説明

無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物及び透湿防水加工布帛の製造方法

【課題】 風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等の点で優れた透湿層を形成し得る無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有し数平均分子量が800〜22000の範囲内である第1のポリオール成分と、(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分とを構成成分として、NCO/OH比(モル比)=1.03〜1.12の範囲で反応させて得られた末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーに対して、更に、(D成分)アルコキシシラン化合物を添加して無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系ポリウレタン樹脂を用いた、高い透湿性、耐水性、良好な表面状態、優れた風合い及び高い耐久性を発現する無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いた無孔質膜型透湿防水加工布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アウトドア用の衣類などには、無孔質膜型透湿防水加工を施した布帛が使用されたものがある。この無孔質膜型透湿防水加工布帛は、ポリウレタン樹脂からなる透湿性の皮膜を布帛に形成した後、防水剤による処理を施す等により製造されている。透湿性皮膜の形成に用いられるポリウレタン樹脂としては、これまで溶剤系のものが使用されており、例えば、ポリウレタン樹脂中にポリオキシエチレングリコールやポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンをランダム又はブロック共重合したものを用いることは広く知られている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
しかしながら、溶剤系のポリウレタン樹脂を使用すると、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤が製品中に含まれることとなり、この有機溶剤が布帛への加工中に大気に排出されたり、布帛中に残存し、大気汚染や水質汚染に大きな影響を及ぼしている。
【0004】
一方、近年、地球環境、安全、衛生などの観点から有機溶剤を含有しない水系ポリウレタン樹脂が注目されるに至っている。無孔質膜型透湿防水加工剤に於いても有機溶剤系ポリウレタン樹脂から水系ポリウレタン樹脂への転換が検討され、種々の無孔質型透湿防水加工剤が提案されている(例えば、特許文献5及び6)。水系ウレタン樹脂は、環境への悪影響を低減できるという大きな特徴を有するものの、形成された透湿層がタックを有するという問題や、透湿試験時に透湿層上に水分が液状で溜まってしまうという漏水の問題等が発生している。また、風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等の点で、溶剤系樹脂を用いた無孔質型透湿防水加工剤に比較して大きく劣っているのが実情である。
【特許文献1】特公昭54−961号公報
【特許文献2】特開昭64−62320号公報
【特許文献3】特開平3−203920号公報
【特許文献4】特開平4−180813号公報
【特許文献5】特開平6−220399号公報
【特許文献6】特開2004−300178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等の点で優れた透湿層を形成し得る無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物及びこれを用いた透湿防水加工布帛の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物は、(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有し数平均分子量が800〜22000の範囲内である第1のポリオール成分と、(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分とを構成成分として、NCO/OH比(モル比)=1.03〜1.12の範囲で反応させて得られた末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーに対して、更に、(D成分)アルコキシシラン化合物を添加して得られるプレポリマーを水分散して得られることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物は、(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有し数平均分子量が800〜22000の範囲内である第1のポリオール成分と、(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分とを構成成分として、NCO/OH比(モル比)=1.03〜1.12の範囲で反応させて得られた末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを水分散して得られるプレポリマーに対して、更に、(D成分)アルコキシシラン化合物を添加して得られることを特徴とする。
【0008】
本発明では、(B成分)と(C成分)の2種類のポリオール成分を使用することにより、親水性と疎水性とのバランスが調整され、透湿防水加工布帛の透湿層として優れた風合い、耐水性、透湿性、耐洗濯性等が発揮される。
【0009】
上記に於いては、前記(B成分)の第1のポリオール成分に含まれるオキシエチレン単位の合計の含有量が、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、10〜35重量%の範囲であることが好ましい。
【0010】
また、前記(D成分)は、1分子中にアルコキシ基を2つ以上含有するアルコキシシランであることが好ましく、その含有量は、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0011】
本発明の透湿防水加工布帛の製造方法は、上記に記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布し及び乾燥処理を行って透湿層を形成し、該透湿層の上に、水系ポリウレタン樹脂組成物にイソシアネート架橋剤を添加して得られる接着剤組成物を塗布し及び乾燥を行った後、布帛を貼り合わせ、更に撥水処理することにより透湿防水加工布帛を得ることを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を布帛に塗布し及び乾燥処理した後、布帛を貼り合わせ、更に撥水処理してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の水系ポリウレタン樹脂では得ることが難しかった、風合い、透湿性、耐水性、耐洗濯性に優れ、タックもなく漏水も発生しない無孔型透湿防水加工を可能とする水系透湿防水加工剤、及びこれを用いた透湿防水加工布帛の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において使用されるA成分の有機ポリイソシアネート成分としては、特に制限はなく、ウレタン工業の分野において周知のものを使用することができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加MDI(H12MDI)などの有機ポリイソシアネート化合物が挙げられるが、無黄変性を要求される場合には、HMDIなどの脂肪族イソシアネート、IPDI、H12MDIなどの脂環族イソシアネート、XDI、TMXDIなどの芳脂環族イソシアネートが好ましい。
【0015】
本発明において使用されるB成分である第1のポリオール成分としては、4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するものであれば、ウレタン工業の分野において周知のものを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0016】
本発明に於けるB成分として使用し得るポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール重合物及びヒドロキシル末端基を含みブロック状又はランダム状のエチレンオキサイド共重合物(好ましくはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合物)が挙げられる。ヒドロキシル末端基を含みブロック状又はランダム状のエチレンオキサイド共重合物を得るための出発物質として、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。また四官能アルコール成分としてはペンタエリスリトールが挙げられる。これらの多価アルコールを出発物質とし塩基性触媒の存在下、エチレンオキサイドと必要に応じて他のアルキレンオキサイドを重付加することにより、ポリエーテルポリオールが合成される。他のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0017】
B成分のポリオキシエチレン基を有するポリオール化合物の数平均分子量は、800〜22000であることが必要であり、好ましくは3000〜12000である。オキシエチレン基を有するポリオール化合物の数平均分子量が800未満の場合には、得られるポリウレタン樹脂から形成される皮膜のベタツキ感が強くなる。また、このポリエチレングリコールの分子量が22000を越えると、得られるポリウレタン樹脂から形成される皮膜の柔軟性が低下し、また十分な透湿性を得ることができない。
【0018】
B成分のポリオキシエチレン基を有するポリオール化合物に含まれるポリオキシエチレン基のポリウレタン樹脂中における含有率は、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、10〜35重量%であることが好ましく、この含有量が10重量%未満の場合には十分な透湿性が得られないことがある。また35重量%を超えると、樹脂を水系化する際、乳化系の粘度が高くなり、結果的に固形分含有率が低くなってしまうことがある。
【0019】
本発明において使用されるC成分である第2のポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを挙げることができる。
【0020】
本発明に於けるC成分として使用し得るポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、出発物質として、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類など、またペンタエリスリトール等の四官能アルコールを用い、これら多価アルコールに、塩基性触媒の存在下、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどを重付加することにより得られる。
【0021】
本発明に於けるC成分として使用し得るポリエステルポリオールは、二塩基酸成分と二価アルコール成分とを反応させることにより得られるものが代表的である。二塩基酸成分としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のような芳香族二塩基酸が挙げられる。ポリエステルポリオールを構成する二価アルコール成分としては、エチレングルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオールなどの脂肪族グリコール、及びシクロヘキサンジオール等の脂環式グリコールや、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のような芳香族グリコール等が挙げられる。これらの二塩基酸成分と二価アルコール成分とを縮合反応させてポリエステルポリオールが得られる。
【0022】
本発明に於けるC成分として使用し得るポリカーボネートポリオールとしては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0023】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を調製するに際して、本発明の効果を損なわない範囲内で鎖伸張剤を併用してもよい。鎖伸張剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールを挙げることができ、オキシアルキレン誘導体などの低分子鎖伸張剤も使用することができる。
【0024】
このほか鎖伸張剤成分としては、ビスフェールA、ビスフェノールB、水素化ビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA,シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテルなどの低分子鎖伸張剤を挙げることができ、これらを本発明の効果を損なわない範囲内で使用することができる。
【0025】
上記A成分の有機ポリイソシアネートと、上記B成分及びC成分のポリオールとの反応は、公知の方法により行うことができ、その反応の際のNCO基/活性水素基のモル比は、1.03〜1.12の範囲であり、反応は30〜130℃で30分〜50時間行うことにより、ポリウレタンプレポリマーが得られる。このポリウレタンプレポリマーは、少なくとも0.2重量%以上2.0重量%以下の遊離イソシアネート基を含有していることが好ましく、0.5〜1.5重量%の遊離イソシアネート基を有していることが更に好ましい。
【0026】
なお、上記ウレタンプレポリマーの合成に際し、イソシアネートに対して不活性で、かつ、ウレタンプレポリマーを溶解しうる溶剤を用いてもよい。使用し得る溶剤として、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。またウレタンプレポリマー水溶液の中に、酸化防止剤又は耐光剤の溶液又はエマルジョンを併用しても良い。
【0027】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系又はセミカルバジド系などの酸化防止剤の溶液又はエマルジョンが挙げられる。耐光剤としてはヒンダードアミン(HALS)系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの耐光剤の溶液又はエマルジョンが挙げられる。
【0028】
上述のようにしてポリウレタンプレポリマーを得た後、D成分のアルコキシシラン化合物が添加される。D成分の添加は、ポリウレタンプレポリマーの水への分散前又は分散後に行われる。アルコキシシラン化合物としては、1分子中にアルコキシ基を2つ以上含有するアルコキシシランが好適に使用される。1分子中にアルコキシ基を2つ以上含有するアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0029】
また、本発明においては、上記D成分のアルコキシシラン化合物の添加後、更にアミン伸張剤を使用してもよい。アミン伸張剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドなどの低分子量ポリアミンを挙げることができる。
【0030】
本発明の透湿防水加工布帛の製造方法は、上記無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物を使用し、ドライラミネート法により透湿防水加工布帛を得るものである。即ち、上記無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布し、ピンテンターなどを用いて加熱乾燥処理を行うことにより透湿層が形成される。その後、この透湿層の上に、水系ポリウレタン樹脂組成物にイソシアネート架橋剤を添加して得られる接着剤組成物を塗布し、ピンテンターなどを用いて乾燥させた後、布帛を貼り合わせ、ピンテンターなどを用いて加熱する。次に、離型紙を剥がし、撥水処理を行うことにより、透湿防水加工布帛が得られる。
【0031】
また、本発明の透湿防水加工布帛の製造方法によれば、上記無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を布帛に直接塗布し及び乾燥処理してもよい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)274.6部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約1000、水酸基価=112.2)49.7部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート53.2部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート50.7部、トリメチロールプロパン4.4部、メチルエチルケトン80部、ジオクチル錫ジラウレート0.05部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.10)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.68重量%であった。次に、メチルエチルケトン94.5部を添加し、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において水で希釈し、さらにN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−602)を6.2部添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物Aを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物A中の固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約1000)の含有量=11.3重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=1.4重量%(理論値))。
【0034】
(実施例2…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリプロピレングリコール(「PML S−X4001」旭硝子(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)109.3部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約20000、水酸基価=5.6)49.7部、トリメチロールプロパン2.6部、3−メチル−1,5−ペンタジオール23.3部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート39.8部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート38.0部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.06)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.70重量%であった。次に、メチルエチルケトン124部を添加し、系の温度を40℃とし、さらにγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−403)を23.6部添加し、このプレポリマーを撹拌下において水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン2.8部を添加し、を4.1部添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物Bを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物B中の固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約20000)の含有量=17.2重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=8.2重量%(理論値))。この水系ポリウレタン樹脂組成物Bは、水分散体の状態では遊離イミノ基を有しているが、フィルム形成時にイミノ基がシランカップリング剤の有するエポキシ基と架橋することを企図している。
【0035】
(実施例3…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリテトラメチレングリコール(PolyTHF1000、BASF(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)274.6部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(ポリハードナーD−340W、第一工業製薬(株)製、Mw=約3400、エチレンオキサイド含有率約78重量%、水酸基価=33.0)108.0部、トリメチロールプロパン4.4部、3−メチル−1,5−ペンタジオール2.6部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート51.0部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート48.7部、メチルエチルケトン110部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.03)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.40重量%であった。次に、メチルエチルケトン75部を添加し、系の温度を40℃とし、さらにβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−303)を5.2部添加し、このプレポリマーを撹拌下において水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン2.8部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物Cを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物C中の固形分に対するポリエチレンポリプロピレンランダムグリコール(Mw=約3400)の含有量=21.7重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=1.0重量%(理論値))。この水系ポリウレタン樹脂組成物Cは、水分散体の状態では遊離イミノ基を有しているが、フィルム形成時にイミノ基が、シランカップリング剤の有するエポキシ基と架橋することを企図している。
【0036】
(実施例4…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリプロピレングリコール(「PML S−X4001」旭硝子(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)82.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約10000、水酸基価=11.2)56.2部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール9.7部、トリメチロールプロパン1.3部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート41.1部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.03)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.50重量%であった。次に、メチルエチルケトン60部、ジメチロールプロピオン酸0.8部、トリエチルアミン0.6部を添加し、65〜70℃で1時間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.20重量%であった。系を冷却しさらにメチルエチルケトンを50部添加し系の温度を40℃とし、撹拌下において、このプレポリマーにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)を4.1部添加した後、水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン1.5部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分20重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物Dを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物D中の固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約10000)の含有量34.4重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=2.5重量%(理論値)、酸価1.9mgKOH/g)。
【0037】
(実施例5…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリテトラメチレングリコール(PolyTHF2000、BASF(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)82.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約10000、水酸基価=11.2)49.7部、トリメチロールプロパン2.0部、1,4−ブタンジオール12.2部、ヘキサメチレンジイソシアネート59.7部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.11)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は2.0重量%であった。次に、メチルエチルケトン60部、N−メチルジエタノールアミン3.0部を添加し、70〜75℃で2時間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.60重量%であった。系を40℃まで冷却し、酢酸を1.5部添加し、さらにメチルエチルケトンを50部添加し、撹拌下において、このプレポリマーにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)を4.1部添加した後、水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン1.2部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物Eを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物E中の固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約10000)の含有量25.2重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=2.1重量%(理論値)、アミン価7.2mgKOH/g)。
(合成例…接着剤組成物の調製)
ポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸、日本ポリウレタン工業製、Mw=2000、水酸基価=56.1)160.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬製、Mw=1000、水酸基価=112.2)300.0部、メチルエチルケトン180.0部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、TDI−80)70.5部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.07)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.00重量%であった。次に、メチルエチルケトンを91.3部、ジメチロールプロピオン酸5.4部、トリエチルアミン2.0部添加し、60〜65℃で20分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.10重量%であった。次に、メチルエチルケトン124部を添加し、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において水で希釈し、MEKを留去し、純分25重量%の非イオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体BRを得た。
【0038】
(比較例1…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリプロピレングリコール(「PML S−X4001」旭硝子(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)201.2部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約1000、水酸基価=112.2)21.0部、トリメチロールプロパン0.7部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート36.3部、メチルエチルケトン80部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.07)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.50重量%であった。次に、メチルエチルケトン100部を添加し、系の温度を40℃とし、このプレポリマーを撹拌下において水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン0.6部添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物aを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物aの固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約1000)の含有量8.0重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=0重量%)。
【0039】
(比較例2…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリテトラメチレングリコール(PolyTHF2000、BASF(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)82.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約10000、水酸基価=11.2)49.7部、トリメチロールプロパン2.0部、1,6−ヘキサンジオール16.0部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート70.3部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は2.0重量%であった。次に、メチルエチルケトン60部、N−メチルジエタノールアミン3.0部を添加し、70〜75℃で2時間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.60重量%であった。系を40℃まで冷却し、酢酸を1.5部添加し、さらにメチルエチルケトンを50部添加し、撹拌下において、このプレポリマーにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)を4.1部添加した後、水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン2.3部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物bを得た(NCO/OH=1.17 ; 水系ポリウレタン樹脂組成物bの固形分に対するポリエチレングリコール(Mw=約10000)の含有量22.0重量%(理論値)、アルコシシランの含有量=1.8重量%、アミン価6.3mgKOH/g)。
【0040】
(比較例3…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリテトラメチレングリコール(PolyTHF1000、BASF(株)製、Mw=1000、水酸基価=112.2)180部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(ポリハードナーD−340W、第一工業製薬(株)製、Mw=3400、水酸基価=33.0)20部、1,4−ブタンジオール3.8部、トリメチロールプロパン3.8部及びメチルエチルケトン100部の混合物にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート79.9部を加え、75℃で90分反応し遊離イソシアネート基含有1.1重量%のウレタンポリマーを得た。
【0041】
このプレポリマーにジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド付加物であるポリオキシエチレンアリールフェノールエーテル型非イオン界面活性剤(HLB=15)14.4部を添加(対固形分5.0重量%)混合後、水を加えて乳化分散し、これにエチレンジアミンの5重量%水溶液42.4部を添加、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物cを得た(NCO/OH=1.13 ; 水系ポリウレタン樹脂組成物cの固形分に対する親水性ポリエーテル成分の含有量7.0重量%、アルコシシランの含有量=0重量%)。
【0042】
(比較例4…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリプロピレングリコール(「PML S−X4001」旭硝子(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)82.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=400、水酸基価=280.6)65.2部、ヘキサメチレンジイソシアネート37.7部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた(NCO/OH=1.06)。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.50重量%であった。次に、メチルエチルケトン60部、ジメチロールプロピオン酸0.8部、トリエチルアミン0.6部を添加し、65〜70℃で1時間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.60重量%であった。系を冷却し、さらにメチルエチルケトンを50部添加し、系の温度を40℃とし、撹拌下において、このプレポリマーにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)を4.1部添加した後、水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン1.1部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分20重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物dを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物dの固形分に対するポリエチレングリコールの含有量34.4重量%、アルコシシランの含有量=2.2重量%、酸価1.8mgKOH/g)。
【0043】
(比較例5…水系ポリウレタン樹脂組成物の調製)
ポリプロピレングリコール(「PML S−X4001」旭硝子(株)製、Mw=2000、水酸基価=56.1)82.0部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製、Mw=約10000、水酸基価=11.2)67.4部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール9.7部、トリメチロールプロパン1.3部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート41.8部、メチルエチルケトン100部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.50重量%であった。次に、メチルエチルケトン60部、ジメチロールプロピオン酸2.2部、トリエチルアミン0.6部を添加し、65〜70℃で1時間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は0.60重量%であった。系を冷却し、さらにメチルエチルケトンを50部添加し、系の温度を40℃とし、撹拌下において、このプレポリマーにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)を4.1部添加した後、水で希釈し、さらにジプロピレントリアミン1.1部を添加し、遊離NCO(重量%)の消失を確認した。その後、MEKを留去し、純分25重量%の水系ポリウレタン樹脂組成物eを得た(水系ポリウレタン樹脂組成物eの固形分に対するポリエチレングリコールの含有量37.9重量%、アルコシシランの含有量=2.3重量%、酸価5.5mgKOH/g)。
【0044】
(評価試験用透湿防水布帛の作成)
<接着剤の調製>
合成例で調製した非イオン性ポリウレタンプレポリマー水分散体BR100部と、アクアネート210(水分散型イソシアネート架橋剤、日本ポリウレタン工業製)5部と、会合型増粘剤M−2005A(第一工業製薬(株)製)0.5部とを配合して接着剤を得た。
【0045】
<試験例1〜5、比較試験例1〜5…ドライラミネート法による透湿防水布帛の作成>
離型紙に、実施例1〜5及び比較例1〜5で作成した水系ポリウレタン樹脂組成物A〜E、a〜eを、乾燥膜厚15μmとなるようコーティングし、ピンテンター(ドライヤー)で80℃×3分処理後、さらに150℃×3分で熱処理し、離型紙上に透湿性を有するポリウレタン樹脂皮膜を作成した。このポリウレタン樹脂皮膜の上に、上記で作成した接着剤を乾燥膜厚20μmとなるよう、バーコータでコーティング処理し、ピンテンター(ドライヤー)で90℃×4分熱処理し、直ちにポリエステル織物(タフタ)と貼り合わせ、カレンダーを用いて、温度90℃、圧力2MPaの条件でラミネート処理した後、温度45℃×48時間熟成処理した。次に、離型紙を剥がして、エラスガードW−70(フッ素系撥水剤;第一工業製薬(株)製)の1%水溶液中に浸漬させ、絞液した後、ピンテンター(ドライヤー)で120℃×3分処理し、試験例1〜5及び比較試験例1〜5の透湿防水布帛を得た。
【0046】
<試験例6…ダイレクトコート法による透湿防水布帛の作成>
軽撥水処理したポリエステル織物(タフタ)に対して、実施例1で調製した透湿防水性を有する水系ポリウレタン樹脂Aを、乾燥膜厚30μmとなるようコーティングし、ピンテンター(ドライヤー)で80℃×3分処理後、さらに150℃×3分で熱処理し、ポリエステル織物(タフタ)上に透湿性を有するポリウレタン樹脂皮膜を作成した。さらにエラスガードW−70(フッ素系撥水剤;第一工業製薬(株)製)の1%水溶液中に浸漬させ、絞液した後、ピンテンター(ドライヤー)で120℃×3分処理し、無孔質型透湿性防水布帛を得た。
【0047】
(透湿防水布帛の評価試験)
上記で作成した試験例1〜6及び比較試験例1〜5の透湿防水布帛について、透湿性、耐水圧、耐洗濯性及び風合いについて評価を行った。評価方法は以下のとおりである。
【0048】
<透湿性>
JIS L−1099 4.1.1B−1(酢酸カリウム法)に準じて測定を実施した。
【0049】
<耐水圧>
JIS L−1092 B法(高水圧法)に準じて測定を行った。
【0050】
<耐洗濯性>
JIS L 0217の103法に準じて洗濯し、洗濯10回前後の透湿性及び耐水圧を測定した。
【0051】
<風合い>
触感にて評価した。評価基準は、「○」が「柔らかい」、「△」が「やや硬さがある」「×」が「硬い」である。
【0052】
<結果>
試験例1〜6の透湿防水布帛についての評価試験の結果を表1に、比較試験例1〜5の透湿防水布帛についての評価試験の結果を表2にそれぞれ示す。
【0053】
表1及び表2の比較から、各試験例の透湿防水布帛は高い透湿性を示し、漏水も生じないのに対して、各較試験例の透湿防水布帛は、透湿性が不十分なものが多く、また、透湿性の高いものでも漏水を生じることが分かる。また、耐洗濯性については、各試験例の透湿防水布帛は、若干の透湿性の低下が見られるものの、耐水性の低下は殆ど見られなかった。これに対して、比較試験例1〜5の透湿防水布帛は、初期の透湿性及び耐水性の低さを10改の洗濯後においても改善されることはないため、使用に耐えるものではなかった。風合いについては、各試験例及び各較試験例の透湿防水布帛は、何れもほぼ○の評価であった。但し、水系ポリウレタン樹脂組成物dを用いた比較試験例4の透湿防水布帛では、タックが生じていた。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物を使用すれば、有機溶剤を使用することなく透湿防水布帛を製造することができるので、繊維加工の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、
(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有し数平均分子量が800〜22000の範囲内である第1のポリオール成分と、
(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分と
を構成成分として、NCO/OH比(モル比)=1.03〜1.12の範囲で反応させて得られた末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーに対して、更に、
(D成分)アルコキシシラン化合物
を添加して得られるプレポリマーを水分散して得られる無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、
(B成分)4個以上のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン基を含有するとともにNCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有し数平均分子量が800〜22000の範囲内である第1のポリオール成分と、
(C成分)NCO基と反応性のある活性水素を少なくとも2個以上含有する第2のポリオール成分と
を構成成分として、NCO/OH比(モル比)=1.03〜1.12の範囲で反応させて得られた末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを水分散して得られるプレポリマーに対して、更に、
(D成分)アルコキシシラン化合物
を添加して得られる無孔質膜型透湿防水加工用水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B成分)の第1のポリオール成分に含まれるオキシエチレン単位の合計の含有量が、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、10〜35重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D成分)が1分子中にアルコキシ基を2つ以上含有するアルコキシシランであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D成分)の1分子中にアルコキシ基を2つ以上含有するアルコキシシランの含有量が、水系ポリウレタン樹脂中の固形分を100重量%として、1〜10重量%である請求項4記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布し及び乾燥処理を行って透湿層を形成し、該透湿層の上に、水系ポリウレタン樹脂組成物にイソシアネート架橋剤を添加して得られる接着剤組成物を塗布し及び乾燥処理を行った後、布帛を貼り合わせ、更に撥水処理することにより透湿防水加工布帛を得ることを特徴とする透湿防水加工布帛の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の無孔質膜型透湿防水加工用の水系ポリウレタン樹脂組成物を布帛に塗布し及び乾燥処理した後、布帛を貼り合わせ、更に撥水処理することを特徴とする透湿防水加工布帛の製造方法。

【公開番号】特開2007−45866(P2007−45866A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229050(P2005−229050)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】