説明

炭酸ガスレーザー孔あけ用補助シート

【課題】 銅張板に、炭酸ガスレーザーを直接照射して、小径のスルーホール等を精度良く、高速であけるための補助材料を得る。
【解決手段】 少なくとも1層以上の銅の層を有する熱硬化性樹脂銅張板の銅箔の上に、金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉3〜97容積%を含む樹脂組成物層を熱可塑性フィルム上に付着させた総厚み30〜200μmの補助シートを、樹脂層面が銅箔側になるように配置し、加熱、加圧下に、或いは樹脂表層3μm以下に水分を含ませ、室温、加圧下にラミネートして密着させてから、炭酸ガスレーザーを出力20〜60mJ/パルスにて直接照射することにより、表面の銅箔に孔を形成でき、且つ、孔壁の良好な孔を形成する。
【効果】 孔あけ用補助シートを密着させて用いることにより、炭酸ガスレーザーを直接照射して、スルーホール用貫通孔、ビア孔を精度良く、高速にあけることができ、経済性の改善されたプリント配線板を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも1層以上の銅の層を有する銅張板の銅表面に、炭酸ガスレーザーを直接照射して、孔あけする際に使用される孔あけ用補助シートに関する。両面銅張板、多層板の孔あけでは、スルーホール用貫通孔或いはビア孔を孔あけする際に使用されるものであり、得られた銅張板、多層板は、小径の孔を有する、高密度の小型プリント配線板として、新規な半導体プラスチックパッケージ用等に主に使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックパッケージ等に用いられる高密度のプリント配線板は、スルーホール用の貫通孔をドリルであけていた。近年、ますますドリルの径は小径となり、孔径が 0.15mmφ以下となってきており、このような小径の孔をあける場合、ドリル径が細いため、孔あけ時にドリルが曲がる、折れる、加工速度が遅い等の欠点があり、生産性、信頼性等に問題のあるものであった。また、炭酸ガスレーザーを照射する場合、炭酸ガスレーザーを銅箔面に直接照射すると、レーザー光が反射し、孔があかない。このため、従来は、まず表層の銅箔を所定の大きさにエッチング等で除去し、これに炭酸ガスレーザーを照射して樹脂の露出した部分を加工してビア孔を形成していた。この場合、50μm以下の小径の孔を銅箔にエッチングであける場合、銅箔が厚いと孔径精度が悪い等の欠点が見られた。また、スルーホール用貫通孔をあける場合、上下の銅箔にあらかじめネガフィルムを使用して所定の方法で同じ大きさの孔をあけておき、炭酸ガスレーザーで上下を貫通するスルーホールを形成しようとすると、上下の孔の位置にズレを生じ、ランドが形成しにくい等の欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を解決した、小径のスルーホール用貫通孔、ビア孔を形成するための炭酸ガスレーザー孔あけ用補助シートを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】樹脂組成物の中に、融点 900℃以上で、且つ結合エネルギーが300kJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉又は金属粉の1種或いは2種以上を3〜97容積%を含む水性樹脂組成物を熱可塑性フィルムの片面に付着させた本発明の加工用補助シートを、樹脂組成物層と熱可塑性フィルム層とを合わせた総厚みが、30〜200μmの厚みで銅箔表面上に配置し、好適にはラミネートして銅箔に接着させ、炭酸ガスレーザーの出力20〜60mJ/パルスのエネルギーで炭酸ガスレーザーを直接照射してスルーホール用貫通孔を形成するか、内層銅箔まで照射してからレーザーを止める、或いは1層目の銅箔層を孔あけしてから、エネルギーを落として内部銅箔面まで加工し、ビア孔を形成する。加工用補助シートの下に銅張板を数枚重ね、上から炭酸ガスレーザーで加工することも可能である。加工後、銅箔の表面は機械的研磨でバリをとることも可能であるが、完全にバリを取るためには銅箔の両表面を平面的にエッチングし、もとの金属箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、孔部に張り出した銅箔バリもエッチング除去することが好ましい。孔周囲の両面の銅箔が残存したスルーホールメッキ用孔を形成することによって、上下の孔の銅箔位置がズレることもなくランドが形成でき、スルーホールは上下曲がることもなく形成でき、且つ、銅箔が薄くなるために、その後の金属メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の細線の回路形成において、ショートやパターン切れ等の不良の発生もなく、高密度のプリント配線板を作成することができる。また、加工速度はドリルであける場合に比べて格段に速く、生産性も良好で、経済性にも優れている。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、炭酸ガスレーザーを用いて、少なくとも1層以上の銅の層を有する銅張板にスルーホール用貫通孔、ビア孔等、特に小径の孔をあける方法での使用に適した孔あけ用補助シートに関する。孔あけされたプリント配線板は、主に半導体チップの搭載用として使用される。銅張板の炭酸ガスレーザーによる孔あけにおいて、レーザーを照射する面に、融点 900℃で、且つ結合エネルギー 300kJ/mol以上の酸化金属粉、カーボン、又は金属粉と水溶性樹脂とを混合した塗料を、熱可塑性フィルムの片面に、フィルムの厚みと塗布樹脂層の厚みを合わせた総厚みが30〜200μmとなる用に付着させて得られる孔あけ用補助シートを配置し、好適には銅箔面に接着させて、その上から炭酸ガスレーザーを直接金属表面に照射し、銅箔を加工除去することによる、貫通孔、ビア孔形成のための孔あけ用補助シートを提供する。
【0006】本発明で使用する銅張板は、少なくとも1層以上の銅の層が存在する銅張板であり、スルーホール貫通孔、或いはビア孔用には、少なくとも2層以上の銅の層を有するガラス布基材両面銅張板、多層板が好適に用いられる。この他に、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等に銅の層を作成した銅張板、有機繊維布を基材に用いた銅張板も使用できる。
【0007】本発明のレーザー孔あけ用補助シートは、そのまま置くだけでも使用可能であるが、孔あけ時に銅張板の上に置いて、できるだけ密着させることが、孔の形状等を良好にするために好ましい。一般には、シートを銅張板の上にテープ等で貼り付ける等の方法で固定、密着して使用するが、より完全に密着するためには、得られたシートを、銅張板の表面に、樹脂付着した面を向け、加熱、加圧下にラミネートするか、或いは樹脂表層面3μm以下を水分で事前に湿らした後、室温にて加圧下にラミネートすることにより、銅箔表面との密着性が良好となり、孔あけ加工性はより一層優れたものとなった。樹脂組成物として、水溶性でない、有機溶剤に溶解可能な樹脂組成物も使用可能である。しかしながら、炭酸ガスレーザー照射で、孔周辺に樹脂が付着することがあり、この樹脂の除去が、水ではなく有機溶剤を必要とするため、加工上煩雑であり、又、後工程の汚染等の問題点も生じるため、好適ではない。
【0008】基材としては、一般に公知の、有機、無機の織布、不織布が使用できる。具体的には、無機の繊維としては、具体的にはE,S,D,Mガラス等の繊維等が挙げられる。又、有機繊維としては、全芳香族ポリアミド、液晶ポリエステルの繊維等が挙げられる。これらは、混抄でも良い。
【0009】本発明で基材中に使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミドーシアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1種或いは2種類以上が組み合わせて使用される。出力の高い炭酸ガスレーザー照射による加工でのスルーホール形状の点からは、ガラス転移温度が 150℃以上の熱硬化性樹脂組成物が好ましく、耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適である。
【0010】本発明の好適な熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3 −又は 1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5 −トリシアナトベンゼン、1,3 −、1,4 −、1,6 −、1,8 −、2,6 −又は2,7 −ジシアナトナフタレン、1,3,6 −トリシアナトナフタレン、4,4 −ジシアナトビフェニル、ビス(4−ジシアナトフェニル)メタン、2,2 −ビス (4−シアナトフェニル) プロパン、2,2 −ビス (3,5 −ジブロモー4−シアナトフェニル) プロパン、ビス (4−シアナトフェニル) エーテル、ビス (4−シアナトフェニル) チオエーテル、ビス (4−シアナトフェニル) スルホン、トリス (4−シアナトフェニル) ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル) ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。
【0011】これらのほかに特公昭 41-1928、同 43-18468 、同 44-4791、同 45-11712 、同 46-41112 、同 47-26853 及び特開昭 51-63149号公報等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いら得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量 400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0012】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、液状或いは固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。これらは1種或いは2種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0013】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭57−005406に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。
【0014】これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0015】本発明で使用される熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量のelastic なゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、スチレン−イソプレンゴム、ポリエチレン−プロピレン共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0016】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂100 重量部に対して0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0017】本発明で使用する補助シート中の、融点 900℃以上で、且つ、結合エネルギー300kJ/mol 以上の金属化合物としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、酸化物としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物、酸化ニッケル等のニッケル酸化物、二酸化マンガン、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、希土類酸化物、酸化コバルト等のコバルト酸化物、酸化錫等のスズ酸化物、酸化タングステン等のタングステン酸化物、等が挙げられる。非酸化物としては、炭化珪素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、希土類酸硫化物等、一般に公知のものが挙げられる。その他、カーボンも使用できる。更に、その酸化金属粉の混合物である各種ガラス類が挙げられる。更に銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、アンチモン、ケイ素、錫、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛等の単体、或いはそれらの合金の金属粉も使用される。これらは一種或いは二種以上が組み合わせて使用される。平均粒子径は、特に限定しないが、1μm以下が分散等の点からも好ましい。
【0018】炭酸ガスレーザーの照射で分子が原子に解離するか、溶融飛散して孔壁等に付着し、半導体チップ、孔壁密着性等に悪影響を及ぼさないようなものが好ましい。Na,K,Clイオン等は、特に半導体の信頼性に悪影響を及ぼすため、これらの成分を含むものは好適でない。配合量は、3〜97容積%、好適には5〜95容積%であり、水溶性樹脂中に均一に分散して使用される。
【0019】補助シートに使用される水溶性樹脂としては、特に制限はしないが、混練して熱可塑性フィルムに付着させた場合、剥離欠落しないものを選択する。例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール鹸化物、ポリエステル、澱粉等、一般に公知のものが使用される。
【0020】水溶性樹脂と金属化合物粉、カーボン粉又は金属粉とからなる組成物から補助シートを作成する方法は、特に限定しないが、ニーダー等で無溶剤にて高温で練り、熱可塑性フィルム上にシート状に押し出して付着する方法、水に水溶性樹脂を溶解させ、これに上記粉体を加え、均一に撹拌混合して、これを用い、塗料として熱可塑性フィルム上に塗布、乾燥して膜を形成する方法等、一般に公知の方法が使用できる。厚みは、特に限定はしないが、好適にはフィルムと樹脂層を合わせた総厚みが30〜200μmで使用される。
【0021】銅箔面に加熱、加圧下にラミネートする場合、塗布樹脂層を銅箔面に向け、ロールにて、温度は一般に40〜150℃、好ましくは60〜120℃で、線圧は一般に5〜30kg、好ましくは10〜20kgの圧力でラミネートし、樹脂層を溶融させて銅箔面と密着させる。温度の選択は使用する水溶性樹脂の融点で異なり、又、線圧、ラミネート速度によっても異なるが、一般には、水溶性樹脂の融点より5〜20℃高い温度でラミネートする。又、室温で密着させる場合、塗布樹脂層表面3μm以下を、ラミネート前に水分で湿らせて、水溶性樹脂を少し溶解させ、同様の圧力でラミネートする。水分で湿らせる方法は特に限定しないが、例えばロールで水分を塗膜樹脂面に連続的に塗布するようにし、その後、連続して銅張板の表面にラミネートする方法、水分をスプレー式に連続して塗膜表面に吹き付け、その後、連続して銅張板の表面にラミネートする方法等が使用し得る。
【0022】基材補強銅張板は、まず上記補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させてBステージとし、プリプレグを作成する。次に、このプリプレグを所定枚数重ね、少なくとも片面に銅箔を配置して、加熱、加圧下に積層成形し、銅張板とする。銅箔の厚みは、好適には3〜18μmである。銅箔が2層以上の場合、スルーホール貫通孔用、ビア孔形成用に使用できる。又、銅箔が1層の片面銅張板は、例えば、事前に孔あけしておいて外層用として使用する。
【0023】多層板としては、基材補強した銅張板に回路を形成し、銅箔表面処理後、少なくとも片面に、Bステージの基材補強プリプレグ、或いは基材補強していない樹脂シート、樹脂付き銅箔、塗料塗布による樹脂層等を配置し、必要により、その外側に銅箔を置き、加熱、加圧、好ましくは真空下に積層成形した銅張多層板を使用する。
【0024】融点 900℃以上で、且つ結合エネルギー 300kJ/molの金属化合物粉3〜97容積%、好ましくは5〜95容積%含む樹脂組成物を、熱可塑性フィルム上、フィルムと樹脂層とを合わせた総厚みが30〜200μmとなるように付着させ、これを何も処理していない銅張板或は多層板の、炭酸ガスレーザーを照射する側の、少なくとも孔形成位置の銅箔面に、テープ等で固定して密着させるか、加熱、加圧下にラミネートして貼り付けて密着させるか、或いは水溶性樹脂組成物表層に水分を含ませ、室温で加圧下にラミネートして水溶性樹脂表層を溶解させて貼り付けて密着させる等の方法で配置する。この上から、目的とする径まで絞った、20〜60mJ/パルスから選ばれた高出力エネルギーの炭酸ガスレーザー光を直接照射することにより、銅箔を加工して孔あけを行なう。孔あけ後は必要により、デスミア処理、プラズマ処理、近紫外線処理を行い、孔壁面を処理する。
【0025】炭酸ガスレーザーを、出力20〜60mJ/パルス照射して孔を形成した場合、孔周辺はバリが発生する。そのため、炭酸ガスレーザー照射後、銅箔の両表面を平面的に機械研磨、或いは薬液でエッチングし、もとの金属箔の一部の厚さを除去することにより、同時にバリも除去する。得られた銅箔は細密パターン形成に適しており、高密度のプリント配線板に適した孔周囲の銅箔が残存したスルーホールメッキ用貫通孔又はビア孔を形成する。この場合、機械研磨よりはエッチングの方が、孔部のバリ除去、研磨による寸法変化等の点から好適である。
【0026】本発明の孔部に発生した銅のバリをエッチング除去する方法としては、特に限定しないが、例えば、特開平02−22887 、同02−22896 、同02−25089 、同02−25090 、同02−59337 、同02−60189 、同02−166789、同03−25995 、同03−60183 、同03−94491 、同04−199592、同04−263488号公報で開示された、薬品で金属表面を溶解除去する方法(SUEP法と呼ぶ)による。エッチング速度は、一般には0.02〜1.0 μm/秒で行う。
【0027】炭酸ガスレーザーは、赤外線波長域にある9.3〜10.6μmの波長が一般に使用される。出力は20〜60mJ/パルス、好適には22〜55mJ/パルスにて銅箔を加工し、孔をあける。
【0028】
【実施例】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表す。
【0029】実施例12,2 −ビス(4−シアナトフェニル)プロパン900 部、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン100 部を150 ℃に熔融させ、撹拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ<株>製)400 部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN−220F、住友化学工業<株>製)600 部を加え、均一に溶解混合した。更に触媒としてオクチル酸亜鉛0.4 部を加え、溶解混合し、これに無機充填剤(商品名:焼成タルクBST−#200 、日本タルク<株>製)500 部、及び黒色顔料8部を加え、均一撹拌混合してワニスAを得た。このワニスAを厚さ100μmのガラス織布に含浸し150 ℃で乾燥して、ゲル化時間(at 170℃)120秒、ガラス布の含有量が56重量%のプリプレグ(プリプレグB)を作成した。厚さ12μmの電解銅箔を、上記プリプレグB4枚の上下に配置し、200 ℃、20kgf/cm2 、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形し、絶縁層厚み400μmの両面銅張板Bを得た。一方、金属粉として銅粉(平均粒子径:0.8 μm)800 部に、部分ケン化ポリビニルアルコール粉体を水に溶解したワニスに加え、均一に撹拌混合した(ワニスC)。これを厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルム片面上に、厚さ20μmとなるように塗布し、110 ℃で30分間乾燥して、金属粉含有量10容積%の補助シートDを形成した。上記銅張板Bの上に、樹脂面が銅箔側を向くように配置し、セロテープで固定してから、間隔300μmで、孔径100μmの孔を900 個直接炭酸ガスレーザーで、出力40mJ/パルスで8パルス(ショット)かけ、70ブロックのスルーホール用貫通孔をあけた。SUEP法にて、孔周辺の銅箔バリを溶解除去すると同時に、表面の銅箔も3μmまで溶解した。この板に通の方法にて銅メッキを15μm(総厚み:18μm)施した。この孔周辺のランド用の銅箔は全て残存していた。この表裏に、既存の方法にて回路(ライン/スペース=50/50μmを 200個)、ソルダーボール用ランド等を形成し、少なくとも半導体チップ部、ボンディング用パッド部、ハンダボールパッド部を除いてメッキレジストで被覆し、ニッケル、金メッキを施し、プリント配線板を作成した。このプリント配線板の評価結果を表1に示す。
【0030】実施例2融点58℃の水溶性ポリエステル樹脂を水に溶解した樹脂水溶液の中に、金属化合物粉(SiO2 57wt%、MgO 43wt %、平均量子径:0.4 μm)を加え、均一に撹拌混合した後、これを100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、厚さ50μmとなるように塗布し、110 ℃で25分間乾燥し、金属化合物粉含有量90容積%のフィルム状補助シートEとした。一方、エポキシ樹脂(商品名:エピコート 5045 )700 部、及びエポキシ樹脂(商品名:ESCN220F)300部、ジシアンジアミド35部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解し、さらに焼成タルク(商品名;BST−#200 )を800 部、黒色顔料8部を加え、強制撹拌して均一分散し、ワニスを得た。これを厚さ100 μmのガラス織布に含浸、乾燥して、ゲル化時間 150秒、ガラス布含有量55重量%のプリプレグ(プリプレグF)を作成した。このプリプレグFを2枚使用し、両面に12μmの電解銅箔を置き、190 ℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形して両面銅張板Gを作成した。絶縁層の厚みは200 μmであった。上記補助材料Eの樹脂組成物面を両面銅張板G側に向け、温度 100℃のロールにて、線圧 15kgfでラミネートし、密着性の良好な塗膜を形成した。これの下に、上記銅張板Gを配置し、この上から、炭酸ガスレーザーの出力28mJ/パルスにて7パルス照射し、孔径80μmのスルーホール用貫通孔をあけた。表層の補助シートを剥離し、プラズマ処理後、この表面を実施例1と同様にSUEPで処理してから、同様にプリント配線板とした。評価結果を表1に示す。
【0031】実施例3カーボン(平均粒子径:0.35μm)を50容積%になるように部分ケン化ポリビニルアルコール水溶液の中に配合したワニスHを使用し、これを50μmの片面マット加工したポリエチレンテレフタレートフィルムに同様に塗布、乾燥して、樹脂層の厚さ37μmの孔あけ用補助シートIを得た。一方、実施例1の両面銅張板の上下に回路を形成し、黒色酸化銅処理を施した後、その上下にプリプレグBを置き、その外側に12μmの電解銅箔を配置し、同様に積層成形して、4層の両面銅張多層板を作成した。この表面に、上記孔あけ補助材料Iを、連続して樹脂面に水を噴霧状にして吹き付け、表層2μmに水を浸透させ、銅箔面に室温で、線圧5kgf にてラミネートして密着させて貼り付け、炭酸ガスレーザー出力40mJ/パルスにて1パルス、35mJ/パルスにて1パルス照射して、ビア用孔をあけた。プラズマ処理後、銅メッキを施し、同様に上下に回路を形成、貴金属メッキを行なって、プリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0032】比較例1実施例2の両面銅張板を用い、表面処理を行なわずに炭酸ガスレーザーで同様に孔あけを行なったが、孔はあかなかった。
【0033】比較例2実施例1の両面銅張板を用い、黒のマジックで孔あけする箇所の表面に塗り、炭酸ガスレーザーを同様に照射したが、孔はあかなかった。
【0034】比較例3実施例3において、エポキシ樹脂としてエピコート5045単独を1,000 部使用し、他は同様にして作成した両面銅張板を用い、銅箔面に同様に補助シートIをラミネートし、出力17mJ/パルスにて炭酸ガスレーザーで同様に19ショット照射し、スルーホール用貫通孔をあけた。この孔壁は、ガラス繊維が孔内に見られ、孔形状は真円ではなく、楕円形状であった。SUEP処理を行わず、同様にしてプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0035】比較例4実施例1の両面銅張板を用い、径 100μmのメカニカルドリルにて、回転数10万rpm 、送り速度1m/min,にて同様に 300μ間隔で孔をあけた。機械研磨1回のみで、SUEP処理を行わず、後は同様に銅メッキを15μm施し、表裏に回路形成し、同様に加工してプリント配線板を作成した。途中でドリルの折れが2本発生した。評価結果を表1に示す。
【0036】比較例5実施例1の両面銅張板の銅箔表面に間隔 300μmにて、孔径 100μmの孔を 900個、銅箔をエッチングしてあけた。同様に裏面にも同じ位置に孔径 100μmの孔を 900個あけ、1パターン 900個を70ブロック、合計 63,000 の孔を、表面から炭酸ガスレーザーで、出力40mJ/パルスにて8パルス(ショット)かけ、スルーホール用貫通孔をあけた。後は比較例4と同様にして、プリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0037】比較例6比較例5において、最後にSUEP処理を行い、同様にプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0038】比較例7実施例1の両面銅張板の上に、補助シートEを密着させずに、銅張板との隙間が1〜21μmとなるようにして置き、上から炭酸ガスレーザーの出力40mJ/パルスにて8ショットで同様に63,000孔あけた。この孔のうち、補助材料との距離が大きい場合、スルーホール用貫通孔があいていなかった。
【0039】<測定方法>1) 表裏孔位置のズレ及び孔あけ時間ワークサイズ 250mm角内に、孔径 100μmの孔を、銅箔をエッチングすることにより 900孔/ブロックとして70ブロック作成し(孔計63,000孔)作成した。炭酸ガスレーザー及びメカニカルドリルで孔あけを行ない、1枚の銅張板に63,000孔をあけるに要した時間、及び表裏の孔位置のズレの最大値を示した。 2) 回路パターン切れ、及びショート実施例、比較例で、孔のあいていない板を同様に作成し、ライン/スペース=50/50μmの櫛形パターンを作成した後、拡大鏡でエッチング後の 200パターンを目視にて観察し、パターン切れ、及びショートしているパターンの合計を分子に示した。
3) ガラス転移温度DMA法にて測定した。
4) スルーホール・ヒートサイクル試験各スルーホールにランド径 200μmを作成し、900 孔を表裏交互につなぎ、1サイクルが、260 ℃・ハンダ・浸せき 30 秒→室温・5分で、200 サイクル実施し、抵抗値の変化率の最大値を示した。
5) ランド周辺銅箔切れ孔周辺に径200μmのランドを形成した時の、ランド部分の銅箔欠けを観察した。
6) 孔形状上下及び断面の観察を行った。
【0039】
表1項 目 実 施 例 比 較 例 1 2 3 3 4 5 6表裏孔位置のズレ(μm) 0 0 − 0 0 25 26孔形状 円形 円形 円形 楕円形 円形 上円形 上円形 下楕円形 下楕円形孔壁形状 直線 直線 直線 凹凸大 直線 ほぼ直線 ほぼ直線パターン切れ及びショート(個数) 0/200 0/200 0/200 55/200 57/100 57/200 0/200ランド周辺銅箔欠落 無し 無し 無し 無し 無し 有り 有りガラス転移温度 (℃) 234 160 234 139 234 234 234スルーホール・ヒートサイクル試験(%) 2.5 4.8 2.8 25.0 2.6 5.0 4.3孔あけ加工時間 (分) 24 21 13 − 630 − −
【0040】
【発明の効果】本発明は少なくとも1層以上の銅の層を有する銅張板の銅表面に直接、高出力エネルギーの炭酸ガスレーザーを照射して銅箔を孔あけする際に、炭酸ガスレーザーが照射される銅張板の銅箔表面に使用する孔あけ用補助シートとして、少なくとも、融点 900℃で、且つ結合エネルギー300kJ/mol 以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉を3〜97容積%含む水溶性樹脂組成物よりなる、フィルムと樹脂層の合計厚さが30〜200μmシートを提供する。このシートを、樹脂面が銅箔側を向くように配置し、好適には加熱、加圧下、或いは皮膜表面3μm以下に水分を含ませて、室温、加圧下にラミネートし、銅積層板との密着力を上げ、この上から炭酸ガスレーザーを直接照射して孔あけを行なうことにより、事前に銅箔をエッチング除去する必要もなく、スルーホール用貫通孔においては銅張板の表裏のランド位置のズレもなく、メカニカルドリルで孔あけするのに比べて数10倍の加工速度で加工可能であり、生産性についても大幅に改善でき、且つ、好適には、後処理で銅箔の両表面を平面的にエッチングし、もとの銅箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、同時に孔部に発生した銅箔のバリをエッチング除去でき、その後の銅メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の回路形成においても、ショートやパターン切れ等の不良発生もなく、信頼性に優れた高密度のプリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の炭酸ガスレーザーによるスルーホール用貫通孔あけ[(1)、(2)]、SUEPによるバリ除去[(3)]及び銅メッキ[(4)]の工程図である。
【図2】比較例5の同様の孔あけ工程図である(SUEP無し)。
【図3】比較例6の同様の孔あけ工程図である(SUEP使用)。
【符号の説明】
a 金属粉含有樹脂層付着フィルム
b 銅箔
c ガラス布基材熱硬化性樹脂層
d 炭酸ガスレーザーによるスルーホール貫通孔あけ部
e 発生したバリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅箔を炭酸ガスレーザーで除去できるに十分な20〜60mJ/パルスから選ばれたエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、炭酸ガスレーザーを照射し、少なくとも1層以上の銅の層を有する銅張板の銅箔を加工して孔を形成する際に、銅箔表面に用いる孔あけ用補助材料が、少なくとも、融点 900℃以上で、且つ結合エネルギー 300kJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉又は金属粉の1種或いは2種以上の成分を3〜97容積%含む水溶性樹脂組成物を、熱可塑性フィルムの片面に付着させたシートであることを特徴とする炭酸ガスレーザー孔あけ用補助シート。
【請求項2】 該シートが、総厚み30〜200μmの樹脂組成物層と熱可塑性フィルム層とからなることを特徴とする請求項1記載の孔あけ用補助シート。
【請求項3】 該シートの樹脂組成物中の金属化合物粉、カーボン粉又は金属粉の平均粒子径が、1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の孔あけ用補助シート。
【請求項4】 該シートの樹脂組成物面を銅箔表面側に配置し、加熱、加圧下に銅箔にラミネートして使用することを特徴とする請求項1,2又は3記載の孔あけ用補助シートの使用。
【請求項5】 該シートの樹脂組成物表層3μm以下を、予め水分を含ませてから、樹脂組成物面を銅箔表面側に配置し、室温で加圧下に銅箔にラミネートして使用することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の孔あけ用補助シートの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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