説明

炭素系燃料のガス化システム

【課題】シフト反応器に供給する生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合のガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを提供する。
【解決手段】ガス化炉31で生成した生成ガス4中のCOをCOに転化させるシフト反応を行なう触媒の流動層を収容した流動層型のシフト反応器36をガス化炉31の下流側に設置し、ガス化炉31で生成した生成ガス4に含まれる未燃分及び流動層から飛散した触媒を回収する脱塵設備40をシフト反応器36の下流側に設置し、脱塵設備40によって回収された未燃分及び流動層から飛散した触媒を脱塵設備40からガス化炉31に供給する供給配管9bを配設し、シフト反応器36の内部に収容した触媒の流動層のレベルが一定となるように新触媒15をこのシフト反応器36の流動層に補充する新触媒補充手段をシフト反応器36に設置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系燃料をガス化し、生成ガス中のCOの一部と水蒸気を反応させて水素と二酸化炭素を主成分とする生成ガスを得る炭素系燃料のガス化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素系燃料をガス化し、得られた一酸化炭素(CO)と水素(H)を主成分とする生成ガスからメタノールや合成軽油を製造するためには、水素/一酸化炭素比は約2が望ましい。一方、炭素系燃料として石炭をガス化した場合の水素/一酸化炭素比は約0.4であり、調整が必要である。
【0003】
このために、一酸化炭素(CO)と水蒸気を反応させて二酸化炭素(CO)と水素(H)を得るシフト反応が用いられる。シフト反応は触媒を用いれば、約300℃の温度で反応を進めることができる。
【0004】
また、炭素系燃料をガス化して燃料として用いるガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電をする発電プラントにおいて、大気へのCO放出を抑制する場合にもシフト反応が用いられる。即ち、炭素系燃料から生成した生成ガスを燃料としてガスタービン燃焼器で燃焼させる前に水蒸気とともにシフト反応器に供給し、COとHを主成分とする前記生成ガスをCOとHを主成分とする生成ガスに変換して、この生成ガス中のCOをアミン吸収法などによって除去する方法が用いられている。
【0005】
このような炭素系燃料のガス化システムの技術は、例えば、特開平9−279163号公報に開示されている。前記特開平9−279163号公報に開示された技術では、生成ガスを湿式スクラバ(水洗塔)で脱塵した後にシフト反応させるシフト反応器を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−279163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特開平9−279163号公報に開示された炭素系燃料のガス化システムの技術では、ガス化炉の下流の水洗塔(スクラバ)において、生成ガス中の微粒子やハロゲン化合物を除去した後に、生成ガスをシフト反応器に供給しているために、シフト反応器の手前で生成ガスの温度を昇温し、さらにシフト反応に必要な水蒸気を供給する必要があった。
【0008】
水洗塔入口の生成ガスと水洗塔出口の生成ガスとを熱交換することによって水洗塔出口の生成ガス温度を上げることはできるが、そのようにすると熱損失が生じるので生成ガスを昇温する必要がある。
【0009】
また、水洗塔では生成ガスの温度が下がるので、水洗塔出口の生成ガス中の水蒸気量は水洗塔内のガス温度における飽和水蒸気量以上にはならず、よってシフト反応器入口で高温の水蒸気を供給する必要がある。この場合、水蒸気は伝熱管を用いる間接熱交換で別途製造する必要があることから、直接熱交換に比べて熱損失が大きく、また、間接熱交換に伝熱管が必要であることから、この伝熱管を有する熱交換器を設置することによって炭素系燃料のガス化システムの設備が複雑な構成となる。
【0010】
本発明の目的は、炭素系燃料のガス化システムにおいて、シフト反応させるシフト反応器に供給する炭素系燃料から生成した生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合に、生成ガスの加熱及び水蒸気の供給によるガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の炭素系燃料のガス化システムは、炭素系燃料を酸化剤によりガス化してCOとHを主成分とする生成ガスを製造するガス化炉を設置し、このガス化炉の内部であって生成ガスを製造する該ガス化炉内の下流側に位置し、生成ガスに液体の水を噴霧して水蒸気を生成する水供給部を設置し、前記ガス化炉で生成した生成ガスとCO及び水蒸気を混合させて生成ガス中のCOをCOに転化させるシフト反応を行なう触媒の流動層を内部に収容した流動層型のシフト反応器を前記ガス化炉の下流側に設置し、前記ガス化炉で生成した生成ガスに含まれる未燃分及び前記シフト反応器の流動層から飛散した触媒を回収する脱塵設備を前記シフト反応器の下流側に設置し、前記脱塵設備によって回収された生成ガスに含まれる未燃分及びシフト反応器の流動層から飛散した触媒を該脱塵設備からガス化炉に供給する供給配管を前記脱塵設備と前記ガス化炉との間に配設し、前記シフト反応器の内部に収容した触媒の流動層を形成する該流動層のレベルが一定となるように新触媒をこのシフト反応器の流動層に補充する新触媒補充手段を前記シフト反応器に設置したことを特徴とする。
【0012】
また 本発明の炭素系燃料のガス化システムは、炭素系燃料を酸化剤によりガス化してCOとHを主成分とする生成ガスを製造するガス化炉を設置し、このガス化炉の内部であって生成ガスを製造する該ガス化炉内の下流側に位置し、生成ガスに液体の水を噴霧して水蒸気を生成する水供給部を設置し、前記ガス化炉で生成した生成ガスとCO及び水蒸気を混合させて生成ガス中のCOをCOに転化させるシフト反応を行なう触媒の流動層を内部に収容した流動層型のシフト反応器を前記ガス化炉の下流側に設置し、前記ガス化炉で生成した生成ガスに含まれる未燃分及び前記シフト反応器の流動層から飛散した触媒を回収する脱塵設備を前記シフト反応器の下流側に設置し、前記脱塵設備によって回収された生成ガスに含まれる未燃分及びシフト反応器の流動層から飛散した触媒を該脱塵設備からガス化炉に供給する供給配管を前記脱塵設備と前記ガス化炉との間に配設し、前記シフト反応器の内部に収容した触媒の流動層を形成する該流動層のレベルが一定となるように新触媒をこのシフト反応器の流動層に補充する新触媒補充手段を前記シフト反応器に設置し、前記シフト反応器のシフト反応を制御する制御装置を設置し、前記制御装置は、
前記シフト反応器のシフト反応によって生成ガス中のCOを水蒸気と反応させてCOに転化するCO転化率を設定するCO転化率目標設定器と、前記CO転化率目標設定器で設定されたCO転化率の設定値を前記シフト反応器で得るために必要な水蒸気濃度を演算し、この水蒸気濃度を得るために必要なガス化炉に供給する水の量を演算する必要水蒸気量計算器と、前記シフト反応器の入口側及び出口側に設置されたガス組成計でそれぞれ測定された生成ガス中のガス組成に基づいてシフト反応器による実際のCO転化率を演算するCO転化率計算器と、前記必要水蒸気量計算器で求めたガス化炉に供給する水の量を、前記CO転化率計算器で演算した実際のCO転化率の値と前記CO転化率目標設定器で設定したCO転化率の設定値に基づいて補正してガス化炉の水供給部に供給する水の量を演算し、前記ガス化炉の水供給部に供給する水の量を調節する調節弁を制御する弁開度計算器と、を備えて構成したことを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素系燃料のガス化システムにおいて、シフト反応させるシフト反応器に供給する炭素系燃料から生成した生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合に、生成ガスの加熱及び水蒸気の供給によるガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例である炭素系燃料ガス化システムの構成を示した概略系統図。
【図2】本発明の第2実施例である炭素系燃料ガス化システムの触媒製造部分を示した概略系統図。
【図3】本発明の第3実施例である炭素系燃料ガス化システムの制御装置の構成を示した概略構成図。
【図4】本発明の第4実施例である炭素系燃料ガス化システムの流動層型のシフト反応器を示した部分図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例である炭素系燃料ガス化システムについて図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1実施例である炭素系燃料ガス化システムの概略構成について図1を用いて説明する。
【0017】
図1に示した炭素系燃料ガス化システムにおいて、前記炭素系燃料ガス化システムは、炭素系燃料をガス化して生成ガス4を生成するガス化炉31と、前記ガス化炉31の下流側に設置され、該ガス化炉31で生成した生成ガス4中のCOを触媒下で水蒸気と反応させてCOとHを得るシフト反応を行うシフト反応器36と、前記シフト反応器36の下流側に設置され、該シフト反応器36を経た生成ガス6に含まれる未燃分及び該シフト反応器36に収容した触媒の流動層91から飛散した触媒を回収して生成ガス6から脱塵する脱塵設備40を備えている。
【0018】
前記ガス化炉31で炭素系燃料をガス化するには、炭素系燃料1と酸化剤2を前記ガス化炉31に供給し、このガス化炉31によって炭素系燃料をガス化してCOとHを主成分とする生成ガス4を得る。
【0019】
前記ガス化炉1の下流に位置する水供給部32では、液体の水3を噴霧し、ガス化炉1で生成した生成ガス4と直接熱交換することにより、生成ガス4中の水蒸気濃度を高める。そして水供給部32で得られた水蒸気濃度を高めた生成ガス4は、ガス化炉1の下流に設置されたシフト反応器36に供給する。
【0020】
前記シフト反応器36には流動層型を用い、シフト反応器36の内部に収容するシフト反応用の触媒は、ガス化炉31から排出されるスラグ5を微粉砕してアルカリ水溶液と混合し、加熱処理して製造したものを流動層91として用いる。
【0021】
このシフト反応器36でのシフト反応によって、生成ガス4中のCOが触媒下でシフト反応器36の水供給部32に供給された水蒸気(HO)と反応して、COとHを主成分とする生成ガス6が得られる。
【0022】
シフト反応器36におけるシフト反応は発熱反応であり、シフト反応器36の内部で生成ガス4の温度が上昇する。生成ガス4の温度が大きく上昇すると、シフト反応器36に収容した触媒の劣化が加速するので、生成ガス4から熱を回収する必要がある。
【0023】
そこで、シフト反応器36の内部に冷却用の水蒸気8、或いは冷却水を流す伝熱管37を設置して、シフト反応器36内の温度が規定値以下となるように水蒸気あるいは冷却水を供給する。
【0024】
シフト反応器36の出口から流下する生成ガス6は、シフト反応器36から飛散した触媒と未燃分を含んでいる。これらはシフト反応器36の下流側に設置された機器の安定運転を阻害する要因となることから、シフト反応器36の下流側に脱塵設備40を設置して回収、或いは除去する。
【0025】
尚、脱塵設備40で回収されたもののうち未燃分の微粒子9は、再度、ガス化炉31へ供給するように構成されている。
【0026】
脱塵設備40で回収された未燃分の微粒子9は炭素を含むことから、燃料の利用効率向上の観点からも、回収してガス化炉31へ供給することが望ましい。
【0027】
前記脱塵設備40は、比較的粒径の大きい粒子を除去するサイクロン41と、比較的粒径の小さい粒子を除去するフィルタ42とを組み合せて構成することで、高い捕集効率を実現することが可能である。
【0028】
脱塵設備40の圧力はガス化炉31の圧力に比べて低くなっており、脱塵設備40で回収された未燃分の微粒子9をガス化炉31に供給するためには、該脱塵設備40の最下流側に設置されて微粒子9を貯蔵するフィードホッパ45の圧力をガス化炉31よりも高い圧力に設定して運用する。
【0029】
そこで、サイクロン41の下に設置した中間ホッパ43と、フィルタ42の下に設置した中間ホッパ44は、サイクロン41及びフィルタ42から微粒子9を受け入れる時は脱塵設備40と同圧になるように設定し、フィードホッパ45に微粒子9を充填する場合にはフィードホッパ45と同圧になるように設定して運用する。
【0030】
炭素系燃料ガス化システムには主要機器の運転制御を行う制御装置100が備えられている。
【0031】
ところで、前記シフト反応器36として、流動層型のシフト反応器を採用した場合には、このシフト反応器の内部に収容した流動層からシフト触媒がシフト反応器の外部に少しずつ飛散するので、その分、新触媒15を前記シフト反応器の流動層に補充する必要がある。そこで、流動層型のシフト反応器における流動層にはレベル計を設置し、流動層レベルが一定となるように新触媒を補充するように運用する。
【0032】
本実施例のガス化システムで生成され、前記脱塵設備40で脱塵されたHとCOを主成分とする生成ガス7は、メタノールやアンモニア、合成軽油等の原料とすることができる。また、前記生成ガス7中のCOを除去した後に石炭ガス化複合発電(IGCC)の燃料とする二酸化炭素回収型IGCCへの適用も可能である。
【0033】
本実施例によれば、炭素系燃料のガス化システムにおいて、シフト反応させるシフト反応器に供給する炭素系燃料から生成した生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合に、生成ガスの加熱及び水蒸気の供給によるガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを実現することができる。
【実施例2】
【0034】
次に本発明の第2実施例である炭素系燃料ガス化システムについて図2に示した触媒製造部分を用いて説明する。図2に示した本実施例の炭素系燃料ガス化システムは図1に示した第1実施例の炭素系燃料ガス化システムと基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0035】
図2に示した本実施例の炭素系燃料ガス化システムは触媒製造部分を示している。図2において、ガス化炉31から排出されたスラグ5は、ガス化炉31の下部に設置された水砕部33の水溜りに落下して急冷されて砕かれる。このスラグ5は水砕されても流動性は低いので、前記水砕部33の下流側に設置された破砕機34によって更に砕いた後に、この破砕機34の下流側に設置されたスラグホッパ35に充填される。
【0036】
前記スラグホッパ35から廃棄する廃棄スラグ11のうち、廃棄スラグ11の一部を触媒原料用スラグ12として記スラグホッパ35から微粉砕機51に導き、この微粉砕機51にて最大粒径が100μm程度となるまで微粉砕する。
【0037】
前記微粉砕機51で微粉砕された微粉砕スラグ13を触媒製造設備52に供給する。前記触媒製造設備52では、微粉砕機51で微粉砕された微粉砕スラグ13と別途供給された水酸化ナトリウム20などのアルカリ水溶液を混合し、加熱処理して触媒にする。
【0038】
前記触媒製造設備52で製造された触媒は触媒貯蔵ホッパ53に保管する。
【0039】
そして、シフト反応器36におけるシフト反応によってシフト反応器36のCO転化率が規定値以下となった場合、あるいはCO転化率の低下率が規定値以上となった場合に、シフト反応器36に収容されている触媒の一部を該シフト反応器36から抜出し、廃棄触媒16として廃棄する。
【0040】
ここで、シフト反応器36から抜出した廃棄触媒16はガス化炉31へ供給する。ガス化炉31の高温によって廃棄触媒16は溶融してスラグ5となる。
【0041】
また、前記触媒貯蔵ホッパ53に保管された触媒は新触媒15としてシフト反応器36に供給するようにして、有効に活用される。
【0042】
本実施例によれば、炭素系燃料のガス化システムにおいて、シフト反応させるシフト反応器に供給する炭素系燃料から生成した生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合に、生成ガスの加熱及び水蒸気の供給によるガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを実現することができる。
【実施例3】
【0043】
次に本発明の第3実施例である炭素系燃料ガス化システムの運転方法について図3を用いて説明する。図3に示した本実施例の炭素系燃料ガス化システムの運転方法は図1に示した第1実施例の炭素系燃料ガス化システムと基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0044】
図3には炭素系燃料ガス化システムの運転方法を行う制御装置100が備えられており、前記制御装置100によってガス化炉31の下流に設置された水供給部32への水3の供給は、以下のように制御される。
【0045】
即ち、ガス化炉31に供給する燃料1の流量を計測する燃料流量計71と、酸化剤2の流量を計測する酸化剤流量計72を設置して、これらの燃料流量計71及び酸化剤流量計72でそれぞれ測定した燃料流量及び酸化剤流量の測定値を、制御装置100に入力してガス化炉31で生成する生成ガス4の組成を予測する。
【0046】
次に、ガス化炉31で生成した生成ガス4に対して、前記シフト反応器33のシフト反応によって生成ガス4中のCOを触媒下で水蒸気(HO)と反応させてCOとHを得るCO転化率の目標値をCO転化率目標設定器61で設定して、前記シフト反応器33でこの設定されたCO転化率を得るために必要な水蒸気濃度を必要水蒸気量計算器62による演算によって求める。
【0047】
生成ガス4中の水蒸気濃度を前記水蒸気濃度の値とするために必要な水の量は、この必要水蒸気量計算器62によって演算した前記水蒸気濃度に基づいて該必要水蒸気量計算器62で演算し、水供給部32に供給する水3の供給量の基準値とする。
【0048】
生成ガスが流入する前記シフト反応器36の入口側には該シフト反応器36に流入する生成ガス4の温度を計測する温度計74及び生成ガス4の組成を計測するガス組成計75が夫々設置されており、前記シフト反応器31の出口側にはシフト反応器36にてシフト反応して該シフト反応器36から排出された生成ガス6の温度を計測する温度計77及び生成ガス7の組成を計測するガス組成計78が夫々設置されている。
【0049】
シフト反応器36でシフト反応することによって実際のCO転化率は、CO転化率計算器65によって演算される。
【0050】
シフト反応器36の入口側に設置したガス組成計75で測定した生成ガス4の入口ガス組成の分析値、及びシフト反応器36の出口側に設置したガス組成計77で測定した生成ガス6の出口ガス組成の分析値に基づいて、前記CO転化率計算器65によって前記シフト反応器36でのシフト反応によってCOとHOを触媒下で反応させてCOとHに転化させた実際のCO転化率を演算する。
【0051】
前記CO転化率計算器65によって演算した実際のCO転化率の値と、前記CO転化率目標設定器61で設定して目標とするCO転化率の値との間に差異がなくなるように、前記必要水蒸気量計算器62で演算した水3の供給量の基準値を補正する。
【0052】
制御装置100には前記必要水蒸気量計算器62で演算した水3の供給量の補正値に基づいて前記水供給部32に供給する水3の流量を調節する流量調節弁81の開度を制御する弁開度計算器64が設置されている。
【0053】
そして、前記弁開度計算器64によって流量調節弁81の開度を制御し、適量の水3が前記水供給部32に供給されるように操作する。
【0054】
なお、シフト反応器36の入口のガス温度が規定値以下となると、シフト反応器36に収容したシフト反応用の触媒の活性が低下するため、CO転化率目標設定器61で設定された目標とするCO転化率を得ることができなくなる。また、生成ガス4中の水蒸気が液化するリスクが高まる。
【0055】
そこで、制御装置100にシフト反応設備入口下限温度設定器63を設置して、シフト反応器36の入口に設置された温度計74によって計測される生成ガス4の温度を監視し、この温度計74で計測する生成ガス4の温度が前記シフト反応設備入口下限温度設定器63で設定した下限温度以下にならない範囲で、前記弁開度計算器64によって流量調節弁81の開度を制御し、水3の供給量を制御するものである。
【0056】
シフト反応器36におけるシフト反応は発熱反応であり、シフト反応の進行に伴って生成ガス4の温度が上昇すると、シフト反応器36の内部に収容されたシフト反応用の触媒の温度も上昇する。
【0057】
触媒は温度が規定値以上になると劣化が加速するので、生成ガス4の温度が規定値以上にならないように冷却する必要がある。
【0058】
そこで、シフト反応器36の内部に温度計76を設置して、この温度計76で計測するシフト反応器36の内部の温度が規定値以下となるように、第2のPI演算器102によって温度計76で計測した温度とシフト反応器温度目標値69との比較に基づいて、前記シフト反応器36の内部に設置した伝熱管37に供給する内部冷却用水蒸気流量8、或いは冷却水量を調節する調節弁82の開度を操作して水蒸気流量8、或いは冷却水量を制御する。
【0059】
前記シフト反応器36の内部に流動層91として収容されたシフト反応用の触媒がシフト反応器36から飛散して流出し流動層91のレベルが低下したりするとシフト反応器36のシフト反応に影響するので、シフト反応器36内の流動層91のレベルを一定に制御する必要がある。
【0060】
そこで、前記シフト反応器36の内部に流動層91のレベルを計測する流動層レベル計79を設置して、この流動層レベル計79によって計測される流動層91のレベルを監視し、第1のPI演算器101によって流動層レベル計79で計測した流動層91のレベルとシフト反応器レベル目標値70との比較に基づいて、流出した触媒の量と同量の新触媒15を調節弁83を操作して新触媒補給ノズル93によってシフト反応器36に供給することで、シフト反応器36の内部の流動層91のレベルを一定に保持している。
【0061】
ところで、前記シフト反応器36の内部に流動層91として収容されたシフト反応用の触媒が劣化すると、生成ガス4中の水蒸気量を増やしてもCO転化率が上がらなくなり、ついには目標とするCO転化率が得られなくなる。
【0062】
そこで、シフト反応器36の入口及び出口にそれぞれ設置したガス組成計75及びガス組成計78で測定したシフト反応器36に流入する生成ガス4のガス組成、及びシフト反応器36から排出する生成ガス6のガス組成の分析結果に基づいて、制御装置100を構成する前記CO転化率計算器65によってシフト反応器36の実際のCO転化率を演算する。
【0063】
そして、制御装置100に設置されたCO転化率制限値設定器66に設定されたCO転化率の絶対値制限値及びCO転化率の低下率制限値と、前記CO転化率計算器65で演算された実際のCO転化率の演算値とを、制御装置100に設置されたCO転化率低下率計算及び触媒劣化判定器67で比較することによって前記シフト反応器36に収容された触媒劣化有無を判定する。
【0064】
前記CO転化率低下率計算及び触媒劣化判定器67によってシフト反応器36に収容されたシフト反応用の触媒が劣化していると判定された場合には、廃棄触媒抜出ノズル94によって調節弁84を操作してシフト反応器36から流動層91を形成している触媒の一部を抜出し、抜出した触媒の量と同量の新触媒15を調節弁83を操作して新触媒補給ノズル93によってシフト反応器36の触媒層91に新たに供給することで、前記シフト反応器36に収容する触媒の触媒交換操作68を実施するように構成している。
【0065】
本実施例によれば、炭素系燃料のガス化システムにおいて、シフト反応させるシフト反応器に供給する炭素系燃料から生成した生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合に、生成ガスの加熱及び水蒸気の供給によるガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを実現することができる。
【実施例4】
【0066】
次に本発明の第4実施例である炭素系燃料ガス化システムについて図4に示したシフト反応器36の拡大図を用いて説明する。図4に示した本実施例のシフト反応器36を備えた炭素系燃料ガス化システムは図1に示した第1実施例の炭素系燃料ガス化システムと基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0067】
図4は本実施例の炭素系燃料ガス化システムに設置される流動層型のシフト反応器36の詳細構造を示すものであり、前記シフト反応器36では該シフト反応器36の内部に収容されたシフト反応触媒の流動層91の粒径が小さくなると、流動層91から飛散してシフト反応器36aの外部に流出する触媒の飛散量が増加する。飛散した触媒の全量をガス化炉31に供給する場合、補充する新触媒15の必要量が増加する。
【0068】
そこで、本実施例のシフト反応器36ではサイクロン92を該シフト反応器36に設置し、シフト反応器36の流動層91から飛散して外部に流出した触媒を前記サイクロン92によって回収し、この回収した触媒を、サイクロン92の底部から供給配管98を通じてシフト反応器36の底部に供給して該シフト反応器36の流動層91に戻すように構成することで、シフト反応器36に補充する新触媒15の必要量を低減する。
【0069】
この場合、サイクロン92ではシフト反応器36の流動層91から飛散して流出した触媒だけでなく、ガス化炉31からシフト反応器36に供給される生成ガス4に含まれる未燃分の微粒子も捕集されるので、該サイクロン92から前記供給配管98を通じてシフト反応器36aの流動層91に戻されてリサイクルされることになるが、この未燃分自体がシフト反応に活性のある金属を含んでいるので、特に問題はない。
【0070】
尚、サイクロン92では生成ガス4中の微粒子の全てを捕集することはできないので、シフト反応器36aの下流側に脱塵設備40を設置することは必要である。
【0071】
本実施例によれば、炭素系燃料のガス化システムにおいて、シフト反応させるシフト反応器に供給する炭素系燃料から生成した生成ガスの加熱及び水蒸気の供給を行なう場合に、生成ガスの加熱及び水蒸気の供給によるガス化システムの熱効率の低下をコンパクトな構成の設備で抑制可能にした炭素系燃料のガス化システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は炭素系燃料のガス化システムに適用可能である。炭素系燃料をガス化して製造された生成ガスは、メタノールやアンモニア、合成軽油等の原料とすることができる。また、生成ガス中の二酸化炭素を除去した後に石炭ガス化複合発電(IGCC)の燃料とする二酸化炭素回収型IGCCへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:燃料、2:酸化剤、3:水(液体)、4:生成ガス、5:スラグ、6:シフト反応器出口生成ガス、7:脱塵設備出口生成ガス、8:冷却用水蒸気、9:微粒子、9b:供給配管、11:廃棄スラグ、12:触媒原料用スラグ、13:微粉砕スラグ、15:新触媒、16:廃棄触媒、20:水酸化ナトリウム、31:ガス化炉、32:水供給部、33:水砕部、34:破砕機、、35:スラグホッパ、36:シフト反応器、37:伝熱管、40:脱塵設備、41:サイクロン、42:フィルタ、43〜44:中間ホッパ、45:フィードホッパ、51:微粉砕機、52:触媒製造設備、53:触媒貯蔵ホッパ、61:CO転化率目標設定器、62:必要水蒸気量計算器、63:シフト反応設備入口下限温度設定器、64:弁開度計算器、65:CO転化率計算器、66:CO転化率制限値設定器、67:触媒劣化判定器、71、72:流量計、73、74、76、77:温度計、75、78:ガス組成分析計、91:流動層、92:サイクロン、93:新触媒補給ノズル、94:廃棄触媒抜出ノズル、98:供給配管、100:制御装置、101、102:演算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系燃料を酸化剤によりガス化してCOとHを主成分とする生成ガスを製造するガス化炉を設置し、このガス化炉の内部であって生成ガスを製造する該ガス化炉内の下流側に位置し、生成ガスに液体の水を噴霧して水蒸気を生成する水供給部を設置し、
前記ガス化炉で生成した生成ガスとCO及び水蒸気を混合させて生成ガス中のCOをCOに転化させるシフト反応を行なう触媒の流動層を内部に収容した流動層型のシフト反応器を前記ガス化炉の下流側に設置し、
前記ガス化炉で生成した生成ガスに含まれる未燃分及び前記シフト反応器の流動層から飛散した触媒を回収する脱塵設備を前記シフト反応器の下流側に設置し、
前記脱塵設備によって回収された生成ガスに含まれる未燃分及びシフト反応器の流動層から飛散した触媒を該脱塵設備からガス化炉に供給する供給配管を前記脱塵設備と前記ガス化炉との間に配設し、
前記シフト反応器の内部に収容した触媒の流動層を形成する該流動層のレベルが一定となるように新触媒をこのシフト反応器の流動層に補充する新触媒補充手段を前記シフト反応器に設置したことを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素系燃料のガス化システムにおいて、
前記脱塵設備は、比較的粒径の大きい粒子を除去するサイクロンと、比較的粒径の小さい粒子を除去するフィルタとを組合せて構成していることを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の炭素系燃料のガス化システムにおいて、
前記シフト反応器に収容するシフト反応用の触媒は、ガス化炉で石炭中の灰分が溶融して排出されたスラグを微粉砕し、この微粉砕したスラグとアルカリ水溶液を混合して加熱処理して製造したものを使用することを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【請求項4】
請求項1に記載の炭素系燃料のガス化システムにおいて、
前記シフト反応器に収容する触媒の流動層内に伝熱管を配設し、前記伝熱管に水蒸気あるいは液体の水を流通させてシフト反応器でのシフト反応による発熱を回収して流動層内の温度上昇を抑制するように構成したことを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【請求項5】
炭素系燃料を酸化剤によりガス化してCOとHを主成分とする生成ガスを製造するガス化炉を設置し、このガス化炉の内部であって生成ガスを製造する該ガス化炉内の下流側に位置し、生成ガスに液体の水を噴霧して水蒸気を生成する水供給部を設置し、
前記ガス化炉で生成した生成ガスとCO及び水蒸気を混合させて生成ガス中のCOをCOに転化させるシフト反応を行なう触媒の流動層を内部に収容した流動層型のシフト反応器を前記ガス化炉の下流側に設置し、
前記ガス化炉で生成した生成ガスに含まれる未燃分及び前記シフト反応器の流動層から飛散した触媒を回収する脱塵設備を前記シフト反応器の下流側に設置し、
前記脱塵設備によって回収された生成ガスに含まれる未燃分及びシフト反応器の流動層から飛散した触媒を該脱塵設備からガス化炉に供給する供給配管を前記脱塵設備と前記ガス化炉との間に配設し、
前記シフト反応器の内部に収容した触媒の流動層を形成する該流動層のレベルが一定となるように新触媒をこのシフト反応器の流動層に補充する新触媒補充手段を前記シフト反応器に設置し、
前記シフト反応器のシフト反応を制御する制御装置を設置し、前記制御装置は、
前記シフト反応器のシフト反応によって生成ガス中のCOを水蒸気と反応させてCOに転化するCO転化率を設定するCO転化率目標設定器と、
前記CO転化率目標設定器で設定されたCO転化率の設定値を前記シフト反応器で得るために必要な水蒸気濃度を演算し、この水蒸気濃度を得るために必要なガス化炉に供給する水の量を演算する必要水蒸気量計算器と、
前記シフト反応器の入口側及び出口側に設置されたガス組成計でそれぞれ測定された生成ガス中のガス組成に基づいてシフト反応器による実際のCO転化率を演算するCO転化率計算器と、
前記必要水蒸気量計算器で求めたガス化炉に供給する水の量を、前記CO転化率計算器で演算した実際のCO転化率の値と前記CO転化率目標設定器で設定したCO転化率の設定値に基づいて補正してガス化炉の水供給部に供給する水の量を演算し、前記ガス化炉の水供給部に供給する水の量を調節する調節弁を制御する弁開度計算器と、
を備えて構成したことを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【請求項6】
請求項5に記載の炭素系燃料のガス化システムシステムにおいて、
前記シフト反応器に収容する触媒の流動層内に水蒸気あるいは液体の水を流通させる伝熱管を配設し、
前記シフト反応器の温度を設定するシフト反応器温度設定器による温度設定値と前記シフト反応器に設置された温度計で測定されたシフト反応器温度の測定値に基づいて該シフト反応器の前記伝熱管に供給する水蒸気或いは水の量を演算し、前記ガ伝熱管に供給する水蒸気或いは水の量を調節する調節弁を制御する演算器を備えていることを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。
【請求項7】
請求項5に記載の炭素系燃料のガス化システムにおいて、
前記シフト反応器のシフト反応によるCO転化率の絶対値制限値及びCO転化率の低下率制限値を設定するCO転化率制限値設定器を設置し、
前記CO転化率計算器で計算した実際のCO転化率が前記CO転化率制限値設定器で設定したCO転化率の絶対値制限値以下、或いはCO転化率の低下率制限値以上になった場合に、前記シフト反応器の内部に収容した触媒層の触媒が劣化したと判断するCO転化率低下率計算及び触媒劣化判定器を設置し、
前記CO転化率低下率計算及び触媒劣化判定器による判定で前記シフト反応器の内部に収容した触媒層の触媒が劣化したと判断した場合に、該シフト反応器から劣化した触媒を外部に排出する廃棄触媒抜出ノズルを設置すると共に、新触媒を該シフト反応器に供給する新触媒補給ノズルを設置したことを特徴とする炭素系燃料のガス化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−219156(P2012−219156A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85007(P2011−85007)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)