説明

焙煎方法及び装置

【目的】 加熱処理中における酸化を有効に防止できる焙煎方法及び焙煎装置を提供する。
【構成】 密封又はそれに近い状態に維持される焙煎室Bに不活性ガスを供給した状態で加熱して焙煎処理する焙煎方法であり、焙煎室Bと、焙煎室Bを加熱する加熱手段10と、焙煎室Bに不活性ガスを供給するガス供給手段26とが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焙煎方法及び装置に関し、例えば、ピーナツやコーヒー豆等を加熱して焙煎処理する焙煎方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上記焙煎方法及び装置では、従来、例えば油脂分の多いピーナツやコーヒー豆等については酸化されると風味が落ちることから、これを避けるために加熱処理した後、N2 ガスやCO2 ガス中に密封した状態で冷却させる等の方法が採られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来手段では、加熱処理中における酸化については全く考慮されておらず、豆の酸化が加熱処理中においてより速く進行することからすると、酸化を有効に防止する点において十分な手段とはいえなかった。
【0004】本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱処理中における酸化を有効に防止できる焙煎方法及び焙煎装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の特徴構成である焙煎方法は、焙煎室を通常の空気よりも酸素含有率を少なくした状態で加熱して焙煎処理する点にある。
【0006】また本発明の第2の特徴構成である焙煎方法は、密封又はそれに近い状態に維持される焙煎室に不活性ガスを供給した状態で加熱して焙煎処理する点にある。
【0007】また本発明の第3の特徴構成である焙煎装置は、密封又はそれに近い状態に維持される焙煎室と、その焙煎室を加熱する加熱手段と、前記焙煎室に不活性ガスを供給するガス供給手段とが設けられた点にある。
【0008】
【作用】本発明の第1の特徴構成によれば、豆を入れた焙煎室が通常の空気よりも酸素含有率を少なくした状態に維持され、この雰囲気中にて豆の加熱処理が行われるので、加熱処理中において豆が空気中の酸素に触れて酸化することを極力抑制することができる。
【0009】また本発明の第2の特徴構成によれば、豆を入れた焙煎室が密封又はそれに近い状態に維持されており、この中に不活性ガスを供給した状態で豆の加熱処理が行われるので、加熱処理中において豆は不活性ガス環境中に置かれた状態となり、空気中の酸素に触れて酸化することを有効に防止することができる。
【0010】また第3の特徴構成によれば、第2の特徴構成に係わる焙煎方法を実現するために焙煎室、加熱手段及びガス供給手段からなる焙煎装置が得られる。
【0011】
【発明の効果】従って、第1及び第2の特徴構成によれば、焙煎処理中における豆の酸化を有効に防止することができるようになり、例えば、油脂分の多いピーナツやコーヒー豆等についても極力その風味を落とすことなく、焙煎処理できるようになった。
【0012】また第3の特徴構成によれば、上記第2の特徴構成に述べた焙煎方法を実現するための好適な装置を得ることができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0014】図1及び図2に示すように、箱状の下部ケーシング1の上方に、略直方体箱状の本体下部ケース2が載置され、この本体下部ケース2の上部に、蒲鉾型形状でかつ上方に煙突状部分を有する本体上部ケース3が結合されている。尚、下部ケーシング1の右上面部には、前後一対の枢支用のピローブロック4が設けられ、このピローブロック4によって前後方向に水平状態で枢支される回動軸5に、上記本体下部ケース2が、前後一対のフランジ6を介して結合支持されており、これによって、前記本体下部ケース2及び本体上部ケース3が一体となって前記回動軸5を支点として右方向に回動されて倒れ姿勢になるように構成されている。
【0015】前記下部ケーシング1内には、外部より取り入れた空気を下部ケーシング1内に吹き出す燃焼空気供給用のブロワー7が設置されており、この吹出された空気は、下部ケーシング1の天板位置に設けられた開口8を通過して、前記本体下部ケース2の下方側からその内部に供給される。前記本体下部ケース2の下方側には、外部より燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給管9に接続された加熱手段としての一対の燃焼用のガスバーナ10が、その燃焼口11を上方に向けた状態で設けられ、本体下部ケース2の側面部箇所には、前記ガスバーナ10の燃焼状態を確認するための覗き窓12が開けられている。
【0016】前記本体下部ケース2の上部及び前記本体上部ケース3の下部にまたがったケース内部空間には、ステンレス製の円筒状筒体からなるマッフル筒14が、水平方向に軸芯を位置させ、かつ、上記内部空間を左右に貫通するような状態で設置されている。このマッフル筒14の軸芯位置には、パイプ状の回転シャフト15が、ケース外の左右一対の軸受22によって支持されて水平方向軸芯周りに回転するように設けられ、さらに、前記マッフル筒14の内面側にそれと同軸状に位置した網状ドラム16が、前記回転シャフト15に固定支持されて設けられている。回転シャフト15には、軸方向に沿って所定間隔でガス噴出用のノズル17が複数個開けられているとともに、右側端部は閉塞され、左側端部はスイベルジョイント18に接続されている。上記構造により、前記マッフル筒14及び前記本体下部ケース2と前記本体上部ケース3の左右側面部にて囲まれる円筒形状空間が、密封又はそれに近い状態に維持される焙煎室Bを構成することになる。
【0017】前記回転シャフト15の左側端部の外周面には、回転駆動用のプーリー19が外嵌状態で固着されるとともに、前記下部ケーシング1の手前側上面には、ベルト20を介して前記プーリー19を回転させるためのモーター21が設置され、このモーター21を駆動することで前記回転シャフト15及び網状ドラム16が回転させられる。尚、このとき、前記スイベルジョイント18により、回転シャフト15は回転するが、スイベルジョイント18より左側の部分は回転しないようになっている。
【0018】前記本体上部ケース3の上方内部には、金属製の熱交換用チューブ23が、水平方向に2往復する配管状態で設けられ、その本体上部ケース3の左側面箇所の熱交換用チューブ23の根元部分には、その手前側位置に前記スイベルジョイント18に樹脂製のフレキシブルチューブ24を介して接続される第1接続口部25が設けられるとともに、その奥側位置に第2接続口部27が設けられ、この第2接続口部27は不活性ガスとしてのN2 ガスを供給するガス供給手段としてのN2 ガスボンベ26に接続されている。尚、上記第2接続口部27と前記N2 ガスボンベ26を結ぶ途中配管箇所には、圧力計28とガス量調整弁29が設けられている。上記の構成により、N2 ガスボンベ26から供給されたN2 ガスが熱交換用チューブ23を通過中に予熱されてから、焙煎室B内に供給されることになる。
【0019】前記マッフル筒14及び前記本体下部ケース2と前記本体上部ケース3の左右側面部にて囲まれる円筒形状空間からなる焙煎室Bに連通する配管に2方向切換用の切換コック30が接続され、この切換コック30の夫々の切換側に手動式のリーク量調整弁31及び真空ポンプ32が接続されている。これにより、2方向切換用の切換コック30をリーク量調整弁31側に切換えた状態で、前記N2 ガスボンベ26からN2 ガスを供給しながら手動でリーク量を調整して前記焙煎室Bからのガスの排出量を調整したり、又は、前記N2 ガスボンベ26からN2 ガスを供給したあとリーク量調整弁31を閉じて前記焙煎室B内を加圧状態にできるようになっている。さらに、前記N2 ガスボンベ26からN2 ガスを供給して焙煎室B内をN2 ガスで充填したあと2方向切換用の切換コック30を真空ポンプ32側に切換えた状態で真空ポンプ32を作動させて、焙煎室B内を減圧状態にすることもできるようになっている。
【0020】前記焙煎室Bを構成する本体下部ケース2及び本体上部ケース3の右側面部夫々には、蝶番式に開閉される材料投入口33と材料排出口34とが設けられ、前記網状ドラム16の右側面部には、ドラム断面積の1/3程度の開口面積を蝶番式に開閉できる開閉口35が設けられている。これにより、前記網状ドラム16内に豆等の材料を投入するときは、網状ドラム16を回転させて上記開閉口35を上方側に位置させ、前記材料投入口33を開けて材料を投入する。又、網状ドラム16内にから材料を排出させるときは、前記開閉口35を下方側に位置させて前記材料排出口34を開けた状態で本体ケース全体を右方向に回動させ、材料排出口34より材料を外部に排出させる。尚、焙煎処理中においては、上記の材料投入口33、材料排出口34及び開閉口35は開かないようにロックされている。
【0021】前記本体上部ケース3の煙突状部分は内部空間の断面形状が狭められて形成されており、この狭くなった断面をほぼ覆う面積を有する燃焼用の風量調整弁36がその長手方向を水平軸方向に配置させ、且つ、手動式の操作アーム37によって上記水平軸芯周りに回動できるような状態で設けられ、これにより、前記断面を塞ぐ割合を変化させて通過風量を調節できるようになっている。
【0022】尚、前記本体下部ケース2及び本体上部ケース3の前記ガスバーナ10の設置位置よりも上方側部分の内壁には、前記燃焼口11、前記覗き窓12、前記材料投入口33及び材料排出口34が設けてある部分、並びに本体上部ケース3の最上方部分を除いて、ガラスウール等の材料からなる断熱材13が配置されている。
【0023】〔別実施例〕上記実施例では、不活性ガスとしてN2 ガスを用いたが、CO2 ガス等を用いてもよい。
【0024】又、上記実施例では、加熱手段10として燃焼用ガスを燃焼させるガスバーナーを用いたが、他の石油や電気を利用した加熱手段を用いてもよい。
【0025】又、上記実施例では、ガス供給手段26をガスボンベで構成したが、これ以外の他のガス供給手段を使うことが可能である。
【0026】又、焙煎室Bを通常の空気よりも酸素含有率を少なくした状態にするには、不活性ガスを供給するに代えて、空気を酸素除去作用のある触媒を通過させてから焙煎室に送り込むことで実現でき、この方法は特に食品を焙煎処理する場合に好ましい。食品でないものを焙煎処理するときには、排気ガス、例えば、前記焙煎室を加熱させるのに使用した燃焼ガスの排気を回収して供給する方法等でもよい。
【0027】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】焙煎装置の側面断面図
【図2】焙煎装置の正面断面図
【符号の説明】
10 加熱手段
26 ガス供給手段
B 焙煎室

【特許請求の範囲】
【請求項1】 焙煎室(B)を通常の空気よりも酸素含有率を少なくした状態で加熱して焙煎処理する焙煎方法。
【請求項2】 密封又はそれに近い状態に維持される焙煎室(B)に不活性ガスを供給した状態で加熱して焙煎処理する焙煎方法。
【請求項3】 密封又はそれに近い状態に維持される焙煎室(B)と、その焙煎室(B)を加熱する加熱手段(10)と、前記焙煎室(B)に不活性ガスを供給するガス供給手段(26)とが設けられた焙煎装置。

【図1】
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【図2】
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