説明

炭素繊維製造用表面処理装置

【課題】オーバーフローする電解液の高さが均一な炭素繊維製造用表面処理装置を提供する。
【解決手段】複数の内槽3と、前記内槽3を内部に備える外槽13と、前記外槽13の下方に設けられた密閉電解液プールタンク23と、前記各内槽3内と密閉電解液プールタンク23とを連通する1以上の電解液供給路10bと、前記外槽13内の電解液を受け入れて貯留する電解液貯留タンク17と、前記電解液貯留タンク17内の電解液を電解液プールタンク23に供給する電解液供給管10と、前記電解液供給管に介装されたポンプ19と、バルブ25とを有する炭素繊維製造用表面処理装置であって、前記電解液供給路の数が内槽機幅1m当たり5以下であり、電解液供給路の長さL8の合計が内槽機幅L1の75〜100%であり、電解液供給路の長さL4が、内槽の長さL2の25〜100%である炭素繊維製造用表面処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維を電解液に浸漬して電解することにより、炭素繊維表面を電解酸化処理する炭素繊維製造用表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を炭素繊維で補強した炭素繊維複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、耐熱性、疲労特性に優れるなどの特長を有しており、スポーツ・レジャー、航空・宇宙等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
炭素繊維は、アクリル繊維等の原料繊維を空気中で200〜300℃に加熱することにより耐炎繊維とした後、不活性ガス雰囲気中1000℃以上で焼成することにより製造される。
【0004】
炭素繊維複合材料の強度・弾性率等の機械的特性は、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性により大きな影響を受ける。そのため、耐炎化工程、炭素化工程を経た後、マトリックス樹脂との親和性を高めることを目的として炭素繊維の表面に含酸素官能基を導入する酸化処理が一般に行われる。
【0005】
炭素繊維表面の酸化処理としては、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などの方法が知られている。これら表面処理のうち、生産性が高く、処理が均一に行える等の理由により、液相における電解酸化処理が広く採用されている。液相における電解酸化処理は、電解質水溶液中で二つの電極間に電圧を印加することにより、電解質水溶液中を走行する炭素繊維を電解酸化する処理方法である。
【0006】
炭素繊維は、その製造工程において1,000〜80,000本程度のストランド状にして製造される。炭素繊維の表面処理を行う。電解槽としては、従来様々な構造のものが開発されている。例えば、電解槽から電解液をオーバーフローさせ、液面が電解槽の側壁の上端を乗り越えているオーバーフロー部に炭素繊維を通過させて電解することにより、表面処理を行うオーバーフロー型の電解槽が従来用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この電解槽においては、炭素繊維を電解液に浸漬したり、電解液から炭素繊維を引き上げたりするためのガイドローラーを使用する必要がない。そのため、炭素繊維に毛羽を生じにくく、品位の高い製品が得られる利点を有している。
【0008】
本発明者は、多数の炭素繊維ストランド間で炭素繊維表面が均一に酸化処理される装置について検討を行った結果、電解槽内に電解液流入口からの距離に応じて開口率を変化させた多孔板を整流板として水平に挿入することにより、ストランドに供給される電解液の流量がストランド間で一定となり、ストランド間の表面処理状態のバラツキが抑制されることを見出し、先に特許出願を行った(特許文献2)。
【0009】
この装置は、内槽内部に多孔板を設置しているため、内槽の機幅方向における全ての測定点でオーバーフローのバラツキはかなり抑制された。しかし、まだ不充分であった。
【0010】
また、この装置では、外槽内に複数配置された、それぞれの内槽におけるオーバーフロー高さのバラツキについては検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭58−115123号公報 (図1)
【特許文献2】特開2008−248411号公報 (特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、上記問題を解決するため検討を重ねているうちに、内槽下方に、電解液プールタンクを設けると共に、前記電解液プールタンクと内槽との間を機幅方向に長い電解液流路で連結することにより、内槽内に多孔板を設置することなく、オーバーフロー高さを均一化することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
よって、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した炭素繊維製造用表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔1〕 内槽内の下方から上方へ向かって電解液を流通させ、上端から電解液をオーバーフローさせる複数の内槽と、所定間隔離間して水平方向に直列に配列された複数の前記内槽を内部に備えると共に各内槽からオーバーフローする電解液を受け入れる外槽と、前記外槽の下方に設けられた密閉電解液プールタンクと、前記外槽の底壁を貫通して前記各内槽内と密閉電解液プールタンクとを連通する1以上の電解液供給路と、前記外槽内の電解液を受け入れて貯留する電解液貯留タンクと、前記電解液貯留タンク内の電解液を電解液プールタンクに供給する電解液供給管と、前記電解液供給管に介装されたポンプと、バルブとを有する炭素繊維製造用表面処理装置であって、前記電解液供給路が、内槽機幅方向に沿って配列された内槽機幅1m当たり5以下の電解液供給路であり、内槽機幅方向に沿った電解液供給路の長さの合計が内槽機幅の75〜100%であり、内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液供給路の長さが、内槽機幅方向の直角方向に沿った内槽の長さの25〜100%である炭素繊維製造用表面処理装置。
【0015】
〔2〕 電解液プールタンクの内槽機幅方向の直角方向に沿った長さが、複数の内槽からなる内槽群の両端間の距離以上であり、内槽機幅方向に沿った長さが、内槽の機幅以上であり、容積が、内槽の容積の10倍以上である〔1〕に記載の炭素繊維製造用表面処理装置。
【0016】
〔3〕 ポンプと電解液プールタンクとの間に介装されてなる電解液中継タンクであって、前記ポンプから送られる電解液を受け入れ、その上端からオーバーフローする電解液を電解液プールタンクに送る電解液中継タンクの上端の高さ位置が、内槽の高さ位置より50mm以上上方に設置されてなる〔1〕に記載の炭素繊維製造用表面処理装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の表面処理装置は、内槽下方に電解液プールタンクを設けると共に、内槽と電解液プールタンクとを、機幅方向に沿った長さの合計が内槽機幅の75〜100%である電解液供給路で連結したので、内槽内に多孔板を設置することなく、オーバーフロー高さを均一化することができる。
【0018】
上記電解液プールタンクの内槽機幅方向に沿った長さを、内槽の機幅以上とする場合には、上記効果は更に高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の表面処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の表面処理装置に使用する電解槽内槽の一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明の表面処理装置に使用する電解液供給路の一例の概略説明図である。
【図4】本発明の表面処理装置に使用する電解液供給路の他の例の概略説明図である。
【図5】本発明の表面処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図6】従来の表面処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】従来の表面処理装置に使用する電解槽内槽の一例を示す概略平面図である。
【図8】従来の表面処理装置に使用する電解槽内槽の一例を示す概略側面断面図である。
【図9】従来の表面処理装置に使用する電解槽内槽の一例を示す概略正面断面図である。
【図10】従来の表面処理装置に使用する整流板の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の形態
本発明で使用する表面処理装置の一例の概略構成図を図1に示す。
【0021】
図1中、100は表面処理装置で、1は箱形の電解槽である。電解槽1は複数の箱形の内槽3と、前記内槽をその内部に収納する外槽13とからなる。内槽3の下方には、密閉構造の箱形に形成された電解液プールタンク23が設けられている。前記電解液プールタンク23内と前記各内槽3内とは、前記外槽13の底壁13bを貫通して両者内を連通させる電解液供給路10bが設けられている。
【0022】
内槽3の概略平面図を図2に、電解液供給路10bの正面断面図を図3に示す。
【0023】
図2及び3において、箱形に形成された内槽3の上端3aは開放され、下端は下壁3bにより閉塞されている。下壁3bには、流入口9が形成されている。流入口9には、電解液供給路10bの一端が接続されている。電解液供給路10bの他端は電解液プールタンク23の上面に連結されている。これにより、内槽3の内部と電解液供給路10bの内部とは連通される。電解液供給路10bの形状は角筒状、即ち水平方向断面形状は内槽3の機幅方向に長い長方形が好ましいが、円形や正方形等、特に形状は限定されるものではない。
【0024】
内槽3内には、その下部側にL字状の平板状で形成された電極5が下壁3bに沿って挿入されている。電極5は、図4に示すように一端側が内槽3の側壁3cに沿って折り曲げられ、電解槽1の外部で不図示の保持部材により支持されると共に、外部電源に接続されている。
【0025】
図2及び3中、矢印Xは炭素繊維ストランド11の走行方向を、矢印Y(即ち、矢印Xの直角方向)は装置の機幅方向を示す。電極5のX方向の長さと、Y方向の長さは、それぞれ内槽3の内長L2、内幅L1より短く形成されている。電極5のX方向の長さは内槽3の内長L2の20〜90%であり、Y方向の長さは内槽3の内幅L1の60〜100%である。
【0026】
図1に示すように、外槽13内には、多数(図1の例では4台)の内槽3が、炭素繊維ストランド11の走行方向Xに沿って直列に連設されている。隣り合う内槽3の中央間距離は、内槽の内長L2に対し115〜250%程度である。多数の内槽3内に備えられた電極5には、隣り合う内槽間で交互に陽極と陰極として作用するよう電圧が印加されている。
【0027】
内槽3は、その上端3aが外槽の上端13aと同じ高さ又は外槽の上端13aより高くなるように配設されている。外槽13の下壁13bには、排出口15が形成されている(図1)。
【0028】
排出口15には排出管21の一端が接続されている。排出管21の他端は電解液貯留タンク17の上部に接続されている。排出口15から流出した電解液は、排出管21を通って電解液貯留タンク17内に流入する。
【0029】
電解液貯留タンク17と電解液プールタンク23とは、電解液供給管10により接続されている。電解液供給管10には、ポンプ19、バルブ25が介装されている。
【0030】
電解液貯留タンク17は、その側面におけるタンク高さの半分より下部又はタンク底部に循環液送液用のポンプ19への電解液抜出用の配管が設けられ、液面警報及び/又は液面制御装置27、並びに電解液補給手段29を有し、液面が電解液抜出口の上端よりも下がる前に電解液補給可能な構造のものを用いることができる。
【0031】
外槽13内の電解液は排出管21を通り、電解液貯留タンク17に送られ、ポンプ19で加圧された後、バルブ25で流量を調節される。その後、電解液供給管10を通って電解液プールタンク23に圧送される。
【0032】
電解液プールタンク23は密閉されているので、電解液は電解液供給路10bを通って内槽3の下部から内槽3内に送られ、その後内槽3上端13aからオーバーフローして外槽13内に流下する。以後、外槽13内の電解液は、前記と同じ流路を通って、表面処理装置内を循環することを繰り返す。
【0033】
電解液供給路10bは、図2、3の例のように各内槽3に対して1供給路を接続されたものが好ましいが、複数であっても良い。図4の例のように、複数に分割された電解液供給路101、102、103、104、105であっても良い。この例では、各内槽3に対して内槽機幅方向に沿って水平方向に直列に5供給路配列されている。但し、各内槽3に対する電解液供給路の数は内槽機幅1m当たり5以下である。
【0034】
図2、3の例の場合、内槽機幅方向に沿った電解液供給路10bの長さ(流入口9の機幅方向の口径)L3は、内槽機幅L1の75〜100%である。内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液供給路の長さL4は、内槽機幅方向の直角方向に沿った内槽の長さL2の25〜100%である。
【0035】
図1に示されるように、電解液プールタンク23の大きさにおいて、内槽機幅方向の直角方向に沿った長さ(炭素繊維ストランド11の走行方向Xに沿う長さ)L5は、外槽13内の内槽群の両端間の距離L6以上であることが好ましい。電解液プールタンク23の内槽機幅方向に沿った長さL7は、内槽の機幅L1以上であることが好ましい。電解液プールタンク23の容積は、内槽容積の合計の10倍以上であることが好ましく、20〜100倍であることがより好ましい。
【0036】
外槽13内に配設する内槽3の数は、2〜32とすることが好ましく、4〜24とすることがより好ましい。
【0037】
図4の例の場合、内槽機幅方向に沿った個々の電解液供給路の長さL8の合計は、内槽機幅L6の75〜100%である。図4の例の場合における、内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液供給路の長さ、内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液プールタンク23の長さ、内槽機幅方向に沿った電解液プールタンク23の長さ、並びに、電解液プールタンク23の容積は、図2、3の例の場合と同様であることが好ましい。
【0038】
本例の表面処理装置100によれば、上記のように、内槽3下方に、電解液プールタンク23及び内槽の機幅方向に長い電解液供給路10bを設置してなるので、内槽内に多孔板を設置することなく、オーバーフロー高さを均一化することができる。
【0039】
具体的には、内槽内に多孔板を設置する場合は、オーバーフロー高さが全ての測定点において3〜4mmの範囲内であったが、本例の表面処理装置100によれば、オーバーフロー高さは、全ての測定点において4.0〜4.5mmの範囲内であり、より精度の高い均一化を実現できる。
【0040】
炭素繊維ストランド11は、内槽3上方で内槽から外槽13へオーバーフローする電解液中を通過することにより電解液に浸漬される。炭素繊維は導電性が高いので、隣り合う内槽3の間で交互に陽極又は陰極として作用する電極5に電圧を印可することにより電解液中で炭素繊維の表面が電解酸化される。これにより、カルボキシル基、カルボニル基等の含酸素官能基が炭素繊維表面に導入される。炭素繊維ストランド11は、電解槽1上を通過することにより、内槽から外槽にオーバーフローする電解液に繰り返し浸漬され、表面が繰り返し電解酸化処理される。炭素繊維ストランド11は、電解槽通過終了と共に電解酸化処理が終了し、水洗、サイズ剤付与、乾燥等の後工程に送られる。その後、ワインダーに巻き取られて最終製品となる。
【0041】
本発明の処理装置を用いて炭素繊維を処理する場合、電解液のオーバーフロー高さは4.0〜4.5mmにすることが好ましい。
【0042】
炭素繊維の電解酸化処理に用いる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類などの電解質水溶液を挙げることができる。
【0043】
本発明で電解酸化処理する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維以外に、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。
【0044】
炭素繊維ストランド11は、通常、直径4〜12μmのフィラメントが1000〜80000本程度集合した束形状に製造される。本発明の処理装置では、上記繊維径、フィラメント数に限定されず、いかなる繊維径、フィラメント数のものでも処理することが可能である。
【0045】
炭素繊維ストランド11に通電する電気量は、電解液に使用する電解質の種類や炭素繊維ストランド11の弾性率等の条件に応じて適宜決定すればよい。例えば、電解液に硫酸アンモニウム水溶液を用いて弾性率235GPaの炭素繊維の電解酸化処理を行う場合には、炭素繊維に通電する電気量を3〜40C/gとすることが好ましく、4〜30C/gとすることがより好ましい。
【0046】
炭素繊維ストランド11の電解酸化処理温度は10〜80℃の範囲とするが、20〜50℃とすることが好ましい。
【0047】
炭素繊維ストランド11の表面処理を行う際の指標としては、X線光電子分光法(ESCA)を用いて測定できる炭素繊維の表面酸素濃度比(O/C)により管理するのが良い。炭素繊維を熱硬化性樹脂に配合して複合材料とする場合には、O/Cが、0.05〜0.4となるように電解酸化処理することが好ましい。
【0048】
第2の形態
本発明第2形態の表面処理装置は、図5の概略構成図に示すように、ポンプ19と電解液プールタンク23との間の電解液供給管10に、電解液中継タンク31を更に介装してなる。電解液中継タンク31は、前記ポンプ19から送られる電解液を受け入れ、その上端31aからオーバーフローする電解液を電解液プールタンク23に送るものである。電解液中継タンク31の上端31aの高さ位置は、内槽上端3aの高さ位置より50mm以上上方に、好ましくは90〜1000mm上方に設置されている。
【0049】
この電解液中継タンク31を用いることにより、ポンプ19の脈流などの圧変動を吸収緩和することができ、安定してオーバーフロー高さを均一化することができる。
【実施例】
【0050】
実施例1
図1の概略構成図に示す構造を備えた表面処理装置を用い、以下
内槽:4台(内槽寸法:機幅方向2400mm、奥行50mm、高さ50mm、内槽容積:0.006m3、最上流内槽入側の端部から最下流内槽出側の端部までの距離:360mm、内槽内に電極設置)
外槽:1台(外槽寸法:機幅方向2500mm、奥行450mm)
電解液貯留タンク:1台(容積:1.2m3、高さ:600mm、電解液抜出口位置:側面の底面より100mmの位置に抜出口中心、液面警報装置及び電解液補給口付き、電解液貯留タンクの上面は外槽の底面よりも0.2m下方に位置させた)
電解液送液用ポンプ:1台
電解液プールタンク:1台(タンク寸法:機幅方向2500mm、奥行650mm、高さ300mm、タンク容積:0.49m3…内槽容積合計の20倍)
電解液プールタンクと各内槽とを連結する電解液供給路:4セット(各断面形状:25mm×2400mm×1供給路、電解液供給路の機幅方向長さ:内槽機幅の100%、電解液供給路の機幅方向に直角方向の長さ:内槽奥行の50%)
炭素繊維処理量:10.0kg/hr
電解液:硫酸アンモニウム(10%)水溶液、流量0.6m3/min
の条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。図中、矢印Xは炭素繊維ストランドの走行方向を示す。
【0051】
実施例2
電解液プールタンクについて、寸法を機幅方向2500mm、奥行360mm、高さ300mm、タンク容積:0.27m3…内槽容積合計の11倍とし、電解液受入れ口の位置を電解液プールタンクの側面とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0052】
実施例3
電解液プールタンクについて、寸法を機幅方向2400mm、奥行650mm、高さ300mm、タンク容積:0.47m3…内槽容積合計の20倍とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0053】
実施例4
電解液プールタンクと各内槽とを連結する電解液供給路の形状について、各断面形状:25mm×150mm×12供給路×4セット(電解液供給路の機幅方向長さ合計::内槽機幅の75%、電解液供給路の機幅方向に直角方向の長さ:内槽奥行の50%)とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0054】
実施例5
表面処理液プールタンクと各内バスとを連結する電解液供給路の形状について、各断面形状:25mm×1800mm×1供給路×4セット(電解液供給路の機幅方向長さ合計::内槽機幅の75%、電解液供給路の機幅方向に直角方向の長さ:内槽奥行の50%)とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0055】
実施例6
実施例1に記載の装置の電解液流量調整バルブと電解液プールタンクとの間に電解液中継タンク(容積:0.9m3)を、オーバーフロー高さ位置が内槽上端よりも0.1m上部に位置するように設置し、電解液送液用ポンプにより送られた電解液を電解液中継タンクにて一旦受け、オーバーフローさせることで電解液プールタンクに送液される構造(図5参照)とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0056】
以上の実施例1〜6において、処理中に内バスオーバーフロー部(下流側)の各8点(内槽両端を各50mm空けて、測定点間隔:100mm)、計32点においてオーバーフロー高さを測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
その結果、何れの測定点においても4.0〜4.5mmのオーバーフロー高さが得られ、標準偏差は全て0.11以内であった。
【0058】
【表1】

【0059】
比較例1
電解液プールタンクについて、寸法を機幅方向2200mm(<内槽機幅:2400mm)、奥行650mmとした以外は、実施例5と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0060】
比較例2
電解液プールタンクと各内槽とを連結する電解液供給路の形状について、各断面形状:25mm×120mm×15供給路(内槽機幅1m当たり6.3供給路)×4セットとした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0061】
比較例3
電解液プールタンクと各内槽とを連結する電解液供給路の形状について、各断面形状:25mm×1600mm(内槽機幅の67%)×1供給路×4セットとした以外は、実施例1と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0062】
比較例4
電解液中継タンクのオーバーフロー高さ位置が内槽上端よりも0.045m上方に位置すること以外は、実施例6と同じ条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。
【0063】
比較例5
図6の概略構成図に示す構造を備えた表面処理装置を用い、以下
内槽(図7に概略平面図を、図8に概略側面断面図を、図9に概略正面断面図を示す):4台[内槽寸法:機幅方向2400mm、奥行50mm、高さ50mm、内槽容積:0.006m3、最上流内槽入側の端部から最下流内槽出側の端部までの距離:360mm、内槽内に電極及び整流板(図10、表2に示す厚さ5mmの多孔板)を設置]
外槽:1台(外槽寸法:機幅方向2500mm、奥行450mm)
電解液貯留タンク:1台(容積:1.2m3、高さ:600mm)
電解液送液用ポンプ:1台
電解液流入口:内槽の底面中央に1箇所(口径:40mm)
炭素繊維処理量:10.0kg/hr
電解液:硫酸アンモニウム(10%)水溶液、流量0.6m3/min
の条件で炭素繊維ストランドを電解酸化処理した。図中、矢印Xは炭素繊維ストランドの走行方向を示す。
【0064】
以上の比較例1〜5において、実施例1〜6の場合と同様にオーバーフロー高さを測定した。その結果を表3に示す。
【0065】
その結果、何れの比較例においても、オーバーフロー高さが4.0〜4.5mmの範囲内に入らない測定点が存在し、標準偏差は0.15を超える部分が存在する。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【符号の説明】
【0068】
1 電解槽
3 内槽
3a 内槽の上端
3b 内槽の下壁
3c 内槽の側壁
5 電極
7 整流板
7a 貫通孔
9 流入口
10、33、35、39 電解液供給管
10b、101、102、103、104、105 電解液供給路
11 炭素繊維ストランド
13 外槽
13a 外槽の上端
13b 外槽の下壁
15 外槽の排出口
17 電解液貯留タンク
19 ポンプ
21 排出管
23 電解液プールタンク
25、37 バルブ
27 液面警報及び/又は液面制御装置
29 電解液補給手段
31 電解液中継タンク
31a 電解液中継タンクの上端
100、200、300 表面処理装置
1 内槽の内幅
2 内槽の内長
3 内槽機幅方向に沿った電解液供給路の長さ
4 内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液供給路の長さ
5 内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液プールタンクの長さ
6 配列された複数の内槽からなる内槽群の両端間の距離
7 内槽機幅方向に沿った電解液プールタンクの長さ
8 内槽機幅方向に沿った個々の電解液供給路の長さ
1、S2、S3、S4 整流板の区分
X 炭素繊維ストランドの走行方向
Y 表面処理装置の機幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽内の下方から上方へ向かって電解液を流通させ、上端から電解液をオーバーフローさせる複数の内槽と、所定間隔離間して水平方向に直列に配列された複数の前記内槽を内部に備えると共に各内槽からオーバーフローする電解液を受け入れる外槽と、前記外槽の下方に設けられた密閉電解液プールタンクと、前記外槽の底壁を貫通して前記各内槽内と密閉電解液プールタンクとを連通する1以上の電解液供給路と、前記外槽内の電解液を受け入れて貯留する電解液貯留タンクと、前記電解液貯留タンク内の電解液を電解液プールタンクに供給する電解液供給管と、前記電解液供給管に介装されたポンプと、バルブとを有する炭素繊維製造用表面処理装置であって、前記電解液供給路が、内槽機幅方向に沿って配列された内槽機幅1m当たり5以下の電解液供給路であり、内槽機幅方向に沿った電解液供給路の長さの合計が内槽機幅の75〜100%であり、内槽機幅方向の直角方向に沿った電解液供給路の長さが、内槽機幅方向の直角方向に沿った内槽の長さの25〜100%である炭素繊維製造用表面処理装置。
【請求項2】
電解液プールタンクの内槽機幅方向の直角方向に沿った長さが、複数の内槽からなる内槽群の両端間の距離以上であり、内槽機幅方向に沿った長さが、内槽の機幅以上であり、容積が、内槽の容積の10倍以上である請求項1に記載の炭素繊維製造用表面処理装置。
【請求項3】
ポンプと電解液プールタンクとの間に介装されてなる電解液中継タンクであって、前記ポンプから送られる電解液を受け入れ、その上端からオーバーフローする電解液を電解液プールタンクに送る電解液中継タンクの上端の高さ位置が、内槽の高さ位置より50mm以上上方に設置されてなる請求項1に記載の炭素繊維製造用表面処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate