説明

炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価方法

【課題】炭素含有耐火物のスラグや溶鉄に対する耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性を高精度に評価する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】回転侵食炉内に内張りした炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いた間接的な加熱方法によって昇熱することで、昇熱中の炭素含有耐火物の酸化による損耗を抑制できる。また、ラジアントチューブを用いた加熱法により、炭素含有耐火物を均一に加熱できる。これにより、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性を高精度に評価できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素含有耐火物は、転炉や混銑車の内張り、溶鋼鍋及び溶銑鍋のスラグライン等に広く使用され、窯炉の長寿命化に貢献している。この材質は炭素による耐スラグ浸潤性と耐スポーリング性等の効果をあわせて、優れた耐用性を発揮しており、コスト削減を目的として、さらに高耐用化が望まれている。
これまで、実験室における耐火物の耐用性の評価方法としては、代表的なもので、例えば高周波誘導炉内張り法や回転侵食法が挙げられる。なかでも、回転侵食法は、実験設備が比較的安価で、準備の手間もかからず、さらに実験操作も複雑でないため、広く用いられている。
【0003】
回転侵食法は、鉄製のドラム内部に耐火物を内張りし、その内部でスラグや鉄を溶解させて耐火物と反応させる試験方法である。一般的には、適量の酸素及びプロパンの混合ガスをドラム内部で燃焼させ、その熱で耐火物表面の温度が所定の試験温度に調整される。このような回転侵食法によれば、試料形状が比較的小さくて済み、設備も簡易で、築炉と解体も容易に行うことができる。
【0004】
しかしながら、かかる回転侵食法は、雰囲気制御が困難で、火炎と共に大気を巻き込むことから、実炉の場合よりも耐火物の酸化による損傷が大きくなる傾向がある。特に、炭素含有耐火物では、それらが試料間の耐食性、耐摩耗性の相対的評価に及ぼす影響が極めて大きい。なお、酸素/プロパン比の変更で、ある程度燃焼ガス組成は制御できるものの、火炎と共に大気を巻き込むことは避けられない。
【0005】
これに対して、従来、回転侵食炉において、加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介し、この保護板により、火炎や火炎と共に巻き込まれる空気と炭素含有耐火物との接触を遮断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の構成では、保護板を用いることにより、炭素含有耐火物は所定の試験温度まで昇温する際の酸化による脱炭や表面の組織の脆弱化が抑制され、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性を高精度に評価することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−356085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記特許文献1に記載の構成では、保護板が溶融して消失した後に初めて炭素含有耐火物の表面がガス、スラグ及び溶鉄と接触するため、炭素含有耐火物の耐用性試験を開始可能な状態とするためには、保護板の溶融が必須である。
しかし、この保護板の溶融物が、炭素含有耐火物の耐用性の評価結果に多少の影響を与えることが明らかになった。
さらに、所定の試験温度まで昇温する際に、バーナーを用いて加熱しているため、炭素含有耐火物表面における温度のばらつきが大きいことが判明し、これが評価結果に影響を与えることが明らかになった。
【0008】
本発明の目的は、炭素含有耐火物の加熱昇温時の炭素の酸化を防止し、また、加熱源と炭素含有耐火物の接触を妨げる保護板の溶融に伴う初期の損耗の影響を排除し、さらに、炭素含有耐火物表面における温度のばらつきを極力小さくすることで、高精度な耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような点を鑑みて、ラジアントチューブにより間接的に炭素含有耐火物を所定の温度まで昇熱することで、昇温中の炭素の酸化損耗を抑制し、かつ、保護板設置による悪影響を取り除いた、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価方法を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 回転可能な容器内に内張りされた炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いて所定温度まで加熱した後、スラグ、溶鉄のいずれか一方または双方を該容器内に装入したのちに、該容器を回転させ、所定時間経過後の前記炭素含有耐火物の残厚、損耗面積のいずれか一方または双方を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐食性の評価方法。
(2) 回転可能な容器内に内張りされた炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いて所定温度まで加熱した後、摩耗媒体を該容器内に装入したのちに、該容器を回転させ、所定時間経過後の前記炭素含有耐火物の残厚、損耗面積のいずれか一方または双方を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐摩耗性の評価方法。
(3) 回転可能な容器内に内張りされた炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いて所定温度まで加熱した後、該容器を回転させながら、該容器内に燃焼ガスを吹き込み、所定時間経過後に、前記燃焼ガスの吹込みにより生成した前記炭素含有耐火物における脱炭層の厚み、脱炭部分の面積のいずれか一方または双方を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐酸化性の評価方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ラジアントチューブによる間接加熱により、炭素含有耐火物が直接、火炎や火炎と共に巻き込まれる空気と接触することがないため、昇温中の炭素含有耐火物の酸化による損耗を抑制できる。また、上記特許文献1に記載されたような保護板を使用せずに済むので、当該保護板の溶融物による評価結果への影響を排除することができる。さらに、炭素含有耐火物表面における温度のばらつきを極力小さくすることができる。したがって、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性を高精度に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は、炭素含有耐火物が回転可能な容器内に内張りされた試験炉を用いて、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価を行うに際し、ラジアントチューブを用いて所定温度まで間接加熱することで、高精度に評価できることを新たに見出した。以下に詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態において、評価対象となる炭素含有耐火物としては、例えば、C,Al−C,Al−SiC−C,MgO−C,Al−MgO−C,MgO−SiC−C,MgO−CaO−C,Al−SiO−SiC―Cなどが挙げられる。しかし、これに限定されず、本発明では、炭素を含有する耐火物であればいずれでもよい。また、定形耐火物あるいは不定形耐火物でもよい。
【0014】
ラジアントチューブは、主に雰囲気制御熱処理炉に用いられており、チューブ内で燃料を燃焼させて、発生した熱をチューブ表面から放射し、輻射熱で処理物を加熱する間接加熱方式を採っている。従って、直接加熱であるバーナーの様に、火炎や火炎と共に空気を巻き込むことなく、加熱することができる。
本実施形態におけるラジアントチューブとしては、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価を1000℃を超える高温域で実施可能とするために、金属チューブよりも、高温耐熱性、耐食性及び形状安定性(耐クリープ性)に優れ、均一な加熱ができるセラミックチューブを使用することが適切である。
具体的には、例えば、エクリプス社のエクリプスシリコンカーバイド(炭化珪素:SiC)シングルエンド型ラジアントチューブバーナや、東芝セラミックス(株)製CERASIC常圧焼結SiCセラミックスを用いたシングルエンド型セラミックラジアントチューブ、中外炉工業製CRB型コンセントリックラジアントチューブユニットなどを使用することができる。
【0015】
本実施形態では、炭素含有耐火物が内張りされた回転可能な容器(以降、回転侵食炉と記載することがある)内にラジアントチューブを差し込み、該チューブ内部に燃焼ガスを循環させる。この際に発生するラジアントチューブからの輻射熱によって、回転侵食炉内に内張りされた炭素含有耐火物の表面を、所定の温度まで間接的に加熱する。この時、ラジアントチューブ内を循環する燃焼ガスは外部と遮断されているので、内張りの炭素含有耐火物の表面が当該燃焼ガスに汚染されることがない。
なお、炭素含有耐火物を極力均一に加熱するために、ラジアントチューブは回転侵食炉の中央部に差し込むことが好ましい。
【0016】
その後、所定の試験温度まで炭素含有耐火物を加熱した後、スラグ、溶鉄のいずれか一方または双方を回転侵食炉内に装入し、この回転侵食炉を所定の回転速度で回転させることにより、侵食試験を実施する。そして、所定時間経過後の炭素含有耐火物の残厚、損耗面積のいずれか一方または双方を測定することで、炭素含有耐火物の耐食性を評価することができる。
【0017】
ここで、上記の所定の試験温度は、特に規定するものではないが、実炉を模擬しているため、通常は1000℃を超える温度に設定する。例えば、転炉を対象とした場合、1300〜1700℃に加熱することが好ましい。
また、スラグとしては、例えば、転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、脱炭スラグ、電炉スラグ等の製鋼スラグに加え、高炉スラグを用いても構わない。また、溶鉄とは、溶銑と溶鋼の総称を意味している。
【0018】
回転侵食炉の回転速度は、特に限定するものではないが、通常は0.5〜3rpm程度に設定する。ここで、当該回転速度が0.5rpmよりも遅い場合、炭素含有耐火物の摩耗量が小さく試験時間を長くすることが必要となる。また、当該回転速度が3rpmよりも速い場合、炭素含有耐火物の種類に関わらず摩耗量が大きくなるために、評価対象の試料間の相対的な比較が困難になる場合がある。したがって、回転侵食炉の回転速度は、上記の範囲とすることが好ましい。
評価条件の定量化を図るために、放射温度計で耐火物の表面温度を測定することによって、安定した評価を行うことができる。
【0019】
このようにして、回転侵食炉を所定時間回転させて侵食試験を行うものであり、この所定時間は特に規定するものではなく、評価対象とする設備の条件に整合させれば良い。例えば、転炉を対象とした場合、1チャージを20〜30分程度とし、これを複数回繰り返す様に設定することが良い。
その後、耐火物の残厚、損耗面積のいずれか一方または双方を測定することで、耐火物の耐食性を正確に評価することができる。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本第2実施形態は、上記の第1実施形態におけるスラグや溶鉄に代えて、摩耗媒体を用いることで、炭素含有耐火物の耐摩耗性を評価するものである。
【0021】
摩耗媒体としては、評価対象とする炭素含有耐火物を構成する主要な原材料よりも硬度が高い材料を使用することが好ましいが、その成分は特に限定するものではない。また、試験温度よりも、融点が400℃以上高く、試験温度付近で安定な材料を用いることが好ましい。具体的なものとしては、例えば、ジルコニアブロックやマグネシアの粗粒子などを使用することが好ましい。
【0022】
摩耗媒体の粒径は、特に限定するものではないが、通常は10〜100mmに設定する。ここで、当該粒径が10mm未満では、炭素含有耐火物に十分な摩擦力を加えることができず、試験時間を長くすることが必要となり、100mmを超えると、評価対象の炭素含有耐火物の種類に関わらず、摩耗量が大きくなるために、評価対象の試料間の相対的な比較が困難になる場合がある。したがって、摩耗媒体の粒径は、10〜100mmであることが好ましい。
【0023】
この第2実施形態では、上記第1実施形態と同様にして、試験条件に応じ、回転侵食炉内に内張りされた炭素含有耐火物の表面をラジアントチューブからの輻射熱によって、例えば1300〜1700℃に加熱する。
その後、上記の摩耗媒体を回転侵食炉内に装入し、この回転侵食炉を所定の回転速度で回転させることにより、摩耗性試験を実施する。そして、所定時間経過後の炭素含有耐火物の厚みまたは損耗面積を測定することにより、耐火物の耐摩耗性を正確に評価できる。
なお、この磨耗性試験時間についても、特に規定するものではなく、評価対象とする設備の条件に合わせて、適宜設定すれば良い。
【0024】
さらに、本発明の第3実施形態について説明する。
本第3実施形態は、上記第1実施形態におけるラジアントチューブを用いて、上記の回転侵食炉内に内張りされた炭素含有耐火物の耐酸化性を評価するものである。
【0025】
すなわち、上記ラジアントチューブを用いて、回転侵食炉内に内張りされた炭素含有耐火物を所定温度まで加熱した後、回転侵食炉を回転させながら、例えばバーナーにより燃焼ガスを吹き付けて炭素含有耐火物を所定時間加熱する。そして、この加熱により生成した炭素含有耐火物の脱炭層厚み、脱炭部分の面積のいずれか一方または双方を測定することで、炭素含有耐火物の耐酸化性を評価する。
ここで、炭素含有耐火物の脱炭層厚みとは、初期の厚みから試験後の非酸化物層の厚みを差し引いたものである。また、脱炭部分の面積とは、画像解析により、脱炭層の部分の面積を近似的に求めたものと定義する。
【0026】
以上の第1〜第3実施形態において、試験後は、回転侵食炉を解体し、炭素含有耐火物を取り出す。そして、耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価は、取り出した炭素含有耐火物試料の残寸(耐酸化性の場合は非酸化層厚み)を、元寸(試料切り出し加工後、すなわち昇温前の試料寸法)から差し引いて損耗量を求めることで行う。
耐摩耗性については、損耗量が大きく、試験後の形状が直線状であるとは限らないので、試験後の試料を2次元の画像として取り込み、損耗した部分の面積を求めることで評価しても良い。耐食性及び耐酸化性についても、損耗量が大きい場合は、損耗した部分の面積を求めることで評価しても良い。もちろん、損耗部分の体積を求めて比較、評価することも本発明の範囲に属する。
耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価における厚みの測定は複数点の平均値でも1点でも構わないが、10mm程度おきに測定した複数点の厚みの平均値を用いることが多い。
【0027】
以上の第1〜第3実施形態によれば、炭素含有耐火物の加熱昇温時に、ラジアントチューブを用いた間接加熱としていることで、炭素含有耐火物中の炭素の酸化を防止できる。また、ラジアントチューブと炭素含有耐火物の間に、従来のような保護板を設ける必要がないため、保護板の溶融に伴う初期の損耗の影響を排除できる。さらに、ラジアントチューブの間接加熱により、炭素含有耐火物表面における温度のばらつきを極力小さくすることができる。したがって、高精度な耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法を実現することができる。
【0028】
なお、上記第1〜第3実施形態における加熱時の回転侵食炉内の雰囲気としては、酸化性雰囲気、Ar、N、He、H、真空下などの非酸化性雰囲気が挙げられるが、これに限定することはない。すなわち、例えば空気、酸素の巻き込みも含めて耐火物が酸素と接触する可能性のある全ての加熱条件下でも適用可能である。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の一実施例を、Al−Cれんがを評価対象とした例で説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
評価対象としてのAl−Cれんがには、純度98質量%の電融アルミナクリンカーを90質量%,純度98質量%の鱗状黒鉛を7質量%含有し、フェノール樹脂をバインダーとして用い、金属Alを3質量%添加したものを用いた。なお、このAl−Cれんがは、転炉の内張り耐火物として広く用いられているものである。
このAl−Cれんがを、図1に示すように、断面台形の柱状(a=67mm,b=41mm,c=48mm,d=114mm)に切り出して評価試料(耐火物1)を作製した。
回転侵食炉には、図2に示すように、耐火物1を8枚組み合わせて筒状としたものを、炉内面に内張りして組み込んだ。それぞれの耐火物1には、A,B,C,D,E,F,G,Hと名称をつけた。この回転侵食炉の炉体の回転数は、以下に示すいずれの試験でも、2.5rpmとした。
【0031】
比較例1〜3では、図3に示すように、回転侵食炉における耐火物1の内側に直径150mm、厚さ2mmの中空の一般ガス配管用炭素鋼鋼管(保護板2)を組み込み、内部からバーナー3の燃焼ガスにより昇温させた。燃焼ガスとして体積比でプロパン1:酸素5のものを用いた。
【0032】
実施例1〜3では、図4に示すように、炉体内部にラジアントチューブ6を挿入し、内部から輻射熱により耐火物1の表面を加熱した。なお、回転侵食炉における耐火物1の内側には保護板2(図3参照)を組み込まずに、耐火物1を露出させた状態とした。ラジアントチューブ6には、東芝セラミックス(株)製CERASIC常圧焼結SiCセラミックスを用いたシングルエンド型セラミックラジアントチューブを使用した。
【0033】
実施例1および比較例1について、図5に基づいて具体的に説明する。
図5は、耐火物1の温度を1600℃で15分間安定させた後に、スラグによる侵食試験を実施し、侵食試験終了後のAl−Cれんがの損耗量を示したグラフである。
スラグの組成は、CaO=50.45質量%、SiO=16.85質量%、MgO=7質量%、Al=2質量%、MnO=3.5質量%、FeO=20.2質量%とした。
試験温度は1600℃、25分を1チャージとしてスラグ500gを入れ替え、合計6チャージ、2時間30分の試験を実施した。
スラグの入れ替えは、横型ドラムを傾転させ排出する方法で行った。
損耗量は、試験後に炉を解体し取り出したA〜Hの各耐火物1の残寸を、元寸(試料切り出し加工後、すなわち昇温前の試料寸法c:48mm)から差し引いて求めた。なお、上記残寸は、各耐火物1の長手方向で20mmおきに4箇所の厚み寸法を測定し、これらを平均した値である。
【0034】
その結果、図5に示すように、比較例1では、A〜Hの各耐火物1間で、大きな損耗量のばらつきが認められた。これは、昇温中に保護板2が溶出して析出したFeO及びFeがA〜Hの各耐火物1のC及びAlを侵食し、さらに、バーナー3の火炎の流れの非定常性に伴って炉内温度分布が経時変化したためと考えられる。
これに対して、ラジアントチューブ6を適用した実施例1では、A〜Hの各耐火物1間での損耗量のばらつきが、比較例1に比べて低減されていることが認められた。これは、保護板2を組み込んでいないため、FeO等による侵食の影響が無く、さらに、ラジアントチューブ6を用いた加熱により炉内温度をより精密にコントロールすることが可能になったためと考えられる。
以上より、ラジアントチューブ6を用いることで、回転侵食炉内に内張りした炭素含有耐火物の各部間における損耗量のばらつきを低減でき、高精度な耐食性試験を実施できることが分かった。
【0035】
実施例2および比較例2について、図6に基づいて具体的に説明する。
図6は、耐火物1の温度を1600℃で15分間安定させた後に、炉内に粒径30〜70mmに整粒化したジルコニアブロックを投入して摩耗試験を行い、試験終了後のAl−Cれんがの摩耗量を示したグラフである。
【0036】
比較例2では、比較例1と同様、図3に示すように、回転侵食炉における耐火物1の内側に保護板2を組み込み、その内部からバーナー3の燃焼により昇温させた。
これに対し、実施例2では、実施例1と同様、図4に示すように、炉体内部にラジアントチューブ6を挿入し、内部から輻射熱により耐火物1の表面を加熱した。
比較例2および実施例2のそれぞれにおいて、耐火物1を試験温度である1600℃まで加熱後、炉体内部に30〜70mmに整粒化されたジルコニアブロック100gを投入した。そして、ジルコニアブロックを25分を1チャージとして入れ替え、合計6チャージ、2時間30分の耐摩耗性の試験を実施した。
摩耗量は、試験後に炉を解体し取り出したA〜Hの各耐火物1の残寸を、元寸(試料切り出し加工後、すなわち昇温前の試料寸法c:48mm)から差し引いて求めた。なお、上記残寸は、各耐火物1の長手方向で10mmおきに8箇所の厚み寸法を測定し、これらを平均した値である。
【0037】
その結果、図6に示すように、比較例2では、A〜Hの各耐火物1間で、大きな磨耗量のばらつきが認められた。これは、昇温中に保護板2が溶出して析出したFeO及びFeがA〜Hの各耐火物1のC及びAlを侵食し、さらに、バーナー3の火炎の流れの非定常性に伴って炉内温度分布が経時変化したためと考えられる。
これに対して、ラジアントチューブ6を適用した実施例2では、A〜Hの各耐火物1間での磨耗量のばらつきが、比較例2に比べて大きく低減されていることが認められた。これは、保護板2を組み込んでいないため、FeO等による侵食の影響が無く、さらに、ラジアントチューブ6を用いた加熱により炉内温度をより精密にコントロールすることが可能になったためと考えられる。
以上より、ラジアントチューブ6を用いることで、回転侵食炉内に内張りした炭素含有耐火物の各部間における磨耗量のばらつきを低減でき、高精度な耐磨耗性試験を実施できることが分かった。
【0038】
実施例3および比較例3について、図7に基づいて具体的に説明する。
図7は、耐火物1の温度を1600℃で安定させた後に、バーナーにより燃焼ガスを3時間吹き込む酸化試験を行い、試験終了後のAl−Cれんがの脱炭層厚みを示したグラフである。
【0039】
比較例3では、比較例1と同様、図3に示すように、回転侵食炉における耐火物1の内側に保護板2を組み込み、その内部からバーナー3の燃焼により昇温させた。
実施例3では、実施例1と同様、図4に示すように、炉体内部にラジアントチューブ6を挿入し、内部から輻射熱により耐火物1の表面を加熱した。
脱炭層厚みは、試験後に炉を解体し取り出したA〜Hの各耐火物1の残寸(非酸化層厚み)を、元寸(試料切り出し加工後、すなわち昇温前の試料寸法c:48mm)から差し引いて求めた。なお、上記残寸は、各耐火物1の長手方向で10mmおきに8箇所の厚み寸法を測定し、これらを平均した値である。この脱炭層厚みが大きいほど、酸化量が多く、耐酸化性に劣ることを示している。
【0040】
その結果、図7に示すように、比較例3では、A〜Hの各耐火物1間で、大きな脱炭層厚みのばらつきが認められた。これは、昇温中に保護板2が溶出して析出したFeO及びFeがA〜Hの各耐火物1のC及びAlを侵食し、さらに、バーナー3の火炎の流れの非定常性に伴って炉内温度分布が経時変化したためと考えられる。
これに対して、ラジアントチューブ6を適用した実施例3では、A〜Hの各耐火物1間での脱炭層厚みのばらつきが、比較例3に比べて大きく低減されていることが認められた。これは、保護板2を組み込んでいないため、FeO等による侵食の影響が無く、さらに、ラジアントチューブ6を用いた加熱により炉内温度をより精密にコントロールすることが可能になったためと考えられる。
以上より、ラジアントチューブ6を用いることで、回転侵食炉内に内張りした炭素含有耐火物の各部間における脱炭層厚みのばらつきを低減でき、高精度な耐酸化性試験を実施できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例における評価試料の形状を示す模式図。
【図2】前記実施例における回転侵食炉内に内張りされた評価試料の外観を示す斜視図。
【図3】前記実施例における比較例1〜3で使用した回転侵食炉を模式的に示す側断面図。
【図4】前記実施例における実施例1〜3で使用した回転侵食炉を模式的に示す側断面図。
【図5】前記実施例における実施例1および比較例1による侵食試験後の、各Al−Cれんがの損耗量を示したグラフ。
【図6】前記実施例における実施例2および比較例2による磨耗試験後の、各Al−Cれんがの磨耗量を示したグラフ。
【図7】前記実施例における実施例3および比較例3による酸化試験後の、各Al−Cれんがの脱炭厚みを示したグラフ。
【符号の説明】
【0042】
1…耐火物
2…保護板
3…バーナー
4…スラグ
5…充填材
6…ラジアントチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な容器内に内張りされた炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いて所定温度まで加熱した後、
スラグ、溶鉄のいずれか一方または双方を該容器内に装入したのちに、該容器を回転させ、
所定時間経過後の前記炭素含有耐火物の残厚、損耗面積のいずれか一方または双方を測定する
ことを特徴とする炭素含有耐火物の耐食性の評価方法。
【請求項2】
回転可能な容器内に内張りされた炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いて所定温度まで加熱した後、
摩耗媒体を該容器内に装入したのちに、該容器を回転させ、
所定時間経過後の前記炭素含有耐火物の残厚、損耗面積のいずれか一方または双方を測定する
ことを特徴とする炭素含有耐火物の耐摩耗性の評価方法。
【請求項3】
回転可能な容器内に内張りされた炭素含有耐火物を、ラジアントチューブを用いて所定温度まで加熱した後、
該容器を回転させながら、該容器内に燃焼ガスを吹き込み、
所定時間経過後に、前記燃焼ガスの吹込みにより生成した前記炭素含有耐火物における脱炭層の厚み、脱炭部分の面積のいずれか一方または双方を測定する
ことを特徴とする炭素含有耐火物の耐酸化性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−298433(P2007−298433A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127322(P2006−127322)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】