説明

点火プラグ絶縁体

【課題】高誘電強度で、高濃度で、光の通過を可能にする光学的性質を有する点火プラグ絶縁体を提供する。
【解決手段】点火プラグは、密度が約3.95g/cm3以上の絶縁体を備え、絶縁体は、少なくとも99.5%のAl23および、各々が約10〜1000ppmである、Y23、MgO、La23遷移金属酸化物およびランタン系列の酸化物からなるグループから選択される少なくとも2つの材料を含み、前記絶縁体の多孔度は0.3%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2006年6月23日に出願された米国仮出願番号60/815,946の利益を主張するものであり、当該仮出願の全開示内容は、本願の開示内容の一部であるとみなされ、引用により本願に援用される。
【0002】
発明の背景
この発明は、高誘電強度で、高濃度で、細粒状で、光の通過を可能にする光学的性質を有する点火プラグ絶縁体に関する。
【背景技術】
【0003】
絶縁体30に固定された外殻20を有する例示的な点火プラグが図1に示される。中心電極50および端子40は、絶縁体30の内部に少なくとも部分的に固定される。絶縁体30は、荷電端子40および中心電極50を接地電極22から絶縁する。絶縁体30はまた、端子40および中心電極50を外部の電気的干渉から分離する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メーカが内燃機関の複雑度を増して小型化し続けるにつれて、より小型で占有空間がより小さい点火プラグが強く必要とされている。現在、点火プラグのサイズ、特に点火プラグの直径は、プラグの稼動寿命にわたる絶縁体の必要な誘電強度のためにこれ以上小さくすることができない。誘電強度は、絶縁体の壁の必要な厚みに直接関連する。小型化を制限している別の要因は、点火プラグの100,000マイル、150,000マイル、および175,000マイルの稼動寿命を要求するなど、点火プラグの稼動寿命の延長を要求するメーカが増えていることである。所望の稼動寿命が延びるほど、必要な誘電強度は高くなる。これまで、点火プラグの稼動寿命または誘電強度を高めるための一般的な方法は、絶縁体の壁の厚みを増やすことであった。しかし、最新のエンジンにはより小型の点火プラグが現在要求されているため、より厚い壁の絶縁体の使用が不可能であるか、または制限される。
【0005】
燃費および電力を向上させるためにカムシャフトの代わりに電気機械式弁アクチュエータを用いる最近の動きも、より薄くより小型の点火プラグに対する要求をさらに高めることが予想される。より高い誘電強度に対する要求は、最新の内燃機関の近年の発展および傾向によっても駆り立てられている。燃料経済性を向上させ性能を高めるため、エンジンはより高い圧縮で設計されつつあり、ターボチャージ搭載エンジンがより一般的になりつつある。スパークジャンプを起こすため、より高い圧縮下でのスパークギャップには、絶縁体のより高い電圧、したがってより高い誘電強度が必要である。したがって、壁の厚みを薄くして小型化しつつ誘電強度が増大した点火プラグ用の絶縁体が必要とされている。
【0006】
最新の点火プラグは典型的に、特定の点火プラグメーカに特有の他の独自の添加剤が入ったアルミナ複合物から形成される。形成されると、独自の成分を有するアルミナは典型的に、白色で透明ではないセラミック絶縁体を形成する。実際、本願の発明者は、絶縁体が光の透過を可能にすることによって絶縁体が通常の照明下で燃焼チャンバ内のスパークを目に見えるように示す現在の点火プラグを1つも知らないし、ましてや太陽光の下で目に見えるように示す現在の点火プラグを1つも知らない。ガラスなどのアモルファス材料から形成されるこれまでの絶縁体の中には透明のものもあるが、これらの絶縁体は、最新の内燃機関が必要とする誘電強度を満たしておらず、これらの以前の透明な絶縁体には低い誘電強度要件の下でさえもはるかに厚い壁の厚みが必要とされたため、特に現在のサイズ要件を満たしていない。さまざまなエンジン問題を診断する際には、シリンダ内で発生しているスパークに問題があるかどうかを判断するためにシリンダ内を見る、または最低でも燃焼を見ることが望ましいであろう。現在、車両の電気着火、点火プラグワイヤ、または点火プラグに問題があるかどうかを判断するためには、特別な試験が必要である。したがって、高誘電強度で、絶縁体の直径を含む所望の機械的品質を有する点火プラグを維持しつつ、シリンダの燃焼チャンバ内で発生するスパークを見ることが望ましい。
【0007】
絶縁体30は従来は、焼成され、うわぐすりをかけられて、絶縁体30の端子部12上に滑らかな表面を与える。うわぐすりがけは、端子部12上のうわぐすりをかけられていない絶縁体30上で発生し得るフラッシュオーバーを防止するために必要である。製造コストおよび時間を削減するため、絶縁体にうわぐすりをかけないことが望ましいが、現在、付加的な処理工程なしでは、絶縁体の外面をフラッシュオーバーを防止するために必要な滑らかさを有するように作製することができず、したがってうわぐすりをかける必要がある。
【0008】
絶縁体30の焼成端部またはコアノーズ14は典型的に、点火プラグのこの部分についてはフラッシュオーバーが一般に問題ではないため、うわぐすりがけ処理の費用のためにうわぐすりをかけられない。したがって、絶縁体30の焼成端部またはコアノーズは従来は粗面を有し、これはシリンダ内の燃焼処理からの堆積物を引寄せ得、点火プラグの焼成に悪影響を及ぼし得る。正しく調整されていない、効率的に動作していない、または燃焼処理時にシリンダ内への漏油などの機械的な問題を有するエンジンでは、これらの堆積物は急速にかつ大量に蓄積して、最終的に低抵抗の中心電極50と殻20との間の導電管を生じさせ得る。その後に点火プラグギャップが飛び越され、これによってひいては、点火プラグが適切なスパークプロファイルを与えてシリンダ内のガスを効率的に発火させることができなくなる。2サイクルエンジンもまた、燃焼時にシリンダ内に存在する油のせいで堆積物を蓄積し得る。したがって、うわぐすりがけまたは他の最終仕上げ処理を必要としないより滑らかな表面を有する、点火プラグ絶縁体として使用するための材料を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
この発明は、高誘電強度で、良好な機械的性質、および点火プラグの焼成端から端子部への光の通過を可能にする光学的性質を有する点火プラグ絶縁体に関する。(1) チャンバ内のスパークおよび燃焼処理を光の透過を通じて見せることが可能な点火プラグ用の若干透明な絶縁体、ならびに(2) 高誘電強度で、より薄い点火プラグを可能にする良好な機械的性質を有する点火プラグ用の絶縁体は、他の微量な材料および金属酸化物を有する少なくとも99%の多結晶Al23である絶縁体形成材料を用いて作成できることがわかった。そのような高純度のAl23絶縁体を形成するため、金属酸化物は焼結補助剤および粒子成長抑制剤として作用する。
【0010】
この発明のさらなる適用範囲が以下の詳細な説明、請求項、および図面から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定的な例は、本発明の好ましい実施例を示しているが、本発明の思想および範囲内のさまざまな変更および修正が当業者に明らかになるであろうことから、例示のためにのみ与えられることを理解すべきである。
【0011】
この発明は、以下に与えられる詳細な説明、添付の請求項、および添付の図面からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】典型的な点火プラグの断面図である。
【図2】図1の点火プラグの絶縁体部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例の詳細な説明
点火プラグ10が図1の断面図に示される。点火プラグ10は、絶縁体30に固定された外殻20を含み、当該外殻20は接地電極22を含む。点火プラグ10は、その中に端子40、導電性材料46、封止材料48、および中心電極50が位置している絶縁体30の中心ボア32を有すると図示されているが、絶縁体を有する点火プラグまたは発火器のどのような構成もこの発明の絶縁体30を用いてよい。点火プラグおよび点火プラグ絶縁体についての言及も一般に、発火器および発火用絶縁体を指す。中心電極50は、接地電極22に対向する先端56を含む。図2にさらに図示されるように、絶縁体30は焼成端13と端子端11との間に延在する。端子端11から焼成端13に向かって延在して、点火プラグ絶縁体30は、端子部12、大きな肩部16、小さな肩部18、および焼成端部またはコアノーズ14を含む。絶縁体30はさらに、中心ボア32の内面34と外面36との間の壁のさまざまな厚みを有して形成される。内面34はまた、カウンタボア座部38を規定し、中心電極50がこれに接している。図面に示され本明細書中に説明される点火プラグ絶縁体は、自動車のエンジンでの使用などの内燃機関で使用される典型的な点火プラグであるが、当業者であれば、絶縁体30は所望の用途に依存してさまざまな形状、サイズ、および構成で形成され得ることを容易に認識するであろう。たとえば、いくつかの実施例では、肩部16および18は無くてもよい。
【0014】
絶縁体30は、約少なくとも99重量%のAl23、より好ましくは少なくとも99.4重量%のAl23を有する材料から形成される。絶縁体30の所望の特性は、絶縁体30を約99.97重量%以上のAl23によって形成することによっても得ることができる。焼結処理を向上させるため、ならびに点火プラグの電気的および機械的性質や耐久性を向上させるため、点火プラグ絶縁体30は、IIIB族遷移金属の酸化物、ランタン系列の酸化物、およびMgOなどのさまざまな金属酸化物の1つ以上を含有する材料から作られる。これらの金属酸化物は典型的に、最大量が約1,000ppmで個別にまたは化合されて存在する。所望の特性に依存して、金属酸化物は約50から675ppmの量で、およびいくつかの場合では100から600ppmの量で存在し得る。例示的な金属酸化物は、Y23、La23、Yb23、およびMgOを含む。IIIB族から選択される例示的な遷移金属酸化物は、Se23、Y23、およびLa23を含む。ランタン系列の例示的な酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuの酸化物を含有する酸化物のグループから選択される金属酸化物を含む。下の表1は、例示的な絶縁体の組成、特に絶縁体に含まれるAl23、MgO、および他の金属酸化物の量を示す例1〜8を与える。
【0015】
【表1】

【0016】
金属酸化物はAl23絶縁体の焼成時に存在するため、絶縁体はいくつかの例ではアルミニウムを有する金属酸化物を含み得る。たとえば、金属酸化物の化学組成はM3Al512であり得、MはSe、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuを備えるグループからのものである。より一般に、金属酸化物の化学組成はMxAlyzであり得、Mは上記のグループと同一であり、xは1より大きいか等しく、yは1より大きいか等しいが2より小さいか等しく、zは3より大きいか等しいが4より小さいか等しい。Al23の割合が金属酸化物およびいずれの他の不純物に対しても高いため、Al23からアルミニウムが金属酸化物に加わる。
【0017】
上記の材料に従って形成された絶縁体30は、厚み1.27mmの試料に対して完全正弦波形を有する60Hz交流電圧電源を用いて測定されると、1ミリメートルあたり17kV(RMS)と等しいか少なくとも17kVの誘電強度を有することがわかった。絶縁体の厚みを減らすことによって点火プラグをより薄くするため、誘電強度は、厚み1.27mmの試料に対して完全正弦波形を有する60Hz交流電圧電源を用いて測定されると、1ミリメートルあたり少なくとも17kV、より好ましくは17.5kV(RMS)であることが望ましい。誘電強度が高まると、絶縁体30の内面34と外面36との間の厚みを減らすことができ、それによって絶縁体30をより薄い壁を有するように作製することができる。絶縁体が小さくなると点火プラグも小さくなり、それによって、点火プラグを囲む構成要素が増えてもよい空間ができる。高誘電強度によって、稼動寿命も長くなる。
【0018】
上記の材料からなる点火プラグ10の絶縁体30はまた、半透明であるか透明であるかのいずれかであるという所望の性質も有する。点火プラグ内のAl23は、透明であり得るガラス絶縁体の以前のアモルファス構造とは異なる多結晶構造を形成する。点火プラグの中には、一端から他端への光の移動を可能にするガラス製のものも以前にあったが、誘電強度の向上および小型化のために最新の点火プラグがガラスからセラミック材料に変わるにつれて、絶縁体の色合いは白くなり、透明ではなくなってきた。上記材料製の点火プラグ絶縁体30は、焼成端13から端子端11または端子部12への光の透過を可能にする。点火プラグ絶縁体30の材料は、厚み1mmの試料に対して約50%以上の光透過を与えるよう選択された。上記の材料からなる絶縁体30は、厚み1mmの試料に対して80%より高い光透過率を有し得ることがわかった。80%+の透過率は不要であるが、光透過が高いほど、燃焼チャンバ内のスパークおよび燃焼を容易に見ることができる。出願人は、コアノーズ部14から端子部12への所望の光透過を生成するためには、絶縁体の光透過率は厚み1mmの試料に対して50%より高いか等しいことが望ましいことを発見した。もちろん、上記の材料を用いれば、さらに高い光透過率を得ることができる。選択された材料に依存して、多結晶絶縁体30は透明な、不透明なまたは半透明な品質を有し得る。
【0019】
多孔度は光透過に影響を与えることが知られている。95%のアルミナセラミック複合物からなる従来の点火プラグ絶縁体は、厚み1mmの試料に対してほぼ4%の多孔度を含み、ほぼ5%以下の光透過を有するため、アルミナセラミックは白色または不透明である。点火プラグ絶縁体が高純度アルミナ(99.5%より高いアルミナ)からなり、0.3%の多孔度を含む場合、光透過はほぼ5%以下に留まり、材料は不透明である。アルミナセラミックスの光学透過を大幅に増大させるには、多孔度が0.1%以下でなければならない。この発明に従って作製される点火プラグ絶縁体は、99.9%純度の多結晶アルミナおよび0.1%より低い多孔度を有するので、厚み1mmの試料に対して80%を超える光透過を与える。
【0020】
粒径もまた、光透過、特にインライン光透過に影響を及ぼす。焼結アルミナ内の粒子同士の間の界面によって、透過光が散乱する。これは、アルミナが複屈折材料である−アルミナの屈折率が結晶方位に依存して異なる−ためである。絶縁体内のアルミナの粒子は若干不規則に並ぶことになるため、光は1つの粒子から他の粒子に進む際に散乱することになる。これが、インライン光透過に影響を与える。アルミナの2つの試料の光透過は同一であり得るが、インライン光透過が高いほうの試料は、材料を通してより明確な像を示すことになる。相対的に、透明ガラス窓のインライン光透過は高いが、つや消しガラス窓のインライン光透過は低い。アルミナのインライン光透過は、粒径が減少するにつれて増加する。粒径が5ミクロンのアルミナについては、インライン光透過は典型的に5%より低くなる。粒径が2ミクロンの場合、インライン光透過は20%まで高くなり得るが、この発明のように、インライン光透過は、粒径が1ミクロンより小さい場合は約50%である。
【0021】
点火プラグの用途によっては、高いインライン光透過が望ましいことがある。たとえば、エンジンシリンダ内のスパークおよび燃焼フロントのその後の展開の明確な像を得ることが望ましいことがある。他の場合では、低いインライン光透過が好まれることがある。たとえば、スパークおよび燃焼からの光を検出することが望ましいが、ガラス封止剤および端子などの点火プラグの内部構成要素が見えるのは利用者に対して見栄えが悪いことがある。この場合、低いインライン光透過が好まれるであろう。したがって、この発明は、粒径を修正することによって光透過を修正することができ、20%または5%まで低下した低いインライン光透過を有することができる。
【0022】
上記材料は、約30ミクロンより小さいか等しい粒径を有することによって、焼結時に高い機械的強度を有するようにも選択される。機械的強度は、粒径が細かい材料ほど高い。たとえば、粒径が30ミクロンの絶縁体の機械的強度は一般にほぼ350メガパスカルであるのに対して、粒径が10ミクロンの絶縁体の機械的強度はほぼ450メガパスカルであり、粒径が1ミクロンより小さい場合、機械的強度は600メガパスカルを超えることがある。
【0023】
上記選択材料によって、点火プラグ絶縁体30を、うわぐすりがけが不要な表面を有するように形成することも可能である。絶縁体30が列挙された量の上記材料からなる場合に形成される表面の平均的な粗さは、うわぐすりがけなどの付加的な処理工程なしで0.40μm以下である。典型的なうわぐすりをかけられていない先行技術の絶縁体の平均的な粗さは1.6μm以上であり、このため、ごみまたは他の汚染物が端子端上の絶縁体の表面に付着し得、端子から殻へのフラッシュオーバー電気スパークプラグ絶縁体を促進する。したがって、現在の絶縁体は、ごみまたは他の汚染物の付着を防止するためにうわぐすりがけが常に必要である。この発明の絶縁体30の外面36は、平均的な粗さが約0.40μm以下であるという予期せぬ利点を有しているため、点火プラグにうわぐすりをかける必要がなくなり、望ましくないフラッシュオーバーの可能性が減る。列挙された量の上記選択材料を用いると、うわぐすりをかけられていない絶縁体を備える点火プラグの平均的な外面粗さは0.20μm以下であり得、それによってフラッシュオーバーをさらに防止できることもわかった。
【0024】
上記材料および上記量に従って作製された絶縁体は、誘電強度が高く、機械的強度が高い。このため点火プラグ絶縁体を、小さな肩部18における外面36と内面34との間の厚みを約2.54mmより小さいか等しくして形成することができる。さらに、点火プラグを、内面34と外面36との間の厚みを約1.9mmより小さいか等しくして、十分な誘電強度を有するように形成できること、およびさらに驚くべきことにこの厚みを、電流要求下の十分な誘電強度および機械的強度を維持しつつ約1.3mmの厚みより小さいか等しい厚みまで減らすことができることがわかった。
【0025】
点火プラグは、当該技術において周知の従来の態様で形成され得る。特に、点火プラグの絶縁体30は、粒度がほぼ0.4ミクロン以下であるアルミナ粉末と水中の他の添加剤との懸濁液をまず調製することによって形成される。これらの添加剤は、MgO、Y23、MgAl24、および他の上記材料などの無機ドーパント、ならびにポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびアクリルエマルションなどの有機結合剤を含む。懸濁液は次に噴射乾燥されて、平均顆粒サイズが50から100ミクロンの自由流動粉末を生成する。この噴射乾燥された粉末は次に、ほぼ200メガパスカルの圧力でダイ内で平衡に圧迫されて、圧迫ブランクを形成する。圧迫ブランクの外面は研磨研削砥石を用いて成形されて、絶縁体の所望の外郭を形成する。絶縁体30は次に摂氏1450から1800度の温度にまで焼成されて、粉末を密な均質体に焼結する。高密度で実質的に孔のないセラミックを達成するため、酸素または水素などの真空のまたは制御された雰囲気で焼成することが望ましいことがある。絶縁体の形成処理は従来の方法と同様であるが、異なる開始材料、より高い圧力、および異なる焼成条件を用いる。
【0026】
他の方法を用いてセラミック絶縁体を形成してもよい。たとえば、粉末は、汚染を回避するための高純度粉砕媒体を用いた振動ミルまたはアトリションミルなどの高エネルギミルによってスラリー内に分散されてもよい。高純度粉砕媒体を有するのであれば、ボールミルを用いてもよい。従来の点火プラグについては、ボールミルが用いられ、粉砕媒体は絶縁体材料と同様の組成、すなわち90%から95%のアルミナである。しかし、高純度で低多孔度の絶縁体を得るためには、大きすぎる微粒子を懸濁液からフィルタにかけるか、またはそうでなければ除去することが望ましい。従来の点火プラグについての懸濁液は、45から53ミクロンの篩を通して選別される。この発明の透明なアルミナを得るためには、繊維フィルタを用いて10ミクロンを超える微粒子を除去することが望ましいことがある。大きな微粒子を除去するための別の方法は、それらを重力によって懸濁液から沈殿させることである。
【0027】
焼成処理を、たとえば、結合剤が熱方法によって除去される従来の絶縁体の焼成処理の初期段階で変更してもよいが、この発明の透明なアルミナにおいては、結合剤除去のためのこの熱処理を、その後の高温焼結処理とは異なる雰囲気で行なうことが望ましいことがある。より具体的には、アルゴンまたは窒素などの不活性雰囲気で結合剤を除去して、結合剤の燃焼の結果として形成され得、かつ最終的なセラミック内に残り続けて絶縁体の光透過を低下させ得る安定した炭素化合物の形成を回避することが望ましいことがある。絶縁体はまた、射出成形または押出成形などの当業者に公知の他の方法によっても形成され得る。
【0028】
上の説明は、この発明の例示的な実施例を開示および説明するものである。当業者であれば、そのような説明から、および添付の図面および請求項から、以下の請求項で規定されるような本発明の正当な思想および公平な範囲から逸脱することなくさまざまな変更、修正および変形がなされ得ることを容易に認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグであって、
密度が約3.95g/cm3以上の絶縁体を備え、
前記絶縁体は、少なくとも99.5%のAl23および、各々が約10〜1000ppmである、Y23、MgO、La23遷移金属酸化物およびランタン系列の酸化物からなるグループから選択される少なくとも2つの材料を含み、前記絶縁体の多孔度は0.3%以下である、点火プラグ。
【請求項2】
コアノーズおよび端子部を有する多結晶絶縁体を備える点火プラグであって、
前記絶縁体は、前記コアノーズから前記端子部への光の透過を可能にし、
前記絶縁体の多孔度は、0.3%以下であり、99.9重量%より多いアルミナならびに、MgO、Y23、La23およびランタン系列の酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの材料を含み、密度が3.95g/cm3以上である、点火プラグ。
【請求項3】
点火プラグであって、
うわぐすりをかけられていない絶縁体を備え、
前記絶縁体は、少なくとも99.5重量%のAl23を含み、外面を有し、前記外面の平均的な粗さは0.40マイクロメートル以下であり、密度は3.95g/cm3以上であり、誘電強度は、1ミリメートルあたり約17キロボルト(RMS)であり、
前記絶縁体は、光の通過を可能にし得る、点火プラグ。
【請求項4】
点火プラグであって、
少なくとも99.5重量%のAl23を含む絶縁体を備え、
前記絶縁体はコアノーズと端子部との間に大きな肩部および小さな肩部を含み、
前記小さな肩部における絶縁体の厚みは、2.54mmより小さく、前記絶縁体の誘電強度は1ミリメートルあたり17キロボルト(RMS)以上である、点火プラグ。
【請求項5】
うわぐすりをかけられていない絶縁体を備える点火プラグであって、
前記絶縁体は外面を有し、前記外面の平均的な粗さは0.20マイクロメートル以下であり、密度は3.95g/cm3以上であり、多孔度は0.3%以下であり、光の通過を可能にし得る、点火プラグ。
【請求項6】
点火プラグであって、
少なくとも99.0重量%のAl23、MgOならびに、Y23、La23遷移金属酸化物およびランタン系列の酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つを含み、
前記絶縁体の密度は3.95g/cm3以上であり、多孔度は0.3%以下である、点火プラグ。
【請求項7】
前記絶縁体は外面を有し、前記外面の平均的な粗さは0.20マイクロメートル以下である、請求項6に記載の点火プラグ。
【請求項8】
前記絶縁体の誘電強度は1ミリメートルあたり17キロボルト(RMS)以上である、請求項6に記載の点火プラグ。
【請求項9】
前記絶縁体は少なくとも99.5重量%のAl23を含む、請求項6に記載の点火プラグ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−12489(P2013−12489A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188531(P2012−188531)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2009−516643(P2009−516643)の分割
【原出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】