説明

炭素繊維構造体及びその製造方法

【課題】高強度でかつ耐熱性の高いC/C複合材からなる炭素繊維構造体を提供する。
【解決手段】炭素繊維1と炭素質マトリックス2とを含む炭素繊維強化炭素複合材を含む炭素繊維構造体100であって、前記炭素繊維1は直線状繊維からなり、前記炭素繊維1は、前記炭素質マトリックス2内で前記炭素繊維1の長手方向が前記炭素繊維構造体100の面方向に平行に配向した薄片体3を形成し、前記構造体100は、該薄片体3が積層された積層体60により構成される炭素繊維構造体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維構造体及びその製造方法にかかり、特に炭素繊維と炭素質マトリックスとを含む炭素繊維強化炭素複合材料からなる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は高い耐熱性と、強度とを備えているため、炭素繊維と炭素質マトリックスとを含む炭素繊維強化炭素複合材料(以下「C/C複合材」とも称する)として、耐熱性、化学的安定性、強度を必要とする様々な分野で利用されている。C/C複合材は、炭素繊維の複合化の方法により様々な種類があり、これを用いて様々な炭素繊維構造体を形成することが出来る。
【0003】
C/C複合材は、熱硬化性樹脂やピッチ等の炭化物からなるマトリックスと炭素繊維とからなる。炭素繊維クロスを使用するクロス積層方式、炭素繊維フィラメントを使用するフィラメントワインディング方式、炭素繊維フェルトを使用する方式、炭素繊維の抄造体を使用する抄造方式等、炭素繊維の構成により種々のC/C複合材がある。
【0004】
クロス積層方式は、炭素繊維からなる織布を積層し、ピッチや熱硬化性樹脂等のマトリックス前駆体を織布に浸み込ませて、硬化、焼成することによりC/C複合材を得る方法である(特許文献1参照)。平面の織布を積層し一軸プレスすることにより、平板の炭素繊維強化炭素複合材を得ることができる。また、小さく切断した織布片を立体型状の型に貼り付け、張り子状の複雑形状のC/C複合材も得ることができる。そしてさらに、平面の織布をロール状に圧力をかけながら巻いて積層するクロスワインディング方式により筒形状のC/C複合材を得ることもできる。
【0005】
フィラメントワインディング方式は、型に炭素繊維の束(ストランド)を張力をかけながら巻き付けた後、ピッチや熱硬化性樹脂等のマトリックス前駆体を浸み込ませ、硬化、焼成することによりC/C複合材を得る方法である(特許文献2参照)。
【0006】
炭素繊維フェルトを使用する方式は、炭素繊維の長繊維をフェルト状に積層し、樹脂やピッチなどのマトリックス前駆体を浸み込ませ、硬化、焼成することによりC/C複合材を得る方法である(特許文献3参照)。この方法によっても、クロス積層方式と同様に、平面のC/C複合材、筒形状のC/C複合材、複雑な形状のC/C複合材を得ることができる。特に平面のフェルトをロール状に圧力をかけながら中芯に巻いて積層するシートワインディング方式により筒形状のC/C複合材を得ることもできる(図13参照)。
【0007】
さらに、抄造方式は、炭素繊維を液体中に懸濁させてスラリーを形成し、このスラリー中に孔を有する吸引金型を浸漬し、スラリー中の液体を吸引金型の背面に通過させ、この吸引金型の表面側に炭素繊維を堆積させて成形物を成形し、乾燥および焼成を行うことでC/C複合材を得る方法である(特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−60373 号公報
【特許文献2】特開平10−152391号公報
【特許文献3】特開2000−143360号公報
【特許文献4】特開2002−68851号公報
【特許文献5】特開2002−97082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
C/C複合材の製造に際しては、単純な平板のC/C複合材を製造する場合には、板材の端部が解放されているため、プレス及び焼成の過程で収縮が生じても、全体のサイズが小さくなるのみで、反りや変形の少ないC/C複合材を得ることができる。
円筒など環状形状の平板のC/C複合材を製造する場合には、フィラメントワインディング方式やクロスワインディング方式などの方法が用いられる。これらの方法は高密度にするために張力をかけながら、クロスまたはフィラメントを中芯に巻きつけることによって予備成形体を形成する。このような方法で製造されるため、薄肉のC/C複合材は容易に製造することができるが、厚肉のC/C複合材を製造する際には、クロスあるいはフィラメントに張力がかかり、予備成形体の周方向には応力が解放される端部がないため、予備成形体の外層側と内層側の張力の差によって、内層側が座屈し易くなる。さらに、焼成によって、収縮の発生、及びバインダ成分の炭化による接着力の低下が起こり、予備成形体の内層側はより座屈し易くなる。その結果、中芯を抜いたときに座屈により予備成形体の内層側では変形し、ひいては強度の低下が起こる。そのために肉厚のC/C複合材をフィラメントワインディング法、クロスワインディング法で得ることは困難である。
また、炭素繊維フェルトを使用する方式の場合には、薄いフェルトを幾重にも重ねて成形することとなるが、フェルト間の接着力は小さいため剥離が起こりやすい。特にC/C複合材の肉厚材を製造する場合に硬化、焼成する過程で圧縮応力かかるため、中芯を抜いたとき予備成形体の内層側で座屈しやすい。すなわち、フィラメントワインディング法やクロスワインディング法と同様に座屈により予備成形体の内層側では変形あるいは強度の低下が起こるといった問題がある。そのため肉厚のC/C複合材を、炭素繊維のフェルトを積層して得ることは困難であった。
【0010】
また、従来のC/C複合材の製造方法に際し、予備成形体を硬化、焼成する段階で反りや変形が発生した場合、製品形状の寸法公差が小さい場合又は、製品の形状が単純形状ではない場合は、切削や接合などの加工を施すことが考えられる。
【0011】
しかしながら、フィラメントワインディング方式、クロスワインディング方式、シートワインディング方式などでは、フィラメント、クロス、炭素繊維フェルト等を何層にも積層して予備成形体を作成するため、上記のような加工を施すと、強度を保持する長繊維を切断してしまい、強度が弱い層間で剥離が起こりやすくなる。
さらにまた、抄造方式により得られるC/C複合材は、紙を抄くようにC/C複合材の予備成形体である抄造体を得るため、薄い抄造層が形成された段階で炭素繊維を分散させる液体(水)の通過抵抗が大きくなり、層が厚くなるに連れて抄造が困難となる。そのため、厚肉のC/C複合材を得るには、液体の通過抵抗が大きくならないよう炭素繊維の密度を低くしなければならず、高強度のC/C複合材を得ることは困難である。
【0012】
本発明では、高強度でかつ耐熱性の高いC/C複合材からなる炭素繊維構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は下記炭素繊維構造体及びその製造方法により上記課題を解決できることを見出した。
[1]炭素繊維と炭素質マトリックスとを含む炭素繊維強化炭素複合材を含む炭素繊維構造体であって、
前記炭素繊維は直線状繊維からなり、
前記炭素繊維は、前記炭素質マトリックス内で前記炭素繊維の長手方向が前記炭素繊維構造体の面方向に平行に配向した薄片体を形成し、
前記炭素繊維構造体は、該薄片体が積層された積層体により構成される炭素繊維構造体。
[2]前記炭素繊維の一部が、前記薄片体の積層方向に隣接する薄片体をつなぐ成分を含む、[1]に記載の炭素繊維構造体。
[3]前記薄片体は、前記薄片体の積層方向に隣接する薄片体の端部が該積層方向にずれるように配置される、[1]又は[2]に記載の炭素繊維構造体。
[4]前記炭素繊維の平均繊維長は1.0mm未満である[1]〜[3]のいずれか1に記載の炭素繊維構造体。
[5]前記炭素繊維の前記炭素繊維構造体の面方向に対して垂直方向の配向成分が該垂直方向に連続的に存在する[1]〜[4]のいずれか1に記載の炭素繊維構造体。
[6]嵩密度が1.2g/cm以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1に記載の炭素繊維構造体。
[7]炭素繊維と、炭素質マトリックスの前駆体成分であるバインダとを液体中に懸濁させると共に凝集剤を加え、前記炭素繊維と前記バインダとを凝集させてフロックを形成する工程(A)と、
前記フロックを形成した液体を、多孔状型面を有する金型で濾過することにより、該多孔状型面の表面に前記フロックを積層し、該フロックの積層体を形成する工程(B)と、
前記フロックの積層体を加圧し、前記炭素繊維の長手方向を前記多孔状型面の面方向に平行に配向させて、該フロックを薄片化することにより、薄片体前駆体の積層体を成形する工程(C)と、
前記薄片体前駆体の積層体を焼成し、前記バインダを炭化して炭素質マトリックスを生成することにより、薄片体積層体を形成する焼成工程(D)と、を具備する、炭素繊維構造体の製造方法。
[8]前記工程(B)における濾過が吸引濾過である、[7]に記載の製造方法。
[9]前記工程(A)が、炭素繊維と、炭素質マトリックスの前駆体成分である第1バインダと、前記炭素繊維と前記第1バインダとを結合させる成分である第2バインダとを、液体中に懸濁させると共に凝集剤を加え、前記炭素繊維と前記第1バインダと前記第2バインダとを凝集させてフロックを形成する工程である、[7]または[8]に記載の製造方法。
[10]前記工程(C)が、前記フロックの積層体をフィルムで被覆した状態でオートクレーブにより加熱圧縮を行い、前記炭素繊維の長手方向を前記多孔状型面の面方向に平行に配向させて、該フロックを薄片化することにより、薄片体前駆体の積層体を成形する工程である、[7]〜[9]のいずれか1に記載の製造方法。
[11]前記炭素繊維の平均繊維長が、前記多孔状型面の開口の大きさよりも小さい、[7]〜[10]のいずれか1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、層間剥離が起こりにくく、高強度でかつ耐熱性の高いC/C複合材からなる炭素繊維構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の構造体を示す図、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は(b)の断面図の要部拡大図、(d)は(c)ののさらなる要部拡大図
【図2】本発明の製造方法の工程フロー図
【図3】本発明の製造方法の概要図
【図4】本発明の実施の形態2の構造体を示す図、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は(b)の断面図の要部拡大図、(d)は(c)のさらなる要部拡大図
【図5】本発明の実施形態2の構造体の製造方法の概要図
【図6】(A)は実施例の構造体の断面の写真、(B)は比較例の構造体の断面の写真
【図7】(A)は実施例の構造体表面を拡大した写真 、(B)は構造体表面に見られる薄片体の写真、(C)は構造体表面から剥離された薄片体の写真
【図8】(A)は比較例のシートワインディング方式でフェルトをマンドレルに巻き積層した断面の走査型電子顕微鏡写真、(B)は(A)の模式図
【図9】本発明の構造体断面の走査型電子顕微鏡写真、(A)は倍率100、(B)は倍率200、(C)は倍率500での写真
【図10】比較例の構造体断面の走査型電子顕微鏡写真、(A)は倍率50、(B)は倍率200、(C)は倍率500での写真
【図11】実施例及び比較例の炭素繊維構造体の物性測定サンプルの取り出し方向、曲げ試験方向を示す模式図
【図12】(A)は本発明の構造体の断面の偏光顕微鏡写真、(B)は比較例の構造体の断面の偏光顕微鏡写真
【図13】比較例の構造体を示す図、(a)は斜視図、(b)は断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の炭素繊維構造体(以後「本発明の構造体」とも称する。)は、炭素繊維と炭素質マトリックスとを含む炭素繊維強化炭素複合材で構成された成形体である。
この炭素繊維は直線状繊維からなる。そして、炭素繊維は、炭素質マトリックス内で繊維の長手方向が構造体の面方向に平行に配向した薄片体を構成する。この薄片体の積層体によって成形体としての炭素繊維構造体を構成する。
【0017】
(実施形態1)
本発明の実施形態1の構造体について、図1に基づいて説明する。
図1(a)は、本実施形態1の構造体100の斜視図である。そして図1(b)乃至(d)は、図1(a)の断面図、断面図の要部拡大図、更なる要部拡大図である。図1(c)および(d)に示すように、この構造体100において、炭素繊維1はその多数が、炭素質マトリックス2内で繊維の長手方向が構造体100の面方向に平行に配向することによって薄片体(シート状小片)3を形成している。本発明の構造体100はこの薄片体3の積層体により構成されている。
【0018】
この構成によれば、薄片体は、炭素質マトリックス2が、この薄片体3を構成する炭素繊維1間に介在し、炭素繊維間を固定するように充填され構成されている。さらにこの薄片体3は、落ち葉がランダムに積み重なるように積層されているため、薄片体の端部が炭素繊維構造体内部の多くの箇所に分散される。すなわち、薄片体の積層方向に隣接する薄片体の互いの端部が、該積層方向においてずれるように薄片体が配置される。これにより、薄片体端部の重なりがなくなり、構造的に弱く剥離あるいはクラックの原因となる欠陥(薄片体の境界)が細かく分散される。大きな欠陥が一箇所に存在する場合には、その大きな欠陥がノッチとなって、強度の低下が起きやすくなる。本発明のように欠陥部分を細かく分散されることによって欠陥部分にかかる応力を分散することができ、見かけ上均質な欠陥の無い炭素繊維構造体を得ることができる。このような構造を有しているので、高温下でも、耐熱性が高く、高強度のC/C複合材の構造体を提供することができる。
【0019】
薄片体の平均長径は、1〜10mmであることが好ましく、2〜5mmであることがさらに望ましい。平均長径が1.0mm未満であると、炭素繊維の長さに近接するため、薄片体により構成される炭素繊維構造体が得られにくくなる。平均長径が10mmを超えると、後述する製造工程において、薄片体の素となるフロックを積層する際に、フロックの中心部と周辺部とで偏析が起こりやすくなるため、薄片体内部のバインダ成分も偏析し易くなる。また、薄片体のサイズも10mmを超え大きいことから、後の成形・硬化で偏析が解消されにくくなる。この結果、構造体の強度が低下するおそれがある。
薄片体の平均厚さは、0.05〜1.0mmであることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがさらに好ましい。薄片体の平均厚さが0.05mm未満であると、炭素繊維の太さに近接するので、薄片体により構成される炭素繊維構造体が得られにくくなる。薄片体の平均厚さが1.0mmを越えると、薄片体端部に空洞が出来やすくなり、構造体の強度が低下するおそれがある。
【0020】
本発明の構造体は、後述するように、炭素繊維とバインダとを液体中で凝集させてフロックを形成し、このフロックを積層(抄造)して形成される。フロックとは、ランダムに配向した炭素繊維とバインダとが均一に分散した凝集体であり、乾燥及び焼成工程を経て、構造体における薄片体となる。本発明において炭素繊維1は直線状繊維からなる。炭素繊維1が直線状繊維であることにより、後述するフロックの積層工程(フロックの抄造時)においてフロックを金型を用いて濾過する際に、既に金型の表面に形成されている下層のフロックに直線状炭素繊維が突き刺さり厚み方向に接合されるので、構造体の面方向に対して垂直な方向(厚さ方向)の接合強度が得やすくなる。本発明において「直線状繊維」とは、実質的に屈曲部を有しない繊維をいい、針状の繊維であることが好ましい。繊維長の長い炭素繊維や軟らかい炭素繊維等の、直線状繊維となりにくい炭素繊維を使用した場合には、既に形成されているフロックに炭素繊維が突き刺さりにくく、殆どの繊維の長手方向が構造体の面方向に沿うように配向してしまうため、厚さ方向の接合に関与する炭素繊維が少なく厚さ方向の接合強度が得にくい。
【0021】
本発明の構造体は、薄片体の積層方向(構造体の厚さ方向)に隣接する薄片体をつなぐ炭素繊維成分を含むことが望ましい。また、炭素繊維1の厚さ方向の配向成分が構造体の厚さ方向に連続的に存在することが望ましい。上記のように、直線状繊維を含むフロックは、既に形成されているフロックに炭素繊維が突き刺さるように積層されるので、フロックの境界であっても構造体の厚さ方向に炭素繊維の配向成分が連続的に形成される。これにより、構造体の厚さ方向に垂直な方向に界面を有しない、剥離しにくいC/C複合材の構造体を提供することが出来る。
【0022】
炭素繊維は平均繊維長が1.0mm未満であることが望ましい。平均繊維長が1.0mm以上であると、フロックの積層時に繊維どうしが絡まり合い、互いに反発するため嵩密度の高いフロックの積層体(フロックの抄造体)を得にくい。嵩密度を高めるためにはフロックの積層体をさらにオートクレーブなどで圧縮成形する必要がある。フロックの積層体の嵩密度が低い場合には、圧縮成形を行うと圧縮前後の嵩密度の差が大きくなり、圧縮の過程で皺が発生し、特にコーナー部に皺が寄りやすくなり欠陥が多くなる。このような欠陥が多くなると、コーナー部に強度の低い部分が発生する。平均繊維長が1.0mm未満であれば、フロックの積層時に、より嵩密度の高いフロックの積層体を得ることができるので、オートクレーブで圧縮成形する際に圧縮率を低くすることができる。これにより、コーナー部などに発生する皺を抑えることができ、欠陥の少ないC/C複合材の構造体を得ることができる。
【0023】
さらに、平均繊維長が1.0mm以上であると炭素繊維が屈曲し易くなり、フロックの積層時に炭素繊維の長手方向が構造体の面方向に平行に配向しやすくなる。このため、厚さ方向で繊維どうしの絡まりが少なく剥離し易くなる。炭素繊維の平均繊維長が1.0mm未満であれば直線状繊維となりやすく、積層する際に既に形成されている下層のフロックに炭素繊維が突き刺さり、構造体の厚さ方向の接合強度が得やすくなる。
【0024】
炭素繊維の平均繊維長のさらに望ましい範囲は0.05〜0.5mmである。0.5mm以下であれば、炭素繊維強化炭素複合材の構造体の厚み方向の強度をより強くすることができる上に短い繊維は高い密度で充填されやすいのでフロックの積層時の密度を高めることができ、成形時の繊維の反発力が小さいので圧縮率を高めることができる。0.05mm未満であれば、炭素繊維がマトリックスを補強する作用が無くなり、繊維としての性質を失い高強度の構造体を得ることができないおそれがある。
【0025】
炭素繊維の平均繊維径は、1〜20μmが好ましい。また、炭素繊維のアスペクト比は10〜1000が好ましい。平均繊維径及びアスペクト比がそれぞれ上記範囲であれば繊維長に対して充分に細くすることができるため、繊維がマトリックスからの引き抜きに対して抵抗力を備えることが出来るので高い強度を得ることができる。
【0026】
炭素繊維にはピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維があるがどちらも好適に使用することができる。PAN系炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維に比べて弾性率が低いため、例えば単結晶引き上げ装置用のるつぼ、保温筒、ルツボ受け皿、ヒーター等の柔軟性が必要な用途に好適に使用することができる。ピッチ系炭素繊維は弾性率がPAN系炭素繊維に比べ高いため、液晶支持プレート、搬送アームなど、撓みを抑えたい機械部品等の構造部材に好適に使用することができる。
【0027】
本発明の構造体は、嵩密度が1.2g/cm以上であることが好ましい。嵩密度が1.2g/cm以上であれば、C/C複合材の空隙が少なくなるためマトリックスによる炭素繊維の接合が密になり、炭素繊維が脱離しにくくなる。このため、緻密でより高い強度のC/C複合材の構造体を得ることができる。
本発明の構造体は、厚さが20mm以上の湾曲したC/C複合材であっても高強度のC/C複合材を容易に形成することが出来る。一旦、炭素繊維とバインダとを含むフロックを形成して抄造法により金型に堆積して、フロックの積層体である予備成形体を成形するので、肉厚の予備成形体が得られやすく20mm以上の肉厚のC/C複合材を容易に得ることができる。
【0028】
以下、本発明の構造体の製造方法について説明する。図2は本発明の構造体の製造工程フロー、図3は本発明の構造体の製造方法の概要図である。
1.工程(A):フロック形成工程(SA)
まず、図2(A)及び図3(A1)〜(A2)に示すように、炭素繊維1と、炭素質マトリックスの前駆体成分であるバインダとを液体中に懸濁させた後に凝集剤を加え、炭素繊維1とバインダとを凝集させてフロック5を形成する。炭素繊維1は、はじめ図3(A1)に示すように液体中に分散してスラリーを形成するが、時間の経過と共に図3(A2)に示すように凝集してフロック5を形成する。
【0029】
2.工程(B):フロックの積層体を形成する工程(SB)
次に、図2(B)及び図3(B)に示すように、フロック5が形成された液体を、多孔状型面21を有する金型20で濾過する。多孔状型面21は側面に多数の開口21Aを有する。これにより、多孔状型面21の表面にフロック5を多孔状型面21の面方向に連続した層として積層し、フロックの積層体50を形成する。
本発明における製造方法では、従来のように炭素繊維が懸濁したスラリーを直接濾過(抄造)するのではなく、一旦炭素繊維をバインダと共に凝集させてフロックを形成し、フロックを濾過(抄造)することを特徴とする。これにより、多孔状型面21へのフロック5の積層が進行しても、フロック5の間を液体が透過することができるので、液体の透過を遮りにくく、厚いフロックの積層体50を容易に得ることができる。また、図3(B)に拡大して示すように、水の通過抵抗を小さくするために多孔状型面21の開口21Aより炭素繊維1の平均繊維長が小さい場合であっても、フロック5を開口21Aより大きく形成することができる。したがって、濾過の際に炭素繊維1が開口21Aを通過することなく、フロックの積層体50を形成することができる。
【0030】
3.工程(C):薄片体前駆体の積層体を成形する工程(SC)
次に、図2(C)及び図3(C)に示すように、フロックの積層体50を加圧する。これにより、炭素繊維1の長手方向は、多孔状型面21の面方向に平行に配向するようになる。そしてフロック5は薄片化して、図3(D)に示すように薄片体前駆体6となる。このようにして、図3(D)に示す薄片体前駆体の積層体60を形成する。
【0031】
4.工程(D):焼成工程(SD)
そして、図2(D)及び図3(D)に示すように、薄片体前駆体の積層体60を焼成する。これにより、バインダ4を炭化して、図1(d)に示すように炭素質マトリックス2を生成し、薄片体前駆体6は薄片体3となる。このようにして、薄片体3の積層体、すなわち、本発明の構造体100を得る。
【0032】
次に、各工程について下記に詳しく説明する。
【0033】
[炭素繊維の調整]
炭素繊維は、前処理として、本発明の構造体に適するように調整をすることが好ましい。一般に広く流通する釣り竿や航空部品などに用いられる炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」とも称する)用の炭素繊維の表面にはサイジング剤などの被膜が形成されているため抄造時に水に分散しにくくなる。このため炭素繊維はサイジング剤などの被膜のないものを選択するか、有機物から発生する炭化水素ガス、水素又は一酸化炭素等を用いた還元性雰囲気下で熱処理しサイジング剤などを除去する。還元性雰囲気のほか、窒素ガス又は希ガス等を用いた不活性ガス雰囲気も適用可能である。なお、CFRPの製造の過程で発生する端材を用いても良い。このような被膜は500℃以上に熱処理することで除去することができる。次に炭素繊維の平均繊維長を1.0mm未満となるよう調整することが好ましい。平均繊維長が1.0mm未満であれば前述したように、フロックの積層体(抄造体)段階での嵩密度を高め、皺が発生を抑え、強度の弱い部分の発生をおさえることが出来、また構造体の厚さ方向の接合強度が得られるようになり、剥離しにくい高強度の構造体を得ることができる。平均繊維長が1.0mm未満の炭素繊維は、市販の炭素繊維や、CFRPの製造の過程で発生するクロス、ストランド等の端材を粉砕することにより得ることができる。炭素繊維のクロス、ストランド等の端材を粉砕することにより、本発明で利用しやすいクロス、ストランド等の痕跡を残さない平均繊維長が1.0mm未満の炭素繊維の原材料を得ることができる。なお、粉砕は、水中に分散しミキサーにより行うことができる。
【0034】
[フロック形成工程(A)]
フロックを調製するにあたり、液体としては水を使用することが望ましい。大量の液体を使用するために有機溶媒などに比べ水は安全に使用できる上に、入手し易いからである。
炭素質マトリックスの前駆体成分からなるバインダ(以下、「第1バインダ」とも称する。)としては炭素繊維を懸濁する上記液体に不溶で、炭化する物であればどのような物でも利用することができる。第1バインダは、C/C複合材に空洞を形成しないようにする観点から粉状であることが好ましく、粒子径は3〜100μmであることが好ましい。第1バインダとしては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、及びイミド樹脂などの熱硬化性樹脂から選ばれる1種以上を好適に利用することができる。フェノール樹脂としては、例えば、エアウォーター社製ベルパール(登録商標)を好適に利用することが出来る。ベルパールは、粉末状のフェノール樹脂であり、表面に疎水性被膜が形成されているため、水中でも溶解することなく粒状を保っているので、炭素繊維と共に凝集することができる。
第1バインダの添加量は炭素繊維100重量部に対し50〜200重量部が好ましい。
【0035】
本発明で用いる凝集剤は、電荷の変化を利用して炭素繊維とバインダとを凝集できるものであればどのような物でもよく、ζ電位を±10mV以下程度にできる物が好ましい。ζ電位を小さくすることによって、バインダ粒子、炭素繊維の反発力を小さくすることが出来、凝集しやすくすることが出来る。例えば無機凝集材、有機高分子凝集剤等が利用でき、これらを併用しても良い。具体的には有機高分子凝集剤のアライドコロイド社製パーコール292(登録商標)等が好適に利用できる。フロックが形成されると、炭素繊維で黒く着色したスラリーの状態から、透明な液体中に黒いフロックが浮遊する混合液の状態に変化する。有機高分子凝集剤は、分子量が大きいため、架橋作用もあり、大きなフロックを得ることができる点で好ましく使用することができる。
【0036】
凝集剤の添加量としては、炭素繊維100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.5〜1重量部がより好ましい。上記範囲とすることによりフロックを崩れにくくすることができる。
また、多孔状型面の開口径の大きさは、特には限定されないが0.5〜10mmであることが好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。開口径が0.5mm未満であると、炭素繊維が目詰まりし易く水の通過抵抗が大きくなるおそれがある。開口径が10mmを超えると、開口部に開口面積に負圧を乗じた吸引力が発生するため、本来通過しない大きさのフロックまでも吸引され通過してしまうことがある。フロックの大きさは、濾過に用いる多孔状型面の開口径と同等以上にする必要がある。フロックの大きさには分布があるので、直径の大きなフロックが型面に捕捉されると、多孔状型面へのフロックの堆積が開始する。多孔状型面の開口径よりもフロックの平均直径が大きく下回ると、フロックの大部分が型面を通過してしまいフロックが型面へ堆積することが出来ない。混合液中におけるフロックの平均直径は0.5〜10mmが好ましく、1〜5mmがより好ましい。フロックの大きさは凝集剤の量、凝集剤の種類、凝集時間、撹拌の強さにより調節することができる。
【0037】
フロックを形成する液体中にはさらに、第2バインダを添加することが好ましい。前記第1バインダ成分は、抄造段階では粉末状であるため、フロックの積層体(抄造体)の形状を保持することが出来ない。第2バインダは、後に得られるフロックの積層体の形状を、後の焼成工程前まで保持するために添加する成分である。第2バインダとしてはフロックの積層体の形状を保持できればどのような物であっても構わない。フロックの積層体を形成する段階で炭素繊維と第1バインダとを、また炭素繊維同士を、物理的に結合させる作用を有する物であればどのような物でも良く、例えば粘性液体、有機繊維などが挙げられる。粘性液体としては、でんぷん、又はラテックスなどが好適に利用できる。ラテックスは、水に混合すると白濁し懸濁液となる。細かく分散したラテックスの液滴は、炭素繊維と第1バインダとを粘着作用により結合させる作用がある。有機繊維としてはパルプなども好適に利用できる。パルプは水との親和性がよく、炭素繊維と絡み合って、炭素繊維と第1バインダとを結合させる作用を有する。第2バインダとして粘性液体を用いた場合は、例えば図3(C)に拡大して示すように、炭素繊維1と第1バインダ4の間に第2バインダ7aが、炭素繊維1間に第2バインダ7bが介在することで、フロックの積層体50の形状が保持されている。
【0038】
なお、フロックの形成にあたり、上記炭素繊維、第1バインダ、凝集剤及び第2バインダの添加順序は特に制限はなく、これらを同時に液体中に添加しても順次添加してもよいが、均一かつ安定にフロックを形成する観点から下記順序で調製することが好ましい。
a)水に炭素繊維を投入し撹拌しながら分散させる。撹拌が強すぎると気泡ができるので好ましくない。撹拌手段はプロペラ型あるいはパドル型の混合機等を用いることができる。炭素繊維の攪拌時間は3分前後が好ましい。
b)次に第1バインダを加え、第1バインダが分散するまで攪拌する。攪拌時間は0.5〜5分間が好ましい。
c)次に第2バインダを加え、第2バインダが分散するまで攪拌する。攪拌時間は0.5〜5分間が好ましい。
d)最後に凝集剤を加える。撹拌が少ないと凝集剤が混ざらず、撹拌しすぎると形成されたフロックが壊れてしまう。フロックの出来具合を確認しながら撹拌時間を調整する。攪拌時間は20〜30秒が好ましい。
【0039】
[フロックの積層体形成工程(B)]
こうして形成されたフロック5を含む液体中に金型20を浸漬する。金型20は、図3(B)に示すように、円筒形状の多孔状型面21と、減圧室22とを備えている。多孔状型面21には、開口21Aが設けられている。減圧室22は配管23により吸引ポンプ(図示せず)と連結されている。従って、吸引ポンプを作動させると、減圧室22内の空気が排出され減圧状態となる。すると、金型20側にフロック5が吸引される。フロック5の大きさは、開口21Aよりも大きいため、フロック5は開口21Aを通過せず多孔状型面21の表面に多孔状型面の面方向に連続した層として積層する。その際にフロック5は、既に形成された積層体に炭素繊維が突き刺さるように積層する。積層したフロック5は、吸引力の影響で球形からやや扁平形状となり、フロック内の炭素繊維1の長手方向は多孔状型面21の面方向に平行に配向するようになる。一方、液体は開口21Aを通過し、配管を介して外部に排出される。こうして、フロックの積層体(第一成形体)50を形成することができる。
【0040】
多孔状型面21は、液体を透過できる複数の開口を有する物であればどのような物でもよく、網、パンチングメタル、織布、又は不織布等が挙げられる。多孔状型面の開口の大きさは、液体として水を使用する場合に、水が透過し易い直径1〜3mm程度が好ましい。
なお、金型の形状については、後述するが、平面、複数の平面の組み合わせ、3次元曲面、曲面の組み合わせ、鍔部を有する円筒体、円錐体、有底体、角柱など適宜選択可能である。
【0041】
また、吸引濾過の際、減圧はどのような物で行っても良い。空気の他液体も一緒に吸引されるので自吸式の渦巻きポンプや、アスピレータなどが好適に利用できる。
【0042】
なお、濾過の方法としては、上記に示した吸引濾過の他に、加圧濾過、遠心濾過等の方法を採用してもよい。加圧濾過は、例えば、多孔状型面の外表面側を加圧ガスで加圧し、多孔状型面の外表面にフロックを積層させ、フロックの積層体を形成する方法である。遠心濾過は、例えば、内面に多孔状型面を設置した回転体の型の内部にフロックを含む混合液を供給し、回転体を回転させ、多孔状型面の内表面にフロックを積層させ、フロックの積層体を形成する方法である。
【0043】
[乾燥工程]
次に、前記工程で得られたフロックの積層体に残存する水分を除去するために金型ごと乾燥することが好ましい。乾燥は水分を除去するために40℃以上で行うことが好ましい。また、第1バインダの溶融硬化を防止するため、第1バインダの溶融温度以下で行う必要がある。例えば、第1バインダとしてベルパール(登録商標)を用いた場合は、70℃前後で疎水性被膜が溶解することに鑑み、60℃以下で通風しながら乾燥させることにより、容易に水分を除去することができる。
【0044】
[加圧工程](成形工程(C))
成形方法としては、構造体が平面形状である場合は1軸成形による加圧方法が利用できる。ただし、この方法は、キャビティーの両側に上型、下型を構成することができる限られた構造でのみしか利用することができない。したがって、構造体が立体形状の場合は、図3(C)に示すように、フロックの積層体50を密閉フィルム24で覆い、オートクレーブ26を用いて熱と圧力を加え成形することが好ましい。まず密閉フィルム24内の空気を吸引し真空引きした後、圧力をかける。成形圧は特に限定されないが1MPa以上が好ましい。1MPaの圧力があれば、熱硬化性樹脂の硬化反応で発生する生成ガスによって加圧した抄造体が膨張することを防ぐことが出来る。このとき、フロックの積層体50の金型20面側(内側又は外側)を、支持材25で支持しながら成形することが好ましい。加熱によりフロックの積層体が軟化し、変形するおそれがあるので支持材25で支持することにより、変形を防ぐことができる。ここで用いる支持材25はフロックの積層体の形成工程(B)で使用した金型20とは異なり、多孔状型面を有さない、表面が平滑のものである。これにより、図3(D)に示すように薄片体前駆体の積層体60を得る。
【0045】
[硬化工程]
第1バインダは熱硬化性樹脂であるので、上記成形工程において十分に圧力を上げた後、加熱し、フロック内に含まれる熱硬化性樹脂を溶融硬化させることが好ましい。これにより、薄片体前駆体の積層体が変形しないように形状を固定化させることができる。硬化温度は熱硬化性樹脂の硬化温度以上まで上げる必要がある。例えば一般に150℃以上で行うことが出来る。温度が高ければ高いほど硬化が進行する。前記の成形工程をオートクレーブで行う場合等、成形工程で充分に加熱できれば、硬化工程は成形工程と同時に行うこともできる。
【0046】
[脱脂工程]
焼成工程の前に、薄片体前駆体の積層体内部の有機成分を揮発させるために脱脂を行うことが好ましい。この脱脂工程を経て、第1バインダは炭化し、第2バインダはその大部分が分解し揮散する。このため、脱脂工程以降で結合作用を有するのは、第1バインダ成分を由来とする炭化物である。脱脂の温度はどの程度であっても構わない。脱脂工程の後にピッチ含浸や、樹脂含浸を行う場合には、気孔を形成しておく必要があるので、500℃以上で脱脂することが好ましい。500℃以上であれば、樹脂の炭化が充分に進行し、後の含浸工程で樹脂あるいはピッチの含浸される充分な大きさの気孔を形成することができる。脱脂は、炭素繊維やバインダが酸化するのを防ぐため、有機物から発生する炭化水素ガス、水素又は一酸化炭素等を用いた還元性雰囲気下で行うことが好ましい。還元性雰囲気のほか、窒素ガス又は希ガス等を用いた不活性ガス雰囲気も適用可能である。
【0047】
[含浸工程]
脱脂後の薄片体前駆体の積層体の気孔内部に、樹脂、ピッチなどを含浸することにより高密度化することが好ましい。脱脂後の薄片体前駆体の積層体をオートクレーブに入れ、真空引きした後に、オートクレーブ中に液状の樹脂やピッチを導入し、浸漬した後圧力を加える。液状の樹脂は、水や有機溶媒で溶液にしたものや、熱を加え、溶融した物でも良いが、溶液にしたものの場合には、使用を繰り返しても重合が進みにくいので、安定して使用することができる。ピッチの場合には、オートクレーブを軟化点以上に加熱して、ピッチを液状にして使用する。
含浸が終了した後、上記脱脂工程と同様に脱脂を行うことにより、より高密度の成形体を得ることができる。
【0048】
[焼成工程(D)]
薄片体前駆体の積層体にさらに熱を加え焼成することにより、第1バインダは十分に炭化し、炭素質マトリックスを生成する。これにより薄片体前駆体は薄片体となり、薄片体の積層体により構成される本発明の炭素繊維構造体100を得ることができる。
焼成工程においては、温度の上昇と共に支持材は熱膨張し、薄片体前駆体の積層体60は熱収縮する。焼成工程で発生する熱膨張差による応力を回避するため薄片体前駆体の積層体60から支持材25を外し、還元性雰囲気又は不活性雰囲気等の非酸化性雰囲気下で加熱することが好ましい。有機物から発生する炭化水素ガス、水素又は一酸化炭素等を用いた還元性雰囲気、あるいは、窒素ガス又は希ガス等を用いた不活性ガス雰囲気が適用可能である。焼成工程の望ましい温度は、1500〜2800℃である。1500℃以上であれば、C/C複合材中の水素などの官能基を充分に除去できる。水素などの官能基が残留すると、構造体を使用する際に炭化水素ガス等が発生する。1500℃以上で焼成されていない構造体を半導体装置などで使用すると、半導体に混入し,純度を下げるおそれがある。2800℃以下であれば、炭素繊維強化炭素複合材の結晶化の進行を押さえることができ、強度を維持することができる。さらに望ましい範囲は1800〜2500℃である。加熱速度は500℃/H程度で行ことが好ましい。
【0049】
本発明によれば、多孔状型面21の形状を、所望とする構造体の形状に沿った形状とすることで、上記形状だけでなく、様々な立体形状の構造体を一体成形により製造することができる。これにより炭素繊維を均一に分散させることができるので、面の接合部などであっても構造的に弱い部分ができない。
【0050】
なお、密度を高めるため、焼成工程の前に含浸工程及び脱脂工程を複数回繰り返しても良い。
【0051】
(炭素繊維の平均繊維長)
本願における炭素繊維の平均繊維長<L>は、どのような方法で測定しても良い。原材料段階であれば、分散させた炭素繊維粉末を走査電子顕微鏡等で直接測定することによって得ることができる。炭素繊維の平均繊維長の算出方法は、下記式に示すように、任意の領域に存在する炭素繊維の長さLiを全て計測し、計測した炭素繊維の本数nで除することで求めることができる。(炭素繊維の太さ、密度は平均繊維長には寄与しない)
<L>=ΣL/n
また、C/C複合材中に含まれる状態での炭素繊維の平均繊維長も、どのような方法で測定しても良い。炭素繊維のみを単独で抽出することは容易にできないが、例えば集束イオン・電子ビーム加工観察装置(FIB-SEM)等の方法を用いれば計測することができる。具体的には、C/C複合材を表面から集束イオン・電子ビーム等を用いて少しずつ加工しながらSEMで繊維の立体的な配置を確認し、個々の繊維長を求めることができる。
【0052】
(実施形態2)
本発明の実施形態2の構造体について、図4に基づいて説明する。
実施の形態2の構造体200は、底面を有する点以外は、実施の形態1の構造体100と同様である。
実施の形態2の構造体200を製造するには、フロックの積層体50を形成する際に、図5(B)に示すように、多孔状型面31を側面及び底面に有する金型30を用いてフロック5を濾過する。また、図5(C)に示すように、加圧工程における支持材35を有底とする。それ以外は、実施の形態1の製造方法と同様である。フロック5は、多孔状型面30の面方向に連続した層として積層する。そして、図4(b)に示すように炭素繊維1の長手方向は、構造体200の面200Sの方向に平行に配向する。これにより、得られた構造体200は、底面と側面の境界領域においても薄片体が構造体200の面200Sに沿って配向するので、薄片体の境界が分散され、均一な構造体となる。
【0053】
なお、本発明において構造体の面方向とは構造体を構成する主要な面をいい、端面を含まないこととする。焼成後、表面を研磨加工したり、孔をあけたり、機械的加工を施したりすることで新たに形成される面も含まないこととする。おおむね抄造法による成型時の外表面に沿って、前記炭素繊維の長手方向が、連続的に配向した構成をとることで、極めて機械的強度が高く、耐熱性に優れたC/C複合材成形体を提供することができる。
【実施例1】
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例>
(1)炭素繊維の調整工程
CFRP用のPAN系炭素繊維を準備した。平均繊維直径は7μmであった。水への分散性を改善するために繊維表面に塗布されているサイジング剤を還元性雰囲気下550℃で焼成し除去した後、水に分散させ、平均繊維長150μmになるまでミキサで粉砕した後、脱水し乾燥させた。ここでは炭化水素ガスを多量に発生する有機物粉末とともに密閉容器の中で加熱し、密閉容器内を有機物から発生する炭化水素ガスでパージして還元性雰囲気を形成した。
(2)フロック形成工程
(a)前記炭素繊維調整工程で得られた炭素繊維を水に投入し撹拌しながら分散させた。撹拌は約3分間行った。
(b)次に炭素繊維100質量部に対し第1バインダとしてフェノール樹脂(エアウォーター社製「ベルパール(登録商標)」S890(200質量部)を加え、同様に1分間撹拌した。
(c)次に第2バインダとしてラテックス(5質量部)を加え、同様に1分間撹拌した。
(d)さらに、凝集剤としてカチオン系凝集剤(アライドコロイド社製「パーコール(登録商標)」292)(0.3質量部)を加え、20秒間撹拌し、フロックを形成した。
(3)フロック積層体形成工程(抄造工程)
フロックを形成した水を、外表面に開口1.0mmの金網を備えた円筒形の型で内側から吸引し、金網の表面にフロックを積層し、円筒形の積層体を形成した。開口1.0mmの金網であるが、炭素繊維はフロックを形成しているため、網を通過する炭素繊維はほとんど無かった。そのまましばらく放置し、重力で水分が除去されてから、約60℃の乾燥機で乾燥させた。
(4)成形工程(薄片体前駆体の積層体の形成)
前記工程で得られた積層体の内側に、金網のない円筒形の金型を挿入し、更に表面を密閉フィルムで覆い、オートクレーブに入れ150℃の熱を加えながら加圧した。加圧圧力は2MPaとした。
(5)硬化工程
オートクレーブで最大圧力のまま2時間放置した。この工程により、第1バインダ(フェノール樹脂)は硬化した。
(6)脱脂工程
前記硬化工程で得られた積層体の金型を外し、還元性雰囲気炉で加熱した。加熱は70℃/hの昇温速度で、最高温度550℃となった時点で1時間保持した後、放冷した。ここでは炭化水素ガスを多量に発生する有機物粉末とともに密閉容器の中で加熱し、密閉容器内を有機物から発生する炭化水素ガスでパージして還元性雰囲気を形成した。
(7)(含浸工程)
第1脱脂工程までに、所望の嵩密度が得られていない場合には、更に含浸を行う。
本実施例では、脱脂後の積層体を200℃に加熱したオートクレーブ中にいれ、真空引きした後に軟化点約80℃のピッチを流入し、4MPaで加圧し、積層体中にピッチを含浸した。
(8)(第2の脱脂工程)
含浸工程を経た積層体は再度脱脂を行う。条件は(6)の脱脂工程と同様に行った。
(9)焼成工程
含浸を行った積層体は、最後に焼成を行った。還元性雰囲気下で、150℃/hの昇温速度で加熱し、最高温度2000℃となった時点で15分保持した後、放冷した。還元性雰囲気は、カーボン粉末に積層体を埋めて、外部からの酸素を遮断して加熱することで発生する炭化水素ガス、水素、一酸化炭素等の混合ガスにより形成した。この焼成工程により、第1バインダからマトリックスを生成し、炭素繊維の接着力が強まり、強度を発現することが出来る。このようにして、内直径1000mm、高さ1000mm、厚さ25mmの、円筒形の構造体を得た。
【0055】
<比較例>
フェルトが積層したC/C複合材からなる比較例の構造体を製造した。まず、PAN系炭素繊維を30mmに切断し、シート状のフェルトを形成した。次にフェノール樹脂のメタノール溶液中に浸漬し、ロールプレスにより3mm厚の炭素繊維シートプリプレグを形成した。このようにして形成された炭素繊維シートプリプレグをマンドレルに周回し、フェルト状のシートの積層された成形体を形成した。
次に、前記工程で成形された成形体を150℃で保持することによりフェノール樹脂を硬化させ、形状を固定化した。
次に、前記実施例と同様に脱脂、含浸、脱脂、焼成を行い、内直径600mm、高さ600mm、厚さ25mmの、円筒形の構造体を得た。
【0056】
<物性評価>
・剥離試験
本実施例で得られた構造体は、構造体の面方向に配向した薄片体が形成されており、端部からナイフで構造体の面に平行方向に切れ込みを入れたが容易に剥離することができなかった。
本比較例で得られた構造体は、年輪状の層構造が形成されていた。端部よりナイフを構造体の面に平行方向に切れ込みを入れると容易に剥離することができた。
【0057】
・嵩密度及び曲げ強度
本実施例及び比較例で得られた構造体から、円筒形の高さ方向に長い直方体の物性測定サンプルをそれぞれ2本得た。この物性測定サンプルの嵩密度及び曲げ強度を測定した。曲げ強度は、島津製作所社製オートグラフ(AG−IS型:0〜5kN)を用い3点曲げ試験を行って測定した。図11は、物性測定サンプルの取り出し方向および3点曲げ試験の試験方向を示す模式図である。3点曲げ試験は、図11に示すように構造体の面方向に対して垂直方向(薄片体の積層方向)V及び平行方向Pの2方向から行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、本実施例で得られた構造体は、薄片体が積層されて構成されており、さらに、厚さ方向(薄片体の積層方向)に隣接する薄片体をつなぐ炭素繊維成分の存在により、均質な構造体が得られ、構造体の面方向に垂直であっても平行であってもほぼ同等の3点曲げ強度が得られた。
本比較例で得られた構造体は、構造体の面方向に平行な方向に比べ、垂直な方向の強度が大きく低下している。構造体の面方向に垂直な方向での3点曲げ試験では、積層されたシートが剥離するように破壊された。
本比較例では、シートが積層されて構成されおり、厚さ方向に配向してシート間をつなぐ炭素繊維成分が存在しないので、シート間の接合力が弱く、構造体の面方向に垂直な方向での3点曲げ試験では、著しい強度の低下が見られた。また構造体の面方向に平行な方向での3点曲げ試験でも、シートの剥離が見られ、実施例に比べ低い強度しか得られなかった。
【0060】
・表面及び断面の観察
上記実施例及び比較例で得られた各構造体の表面及び断面を、各種写真により観察した。
(偏光顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(SEM)写真用の試料の作成方法)
実施例、比較例で製造したC/C複合材の試料をエポキシ樹脂に包埋し、機械研磨法により断面を作製した後、フラットミリング処理(45°、3分)を行った。Pt―Pdスパッタを施した断面をFE−SEM、及び偏光顕微鏡にて観察した。ここでエポキシ樹脂は、軟らかい試料、変形しやすい試料、細かな試料などから平坦な面を切り出すために試料を固定するために用いた。例えば粉末の断面や、繊維の断面など通常は断面加工が難しいが、エポキシ樹脂で固定すると、観察可能となる。
(分析装置および測定条件)
[フラットミリング]
装置 :hitachi E−3200
出力 :5kV、0.5mA
[FE−SEM]
装置 :Jeol、JSM−7001F
加速電圧:5kV
観察像:二次電子像
[偏光顕微鏡]
装置 :ニコン製
【0061】
図6(A)は実施例の構造体の断面の写真、図6(B)は比較例の構造体の断面の写真である。写真上下方向が構造体の厚さ方向(積層方向)であり、横方向が面方向である。実施例の構造体は、構造体の面方向に配向した薄片体が形成され、薄片体の境界が分散された均一な構造体となっていることが分かる。比較例の構造体は、年輪状の層構造が形成されていることが分かる。
【0062】
図7(A)は、本発明の実施例1の円筒形構造体の内表面の写真である。図7(B)は、図7(A)の写真の中で観察される薄片体を示す。図7(B)における実線領域が各々の薄片体3を示す。図7(C)は、図7(A)の表面から剥離された薄片体の写真を示す。内表面は支持材25を用いて成形しているので大きな凹凸のない平坦な面が得られているが、表面にはフロックから形成された面方向に平行に配向した薄片体が露出しているのを確認することができる。この薄片体は、構成する炭素繊維が面方向に平行に配向しているので、端部の露出した部位から少しずつ引きはがすことができるが、薄片体が一枚ずつ剥がれるのみで炭素繊維構造体全体に至る剥離は起こらない。このような剥離は、炭素繊維構造体を層方向に破壊した破断面でも同様に確認することができる。
【0063】
図8(A)は、比較例の構造体の断面を拡大したSEM写真を示し、図8(B)はその模式図を示す。写真横方向が構造体の厚さ方向(シートの積層方向)であり、上下方向が面方向である。シート界面部の繊維が界面に沿って強く平行に配向していることが確認できる。
【0064】
図9は、実施例の構造体の断面のSEM写真である。写真上下方向が構造体の厚さ方向(薄片体の積層方向)であり、横方向が面方向である。図9(A)は倍率100、(B)は倍率200、(C)は倍率500での写真である。図9(A)は、断面のSEM写真であり、写真の中で観察される薄片体を示す。図9(A)における実線領域が各々の薄片体3を示す。図9(B)は、図9(A)の薄片体部分をさらに拡大したSEM写真である。図9(C)は図9(B)の薄片体部分をさらに拡大したSEM写真である。図9(A)に示すように薄片体は、炭素繊維構造体の面方向に平行に配向しながら積層していることが確認できる。
【0065】
図10は、比較例の構造体の断面のSEM写真であり、写真上下方向が構造体の厚さ方向(シートの積層方向)であり、横方向が面方向である。図10(A)は倍率50、(B)は倍率200、(C)は倍率500の写真である。図10(B)は、図10(A)の拡大したSEM写真、図10(C)は、図10(A)をさらに拡大したSEM写真である。図10(B)及び(C)で確認されるように、炭素繊維構造体の面方向に平行に炭素繊維が強く配向した領域が存在し、この領域では厚み方向の繊維のつながりがほとんど形成されていないことが確認される。このため、比較例では図10(B)、図10(C)で写真上下方向の張力に対して、前記の炭素繊維が強く配向した領域が欠陥となっていることがわかる。
【0066】
図12(A)は本発明の構造体の断面の偏光顕微鏡写真である。写真上下方向が構造体の厚さ方向(薄片体の積層方向)であり、横方向が面方向である。また、図12(B)は比較例の構造体の断面の偏光顕微鏡写真である。写真上下方向が構造体の厚さ方向(シートの積層方向)であり、横方向が面方向である。偏光顕微鏡は結晶の配向方向によって異なる色で観察されるので繊維、マトリックスを容易に区別することが出来、観察面との関係により繊維は線状、楕円状、円形状となって観察される。また、図中の濃い灰色で濃淡のない部位は、封止樹脂として用いたエポキシ樹脂Eであり、それ以外の領域は、図12(A)では炭素繊維構造体100(マトリックス及び炭素繊維を含む薄片体)であり、図12(B)では炭素繊維構造体Cである。
図12(A)の実線で囲んだ領域内に、写真の上下方向(薄片体の積層方向)に隣接する薄片体同士をつなぐ炭素繊維1の成分が確認できた。一方、図12(B)ではそのような炭素繊維成分は観察されなかった。
【0067】
図12(A)のような偏光顕微鏡写真において、薄片体同士をつなぐ炭素繊維が観察されるためには、観察面に炭素繊維が存在し、かつ炭素繊維の長手方向が観察面に含まれなければならない。図12(A)において、写真の上下方向(薄片体の積層方向)に隣接する薄片体同士をつなぐ炭素繊維成分が確認できたため、他にも多くの観察出来ない上下方向(薄片体の積層方向)に隣接する薄片体同士をつなぐ炭素繊維成分が存在しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の炭素繊維構造体は、耐熱性、化学的安定性、強度が優れているため、シリコン単結晶引き上げ装置、化合物半導体結晶引き上げ装置、太陽電池用シリコン製造装置(シリコン薄膜製造装置、シリコンインゴットの製造装置)、原子力、核融合、冶金分野等で用いられる装置部品など、高温下で用いられる部材、あるいは宇宙部品、航空部品など、温度変化に対しても高強度を維持する必要のある分野などで多く用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
100、200 構造体
1 炭素繊維
2 炭素質マトリックス
3 薄片体
4 バインダ、第1バインダ
5 フロック
50 フロックの積層体(第一成形体)
6 薄片体前駆体
60 薄片体前駆体の積層体(第二成形体)
7 第2バインダ
20、30 金型
21、31 多孔状型面
21A 開口
22 減圧室
23 配管
24、34 密閉フィルム
25、35 支持材
26、36 オートクレーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と炭素質マトリックスとを含む炭素繊維強化炭素複合材を含む炭素繊維構造体であって、
前記炭素繊維は直線状繊維からなり、
前記炭素繊維は、前記炭素質マトリックス内で前記炭素繊維の長手方向が前記炭素繊維構造体の面方向に平行に配向した薄片体を形成し、
前記炭素繊維構造体は、該薄片体が積層された積層体により構成される炭素繊維構造体。
【請求項2】
前記炭素繊維の一部が、前記薄片体の積層方向に隣接する薄片体をつなぐ成分を含む、請求項1に記載の炭素繊維構造体。
【請求項3】
前記薄片体は、前記薄片体の積層方向に隣接する薄片体の端部が該積層方向にずれるように配置される、請求項1又は2に記載の炭素繊維構造体。
【請求項4】
前記炭素繊維の平均繊維長は1.0mm未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維構造体。
【請求項5】
前記炭素繊維の前記炭素繊維構造体の面方向に対して垂直方向の配向成分が該垂直方向に連続的に存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭素繊維構造体。
【請求項6】
嵩密度が1.2g/cm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭素繊維構造体。
【請求項7】
炭素繊維と、炭素質マトリックスの前駆体成分であるバインダとを液体中に懸濁させると共に凝集剤を加え、前記炭素繊維と前記バインダとを凝集させてフロックを形成する工程(A)と、
前記フロックを形成した液体を、多孔状型面を有する金型で濾過することにより、該多孔状型面の表面に前記フロックを積層し、該フロックの積層体を形成する工程(B)と、
前記フロックの積層体を加圧し、前記炭素繊維の長手方向を前記多孔状型面の面方向に平行に配向させて、該フロックを薄片化することにより、薄片体前駆体の積層体を形成する工程(C)と、
前記薄片体前駆体の積層体を焼成し、前記バインダを炭化して炭素質マトリックスを生成することにより、薄片体の積層体を形成する焼成工程(D)と、を具備する、炭素繊維構造体の製造方法。
【請求項8】
前記工程(B)における濾過が吸引濾過である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程(A)が、炭素繊維と、炭素質マトリックスの前駆体成分である第1バインダと、前記炭素繊維と前記第1バインダとを結合させる成分である第2バインダとを、液体中に懸濁させると共に凝集剤を加え、前記炭素繊維と前記第1バインダと前記第2バインダとを凝集させてフロックを形成する工程である、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程(C)が、前記フロックの積層体をフィルムで被覆した状態でオートクレーブにより加熱圧縮を行い、前記炭素繊維の長手方向を前記多孔状型面の面方向に平行に配向させて、該フロックを薄片化することにより、薄片体前駆体の積層体を形成する工程である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記炭素繊維の平均繊維長が、前記多孔状型面の開口の大きさよりも小さい、請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。

【図2】
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【図11】
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【図13】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−36016(P2012−36016A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174966(P2010−174966)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】