的に実行してもよい:
(a)少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロースと食品グレード界面活性剤を組み合わせることにより脂肪を実質的に含まない水性スラリーを形成する工程、
(b)水性スラリーを脂肪および蛋白質と組合せ、均質化して、食品グレード界面活性剤約10から100重量%とポリデキストロース約10から100重量%とを含む水相を有する栄養エマルションであって、20℃で測定して約300cps未満の第1の粘度および前記第1の粘度より少なくとも50cps高い約0℃から約8℃の間で測定された第2の粘度を有する栄養エマルションを形成する工程。
【0092】
栄養エマルションの実施形態は、選択された製造方法の中に以下の工程を含めることによっても調製してもよい:
(a)少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロースと食品グレード界面活性剤を組み合わせることにより脂肪を実質的に含まない水性スラリーを形成する工程、
(b)水性スラリーを脂肪および蛋白質と組合せ、均質化して、最も典型的には、それぞれが約10から100重量%であるポリデキストロースと共に複合化された食品グレード界面活性剤少なくとも多少を含有するV−複合体を含む水相を有する栄養エマルションであって、20℃で測定して約300cps未満の第1の粘度および第1の粘度より少なくとも50cps高い約0℃から約8℃の間で測定された第2の粘度を有する栄養エマルションを形成する工程。
【0093】
V−複合体が内部で形成される水性スラリーに誘導粘度繊維系を全体的にまたは部分的に導入してもよい。V−複合体を形成する際に用いるためのポリグルコースは、誘導粘度系の少し加水分解された澱粉(例えば、選択されたDPを有するマルトデキストリン)の一部または全部を形成してもよい。
【0094】
上記方法の実施形態は、本明細書において記載された栄養エマルションの実施形態の種々の要素または特徴も含めるために改良してもよい。
【0095】
食品グレード界面活性剤を溶融し、ポリデキストロースを可溶化し、従って2種の原料を水性スラリー全体に分散させるのに十分に水性スラリーを加熱しつつ、または食品グレード界面活性剤を溶融し、ポリデキストロースを可溶化し、従って2種の原料を水性スラリー全体に分散させるのに十分な熱を水性スラリーに供給しつつ、製造方法は、典型的には物理的な剪断または混合を提供する工程を更に含む。
【0096】
方法の実施形態は、得られた栄養エマルションを適する容器内に包装する工程を更に含んでもよい。本方法は、包装された栄養エマルションをレトルト滅菌に供して、本明細書において定義された第1の粘度(包装粘度または室温粘度)および第2の粘度(深冷粘度)を有するレトルト包装された栄養エマルションを製造する工程も更に含んでもよい。レトルト滅菌は、典型的には包装された栄養液体の高温処理を含む、配合技術分野において当業者に公知のプロセス工程である。栄養エマルションはレトルト滅菌するのでなく無菌で包装してもよい。
【0097】
本発明の方法の実施形態は、以下の工程を更に含んでもよいか、または以下の工程を行うためのユーザーまたは消費者向けの取扱説明書を更に含んでもよい。ここで、このような工程は、1)使用の前に栄養エマルションまたは包装された栄養エマルションを冷却または冷蔵する工程、または2)20℃で測定して第1の粘度より高い、約100から約700cpsへの増加を含んでもよい、および約150cpsから約350cpsへの増加も含んでもよい少なくとも約50cpsだけエマルションの粘度を増加させるのに十分な温度に栄養エマルションまたはレトルト包装された栄養エマルションを冷却または冷蔵する工程を含んでもよい。所望の粘度増加を達成するために、栄養エマルションは、最も典型的には、約1℃から約6℃の温度を含んでもよい、および約2℃から約4℃の温度も含んでもよい、約0℃から約8℃の間に冷却される。
【0098】
室温における栄養エマルションより驚くべきほどに高い粘度を従って有する深冷された栄養エマルションは、典型的には、約120cpsから約600cpsを含み、約150cpsから約450cpsを含み、および約200cpsから約400cpsも含む少なくとも約120cpsの深冷粘度を有する。
【0099】
栄養エマルションを後で冷却または深冷した後に摂取するとき、条件はV−複合体の更なる形成または展開に好都合であり、これは、製品粘度の驚くべき増加およびクリーム様の口あたりをもたらす。得られたV−複合体が、唾液酵素によって消化され得る本質的に小さい粒子であるので、V−複合体は、栄養エマルション中で低脂肪レベルであり得るときでさえも、濃厚でクリーム様の口あたりを付与する。
【0100】
もちろん、本発明の精神および範囲から逸脱せずに本明細書に記載された方法以外の他の方法で本発明の実施形態を行ってもよい。従って、本実施形態は、すべての点で制限でなく例示として考えられるべきであり、すべての変更および均等物も本発明の記載内になる。
【0101】
(実施例1から3)
以下の実施例は、栄養エマルションを調製するために適する技術を含む本発明の栄養エマルションの特定の実施形態を例示している。各々は1000kgバッチを表している。実施例は、例示の目的のためのみで与えられており、本発明の多くの変形が本発明の精神および範囲から逸脱せずに可能であるので本発明の限定と解釈されるべきではない。
【0102】
【表2】


この栄養エマルション(約1000kg)を調製する際に、指定原料を組み合わせることにより脂肪ブレンドを別個に形成する。指定原料を組み合わせることにより水中蛋白質スラリーも別個に調製する。食品グレード界面活性剤を溶融するとともに炭水化物固体を溶解/分散させるのに十分な熱および剪断と併せて指定原料を組み合わせることにより水性スラリー(炭水化物スラリー)を別個の混合物として同様に形成する。
【0103】
その後、炭水化物スラリーを水中蛋白質スラリーに添加し、ブレンドpHを6.7から7.0に調節する。得られたブレンドに脂肪ブレンドを添加する。その後、得られた脂肪含有混合物をUHT温度(5秒にわたり295°F)で処理し、4000psiで均質化する。その後、ビタミン溶液のための原料を組合せ、45%KOHを用いてpHを6.5から7.5に調節する。その後、得られたビタミンブレンドを標準化で均質ブレンドに添加する。その後、最終ブレンドを包装し、個々の8oz.容器中に密封し、レトルトに供する。
【0104】
選択されたマルトデキストリン成分と共に複合化された食品グレード界面活性剤を含むV−複合体を有する水相の存在によって、または食品グレード界面活性剤少なくとも約10重量%およびポリデキストロース(マルトデキストリン)少なくとも約10重量%の水相内の存在によって、包装された栄養エマルションを特徴付ける。その後、使用の前に冷却または冷蔵する取扱説明書をレトルト包装された製品に貼り付ける。栄養エマルションを包装から取り出し、V−複合体の存在を試験する。
【0105】
得られたレトルト包装栄養エマルションの各々(実施例1から3)は、20から160cpsの間の20℃で測定された粘度を有する。各々を0℃から8℃の間に冷蔵し、各々は約220から約350cpsの間の深冷粘度に増加し、その後、これを深冷されたままで摂取する。深冷エマルションは濃厚でクリーム様の口あたりを有する。
【0106】
得られたレトルト包装栄養エマルションの各々は本明細書における粘度方法に従う誘導粘度を有し、誘導粘度は約600から10,000cpsの間である。一旦摂取されると、栄養エマルションは、約4から約8時間の間にわたり満腹の感覚を提供し、鈍い血糖応答も提供する。栄養エマルションは、糖尿病において血糖レベルを抑制するために用いられる。栄養エマルションは、食欲および体重増加を管理するのを助けるためにも用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪と蛋白質と炭水化物とを含む栄養エマルションであって、
(A)誘導粘度繊維系および
(B)エマルションの水相内に所在し、少なくとも約10の平均重合度を有するポリデキストロースと共に複合化された食品グレード界面活性剤を含むV−複合体
を含み、栄養エマルションが、約100cps未満の20℃での第1の粘度、前記第1の粘度より少なくとも約50cps高い0℃から8℃の温度での第2の粘度および少なくとも約300cpsの誘導粘度を有する栄養エマルション。
【請求項2】
エマルションが、全カロリーの百分率として、炭水化物10から85%と、脂肪10から85%と、蛋白質5から40%とを含む、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項3】
誘導粘度繊維系が、エマルションの重量による可溶性アニオン繊維源0.2から5%と、水不溶性酸可溶性多価カチオン200から9000ppmとを含む、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項4】
エマルションが、可溶性アニオン繊維0.4から3重量%と水不溶性酸可溶性多価カチオン源200から1000重量ppmとを含む、請求項3に記載の栄養エマルション。
【請求項5】
エマルションが、可溶性多価カチオンを実質的に含まない、請求項3に記載の栄養エマルション。
【請求項6】
可溶性アニオン繊維が、アルギン酸塩、低メトキシペクチン、カラゲナン、キサンタン、ゲランガムおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項3に記載の栄養エマルション。
【請求項7】
誘導粘度繊維系が、エマルションの重量による中性可溶性繊維少なくとも0.4%と、少なくとも約10の重合度を有する部分加水分解澱粉少なくとも2%とを含む、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項8】
エマルションが、中性可溶性繊維0.55から3.0重量%と部分加水分解澱粉2から6重量%とを含む、請求項7に記載の栄養エマルション。
【請求項9】
中性可溶性繊維が、グアールガム、高メトキシペクチン、ローカストビーンガム、メチルセルロース、ベータグルカン、グルコマンナン、コンニャク粉末およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項8に記載の栄養エマルション。
【請求項10】
部分加水分解澱粉が約40から約250の重合度を有する、請求項9に記載の栄養エマルション。
【請求項11】
エマルションが400から20,000cpsの誘導粘度を有する、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項12】
食品グレード界面活性剤がモノアシルグリセロールである、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項13】
ポリデキストロースがマルトデキストリンを含む、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項14】
V−複合体が、約20から約400の平均重合度を有するマルトデキストリンと併せてC12またはより高級のモノアシルグリセロールを含む、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項15】
栄養エマルションが、ポリデキストロース約1から約5重量%と、食品グレード界面活性剤約0.001から約5重量%とを含む、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項16】
栄養エマルションが、約50:1から約2:1のポリデキストロース対食品グレード界面活性剤の重量比を有する、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項17】
栄養エマルションが、約70cps未満の20℃での第1の粘度、および前記第1の粘度より約100から約350cps高い0℃から8℃の温度での第2の粘度を有する、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項18】
エマルションが、エマルション240ml当たり約50から約200kcalを提供する、請求項1に記載の栄養エマルション。
【請求項19】
エマルションが、エマルション240ml当たり約99から約170kcalを提供する、請求項1に記載の栄養エマルション。

【公表番号】特表2011−507526(P2011−507526A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539852(P2010−539852)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087595
【国際公開番号】WO2009/082680
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】