点滴スタンド
【課題】利用者が手を掛けることができるハンドルを備えた点滴スタンドにおいて、利用者と点滴スタンドとの相対位置に関わらず、ハンドルや点滴スタンド全体を水平回転させる手間を必要とすることなくハンドルに手を掛けることができる構成を実現する。
【解決手段】移動可能な脚ベース1に支柱2を支持させ、その支柱2に輸液パックPを掛けるための輸液パック保持部である輸液フック3及び手を掛けることができるハンドル4を設けてなる点滴スタンドSにおいて、前記ハンドル4が、支柱2を囲う環状のハンドル本体41と、このハンドル本体41を支柱2に支持させるためのボス部42とを備えてなり、前記ハンドル本体41の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間を形成している構成を採用する。
【解決手段】移動可能な脚ベース1に支柱2を支持させ、その支柱2に輸液パックPを掛けるための輸液パック保持部である輸液フック3及び手を掛けることができるハンドル4を設けてなる点滴スタンドSにおいて、前記ハンドル4が、支柱2を囲う環状のハンドル本体41と、このハンドル本体41を支柱2に支持させるためのボス部42とを備えてなり、前記ハンドル本体41の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間を形成している構成を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院等に用いられるものであって、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液パック保持部及び手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院内や診療所内において、点滴を受けている間でも病院内や診療所内を移動することができるようにするための点滴スタンドに対する要望が存在する。この要望に対応すべく、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドが用いられてきている。
【0003】
このような点滴スタンドのハンドルとして、利用者が手を掛けることができるハンドル本体と、このハンドル本体を支柱に支持させるためのボス部とを備えている構成が広く知られているが、従来のものは支柱に対して特定の方向にのみハンドル本体が存在する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところが、このような構成の点滴スタンドを利用する際にハンドル本体に手を掛けるには、利用者と支柱との間にハンドル本体が位置するようにハンドル本体又は点滴スタンド全体を水平回転させるか、利用者と支柱との間にハンドル本体が配される位置に利用者が移動する必要があり、利用者が不便に感じる不具合が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−135544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に着目し、利用者が手を掛けることができるハンドルを備えた点滴スタンドにおいて、利用者と点滴スタンドとの相対位置に関わらず、ハンドルや点滴スタンド全体を水平回転させる手間を必要とすることなくハンドルに手を掛けることができる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る点滴スタンドは、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液パック保持部及び手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドであって、前記ハンドルが、支柱を囲う環状のハンドル本体と、このハンドル本体を支柱に支持させるためのボス部とを備えてなり、前記ハンドル本体の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間を形成していることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、ハンドル本体の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間が形成されているので、利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもこの環状空間に手を入れてハンドルに手を掛けることができる。
【0009】
なお、本発明において、「略全周に亘って連続した環状空間」とは、360度完全に連続している空間のみならず、一部途切れている環状の空間であってもよい。なお、一部途切れている場合、180度以上連続している空間が望ましい。
【0010】
利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもハンドル本体を上方から把持できるようにするための望ましい態様の一例として、前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が略全周に亘って連続しているものが挙げられる。なお、本発明において、「ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が略全周に亘って連続している」とは、360度完全に連続しているものに限らず、一部途切れているものであってもよい。なお、一部途切れている場合、180度以上連続していることが望ましい。
【0011】
利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもハンドル本体を上方から把持できるようにするための望ましい態様の他の一例として、前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が全周に亘って途切れることなく連続しているものが挙げられる。
【0012】
利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもハンドル本体を上方から把持できるようにする構成を実現するための具体的な態様の一例として、前記ハンドル本体が、環状をなす持ち手部と、この持ち手部の下面と前記ボス部とを連結する連結部とを備えたものが挙げられる。
【0013】
利用者が疲労した場合等にハンドルに体を預けやすくするための具体的な態様の一例として、前記ハンドル本体が、その上面が略水平となるように前記支柱に取り付けられているものが挙げられる。
【0014】
このような点滴スタンドの形状の具体的な一例として、ハンドル本体が、長軸を左右方向に向けて支柱に取り付けられた楕円形状をなす持ち手部を備えたものであり、前記ボス部が平面視において前記持ち手部の中心に位置させたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、利用者が手を掛けることができるハンドルを備えた点滴スタンドにおいて、利用者と点滴スタンドとの相対位置に関わらず、ハンドルや点滴スタンド全体を水平回転させる手間を必要とすることなくハンドルに手を掛けることができる構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る点滴スタンドを示す全体斜視図。
【図2】同実施形態に係る点滴スタンドを示す正面図。
【図3】同実施形態に係る点滴スタンドを示す左側面図。
【図4】同実施形態に係る点滴スタンドを示す平面図。
【図5】図2におけるA−A断面図。
【図6】図2におけるB−B断面図。
【図7】図2における要部を破断して示す図。
【図8】同実施形態に係る輸液フックの取付態様を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図10】本発明の第1の変形例に係る点滴スタンドを示す背面図。
【図11】同変形例に係る点滴スタンドを示す左側面図。
【図12】同変形例に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図13】同変形例に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図14】本発明の第2の変形例に係る点滴スタンドのハンドルを示す平面図。
【図15】本発明の第3の変形例に係る点滴スタンドのハンドルを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の一実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。
【0018】
この点滴スタンドSは、図1〜図4に示すように、移動可能な脚ベース1に支柱2を支持させ、その支柱2に輸液パックPを掛けるための輸液パック保持部である輸液フック3及び左右両側及び前側からそれぞれ把持可能なハンドル4を設けてなる。なお、図2及び図3においては、支柱2を一部省略して示している。
【0019】
脚ベース1は、図1〜図6に示すように、キャスタ11と、キャスタ11を支持する支持部材12とを具備してなる。支持部材12は、樹脂により一体に成形されたもので、前記支柱2を支持するための左右方向に延びる中心フレーム121と、この中心フレーム121の左右両端から前方に延出する前側の2本の脚フレーム122と、前記中心フレーム121の中間部から後方に延出する後側の2本の脚フレーム123とを備えており、平面視略H字状をなしている。前記中心フレーム121の中央には、前記支柱2が立設されている。前記中心フレーム121及び前記前側の2本の脚フレーム122は、略同一平面上に配置されているとともに、前記後側の2本の脚フレーム123は前記中心フレーム121の下面121aから略水平に延びるように配置されている。この支持部材12の高さ寸法h1は、一般的な病室用ベッド下方の隙間に挿入可能な大きさに設定されている。また、この脚ベース1は、前側の左右に隣接する2つのキャスタ11間の距離w1を前側の左のキャスタ11に隣接する後側の左のキャスタ11と前側の右のキャスタ11に隣接する後側の右のキャスタ11との間の距離w2よりも大きく設定してある。さらに、この脚ベース1は、前側の左右のキャスタ11間に前方に開放された前の起立空間1s1が形成され、前側の左のキャスタ11と後側の左のキャスタ11との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間1s2が形成され、前側の右のキャスタ11と後側の右のキャスタ11との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間1s3が形成されるように構成されたものである。すなわち、脚フレーム122、123の先端部122a、123a以外の部分が、少なくとも前側の左のキャスタ11と後側の左のキャスタ11とを結ぶ直線、前側の右のキャスタ11と後側の右のキャスタ11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。また、前側の脚フレーム122の先端部122a以外の部分が、前側の左のキャスタ11と前側の右のキャスタ11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。具体的には、前記脚ベース1は、先端にキャスタ11を有した4本の脚フレーム122、123を有し、前側のキャスタ11を支持する2本の脚フレーム122及び後側のキャスタ11を支持する2本の脚フレーム123がそれぞれ平面視において先端側が拡開するハの字状に配されており、前側の脚フレーム122の下に同一構造をなす他の点滴スタンドSの後側の脚フレーム123を通過させることが可能な空間が形成されるように構成されている。この構成によって、後述するように複数の点滴スタンドSをネスティングすることができるようにしてある。前記前の起立空間1s1は、平面視において前方に開放されたもので、この点滴スタンドSの前側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを後方に、すなわち使用者Uの進行方向に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記左の起立空間1s2は、平面視において左側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドSの左側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記右の起立空間1s3は、平面視において右側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドSの右側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。そして、前記支持部材12を構成する前側の2本の脚フレーム122の下に、前記前の起立空間1s1及び前記左右の起立空間1s2、1s3にそれぞれ連通する蹴り込み空間1s4が形成されている。この蹴り込み空間1s4は、正面視、側面視及び背面視において視認可能に開口したもので、その高さ寸法h2は、一般的な体格を有する成人のつま先が歩行中に進入可能な大きさに設定されている。一方、前記キャスタ11は、双輪タイプのもので、その幅寸法はエレベータと該エレベータの乗り口との間の隙間の幅寸法よりも大きい。具体的には、前記キャスタ11の幅寸法は30mm以上であることが望ましく、本実施形態では60mmに設定されている。
【0020】
前記支柱2は、伸縮可能なもので、図1〜図3及び図7に示すように、前記脚ベース1に立設された下部要素21と、この下部要素21に上下スライド可能に嵌め合わされ前記輸液フック3を支持する上部要素22とを備えたものである。前記下部要素21は、脚ベース1の前記中心フレーム121に立設された金属パイプ材製のものである。前記上部要素22は、前記下部要素21の内周にスライド可能に嵌合された金属パイプ材製のものである。この上部要素22を緊締機構23により前記下部要素21に対して上下位置変更可能に固定している。この緊締機構23は、前記輸液フック3よりも下方に位置する部位に設けられている。前記緊締機構23は、図7に示すように、前記支柱2に設けられた雌ねじ231aを有するフレーム231と、このフレーム231の雌ねじ231aに螺着された雄ねじ232aを有するグリップ232と、前記雄ねじ232aが外部に露出することを防止するカバー233とを具備する。換言すれば、前記緊締機構23は、前記支柱2の下部要素21の上端部に設けられた雌ねじ231aを有するフレーム231と、このフレーム231の雌ねじ231aに螺着されその先端で上部要素22の外周を押し付けることによりこの上部要素22を前記下部要素21に固定するための雄ねじ232aを有するグリップ232と、前記雄ねじ232aが外部に露出することを防止するカバー233とを具備する。前記フレーム231は、前記支柱2の下部要素21の上端部21aと、この上端部21aに外嵌させた合成樹脂製の外嵌部材231bとを備えてなるもので、前記下部要素21の上端部21a及び外嵌部材231bのいずれか一方に雌ねじ231aを有している。前記グリップ232は、前記雄ねじ232aを保持する軸部232bと、この軸部232bに回転力を付与するための把持部232cと、この把持部232cと前記軸部232bの外面とを滑らかに連続させる中間部232dとを備えたものである。すなわちこの中間部232dは、軸部232bから把持部232cに向かって漸次径が増大する曲面形状をなしている。前記カバー233は、前記フレーム231に設けられ前記グリップ232の軸部232bの外周に相対回転可能に外嵌する筒状のものである。具体的には、このカバー233は、前記フレーム231の外嵌部材231bと一体に形成された薄肉円筒体状のもので、このカバー233の外周面232aと前記グリップ232の中間部232dの外周面232d1とが大きな段差を伴うことなく略連続するように構成されている。そして、この支柱2の上端には、各輸液フック3に掛けられた輸液パックP同士が干渉しないように複数の前記輸液フック3が放射状に設けられている。この実施形態においては、4本の前記輸液フック3を着脱自在に取り付けることができるようになっているが、図面では2本の輸液フック3を装着した状態を示している。
【0021】
前記各輸液フック3は、図1及び図2に示すように、支柱2に設けたフック取付部材5から外方に延出する延出桿31と、この延出桿31の延出端部に設けられたフック本体32とを備えている。これら延出桿31と前記フック本体32とは、連続した細長い素材により作られたものであり、同一平面に沿って配置されている。前記フック本体32は、前記延出桿31の延出端に連続して設けられ上下方向に延びる上下延出部321と、この上下延出部321の延出端に連続して設けられ支柱2側に折り返す折り返し部322とを具備してなり、その折り返し部322の先端322xと前記延出桿31との間に形成される開口3sが、支柱2側から輸液パックPを挿脱し得る方向に開放されている。前記上下延出部321は、延出桿31の延出端から下方に垂下するもので、病室で一般的に用いられているカーテンの網目の寸法よりも大きな上下方向寸法h3を有している。前記折り返し部322は、上下延出部321の延出端に連続して設けられ前記輸液パックPを掛け止める略U字状をなす掛け止め部分322aと、この掛け止め部分322aから連続して上方に延びる上向き部分322bと、この上向き部分322bの上端に連続して設けられ支柱2に向かって延びる先端部分322cとを備えたものであり、この先端部分322cと前記延出桿31との間に輸液パックPを挿脱するための開口3sが形成されている。前記折り返し部322の先端322xは、支柱2に向けて延出している。すなわち、前記折り返し部322の先端部分322cは、前記延出桿31と平行である。前記延出桿31は、図8に示すように、その基端に下方に屈曲して垂下する垂下部311を備えている。前記フック取付部材5は、支柱2の上端部に装着されたもので、その上面に、中心ボルト挿通孔51と、この中心ボルト挿通孔51の近傍から放射状に形成された複数本の延出桿保持溝52と、これら各延出桿保持溝52の基端に連続させて設けられた縦穴53とが設けられている。前記延出桿31は、その垂下部311を前記縦穴53に挿入するとともに、その垂下部311に連続する基端部312を前記延出桿保持溝52に嵌め合わせることによりフック取付部材5に保持されるようになっている。なお、フック取付部材5の上面には、前記中心ボルト挿通孔51に対応する中心孔61と、前記延出桿保持溝52に対応する保持溝62とを有したキャップ6が装着されるようになっており、このキャップ6の中心孔61と前記フック取付部材5の中心ボルト挿通孔51に挿通させたボルト63を支柱2の内部に固設した図示しないナットに螺着することにより前記各延出桿31を前記フック取付部材5に固定するようにしてある。以上のような輸液フック3の下方に、手を掛けることができるハンドル4を設けている。
【0022】
前記ハンドル4は、図1〜図5に示すように、支柱2を囲う環状のハンドル本体41と、このハンドル本体41を支柱2に支持させるためのボス部42とを備えてなる。このハンドル4は、左右両側及び前側からそれぞれ把持可能であり、このハンドル本体41の内周面41a側に全周に亘って連続した環状空間を形成している。本実施形態では、前記ハンドル本体41の内周面41a、上面41b及び外周面41cが全周に亘って途切れることなく連続している。前記ハンドル本体41は、環状をなす持ち手部411と、この持ち手部411の下面411aと前記ボス部42とを連結する連結部412とを備えており、その上面41bが略水平となるように前記支柱2に取り付けられている。前記持ち手部411は、平面視において長軸を左右方向に向けて支柱2に取り付けられた楕円形状をなし、その断面形状は手を掛けやすくすべく略円形状に設定されている。前記環状空間は、この持ち手部411の内周に沿って環状をなすように連続したものである。前記連結部412は、前記持ち手部411の左右両端の下面411aからそれぞれ前記ボス部42に向かい延びる帯状のもので、持ち手部411に手を掛けた際に手と干渉しにくい位置に配している。前記ボス部42は平面視において前記持ち手部411の中心に位置されている。このボス部42は、支柱2に対して上下方向に取付位置を変更可能に取り付けられており、このハンドル4のボス部42を緊締機構43により前記支柱2に対して上下位置変更可能に固定している。この緊締機構43は、前記ハンドル4の持ち手部411よりも下方に位置する部位に設けられている。前記緊締機構43は、前記ハンドル4のボス部42により構成される雌ねじを有するフレーム431と、このフレーム431の雌ねじに螺着された雄ねじを有するグリップ432と、前記雄ねじが外部に露出することを防止するカバー433とを具備する。この緊締機構43は、前述した支柱2の上部要素22を下部要素21に固定するための緊締機構23に準じた構成をなすものであるため、図示及び詳細な説明は省略する。
【0023】
そして、この点滴スタンドSは、図5及び図9を参照しつつ以下に述べるような手順によりネスティング可能である。まず、特定の点滴スタンドS(1)のハンドル4と、この特定の点滴スタンドS(1)と同一構造をなす他の点滴スタンドS(2)のハンドル4との上下方向相対位置を持ち手部411の上下方向寸法以上異ならせておく。次いで、特定の点滴スタンドS(1)の前方から、この点滴スタンドS(1)の中心フレーム121に他の点滴スタンドS(2)の中心フレーム121が平行となるように他の点滴スタンドS(2)を接近させる。このとき、特定の点滴スタンドS(1)の前側の脚フレーム122の下方に形成された蹴り込み空間1s4を他の点滴スタンドS(2)の後側の脚フレーム123が通過する。そして、特定の点滴スタンドS(1)の支柱2に他の点滴スタンドS(2)のハンドル4の持ち手部411が接近又は当接し、特定の点滴スタンドS(1)の前側に他の点滴スタンドS(2)をネスティングさせることができる。
【0024】
なお、以上の実施形態において、前後左右の概念は説明の便宜上用いたものであり、使用者Uの使用方向を規定するものではない。
【0025】
以上に述べたように、本実施形態の点滴スタンドSの構成によれば、ハンドル本体41の内周面41a側に全周に亘って連続した環状空間が形成されているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であっても、利用者Uがこの環状空間に手を入れてハンドル4に手を掛けることができる。
【0026】
また、前記ハンドル本体41の内周面41a、上面41b及び外周面41cが全周に亘って途切れることなく連続しているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であってもハンドル本体41を上方から安定して把持することができる。
【0027】
さらに、前記ハンドル本体41が、環状をなす持ち手部411と、この持ち手部411の下面411aと前記ボス部42とを連結する連結部412とを備えているので、利用者Uが持ち手部411を上方から把持した際に、ボス部42及び連結部412により持ち手部411を下方から安定して支持させることができる。
【0028】
加えて、前記ハンドル本体41が、その上面41bが略水平となるように前記支柱2に取り付けられているので、利用者Uが疲労した場合等にハンドル4に体を預けやすく、更なる利用の便を図ることができる。
【0029】
そして、ハンドル本体41が、長軸を左右方向に向けて支柱に取り付けられた楕円形状をなす持ち手部411を備えたものであり、前記ボス部42を平面視において前記持ち手部411の中心に位置させているので、特に利用者が前の起立空間1s1に起立した場合に、下腕部全体をハンドル本体41に載せ置いて利用する際の便を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0031】
例えば、第1の変形例として、図10〜図13に示すような脚ベースX1を備えているものが考えられる。図10〜図13では、脚ベースX1以外の各部位には、上述した実施形態における符号の前にXを付加した符号を付している。また、図10〜図12においては、支柱X2を一部省略して示している。この脚ベースX1は、キャスタX11と、キャスタX11を支持する支持部材X12とを具備してなる。支持部材X12は、樹脂により一体に成形されたもので、前記支柱X2を支持するための左右方向に延びる中心フレームX121と、この中心フレームX121の左右両端から前方に延出する前側の2本の脚フレームX122と、前記中心フレームX121の中間部から後方に延出する後側の2本の脚フレームX123とを備えており、平面視略H字状をなしている。前記中心フレームX121の中央には、前記支柱X2が立設されている。前記中心フレームX121及び前記前側の2本の脚フレームX122は、略同一平面上に配置されている。また、前記後側の2本の脚フレームX123は、前記中心フレームX121から後方斜め下方に延びるように配置されたものであり、その基端がこれら中心フレームX121及び前側の2本の脚フレームX122と略同一平面上に配置されている。換言すれば、前記後側の2本の脚フレームX123の先端部X123aの高さ位置は、前側の2本の脚フレームX122の先端部X122aの高さ位置よりも下方に設定されている。そして、この支持部材X12の高さ寸法Xh1は、一般的な病室用ベッド下方の隙間に挿入可能な大きさに設定されている。また、この脚ベースX1は、前側の左右に隣接する2つのキャスタX11間の距離Xw1を前側の左のキャスタX11に隣接する後側の左のキャスタX11と前側の右のキャスタX11に隣接する後側の右のキャスタX11との間の距離Xw2よりも大きく設定してある。さらに、この脚ベースX1は、前側の左右のキャスタX11間に前方に開放された前の起立空間X1s1が形成され、前側の左のキャスタX11と後側の左のキャスタX11との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間X1s2が形成され、前側の右のキャスタX11と後側の右のキャスタX11との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間X1s3が形成されるように構成されたものである。すなわち、脚フレームX122、X123の先端部X122a、X123a以外の部分が、少なくとも前側の左のキャスタX11と後側の左のキャスタX11とを結ぶ直線、前側の右のキャスタX11と後側の右のキャスタX11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。また、前側の脚フレームX122の先端部X122a以外の部分が、前側の左のキャスタX11と前側の右のキャスタX11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。具体的には、前記脚ベースX1は、先端にキャスタX11を有した4本の脚フレームX122、X123を有する。前側のキャスタX11を支持する2本の脚フレームX122は平面視において先端側が拡開するハの字状に配されている。後側のキャスタX11を支持する2本の脚フレームX123は、平面視において先端側がそれぞれ中心フレームX121の延出方向に対して直交する方向に配されている。換言すれば、後側のキャスタX11を支持する2本の脚フレームX123は、互いに平行に配されている。前側の脚フレームX122の下に同一構造をなす他の点滴スタンドXSの後側の脚フレームX123を重ねることが可能な空間が形成されるように構成されている。換言すれば、前後に隣接する点滴スタンドXSの後側の脚フレームX123同士を上下方向に重ねることが可能に構成されている。この構成によって、図12及び図13に示すような態様で、本変形例に係る特定の点滴スタンドXS(1)の前方に同一構造をなす他の点滴スタンドXS(2)をネスティングすることができる。前記前の起立空間X1s1は、平面視において前方に開放されたもので、この点滴スタンドXSの前側に起立した使用者が当該点滴スタンドXSを後方に、すなわち使用者の進行方向に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記左の起立空間X1s2は、平面視において左側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドXSの左側に起立した使用者が当該点滴スタンドXSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記右の起立空間X1s3は、平面視において右側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドXSの右側に起立した使用者が当該点滴スタンドXSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。そして、前記支持部材X12を構成する前側の2本の脚フレームX122の下に、前記前の起立空間X1s1及び前記左右の起立空間X1s2、X1s3にそれぞれ連通する蹴り込み空間X1s4が形成されている。この蹴り込み空間X1s4は、正面視、側面視及び背面視において視認可能に開口したもので、その高さ寸法Xh2は、一般的な体格を有する成人のつま先が歩行中に進入可能な大きさに設定されている。
【0032】
本変形例に係る脚ベースX1を有する点滴スタンドXSの構成によっても、上述した実施形態に係る点滴スタンドSと同一又はこれに準じた効果を得ることができる。
【0033】
また、第2の変形例として、図14に示すように、支柱A2を囲う環状をなすとともに後部に切欠き部A41sを有するハンドル本体A41と、このハンドル本体A41を支柱A2に支持させるためのボス部A42とを備えたハンドルA4を有するものが挙げられる。前記ハンドル本体A41は、前記切欠き部A41s以外の箇所で支柱A2を囲う一箇所を切り欠いた楕円形状をなす持ち手部A411と、この持ち手部A411の両端A411xとボス部A42とを接続する略U字状の接続部A412を有するハンドルA4を備えている。ハンドル本体A41の内周A41a側の空間は180度以上連続しており、ハンドル本体A41の内周面A41a、上面A41b及び外周面A41cは切れ目なく連続している。また、前記接続部A412は、ボス部A42の後部に接しボス部と一体をなす被支持部分A412bと、この被支持部分A412bの両端と前記持ち手部A411の両端A411xとをそれぞれ接続する対をなす接続桿部分A412aとを備えていて、接続桿部分間A412aの空間を前記切欠き部A41sとしている。そして、この切欠き部A41s内に支柱A2を位置付けてハンドルA4を後方に移動させることにより支柱A2にハンドルA4を取り付けることができるようにしている。この変形例に係る点滴スタンドのハンドルA4以外の各部位は、上述した実施形態におけるものと同様の構成を有するので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0034】
さらに、第3の変形例として、図15に示すように、支柱B2を囲う環状をなすとともに後部に切欠き部B41sを有するハンドル本体B41と、このハンドル本体B41を支柱B2に支持させるためのものであり後部に切欠き部B42sを有するボス部B42とを備えたハンドルB4を有するものが挙げられる。前記ハンドル本体B41は、前記切欠き部B41s以外の箇所で支柱B2を囲う一箇所を切り欠いた楕円形状をなす持ち手部B411と、この持ち手部B411の下面とボス部B42とを接続する帯状の接続部B412を有する。前記ハンドル本体B41の内周面B41a側の空間は180度以上連続しており、ハンドル本体B41の内周面B41a、上面B41b及び外周面B41cは前記切欠き部B41s以外の箇所では切れ目なく連続している。一方、前記ボス部B42は全体が弾性変形可能な素材により形成されたものであり、その内周B42a側の空間も180度以上連続している。このボス部B42の切欠き部B42sは、支柱B2とハンドル本体B41の切欠き部B41sとの中間に位置させている。そして、ハンドル本体B41の切欠き部B41s内に支柱B2を位置付け、ハンドルB4を後方に移動させ、ボス部B42を弾性変形させてボス部B42の切欠き部B42s内に支柱B2を位置付けた状態からさらにハンドルB4を後方に移動させることにより、支柱B2にこのハンドルB4を取り付けることができるようにしている。
【0035】
これらの変形例に係るハンドルA4、B4を有する点滴スタンドの構成によっても、ハンドル本体A41、B41の内周面A41a、B41a側に、切欠き部A41s、B41sを除く全周に亘って180度以上連続した環状空間が形成されているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であっても、利用者Uがこの環状空間に手を入れてハンドルA4、B4に手を掛けることができる。
【0036】
さらに、これら第2及び第3の変形例に係るハンドルA4、B4を有する点滴スタンドの構成によれば、ハンドル本体A41、B41の切欠き部A41s、B41s内に支柱A2、B2を位置付けてハンドルA4、B4を後方に移動させることにより支柱A2、B2にこのハンドルB4を取り付けることができるようにしているので、ハンドルA4、B4の支柱A2、B2に対する装脱の便を図ることもできる。
【0037】
加えて、第2の変形例に係るハンドルA4は、前記ハンドル本体A41の内周面A41a、上面A41b及び外周面A41cが全周に亘って途切れることなく連続しているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であってもハンドル本体A41を上方から安定して把持することができる。
【0038】
ここで、第2及び第3の変形例に係るハンドルA4、B4に、上述した実施形態に係るハンドル4に備えた緊締機構43と同様の構成を有する緊締機構を設け、支柱A2、B2に対する相対位置を変更可能に取り付けるようにするとなおよい。
【0039】
さらに、ハンドル本体には、真円形のものや、真円形の一部を切り欠いた形状のものを採用してもよく、さらに、多角形状のものや、多角形の一部を切り欠いた形状のものを採用してもよい。
【0040】
加えて、上述した実施形態では、ハンドル本体の上面が略水平となるように支柱に取り付けられているが、ハンドル本体の上面が水平面に対して傾斜を有するものであってもよく、また、ハンドル本体の上面と水平面とがなす角度を変更可能に構成してもよい。
【0041】
そして、ハンドル本体の持ち手部とボス部とを接続するための接続部は、上述した実施形態、第1の変形例及び第3の変形例では持ち手部の下面からボス部に向けて延出しており、上述した第2の変形例では切欠き部の両端から水平に延出しているが、これら以外に、例えば、持ち手部の内側面から支柱に向けて延出し持ち手部とボス部との間の部位に達する水平部分と、この水平部分の延出端からボス部に向けて延出しボス部に近づくにつれ下方に向かう傾斜を有する傾斜部分とを有する構成を採用してもよい。
【0042】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0043】
S、XS…点滴スタンド
1、X1…脚ベース
2、X2、A2、B2…支柱
3…輸液フック(輸液パック保持部)
4、A4、B4…ハンドル
41、A41、B41…ハンドル本体
41a、A41a、B41a…ハンドル本体の内周面
41b、A41b、B41b…ハンドル本体の上面
41c、A41c、B41c…ハンドル本体の外周面
411、A411、B411…持ち手部
411a…持ち手部の下面
412、A412、B412…接続部
42、A42、B42…ボス部
P…輸液パック
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院等に用いられるものであって、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液パック保持部及び手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院内や診療所内において、点滴を受けている間でも病院内や診療所内を移動することができるようにするための点滴スタンドに対する要望が存在する。この要望に対応すべく、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドが用いられてきている。
【0003】
このような点滴スタンドのハンドルとして、利用者が手を掛けることができるハンドル本体と、このハンドル本体を支柱に支持させるためのボス部とを備えている構成が広く知られているが、従来のものは支柱に対して特定の方向にのみハンドル本体が存在する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところが、このような構成の点滴スタンドを利用する際にハンドル本体に手を掛けるには、利用者と支柱との間にハンドル本体が位置するようにハンドル本体又は点滴スタンド全体を水平回転させるか、利用者と支柱との間にハンドル本体が配される位置に利用者が移動する必要があり、利用者が不便に感じる不具合が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−135544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に着目し、利用者が手を掛けることができるハンドルを備えた点滴スタンドにおいて、利用者と点滴スタンドとの相対位置に関わらず、ハンドルや点滴スタンド全体を水平回転させる手間を必要とすることなくハンドルに手を掛けることができる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る点滴スタンドは、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液パック保持部及び手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドであって、前記ハンドルが、支柱を囲う環状のハンドル本体と、このハンドル本体を支柱に支持させるためのボス部とを備えてなり、前記ハンドル本体の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間を形成していることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、ハンドル本体の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間が形成されているので、利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもこの環状空間に手を入れてハンドルに手を掛けることができる。
【0009】
なお、本発明において、「略全周に亘って連続した環状空間」とは、360度完全に連続している空間のみならず、一部途切れている環状の空間であってもよい。なお、一部途切れている場合、180度以上連続している空間が望ましい。
【0010】
利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもハンドル本体を上方から把持できるようにするための望ましい態様の一例として、前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が略全周に亘って連続しているものが挙げられる。なお、本発明において、「ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が略全周に亘って連続している」とは、360度完全に連続しているものに限らず、一部途切れているものであってもよい。なお、一部途切れている場合、180度以上連続していることが望ましい。
【0011】
利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもハンドル本体を上方から把持できるようにするための望ましい態様の他の一例として、前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が全周に亘って途切れることなく連続しているものが挙げられる。
【0012】
利用者が点滴スタンド近傍のどの位置に起立した場合であってもハンドル本体を上方から把持できるようにする構成を実現するための具体的な態様の一例として、前記ハンドル本体が、環状をなす持ち手部と、この持ち手部の下面と前記ボス部とを連結する連結部とを備えたものが挙げられる。
【0013】
利用者が疲労した場合等にハンドルに体を預けやすくするための具体的な態様の一例として、前記ハンドル本体が、その上面が略水平となるように前記支柱に取り付けられているものが挙げられる。
【0014】
このような点滴スタンドの形状の具体的な一例として、ハンドル本体が、長軸を左右方向に向けて支柱に取り付けられた楕円形状をなす持ち手部を備えたものであり、前記ボス部が平面視において前記持ち手部の中心に位置させたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、利用者が手を掛けることができるハンドルを備えた点滴スタンドにおいて、利用者と点滴スタンドとの相対位置に関わらず、ハンドルや点滴スタンド全体を水平回転させる手間を必要とすることなくハンドルに手を掛けることができる構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る点滴スタンドを示す全体斜視図。
【図2】同実施形態に係る点滴スタンドを示す正面図。
【図3】同実施形態に係る点滴スタンドを示す左側面図。
【図4】同実施形態に係る点滴スタンドを示す平面図。
【図5】図2におけるA−A断面図。
【図6】図2におけるB−B断面図。
【図7】図2における要部を破断して示す図。
【図8】同実施形態に係る輸液フックの取付態様を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図10】本発明の第1の変形例に係る点滴スタンドを示す背面図。
【図11】同変形例に係る点滴スタンドを示す左側面図。
【図12】同変形例に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図13】同変形例に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図14】本発明の第2の変形例に係る点滴スタンドのハンドルを示す平面図。
【図15】本発明の第3の変形例に係る点滴スタンドのハンドルを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の一実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。
【0018】
この点滴スタンドSは、図1〜図4に示すように、移動可能な脚ベース1に支柱2を支持させ、その支柱2に輸液パックPを掛けるための輸液パック保持部である輸液フック3及び左右両側及び前側からそれぞれ把持可能なハンドル4を設けてなる。なお、図2及び図3においては、支柱2を一部省略して示している。
【0019】
脚ベース1は、図1〜図6に示すように、キャスタ11と、キャスタ11を支持する支持部材12とを具備してなる。支持部材12は、樹脂により一体に成形されたもので、前記支柱2を支持するための左右方向に延びる中心フレーム121と、この中心フレーム121の左右両端から前方に延出する前側の2本の脚フレーム122と、前記中心フレーム121の中間部から後方に延出する後側の2本の脚フレーム123とを備えており、平面視略H字状をなしている。前記中心フレーム121の中央には、前記支柱2が立設されている。前記中心フレーム121及び前記前側の2本の脚フレーム122は、略同一平面上に配置されているとともに、前記後側の2本の脚フレーム123は前記中心フレーム121の下面121aから略水平に延びるように配置されている。この支持部材12の高さ寸法h1は、一般的な病室用ベッド下方の隙間に挿入可能な大きさに設定されている。また、この脚ベース1は、前側の左右に隣接する2つのキャスタ11間の距離w1を前側の左のキャスタ11に隣接する後側の左のキャスタ11と前側の右のキャスタ11に隣接する後側の右のキャスタ11との間の距離w2よりも大きく設定してある。さらに、この脚ベース1は、前側の左右のキャスタ11間に前方に開放された前の起立空間1s1が形成され、前側の左のキャスタ11と後側の左のキャスタ11との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間1s2が形成され、前側の右のキャスタ11と後側の右のキャスタ11との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間1s3が形成されるように構成されたものである。すなわち、脚フレーム122、123の先端部122a、123a以外の部分が、少なくとも前側の左のキャスタ11と後側の左のキャスタ11とを結ぶ直線、前側の右のキャスタ11と後側の右のキャスタ11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。また、前側の脚フレーム122の先端部122a以外の部分が、前側の左のキャスタ11と前側の右のキャスタ11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。具体的には、前記脚ベース1は、先端にキャスタ11を有した4本の脚フレーム122、123を有し、前側のキャスタ11を支持する2本の脚フレーム122及び後側のキャスタ11を支持する2本の脚フレーム123がそれぞれ平面視において先端側が拡開するハの字状に配されており、前側の脚フレーム122の下に同一構造をなす他の点滴スタンドSの後側の脚フレーム123を通過させることが可能な空間が形成されるように構成されている。この構成によって、後述するように複数の点滴スタンドSをネスティングすることができるようにしてある。前記前の起立空間1s1は、平面視において前方に開放されたもので、この点滴スタンドSの前側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを後方に、すなわち使用者Uの進行方向に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記左の起立空間1s2は、平面視において左側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドSの左側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記右の起立空間1s3は、平面視において右側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドSの右側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。そして、前記支持部材12を構成する前側の2本の脚フレーム122の下に、前記前の起立空間1s1及び前記左右の起立空間1s2、1s3にそれぞれ連通する蹴り込み空間1s4が形成されている。この蹴り込み空間1s4は、正面視、側面視及び背面視において視認可能に開口したもので、その高さ寸法h2は、一般的な体格を有する成人のつま先が歩行中に進入可能な大きさに設定されている。一方、前記キャスタ11は、双輪タイプのもので、その幅寸法はエレベータと該エレベータの乗り口との間の隙間の幅寸法よりも大きい。具体的には、前記キャスタ11の幅寸法は30mm以上であることが望ましく、本実施形態では60mmに設定されている。
【0020】
前記支柱2は、伸縮可能なもので、図1〜図3及び図7に示すように、前記脚ベース1に立設された下部要素21と、この下部要素21に上下スライド可能に嵌め合わされ前記輸液フック3を支持する上部要素22とを備えたものである。前記下部要素21は、脚ベース1の前記中心フレーム121に立設された金属パイプ材製のものである。前記上部要素22は、前記下部要素21の内周にスライド可能に嵌合された金属パイプ材製のものである。この上部要素22を緊締機構23により前記下部要素21に対して上下位置変更可能に固定している。この緊締機構23は、前記輸液フック3よりも下方に位置する部位に設けられている。前記緊締機構23は、図7に示すように、前記支柱2に設けられた雌ねじ231aを有するフレーム231と、このフレーム231の雌ねじ231aに螺着された雄ねじ232aを有するグリップ232と、前記雄ねじ232aが外部に露出することを防止するカバー233とを具備する。換言すれば、前記緊締機構23は、前記支柱2の下部要素21の上端部に設けられた雌ねじ231aを有するフレーム231と、このフレーム231の雌ねじ231aに螺着されその先端で上部要素22の外周を押し付けることによりこの上部要素22を前記下部要素21に固定するための雄ねじ232aを有するグリップ232と、前記雄ねじ232aが外部に露出することを防止するカバー233とを具備する。前記フレーム231は、前記支柱2の下部要素21の上端部21aと、この上端部21aに外嵌させた合成樹脂製の外嵌部材231bとを備えてなるもので、前記下部要素21の上端部21a及び外嵌部材231bのいずれか一方に雌ねじ231aを有している。前記グリップ232は、前記雄ねじ232aを保持する軸部232bと、この軸部232bに回転力を付与するための把持部232cと、この把持部232cと前記軸部232bの外面とを滑らかに連続させる中間部232dとを備えたものである。すなわちこの中間部232dは、軸部232bから把持部232cに向かって漸次径が増大する曲面形状をなしている。前記カバー233は、前記フレーム231に設けられ前記グリップ232の軸部232bの外周に相対回転可能に外嵌する筒状のものである。具体的には、このカバー233は、前記フレーム231の外嵌部材231bと一体に形成された薄肉円筒体状のもので、このカバー233の外周面232aと前記グリップ232の中間部232dの外周面232d1とが大きな段差を伴うことなく略連続するように構成されている。そして、この支柱2の上端には、各輸液フック3に掛けられた輸液パックP同士が干渉しないように複数の前記輸液フック3が放射状に設けられている。この実施形態においては、4本の前記輸液フック3を着脱自在に取り付けることができるようになっているが、図面では2本の輸液フック3を装着した状態を示している。
【0021】
前記各輸液フック3は、図1及び図2に示すように、支柱2に設けたフック取付部材5から外方に延出する延出桿31と、この延出桿31の延出端部に設けられたフック本体32とを備えている。これら延出桿31と前記フック本体32とは、連続した細長い素材により作られたものであり、同一平面に沿って配置されている。前記フック本体32は、前記延出桿31の延出端に連続して設けられ上下方向に延びる上下延出部321と、この上下延出部321の延出端に連続して設けられ支柱2側に折り返す折り返し部322とを具備してなり、その折り返し部322の先端322xと前記延出桿31との間に形成される開口3sが、支柱2側から輸液パックPを挿脱し得る方向に開放されている。前記上下延出部321は、延出桿31の延出端から下方に垂下するもので、病室で一般的に用いられているカーテンの網目の寸法よりも大きな上下方向寸法h3を有している。前記折り返し部322は、上下延出部321の延出端に連続して設けられ前記輸液パックPを掛け止める略U字状をなす掛け止め部分322aと、この掛け止め部分322aから連続して上方に延びる上向き部分322bと、この上向き部分322bの上端に連続して設けられ支柱2に向かって延びる先端部分322cとを備えたものであり、この先端部分322cと前記延出桿31との間に輸液パックPを挿脱するための開口3sが形成されている。前記折り返し部322の先端322xは、支柱2に向けて延出している。すなわち、前記折り返し部322の先端部分322cは、前記延出桿31と平行である。前記延出桿31は、図8に示すように、その基端に下方に屈曲して垂下する垂下部311を備えている。前記フック取付部材5は、支柱2の上端部に装着されたもので、その上面に、中心ボルト挿通孔51と、この中心ボルト挿通孔51の近傍から放射状に形成された複数本の延出桿保持溝52と、これら各延出桿保持溝52の基端に連続させて設けられた縦穴53とが設けられている。前記延出桿31は、その垂下部311を前記縦穴53に挿入するとともに、その垂下部311に連続する基端部312を前記延出桿保持溝52に嵌め合わせることによりフック取付部材5に保持されるようになっている。なお、フック取付部材5の上面には、前記中心ボルト挿通孔51に対応する中心孔61と、前記延出桿保持溝52に対応する保持溝62とを有したキャップ6が装着されるようになっており、このキャップ6の中心孔61と前記フック取付部材5の中心ボルト挿通孔51に挿通させたボルト63を支柱2の内部に固設した図示しないナットに螺着することにより前記各延出桿31を前記フック取付部材5に固定するようにしてある。以上のような輸液フック3の下方に、手を掛けることができるハンドル4を設けている。
【0022】
前記ハンドル4は、図1〜図5に示すように、支柱2を囲う環状のハンドル本体41と、このハンドル本体41を支柱2に支持させるためのボス部42とを備えてなる。このハンドル4は、左右両側及び前側からそれぞれ把持可能であり、このハンドル本体41の内周面41a側に全周に亘って連続した環状空間を形成している。本実施形態では、前記ハンドル本体41の内周面41a、上面41b及び外周面41cが全周に亘って途切れることなく連続している。前記ハンドル本体41は、環状をなす持ち手部411と、この持ち手部411の下面411aと前記ボス部42とを連結する連結部412とを備えており、その上面41bが略水平となるように前記支柱2に取り付けられている。前記持ち手部411は、平面視において長軸を左右方向に向けて支柱2に取り付けられた楕円形状をなし、その断面形状は手を掛けやすくすべく略円形状に設定されている。前記環状空間は、この持ち手部411の内周に沿って環状をなすように連続したものである。前記連結部412は、前記持ち手部411の左右両端の下面411aからそれぞれ前記ボス部42に向かい延びる帯状のもので、持ち手部411に手を掛けた際に手と干渉しにくい位置に配している。前記ボス部42は平面視において前記持ち手部411の中心に位置されている。このボス部42は、支柱2に対して上下方向に取付位置を変更可能に取り付けられており、このハンドル4のボス部42を緊締機構43により前記支柱2に対して上下位置変更可能に固定している。この緊締機構43は、前記ハンドル4の持ち手部411よりも下方に位置する部位に設けられている。前記緊締機構43は、前記ハンドル4のボス部42により構成される雌ねじを有するフレーム431と、このフレーム431の雌ねじに螺着された雄ねじを有するグリップ432と、前記雄ねじが外部に露出することを防止するカバー433とを具備する。この緊締機構43は、前述した支柱2の上部要素22を下部要素21に固定するための緊締機構23に準じた構成をなすものであるため、図示及び詳細な説明は省略する。
【0023】
そして、この点滴スタンドSは、図5及び図9を参照しつつ以下に述べるような手順によりネスティング可能である。まず、特定の点滴スタンドS(1)のハンドル4と、この特定の点滴スタンドS(1)と同一構造をなす他の点滴スタンドS(2)のハンドル4との上下方向相対位置を持ち手部411の上下方向寸法以上異ならせておく。次いで、特定の点滴スタンドS(1)の前方から、この点滴スタンドS(1)の中心フレーム121に他の点滴スタンドS(2)の中心フレーム121が平行となるように他の点滴スタンドS(2)を接近させる。このとき、特定の点滴スタンドS(1)の前側の脚フレーム122の下方に形成された蹴り込み空間1s4を他の点滴スタンドS(2)の後側の脚フレーム123が通過する。そして、特定の点滴スタンドS(1)の支柱2に他の点滴スタンドS(2)のハンドル4の持ち手部411が接近又は当接し、特定の点滴スタンドS(1)の前側に他の点滴スタンドS(2)をネスティングさせることができる。
【0024】
なお、以上の実施形態において、前後左右の概念は説明の便宜上用いたものであり、使用者Uの使用方向を規定するものではない。
【0025】
以上に述べたように、本実施形態の点滴スタンドSの構成によれば、ハンドル本体41の内周面41a側に全周に亘って連続した環状空間が形成されているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であっても、利用者Uがこの環状空間に手を入れてハンドル4に手を掛けることができる。
【0026】
また、前記ハンドル本体41の内周面41a、上面41b及び外周面41cが全周に亘って途切れることなく連続しているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であってもハンドル本体41を上方から安定して把持することができる。
【0027】
さらに、前記ハンドル本体41が、環状をなす持ち手部411と、この持ち手部411の下面411aと前記ボス部42とを連結する連結部412とを備えているので、利用者Uが持ち手部411を上方から把持した際に、ボス部42及び連結部412により持ち手部411を下方から安定して支持させることができる。
【0028】
加えて、前記ハンドル本体41が、その上面41bが略水平となるように前記支柱2に取り付けられているので、利用者Uが疲労した場合等にハンドル4に体を預けやすく、更なる利用の便を図ることができる。
【0029】
そして、ハンドル本体41が、長軸を左右方向に向けて支柱に取り付けられた楕円形状をなす持ち手部411を備えたものであり、前記ボス部42を平面視において前記持ち手部411の中心に位置させているので、特に利用者が前の起立空間1s1に起立した場合に、下腕部全体をハンドル本体41に載せ置いて利用する際の便を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0031】
例えば、第1の変形例として、図10〜図13に示すような脚ベースX1を備えているものが考えられる。図10〜図13では、脚ベースX1以外の各部位には、上述した実施形態における符号の前にXを付加した符号を付している。また、図10〜図12においては、支柱X2を一部省略して示している。この脚ベースX1は、キャスタX11と、キャスタX11を支持する支持部材X12とを具備してなる。支持部材X12は、樹脂により一体に成形されたもので、前記支柱X2を支持するための左右方向に延びる中心フレームX121と、この中心フレームX121の左右両端から前方に延出する前側の2本の脚フレームX122と、前記中心フレームX121の中間部から後方に延出する後側の2本の脚フレームX123とを備えており、平面視略H字状をなしている。前記中心フレームX121の中央には、前記支柱X2が立設されている。前記中心フレームX121及び前記前側の2本の脚フレームX122は、略同一平面上に配置されている。また、前記後側の2本の脚フレームX123は、前記中心フレームX121から後方斜め下方に延びるように配置されたものであり、その基端がこれら中心フレームX121及び前側の2本の脚フレームX122と略同一平面上に配置されている。換言すれば、前記後側の2本の脚フレームX123の先端部X123aの高さ位置は、前側の2本の脚フレームX122の先端部X122aの高さ位置よりも下方に設定されている。そして、この支持部材X12の高さ寸法Xh1は、一般的な病室用ベッド下方の隙間に挿入可能な大きさに設定されている。また、この脚ベースX1は、前側の左右に隣接する2つのキャスタX11間の距離Xw1を前側の左のキャスタX11に隣接する後側の左のキャスタX11と前側の右のキャスタX11に隣接する後側の右のキャスタX11との間の距離Xw2よりも大きく設定してある。さらに、この脚ベースX1は、前側の左右のキャスタX11間に前方に開放された前の起立空間X1s1が形成され、前側の左のキャスタX11と後側の左のキャスタX11との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間X1s2が形成され、前側の右のキャスタX11と後側の右のキャスタX11との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間X1s3が形成されるように構成されたものである。すなわち、脚フレームX122、X123の先端部X122a、X123a以外の部分が、少なくとも前側の左のキャスタX11と後側の左のキャスタX11とを結ぶ直線、前側の右のキャスタX11と後側の右のキャスタX11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。また、前側の脚フレームX122の先端部X122a以外の部分が、前側の左のキャスタX11と前側の右のキャスタX11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。具体的には、前記脚ベースX1は、先端にキャスタX11を有した4本の脚フレームX122、X123を有する。前側のキャスタX11を支持する2本の脚フレームX122は平面視において先端側が拡開するハの字状に配されている。後側のキャスタX11を支持する2本の脚フレームX123は、平面視において先端側がそれぞれ中心フレームX121の延出方向に対して直交する方向に配されている。換言すれば、後側のキャスタX11を支持する2本の脚フレームX123は、互いに平行に配されている。前側の脚フレームX122の下に同一構造をなす他の点滴スタンドXSの後側の脚フレームX123を重ねることが可能な空間が形成されるように構成されている。換言すれば、前後に隣接する点滴スタンドXSの後側の脚フレームX123同士を上下方向に重ねることが可能に構成されている。この構成によって、図12及び図13に示すような態様で、本変形例に係る特定の点滴スタンドXS(1)の前方に同一構造をなす他の点滴スタンドXS(2)をネスティングすることができる。前記前の起立空間X1s1は、平面視において前方に開放されたもので、この点滴スタンドXSの前側に起立した使用者が当該点滴スタンドXSを後方に、すなわち使用者の進行方向に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記左の起立空間X1s2は、平面視において左側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドXSの左側に起立した使用者が当該点滴スタンドXSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記右の起立空間X1s3は、平面視において右側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドXSの右側に起立した使用者が当該点滴スタンドXSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。そして、前記支持部材X12を構成する前側の2本の脚フレームX122の下に、前記前の起立空間X1s1及び前記左右の起立空間X1s2、X1s3にそれぞれ連通する蹴り込み空間X1s4が形成されている。この蹴り込み空間X1s4は、正面視、側面視及び背面視において視認可能に開口したもので、その高さ寸法Xh2は、一般的な体格を有する成人のつま先が歩行中に進入可能な大きさに設定されている。
【0032】
本変形例に係る脚ベースX1を有する点滴スタンドXSの構成によっても、上述した実施形態に係る点滴スタンドSと同一又はこれに準じた効果を得ることができる。
【0033】
また、第2の変形例として、図14に示すように、支柱A2を囲う環状をなすとともに後部に切欠き部A41sを有するハンドル本体A41と、このハンドル本体A41を支柱A2に支持させるためのボス部A42とを備えたハンドルA4を有するものが挙げられる。前記ハンドル本体A41は、前記切欠き部A41s以外の箇所で支柱A2を囲う一箇所を切り欠いた楕円形状をなす持ち手部A411と、この持ち手部A411の両端A411xとボス部A42とを接続する略U字状の接続部A412を有するハンドルA4を備えている。ハンドル本体A41の内周A41a側の空間は180度以上連続しており、ハンドル本体A41の内周面A41a、上面A41b及び外周面A41cは切れ目なく連続している。また、前記接続部A412は、ボス部A42の後部に接しボス部と一体をなす被支持部分A412bと、この被支持部分A412bの両端と前記持ち手部A411の両端A411xとをそれぞれ接続する対をなす接続桿部分A412aとを備えていて、接続桿部分間A412aの空間を前記切欠き部A41sとしている。そして、この切欠き部A41s内に支柱A2を位置付けてハンドルA4を後方に移動させることにより支柱A2にハンドルA4を取り付けることができるようにしている。この変形例に係る点滴スタンドのハンドルA4以外の各部位は、上述した実施形態におけるものと同様の構成を有するので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0034】
さらに、第3の変形例として、図15に示すように、支柱B2を囲う環状をなすとともに後部に切欠き部B41sを有するハンドル本体B41と、このハンドル本体B41を支柱B2に支持させるためのものであり後部に切欠き部B42sを有するボス部B42とを備えたハンドルB4を有するものが挙げられる。前記ハンドル本体B41は、前記切欠き部B41s以外の箇所で支柱B2を囲う一箇所を切り欠いた楕円形状をなす持ち手部B411と、この持ち手部B411の下面とボス部B42とを接続する帯状の接続部B412を有する。前記ハンドル本体B41の内周面B41a側の空間は180度以上連続しており、ハンドル本体B41の内周面B41a、上面B41b及び外周面B41cは前記切欠き部B41s以外の箇所では切れ目なく連続している。一方、前記ボス部B42は全体が弾性変形可能な素材により形成されたものであり、その内周B42a側の空間も180度以上連続している。このボス部B42の切欠き部B42sは、支柱B2とハンドル本体B41の切欠き部B41sとの中間に位置させている。そして、ハンドル本体B41の切欠き部B41s内に支柱B2を位置付け、ハンドルB4を後方に移動させ、ボス部B42を弾性変形させてボス部B42の切欠き部B42s内に支柱B2を位置付けた状態からさらにハンドルB4を後方に移動させることにより、支柱B2にこのハンドルB4を取り付けることができるようにしている。
【0035】
これらの変形例に係るハンドルA4、B4を有する点滴スタンドの構成によっても、ハンドル本体A41、B41の内周面A41a、B41a側に、切欠き部A41s、B41sを除く全周に亘って180度以上連続した環状空間が形成されているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であっても、利用者Uがこの環状空間に手を入れてハンドルA4、B4に手を掛けることができる。
【0036】
さらに、これら第2及び第3の変形例に係るハンドルA4、B4を有する点滴スタンドの構成によれば、ハンドル本体A41、B41の切欠き部A41s、B41s内に支柱A2、B2を位置付けてハンドルA4、B4を後方に移動させることにより支柱A2、B2にこのハンドルB4を取り付けることができるようにしているので、ハンドルA4、B4の支柱A2、B2に対する装脱の便を図ることもできる。
【0037】
加えて、第2の変形例に係るハンドルA4は、前記ハンドル本体A41の内周面A41a、上面A41b及び外周面A41cが全周に亘って途切れることなく連続しているので、利用者が前の起立空間1s1、左の起立空間1s2及び右の起立空間1s3のいずれに起立した場合であってもハンドル本体A41を上方から安定して把持することができる。
【0038】
ここで、第2及び第3の変形例に係るハンドルA4、B4に、上述した実施形態に係るハンドル4に備えた緊締機構43と同様の構成を有する緊締機構を設け、支柱A2、B2に対する相対位置を変更可能に取り付けるようにするとなおよい。
【0039】
さらに、ハンドル本体には、真円形のものや、真円形の一部を切り欠いた形状のものを採用してもよく、さらに、多角形状のものや、多角形の一部を切り欠いた形状のものを採用してもよい。
【0040】
加えて、上述した実施形態では、ハンドル本体の上面が略水平となるように支柱に取り付けられているが、ハンドル本体の上面が水平面に対して傾斜を有するものであってもよく、また、ハンドル本体の上面と水平面とがなす角度を変更可能に構成してもよい。
【0041】
そして、ハンドル本体の持ち手部とボス部とを接続するための接続部は、上述した実施形態、第1の変形例及び第3の変形例では持ち手部の下面からボス部に向けて延出しており、上述した第2の変形例では切欠き部の両端から水平に延出しているが、これら以外に、例えば、持ち手部の内側面から支柱に向けて延出し持ち手部とボス部との間の部位に達する水平部分と、この水平部分の延出端からボス部に向けて延出しボス部に近づくにつれ下方に向かう傾斜を有する傾斜部分とを有する構成を採用してもよい。
【0042】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0043】
S、XS…点滴スタンド
1、X1…脚ベース
2、X2、A2、B2…支柱
3…輸液フック(輸液パック保持部)
4、A4、B4…ハンドル
41、A41、B41…ハンドル本体
41a、A41a、B41a…ハンドル本体の内周面
41b、A41b、B41b…ハンドル本体の上面
41c、A41c、B41c…ハンドル本体の外周面
411、A411、B411…持ち手部
411a…持ち手部の下面
412、A412、B412…接続部
42、A42、B42…ボス部
P…輸液パック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液パック保持部及び手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドであって、
前記ハンドルが、支柱を囲う環状のハンドル本体と、このハンドル本体を支柱に支持させるためのボス部とを備えてなり、前記ハンドル本体の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間を形成していることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項2】
前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が略全周に亘って連続している請求項1記載の点滴スタンド。
【請求項3】
前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が全周に亘って途切れることなく連続している請求項1又は2記載の点滴スタンド。
【請求項4】
前記ハンドル本体が、環状をなす持ち手部と、この持ち手部の下面と前記ボス部とを連結する連結部とを備えたものである請求項1、2又は3記載の点滴スタンド。
【請求項5】
前記ハンドル本体が、その上面が略水平となるように前記支柱に取り付けられている請求項1、2、3又は4記載の点滴スタンド。
【請求項6】
ハンドル本体が、長軸を左右方向に向けて支柱に取り付けられた楕円形状をなす持ち手部を備えたものであり、前記ボス部が平面視において前記持ち手部の中心に位置させたものである請求項1、2、3、4又は5記載の点滴スタンド。
【請求項1】
移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液パック保持部及び手を掛けることができるハンドルを設けてなる点滴スタンドであって、
前記ハンドルが、支柱を囲う環状のハンドル本体と、このハンドル本体を支柱に支持させるためのボス部とを備えてなり、前記ハンドル本体の内周面側に略全周に亘って連続した環状空間を形成していることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項2】
前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が略全周に亘って連続している請求項1記載の点滴スタンド。
【請求項3】
前記ハンドル本体の内周面、上面及び外周面が全周に亘って途切れることなく連続している請求項1又は2記載の点滴スタンド。
【請求項4】
前記ハンドル本体が、環状をなす持ち手部と、この持ち手部の下面と前記ボス部とを連結する連結部とを備えたものである請求項1、2又は3記載の点滴スタンド。
【請求項5】
前記ハンドル本体が、その上面が略水平となるように前記支柱に取り付けられている請求項1、2、3又は4記載の点滴スタンド。
【請求項6】
ハンドル本体が、長軸を左右方向に向けて支柱に取り付けられた楕円形状をなす持ち手部を備えたものであり、前記ボス部が平面視において前記持ち手部の中心に位置させたものである請求項1、2、3、4又は5記載の点滴スタンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−17655(P2013−17655A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153376(P2011−153376)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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